JP4207948B2 - 自動車用タッチパネル - Google Patents

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Description

本発明は液晶表示器などの表示器の表示前面側に配置される自動車用タッチパネルに関するものである。
タッチパネルの上下基板の対向する面に形成された透明導電膜は湿度により腐食し、耐久性に劣るという問題があるため、従来においては、上下基板を、湿度を通しやすい樹脂製から湿度を通しにくいガラス製に変更して耐久性を改善している(特開平10−133817号公報)。
しかし、環境的に安定している民生環境で使用するタッチパネルとしては、上記従来構造でも湿度に関しては満足できるものであるが、例えば自動車のような高温、高湿環境で長時間、使用する場合には、従来構造では湿度に対して満足できるものではないことを見出した。
即ち、本発明者の試験結果による知見によれば、一般的に入手できるタッチパネル(市販のカーナビゲーション用液晶モニターに採用されているタッチパネル)を65℃、95%Rhという高温、高湿環境下で放置したところ、400Hrで対向した一対のガラス基板間の空間部内に水分が侵入し、タッチパネルとしての機能を果たさなくなるということが初めて分かった。
本試験に使用した市販のタッチパネル内部への水分侵入経路として考えられる、一対のガラス基板間を接着しているシール部の肉厚(断面方向)を測定した結果、20μmであった。
このように、タッチパネル内への水分の侵入がシール部の肉厚に依存するという本発明者の新たな知見に基き、シール部の肉厚を所定の範囲に設定することで、水分がシール部を透過して一対のガラス基板間に侵入するのを回避して高温、高湿環境下でも長時間使用可能な自動車用タッチパネルを提供することを目的とするものである。
本発明者は例えば自動車環境を満足するためには、65℃、95%Rhの高温、高湿環境下で1000Hr放置後、正常な動作をする必要があるという基準を設定した。このような条件を満足できれば、民生環境でもより高い耐久性を満足できる。
さて、このような条件を満足するには、シール部の幅寸法を同じに設定した状態では、シール部の断面方向の肉厚を8μm以下(20μm×400/1000=8μm)に設定することがよいことを知った。
従って、請求項1に記載の発明によれば、透明導電膜を配設した一対の透明ガラス基板を備え、該一対のガラス基板がそれらの間に空間部が形成されるように前記透明導電膜側にて互いに対向するように配置されるとともに、シール部を介して接合された構成を有する自動車用タッチパネルにおいて、
前記タッチパネルは長方形で、サイズは対角4インチ〜8インチの範囲であり、
一対のガラス基板のうち一方のガラス基板がタッチ領域を備えており、一方のガラス基板の板厚が0.3mm以上0.4mm以下の範囲に設定され、
一方のガラス基板のヤング率が730000Kgf/cm以上750000Kgf/cm以下に設定されている。
さらに、前記シール部の肉厚が8μm以下に設定され、
前記一対のガラス基板のそれぞれの透明導電膜が配線部との接続部を除く全面にて前記一対のガラス基板間に形成された空間部内に直接露出しており、
前記一対のガラス基板のうちタッチ領域を有する前記一方の基板が、前記シール部周辺から見て中央部が7μm高い、その外側に向けて凸状に膨らんだ形状を有しており、
前記一対のガラス基板のうち前記タッチ領域を有する前記一方の基板が、その外側に向けて凸状に膨らだ形状を有しており、
前記シール部は、エポキシ樹脂にシリカスペーサやガラスファイバーのスペーサ粒子を混入して構成され、
前記エポキシ樹脂は、透湿率が、65℃、95%Rhの条件下において、8×10−12g・cm/cm・sec・cmHgを超えない値を示すエポキシ樹脂であって、
前記スペーサ粒子(7)は、動作荷重が最大となるシール部近傍の動作荷重を200gf以下とし、動作荷重が最小となるタッチエリア中央領域の動作荷重を20gf以上とするために、ガラス基板の板厚が0.3mmの場合にはシール部の肉厚を4μm〜8μmに設定し、ガラス基板の板厚が0.4mmの場合には前記シール部の肉厚が2μm〜8μmに設定する前記ガラス基板の板厚とシール部の肉厚との関係により示されるシール部の肉厚を規定するため、タッチパネルのサイズが4インチ〜8インチの範囲において、シール部近傍から中央部までの全タッチ領域において110gf±90gfの動作荷重が実現でき、優れた操作が可能となって、自動車運転中の誤作動がなくなり、タッチパネルとして広い領域で使うことが可能となる。
さらに、65℃、95%Rhの高温、高湿環境下で1000Hr放置後でも正常の動作が可能となるため、厳しい高温、高湿環境下での長時間の使用が可能となる。
また、従来ではニュートンリング対策のために、タッチ領域を有する一方のガラス基板と対向する反対側のガラス基板の透明導電膜の上に所定の粒径を有した光硬化性樹脂からなる多数のドットスペーサ形成する必要があるが、タッチ領域を有する一方の基板を、その外側に向けて凸状に膨らんだ形状にしているため、透明導電膜が一対の空間部内に直接露出していて、ドットスペーサにより透明導電膜の一部が覆われていない構造とすることが可能となり、ドットスペーサの形成が必要でないので、コスト低減に寄与することができる。つまり、シール部の肉厚を薄くすることができながらニュートンリングの発生が回避可能となる。
なお、タッチ領域のガラス基板の板厚が0.2mmを下回ると、ガラス基板の製造コスト上昇に加えて、タッチパネルの動作荷重が小さくなり過ぎ、誤作動をし易いということにつながる。反対に0.4mmを上回ると、動作荷重が大きくなり過ぎ、タッチパネルとして使いにくいものとなる。
ガラス基の板厚が0.3mmの場合には、シール部の肉厚を4μm〜8μmに設定し、0.4mmの場合には、2μm〜8μmに設定されているため、動作荷重が所定の範囲を満足するとともに、高温、高湿環境下での耐久性に優れる。
なお、ガラス基板の板厚の下限値としては、0.2mmより、0.3mmがよい。つまり、使用者がタッチパネルのタッチ領域を積極的にタッチしたという意識がない荷重でもタッチパネルが動作してしまうことがある。特に、自動車では、運転者は運転中にナビゲーションの画面を見ずにタッチパネルの表面を指でなぞりながら目的の箇所をタッチする傾向にあるが、このような場合、なぞる過程でタッチパネルが動作することがある。また、振動、例えば自動車では悪路走行時の振動によりタッチパネルが動作するということもある。また、請求項3では、シール部の肉厚が4μm以上8μm以下に設定されているため、高温、高湿環境下での耐久性を満足するとともに動作荷重を満足することができる。
また、ガラス基板の板厚が0.4mmの場合には、シール部の肉厚が2μm以上8μm以下に設定されているため、高温、高湿環境下での耐久性を満足するとともに動作荷重が満足でき、さらにガラス基板の板厚が0.4mmの場合は、より大判ガラスによるガラス基板の多数個取りが容易となり、大量生産に適するとともに、コスト低減となる。
シール部の透湿率は請求項1に記載したように、所定条件下で8×10-12g・cm/cm2・sec・cmHgを超えない値を有することがよい。このような透湿率を有するシール部の材料は請求項に記載したように、熱硬化型のエポキシ樹脂である。この請求項によれば、シール部の肉厚8μm以下で実現することができる。例えば、透湿率の高い材料を使用することはシール部の肉厚をより小さくすることが必要であり、シール部の肉厚の上限値が8μmよりも確実に小さくなる。これは、シール部の肉厚の設計の自由度が狭められることを意味している。
シール部の肉厚が薄くなるとニュートンリングが発生し始める。ニュートンリングはタッチパネルを組付けた表示器の表示を見にくくする。しかし、請求項では、一対のガラス基板のそれぞれに形成した配線部どうしを電気的に接続するトランスファー部をシール部よりも内側に配置し、しかもこのトランスファー部と配線部との積算肉厚t1とシール部の肉厚t2との関係をt1>t2に設定したから、請求項のように、シール部近傍を含めてタッチ領域のガラス基板をその外側に向けて凸状に膨らんだ形状にすることができる。
請求項のように、配線部どうしを電気的に接続するトランスファー部を、樹脂粒子および該樹脂粒子表面にめっきされた金属膜からなる導電粒子で構成することがよい。このような導電粒子で構成されたトランスファー部を採用することにより、トランスファー部自体の粒子径を小さくすることができ、シール部の肉厚を8μm以下に設定することを妨げない。つまり、従来ではトランスファー部を銀ペーストで構成しているが、銀ペースト中の銀粒子は5μmを超えた粒子径が加工上の限度である。しかし、請求項の発明のように、樹脂粒子の表面をめっきにて金属膜を被覆する構成のトランスファー部によれば、樹脂粒子の直径は例えば2μm程度まで小さくでき、めっきによる金属膜は1μmも満たない厚さに設定することができ、従ってトランスファー部全体の直径としてもせいぜい3μm程度にまで小さくすることができ、シール部の肉厚を8μm以下に設定する自由度が増加する。
請求項に記載の発明では、配線部をシール部により覆われる構成としたため、配線部領域がシール部領域と重なるので、配線部領域を独立して存在させる必要がない。このことは、タッチパネルのタッチスイッチ領域(透明導電膜が形成されている領域)の外周囲に存在している配線部領域、シール部領域の面積を小さくできるため、いわゆる狭額縁構造を提供することができる。このことは、上記タッチスイッチ領域の平面積を同じにした場合、配線部領域が独立して存在している場合に比較してタッチパネルのガラス基板の縦、横の寸法を小さくでき、ひいてはタッチパネルを小さくすることができる。見方を変えれば、タッチスイッチ領域の平面積を大きくすることができるので、スイッチとしての機能を拡大することができる。
請求項に記載の発明によれば、配線部を有機金属化合物の焼成体により構成してあるから、この有機金属化合物は焼成の過程で有機物が分解ガスとして排出され、残存した金属膜は極めて薄く、1μm以下の膜厚になる。
従って、従来ではタッチパネルの配線部は銀ペーストの焼成物で構成するのが通常であるが、この銀ペーストは銀粒子が5μmを超えるものであり、このような銀ペーストを用いたのでは、シール部の肉厚を8μm以下の範囲に設定できないが、請求項の発明では、1μm以下の膜厚に設定できる配線部を得ることができるため、シール部の肉厚を8μm以下に設定することが可能となり、シール部を通過しての水分の侵入を回避することができる。
なお、1μm以下の膜厚の金属膜を形成するには、真空蒸着、スパッタリングでも可能であるが、これらの方法は設備的に大掛かりとなる。これに対して、請求項のように、有機金属化合物を用いた場合には、スクリーン印刷が可能であり、従って製造工程が極めて簡単になるという利点もある。
[実施形態1]
図1〜図6は実施形態1を示すものである。図1において、1はタッチパネルであり、該タッチパネル1は、図16に示すように、カーナビゲーション用液晶表示器Dの表示側に配置されている。該タッチパネル1は、図1のように、液晶表示器Dの表示状態を変えるスイッチとして用いられ、一対のガラス基板1a、2aがシール部3を介して互いに対向して空間部8を形成するようにして接着、固定された構成である。
一方のガラス基板1aはタッチパネル1の操作者が指先で操作するタッチ領域を有しており、このタッチ領域を操作することで弾性変形により微小に可動するようになっている。また、他方のガラス基板2aは上記液晶表示器Dの表示側に固定されるものである。
ガラス基板1a、2aは例えば硼珪酸鉛ガラス材料から構成されており、一方のガラス基板1aは肉厚が0.4mmで、他方のガラス基板2aは肉厚が1.1mmにより構成されている。
ガラス基板1aには透明導電膜1bが、ガラス基板2aには透明導電膜2bがそれぞれ形成されている。ガラス基板1aの透明導電膜1bは図4に示すように長方形状を有している。そして、ガラス基板1aには、透明導電膜1bの対向する2辺(図4では左右端部)に相当する部位に電気的に接続されるように、配線部4が形成されている。また、ガラス基板2aの透明導電膜2bも図5に示すように長方形状を有しており、ガラス基板2aには透明導電膜2bの対向する2辺(図5では上下端部)に相当する部位に電気的に接続されるように、配線部5が形成されている。
ガラス基板2aには、配線枝部50a、配線枝部50b、配線枝部50c、配線枝部50d、配線枝部50e、対をなす端子部10a、10b、対をなす端子部20a、20bが形成されている。
配線部5のうち図5の上側の配線部5は配線枝部50bを介して端子部10bに電気的に接続され、下側の配線部5は配線枝部50aを介して端子部10aに電気的に接続されている。端子部10a、10b、20a、20bは電源供給用の電気コネクタ(図示しない)が電気的に接続されるものである。
配線枝部50c、50dはガラス基板1aとガラス基板1bとを重ね合わせた際に、ガラス基板1aの右側の配線部4(図4参照)を端子部20aに、また配線枝部50eは左側の配線部4を端子部20bにそれぞれ電気的に接続するものである。これらの電気的接続はトランスファー部6により達成されている。即ち、ガラス基板1aの右側の配線部4(図4参照)とガラス基板2aの配線枝部50eとの間、およびガラス基板1aの左側の配線部(図4参照)とガラス基板2aの配線枝部50cとの間がトランスファー部6を挟持して電気的に接続されている。
トランスファー部6は樹脂粒子6aと該樹脂粒子6aの表面にめっきにより形成された金属膜6bとにより構成されている。なお、トランスファー部6は上記構成の導電粒子(6a、6b)を上記シール部3と同じ材料からなる保持材料中に添加してディスペンサを使用して上記部位に対応する位置に形成されている。この保持材料により構成されたものを保持体9として示す。
ところで、図2および図3に示すように、トランスファー部6の肉厚、配線部4、および配線部50cの積算肉厚をt1とし、シール部3の肉厚をt2とした場合、t1>t2の関係を満足するように設定されている。このような関係により、図1に示すように、タッチパネルのガラス基板1aが、その外側に向けて凸状に膨らんだ太鼓状とされている。
一対のガラス基板1a、2aは、その透明導電膜1b、2bが対向するように且つそれらの間にギャップを介して空間部8が形成されるように、シール部3を介して重ね合わされて接着され、固定されている。
シール部3はタッチパネルの製造過程においては、ガラス基板2aの外周縁部、即ち透明導電膜2b、上下配線部5、配線枝部50b、50cの外側に配置されており、一個所に封入口3aが形成され、該封入口3aは封止剤30にて封止されている。
シール部3は65℃、95%Rhの条件において透湿率が4.12×10-12g・cm/cm・sec・cmHgの値を有する熱硬化型樹脂であるエポキシ樹脂から構成され、封止剤30は65℃、95%Rhの条件化における透湿率4.35×10-11g・cm/cm・sec・cmHgの値を有するUV硬化型のアクリル樹脂から構成されている.タッチパネルの外周をシールするシール部3の全長は約532mmであり、封入口3aは幅が4mmなので封止剤30の透湿率は無視できる。シール部3の内部には、図3に示すように、直径3μm程度のスペーサ粒子7、例えばシリカスペーサやガラスファイバーが混入してある。
なお、図1において、シール部3の肉厚は3μm、ガラス基板1a、2a間の最大ギャップは10μmに設定されている。
ところで、タッチパネル1のガラス基板1aの外側の表面には偏光板10が貼り付けてある。この偏光板10はタッチパネル1に入射しようとする外部光を減衰させるものである。なお、他方のガラス基板2aの外側の表面は空気に直接、露出している。
[実施形態1の変形例]
図7および図8は実施形態1の変形例を示すものであり、この変形例では一対のガラス基板1a,2aの間の空間部8が実施形態1のように膨らませていないものである点が実施形態1と相違するのみで、他の構成は実施形態と同じである。
変形例におけるシール部3、配線部4、5、配線枝部50a〜50eの相対的な位置は図7および図8に示すようである。図7は図8のVII−VII断面図であり、図8は一対のガラス基板1a、2aを重ね合わせた状態においてガラス基板1a側から見た投影図である。
[実施形態2]
図9〜図11は実施形態2を示すものである。この実施形態2においては、実施形態1における配線部4、5、配線枝部50b、50cをシール部3により覆われるように設定するようにしたものである点が実施形態1と相違するのみで、他の構成は実施形態と同じである。なお、実施形態2では、実施形態1のように、タッチ領域側のガラス基板1aの太鼓状の膨らみ形状の図示は省略してある。
具体的には、特に、図9および図10に示すように、配線部4、5、配線枝部50b、50cをシール部3内に埋め込むことにより、タッチパネルのタッチスイッチ領域外周に存在する配線部4、5、配線枝部50b、50cの領域およびシール部3の領域の面積を小さくしていわゆる狭額縁構造としたものである。
この実施形態2によれば、配線部4、5、配線枝部50b、50cの領域がシール部3の領域と重なるため、配線部4、5、配線枝部50b、50cとしての独立した領域を廃止することができる。
[実施例1]
次に、上記実施形態1のタッチパネルの製造方法について説明する。図12は製造方法の工程フローを示すもので、該工程フローを援用しながら説明する。工程Aにおいて、それそれ透明導電膜1b、2bが予め形成されたガラス基板1a(板厚0.4mm)とガラス基板2a(板厚1.1mm)を用意し、それぞれのガラス基板1a、1bに有機金属化合物を用いた配線部4、50a〜50e、端子部10a、10b、20a、20bをスクリーン印刷により印刷する。印刷後の厚みは約10μm程度とした。
ここで、有機金属化合物は脂肪酸銀とアミンとの配位構造物に有機酸が混合されたものから調整されている。具体的には、脂肪酸銀35%〜45%、ジヒドロターピネオール10%〜20%、1,2−ジアミノシクロヘキサン10%〜20%、シクロヘキサンカルボン酸10%〜20%、酢酸1%〜10%、無水フタル酸1%〜5%の組成から構成されている。脂肪酸銀はR−COOAgで示され、そのRはアルキル基から構成され、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、実施例では、ナミックス株式会社製の品名XE102−25を用いた。
次に、工程Bにおいて、配線部4、50a〜50e、端子部10a、10b、20a、20b、5が形成された各ガラス基板1a、2aを150℃で10分で乾燥後、280℃で60分で焼成する。これらの乾燥、焼成工程により脂肪酸銀の配位化合物が分解し、銀が析出する。また、アミンや有機酸、脂肪酸が分解ガスとして排出される結果、焼成後の配線部4、50a〜50e、端子部10a、10b、20a、20bの肉厚は断面方向において約1μmとなり、比抵抗は8×10-6Ω・cmとなった。
次に、工程Cにおいて、一方のガラス基板2aの外周囲に封入口3aを残してシール部3をスクリーン印刷により形成した。シール部3の材料は、65℃、95%Rhの条件において透湿率が4.12×10-12g・cm/cm・sec・cmHgの値を有する熱硬化型のエポキシ樹脂にシリカスペーサを混合させたものであり、本実施例では三井化学製の商品名ストラクトボンドXN−31A−Aに、宇部日東化成製の品名ハイプレシカN3N(粒径2.8μm)を0.8wt%添加したものを用いた。
工程Dでは、ガラス基板2aに、図5に示すように、トランスファー部6を形成した。このトランスファー部6は、樹脂粒子の表面に金めっきした構成の導電粒子(粒径3.5μm)2wt%を上記シール部3の材料に添加してなるトランスファー材をガラス基板2aにディスペンサを使用して塗布した。なお、導電粒子は、積水化学製のミクロパールAU−2035(金めっき)を用いた。
工程Eにおいて、一対のガラス基板1a、2aを重ね合わせ、工程Fにおいて、該一対のガラス基板1a、2aを治具により0.1〜3Kg/cmの圧力で押圧した。これにより、シール部3はその全周囲に亘って均一に厚み約3μmまで潰される。
工程Fを実行した後は一対のガラス基板1a、2aが互いに張り付いた状態となるため、ガラス基板1aから目視した状態ではニュートンリングが全面に発生していた。
そこで、工程Gにおいて、一対のガラス基板1a、2aの間に空気を注入する。即ち、シール材3の封入口3aから5Kg/cmの吐出圧に設定されたエアーを注入機(図示しない)を介してガラス基板1a、2a間の空間部8内に注入し、エアーの注入を停止する。これにより、張り付いた状態の一対のガラス基板1a、2aはエアーにより剥がれ、ニュートンリングが消失した。
このエアーを注入した後の状態は、図1のように、一対のガラス基板1a、2a間のギャップは中央部が大きく、周辺部が小さくなり、ガラス基板1aが太鼓状となった。なお、ガラス基板1aの板厚が薄いので、ガラス基板1a側が膨らんだ状態を示すが、この図1は膨らんだ状態を分かり易くするため、その状態を誇張して示している。
この太鼓状の形状は、前述したように、トランスファー部6の部分における積算肉厚t1とシール部3の肉厚t2との関係がt1>t2を満足することで達成される。なお、エアーの注入を停止した後でも図1の状態は維持されていた。
次に、工程Hにおいて、一対のガラス基板1a、2aを炉中(図示しない)に配置し、150℃で1時間、放置し、シール部3を熱硬化させた。なお、工程Hでは一対のガラス基板1a、2aのシール部材3の部分には圧力を付与しなかった。
シール部3の硬化が完了後に一対のガラス基板1a、2aを炉中から取出し、室温まで自然冷却後、一対のガラス基板1a、2aを調査した結果、シール部3が硬化する前の太鼓状の形状をそのまま維持していた。この時、ニュートンリングの発生は確認されなかった。
次に、工程Iにおいて、シール部3の封入口3aにはスリーボンド製のUV硬化型アクリル樹脂(3052B)からなる封止剤30を塗布し、UVを照射(積算光量1000mJ/cm)して該封止剤30を硬化した。以上の工程により、タッチパネルが完成する。
次に、各種実験例により、本発明の優位性を説明する。
[実験例1]
上述の工程A〜Iにより製造した、実施例1の構造を有するタッチパネルを65℃、95%Rhの高温、高湿環境下に放置したところ、1000Hr後においてもタッチパネルとしての正常な動作を示していた。タッチパネルを分解したが、一対のガラス基板間の空間部内には水分の侵入は認められず、透明導電膜、各配線部の腐食も認められなかった。
[比較例1]
従来例について、説明すると、基本的には図12に示した工程に基いてタッチパネルを製造したが、シール部の肉厚を20μmとし、各配線部を5μmの銀粒子を有する銀ペーストの焼成体とし、さらにトランスファー部を5μmの銀粒子を有するペースト状物をディスペンサーにて塗布した点が実施例1と相違するのみである。
この比較例1によるタッチパネルを実験例1と同様に65℃、95%Rhという高温高湿環境下に放置した結果、400Hrでタッチパネルの動作不良が発生した。このタッチパネルを分解したところ、一対のガラス基板の透明導電膜、各配線部に部分的に腐食が認められた。このことは、一対のガラス基板間の空間内に水分が侵入したことを物語っている。
[実験例2]
タッチパネルのタッチ領域側のガラス基板の動作荷重を20gf〜200gfに設定した場合において、そのタッチ領域側のガラス基板の板厚とシール部の肉厚との関係で動作荷重がどのように変化するかを実験した。その結果を図13〜図15に示す。
実験に供したタッチパネルは実施例1の製造方法により製造したものであり、サイズとしては対角6インチサイズとした。
図13〜15は、そのタッチパネルにおいて、横軸にシール部の肉厚を、縦軸にその時の動作荷重をプロットし、タッチ領域側のガラス基板の板厚を0.2mm、0.4mm、0.55mmに設定した場合、その動作荷重がシール部の肉厚によって、どのように変化するかを示したグラフである。
なお、動作荷重の上限と下限の規格は、特開平10−133817号公報に開示されている動作荷重の上限値(200gf)と車載環境における誤動作限界値20gfを下限値とした。(110gf±90gf)
図13によれば、ガラス基板の板厚を0.2mmに設定した場合は、動作荷重20gf〜200fgを得るには、シール部の肉厚がμm〜8μmであることがわかる。つまり、動作荷重が最大となるシール部近傍が200gf以下で、動作荷重が最小となるタッチエリア中央領域が20gf以上となるギャップがμm〜8μmであるということである。
図14はタッチ領域側のガラス基板に板厚0.4mm、ヤング率730000kgf/cmのソーダガラス基板と、板厚0.4mm、ヤング率約750000kgf/cmの無アルカリガラス基板とを使用した場合の結果である。図14から理解されるように、シール部の肉厚が8μm以下であれば、動作荷重の上限値と下限値とを共にほぼ満足出来ることがわかる。
図15はガラス基板の板厚を0.55mmに設定した場合の結果である。動作荷重の上限値が200gfを下回るためにはシール部の肉厚を1μm以下にする必要があり、製造過程で発生した異物等による一対のガラス基板の各透明導電膜のショートや、ニュートンリング等の不具合が発生するため、実現不可であることがわかる。
なお、ガラス基板の肉厚が0.3mmのデータが無いが、原理的には0.2mmと0.4mmの中間に位置することが予測できるため、実験していない。
また、図13〜図15の結果はタッチパネルが6インチサイズのものであるが、動作荷重が若干上下(タッチパネルサイズが小さくなると高く、大きくなると小さく)するもののタッチパネルサイズが4インチ〜8インチの範囲内においては、大きく変化せず6インチサイズの結果を適用できる事は確認済みである。
[実施例2]
実施例2は実施例1のシール部および封止剤の材料として、UV照射より短時間で硬化するアクリル変性のエポキシ接着剤(透湿率8.26×10-12g・cm/cm・sec・cmHg)を使用した点が異なるのみで、実施例1と同様な製造方法によりタッチパネルを製造した。
その結果、65℃、95%Rhの高温高湿の環境下で、1000Hr後においても実施例1のタッチパネルと同様に問題ないことを確認した。
なお、UV硬化型接着剤の接着力は、接着面の清浄度に敏感である(汚れ程度により、接着力が敏感に変化する)ため、実施例1のように、熱硬化型のエポキシ接着剤を使用することが好ましい。
[実施例3]実施例3はシール部3の透湿率について測定したものである。結果を表1に示す。表1の材料を65℃、95%Rhの条件に放置した場合、透湿率が最も低い値を示すのは熱硬化型エポキシ系であることがわかる。
Figure 0004207948
表1において、透湿率は以下の式により求められるものである。
[数1]
Δw=k(bc/a)・(Pout−Pin)Δt
ここで、Δwは透湿量を示し単位はg・cm、kは透湿率を示し単位は上記表1参照、a、b、cは例えば図5におけるシール部3の幅a(シール部を平面から見た場合の幅)、肉厚b、長さc(シール部の全周の長さ)を示し単位はcm、(Pout−Pin)はタッチパネルの外側空間と内側空間との水分圧を示し単位はcmHg、Δtは時間の差を示し単位はsecである。
タッチパネルの一対のガラス基板が或る断面積のシール部で接着された場合において、タッチパネルの空間部と外側の水分圧がそれぞれPin、Poutの場合に、その空間部内に入ってくる水分量が上記式で求まる。この式から理解されるように、水分量はシール部の肉厚b×シール部の長さcに比例し、幅aに反比例することが理解できる。従って、cとaを固定した場合、シール部の肉厚bに比例することになり、シール部の肉厚bがタッチパネルの空間部内に侵入する水分量に支配的にかかわっていることが理解できる。
[実施例4]
実施例4は実施形態2の製造方法を示すものである。製造工程は図12に示した実施形態1の製造方法と同様であるが、変更点は工程Aの配線材の印刷位置と工程Cのシール材の印刷形状である。以下の説明は、この変更点についてのみ行う。
即ち、工程Aにおいては、配線材の位置は、シール材の印刷位置とした。
次に工程Cにおけるシール材の形状は図10に示すように、基板1a、2aを重ね合わせた時に配線材の幅を完全に覆うような形状とした。
具体的には、図11のように、配線材の両脇にシール材を印刷し、基板1a、2aを重ね合わせた時に配線材の幅を完全に覆うような形状となるように印刷した。配線材上にシール材を印刷すると、トランスファー材が他方の基板との接続を行うための接触部にシール材が入り込み、基板1a、2a間の電気的接続が行われなくなる不具合が発生する。
本実施例4では配線材の両脇にシール材を印刷し、工程Eにて重ね合わせた時、シール材が潰れて配線材を覆うような構造とした(図11)。
このように、配線材とシール材との印刷位置を調整した後、実施例1と同様に図12の工程を実施した。
この実施例4により製造されたタッチパネルを実施例1と同一の高温、高湿環境下に放置したところ、実施例1と同一の結果が得られた。
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されず、各配線部、端子部を構成する有機金属化合物の金属としてはAgを用いたが、Au、Cuであっても勿論よい。
また、有機金属化合物を含む調合材としては、有機金属化合物、アミン、有機酸の組合せを包含するものであればよく、有機金属化合物が脂肪酸と金属との結合されたものに限定されるものではない。
また、一対のガラス基板1a、2a間に注入するガス体としては、エアーの他に不活性ガスでも勿論よい。
タッチパネルの実施形態1を示し、図6のI−I断面図である。 実施形態1の要部であるトランスファー部と配線部との接続関係を示す断面図である。 実施形態1の他の要部であるシール部の部分を示す断面図である。 実施形態1のタッチ領域側のガラス基板の平面図である。 実施形態1の他方のガラス基板の平面図である。 図4のガラス基板と図5のガラス基板とを重ね合わせた状態を示す平面図である。 実施形態1の変形例を示し、図8のVII−VII断面図である。 実施形態1の変形例を示す平面図である。 実施形態2を示し、図10のIX−IX断面図である。 実施形態2の平面図である。 実施形態2の製造方法の説明に供する断面図である。 実施例1の製造方法の説明に供する工程図である。 実験例2の説明に供するグラフである。 実験例2の説明に供するグラフである。 実験例2の説明に供するグラフである。 実施形態1のタッチパネルを液晶表示器に配置した状態を示す概念図である。
符号の説明
1 タッチパネル
1a ガラス基板
1b 透明導電膜
2a ガラス基板
2b 透明導電膜
3 シール部
4 配線部
5 配線部
6 トランスファー部
6a 樹脂粒子
6b 金属膜
8 空間部
50a 配線枝部
50b 配線枝部
50c 配線枝部
50d 配線枝部
50e 配線枝部
D 液晶表示器

Claims (8)

  1. 透明導電膜を配設した一対の透明ガラス基板を備え、該一対のガラス基板がそれらの間に空間部が形成されるように前記透明導電膜側にて互いに対向するように配置されるとともに、シール部を介して接合された構成を有する自動車用タッチパネルにおいて、
    前記タッチパネルは自動車用ナビゲーション装置に適用可能な長方形であって、その対角のサイズは4インチ〜8インチの範囲であり、
    前記一対のガラス基板のうち一方のガラス基板がタッチ領域を備えており、該一方のガラス基板の板厚が0.3mm以上0.4mm以下に設定され、
    前記一方のガラス基板のヤング率が730000Kgf/cm以上750000Kgf/cm以下であって、
    前記シール部の肉厚が8μm以下(0は含まない)に設定され、
    前記一対のガラス基板のそれぞれの前記透明導電膜が前記配線部との接続部を除く全面にて前記一対のガラス基板間に形成された空間部内に直接露出しており、
    前記一対のガラス基板のうち前記タッチ領域を有する前記一方の基板が、前記シール部周辺から見て中央部が7μm高い、その外側に向けて凸状に膨らだ形状を有しており、
    前記シール部は、エポキシ樹脂にシリカスペーサやガラスファイバーのスペーサ粒子(7)を混入して構成され、
    前記エポキシ樹脂は、透湿率が、65℃、95%Rhの条件下において、8×10−12g・cm/cm・sec・cmHgを超えない値を示すエポキシ樹脂であって、
    前記スペーサ粒子(7)は、動作荷重が最大となるシール部近傍の動作荷重を200gf以下とし、動作荷重が最小となるタッチエリア中央領域の動作荷重を20gf以上とするために、前記ガラス基板の板厚が0.3mmの場合には前記シール部の肉厚を4μm〜8μmに設定し、前記ガラス基板の板厚が0.4mmの場合には前記シール部の肉厚が2μm〜8μmに設定する前記ガラス基板の板厚と前記シール部の肉厚との関係により示される前記シール部の肉厚を規定するスペーサ粒子であることを特徴とする自動車用タッチパネル。
  2. 前記エポキシ樹脂が熱硬化型であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用タッチパネル。
  3. 前記一対のガラス基板の何れか一方のガラス基板の前記透明導電膜に接続された配線部と、他方のガラス基板に形成された配線部と、該両配線部の間に配置されて該両配線部どうしを電気的に接続するトランスファー部とを有しており、該両配線部、前記トランスファー部は前記一対のガラス基板の間において前記シール部よりも内側に位置しており、前記トランスファー部と前記両配線部との積算肉厚t1と前記シール部の肉厚t2との関係が、t1>t2の関係を満足することを特徴とする請求項1〜2の何れか1つに記載の自動車用タッチパネル。
  4. 前記t1>t2の関係を満足することにより、前記一対のガラス基板のうち前記タッチ領域を有する前記一方の基板が、その外側に向けて凸状に膨らんだ形状を有していることを特徴とする請求項3に記載の自動車用タッチパネル。
  5. 前記トランスファー部が、樹脂粒子と該樹脂粒子の表面にめっきされた金属膜とを有する導電粒子から構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の自動車用タッチパネル。
  6. 前記配線部が前記シール部により覆われていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の自動車用タッチパネル。
  7. 前記配線部が有機金属化合物の焼成体により構成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載の自動車用タッチパネル。
  8. 前記ガラス基板の板厚が0.4mmであり、前記シール部の肉厚が3μmであることを特徴とする請求項1〜7の何れか1つに記載の自動車用タッチパネル。
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