以下に、添付図面を参照しながら本発明のシート搬送装置を詳細に説明する。
図1は給紙機構に本発明のシート搬送装置を適用したデジタル複写機の縦断面図である。この複写機Uは、原稿画像を光学的に読み取って電気信号としての画像データに変換する画像読取部(IIT)10と、前記画像データに基づいて記録シート上に記録画像を形成する画像出力部(IOT)30とから構成され、更に、前記画像読取部10には複数枚の原稿を連続的に読み取るための自動原稿搬送装置11が装着されている。
前記画像読取部10は原稿台としてのプラテンガラス12を備えており、前記自動原稿搬送装置11はこのプラテンガラス12を覆うプラテンカバーとして機能している。この画像読取部10はプラテンガラス12の下に露光光学系13を備えると共に、固体撮像素子であるCCDセンサ14を備え、プラテンガラス12上にセットされた原稿Dの反射光を露光光学系13を介してCCDセンサ14の撮像面上に結像させるように構成されている。前記露光光学系13は、プラテンガラス12の下面に沿って移動しながら原稿画像を露光走査するランプキャリッジ15と、原稿画像の反射光を前記CCDセンサ14に導くためのミラーキャリッジ16とを備え、縮小光学系を構成している。
前記自動原稿搬送装置11は複数枚の原稿Dが重ねて載置される原稿給紙トレイ17を有すると共に、読取が完了した原稿を排出するための原稿排出トレイ18を有しており、前記原稿給紙トレイ17から原稿排出トレイ18へ至る原稿搬送経路19の途上において、前記原稿Dがプラテンガラス12上の読取位置を通過するように構成されている。
前記露光光学系13はランプキャリッジ15及びミラーキャリッジ16の位置を検出するためレジセンサ20を有しており、レジセンサ20の検出信号によって各キャリッジ15,16を図1に示すホームポジションに設定することが可能と,なっている。前記自動原稿搬送装置11を使用して原稿画像の読取を行う所謂ADFモードの場合、前記ランプキャリッジ15及びミラーキャリッジ16はホームポジションに設定され、原稿給紙トレイ17から原稿排出トレイ18へ原稿Dを搬送しながら、かかる原稿画像の走査を行う。一方、自動原稿搬送装置11を使用することなく、ユーザが原稿Dを一枚ずつプラテンガラス12上に置いて複写作業を行う所謂プラテンモードの場合、ランプキャリッジ15及びミラーキャリッジ16がプラテンガラス12の下を移動しながら原稿画像の走査を行う。原稿画像から得られた反射光はCCDセンサ14に入射し、このCCDセンサ14で電気信号としての読取画像信号に変換される。
一方、前記複写機Uは、前記画像読取部10又は画像出力部30に設けられた画像処理部21と、ユーザが複写作業に関する情報等を入力し、あるいはこの複写機Uの状態に関する情報等が表示されるユーザインタフェース22とを有している。
前記画像処理部21は、前記CCDセンサ14から入力された読取画像信号をデジタルの画像書込信号に変換して画像出力部30のレーザ駆動信号出力装置23に出力する。このレーザ駆動信号出力装置23は、入力された画像書き込み信号に応じたレーザ駆動信号をラスタ走査装置(ROS)24に出力する。前記画像処理部21、前記レーザ駆動信号出力装置23、電源回路E等は、コンピュータにより構成されたコントローラ50により作動を制御される。
前記ラスタ走査装置24の下方に配置された感光体ドラム31は、矢印A方向に回転する。前記感光体ドラム31の表面は帯電ロール32により例えば−700Vに帯電された後、前記ラスタ走査装置24から発せられたレーザビームLにより露光走査される。これにより、感光体ドラム31の表面には画像書き込み信号に応じた例えば−300Vの静電潜像が形成される。
次に、静電潜像が書き込まれた感光体ドラム31の表面は現像器33の対向位置を通過する。この現像器33はトナー及びキャリアから構成される二成分現像剤を有しており、かかる現像剤を現像ロール33aに磁気吸着して感光体ドラム31の対向位置へと搬送し、感光体ドラム31の表面に形成された静電潜像をマイナス極性に帯電したトナーで現像する。これにより、感光体ドラム31の表面には静電潜像を可視像化したトナー像Tnが形成される。
このようにしてトナー像Tnが形成された感光体ドラム31の表面は、次に記録シートPの搬送経路に面したトナー像Tnの転写位置へ進行する。この転写位置には前記感光体ドラム31と接触するようにして転写ロール34が配置されている。この転写ロール34にはトナーの帯電極性と逆極性の転写電圧が電源回路Eから供給されており、前記トナー像Tnは感光体ドラム31と転写ロール34との間に形成された転写電界によって記録シートPに転写される。前記帯電ロール32に印加する帯電バイアス、現像ロール33aに印加する現像バイアス、転写ロール34に印加する転写バイアス等の電圧は、前記電源回路Eによって供給される。
画像出力部30の下部には第1給紙トレイ60及び第2給紙トレイ61が上下に並んで配置されている。前記第1給紙トレイ60及び第2給紙トレイ61の右端部の上方には送出部材としてのピックアップロール4が配置されており、このピックアップロール1により各給紙トレイ60,61から送り出された記録シートPは給紙トレイ60,61の右側に設けられた給紙機構1を経て第1シート搬送路S1に搬送される。
各給紙機構1は、回転給紙部材としての給紙ロール2と、この給紙ロール2に圧接してニップ部を形成する回転分離部材としての分離ロール3と、前記ピックアップロール4とを有している。前記ニップ部Nに搬送された記録シートPは給紙機構1の作用により1枚づつに分離され、第1シート搬送路S1に送り出される。第1シート搬送路S1は画像出力部30の右側面に沿って上下に延びており、かかる第1シート搬送路S1には搬送ロール62が配置されている。第1シート搬送路S1に送り出された前記シートSは搬送ロール62により、トナー像Tnの転写位置直前の第2シート搬送路S2に搬送される。
前記第2シート搬送路S2にはレジストレーションロール(以下、「レジロール」という)63が配置されており、第1シート搬送路S1から搬送されてきた記録シートPは停止中のレジロール63に突き当たって一時的に係止され、これによって搬送途中によって発生した記録シートPのスキューが改善される。レジロール63はトナー像Tnが転写位置に移動するタイミングに同期した所定のタイミングで回転を開始し、記録シートPは転写前シートガイド64を経て転写位置に搬送される。これにより、記録シートP上の所定の位置にトナー像を転写することができる。
トナー像Tnを記録シートPに転写した後、感光体ドラム31の表面はドラムクリーナ35によって清掃され、転写残留トナーは感光体ドラム31の表面から除去される。また、クリーニング後の感光体ドラム31の表面は除電ランプ36によって一様に露光され、電位履歴の消去が行われた後、前記帯電ロール32により再帯電され、同一のプロセスを経て次のトナー像Tnの形成が行われる。
トナー像Tnの転写がなされた記録シートPは、第3シート搬送路S3を経て定着器65へと搬送される。この第3シート搬送路S3には、トナー像の転写によって帯電した記録シートPを除電して感光体ドラム31からの剥離を促進するシートガイド66と、トナー像転写済みの記録シートPを定着器65へ受け渡すためのシート搬送ベルト67とが設けられている。
定着器65へ搬送された記録シートPは該定着器65を通過する間にトナー像Tnの加熱定着がなされる。定着器65を通過した記録シートPはシート排出路S4を通過した後、画像出力部30の上部に設けられた排紙トレイ68に排出される。前記定着器65とシート排出路S4との接続部には切替ゲート69が配置されており、この切替ゲート69は定着器65を通過した記録シートPを前記シート排出路S4又は両面用接続路S5のいずれか一方へ選択的に導く。
前記両面用接続路S5は前記定着器65と第1シート搬送路S1とを接続しており、定着器65によってトナー像Tnの定着がなされた記録シートPを第1シート搬送路S1に送り込むように構成されている。記録シートPの両面に記録画像を形成する所謂両面コピーの場合、1面目のトナー像が記録された記録シートPは、前記切替ゲート69により両面用接続路S5に導かれ、前記シート搬送路S1に設けられた搬送ロール62を逆転させることによって、かかる第1シート搬送路S1に先端から送り込まれる。そして、記録シートPの後端が第1シート搬送路S1に入り込んだ時点で、前記搬送ロール62は回転を逆転させ、かかる記録シートPを第2シート搬送路S2に送り込む。すなわち、この実施例の複写機では、第1シート搬送路S1が記録シートPを反転させるためのインバータ通路を兼ねている。このようにして第2シート搬送路S2に再送された片面記録済みの記録シートPはトナー像Tnの転写位置に再送され、1面目と同様にして2面目にもトナー像Tnが転写される。
図2及び図3は前記給紙機構1の説明図である。前述の如く、この給紙機構1は給紙ロール2、分離ロール3及びピックアップロール4を有しており、分離ロール3を給紙ロール2に圧接させることで、両ロールの間にニップ部Nが形成されている。給紙ロール2及びピックアップロール4は同一の給紙モータ(図示せず)によって駆動されており、給紙トレイ60又は61内の記録シートPを第1シート搬送路S1に送り出す方向へ回転する。
一方、分離ロール3は分離モータ8によって記録シートPを給紙トレイ60又は61へ戻す方向へ回転している。前記給紙モータは所定の回転トルクを給紙ロール2に対して与えているが、分離モータ8は電磁クラッチ80を介して分離ロール3と連結されており、前記ニップ部Nにおける記録シートPの搬送状況に応じて電磁クラッチ80の伝達トルクの上限値を制御することで、分離ロール3に与える回転トルクを自在に変更し得るようになっている。
給紙ロール2の回転軸とピックアップロール4の回転軸はリンクレバー5によって連結されており、かかるリンクレバー5は前記回転軸を中心として揺動するように構成されている。このリンクレバー5は引張バネ(図示せず)によって下方に向け付勢されており、前記ピックアップロール4が給紙トレイ60又は61内にセットされた記録シートPに対して上方から圧接するようになっている。また、給紙トレイ60,61内には記録シートをピックアップロール4に向けて上昇させるボトムプレート40が設けられており、給紙トレイ60,61内の最上位の記録シートがピックアップロール4に接触し、前記リンクレバー5が所定の高さまで持ち上げられると、前記ボトムプレート40の上昇が停止するように構成されている。これにより、給紙トレイ60,61内で最上位に位置する記録シートPは常に略同一の高さでピックアップロール4と圧接している。
前記給紙モータを回転させると、ピックアップロール4が回転し、給紙トレイ60,61内の最上位の記録シートPを給紙ロール2と分離ロール3のニップ部Nに向けて送り出す。ピックアップロール4は電磁クラッチ(図示せず)を介して給紙モータと結合されると共にワンウェイクラッチを内蔵しており、記録シートPの先端が前記ニップ部Nに挿入された後は、電磁クラッチによって給紙モータから切り離される。これにより、記録シートPは給紙ロール2の回転によって搬送されると共に、ピックアップロール4は記録シートPの搬送に従動し、記録シートPの後端が通り抜けた時点で次の記録シートに接して停止するようになっている。
ピックアップロール4が給紙トレイ60,61内の記録シートPに対して過度に強く圧接すると、ピックアップロール4が回転した際に、かかるピックアップロール4が接している最上位の記録シートPだけではなく、最上位記録シートに引きずられて2枚目の記録シートも給紙トレイ60,61からニップ部Nへ送り出されてしまう。このような記録シートPの重送を防止するためには、給紙トレイ60,61内にセットされた記録シートPの種類等に応じ、かかる記録シートPに対するピックアップロール4の圧接力を最適に調整する必要がある。このため、図示はしないが、前記引っ張りバネ5aの付勢力の調整機構が設けられており、記録シートPの重送の発生頻度に応じて該付勢力を調整することができるようになっている。
一方、分離ロール3の回転軸は支軸6a周りに揺動可能な回動アーム6に支持されている。分離ロール3は前記回動アーム6の一端に支持されており、他端には該回動アーム6を下方へ向けて付勢する引っ張りバネ6bが連結されている。これにより、分離ロール3は上方へ向けて付勢され、前記給紙ロール2に圧接している。また、前記引っ張りバネ6bの下端はニップ圧調整モータ6eの出力軸に固定されたアーム6cに接続されている。従って、ニップ圧調整モータ6eの回転量を制御することにより、引っ張りバネ6bの付勢力を変化させることができ、分離ロール3の給紙ロール2に対する圧接力、すなわちニップ部Nにおけるニップ圧を自在に調節することが可能となっている。
前記ニップ部Nの下流側にはシートセンサSN1が配置されており、給紙ロール2と分離ロール3との間に挿入された記録シートPの先端を検出することができるようになっている。すなわち、シートセンサSN1の検出信号をチェックすれば、記録シートPの先端がニップ部Nを所定量進行したか否かを判断することができる。
また、前記分離ロール3の回転軸にはロータリエンコーダ3aが取り付けられており、このロータリエンコーダ3aの出力信号を速度演算器3bが取り込み、分離ロール3の回転速度を検出するように構成されている。前記ピックアップロール4の回転によって給紙トレイ60内の記録シートPが引き出されてニップ部Nに送られる際、最上位の記録シート(1枚目記録シート)P1に引きずられて2枚目記録シートP2もニップ部Nに突入してしまう場合、ニップ部Nにおいて2枚目記録シートP2が1枚目記録シートP1に引きずられて進行すると、2枚目記録シートP2の進行に合致して分離ロール3が回転することになる。従って、このようにして分離ロール3の回転速度を検出すれば、1枚目記録シートP1と重送されている2枚目記録シートP2のニップ部Nにおける進行速度を把握することができる。すなわち、これらロータリエンコーダ3a及び速度演算器3bの組み合わせが本発明の重送速度検出器SN2に相当する。
更に、ニップ部NとシートセンサSN1の検知部位の間には、ニップ部Nに突入した記録シートPの枚数が1枚か複数枚かを検出するための枚数検知センサSN3が設けられている。この枚数検知センサSN3としては、例えば、記録シートの搬送経路を挟んで超音波発信機、超音波受信機を設け、受信機の出力信号の違いに基づいて記録シートの重送を判断するもの(特開2000−95390号公報)や、記録シートの搬送経路を挟んで設けられた一対の電極の間における静電容量の変化から記録シートの重送を判断するもの(特開平11−301855号公報)を用いることができる。
前記枚数検知センサSN3としては、図4に示すように機械的な接触によってニップ部に突入した記録シートの厚みを検知するものであっても良い。具体的には、給紙ローラ2よりも記録シートPの搬送方向の下流側において1枚目記録シートP1の表面に接するベース部材52と、先端が前記ベース部材52に向けて付勢される共に支軸53を中心に揺動自在な検出アーム54と、この検出アーム54の変位量を計測する変位計55とから構成されており、ニップ部Nに突入した記録シートPの厚み、すなわち枚数に応じて検出アーム54を揺動させ、かかる検出アーム54の変位量を測定することによって、ニップ部Nに存在する記録シートPの枚数を把握している。また、検出アーム54の変位量を変位計55で測定するのではなく、図5に示すように、検出アーム54の支軸にロータリエンコーダ56を取り付け、かかるロータリエンコーダ56の出力信号から検出アーム54の揺動角度、すなわちニップ部Nに存在する記録シートPの厚みを把握するように構成することもできる。更に、分離ロール3もニップ部に突入する記録シートの枚数に応じて上下動することから、かかる分離ロール3を支持している回動アーム6の変位量を変位計によって計測し、それによってニップ部Nに存在する記録シートPの枚数を把握するように構成することもできる。
前記シートセンサSN1、重送速度検出センサSN2及び枚数検知センサSN3の出力信号は分離力コントローラ51に入力される。この分離力コントローラ51は前記コントローラ50の一部として構成されており、外部との信号の入出力および入出力信号レベルの調節等を行う図示外の入出力インターフェース、必要な処理を行うためのプログラム及びデータ等が記憶されたROM(リードオンリーメモリ)、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM(ランダムアクセスメモリ)、前記ROMに記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU(中央演算処理装置)、並びにクロック発振器等を備えており、前記ROMに記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現するようになっている。また、分離力コントローラ51には前記給紙モータ、分離モータ8、分離モータ8と分離ロール3とを結合する電磁クラッチ80、ニップ圧調整モータ6eが接続されており、これら機器に対して制御信号を出力している。
次に、この給紙機構における記録シートの給紙動作の第1制御例について説明する。
図6は給紙動作の第1制御例の処理手順を示すフローチャートである。先ず、コントローラCはユーザインターフェイス22の出力信号をチェックすることにより、かかるユーザインターフェイス22の操作パネル内に設けられたコピーボタンが押圧されたか否か、すなわちコピージョブの開始が指令されたか否かをチェックする。コピージョブの開始が指令されたと判断したら、記録シートPの給紙タイミングが到来したか否かをチェックし、給紙タイミングであると判断した場合には給紙モータ及び分離モータ8の駆動開始を指示する。これにより、給紙モータ7及び分離モータ8が回転を開始する。
給紙モータが駆動を開始すると、給紙ロール2及びピックアップロール4が回転を開始し、給紙トレイ60又は61内にセットされた記録シートPのうち、最上位の記録シートP1はピックアップロール4によって給紙トレイ60又は61から送り出され、給紙ロール2と分離ロール3とが圧接するニップ部Nに送り込まれる。ここまでの動作が図6のST1における「分離搬送開始」に対応している。
尚、ピックアップロール4の記録シートP1に対する圧接力は、かかるピックアップローラ4の回転によって常に複数枚の記録シートPが給紙トレイ60からニップ部Nに向けて引き出される程度に設定しておくのが好ましい。1枚目の記録シートP1がニップ部Nを通過する際に、2枚目の記録シートP2の先端がニップ部Nの直前まで引き出されていた方が、2枚目記録シートP2の給紙遅れを低減することができ、また、給紙ミスを減らすためにも有効だからである。
次に、コントローラCはシートセンサSN1の出力信号をチェックし、給紙トレイ60又は61から送り出された記録シートP1の先端が給紙ロール2と分離ロール3のニップ部Nに挿入されたか否かをチェックする(ST2)。前記シートセンサSN1はニップ部Nよりも記録シートP1の搬送方向下流側に設けられていることから、かかるシートセンサSN1の出力信号が変化したということは、図2に示すように、記録シートP1の先端がニップ部Nに突入し、更に枚数検知センサSN3を通過したことを意味する。コントローラCはシートセンサSN1の検出信号の変化から、記録シートP1の先端部がニップ部Nを通過したと判断したら、電磁クラッチに制御信号を送出し、ピックアップロール4を給紙モータから切り離す。これより後、ピックアップロール4は1枚目の記録シートP1の搬送に従動して回転する。説明の便宜上、シートセンサSN1の出力信号が変化したタイミングをt1とする。
また、この時間t1において、前記コントローラCの一部を構成する分離力コントローラ51は枚数検知センサSN3の出力信号を参照し、ニップ部Nに2枚以上の記録シートPが存在するか否かをチェックし(ST3)、存在すると判断される場合には重送速度検出センサSN2の出力信号VRを取り込み(ST4)、この出力信号VRが所定値V1を超えていないか否かをチェックする(ST5)。前記分離力コントローラ51が重送速度検出センサSN2の出力信号を取り込む前に枚数検知センサSN3の出力信号を参照するのは、仮に1枚目記録シートP1のみがニップ部Nに存在するような場合には、重送速度検出センサSN2の出力信号は1枚目記録シートP1の搬送速度を示していることになるからである。すなわち、分離ロール3の回転速度が2枚目記録シートP2の進行速度を表しているのは、ニップ部Nに2枚の記録シートP1,P2が存在する場合であり、重送速度検出センサSN2の出力信号のみからでは、ニップ部Nに存在する記録シートの枚数を判断することができないからである。
図7は、ニップ部Nに2枚の記録シートP1,P2が存在する場合に、分離ロール3に接している2枚目記録シートP2の進行速度と、この2枚目記録シートP2が1枚目記録シートP1と共にニップ部Nを抜けてしまう所謂重送の発生頻度との相関関係を示すグラフである。この場合の2枚目記録シートP2の搬送速度は、1枚目記録シートP1の先端がシートセンサSN1によって検出されたタイミングで計測している。グラフ中の各点は記録シートの種類、分離ロール3の圧接力、分離ロール3の逆方向回転トルク等の各種パラメータを変化させて行った結果を示している。ここで、グラフ中央に縦に引かれた実線よりも左側の領域A1は、2枚目記録シートP2が1枚目記録シートP1とずれることなく搬送される所謂完全重送が発生している領域であり、2枚目記録シートP2のニップ部Nにおける進行速度は給紙ロール2による1枚目記録シートP1の搬送速度と同じである。また、前記実線よりも右側の領域A2は1枚目記録シートP1と2枚目記録シートP2の分離が行われる領域であるが、この領域A2内でも2枚目記録シートP2の進行速度が1枚目記録シートP1の搬送速度に接近してくると、重送頻度が増加すしてくる傾向にある。一方、重送速度検出センサSN2によて検出された2枚目記録シートP2の進行速度が十分に小さく、あるいは分離ロール3の逆方向回転によって1枚目記録シートP1とは逆方向へ働いている場合には、重送頻度が著しく小さくなっている。従って、2枚目記録シートP2の搬送速度が一定の速度(例えばV1)よりも小さければ、重送は発生しないものと判断することができる。
このことから、前記ST5において重送速度検出センサSN2の出力信号VRをチェックし、その出力信号VRが所定値V1を超えていないと判断される場合には、2枚目記録シートP2のニップ部Niおける進行速度が小さく、かかる2枚目記録シートP2がそのまま1枚目記録シートP1と共に重送されてしまう可能性がないことから、そのまま給紙ロール2を回転させて記録シートP1の給紙を続行する。
一方、図8に示すように、時間t1において重送速度検出センサSN2の出力信号VRが所定値V1を超えていると判断される場合には、前述の如く、そのまま1枚目記録シートP1の給紙を続行すると、2枚目記録シートP2も一緒に第1シート搬送路SH1に搬送されてしまい、重送が発生してしまう可能性が高い。このため、分離力コントローラ51は電磁クラッチ80の上限伝達トルクを制御し、分離モータ8から分離ローラ3に伝達される逆方向の回転トルクTrを増強する。あるいは、分離力コントローラ51はニップ圧調整モータ6eを僅かに回転させ、分離ロール3が2枚目記録シートP2の裏面に圧接する力F0を減じる(ST6)。分離モータ8から分離ローラ3に伝達される逆方向回転トルクTrを増強すれば、2枚目記録シートP2を給紙トレイ60の方向へ押し戻す力が増強され、その分だけ1枚目記録シートP1と2枚目記録シートP2との間に作用する分離力を増強することができる。また、分離ロール3の圧接力F0を減じると、1枚目記録シートP1と2枚目記録シートP2との間に作用する摩擦力が減少するので、やはり1枚目記録シートP1と2枚目記録シートP2との間に作用する分離力を増強することができる。
図6のST5において、分離力コントローラは分離ローラ3の逆方向回転トルクTrの増強を行っても良いし、分離ロール3の圧接力F0を減少させても良いし、これら双方を行うようにしても良い。
これにより、2枚目記録シートP2が1枚目記録シートP1に引きずられて第1シート搬送路に重送されてしまうのを効果的に防止することができるものである。なによりも、実施中の給紙動作に関して記録シートの重送が発生する可能性を判断し、1枚目記録シートと2枚目記録シートとを分離させるための制御パラメータを即座に変更することができるので、重送の発生を確実に防止することが可能となる。また、ニップ部Nにおける2枚目記録シートP2の進行速度を検出することにより、給紙動作の実施と同時に重送発生の可能性を判断しているので、重送発生の可能性が低いにもかかわらず、むやみに分離力の制御パラメータを変更してしまうことはなく、その分だけ給紙ロール2に対する負荷を低減することができると共に、給紙動作の安定化を図ることが可能となる。
このようにして重送を防止しつつ、1枚目の記録シートが第1シート搬送路SH1に搬送されたなら、コントローラCは1枚目記録シートP1の後端がニップ部Nを抜け出たか否かを判断し、抜け出たと判断される場合には給紙モータ7及び分離モータ8の停止を指令する。これにより給紙機構における記録シートの分離搬送は完了する(ST7)。この後、コントローラCはコピージョブが終了したか否かをチェックし、終了してないと判断される場合には次の記録シートPの給紙を繰り返す。
図9は給紙動作の第2制御例の処理手順を示すフローチャートである。
前述の第1制御例では、ニップ部Nに突入した1枚目記録シートP1の先端がシートセンサSN1によって検出されたタイミング、すなわち時間t1でのみ重送速度検出センサSN2の出力信号をチェックし、このタイミングでニップ部Nにおける2枚目記録シートP2の進行速度VRが所定値V1以下である場合には、分離ロール3の逆方向回転トルクTrの変更も、分離ロール3の圧接力F0の変更も行わなかった。しかし、時間t1以降でニップ部Nにおける2枚目記録シートP2の進行速度VRが所定値V1を超えてしまう場合もあり、そのような場合も2枚目記録シートP2が1枚目記録シートP1と共に重送されてしまう可能性は高い。
このため、この第2制御例では、シートセンサSN1がニップ部Nを通過した記録シートP1の先端を検出した後、記録シートP1の後端がニップ部Nを抜け出たと判断されるまでの間、所定の時間間隔で重送速度検出センサSN2の出力信号を繰り返しチェックし、重送速度検出センサSN2の出力信号VRが所定値V1を超えたと判断されたならば、第1制御例と同様に、分離力コントローラ51が分離ローラ3の逆方向回転トルクTrの増強、あるいは分離ロール3の圧接力F0の減少を行うように構成した。
具体的には、給紙トレイ60内の記録シートPが引き出されて、かかる記録シートP1の分離搬送が開始され(ST1)、ニップ部Nに突入した後に該記録シートのP1の先端がシートセンサSN1によって検出される(ST2)までは、前述した第1制御例と同じである。この後、コントローラ50は1枚目記録シートP1の後端がニップ部Nを抜け出たか否か、すなわち1枚目記録シートP1と2枚目記録シートP2の分離動作が完了したか否かをチェックし(ST8)、完了していないと判断される場合は、枚数検知センサSN3の出力信号を参照して、ニップ部Nに2枚以上の記録シートが存在するか否かをチェックする(ST3)。1枚の記録シートP1のみがニップ部に存在すると判断した場合には、ST8に戻って1枚目記録シートP1の後端がニップ部Nを抜け出たか否かをチェックする一方、2枚以上の記録シートがニップ部に存在すると判断した場合には、前記分離力コントローラ51が重送速度検出センサSN2の出力信号VRを取り込み(ST4)、この出力信号VRが所定値V1を超えていないか否かをチェックする(ST5)。超えていないと判断される場合には、ST8に戻って1枚目記録シートP1の後端がニップ部Nを抜け出たか否かをチェックする。
このST8、ST3、ST4及びST5を繰り返すことにより、1枚目記録シートP1の搬送中に重送速度検出センサSN2の出力信号VRが所定値V1を超えたか否かを確認することができる。図10はこの第2制御例における重送度合い検出センサSN2の出力信号VRの変化の例を示すものである。1枚目記録シートの先端がシートセンサSN1によって検出された時間t1においては、重送度合い検出センサSN2の出力信号VRは所定値V1以下であるが、その後、時間t2に達した時点で出力信号VRは所定値V1を超えている。
このようにしてST5において、重送速度検出センサSN2の出力信号VRが所定値V1を超えたと判断されると、分離力コントローラ51は電磁クラッチ80の上限伝達トルクを制御し、分離モータ8から分離ローラ3に伝達される逆方向の回転トルクTrを増強する。あるいは、分離力コントローラ51はニップ圧調整モータ6eを僅かに回転させ、分離ロール3が2枚目記録シートP2の裏面に圧接する力F0を減じる(ST6)。これにより、第1制御例と同様に、2枚目記録シートP2が1枚目記録シートP1に引きずられて第1シート搬送路に重送されてしまうのを効果的に防止することができるものである。
このようにして重送を防止しつつ、1枚目の記録シートが第1シート搬送路SH1に搬送されたなら、コントローラCは1枚目記録シートP1の後端がニップ部Nを抜け出たか否かを判断し、抜け出たと判断される場合には給紙モータ7及び分離モータ8の停止を指令する。これにより給紙機構における記録シートの分離搬送は完了する(ST7)。この後、コントローラCはコピージョブが終了したか否かをチェックし、終了してないと判断される場合には次の記録シートPの給紙を繰り返す。また、ST8において、重送速度検出センサSN2の出力信号VRが所定値V1を超えるこなく、1枚目記録シートP1の後端がニップ部Nを抜け出たのであれば、やはり給紙モータ及び分離モータ8を停止して記録シートの分離搬送を完了する。
前述した給紙機構においては、図3に示すように、電磁クラッチ80を介して分離モータ8と分離ロール3を接続し、かかる電磁クラッチ80の上限伝達トルクを制御することで分離ロール3に与える逆方向回転トルクを調整していたが、前記分離モータ8として、入力電流の大きさによって発揮する回転トルクを調整可能なDCモータを用い、このDCモータと分離ロール3とを直接連接続することで、前記電磁クラッチ80を省略しても良い。
また、前記重送速度検出センサSN2としては、分離ロール3の回転速度から2枚目記録シートP2の進行速度を把握するもの以外に、例えば図11に示すように、ニップ部Nに突入した記録シートP2の裏面に速度検出ロール57を当接させ、この速度検出ロール57の回転角度をロータリエンコーダで検出し、それを速度データに変換するように構成しても良い。更に、光学式マウスに使用されるような非接触式のエンコーダを用いても良い。
1…給紙機構、2…給紙ロール、3…分離ロール、4…ピックアップロール、60,61…給紙トレイ、C…コントローラ、P…記録シート、SN1…シートセンサ、SN2…重送速度検出センサ、SN3…枚数検知センサ