JP4207760B2 - 建築用低降伏比コラム用鋼管の製造に使用される鋼板、ならびにそれらの製造方法 - Google Patents

建築用低降伏比コラム用鋼管の製造に使用される鋼板、ならびにそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、建築用低降伏比コラム用鋼管の製造に使用される鋼板、ならびにそれらの製造方法に関する。詳しくは板厚で40mm以上の厚肉で、鋼管での降伏強度が440N/mm2以上、引張強度が590〜740N/mm2、降伏比が85%以下のコラム用鋼管製造用の鋼板、ならびにそれらの製造方法に関する。
近年、大都市を中心として生じている土地不足に伴い、限られた土地を最大限有効に利用することが求められている。そのため、略矩形の水平断面形状のビルに替わって、土地の形状に合わせた不整形の水平断面形状のビルが建設されるようになってきた。このように、建設されるビルの水平断面形状が変化するにつれて、例えば梁を設置する場所や梁の大きさを、設計上、従前に比較して大幅に変更しなければならないことがある。
しかし、従来から建築用構造材として広く使用されてきた断面H型や四面ボックス型の柱では、例えば梁の設置位置や設置角度が限られてしまい、前述の梁の設置位置の変更に充分に対応することができない。
これに対しコラム(丸柱)では、次のような特色を有するため、例えば駅前周辺の再開発による地下駐車場の建設の際に、建築用構造材としてその需要が増加する傾向にある。
1)H型や四面ボックス型柱に比較して、美観に優れるとともに柱面積を低減することができる。
2)H型や四面ボックス型柱では取付けが困難な角度でも自由に梁を取付けることができる。
ところで、コラム用鋼管の製造法としては、例えば強力なプレスにより冷間でU型に曲げた後、Oプレスにより円形に成形するUOE製管法、局部的なプレス成形を連続的に行い管状にするプレスベンド法等が知られている。
UOE製管法は高能率だが製管能力制約により主に数十mm厚以下の比較的薄肉材に用いられ、プレスベンド法は若干能率は劣るが薄肉から厚肉材までの製管に用いることができる。いずれの方法で製管したものでも、管長手方向溶接後に真円度を出す(圧縮あるいは拡管)工程が付与されるのが一般的である。
いずれの方法でも、鋼板に対し、プレスによる冷間加工を加えると加工硬化により降伏強度(以下「YP」と記す)や引張強度(以下「TS」と記す)が上昇し、降伏比(以下「YR」と記す)も上昇し、板厚(t)/コラム用鋼管直径(D)が大きくなるほどYRの上昇が大きくなることからそのままでは目標のYRを満たさなくなる。
そこで、冷間加工により製管を行った後のコラム用鋼管のYRを満足させるためには、製管によるYR上昇後も目標YRを確保するために母材でのYRを極めて低くする、製管によるYR上昇を極力すくなくする、製管により上昇したYRを熱処理等を行うことで低下させる、といった手法が考えられる。
そこで従来は、次のような技術が提案されていた。
特許文献1では、熱間圧延した鋼板を、Ac3〜1000℃に再加熱後焼入れ、さらに700〜850℃に再加熱後焼入れしAc1温度以下で焼戻しした鋼板を、所定の条件で冷間成形して鋼管を製作し、その後500から650℃の温度範囲で焼鈍することを特徴とする建築用低降伏比鋼管の製造法が提案されている。
特許文献2では、Cu:0.7〜1.2%を含有する鋼板を熱間圧延後に空冷または制御冷却を行い、Ac3以上の温度に再加熱して焼入れあるいは焼入れ、焼戻しして得られた鋼板にt/D≦10%で冷間成形し、鋼管を製作し、次いで650〜750℃に再加熱して焼ならしする製造方法が開示されている。
また、母材である鋼板段階で低YRとするために以下の技術が提案されている。
特許文献3では、850〜1000℃の低温で加熱した鋼材を圧延後直接焼入れ、焼きなましすることで、加熱時のオーステナイト粒を細粒化し、その後の圧延水冷で微細な二相組織とすることにより降伏比が低く靱性の良い鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献4では、Nb炭窒化物を微細分散することで母材成分(Pcm)を低減し耐溶接割れ性の良好で降伏比の低い鋼材の製造方法を開示している。この製造方法も、圧延後直接焼入れしてから二相域焼入れを行い低YR化し、500〜650℃に再加熱することでNbを析出させるものである。
特許文献5では、加熱圧延後直接焼入れを行い、軟相であるフェライト相とマルテンサイト等の硬相とを生じせしめ、更に750〜850℃の温度域に加熱して硬相部の一部をオーステナイト化し、その後放冷または冷却を行うことで焼きなまされた硬相(中間相)とオーステナイトから変態するマルテンサイト等の硬相部とする3相組織を得る製造方法が開示されている。これは、軟相部と硬相部の二相組織では低YRだが歪みが相境界に集中して靱性や延性が悪化するのに対し、中間相があることで歪み集中が緩和され、靱性や延性も良好となるとの技術である。
また、製管後のYR上昇を軽減する技術として以下の開示がある。
特許文献6では、母材表裏面の硬度が高いと製管後さらに高くなりYRが上昇するとし、母材での表裏面硬度を低減するために圧延時に軽圧下を実施後直接焼入れ、二相域焼入れ後焼戻しを行うことで表裏面のオーステナイト粒粗大化抑制を図る(焼き入れ性を下げる)製造方法を開示している。
さらに、加工後に上昇したYRを低減する技術として以下の開示がある。
特許文献7では、母材を二相域焼入れすることにより二相組織としてから加工を加え、軟相に歪みを集中させ、その後600〜700℃に再加熱することで軟相を再結晶(歪みのない組織)させ、YRの上昇を低減する技術である。
特開平05−117746号公報 特開平07−233416号公報 特開平08-003636号公報 特許第2901890号公報 特開平08-283838号公報 特許第2687841号公報 特許第3297090号公報
これらの提案にかかる方法のうち、特許文献1は二相域温度から直接焼入れすることで、特許文献2は圧延後二相域温度に再加熱焼入れすることで二相組織を生じ、その後焼戻し、鋼管加工、焼鈍を実施するものである。これらは、母材で低YRとし、その後の製管加工により上昇したYRをさらに焼鈍により低下させる技術であり、母材焼戻しと鋼管焼鈍と2回の熱処理が必要となる。特に特許文献2では650〜750℃と非常に高温での熱処理となり納期、製造コスト上有利な製造プロセスとはいえない。
さらに、特許文献2では、鋼管の熱処理を省略して、鋼板の熱処理だけで機械試験特性を確保する方法であるが、UOE製管法の設備制約のため、加工板厚に限界があり、極厚材では製管できない場合があった。
特許文献3では低降伏比鋼板の製造方法であるが、母材としての低YRであり製管を行った場合のYRを保証するものでは無い。また、良好な靱性を得るために850℃〜1000℃という非常に低い加熱温度とすることで加熱時のオーステナイト粒径の粗大化を抑制するものであるが、このような加熱温度での厚板製造は稀であり、大量生産を基本とする現在の製鉄業においては圧延するタイミングを制約されたり、そのために製造リードタイムが増加してしまうといった弊害がある。
特許文献4や特許文献5も同様に母材としては低YRであるが、製管後の低YRを示すものではなく、t/Dが大きい場合にYRが目標を満足し得ないことが予想される。
さらに特許文献4では、Nb析出強化を活用して母材強度を確保していることから、製管時の降伏強度上昇が大きくなるために、製管後の低YRがより上昇しやすい鋼材と考えられる。
また特許文献5では、母材を3相組織とするために圧延およびその後の熱処理条件を規定しているが、製管後に焼鈍することで硬相組織が焼戻され、引張強度が低下(これに伴いYRは上昇)してしまうことが懸念される。
このように、母材の低YRを実現するための従来技術では、製管後の低YRを確実に実現することは難しいものである。
さらに、特許文献6では製管時のYR上昇を低減する技術であるが、圧延における1パス当たりの圧下率を4%以下に制限する必要があり、極めて圧延能率を低下させるものである。さらにこのような低圧下率での圧延を行うことで母材靱性が低くなるという弊害が発生する。
さらに、特許文献7に開示されている、加工後に上昇したYRを低減する方法でも、加工後高歪み状態となったフェライト相を再結晶させるために600〜700℃といった高い温度で再加熱を行う必要があり加熱コスト上好ましくなく、且つ再結晶を促進するために強度、靱性改善に有効な元素であるNb、V、Tiの合計量も低く抑える必要があるため、溶接性を犠牲にしてC等を多目にするか、合金コストを犠牲にしてNi、Mo、Cu、Crといった合金を多目にする必要がある。
ここに、本発明の要旨とするところは、次の通りである。
(1) 建築用低降伏比コラム用鋼管に使用される鋼板の製造方法であって、該鋼板の圧延素材を加熱し、熱間圧延を行った後に、得られた熱延鋼板に、以下に示す(1) 〜(2) のいずれかの熱処理を行い、その後の焼戻し熱処理を実施しないことを特徴とする建築用低降伏比コラム用鋼管の製造に使用される鋼板の製造方法。
1)圧延後、Ar 3 +50℃以下の温度から400℃以下の温度まで直接焼入れを行った後、更に再加熱を行ってAc 1 〜Ac 3 の温度で焼入れを行う。
2)圧延後空冷し、さらに再加熱を行ってからAr 3 点以上の温度で焼入れを行い、その後更に再加熱を行ってAc 1 〜Ac 3 の温度で焼入れを行う。
(2) 上記(1) の製造方法で製造された鋼板であって、その機械試験特性が、降伏強度で400N/mm以上、引張強度で680〜820N/mm、降伏比で50〜80%であることを特徴とする建築用低降伏比コラム用鋼管の製造に使用される鋼板。
(3) 上記(2) に記載の鋼板から鋼管への冷間成形を行った後、得られた鋼管に対してAc1変態点以下の温度で焼戻し熱処理を行うことを特徴とする建築用低降伏比コラム用鋼管の製造方法。
(4) 前記冷間成形を行った後の焼戻し熱処理において、前記鋼管を所定の目標温度に加熱し、板厚方向のすべての部分の温度が該目標温度に到達後少なくとも5分以上保持し、その後、冷却速度10℃/秒以下で冷却することを特徴とする上記(3) 記載の建築用低降伏比コラム用鋼管の製造方法。
(5) 前記目標温度が400〜650℃である上記(4) 記載の建築用低降伏比コラム用鋼管の製造方法
また、本発明のコラム用母材、およびコラムとそれらの製造方法は、コラム柱中にコンクリートを充填するCFTと呼ばれる柱でも同様に用いることができる。
本発明によれば、鋼板の製造工程における焼入れ後の焼戻し熱処理を省略しても、鋼管とした段階での機械試験特性値も従来法と比較し遜色ない値が得られるばかりでなく、冷間成形に際しても割れは発生しないことが確認できた。
従って、経済的に優れ、製造工期も短縮できるコラム用鋼管に用いる鋼板及びコラム用鋼管の製造が可能となり、本発明の実用上の意義は大きい。
本発明の実施の形態について、その限定理由とともに、さらに具体的に詳述する。
まず、本発明において鋼管の製造方法を概略説明すると次の通りである。
所定鋼組成の鋼片に熱間圧延を行い、熱延鋼板を得る。このときの熱間圧延条件は特に制限されず、慣用の圧延条件を採用すればよい。圧延後は、本発明にしたがって熱処理を行うが、焼入れに続いて行う焼戻し熱処理は省略する。そのとき得られた熱延鋼板は、次いで製管工程に送られ、冷間での製管が行われる。製管後は、焼入れが行われることはなく、1種の歪み取り焼鈍を兼ねた焼戻し熱処理が行われるだけである。
鋼板の製造において、焼入れ後の焼戻し熱処理を省略する目的は、鋼管での焼戻し熱処理でもって所定の機械試験値を得、工程省略によるリードタイムの短縮を図るとともに、熱処理のコストダウンを図るためである。換言すれば、本発明にあっては、焼入れ、焼戻しの熱処理を分割して行い、前者は鋼板にだけ行い、後者は、製品としての鋼管にだけ行うというように、機能を分化させたのである。
しかし、鋼板の焼入れのみでその後の焼戻し熱処理を省略すると、強度(YP、TSを意味する)が上がりすぎて、製管能力上、製管材の厚さや長さを制限しなくてはならなくなり、極めて限られた範囲にのみ適用できるだけとなってしまい、商業生産プロセスとしてはあまりメリットの無いものになってしまう。逆に焼き入れ後の強度を製管しやすい強度に抑えるような成分とすると冷間成型後の焼戻し熱処理時に強度が下がりすぎて目標範囲に入らなくなってしまう。
本発明者らはこれらの点について鋭意研究を重ねた結果、冷間成形しても割れが発生せず、最終的な製品であるコラム用鋼管後に適切な引張強度、降伏強度、そして降伏比となり、且つ製管しやすい強度レベルであるための、鋼板の焼入れ条件を検討し、最終の焼入れをAc3以下から行うことが有効であり、その場合には、冷間成形で製管した後の焼戻し熱処理条件を適正な条件で行うことによりコラム用鋼管としての所定の機械試験値を満足することを知り、本発明を完成した。
本発明において二相域からの焼入れを行うべく、圧延後の直接焼入れ、あるいは圧延後空冷し、さらにAr3温度以上で焼入れを行うのは強度を確保するための必要な工程である。さらにAc1〜Ac3温度に再加熱焼入れすることで再変態によりオーステナイト粒を微細化し冷間成型時の割れ発生を防止できる最低限の靱性確保と、フェライトとベイナイトもしくはマルテンサイトといった軟相/硬相の二相組織化による低YR化を同時に行うものである。なお、Ar3温度以下から直接焼入れのみ実施する場合は、靱性確保の観点から、圧延仕上げ温度を水冷開始温度に極力近くなるように下げ、未再結晶温度域での圧延を多く、例えば累積圧下率で40%以上とすることが望ましい。
Ar3点は以下の式で計算する。
Ar3=910-310C-80Mn-20Cu-15Cr-55Ni-80Mo+0.35(t-8)
tは板厚(mm)を示す。
Ac1およびAc3温度は以下式で計算する。
Ac1=751-27C+18Si-12Mn-23Cu-23Ni+24Cr+23Mo-40V-6Ti+233Nb-169Al-895B
Ac3=910.7-295.7C+61.2Si-30.3Mn+331.1P-27.1Cu-2.6Cr-27.5Ni-1.8Mo+70.9V
このようにして得られた鋼板の機械試験特性が降伏強度(YP)で400N/mm以上、引張強度(TS)で680〜820N/mm、降伏比(YR)で50〜80%の範囲内である必要がある。この範囲でないと、製管時のYP上昇が大きくYPやYRが目標の値とならず、TSが高すぎて製管時の制約が生じるためである。また、母材靱性も0℃におけるシャルピー衝撃試験で27J以上必要であり、これ未満では冷間成形時に表面疵などの起点から割れが生じる危険性があるためである。
このような特性を得るための成分としては、以下の範囲が好ましい。
質量%で、C:0.08 〜0.15%、Si:0.05 〜0.55%、Mn:1.00 〜1.60%、P:0.020%以下、S:0.002%以下、N:0.0005〜0.010%を含有し、さらに溶接性、溶接部靱性を確保しつつ母材強度を確保するために、Cu:0.05〜0.60%、Ni:0.05〜1.0%、Cr:0.05〜0.50%、Mo:0.02〜0.50%、V:0.005〜0.10%、Nb:0.005〜0.10%、B:0.0003〜0.0030%、Ti:0.005〜0.035%、Al:0.001〜0.090%のうちの1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼組成である。
これらの合金元素は溶接性及び経済性の観点からはできる限り少なくするほうが好ましい。例えば溶接性を確保する意味で、Pcmは0.28%以下とすることが好ましい。
ここでいうPcmは以下の式で計算する。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B
また更なる性能向上のための元素としてCa、Mg、REMを少なくとも1種含有させる場合、その範囲はそれぞれ0.0005〜0.01%以下であることが好ましい。
ここで、本発明の好適態様において、その対象とする鋼組成を上述のように規定した理由は次の通りである。なお、鋼組成を示す「%」は特にことわりがない限り、「質量%」である。
C:0.08 〜0.15%
Cは強度を確保するために添加する。C含有量が0.08%未満では強度を確保することができず、一方0.15%超であると、製管後のストレートシーム部でサブマージアーク溶接等を行った際に高温割れが発生する危険性がある。そこで、本発明では、C含有量は0.08%以上0.15%以下と限定する。
Si:0.05 〜0.55%
Siは、溶鋼の脱酸を強化するとともに成品の強度を確保するために添加される。Si含有量が0.05%未満であると充分な脱酸効果を得ることができず、一方、上限の0.55%は、汎用性を重視して600N/mm2クラスの鋼材規格で最も一般的である溶接構造用圧延鋼材に関するJIS G 3106に規定されるSM570のSi含有量の上限とした。そこで、本発明では、Si含有量は0.05%以上0.55%以下と限定する。
Mn:1.00 〜1.60%
Mnは、成品の強度を確保するために添加される。Mn含有量が1.00%未満であると充分な強度を確保することができず、一方、1.60%は、溶接構造用圧延鋼材に関するJIS G 3106に規定されるSM570のMn含有量の上限であり、これを超えると規格対象外れとなる。そこで、本発明では、Mn含有量は1.00%以上1.60%以下と限定する。
P:0.020%以下
Pは、本発明では不純物であり、含有量が母材靱性を劣化させるため、含有量は少ない方が望ましい。しかし、0.020 %以下であれば前記靱性劣化を生じることはなく、逆に、極端な低下にはコスト増を伴う。そこで、本発明では、P含有量は0.020 %以下と限定する。
S:0.002%以下
Sは、本発明では不可避不純物であり、MnS等の形成して母材の靱性を劣化させる他、溶接部の水素性欠陥を発生し易くするため、含有量は少ない方が望ましく、本発明では、S含有量は0.002 %以下と限定する。
N:0.0005〜0.010%
Nは、本発明では不可避不純物であり、通常0.0005%以上含有される。Tiと複合添加することでTiN析出物を形成させ、圧延のための加熱時や溶接時にオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する効果があり、Ti添加時にはNを0.001%以上とすることが望ましい。
ただし、0.010%を超えると鋳片表面に割れが出やすくなり、溶接部に固溶Nが増加するためにフュージョンライン近傍の靱性を悪化させる。したがって上限を0.010%とした。好ましくは0.006%以下である。
Pcm:0.28%以下
Pcmは次式で表される溶接割れ感受性組成を表わす指標である。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B
Pcmが大きくなるほど溶接部の割れが発生し易くなる。その対策として溶接時の予後熱や溶接時に進入する拡散性水素の低減のための溶材乾燥等の厳重化、さらには拘束度を低減するための設計の見直し等が上げられるが、いずれも構造物の組立ての際の工費を増大させてしまい望ましくない。そこで、ガスシールドアーク溶接法やサブマージアーク溶接法で溶接を行った時に予熱無し(もしくは50℃程度の予熱)で溶接割れが発生しないことが必要と考え、Pcmを経験的に0.28%以下とした。
さらに、強度を確保しつつ、母材靱性や溶接部靱性を向上させるため、Cu:0.05〜0.60%、Ni:0.05〜1.0%、Cr:0.05〜0.50%、Mo:0.02〜0.50%、V:0.005〜0.10%、Nb:0.005〜0.10%、B:0.0003〜0.0030%、Ti:0.005〜0.035%、Al:0.001〜0.090%、Ca: 0.0005〜0.01%、Mg: 0.0005〜0.01%、REM: 0.0005〜0.01%の1種以上添加してもよいが、上記の下限値未満では効果が少ないこと、及びそれぞれ上限値を超えると溶接性、靱性に悪影響を与えるので上記の範囲内とした。
次に、鋼管の製造方法であるが、鋼板での焼戻し熱処理工程を省略しているので、所定の機械試験値を得るためには鋼管への冷間成形後に熱処理工程が必須となる。
すなわち、二相域焼入れ後の軟相/硬相からなる二相組織は、軟硬相の硬度差が大きいことから相間に歪みが集中し、かつ焼き入れまま組織であるためにMAと呼ばれる硬くてもろい組織を内在していることから、焼戻し熱処理による靱性回復を行う必要がある。
さらに、製管加工時の歪みが導入され、YP、TSおよびYRが上昇しており、先の母相自体の焼戻しと同時にこれら歪み除去としての焼戻し熱処理を実施することで、YP、TSおよびYRが低下する。
この焼戻し熱処理の条件としては、母相の焼戻しおよび歪み除去の観点から、温度はAc1変態点以下で実施し、とくに温度を高くするほどYSに対しTSが低下しYRが高くなる傾向になるため、好ましくは400〜650℃の温度で熱処理することが好ましい。
また鋼管の厚み方向すべての部分が目標温度に達した時から5分以上保持することが好ましい。この保持時間が5分未満であると、中心部と表層部の温度差が解消されないまま熱処理されることになり、厚み方向の機械試験値がばらつく危険性があるためである。
実際の鋼管の熱処理時には、1/2t中心部よりも鋼管内面側が一番温度上昇が遅くなるので、例えば1次元伝熱モデルで鋼板内部の温度計算を行い、最低温度部が目標温度に到達してから5分以上保持する様に管理することができる。
なお、鋼管の内面側の温度が、所定の温度に到達したかどうかは、加熱炉内の雰囲気温度を基に熱伝導方程式を用いて中心部の温度を計算してもよいし、熱電対等による実測、もしくは従来からの経験で十分加熱されていると思われる時間を経過した時点をもって内部、表層ともに均一温度になったと判断してもよい。
この場合の目標温度は、最終的な機械特性上、±10℃程度の範囲に管理する必要がある。
また熱処理後の冷却速度も重要で、300℃以下の温度となるまでの冷却速度を10℃/秒以下に規定する。冷却速度が10℃/秒を超えるとTS、YPとも上昇し、靱性が悪化する。さらに好ましい範囲は5℃/秒以下である。
冷却方法としては、炉冷、空冷、水冷等その方法は問わないが、好ましくは炉冷または空冷である。
なお、建築用のコラムとして用いるためには、鋼管での機械試験値が降伏強度で440N/mm以上、引張強度で590〜740N/mm、降伏比で85%以下であることが好ましい。
これは、ビル等の構造物では主柱にダイアフラムや梁等の部材が溶接で接合されるため、これらと強度レベルを合わせる必要があるからである。590N/mm2クラスの鋼材として設計されたものが一部だけ強度が異なると、地震等の外力が加わったときに設計応力に達する前に降伏応力レベルの低い部材で変形が始まったり、引張り強さが低い部材にくびれや破断が発生する可能性があり、建物自体の倒壊など極めて危険な状態となる。また、塑性変形に関しても同様で、変形が生じてからの安全代が降伏比である。降伏比が低い程、塑性変形能が大きく、変形することで吸収できる(地震等の)エネルギーが大きいことを示すものであることから85%を上限とした。
また、コラム用鋼管としての要求性能のうち、衝撃値は0℃において27Jもしくは47Jといった規格が一般的である。通常は、母材では非常に高靱性でも、製管等を行った後では大きな歪みが加わると靱性は劣化することが知られている。鋼板の靱性評価の一つとして、有る程度の強加工が加えられる場合には母材の靱性目標値を100J程度上乗せするとか、試験温度を20〜40℃低温側で試験するといった手法がとられるのはこのためである。
一方で、本発明では構造物の柱に用いるためのコラム材を対象としており、より高靱性であることがそのまま安全性につながるとの観点から、製管時に非常に大きな歪みが導入された後でも、0℃で150J以上の靱性値を目標とした。
表1に示す成分組成を有する鋼片を1120℃に加熱し、板厚60mmに熱間圧延後、直接焼入れを行うか、または直接焼入れもしくは空冷後に再加熱焼き入れ(第1回焼入れ)とAc1〜Ac3に再加熱焼き入れ(第2回焼入れ)とを行い、表2に示す条件で鋼板を製造した。
表1に示す成分で、Ar3点、Ac1点、Pcmを各々計算すると、次のようになる。
Ar3=709℃、Ac1=724℃、Ac3=832℃、Pcm=0.25
なお、表2に示す機械試験特性値は、引張り試験は板厚方向の全厚の領域から圧延方向と平行(製管後の管軸方向)にJIS 5号試験片を切り出し、試験に供して得たものである。衝撃試験特性値は、0℃における値であり、表面側の板厚1/4位置から管軸方向にJIS 2mm Vノッチ試験片を採取し供試して得たものである。
これらの鋼板を冷間成形(プレスベンド方式)で外径700mmの鋼管に成形した。
冷間成形後の熱処理は、550℃、600℃、650℃、750℃の4種類の条件で実施した。
鋼管での機械試験特性値は、引張り試験は管軸方向に全厚の領域からJIS 12B号試験片を切り出し、シャルピー衝撃試験は表面側1/4板厚位置から管軸方向にJIS 2mmVノッチ試験片を採取し、それぞれ試験を行って得たものである。
これらの結果を表3に示す。
これらの結果より、本発明では鋼板の焼入れ後の焼戻し熱処理を省略したことで、鋼板としての強度(TS)は従来鋼より高い値となり、靱性値は低下している。ただし、冷間成型時に割れの発生は無く、この程度の靱性であれば製管には全く問題の無いものである。
さらに製管および所定の焼戻し熱処理後の強度は、焼戻しの効果と歪み除去の効果が相乗的に現れることで目標の強度(TS)レンジまで低下し、かつYRも目標の範囲におさまる。
また、靱性も、冷間成型により非常に大きな歪みが与えられた後にも関わらず、従来例の加工前の母材と同程度の値となっており、非常に良好な値となっている。
Figure 0004207760
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Claims (5)

  1. 建築用低降伏比コラム用鋼管に使用される鋼板の製造方法であって、該鋼板の圧延素材を加熱し、熱間圧延を行った後に、得られた熱延鋼板に、以下に示す(1)〜(2)のいずれかの熱処理を行い、その後の焼戻し熱処理を実施しないことを特徴とする建築用低降伏比コラム用鋼管の製造に使用される鋼板の製造方法。
    (1)圧延後、Ar3+50℃以下の温度から400℃以下の温度まで直接焼入れを行った後、更に再加熱を行ってAc1〜Ac3の温度で焼入れを行う。
    (2)圧延後空冷し、さらに再加熱を行ってからAr3点以上の温度で焼入れを行い、その後更に再加熱を行ってAc1〜Ac3の温度で焼入れを行う。
  2. 請求項1の製造方法で製造された鋼板であって、その機械試験特性が、降伏強度で400N/mm以上、引張強度で680〜820N/mm、降伏比で50〜80%であることを特徴とする建築用低降伏比コラム用鋼管の製造に使用される鋼板。
  3. 請求項2に記載の鋼板から鋼管への冷間成形を行った後、得られた鋼管に対してAc1変態点以下の温度で焼戻し熱処理を行うことを特徴とする建築用低降伏比コラム用鋼管の製造方法。
  4. 前記冷間成形を行った後の焼戻し熱処理において、前記鋼管を所定の目標温度に加熱し、板厚方向のすべての部分の温度が該目標温度に到達後少なくとも5分以上保持し、その後、冷却速度10℃/秒以下で冷却することを特徴とする請求項3記載の建築用低降伏比コラム用鋼管の製造方法。
  5. 前記目標温度が400〜650℃である請求項4記載の建築用低降伏比コラム用鋼管の製造方法。
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