JP4207498B2 - シリコン単結晶の引上げ装置及びその引上げ方法 - Google Patents

シリコン単結晶の引上げ装置及びその引上げ方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、石英るつぼに貯留されたシリコン融液からシリコン単結晶のインゴットを引上げる装置及びその方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコン単結晶の製造方法として、シリコン単結晶のインゴットをチョクラルスキー法(以下、CZ法という)により引上げる方法が知られている。このCZ法は、石英るつぼに貯留されたシリコン融液に種結晶を接触させ、石英るつぼ及び種結晶を回転させながら種結晶を引上げることにより、円柱状のシリコン単結晶のインゴットを製造する方法である。
一方、半導体集積回路を製造する工程において、歩留りを低下させる原因として酸化誘起積層欠陥(Oxidation-induced Stacking Fault、以下、OSFという。)の核となる酸素析出物の微小欠陥や、結晶に起因したパーティクル(Crystal Originated Particle、以下、COPという。)や、或いは侵入型転位(Interstitial-type Large Dislocation、以下、L/Dという。)の存在が挙げられている。OSFは、結晶成長時にその核となる微小欠陥が導入され、半導体デバイスを製造する際の熱酸化工程等で顕在化し、作製したデバイスのリーク電流の増加等の不良原因になる。またCOPは、鏡面研磨後のシリコンウェーハをアンモニアと過酸化水素の混合液で洗浄したときにウェーハ表面に出現する結晶に起因したピットである。このウェーハをパーティクルカウンタで測定すると、このピットも本来のパーティクルとともに光散乱欠陥として検出される。
【0003】
このCOPは電気的特性、例えば酸化膜の経時絶縁破壊特性(Time Dependent dielectric Breakdown、TDDB)、酸化膜耐圧特性(Time Zero Dielectric Breakdown、TZDB)等を劣化させる原因となる。またCOPがウェーハ表面に存在するとデバイスの配線工程において段差を生じ、断線の原因となり得る。そして素子分離部分においてもリーク等の原因となり、製品の歩留りを低くする。更にL/Dは、転位クラスタとも呼ばれたり、或いはこの欠陥を生じたシリコンウェーハをフッ酸を主成分とする選択エッチング液に浸漬するとピットを生じることから転位ピットとも呼ばれる。このL/Dも、電気的特性、例えばリーク特性、アイソレーション特性等を劣化させる原因となる。この結果、半導体集積回路を製造するために用いられるシリコンウェーハからOSF、COP及びL/Dを減少させることが必要となっている。
【0004】
このOSF、COP及びL/Dを有しない無欠陥のシリコンウェーハを切出すためのシリコン単結晶インゴットの製造方法が米国特許番号6,045,610号に対応する特開平11−1393号公報に開示されている。一般に、シリコン単結晶のインゴットを速い速度で引上げると、インゴット内部に空孔型点欠陥の凝集体が支配的に存在する領域[V]が形成され、インゴットを遅い速度で引上げると、インゴット内部に格子間シリコン型点欠陥の凝集体が支配的に存在する領域[I]が形成される。このため上記製造方法では、インゴットを最適な引上げ速度で引上げることにより、上記点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域[P]からなるシリコン単結晶を製造できるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の米国特許番号6,045,610号に対応する特開平11−1393号公報に示されたシリコン単結晶インゴットの製造方法では、シリコン単結晶のインゴットとシリコン融液との固液界面近傍での鉛直方向の温度勾配が均一になるように制御する必要があり、この制御はシリコン融液の残量の変化や対流の変化による影響を受けるため、インゴットの直胴部全長にわたって、無欠陥のシリコン単結晶を製造することは困難であった。
本発明の目的は、無欠陥のシリコン単結晶のインゴットを比較的容易に製造できる、シリコン単結晶の引上げ装置及びその方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、チャンバ11内に設けられシリコン融液12が貯留された石英るつぼ13と、石英るつぼ13の外周面を包囲しシリコン融液12を加熱するヒータ18と、シリコン融液12から引上げられるインゴット25の外周面を包囲しかつ下端がシリコン融液12表面から間隔をあけて上方に位置する筒部37と筒部37の下部に筒内の方向に膨出して設けられた膨出部41とを有する熱遮蔽部材36と、チャンバ11の上部からチャンバ11の内部に不活性ガスを供給して膨出部41とインゴット25の間に不活性ガスを流下させる不活性ガス給排手段28とを備えたシリコン単結晶の引上げ装置の改良である。
その特徴ある構成は、図2に示すように、膨出部41とインゴット25の間を流下する不活性ガスのうちインゴット25の外周面下端に形成されるシリコン融液12のメニスカス12cに沿って流下する不活性ガスを吸引してチャンバ11外に排出するガス排出手段42を備え、ガス排出手段42は不活性ガスを吸引することによりメニスカス12cに沿って流れる不活性ガスの流速を速めてシリコン融液12とインゴット25との固液界面26が上凸状になるように構成されたところにある。
【0007】
ここで、ガス排出手段42は、メニスカス12cに臨みかつインゴット25を包囲するように扁平に形成されたガス吸引口43aが先端に設けられた複数のガス吸引ノズル43と、筒部37の内周面又は外周面に添って設けられガス吸引ノズル43の基端に下端が接続された複数の鉛直管44と、チャンバ11外に設けられ鉛直管44の上端が接続された吸引装置とを有することが好ましい。
【0008】
請求項3に係る発明は、シリコン融液12を貯留する石英るつぼ13を所定の回転速度で回転させ、シリコン融液12から引上げられるシリコン単結晶のインゴット25を包囲しかつ下端がシリコン融液12表面から間隔をあけて上方に位置する筒部37と筒部37の下部に筒内の方向に膨出して設けられた膨出部41とを有する熱遮蔽部材36を設け、チャンバ11の上部からチャンバ11の内部に不活性ガスを供給して膨出部41とインゴット25の間に不活性ガスを流下させつつ、インゴット25内が格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体の存在しないパーフェクト領域となる引上げ速度でインゴット25を引上げるシリコン単結晶の引上げ方法の改良である。
その特徴ある点は、膨出部41とインゴット25の間を流下する不活性ガスのうちインゴット25の外周面下端に形成されるシリコン融液12のメニスカス12cに沿って流下する不活性ガスを吸引してチャンバ11外に排出するガス排出手段42を設け、不活性ガスを吸引することによりメニスカス12cに沿って流れる不活性ガスの流速を速めてシリコン融液12とインゴット25との固液界面26が上凸状になるようにガス排出手段42を制御するところにある。
【0009】
この請求項1並びに請求項2に記載されたシリコン単結晶の引上げ装置及び請求項3に記載されたシリコン単結晶の引上げ方法では、ガス排出手段42によりメニスカス12cに沿って流下する不活性ガスを吸引してメニスカス12c近傍を流れる不活性ガスの流速を速めながら、インゴット25を引上げると、メニスカス12c近傍を流れる不活性ガスによりシリコン融液12に生じる図2に示す対流12aが増大し、図2に示す対流12bが減少する。これらの対流12a,12bにより固液界面26形状が上側に凸状となるようにガス排出手段42を制御する。すると、固液界面の中心がシリコン融液12表面の延長面上より上方に位置するため、固液界面26の中心における鉛直方向の温度勾配が大きくなり、固液界面の中心における鉛直方向の温度勾配と、固液界面の周縁における鉛直方向の温度勾配との差が小さくなる。従って、固液界面26形状が上側に凸状となるようにガス排出手段42を制御することにより、略全長にわたって無欠陥で高品質のシリコン単結晶のインゴット25を比較的容易に製造できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に本発明のシリコン単結晶の引上げ装置10を示す。この引上げ装置10のチャンバ11内には、シリコン融液12を貯留する石英るつぼ13が設けられ、この石英るつぼ13の外周面は黒鉛サセプタ14により被覆される。石英るつぼ13の下面は上記黒鉛サセプタ14を介して支軸16の上端に固定され、この支軸16の下部はるつぼ駆動手段17に接続される。るつぼ駆動手段17は図示しないが石英るつぼ13を回転させる第1回転用モータと、石英るつぼ13を昇降させる昇降用モータとを有し、これらのモータにより石英るつぼ13が所定の方向に回転し得るとともに、上下方向に移動可能となっている。石英るつぼ13の外周面は石英るつぼ13から所定の間隔をあけてヒータ18により包囲され、このヒータ18は保温筒19により包囲される。ヒータ18は石英るつぼ13に投入された高純度のシリコン多結晶体を加熱・融解してシリコン融液12にする。
【0011】
またチャンバ11の上端には円筒状のケーシング21が接続される。このケーシング21には引上げ手段22が設けられる。引上げ手段22はケーシング21の上端部に水平状態で旋回可能に設けられた引上げヘッド(図示せず)と、このヘッドを回転させる第2回転用モータ(図示せず)と、ヘッドから石英るつぼ13の回転中心に向って垂下されたワイヤケーブル23と、上記ヘッド内に設けられワイヤケーブル23を巻取り又は繰出す引上げ用モータ(図示せず)とを有する。ワイヤケーブル23の下端にはシリコン融液12に浸してシリコン単結晶のインゴット25を引上げるための種結晶24が取付けられる。
更にチャンバ11にはこのチャンバ11のインゴット側に不活性ガスを供給しかつ上記不活性ガスをチャンバ11のるつぼ内周面側から排出するガス給排手段28が接続される。ガス給排手段28は一端がケーシング21の周壁に接続され他端が上記不活性ガスを貯留するタンク(図示せず)に接続された供給パイプ29と、一端がチャンバ11の下壁に接続され他端が真空ポンプ(図示せず)に接続された排出パイプ30とを有する。供給パイプ29及び排出パイプ30にはこれらのパイプ29,30を流れる不活性ガスの流量を調整する第1及び第2流量調整弁31,32がそれぞれ設けられる。
【0012】
一方、引上げ用モータの出力軸(図示せず)にはエンコーダ(図示せず)が設けられ、るつぼ駆動手段17には支軸16の昇降位置を検出するエンコーダ(図示せず)が設けられる。2つのエンコーダの各検出出力はコントローラ(図示せず)の制御入力に接続され、コントローラの制御出力は引上げ手段22の引上げ用モータ及びるつぼ駆動手段の昇降用モータにそれぞれ接続される。またコントローラにはメモリ(図示せず)が設けられ、このメモリにはエンコーダの検出出力に対するワイヤケーブル23の巻取り長さ、即ちインゴット25の引上げ長さが第1マップとして記憶される。また、メモリには、インゴット25の引上げ長さに対する石英るつぼ13内のシリコン融液12の液面レベルが第2マップとして記憶される。コントローラは、引上げ用モータにおけるエンコーダの検出出力に基づいて石英るつぼ13内のシリコン融液12の液面を常に一定のレベルに保つように、るつぼ駆動手段17の昇降用モータを制御するように構成される。
【0013】
インゴット25の外周面と石英るつぼ13の内周面との間にはインゴット25の外周面を包囲する熱遮蔽部材36が設けられる。この熱遮蔽部材36は円筒状に形成されヒータ18からの輻射熱を遮る筒部37と、この筒部37の上縁に連設され外方に略水平方向に張り出すフランジ部38とを有する。上記フランジ部38を保温筒19上に載置することにより、筒部37の下縁がシリコン融液12表面から所定の距離だけ上方に位置するように熱遮蔽部材36はチャンバ11内に固定される。この実施の形態における筒部37は同一直径の筒状体であり、この筒部37の下部には筒内の方向に膨出しかつ内部に断熱部材39を有する膨出部41が設けられる。この筒部37及び膨出部41はC(黒鉛)により、或いは表面にSiCがコーティングされた黒鉛等により作られる。
【0014】
この実施の形態の特徴ある構成は、膨出部41とインゴット25の間を流下する不活性ガスのうちインゴット25の外周面下端に形成されるシリコン融液12のメニスカス12cに沿って流下する不活性ガスを吸引してチャンバ11外に排出するガス排出手段42を備えたところにある。図2に示すように、ガス排出手段42は、先端がメニスカス12cに臨む複数のガス吸引ノズル43と、筒部37の外周面に添って上下方向に設けられガス吸引ノズル43の基端に下端が接続された複数の鉛直管44と、チャンバ11外に設けられ鉛直管44の上端が接続された吸引装置(図示せず)とを有する。
【0015】
図3に詳しく示すように、この実施の形態におけるガス吸引ノズル43は12個使用され、それぞれのガス吸引ノズル43の先端におけるガス吸引口43aは、インゴット25の外周方向に沿うように扁平に形成される。そして、12個のガス吸引ノズル43の先端におけるガス吸引口43aによりインゴット25を包囲するように構成され、図4に示すようにそのガス吸引口はインゴット25の外周面下端に形成されるシリコン融液12のメニスカス12cに臨むように斜め下方に向けて開口される。一方、ガス吸引ノズル43の基端は円管状に形成され、鉛直管44の下端に接続される。インゴット25の外周面に沿って設けられた鉛直管44の上端は図1に示すようにフランジ部38の上面に配索され、その後チャンバの上部から外部に配索される。そしてチャンバ11の外部に設けられた図示しない吸引装置に接続される。この吸引装置としては真空ポンプが用いられ、この真空ポンプは上述したガス給排手段28のガス排出パイプ30に接続された真空ポンプでもよい。なお、図1における符号46は吸引装置が吸引する不活性ガスの量を調整するための調整バルブである。
【0016】
ここで、ガス供給パイプ29からチャンバ11内に供給される不活性ガスの流量は10〜300リットル/分、更に30〜100リットル/分であることが好ましい。またガス排出パイプ30から吸引される不活性ガスの吸引流量は10〜80リットル/分、更に20〜60リットル/分であることが好ましく、ガス吸引口43aから吸引される不活性ガスの吸引流量は2〜80リットル/分、更に10〜50リットル/分であることが好ましい。チャンバ11内の不活性ガスの圧力はこの不活性ガスの供給口付近で1.33〜13.30kPa,更に2.66〜10.64kPaであることが好ましい。
【0017】
次に、本発明のシリコン単結晶の引上げ方法を説明する。この方法は、上述した装置10、即ち膨出部41とインゴット25の間を流下する不活性ガスのうちインゴット25の外周面下端に形成されるシリコン融液12のメニスカス12cに沿って流下する不活性ガスを吸引してチャンバ11外に排出するガス排出手段42を備えた装置10を用いて行われる。そして、シリコン融液12を貯留する石英るつぼ13を所定の回転速度で回転させ、チャンバ11の上部からチャンバ11の内部に不活性ガスを供給して膨出部41とインゴット25の間に不活性ガスを流下させつつ、そのシリコン融液12からシリコン単結晶から成るインゴット25を引上げる方法である。このインゴット25は、このインゴット25内が格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体の存在しないパーフェクト領域となる引上げ速度で引上げられる。即ち、インゴット25は、CZ法によりホットゾーン炉内のシリコン融液12からボロンコフ(Voronkov)の理論に基づいた所定の引上げ速度プロファイルで引上げられる。
【0018】
一般的に、CZ法によりシリコン融液12からシリコン単結晶のインゴット25を引上げると、インゴット25内には、点欠陥(point defect)と点欠陥の凝集体(agglomerates:三次元欠陥)が発生する。点欠陥は空孔型点欠陥と格子間シリコン型点欠陥という二つの一般的な形態がある。空孔型点欠陥は一つのシリコン原子がシリコン結晶格子で正常的な位置の一つから離脱したものである。このような空孔が空孔型点欠陥になる。一方、原子がシリコン結晶の格子点以外の位置(インタースチシャルサイト)で発見されるとこれが格子間シリコン点欠陥になる。
【0019】
点欠陥は一般的にシリコン融液12とインゴット25の間の接触面、即ち固液界面26で形成される。しかし、インゴット25を継続的に引上げることによって固液界面26であった部分は引上げとともに冷却し始める。冷却の間、空孔型点欠陥又は格子間シリコン型点欠陥は拡散により互いに合併して、空孔型点欠陥の凝集体(vacancy agglomerates)又は格子間シリコン型点欠陥の凝集体(interstitial agglomerates)が形成される。言い換えれば、凝集体は点欠陥の合併に起因して発生する三次元構造となる。
【0020】
空孔型点欠陥の凝集体は、前述したCOPの他に、LSTD(Laser Scattering Tomograph Defects)又はFPD(Flow Pattern Defects)と呼ばれる欠陥を含み、格子間シリコン型点欠陥の凝集体は前述したL/Dと呼ばれる欠陥を含む。FPDとは、インゴット25をスライスして作製されたシリコンウェーハを30分間セコエッチング(Secco etching、HF:K2Cr27(0.15mol/l)=2:1の混合液によるエッチング)したときに現れる特異なフローパターンを呈する痕跡の源であり、LSTDとは、シリコン単結晶内に赤外線を照射したときにシリコンとは異なる屈折率を有し散乱光を発生する源である。
【0021】
ボロンコフの理論は、欠陥の数が少ない高純度インゴット25を成長させるために、インゴット25の引上げ速度をV(mm/分)、インゴット25とシリコン融液12の界面26近傍のインゴット25中の温度勾配をG(℃/mm)とするときに、V/G(mm2/分・℃)を制御することである。この理論では、図5に示すように、V/Gを横軸にとり、空孔型点欠陥濃度と格子間シリコン型点欠陥濃度を同一の縦軸にとって、V/Gと点欠陥濃度との関係を図式的に表現し、空孔領域と格子間シリコン領域の境界がV/Gによって決定されることを説明している。より詳しくは、V/G比が臨界点以上では空孔型点欠陥濃度が優勢なインゴット25が形成される反面、V/G比が臨界点以下では格子間シリコン型点欠陥濃度が優勢なインゴット25が形成される。図5において、[I]は格子間シリコン型点欠陥が支配的であって、格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在する領域((V/G)1以下)を示し、[V]はインゴット25内での空孔型点欠陥が支配的であって、空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域((V/G)2以上)を示し、[P]は空孔型点欠陥の凝集体及び格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域((V/G)1〜(V/G)2)を示す。領域[P]に隣接する領域[V]にはOSF核を形成する領域[OSF]((V/G)2〜(V/G)3)が存在する。
【0022】
このパーフェクト領域[P]は更に領域[PI]と領域[PV]に分類される。[PI]はV/G比が上記(V/G)1から臨界点までの領域であり、[PV]はV/G比が臨界点から上記(V/G)2までの領域である。即ち、[PI]は領域[I]に隣接し、かつ侵入型転位を形成し得る最低の格子間シリコン型点欠陥濃度未満の格子間シリコン型点欠陥濃度を有する領域であり、[PV]は領域[V]に隣接し、かつOSFを形成し得る最低の空孔型点欠陥濃度未満の空孔型点欠陥濃度を有する領域である。なお、上記OSFは、結晶成長時にその核となる微小欠陥が導入され、半導体デバイスを製造する際の熱酸化工程等で顕在化し、作製したデバイスのリーク電流の増加等の不良原因になる。
【0023】
図2及び図4に示すように、シリコン融液12からインゴット25を引上げる際には、シリコン融液12のメニスカス12cに沿って流下する不活性ガスを吸引することによりシリコン融液12に生じる図2に示す対流12aを増大させ、図2に示す対流12bを減少させる。そしてこの対流12a,12bによりシリコン融液12とインゴット25との固液界面26が上凸状になるようにガス排出手段42を制御する。即ち、図4に示すように、メニスカス12cに沿って流下する不活性ガスを吸引すると、そのメニスカス12cに沿って流下する不活性ガスの流速が増す。一方、メニスカス12cにおけるシリコン融液12はそのメニスカス12cに添って方向を転換する不活性ガスの流れによってシリコン融液12全体に図2に示すような対流を生じさせる。
【0024】
このようにガス排出手段42を制御してメニスカス12cに添って流下する不活性ガスの流速を変化させながら、シリコン単結晶のインゴット25を引上げると、図2に示すように、石英るつぼ13の底部中央から固液界面26の中央に向って上昇した後に、固液界面26の外周縁近傍から石英るつぼ13の底部中央に流下する第1対流12aが増大し、石英るつぼ13の底部外周縁から周縁に沿って上昇した後に、上記第1対流12aに沿って流下する第2対流12bが減少する。上記第1対流12aの増大は固液界面26を押上げるので、固液界面26形状は上側に凸状となる。このように固液界面26が上凸状になるようにガス排出手段42を制御する。この結果、固液界面26の中心がシリコン融液12表面の延長面上より上方に位置するため、固液界面26の中心における鉛直方向の温度勾配が大きくなり、固液界面26の中心における鉛直方向の温度勾配と、固液界面26の周縁における鉛直方向の温度勾配との差が小さくなる。従って、略全長にわたって無欠陥で高品質のシリコン単結晶のインゴット25を比較的容易に製造できる。
【0025】
なお、上述した実施の形態では、筒部37の外周面に添って複数の鉛直管44が設けられる例を示したが、図6及び図7に示すように、複数の鉛直管44は筒部37の内周面に添わせてもよい。図6における複数の鉛直管44は筒部37の内周面に添って設けられ、その下端は膨出部41を貫通してガス吸引ノズル43に接続される場合を示す。図7における複数の鉛直管44は筒部37の内周面に比較的離れた状態で添って設けられ、その下端は膨出部41を迂回してガス吸引ノズル43に接続される場合を示す。このように複数の鉛直管44を筒部37の内周面に添わせても、その下端に接続されるガス吸引ノズル43により不活性ガスを吸引して固液界面26が上凸状になるように対流12aを増大させ、対流12bを減少させれば同様な効果を生じさせることができる。
【0026】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、膨出部とインゴットの間を流下する不活性ガスのうちインゴットの外周面下端に形成されるシリコン融液のメニスカスに沿って流下する不活性ガスを吸引してチャンバ外に排出するガス排出手段を備えたので、そのガス排出手段により不活性ガスを吸引してメニスカス近傍を流れる不活性ガスの流速を速めながら、インゴットを引上げると、メニスカス近傍を流れる不活性ガスによりシリコン融液に所定の対流が発生する。このようにシリコン融液に対流を起こさせてシリコン融液とインゴットとの固液界面が上凸状になるようにすれば、この固液界面の中心はシリコン融液表面の延長面上より上方に位置するため、固液界面の中心における鉛直方向の温度勾配が大きくなり、固液界面の中心における鉛直方向の温度勾配と、固液界面の周縁における鉛直方向の温度勾配との差が小さくなる。これにより、略全長にわたって無欠陥で高品質のシリコン単結晶のインゴットを比較的容易に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における引上げ装置を示す断面構成図。
【図2】その装置により生じるシリコン融液の対流を示す断面構成図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】図2のB部拡大断面図。
【図5】ボロンコフの理論を基づいた、V/G比が臨界点以上では空孔型点欠陥濃度が優勢なインゴットが形成され、V/G比が臨界点以下では格子間シリコン型点欠陥濃度が優勢なインゴットが形成されることを示す図。
【図6】鉛直管が筒部の内周面に添って設けられた別の引上げ装置を示す図4に対応する断面構成図。
【図7】鉛直管が筒部の内周面に添って設けられた更に別の引上げ装置を示す図4に対応する断面構成図。
【符号の説明】
10 引上げ装置
11 チャンバ
12 シリコン融液
12a,12b 対流
12c メニスカス
13 石英るつぼ
18 ヒータ
25 インゴット
26 固液界面
28 不活性ガス給排手段
36 熱遮蔽部材
37 筒部
41 膨出部
42 ガス排出手段
43 ガス吸引ノズル
43a ガス吸引口
44 鉛直管

Claims (3)

  1. チャンバ(11)内に設けられシリコン融液(12)が貯留された石英るつぼ(13)と、前記石英るつぼ(13)の外周面を包囲し前記シリコン融液(12)を加熱するヒータ(18)と、前記シリコン融液(12)から引上げられるインゴット(25)の外周面を包囲しかつ下端が前記シリコン融液(12)表面から間隔をあけて上方に位置する筒部(37)と前記筒部(37)の下部に筒内の方向に膨出して設けられた膨出部(41)とを有する熱遮蔽部材(36)と、前記チャンバ(11)の上部から前記チャンバ(11)の内部に不活性ガスを供給して前記膨出部(41)と前記インゴット(25)の間に不活性ガスを流下させる不活性ガス給排手段(28)とを備えたシリコン単結晶の引上げ装置において、
    前記膨出部(41)と前記インゴット(25)の間を流下する不活性ガスのうち前記インゴット(25)の外周面下端に形成されるシリコン融液(12)のメニスカス(12c)に沿って流下する前記不活性ガスを吸引して前記チャンバ(11)外に排出するガス排出手段(42)を備え、
    前記ガス排出手段(42)は前記不活性ガスを吸引することにより前記メニスカス (12c) に沿って流れる不活性ガスの流速を速めて前記シリコン融液(12)と前記インゴット(25)との固液界面(26)が上凸状になるように構成された
    ことを特徴とするシリコン単結晶の引上げ装置。
  2. ガス排出手段(42)は、メニスカス(12c)に臨みかつインゴット(25)を包囲するように扁平に形成されたガス吸引口(43a)が先端に設けられた複数のガス吸引ノズル(43)と、筒部(37)の内周面又は外周面に添って設けられ前記ガス吸引ノズル(43)の基端に下端が接続された複数の鉛直管(44)と、チャンバ(11)外に設けられ前記鉛直管(44)の上端が接続された吸引装置とを有する請求項1記載のシリコン単結晶の引上げ装置。
  3. シリコン融液(12)を貯留する石英るつぼ(13)を所定の回転速度で回転させ、前記シリコン融液(12)から引上げられるシリコン単結晶のインゴット(25)を包囲しかつ下端が前記シリコン融液(12)表面から間隔をあけて上方に位置する筒部(37)と前記筒部(37)の下部に筒内の方向に膨出して設けられた膨出部(41)とを有する熱遮蔽部材(36)を設け、前記チャンバ(11)の上部から前記チャンバ(11)の内部に不活性ガスを供給して前記膨出部(41)と前記インゴット(25)の間に不活性ガスを流下させつつ、前記インゴット(25)内が格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体の存在しないパーフェクト領域となる引上げ速度で前記インゴット(25)を引上げるシリコン単結晶の引上げ方法において、
    前記膨出部(41)と前記インゴット(25)の間を流下する不活性ガスのうち前記インゴット(25)の外周面下端に形成されるシリコン融液(12)のメニスカス(12c)に沿って流下する前記不活性ガスを吸引して前記チャンバ(11)外に排出するガス排出手段(42)を設け、
    前記不活性ガスを吸引することにより前記メニスカス (12c) に沿って流れる不活性ガスの流速を速めて前記シリコン融液(12)と前記インゴット(25)との固液界面(26)が上凸状になるように前記ガス排出手段(42)を制御する
    ことを特徴とするシリコン単結晶の引上げ方法。
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