JP4204828B2 - 自動利得制御装置、自動利得制御方法および自動利得制御プログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動利得制御装置、自動利得制御方法および自動利得制御プログラムに関し、特に、音声信号の利得制御に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の自動利得制御装置では、例えば、特許文献1に開示されているように、過大な雑音入力を抑圧するため、音声に対してあるしきい値を設け、音声入力がそのしきい値を超えた場合、一定の割合(アタック・タイム)で音声入力を減衰させ、その後は、一定の割合(リカバリ・タイム)で音声入力を増幅する方法があった。
【0003】
また、例えば、特許文献2に開示されているように、アナログ信号のレベルが大幅に変動しても、入力レベルを所定範囲内に保つことができるようにするために、その時の平均エネルギーでリカバリ・タイムを決定する方法もあった。
【0004】
【特許文献1】
特開昭58−141018号公報(第2頁、第4図)
【特許文献2】
特開平6−314942号公報(第5頁、第9図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の自動利得制御装置では、過大入力ILがあった直後に微小入力ISがあると、例えば、人間が話している最中に大きなパルス状またはバースト状のノイズが入力された場合、リカバリ・タイムが遅いと、過大入力ILに追従した直後には利得が十分に得られないため、微小入力ISの音声が聞き取り難くなるという問題があった。
【0006】
一方、リカバリ・タイムが速いと、アタックとリカバリが頻繁に起こるため、聴感上、違和感のある音声が出力されるという問題があった。
また、リカバリ・タイムを平均エネルギーで決定する方法では、平均にかかる拘束長により遅延が発生するため、リカバリ時の反応が遅れるだけでなく、その間に決定されたリカバリは直線的に行われるため、聴感上の不自然さを伴うという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、聴感上の違和感を抑制しつつ、過大入力抑圧後のリカバリを迅速化することが可能な自動利得制御装置、自動利得制御方法および自動利得制御プログラムを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、請求項1記載の自動利得制御装置によれば、入力された音声信号を遅延させる第1の遅延手段と、この遅延させた音声信号のレベルを制御してその制御した音声信号を出力する第1の減衰手段と、前記入力された音声信号に基づいて前記第1の減衰手段の利得を決定する利得決定手段とを備える自動利得制御装置であって、前記利得決定手段は、前記入力された音声信号を絶対値に変換する絶対値変換手段と、前記絶対値変換手段の出力信号のレベルを制御する第2の減衰手段と、前記第2の減衰手段の出力信号を遅延させる第2の遅延手段と、前記第2の遅延手段の出力信号のレベルと予め設定された基準となるレベルとを比較し、その比較した結果に基づいてリカバリ時における前記第1及び第2の減衰手段の利得の単位増加量およびリミッタ時における前記第1及び第2の減衰手段の利得の単位減衰量を出力する比較手段と、前記単位増加量を入力し平滑化を行う平滑化手段と、前記平滑化手段の出力信号および前記比較手段より出力された前記単位減衰量を入力し積分を行い前記第1及び第2の減衰手段の利得を決定する積分器手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、音声信号のレベルと予め設定された基準となるレベルとの比較結果に基づいて、リカバリ時における利得の単位増加量を蓄積することが可能となるとともに、前記減衰手段の利得を徐々に減少させながらリカバリを行うことが可能となり、聴感上の違和感を抑制しつつ、過大入力の抑圧後のリカバリを迅速化することが可能となる。
【0010】
また、請求項2記載の自動利得制御装置によれば、前記利得決定手段は、予め設定された一定値を出力する一定値出力手段をさらに備え、前記積分器手段は、前記一定値出力手段の出力信号、前記平滑化手段の出力信号および前記比較手段より出力された前記単位減衰量を入力し積分を行い前記第1及び第2の減衰手段の利得を決定することを特徴とする。
【0011】
これにより、予め設定された一定値の割合で減衰手段の利得を決定することができ、音声信号の入力レベルの変動に柔軟に追従することを可能としつつ、音声信号のアタックとリカバリを行うことができる。
また、請求項3記載の自動利得制御装置によれば、前記平滑化手段は、前記平滑化手段への入力信号を増幅する第1の増幅手段と、前記平滑化手段の出力信号を遅延する第3の遅延手段と、前記第3の遅延手段の出力信号を増幅する第2の増幅手段と、前記第1の増幅手段の出力信号および前記第2の増幅手段の出力信号を加算する加算手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
これにより、リカバリ時における前記減衰手段の利得の単位増加量を蓄積して保持することが可能となり、過大入力の抑圧直後の音声信号の利得を増大させることが可能となることから、過大入力の抑圧後のリカバリを迅速化することが可能となる。
【0013】
また、請求項4記載の自動利得制御方法によれば、入力音声信号を遅延する第1遅延ステップと、当該第1遅延ステップで遅延した音声信号のレベルを調整して出力する第1調整ステップと、入力音声信号を絶対値化する絶対値化ステップと、当該絶対値化ステップで絶対値化した音声信号のレベルを調整する第2調整ステップと、当該第2調整ステップでレベルを調整した音声信号を遅延する第2遅延ステップと、当該第2遅延ステップで遅延した音声信号のレベルを所定のしきい値と比較するレベル比較ステップと、当該レベル比較ステップでの比較結果に基づいて、前記音声信号のレベルのリカバリ時の利得の単位増加量およびリミッタ時の利得の単位減衰量を決定する利得決定ステップと、当該利得決定ステップで決定した前記単位増加量を蓄積する単位増加量蓄積ステップと、前記第2遅延ステップで遅延した音声信号のレベルが前記しきい値以上であると判断されたときは、前記第1及び第2調整ステップの音声信号の利得が当該音声信号のゼロクロス時に減衰し、前記第2遅延ステップで遅延した音声信号のレベルが前記しきい値を下回ったと判断されたときは、前記第1及び第2調整ステップの音声信号の利得が当該音声信号のゼロクロス時に係わらず増大するように、前記利得決定ステップで決定した利得の単位減衰量および前記単位増加量蓄積ステップで蓄積した利得の単位増加量に基づいて前記第1調整ステップと第2調整ステップを制御する制御ステップとを備えることを特徴とする。
【0014】
これにより、リカバリ時の利得を徐々に減少させながら、過大入力の抑圧直後の音声信号の利得を増大させることにより、聴感上の違和感を抑制しつつ、過大入力の抑圧後のリカバリを迅速化することが可能となる。
また、請求項5記載の自動利得制御プログラムによれば、入力音声信号を遅延する第1遅延ステップと、当該第1遅延ステップで遅延した音声信号のレベルを調整して出力する第1調整ステップと、入力音声信号を絶対値化する絶対値化ステップと、当該絶対値化ステップで絶対値化した音声信号のレベルを調整する第2調整ステップと、当該第2調整ステップでレベルを調整した音声信号を遅延する第2遅延ステップと、当該第2遅延ステップで遅延した音声信号のレベルを所定のしきい値と比較するレベル比較ステップと、当該レベル比較ステップでの比較結果に基づいて、前記音声信号のレベルのリカバリ時の利得の単位増加量およびリミッタ時の利得の単位減衰量を決定する利得決定ステップと、当該利得決定ステップで決定した前記単位増加量を蓄積する単位増加量蓄積ステップと、前記第2遅延ステップで遅延した音声信号のレベルが前記しきい値以上であると判断されたときは、前記第1及び第2調整ステップの音声信号の利得が当該音声信号のゼロクロス時に減衰し、前記第2遅延ステップで遅延した音声信号のレベルが前記しきい値を下回ったと判断されたときは、前記第1及び第2調整ステップの音声信号の利得が当該音声信号のゼロクロス時に係わらず増大するように、前記利得決定ステップで決定した利得の単位減衰量および前記単位増加量蓄積ステップで蓄積した利得の単位増加量に基づいて前記第1調整ステップと第2調整ステップを制御する制御ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0015】
これにより、音声信号のレベルとしきい値との比較結果に基づいて、リカバリ時における利得を制御することが可能となり、聴感上の違和感を抑制しつつ、過大入力の抑圧後のリカバリを迅速化することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係る自動利得制御装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る自動利得制御装置の構成を示すブロック図である。
【0017】
図1において、自動利得制御装置には、音声入力を遅延させる遅延素子1、遅延素子1で遅延させられた音声入力の最大値を調整するブースト回路2、ATT値決定部4で決定されたATT値に基づいて音声入力の利得を調整する音量調節器3およびATT値を決定するATT値決定部4が設けられている。
なお、ブースト回路2は、音量調節器3により得られる音声出力の最大値を補正するためのもので、しきい値設定器15で設定されるしきい値Aが大きいと、音声出力の最大値は大きくなり、しきい値設定器15で設定されるしきい値Aが小さいと、音声出力の最大値は小さくなる。
【0018】
このため、しきい値Aが大きい時には、ブースト回路2の利得を小さくし、しきい値Aが小さい時には、ブースト回路2の利得を大きくすることにより、しきい値Aに依存することなく、音声出力の最大値を調整することができる。
また、ATT値決定部4には、音声入力を絶対値化する絶対値化回路11、絶対値化された音声入力の利得を調整する音量調節器12、絶対値化された音声入力を遅延させる遅延素子13、遅延素子13で遅延させられた音声入力としきい値Aとの比較結果に基づいて、減圧値Cおよび昇圧値Dを出力する比較器14、しきい値Aを設定するしきい値設定器15、比較器14から出力される昇圧値Dの利得を調整するブースト回路16、ATT値決定部4で決定されたATT値を更新するATT更新部17および音声入力のゼロクロス(無音状態)を検出するゼロクロス検出器18が設けられている。
【0019】
なお、遅延素子13は、前回のATT値ATT(t−1)により音量調節器12で利得調整された音声信号を比較器14に入力させないためのものである。
また、ATT更新部17には、比較器14から出力される昇圧値Dの平滑化を行う平滑器21、固定値設定器27で設定された固定値E、比較器14から出力される減圧値C、平滑器21から出力される出力値および遅延素子28で遅延されたATT値の加減算を行う加減算器26、固定値Eを設定する固定値設定器27および加減算器26から出力されるATT値を遅延させる遅延素子28が設けられている。
【0020】
ここで、遅延素子28は、ATT値の増減分ΔATTから今回のATT値ATT(t−0)を得るために、前回のATT値ATT(t−1)を保持し、以下の(1)式により、今回のATT値ATT(t−0)を求めることができる。
ATT(t−0)=ATT(t−1)+ΔATT ・・・(1)
また、平滑器21には、ブースト回路16からの出力値を増幅する増幅器22、増幅器22からの出力値と増幅器24からの出力値とを加算する加算器23、遅延素子25からの出力値を増幅する増幅器24および加算器23からの出力値を遅延させる遅延素子25が設けられている。
【0021】
ここで、平滑器21では、増幅器22、24のゲインを適当な値に設定することにより平滑化を行うことができ、例えば、平滑器21からの今回の出力smooth_out(t−0)は、例えば、以下の式(2)で求めることができる。
smooth_out(t−0)
=0.0001×smooth_in
+0.9999×smooth_out(t−1) ・・・(2)
ただし、smooth_inは平滑器21の入力、smooth_out(t−1)は、平滑器21からの前回の出力である。
【0022】
そして、音声信号は、遅延素子1および絶対値化回路11に入力され、遅延素子1に入力された音声信号は所定量だけ遅延させられた後、ブースト回路2に入力される。
そして、ブースト回路2に入力された音声信号は最大値が調整された後、音量調節器3に入力され、ATT値決定部4で決定されたATT値に基づいて音声入力の利得が調整される。
【0023】
一方、絶対値化回路11に入力された音声信号は絶対値化された後、音量調節器12に入力され、ATT値決定部4で決定されたATT値に基づいて音声入力の利得が調整される。
そして、音量調節器12で利得調整された音声信号は遅延素子13で遅延させられた後、比較器14のB入力に入力され、しきい値設定器15で設定されたしきい値Aと比較される。
【0024】
ここで、比較器14は、B入力に入力された音声信号のレベルがしきい値Aより大きい場合、減圧値Cを加減算器26に出力するとともに、ブースト回路16を介し昇圧値Dを平滑器21に出力する。
一方、比較器14は、B入力に入力された音声信号のレベルがしきい値A以下の場合、減圧値Cとして0を加減算器26に出力するとともに、ブースト回路16を介し昇圧値Dとして0を平滑器21に出力する。
【0025】
平滑器21では、昇圧値Dが入力されると、増幅器22にて昇圧値Dが増幅され、加算器23に入力される。
そして、加算器23では、増幅器22で増幅された昇圧値Dと増幅器24からの出力値とが加算されて、加減算器26に出力されるとともに、遅延素子25に入力される。
【0026】
そして、遅延素子25に入力された加算器23からの出力は所定量だけ遅延された後、増幅器24を介して加算器23に戻される。
また、加減算器26では、比較器14から出力された減圧値Cおよび平滑器21からの出力値が入力されると、比較器14から出力された減圧値Cを増幅器28の出力値から減算するとともに、平滑器21からの出力値を加算し、さらに、固定値設定器27で設定された固定値Eを加算する。
【0027】
そして、これらの加減算結果をATT値としてゼロクロス検出器18に出力するとともに、遅延素子28を介して加減算器26に戻す。
そして、ATT値がゼロクロス検出器18に出力されると、ゼロクロス検出器18は、比較器14のB入力に入力される音声信号のレベルがしきい値Aより大きいかどうかを判定する。
【0028】
そして、ゼロクロス検出器18は、比較器14のB入力に入力される音声信号のレベルがしきい値Aより大きい場合、ATT更新部17から出力される現在のATT値をホールドするとともに、ATT更新部17の動作を停止させる。加えて、ゼロクロス検出器18は、遅延素子1で遅延された音声信号に基づいて音声信号のゼロクロス(無音状態)も判定し、ホールドしたATT値をゼロクロス時に音量調節器3、12に出力する。
【0029】
そして、ATT値がゼロクロス検出器18を介して音量調節器3、12に出力されると、音量調節器3は、このATT値に基づいて、ブースト回路2から出力された音声信号の利得を調整するとともに、音量調節器12は、このATT値に基づいて、絶対値化回路11で絶対値化された音声信号の利得を調整する。
ここで、ATT更新部17で更新されたATT値をゼロクロス時に音量調節器3、12に出力することにより、音声信号の利得を調整する際の音声の歪みを低減することができ、聴感上の違和感を抑制することができる。
【0030】
一方、ゼロクロス検出器18は、比較器14のB入力に入力される音声信号のレベルがしきい値A以下の場合、ATT更新部17で更新されたATT値を即座に音量調節器3、12に出力する。
図2(a)は、図1のATT更新部から出力されるATT値の推移状態を示す図、図2(b)は、図1の比較器のB入力波形の一例を示す図、図2(c)は、本発明の一実施形態に係る自動利得制御装置の音声出力波形を示す図である。
【0031】
図2の時刻T1以前において、比較器14のB入力に入力された音声信号のレベルがしきい値A以下であるとすると、減圧値Cとして0が比較器14から加減算器26に出力されるとともに、昇圧値Dとして0が比較器14から平滑器21に出力される。
このため、遅延素子28で遅延させられたATT値が加算器23を介してゼロクロス検出器18に出力され、ゼロクロス検出器18は、このATT値を音量調節器3、12に即座に出力する。
【0032】
この結果、時刻T1以前では、遅延素子1による遅延時間TDだけ遅れて、比較器14のB入力に入力される音声信号に対応した波形がそのまま音声出力として出力される。
そして、例えば、時刻T1において、比較器14のB入力に入力される音声信号のレベルがしきい値Aを超えたものとすると、減圧値Cが比較器14から加減算器26に出力されるとともに、昇圧値Dが比較器14から平滑器21に出力される。
【0033】
ここで、減圧値Cが比較器14から加減算器26に出力されると、遅延素子28により遅延させられたATT値から減圧値Cを減算することで、減衰されたATT値が、ゼロクロス検出器18に出力される。
そして、ゼロクロス検出器18は、減衰されたATT値が入力されると、この減衰されたATT値を音声入力のゼロクロス時に音量調節器3、12に出力する。
【0034】
ここで、音量調節器3、12は、減衰されたATT値が入力されると、音量調節器3は、このATT値に基づいてブースト回路2から出力された音声信号のレベルを抑圧するとともに、音量調節器12は、このATT値に基づいて絶対値化回路11で絶対値化された音声信号のレベルを抑圧する。
この結果、時刻T1以降では、図2(c)に示すように、過大入力P1が抑圧された波形を音声出力として出力することができる。
【0035】
また、昇圧値Dが平滑器21に出力されると、加算器23にて、遅延素子25で遅延された蓄積値に昇圧値Dが逐次加算されるので、平滑器21から出力される出力値は徐々に増加する。
そして、ATT値の減衰量が増加し、時刻T2において、比較器14のB入力に入力される音声信号のレベルがしきい値A以下になると、減圧値Cとして0が比較器14から加減算器26に出力される。
【0036】
このため、遅延素子28で遅延させられたATT値に平滑器21からの出力を加算した値が、更新後のATT値としてゼロクロス検出器18に出力される。
ここで、比較器14のB入力に入力される音声信号のレベルがしきい値A以下になった直後には、平滑器21には昇圧値Dが蓄積されているので、平滑器21からの出力値は大きな値をとることができる。
【0037】
そして、加減算器26では、平滑器21に蓄積された昇圧値Dが遅延素子28で遅延させられた前回のATT値に加算されるので、比較器14のB入力に入力される音声信号のレベルがしきい値A以下になった直後には、更新後のATT値を急激に増大させることができる。
このため、過大入力P1を抑圧した後の音量調節器3、12の利得を急速に回復させることが可能となり、過大入力P1の直後に入力される微小音声を容易に聞き取ることが可能となる。
【0038】
そして、比較器14のB入力に入力される音声信号のレベルがしきい値A以下になると、昇圧値Dとして0が平滑器21に出力される。
このため、加算器23にて、遅延素子25で遅延された蓄積値に0が逐次加算され、平滑器21から出力される出力値は徐々に減少する。
この結果、加減算器26に入力される平滑器21からの出力値は徐々に減少し、加減算器26から出力されるATT値の増加量が徐々に減少するため、音量調節器3、12の利得を急速に回復させた後に、音量調節器3、12の利得の増加量を緩やかにすることができる。
【0039】
このため、リカバリ時の利得の傾きを徐々に緩やかにすることが可能となり、過大入力P1を抑圧した後のリカバリ時の利得を急激に増加させた場合においても、固定リカバリ直線にスムーズに繋げることを可能として、聴感上の違和感を抑制することが可能となる。
そして、比較器14のB入力に入力される音声信号のレベルがしきい値A以下である状態が継続すると、平滑器21には、昇圧値Dとして0が出力され続ける。
【0040】
このため、遅延素子25で遅延された蓄積値に0が逐次加算され、平滑器21から出力される出力値は徐々に減少し、時刻T3において、平滑器21からの出力は0になる。
この結果、固定値設定器27からの固定値Eの入力がない場合には、遅延素子28で遅延させられたATT値が加減算器26を介してそのままゼロクロス検出器18に出力され、時刻T4では、ATT値は、図2(a)の点線で示すように一定値を維持する。
【0041】
一方、固定値設定器27からの固定値Eを加減算器26に入力することにより、時刻T4では、図2(a)の実線で示すように、ATT値を徐々に増加させることが可能となる。
このため、加減算器26に固定値Eを入力することにより、自動利得制御装置の調整不良や予期しない事態の発生などにより、ATT値が低い値から復帰できなくなるようなトラブルを防止することができる。
【0042】
そして、時刻T5において、比較器14のB入力に入力される音声信号のレベルがしきい値Aを再び超えたものとすると、減圧値Cが比較器14から加減算器26に出力されるとともに、昇圧値Dが比較器14から平滑器21に出力される。
ここで、減圧値Cが比較器14から加減算器26に出力されると、遅延素子28により遅延させられたATT値から減圧値Cを減算することで、減衰されたATT値が、ゼロクロス検出器18に出力される。
【0043】
そして、ゼロクロス検出器18は、減衰されたATT値が入力されると、この減衰されたATT値を音声入力のゼロクロス時に音量調節器3、12に出力する。
ここで、音量調節器3、12は、減衰されたATT値が入力されると、音量調節器3は、このATT値に基づいてブースト回路2から出力された音声信号のレベルを抑圧するとともに、音量調節器12は、このATT値に基づいて絶対値化回路11で絶対値化された音声信号のレベルを抑圧する。
【0044】
この結果、時刻T5以降では、図2(c)に示すように、過大入力P2が抑圧された波形を音声出力として出力することができる。
また、昇圧値Dが平滑器21に出力されると、加算器23にて、遅延素子25で遅延された蓄積値に昇圧値Dが逐次加算され、平滑器21から出力される出力値は徐々に増加する。
【0045】
ここで、過大入力P2のレベルが過大入力P1のレベルよりも小さいものとすると、過大入力P2の抑圧時には、過大入力P1の抑圧時に比べて、平滑器21に出力される昇圧値Dの蓄積量が減少する。
このため、過大入力P2を抑圧した後の音量調節器3、12の利得の昇圧時の傾きを、過大入力P1を抑圧した後の音量調節器3、12の利得の昇圧時の傾きよりも緩やかに設定することができ、過大入力P1、P2のレベルに応じてリカバリ時の利得上昇の急峻度を変更することが可能となることから、聴感上の違和感を抑制することが可能となる。
【0046】
図3(a)は、本発明の一実施形態に係る自動利得制御装置の音声入力波形を示す図、図3(b)は、本発明の一実施形態に係る自動利得制御装置の音声出力波形を示す図、図3(c)は、図3(a)の音声入力波形が入力された時のATT値の推移状態を示す図である。
図3(a)に示すように、時刻T11において、バースト状の過大入力P3が音声信号に加わり、時刻T12において、パルス状の過大入力P4が音声信号に加わったものとする。
【0047】
この場合、図3(c)に示すように、過大入力P3、P4の入力が検知されると、音声信号のATT(ゲイン)値が下がり、図3(b)に示すように、バースト状の過大入力P3およびパルス状の過大入力P4が抑圧される。
ここで、バースト状の過大入力P3のレベルがパルス状の過大入力P4のレベルよりも大きいものとすると、図3(c)に示すように、バースト状の過大入力P3の入力時の利得の減衰量の方がパルス状の過大入力P4の入力時の利得の減衰量よりも大きくなる。
【0048】
そして、バースト状の過大入力P3およびパルス状の過大入力P4の抑圧後は、ATT値が急速に立ち上がった後、ATT値の立ち上がり量が徐々に緩やかになる。
このため、過大入力P3、P4の抑圧直後のリカバリ時の利得を急激に増加させて、過大入力P3、P4後に入力される微小音声が聞き取り難くなることを防止することが可能となるとともに、リカバリ時の利得がある程度増加した後には、ATT値の増加量を抑制して、固定リカバリ直線にスムーズに繋げることが可能となり、聴感上の違和感を抑制することが可能となる。
【0049】
ここで、バースト状の過大入力P3のレベルがパルス状の過大入力P4のレベルよりも大きいものとすると、バースト状の過大入力P3の抑圧後の利得上昇の急峻度の方がパルス状の過大入力P4の抑圧後の利得上昇の急峻度よりも大きくなる。
このため、過大入力P3、P4のレベルに応じてリカバリ時の利得上昇の急峻度を変更することが可能となり、聴感上の違和感を抑制することが可能となる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、音声信号のレベルと予め設定された基準となるレベルとの比較結果に基づいて、リカバリ時における利得の単位増加量の蓄積量を制御することにより、リカバリ時の利得を徐々に減少させながら、過大入力の抑圧直後の音声信号の利得を増大させることが可能となり、過大入力の抑圧後のリカバリを迅速化することが可能となる。
また、過大入力がなく、音声入力が比較的一定レベルの時は、リカバリタイムを緩やかに設定できるので、聴感上の違和感を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動利得制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は、図1のATT更新部から出力されるATT値の推移状態を示す図、図2(b)は、図1の比較器のB入力波形の一例を示す図、図2(c)は、本発明の一実施形態に係る自動利得制御装置の音声出力波形を示す図である。
【図3】図3(a)は、本発明の一実施形態に係る自動利得制御装置の音声入力波形を示す図、図3(b)は、本発明の一実施形態に係る自動利得制御装置の音声出力波形を示す図、図3(c)は、図3(a)の音声入力波形が入力された時のATT値の推移状態を示す図である。
【符号の説明】
1、13、25、28 遅延素子
2、16 ブースト回路
3、12 音量調節器
4 ATT値決定部
11 絶対値化回路
14 比較器
15 しきい値設定器
17 ATT更新部
18 ゼロクロス検出器
21 平滑器
22、24 増幅器
23 加算器
26 加減算器
27 固定値設定器
Claims (5)
- 入力された音声信号を遅延させる第1の遅延手段と、この遅延させた音声信号のレベルを制御してその制御した音声信号を出力する第1の減衰手段と、前記入力された音声信号に基づいて前記第1の減衰手段の利得を決定する利得決定手段とを備える自動利得制御装置であって、
前記利得決定手段は、
前記入力された音声信号を絶対値に変換する絶対値変換手段と、
前記絶対値変換手段の出力信号のレベルを制御する第2の減衰手段と、
前記第2の減衰手段の出力信号を遅延させる第2の遅延手段と、
前記第2の遅延手段の出力信号のレベルと予め設定された基準となるレベルとを比較し、その比較した結果に基づいてリカバリ時における前記第1及び第2の減衰手段の利得の単位増加量およびリミッタ時における前記第1及び第2の減衰手段の利得の単位減衰量を出力する比較手段と、
前記単位増加量を入力し平滑化を行う平滑化手段と、
前記平滑化手段の出力信号および前記比較手段より出力された前記単位減衰量を入力し積分を行い前記第1及び第2の減衰手段の利得を決定する積分器手段と、
を備えることを特徴とする自動利得制御装置。 - 前記利得決定手段は、予め設定された一定値を出力する一定値出力手段をさらに備え、
前記積分器手段は、前記一定値出力手段の出力信号、前記平滑化手段の出力信号および前記比較手段より出力された前記単位減衰量を入力し積分を行い前記第1及び第2の減衰手段の利得を決定することを特徴とする請求項1記載の自動利得制御装置。 - 前記平滑化手段は、
前記平滑化手段への入力信号を増幅する第1の増幅手段と、
前記平滑化手段の出力信号を遅延する第3の遅延手段と、
前記第3の遅延手段の出力信号を増幅する第2の増幅手段と、
前記第1の増幅手段の出力信号および前記第2の増幅手段の出力信号を加算する加算手段とを備えることを特徴とする請求項1または2記載の自動利得制御装置。 - 入力音声信号を遅延する第1遅延ステップと、
当該第1遅延ステップで遅延した音声信号のレベルを調整して出力する第1調整ステップと、
入力音声信号を絶対値化する絶対値化ステップと、
当該絶対値化ステップで絶対値化した音声信号のレベルを調整する第2調整ステップと、
当該第2調整ステップでレベルを調整した音声信号を遅延する第2遅延ステップと、
当該第2遅延ステップで遅延した音声信号のレベルを所定のしきい値と比較するレベル比較ステップと、
当該レベル比較ステップでの比較結果に基づいて、前記音声信号のレベルのリカバリ時の利得の単位増加量およびリミッタ時の利得の単位減衰量を決定する利得決定ステップと、
当該利得決定ステップで決定した前記単位増加量を蓄積する単位増加量蓄積ステップと、
前記第2遅延ステップで遅延した音声信号のレベルが前記しきい値以上であると判断されたときは、前記第1及び第2調整ステップの音声信号の利得が当該音声信号のゼロクロス時に減衰し、
前記第2遅延ステップで遅延した音声信号のレベルが前記しきい値を下回ったと判断されたときは、前記第1及び第2調整ステップの音声信号の利得が当該音声信号のゼロクロ ス時に係わらず増大するように、
前記利得決定ステップで決定した利得の単位減衰量および前記単位増加量蓄積ステップで蓄積した利得の単位増加量に基づいて前記第1調整ステップと第2調整ステップを制御する制御ステップとを備えることを特徴とする自動利得制御方法。 - 入力音声信号を遅延する第1遅延ステップと、
当該第1遅延ステップで遅延した音声信号のレベルを調整して出力する第1調整ステップと、
入力音声信号を絶対値化する絶対値化ステップと、
当該絶対値化ステップで絶対値化した音声信号のレベルを調整する第2調整ステップと、
当該第2調整ステップでレベルを調整した音声信号を遅延する第2遅延ステップと、
当該第2遅延ステップで遅延した音声信号のレベルを所定のしきい値と比較するレベル比較ステップと、
当該レベル比較ステップでの比較結果に基づいて、前記音声信号のレベルのリカバリ時の利得の単位増加量およびリミッタ時の利得の単位減衰量を決定する利得決定ステップと、
当該利得決定ステップで決定した前記単位増加量を蓄積する単位増加量蓄積ステップと、
前記第2遅延ステップで遅延した音声信号のレベルが前記しきい値以上であると判断されたときは、前記第1及び第2調整ステップの音声信号の利得が当該音声信号のゼロクロス時に減衰し、
前記第2遅延ステップで遅延した音声信号のレベルが前記しきい値を下回ったと判断されたときは、前記第1及び第2調整ステップの音声信号の利得が当該音声信号のゼロクロス時に係わらず増大するように、
前記利得決定ステップで決定した利得の単位減衰量および前記単位増加量蓄積ステップで蓄積した利得の単位増加量に基づいて前記第1調整ステップと第2調整ステップを制御する制御ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする自動利得制御プログラム。
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