JP4204406B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くの内燃機関では、各気筒に吸入される吸気ガスの空燃比を最適に調整するために、各気筒への筒内吸入ガス量を推定し、推定された筒内吸入ガス量に基づいて吸気ガス内に噴射する燃料噴射量が設定される。このように、機関運転状態に応じて吸気ガスの空燃比を最適にすることにより、燃料の燃焼を最適に維持することができるようになる。各気筒への筒内吸入ガス量の推定は様々な方法で行われており、例えば、吸気管に配置されたエアフロメータによって検出された吸気管通過空気流量に基づく方法や、吸気管に配置された圧力センサによって検出された吸気管内圧力に基づく方法等が挙げられる。
【0003】
一方、近年において吸気弁および排気弁の開閉弁特性、例えば、位相角、作用角、リフト量等を変更可能な可変動弁機構が提案されている。このような可変動弁機構では、各気筒への筒内吸入ガス量を、スロットル弁によらず、吸気弁および排気弁の開閉弁特性を変えることによって調整することができる(以下、「ノンスロ状態」と称す)。このため、例えば、スロットル弁を絞ることによって発生するポンピングロスを低減しつつ、各気筒への筒内吸入ガス量を最適に調整することができる。
【0004】
しかしながら、このような可変動弁機構を用いた場合、各気筒への筒内吸入ガス量を推定するのが困難である。すなわち、エアフロメータを用いた方法によると、エアフロメータの応答性が低いことにより機関運転状態が過渡状態にあるときには正確な筒内吸入ガス量を推定できない。一方、圧力センサを用いた方法によると、機関運転状態がノンスロ状態にあるときに、吸気管内に負圧がほとんど発生しないため、筒内吸入ガス量を推定できない。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1に開示されているように、吸気弁および排気弁の開閉弁特性をパラメータとして各気筒への筒内吸入ガス量を推定する装置が提案されている。特に、吸気弁のリフト量が非常に小さいときには筒内吸入ガス量が少なく、よって筒内吸入ガス量の変化に対する空燃比の変化の割合が大きくなるため、特許文献1に記載の装置では、吸気弁のリフト量が非常に小さい場合に、吸気弁のリフト量および機関回転数に基づいて各気筒における筒内吸入ガス量を推定している。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−256930号公報
【特許文献2】
特開2002−180892号公報
【特許文献3】
特開2001−41095号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、吸気弁のリフト量等から筒内吸入ガス量を推定する場合には、リフト量等と筒内吸入ガス量との関係を予めマップとして求めるか、またはこれらの関係をモデル化した計算式を用いる。ところが、吸気弁にデポジット等が付着したり、吸気弁をリフトさせる動弁機構が経年劣化したりすると、リフト量等と筒内吸入ガス量との関係がマップ化またはモデル化したこれらの関係から異なるものとなってしまう。したがって、例えば吸気弁にデポジット等が付着して実質的なリフト量が小さくなり、筒内吸入ガス量が減少していても、推定される筒内吸入ガス量はデポジット等の付着していないときの筒内吸入ガス量である。そしてこの場合、このような推定誤差を含んでいる筒内吸入ガス量に基づいて燃料噴射量が決定されてしまうため、吸気ガスの空燃比は最適な値となっておらず、結果的に燃焼の悪化や、排気エミッションの悪化を招いてしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、吸気弁へのデポジット付着等による筒内吸入ガス量の推定誤差の小さい内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第1の発明では、リフト量可変な吸気弁と、該吸気弁へのリフト量指示値に基づいて筒内吸入ガス量を推定するメインガス量推定手段とを具備する内燃機関の制御装置において、吸気管通過空気流量を検出する検出装置と、該検出装置によって検出された吸気管通過空気流量に基づいて実際の筒内吸入ガス量を算出するサブガス量算出手段とをさらに具備し、吸気弁開弁中に吸気弁通過ガス流速がほぼ音速となるような運転期間中に上記メインガス量推定手段によって推定された筒内吸入ガス量と上記サブガス量算出手段によって算出された実際の筒内吸入ガス量との差または比を算出し、上記メインガス量推定手段によって推定された筒内吸入ガス量を上記算出された差または比に基づいて補正した補正筒内吸入ガス量に基づいて内燃機関を制御する。
第1の発明によれば、メインガス量推定手段がリフト量指示値に基づいて筒内吸入ガス量を推定するため、リフト量可変な吸気弁を用いても、すなわち可変動弁機構を用いても筒内吸入ガス量を推定することができる。さらに、メインガス量推定手段によって推定された筒内吸入ガス量を、サブガス量算出手段によって吸気管通過空気量の検出装置から算出された実際の筒内吸入ガス量を利用して補正したものが補正筒内吸入ガス量とされるため、補正筒内吸入ガス量からはデポジットの付着等の影響が排除されている。したがって、上述したように算出される補正筒内吸入ガス量は、実際の筒内吸入ガス量とほぼ同一な値となっている。
なお、メインガス量推定手段とは、少なくともリフト量指示値を含む一つまたはそれ以上のパラメータに基づいてマップまたはモデル式によって筒内吸入ガス量を推定する手段を意味する。後述する実施形態では、筒内吸入ガス量モデル全体、または吸気弁モデルがメインガス量推定手段である。サブガス量算出手段とは、吸気管内通過空気量の検出装置、例えばエアフロメータによって検出された吸気管内通過空気量に基づいて筒内吸入ガス量を算出する手段を意味する。なお、エアフロメータの検出値からサブガス量算出手段によって算出される筒内吸入ガス量は特定の機関運転状態にあるときにのみ正確であり、このときには実際の筒内吸入ガス量を高い精度で算出することができる。
さらに、吸気弁開弁中に吸気弁通過ガス流速がほぼ音速になると、筒内吸入ガス量は吸気弁のリフト量に大きく依存する。したがって、吸気弁のリフト量の差異が筒内吸入ガス量に大きく反映される。第1の発明によれば、吸気弁開弁中に吸気弁通過ガス流速がほぼ音速になるような期間に推定された筒内吸入ガス量と実際の筒内吸入ガス量との差または比が算出されるため、算出された差または比は吸気弁のリフト量における誤差を正確に算出することができる。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、上記補正筒内吸入ガス量は、上記吸気弁へのリフト量指示値VLに基づいて上記メインガス量推定手段によって推定された筒内吸入ガス量Mccalと上記リフト量指示値に対する補正関数α(VL)とを乗算した値Mccal・α(VL)であり、上記補正関数α(VL)は、吸気弁のリフト量に対する基本補正関数をf(VL)、所定リフト量VL0における上記メインガス量推定手段によって推定された筒内吸入ガス量に対する上記サブガス量算出手段によって算出された実際の筒内吸入ガス量の比をα(VL0)とすると、下記式(2)によって算出される。
【数2】
第2の発明によれば、リフト量指示値に応じて異なる補正関数の値が、メインガス量推定手段によって推定された筒内吸入ガス量に乗算されて補正筒内吸入ガス量とされ、よって全てのリフト量範囲において補正筒内吸入ガス量を実際の筒内吸入ガス量に近い値とすることができる。
【0011】
第3の発明によれば、上記課題を解決するために、リフト量可変な吸気弁と、該吸気弁へのリフト量指示値に基づいて筒内吸入ガス量を算出するメインガス量推定手段とを具備し、上記メインガス量推定手段によって推定された筒内吸入ガス量に基づいて内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、吸気管通過空気流量を検出する検出装置と、該検出装置によって検出された吸気管通過空気流量に基づいて実際の筒内吸入ガス量を算出するサブガス量算出手段とをさらに具備し、吸気弁開弁中に吸気弁通過ガス流速がほぼ音速となるような運転期間中に上記メインガス量推定手段によって推定された筒内吸入ガス量と上記サブガス量算出手段によって算出された筒内吸入ガス量との差または比を算出し、次回以降においては、該算出された差または比に基づいてリフト量指示値を補正した補正リフト量指示値に基づいて吸気弁をリフトさせると共に、上記メインガス量推定手段は補正前のリフト量指示値に基づいて筒内吸入ガス量を推定する。
第3の発明によれば、第一の発明と同様な理由で、リフト量可変な吸気弁を用いても筒内吸入ガス量を推定することができる。さらに、リフト量指示値を、サブガス量算出手段によって吸気管通過空気量の検出装置から算出された実際の筒内吸入ガス量を利用して補正したものが補正リフト量指示値とされ、このリフト量指示値に基づいて吸気弁がリフトされる。補正リフト量指示値に基づいて吸気弁をリフトすると、有効リフト量(デポジットの付着等の影響が除去された、すなわち実際の筒内吸入ガス量に影響を及ぼすリフト量)が補正前のECUによって決定されたリフト量指示値とほぼ同一になる。したがって、実際の筒内吸入ガス量は、補正前のリフト量指示値に基づいてメインガス量推定手段によって推定される筒内吸入ガス量とほぼ同一となる。第3の発明では、筒内吸入ガス量を補正前のリフト量指示値に基づいてメインガス量推定手段によって推定しているため、推定された筒内吸入ガス量と実際の筒内吸入ガス量とがほぼ同一となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1に概略的に示した機関本体1は筒内噴射型火花点火式内燃機関を示す。しかしながら、本発明を別の火花点火式内燃機関や圧縮自着火式内燃機関に適用してもよい。
【0014】
図1に示したように、本発明の第一の実施形態では機関本体1はシリンダブロック2と、シリンダブロック2内で往復動するピストン3と、シリンダブロック2上に固定されたシリンダヘッド4とを具備する。ピストン3とシリンダヘッド4との間には燃焼室5が形成される。シリンダヘッド4には各気筒毎に吸気弁6と、吸気ポート7と、排気弁8と、排気ポート9とが配置される。さらに、図1に示したようにシリンダヘッド4の内壁面の中央部には点火プラグ10が配置され、シリンダヘッド4内壁面周辺部には燃料噴射弁11が配置される。またピストン3の頂面には燃料噴射弁11の下方から点火プラグ10の下方まで延びるキャビティ12が形成されている。
【0015】
各気筒の吸気ポート7は下流側吸気管13を介してサージタンク14に連結され、サージタンク14は上流側吸気管15を介してエアクリーナ16に連結される。上流側吸気管15内にはステップモータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置される。また、スロットル弁18上流の上流側吸気管15には、上流側吸気管15を通過する空気(吸気)の流量を検出するためのエアフロメータ19が配置される。一方、各気筒の排気ポート9は排気管20に連結され、この排気管20は排気浄化装置21に連結される。
【0016】
電子制御ユニット(ECU)31はディジタルコンピュータからなり、双方向性バス32を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)33、ROM(リードオンリメモリ)34、CPU(マイクロプロセッサ)35、入力ポート36および出力ポート37を具備する。下流側吸気管13には、吸気管内の吸気ガス(新気)の圧力を検出するための吸気管内圧力センサ40が設けられており、吸気管内圧力センサ40は吸気管内圧力に比例した出力電圧を発生し、この出力電圧が対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
【0017】
また、スロットル弁18の開度を検出するためのスロットル開度センサ41と、内燃機関の周囲の大気の温度、または上流側吸気管15に吸入される空気の温度(吸気温)を検出するための大気温度センサ42と、内燃機関の周囲の大気の圧力、または上流側吸気管15に吸入される空気の圧力(吸気圧)を検出するための大気圧センサ43とが設けられ、これらセンサの出力電圧は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。また、アクセルペダル44にはアクセルペダル44の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ45が接続され、負荷センサ45の出力電圧は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。クランク角センサ46は例えばクランクシャフトが30度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが入力ポート36に入力される。CPU35ではこのクランク角センサ46の出力パルスから機関回転数が計算される。一方、出力ポート37は対応する駆動回路39を介して点火プラグ10、燃料噴射弁11、およびステップモータ17に接続される。
【0018】
次に、図2〜図5を参照して吸気弁6および排気弁8の動弁機構について説明する。図2に示したように、吸気弁6は、後述するリフト量変更機構51とロッカーアーム52とを介して吸気カム53によってリフトされ、排気弁8はロッカーアーム54を介して排気カム55によってリフトされる。吸気カム53は吸気カムシャフト56に取付けられ、一方、排気カム55は排気カムシャフト57に取付けられる。なお、本実施形態では、リフト量変更機構51が吸気弁6側のみに設けられているが、排気弁8側に設けられてもよいし、吸気弁6側および排気弁8側の両方に設けられてもよい。
【0019】
図3および図4を参照して、本発明の可変動弁機構の一つであるリフト量変更機構51について説明する。リフト量変更機構51は、吸気弁6の開閉弁特性の一つであるリフト量および作用角を変更させることができる。なお、図3はリフト量変更機構51の斜視図を示し、図4は可変動弁機構の制御装置の図である。また、リフト量変更機構51は特開2001−263015号公報に記載された仲介駆動機構と同様な機構を有し、以下では簡単に説明する。図3に示したリフト量変更機構51は内燃機関の一つの気筒に対応する。リフト量変更機構51は円筒形の入力部61と、この入力部61の軸線方向において入力部61の一方の側に配置される円筒形の第一揺動カム62と、入力部61の軸線方向において入力部61の上記一方の側とは反対側に配置される円筒形の第二揺動カム63とを具備する。これら入力部61、揺動カム62、63はその軸線を中心として軸線方向に延びる円筒状の貫通孔を有し、この貫通孔を支持パイプ64が貫通する。入力部61、揺動カム62、63はそれぞれ支持パイプ64によって支持され、且つそれぞれ支持パイプ64を中心に回動することができる。支持パイプ64はシリンダブロック4に固定される。また、支持パイプ64はその軸線を中心として軸線方向に延びる円筒状の貫通孔を有し、この貫通孔を制御シャフト65が貫通する。制御シャフト65は支持パイプ64の貫通孔内で、支持パイプ64の軸線方向に摺動可能である。
【0020】
入力部61の外周面からは入力部61の径方向に向かってアーム61a、61bが延び、これらアーム61a、61bの先端の間にローラ61cが配置される。ローラ61cは、図2に示したように吸気カム53のカム面53aに当接し、これにより入力部61はカム面53aの形状に応じて支持パイプ64周りで回動する。一方、揺動カム62、63の外周面からは揺動カム62、63の径方向に向かってノーズ62a、63aが延び、これらノーズ62a、63aはロッカーアーム52に当接可能である。
【0021】
さらに、入力部61および揺動カム62、63と制御シャフト65との間には制御機構(図示せず)が収容されている。この制御機構は、制御シャフト65を支持パイプ64に対して相対的に移動させると、入力部61と揺動カム62、63とを互いに反対方向に回動させる。特に、本実施形態では、制御シャフト65を支持パイプ64に対して方向D1に移動させると、入力部61のローラ61cと揺動カム62、63のノーズ62a、63aとの間の相対角度が大きくなるように入力部61と揺動カム62、63とが回動し、制御シャフト65を支持パイプ64に対して上記方向D1とは反対向きの方向D2に移動させると、入力部61のローラ61cと揺動カム62、63のノーズ62a、63aとの間の相対角度が小さくなるように入力部61と揺動カム62、63とが回動する。ローラ61cとノーズ62a、63aとの相対角度が大きくなると、ローラ61cとノーズ62a、63aとの間隔が長くなり、逆にローラ61cとノーズ62a、63aとの相対角度が小さくなるとローラ61cとノーズ62a、63aとの間隔が短くなる。
【0022】
一方、図2からわかるように、吸気弁6が吸気カム53によってリフトされる量はローラ61cとノーズ62a、63aとの間隔によって変わる。すなわち、ローラ61cとノーズ62a、63aとの間隔が長くなると、ローラ61cが吸気カム53のカム山部53bと当接するときに、ノーズ62a、63aが吸気弁6をリフトする期間が長くなると共にリフトする量が多くなる。逆に、ローラ61cとノーズ62a、63aとの間隔が短くなると、ローラ61cが吸気カム53のカム山部53bと当接するときに、ノーズ62a、63aが吸気弁6をリフトする期間が短くなると共にリフトする量も少なくなる。すなわち、ローラ61cとノーズ62a、63aとの間隔が長くなると、吸気弁6のリフト量が大きくなると同時に吸気弁6の作用角も大きくなり、一方、ローラ61cとノーズ62a、63aとの間隔が短くなると、吸気弁6のリフト量が小さくなると同時に吸気弁6の作用角も小さくなる。
【0023】
したがって、リフト量変更機構51では、制御シャフト65を第一方向D1に移動させると、吸気弁6のリフト量が大きくなり、制御シャフト65を第二方向D2に移動させると吸気弁6のリフト量が小さくなる。
【0024】
また、図4に示したように、制御シャフト65の一方の端部には電動アクチュエータ66が連結されている。この電動アクチュエータ66はECU31に接続されている。制御シャフト65の他方の端部近傍には、制御シャフト65の軸線方向の位置を検出するための位置センサ67が配置される。この位置センサ67により制御シャフト65の位置および制御シャフト65の移動速度を検出することができる。
【0025】
電動アクチュエータ66はECU31からの制御パルス信号を入力し、この制御パルス信号に応じてバッテリ68への接続がオンとオフの間で切り替えられ、これに応じて制御シャフト65を移動させる。例えば、ECU31からの制御パルス信号がオンになると、電動アクチュエータ66にバッテリ68から電力が供給され、電動アクチュエータ66は制御シャフト65を図2の方向D2に移動させ、ローラ61cとノーズ62a、63aとの間隔を短くさせる。また、ECU31からの制御パルス信号がオフになると、電動アクチュエータ66へのバッテリ68からの電力の供給が遮断され、電動アクチュエータ66は制御シャフト65を図2の方向D1に移動させ、ローラ61cとノーズ62a、63aとの間隔を長くさせる。ECU31は、上記制御パルス信号のオン・オフデューティ比(信号がオンになっている時間とオフになっている時間との合計に占める信号オン時間の割合。以下、デューティ比と称す)を変化させることによりローラ61cとノーズ62a、63aとの間隔を変化させる。
【0026】
また、本発明の動弁機構は上述したリフト量変更機構のみならず、位相角変更機構をも具備する。位相角変更機構は、吸気弁6側および排気弁8側の両方に取付けられてもよいし、これらのうちのいずれか一方に取付けられてもよい。以下、図5を参照して本発明の可変動弁機構の一つである位相角変更機構について説明する。図中、71は位相角変更機構、72はオイルコンロールバルブ(油圧アクチュエータ。以下、OCVと称す)、73は作動油ポンプである。
【0027】
位相角変更機構71は、いわゆるベーン式位相角変更機構であり、内燃機関のクランク軸(図示せず)からベルトにより回転駆動されるタイミングプーリ75と、そのタイミングプーリ75と一体になって回転駆動されるハウジング76と、このハウジング76内に回動可能に配置され、ハウジング76内に進角油圧室77と遅角油圧室78とを区画形成する、カム軸に連結されたベーン体79とを備えている。ベーン式位相角変更機構71では、上記進角油圧室77と遅角油圧室78とに作動油を供給することにより、ハウジング76とベーン体79とを相対的に回動させてクランク軸とカム軸との回転位相を変化させて吸気弁6の開閉弁特性の一つである位相角を変更する。すなわち、進角油圧室77に作動油を供給するとともに遅角油圧室78から作動油を排出することにより、ベーン体79をハウジング76に対して位相角が進角する側に相対回動させ、遅角油圧室78に作動油を供給し進角油圧室77から作動油を排出することにより、ベーン体79をハウジング76に対して位相角が遅角する方向に相対回動させる。また、位相角を一定の位相角に維持する場合には進角油圧室77と遅角油圧室78との内部の作動油圧力を同じ圧力に制御することにより、ハウジング76とベーン体79との相対位置を一定に保持する。
【0028】
このような各油圧室77、78内の作動油圧力の制御、すなわちこれら油圧室77、78への作動油の供給制御はOCV72によって行われる。OCV72は、スプール80を有するスプール弁であり、進角油圧室77に通じる油圧ポート80a、遅角油圧室78へ通じる油圧ポート80b、機関出力軸に駆動される作動油ポンプ73に接続されたポート80c及び2つのドレーンポート80d、80eを備えている。OCV72のスプール80はポート80aと80bのうちの何れかをポート80cに連通し、他方をドレーンポートに接続するように動作する。
【0029】
すなわち、図5においてスプール80が右方向に移動すると、進角油圧室77に連通するポート80aはポート80cを介して作動油ポンプ73に接続され、ドレーンポート80dは閉鎖される。また、この時同時に遅角油圧室78に通じるポート80bはドレーンポート80eに連通する。このため、位相角変更機構71の進角油圧室77には、作動油ポンプ73から作動油が流入し、進角油圧室77内の油圧を上昇させてベーン体79を図5の矢印R方向(進角方向)に押動する。また、この時遅角油圧室78内の作動油はOCV72のポート80bを通りドレーンポート80eから排出される。このため、ベーン体79はハウジング76に対して図5のR方向に回動する。
【0030】
また、図5において逆にスプール80が左方向に移動すると、ポート80bはポート80cに接続され、ポート80aはドレーンポート80dに接続される。これにより、遅角油圧室78には作動油が流入し、進角油圧室77からは作動油が排出されるため、ベーン体79はハウジング76に対して図5の矢印Rとは逆の方向に回動する。
【0031】
また、スプール80が図5に示した中立位置にある時は、ポート80a、80bは両方とも閉鎖される。図5に81で示すのは、スプール80を駆動するリニアソレノイドアクチュエータである。リニアソレノイドアクチュエータ81はECU31からの制御パルス信号を入力し、この制御パルス信号に応じてスプール80を移動させることにより、ベーン体79の位置、すなわち位相角を変更する。例えば、リニアソレノイドアクチュエータ81はECU31からの制御パルス信号がオンになると、スプール80を図5右方向に移動させ、進角油圧室77に作動油を流入させる。また、リニアソレノイドアクチュエータ81はECU31からの制御パルス信号がオフになると、スプール80を図5左方向に移動させ、遅角油圧室78に作動油を流入させる。ECU31は、デューティ比を変化させることにより油圧室77と78とに供給する油量を制御する。
【0032】
ところで、内燃機関の制御装置では、内燃機関の燃焼室5において燃焼される混合気の空燃比を目標空燃比にするためには、吸気弁が閉じたときに燃焼室5内に吸入されている吸気ガスの量(以下、「筒内吸入ガス量Mc」と称す)を推定し、推定された筒内吸入ガス量Mcに基づいて混合気の空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射弁によって内燃機関の燃焼室5(または吸気通路)に噴射する燃料の量(以下、「燃料噴射量」と称す)を定めている。したがって、内燃機関の燃焼室5において燃焼される混合気の空燃比を正確に目標空燃比とするためには、筒内吸入ガス量Mcを正確に推定する必要がある。
【0033】
通常、筒内吸入ガス量Mcは、流量センサ(エアフロメータ)等の多数のセンサ、およびこれらセンサからの出力値を引数とした多数のマップから推定される。ところが、このようにマップを用いて筒内吸入ガス量Mcを推定する場合、推定される筒内吸入ガス量Mcの値をより正確なものにするためには、必要なマップの数およびその引数の数が多くなる。このようにマップの数が多くなると、マップを保存するためのECUのROMを記憶容量の大きいものにしなければならず、内燃機関の制御装置の製造コストが高くなってしまう。さらに、各マップを作成するにはマップが用いられる内燃機関の形式毎に適合作業を行わなければならないが、この適合作業における測定点はマップの数およびその引数の数に応じて増大するため、マップの数およびその引数の数が多くなると適合作業の工数も増大してしまう。
【0034】
そこで、マップを用いずに様々なモデルを用いて、数値計算により筒内吸入ガス量Mcを算出する内燃機関の制御装置が検討されている。このような制御装置では、数値計算を多用することにより必要なマップの数を極力減らすようにしており、これにより適合作業を行う際の工数を大幅に削減しながらも、筒内吸入ガス量Mcを正確に算出することができる。このような制御装置のうち本願出願人により提案されたものの一つに、図6に示した筒内吸入ガス量モデルM10を搭載した制御装置がある。図示した筒内吸入ガス量モデルM10は最も単純なモデルであり、以下この筒内吸入ガス量モデルM10について説明する。
【0035】
筒内吸入ガス量モデルM10は、図6に示したようにスロットルモデルM11、吸気管モデルM12、吸気弁モデルM13を備える。スロットルモデルM11には、スロットル開度センサ41によって検出されたスロットル弁18の開度(スロットル開度)θtと、大気圧センサ43によって検出された内燃機関周囲の大気圧(または、上流側吸気管15に吸入される空気の圧力)Paと、大気温度センサ42によって検出された内燃機関周囲の大気温度(または、上流側吸気管15に吸入される空気の温度)Taと、後述する吸気管モデルM12において算出された下流側吸気管13内の圧力(吸気管内圧力)Pmとが入力され、これら入力された各パラメータの値を後述するスロットルモデルM11のモデル式に代入することで、単位時間当たりにスロットル弁18を通過する空気の流量(以下、「スロットル弁通過空気流量mt」と称す)が算出される。スロットルモデルM11において算出されたスロットル弁通過空気流量mtは、吸気管モデルM12へ入力される。
【0036】
吸気管モデルM12には、スロットルモデルM11において算出されたスロットル弁通過空気流量mtと、以下で詳述する単位時間当たりに燃焼室5内に流入する吸気ガスの流量(以下、「筒内吸入ガス流量mc」と称す。なお、筒内吸入ガス流量mcの定義については、吸気弁モデルM13において詳述する)とが入力され、これら入力された各パラメータの値を後述する吸気管モデルM12のモデル式に代入することで、下流側吸気管13およびサージタンク14内に存在する吸気ガスの圧力(以下、「吸気管内圧力Pm」と称す)と下流側吸気管13およびサージタンク14内に存在する吸気ガスの温度(以下、「吸気管内温度Tm」と称す)とが算出される。吸気管モデルM12において算出された吸気管内圧力Pmと吸気管内温度Tmは共に吸気弁モデルM13へ入力され、さらに吸気管内圧力PmはスロットルモデルM11にも入力される。
【0037】
吸気弁モデルM13には、吸気管モデルM12において算出された吸気管内圧力Pmおよび吸気管内温度Tmの他に大気温度Taが入力され、これら入力された各パラメータの値を後述する吸気弁モデルM13のモデル式に代入することで、筒内吸入ガス流量mcが算出される。算出された筒内吸入ガス流量mcは、筒内吸入ガス量Mcに変換され、この筒内吸入ガス量Mcに基づいて燃料噴射弁からの燃料噴射量が決定される。また、吸気管モデルM13において算出された筒内吸入ガス流量mcは吸気管モデルM12に入力される。
【0038】
図6から分かるように、筒内吸入ガス量モデルM10では或るモデルにおいて算出されたパラメータの値が別のモデルへの入力値として利用されるので、筒内吸入ガス量モデルM10全体では、実際に入力される値はスロットル開度θt、大気圧Pa、および大気温度Taの三つのパラメータのみであり、これら三つのパラメータから筒内吸入ガス量Mcが算出される。
【0039】
次に、筒内吸入ガス量モデルM10の各モデルM11〜M13について説明する。
スロットルモデルM11では、大気圧Pa、大気温度Ta、吸気管内圧力Pm、スロットル開度θtから、下記式(3)に基づいてスロットル弁通過空気流量mtが算出される。ここで、式(3)におけるμはスロットル弁における流量係数で、スロットル弁開度θtの関数であり、よって図7に示したようなマップから定まる。また、Atはスロットル弁の開口断面積を示し、スロットル弁開度θtの関数であり、図8に示したようなマップから定まる。なお、これら流量係数μおよび開口断面積Atをまとめたμ・Atをスロットル弁開度θtから一つのマップで求まるようにしてもよい。また、Raは気体定数に関する定数であり、実際には気体定数を1mol当たりの気体(空気)の質量Mlmolで除算した値である。
【数3】
【0040】
また、Φ(Pm/Pa)は下記式(4)に示した関数であり、この式(4)におけるκは比熱比(一定値とする)である。この関数Φ(Pm/Pa)は図9に示したようなグラフに表すことができるので、このようなグラフをマップとしてECU31のROM34に保存し、実際には式(4)を用いて計算するのではなくマップからΦ(Pm/Pa)の値を求めるようにしてもよい。
【数4】
【0041】
これらスロットルモデルM11の式(3)および式(4)は、スロットル弁18上流の気体の圧力を大気圧Pa、スロットル弁18上流の気体の温度を大気温度Ta、スロットル弁18の下流の気体の圧力を吸気管内圧力Pmとして、図10に示したようなスロットル弁18のモデルに対して、質量保存則、エネルギ保存則および運動量保存則を適用し、さらに気体の状態方程式、比熱比の定義式、およびマイヤーの関係式を利用することによって得られる。
【0042】
吸気管モデルM12では、スロットル弁通過空気流量mt、筒内吸入ガス流量mc、および大気温度Taから、下記式(5)および式(6)に基づいて吸気管内圧力Pmおよび吸気管内温度Tmが算出される。なお、式(5)および式(6)におけるVmはスロットル弁18から吸気弁6までの下流側吸気管13等の部分(以下、「吸気管部分」と称す)の容積に等しい定数である。
【数5】
【0043】
ここで、吸気管モデルM12について図11を参照して説明する。吸気管部分の総気体量(総吸気ガス量)をMとすると、総気体量Mの時間的変化は、吸気管部分に流入する気体の流量、すなわちスロットル弁通過空気流量mtと、吸気管部分から流出する気体の流量、すなわち筒内吸入ガス流量mcとの差に等しいため、質量保存則により下記式(7)が得られ、この式(7)および気体の状態方程式(Pm・Vm=M・R・Tm)より、式(5)が得られる。
【数6】
【0044】
また、吸気管部分の気体のエネルギM・Cv・Tmの時間的変化量は、吸気管部分に流入する気体のエネルギと吸気管部分から流出する気体のエネルギとの差に等しい。このため、吸気管部分に流入する気体の温度を大気温度Ta、吸気管部分から流出する気体の温度を吸気管内温度Tmとすると、エネルギ保存則により下記式(8)が得られ、この式(8)および上記気体の状態方程式より、式(6)が得られる。
【数7】
【0045】
吸気弁モデルM13では、吸気管内圧力Pm、吸気管内温度Tm、および大気温度Taから、下記式(9)に基づいて、筒内吸入ガス流量mcが算出される。なお、式(9)におけるa、bは、機関回転数Neから、さらに吸気弁6の位相角(バルブタイミング)および作用角を変更できる可変動弁機構を備えた内燃機関の場合には吸気弁6の位相角、作用角から定まる値である。
【数8】
【0046】
上述した吸気弁モデルM13について図12を参照して説明する。一般に、吸気弁6が閉じたときに燃焼室5内に吸入されている吸気ガスの量である筒内吸入ガス量Mcは、吸気弁6が閉弁するとき(吸気弁閉弁時)に確定し、吸気弁閉弁時の燃焼室5内の圧力に比例する。また、吸気弁閉弁時の燃焼室5内の圧力は吸気弁上流の気体の圧力、すなわち吸気管内圧力Pmと等しいとみなすことができる。したがって、筒内吸入ガス量Mcは、吸気管内圧力Pmに比例すると近似することができる。
【0047】
ここで、単位時間当たりに吸気管部分から流出する全吸気ガスの量を平均化したもの、または単位時間当たりに吸気管部分から全ての燃焼室5に吸入される吸気ガスの量を一つの気筒の吸気行程に亘って(後述するように本実施形態ではクランク角180°分)平均化したものを筒内吸入ガス流量mc(以下で詳述する)とすると、筒内吸入ガス量Mcが吸気管内圧力Pmに比例することから、筒内吸入ガス流量mcも吸気管内圧力Pmに比例すると考えられる。このことから、理論および経験則に基づいて、上記式(9)が得られる。なお、式(9)における値aは比例係数であり、機関回転数Ne、吸気弁6のリフト量指示値VL、吸気弁6の位相角指示値VTをパラメータとした三次元マップから求まる。なお、この三次元マップは、予め実験的にまたは計算によって求められ、ECU31のROM34に保存されている。値bは燃焼室5内に残存していた既燃ガスを表す値(排気弁8閉弁時に燃焼室5内に残る既燃ガス量を後述する時間ΔT180 °で除算したものと考えられる)である。また、実際の運転では過渡時に吸気管内温度Tmが大きく変化する場合があるため、これに対する補正として理論および経験則に基づいて導かれたTa/Tmが乗算されている。
【0048】
ここで、筒内吸入ガス流量mcについて、図13を参照して内燃機関が4気筒である場合について説明する。なお、図13は横軸がクランクシャフトの回転角度、縦軸が単位時間当たりに吸気管部分から燃焼室5に実際に流入する吸気ガスの流量である。図13に示したように、4気筒の内燃機関では、吸気弁6が例えば1番気筒、3番気筒、4番気筒、2番気筒の順に開弁し、各気筒に対応する吸気弁6の開弁量に応じて吸気管部分から各気筒の燃焼室5内へ吸気ガスが流入する。例えば、吸気管部分から各気筒の燃焼室5内に流入する吸気ガスの流量の変位は図13に破線で示した通りであり、これを総合して下流側吸気管13から全気筒の燃焼室に流入する吸気ガスの流量は図13に実線で示した通りである。また、例えば1番気筒への筒内吸入ガス量Mcは図13に斜線で示した通りである。
【0049】
これに対して、実線で示した吸気管から全ての気筒の燃焼室に流入する吸気ガスの量を平均化したものが筒内吸入ガス流量mcであり、図中に一点鎖線で示す。そして、この一点鎖線で示した筒内吸入ガス流量mcに、4気筒の場合にはクランクシャフトが180°(すなわち、4ストローク式内燃機関において1サイクル中にクランクシャフトが回転する角度720°を気筒数で割った角度)回転するのにかかる時間ΔT180 °を乗算したものが筒内吸入ガス量Mcとなる。したがって、吸気弁モデルM13で算出された筒内吸入ガス流量mcにΔT180 °を乗算することで、筒内吸入ガス量Mcが算出される(Mc=mc・ΔT180 °)。より詳細には、筒内吸入ガス量Mcが吸気弁閉弁時の圧力に比例することを考慮して、吸気弁閉弁時の筒内吸入ガス流量mcにΔT180 °を乗算したものが筒内吸入ガス量Mcとされる。
【0050】
次に、上記筒内吸入ガス量モデルM10を内燃機関の制御装置に実装して、実際に筒内吸入ガス量Mcを算出する場合について説明する。筒内吸入ガス量Mcは筒内吸入ガス量モデル10を用いて、上記式(3)、式(5)、式(6)、および式(9)を解くことにより表される。この場合、ECU31で処理するために、これらの式を離散化する必要がある。時刻t、計算間隔Δtを用いて式(3)、式(5)、式(6)、および式(9)を離散化すると、それぞれ下記式(10)、式(11)、式(12)、および式(13)が得られる。なお、吸気管内温度Tm(t+Δt)は、式(11)および式(12)によってそれぞれ算出されたPm/Tm(t+Δt)およびPm(t+Δt)から、式(14)によって算出される。
【数9】
【0051】
このようにして実装された筒内吸入ガス量モデルM10では、スロットルモデルM11の式(10)で算出された時刻tにおけるスロットル弁通過空気流量mt(t)と、吸気弁モデルM13の式(13)で算出された時刻tにおける筒内吸入ガス流量mc(t)とが、吸気管モデルM12の式(11)および式(12)に代入され、これにより時刻t+Δtにおける吸気管内圧力Pm(t+Δt)および吸気管内温度Tm(t+Δt)が算出される。次いで、算出されたPm(t+Δt)およびTm(t+Δt)は、スロットルモデルM11および吸気弁モデルM13の式(10)および式(13)に代入され、これにより時刻t+Δtにおけるスロットル弁通過空気流量mt(t+Δt)および筒内吸入ガス流量mc(t+Δt)が算出される。そして、このような計算を繰り返すことによって、スロットル弁開度θt、大気圧Pa、および大気温度Taから、任意の時刻tにおける筒内吸入ガス流量mcが算出され、算出された筒内吸入ガス流量mcに上記時間ΔT180 °を乗算することで、任意の時刻tにおける筒内吸入ガス量Mcが算出される。
【0052】
なお、内燃機関の始動時には、すなわち時刻t=0においては、吸気管内圧力Pmは大気圧と等しい(Pm(0)=Pa)とされ、吸気管内温度Tmは大気温度と等しい(Tm(0)=Ta)とされて、各モデルM11〜M13における計算が開始される。
【0053】
なお、上記筒内吸入ガス量モデルM10では、大気温度Taおよび大気圧Paが一定であるとしているが、時刻によって変化する値としてもよく、例えば、大気温度を検出するための大気温度センサによって時刻tにおいて検出された値を大気温度Ta(t)、大気圧を検出するための大気圧センサによって時刻tにおいて検出された値を大気圧Pa(t)として上記式(10)、式(12)、および式(13)に代入するようにしてもよい。
【0054】
ところで、上述したように、吸気弁モデルM13においては、比例係数aが機関回転数Ne、吸気弁6のリフト量指示値VL、吸気弁6の位相角指示値VTをパラメータとした三次元マップから算出される。ここで、リフト量指示値VLはECU31からリフト量変更機構51への指令値であり、位相角指示値VTはECU31から位相角変更機構71への指令値である。リフト量変更機構51は上記リフト量指示値VLとなるように吸気弁6のリフト量を変更させ、位相角変更機構71は上記位相角指示値VTとなるように吸気弁6の位相角を変更させる。
【0055】
ところが、吸気弁6の弁体および吸気弁6の弁体近傍の吸気ポート等に、デポジット(特に、カーボン)が付着すること等により、吸気弁6開弁時の開口面積が変化してしまう。すなわち、デポジットの付着等により、吸気弁6の実際のリフト量に対して、気筒内に吸入される筒内吸入ガス量に寄与するリフト量(以下、「有効リフト量」と称す)が異なった値となってしまう。ここで、有効リフト量とは、デポジットの付着等により吸気弁6の開口面積が減少した場合において、デポジットの付着等が無い場合に上記減少した開口面積と同等の開口面積となるようなリフト量を意味する。
【0056】
このように、吸気弁6の実際のリフト量と有効リフト量とが異なっている場合、すなわち吸気弁6へのリフト量指示値と有効リフト量とが異なっている場合、当然、吸気弁モデルM13によって算出される筒内吸入ガス量も実際の筒内吸入ガス量と異なる量となってしまう。つまり、デポジットの付着等が起きていない場合には、実際のリフト量と有効リフト量とはほぼ同一であるため、吸気弁6の実際のリフト量に応じた筒内吸入ガス量の吸気ガスが気筒内へと吸入される。これに対して、デポジットの付着等が起きている場合には、実際のリフト量よりも有効リフト量の方が小さく、また、吸気弁6の有効リフト量に応じた筒内吸入ガス量の吸気ガスが気筒内へと吸入されるため、吸気弁6の実際のリフト量に応じた筒内吸入ガス量よりも少ない量の吸気ガスが気筒内へ吸入される。
【0057】
したがって、デポジットの付着等が起きている場合には、リフト量指示値に応じた筒内吸入ガス量の吸気ガスが気筒内へ吸入されるのに対して、デポジットの付着等が起きている場合には、リフト量指示値に応じた筒内吸入ガス量よりも少ない量の吸気ガスが気筒内へ吸入される。ところが、上述したように吸気弁モデルM13ではリフト量指示値VLに基づいて筒内吸入ガス量Mcを推定するため、筒内吸入ガス量Mcは常にデポジットの付着等が起きていない場合の値となっており、デポジットの付着等が起きた場合には実際の筒内吸入ガス量と異なった値となってしまう。したがって、上述したような筒内吸入ガス量モデルM10によれば、デポジット等の付着が起きると、吸気弁モデルM13によって推定された筒内吸入ガス量(以下、「筒内吸入ガス量推定値」と称す)と実際の筒内吸入ガス量とが一致しない可能性が高い。この場合、燃料噴射量は実際の筒内吸入ガス量とは異なる値に基づいて算出されてしまうので、吸気ガスの空燃比を目標空燃比にすることができず、各気筒内での燃焼状態を最適に維持することができない。
【0058】
ここで、デポジットの付着等が起きた場合における実際の筒内吸入ガス量に対する筒内吸入ガス量推定値の誤差の割合(以下、「筒内吸入ガス量推定値の誤差率」と称す)、すなわち筒内吸入ガス量推定値と実際の筒内吸入ガス量との差を実際の筒内吸入ガス量で除算した値は、吸気弁6のリフト量に応じて異なる。以下、このことについて説明する。ここで、デポジットの付着等により吸気弁6の実際のリフト量と有効リフト量とが異なる場合を図14に示す。図中、破線は吸気弁6の実際のリフト量を示しており、実線は吸気弁6の有効リフト量を示している。図14から分かるように、吸気弁6が標準的なリフトを行っている場合には実際のリフト量に対する実際のリフト量と有効リフト量との差の比率が非常に小さいため、デポジットの付着等が起きている場合でも筒内吸入ガス量推定値の誤差率は小さい。一方、吸気弁が小リフトを行っている場合には実際のリフト量に対する実際のリフト量と有効リフト量との差の比率が大きいため、デポジットの付着等が起きている場合には筒内吸入ガス量推定値の誤差率は大きい。
【0059】
図15は、デポジットの付着等が起きた場合における吸気弁6のリフト量と筒内吸入ガス量の誤差率との関係を示す。この図から、上述したようにリフト量が小さいときには筒内吸入ガス量の誤差率が大きく、リフト量が大きくなるにつれて筒内吸入ガス量の誤差率が小さくなることが分かる。
【0060】
そこで、本発明の第一実施形態における内燃機関の制御装置によれば、筒内吸入ガス量推定値と実際の筒内吸入ガス量との誤差を無くすように、筒内吸入ガス量推定値を補正する筒内吸入ガス量推定値の補正制御を行う。以下、本発明の筒内吸入ガス量推定値の補正制御について説明する。
【0061】
筒内吸入ガス量推定値の補正制御では、まず、補正関数算出制御によりリフト量指示値VLに対する補正関数α(VL)が算出される。この補正関数は、任意のリフト量指示値VLにおける筒内吸入ガス量の誤差を補償するための関数である。すなわち、リフト量指示値VLに対する補正関数α(VL)は、このリフト量指示値VLに基づいて上記吸気弁モデルM13によって算出された筒内吸入ガス量推定値Mccalに補正関数α(VL)を乗算した補正筒内吸入ガス量推定値Mccalm(=α(VL)・Mccal)が、実際の筒内吸入ガス量となるような関数とされる。
【0062】
ここで、図15に示したリフト量と筒内吸入ガス量の誤差率との関係から、吸気弁6の弁体や吸気弁6の弁体近傍の吸気ポートにおけるデポジットの付着等が起こった場合には、筒内吸入ガス量推定値Mccalに対する実際の筒内吸入ガス量McAFMの比率(以下、「ガス量比率」と称す)McAFM/Mccalと、リフト量との間には一定の関係があることが分かる。すなわち、図16にf(VL)およびα(VL)で示したように、リフト量が小さいときにはガス量比率が1よりもかなり小さく、そこからリフト量が大きくなるに従ってガス量比率は1に近づく。このような傾向は、デポジットの付着量等が如何なる量であっても同様に表れる。すなわち、或るデポジットの付着量におけるガス量比率を1から減算した値と、別のデポジットの付着量におけるガス量比率を1から減算した値との比は、どのリフト量であっても常にほぼ同一の比率である。
【0063】
そこで、本発明の第一実施形態によれば、デポジットの付着量が或る一定量であるときにおける任意のリフト量VLに対するガス量比率を基準ガス量比率f(VL)として予め実験的に、または計算によって求める(図16参照)。そして、使用時には、比較的小さいリフト量VL0である場合におけるガス量比率McAFM/Mccal、すなわち、このリフト量VL0における補正関数α(VL0)を検出する。この時、このリフト量VL0における実際の筒内吸入ガス量McAFMは、上流側吸気管15等内を通過する空気の流量を検出するエアフロメータ19によって検出される吸気管通過空気流量に基づいて算出される。
【0064】
上述したように、或るリフト量におけるガス量比率を1から減算した値同士の比は、他のリフト量におけるガス量比率を1から減算した値同士の比と常にほぼ同一である。すなわち、検出が行われたリフト量VL0における補正関数α(VL0)を1から減算した値とこのリフト量VL0における基準ガス量比率f(VL0)を1から減算した値との比は、任意のリフト量VLにおける補正関数α(VL)を1から減算した値とこの任意のリフト量VLにおける基準ガス量比率f(VL)を1から減算した値との比に等しい。このため、下記式(15)が成り立ち、この式(15)を変形することで、任意のリフト量VLにおける補正関数α(VL)の式(16)が算出される。
【数10】
【0065】
なお、上述したリフト量VL0である場合におけるガス量比率の検出は、筒内吸入ガス量が吸気弁のリフト量に大きくするような運転状態(以下、「リフト量依存運転状態」と称す)にある期間に行われる。リフト量依存運転状態とは、例えば、吸気弁開弁中に吸気弁通過ガス流速が音速または音速に近い速度に達するような運転状態を意味し、機関回転数や吸気弁のリフト量指示値等から判断される。これは、吸気弁通過空気流速が音速に達する条件である場合、吸気管内圧力等が若干変動しても吸気弁通過空気流速はほぼ一定のままであり、筒内吸入ガス量が影響を受けにくいことによる。
【0066】
あるいは、リフト量依存運転状態とは、機関運転状態が定常状態であって、リフト量指示値が所定リフト量以下である運転状態を意味し、機関回転数や機関負荷、リフト量指示値から判断される。ここで、本明細書において、「定常状態」とは、負荷センサ45からの出力、すなわち目標トルクおよび機関回転数がほとんど変化しない機関運転状態であって、過渡状態ではない運転状態を意味する。また、「過渡状態」とは、目標トルクまたは機関回転数の少なくともいずれか一方が変化する機関運転状態を意味する。
【0067】
機関運転状態が定常状態にあるときには、吸気弁のリフト量やその他筒内吸入ガス量に影響を及ぼす運転パラメータがほとんど変化しない。したがって、定常状態にある間の平均をとることにより、センサ等の検出誤差を補償することができる。また、例えばリフト量指示値が大きくて筒内吸入ガス量が主に吸気管内圧力に応じて定まるような機関運転状態にあるときには、筒内吸入ガス量がリフト量に応じて定まらないので、上記ガス量比率の検出を禁止するのが好ましい。よって、上記ガス量比率の検出は、リフト量指示値が小さいときに行われるのが好ましい。また、リフト量が小さいほどガス量比率を1から減算した値が大きくなるため、補正関数α(VL)の算出誤差を小さくすることができるという観点からも、ガス量比率の検出はリフト量指示値が小さいときに行われるのが好ましい。なお、所定リフト量とは、筒内吸入ガス量が主に吸気弁のリフト量に応じて定まるようなリフト量の最大値であり、機関回転数等に応じて変化する。
【0068】
また、上記実施形態では、リフト量と筒内吸入ガス量との関係のずれを補償しているが、この関係のみではなく、例えば位相角と筒内吸入ガス量との関係のずれを補償するようにしてもよい。
【0069】
次に、図17のフローチャートを参照して補正関数算出制御の制御ルーチンについて説明する。まず、ステップ101において、内燃機関のクランク角センサ46から機関回転数Ne、ECU31から吸気弁6へのリフト量指示値VLが取得される。次いで、ステップ102において、機関運転状態が補正関数算出条件を満たす運転状態にあるか否かが判定される。補正関数算出条件を満たす運転状態とは、例えば、機関運転状態がリフト量依存運転状態にある場合、または機関運転状態が定常状態にあり且つリフト量指示値VLが所定値以下である場合をいう。なお、この所定値とは、例えば、図16に示した基準ガス量比率f(VL)の曲線が1から大きく離れ始めるときのリフト量である。ステップ102において、機関運転状態が補正関数算出条件を満たす運転状態にないと判定された場合には制御ルーチンが終了せしめられる。
【0070】
一方、ステップ102において、機関運転状態が補正関数算出条件を満たす運転状態にあると判定された場合には、ステップ103へと進む。ステップ103では、リフト量指示値VL0に基づいて吸気弁モデルM13から筒内吸入ガス量推定値Mccalが推定される。次いで、ステップ104では、エアフロメータ19の出力に基づいて上記リフト量指示値VLにおける実際の筒内吸入ガス量McAFMが算出される。そして、ステップ105では、ステップ103において算出されたリフト量指示値VL0における筒内吸入ガス量推定値Mccalと、ステップ104において算出されたリフト量指示値VL0における実際の筒内吸入ガス量McAFMとから、このリフト量指示値VL0における補正関数αの値α(VL0)が算出される(α(VL0)←McAFM/Mccal)。次いで、ステップ106では、或るリフト量指示値VL0およびこのリフト量指示値VL0における補正関数α(VL0)から、上記式(16)に基づいて任意のリフト量指示値VLにおける補正関数α(VL)が算出され、制御ルーチンが終了せしめられる。
【0071】
そして、本発明の筒内吸入ガス量推定値の補正制御では、上述した補正関数算出制御において算出された補正関数α(VL)を利用して以下のように筒内吸入ガス量推定値を補正する。すなわち、上記吸気弁モデルM13によって推定された筒内吸入ガス量推定値Mccalに、この筒内吸入ガス量推定値算出時に利用したリフト量指示値VLに対する補正関数α(VL)を乗算する。このようにして算出された補正筒内吸入ガス量推定値Mccalm(=α(VL)・Mccal)とすると、この補正筒内吸入ガス量推定値Mccalmに基づいて目標空燃比となるように燃料噴射量が決定される。
【0072】
このように算出された補正筒内吸入ガス量推定値Mccalmは、筒内吸入ガス量推定値Mccalに最適な補正が行われているため、実際の筒内吸入ガス量とほぼ同一となる。したがって、この補正筒内吸入ガス量推定値Mccalmに基づいて目標空燃比となるように燃料噴射量を算出すれば、吸気ガスの空燃比を常に目標空燃比近傍に維持することができ、よって機関運転状態を常に最適な状態に維持することができる。
【0073】
また、上記吸気弁モデルM13では筒内吸入ガス流量mcが算出され、算出された筒内吸入ガス流量mcの値が吸気管モデルM12において利用される。この筒内吸入ガス流量mcも各気筒におけるデポジットの付着等の影響が考慮されておらず、デポジットの付着等が起きた場合にはその補正が必要である。したがって、吸気弁モデルM13において算出された筒内吸入ガス量mcに上記補正関数α(VL)を乗算した値を吸気管モデルM12のモデル式に代入するのが好ましい。ただし、補正関数α(VL)は、各気筒毎に定まる値であるのに対して、筒内吸入ガス流量mcは全ての気筒における平均値であるため、このことを考慮して値を算出する必要がある。したがって、例えば、内燃機関が4気筒である場合、1番気筒から4番気筒までの補正関数をそれぞれα1からα4とすると、式(17)のように算出されたmc’を吸気管モデルM12のモデル式に代入する必要がある。
【数11】
【0074】
次に、図18を参照して本発明の筒内吸入ガス量推定値の補正制御の制御ルーチンについて説明する。まず、ステップ121では、クランク角センサ46から機関回転数Neが、ECU31から吸気弁6のリフト量指示値VLおよび位相角指示値VTが取得される。次いで、ステップ122では、リフト量指示値VL等に基づいて吸気弁モデルM13の式(9)から筒内吸入ガス量推定値Mccalが算出される。ステップ123では、ステップ122において取得されたリフト量指示値VLを上述した補正関数算出制御によって算出された補正係数に代入することで、このときのリフト量指示値VLに対する補正関数α(VL)が算出される。次いで、ステップ124では、ステップ122で算出された筒内吸入ガス量推定値Mccalに、ステップ123で算出された補正関数α(VL)を乗算することにより、補正筒内吸入ガス量推定値Mccalmが算出され(Mccalm←α(VL)・Mccal)、制御ルーチンが終了せしめられる。そして、このようにして算出された補正筒内吸入ガス量推定値Mccalmに基づいて、各気筒内へ吸入される吸気ガスの空燃比が目標空燃比AFtとなるように燃料噴射量TAUが算出される(TAU←Mccalm/AFt)。こうして各気筒燃料噴射量TAUが決定され、燃料噴射弁11から算出された燃料噴射量TAUの燃料が噴射される。
【0075】
なお、上記実施形態では、吸気弁モデルM13によって算出された筒内吸入ガス量推定値を補正しているが、リフト量指示値に基づいて吸気弁6をリフトさせつつ、吸気弁モデルM13において比例係数aを算出する際のパラメータであるリフト量指示値を補正してもよい。
【0076】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。基本的に第二実施形態の内燃機関の制御装置の構成は、第一実施形態の内燃機関の構成と同様である。ただし、第二実施形態では、第一実施形態の制御とは異なる制御が行われる。すなわち、第一実施形態では、筒内吸入ガス量推定値と実際の筒内吸入ガス量とが異なる場合に筒内吸入ガス量推定値を補正する制御が行われているが、第二実施形態では筒内吸入ガス量推定値を補正せずに、実際の筒内吸入ガス量が筒内吸入ガス量推定値とほぼ同一となるように吸気弁のリフト量を補正し、筒内吸入ガス量推定値に基づいて燃料噴射量を算出する噴射量算出制御が行われる。以下、第二実施形態におけるリフト量補正制御について説明する。
【0077】
図14を用いて説明したように、吸気弁6の弁体または吸気弁6の弁体近傍の吸気ポートにデポジットが付着等した場合には、リフト量指示値に対する有効リフト量が小さくなってしまう。そこで、第二実施形態のリフト量補正制御では、リフト量指示値を補正して補正リフト量指示値とし、この補正リフト量指示値となるように吸気弁6をリフトさせる。ここで、補正リフト量指示値は、補正リフト量指示値となるように吸気弁6をリフトさせた場合の有効リフト量が、リフト量指示値とほぼ同一となるような値とされる。
【0078】
一方、補正していないリフト量指示値を用いて吸気弁モデルM13により筒内吸入ガス量推定値を推定する。このとき、上述したように有効リフト量がリフト量指示値とほぼ同一となっているため、筒内吸入ガス量推定値は実際の筒内吸入ガス量とほぼ同一となる。したがって、このように推定された筒内吸入ガス量推定値に基づいて吸気ガスの空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射量を算出すれば、実際の吸気ガスの空燃比がほぼ目標空燃比と一致し、機関運転状態を最適に維持することができる。
【0079】
そこで、本実施形態の噴射量算出制御では、まず、リフト補正量βが算出される。このリフト補正量βは、デポジットの付着等により小さくなる吸気弁6のリフト量に相当する。すなわち、リフト補正量βは、リフト量指示値VLからリフト補正量βを減算したリフト量(VL−β)が有効リフト量となるようなリフト量とされる。
【0080】
ここで、デポジットの付着等により小さくなる吸気弁6のリフト量、すなわちリフト補正量βと、ガス量比率(筒内吸入ガス量推定値Mccalに対する実際の筒内吸入ガス量McAFMの比率)との間には、図19に示したように一定の関係がある。なお、図19はガス量比率とリフト補正量βとの関係を示した図であり、ガス量比率を検出したときの吸気弁のリフト量が異なる三つの場合が記載されている。ここで、VL1は吸気弁のリフト量が最も大きい場合であり、VL3は吸気弁のリフト量が最も小さい場合である。
【0081】
そこで、図19に示したようなグラフを全てのリフト量において予め実験的または計算によって求め、マップとしてECU31のROM34に保存する。そして、使用時には、任意のリフト量である場合におけるガス量比率McAFM/Mccalを検出する。この時、実際の筒内吸入ガス量McAFMはエアフロメータ19によって検出された値であり、筒内吸入ガス量推定値MccalはECU31からのリフト量指令値に基づいて吸気弁モデル13によって算出された値である。そして、ガス量比率と、このガス量比率検出時のリフト量とに基づいて図19に示したマップからリフト補正量βを算出することができる。
【0082】
次に、図20のフローチャートを参照してリフト補正量算出制御の制御ルーチンについて説明する。ステップ141〜ステップ144は、図17のステップ101〜ステップ104と同様であるため説明を省略する。ステップ145では、ステップ143およびステップ144において検出および算出された値に基づいてガス量比率McAFM/Mccalが算出され、算出されたガス量比率McAFM/Mccalとステップ141で取得したリフト量指示値とに基づいて図19に示したマップからリフト補正量βが算出される。
【0083】
そして、本実施形態の噴射量算出制御では、上述したリフト補正量βがリフト量指示値VLに加算され、その値が補正リフト量指示値VL’とされる(VL’←VL+β)。したがって、この補正リフト量指示値VL’がリフト量変更機構51に送信され、この補正リフト量指示値VL’となるように吸気弁6がリフトされる。リフト補正量βはデポジットの付着等により小さくなる吸気弁6のリフト量に相当するため、このときの有効リフト量は補正前のリフト量指示値VLとほぼ同一である。したがって、実際の筒内吸入ガス量は、補正前のリフト量指示値VLに対応した量である。ここで、筒内吸入ガス量推定値Mccalは、補正前のリフト量指示値VLに基づいて吸気弁モデルM13を利用して算出される。したがって、筒内吸入ガス量推定値Mccalは、実際の筒内吸入ガス量とほぼ同一となる。よって、この筒内吸入ガス量推定値Mccalに基づいて吸気ガスの空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射量TAUを算出することにより、吸気ガスの実際の空燃比をほぼ目標空燃比とすることができ、機関運転状態を最適に維持することができる。
【0084】
次に図21を参照して本実施形態の噴射量算出制御の制御ルーチンについて説明する。まず、ステップ161では、クランク角センサ46から機関回転数Neが、ECU31から吸気弁6のリフト量指示値VLおよび位相角指示値VTが取得される。次いで、ステップ162では、リフト量指示値VLに、図20に示したリフト補正量算出制御によって算出されたβを加算することで、補正リフト量指示値VL’を算出する(VL’←VL+β)。ステップ163では、補正リフト指示値VL’に基づいて吸気弁6がリフトされる。次いで、ステップ164では、補正されていないリフト量指示値VLに基づいて吸気弁モデルM13によって筒内吸入ガス量推定値Mccalが推定される。ステップ165においては、ステップ164で算出された筒内吸入ガス量推定値Mccalに基づいて吸気ガスの空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射量TAUが算出され、制御ルーチンが終了せしめられる。
【0085】
なお、上記実施形態では、全てのリフト量について図19に示したようなマップを求めているが、特定のリフト量についてのみのマップを求め、その特定のリフト量となったときにリフト補正量を算出するようにしてもよい。
【0086】
なお、上記実施形態では、リフト量指示値VLから吸気弁モデルM13を介して筒内吸入ガス量推定値を推定しているが、吸気弁モデルM13に限らず他のモデルを用いてもよく、またモデルでなく単にマップ等を用いてもよい。
【0087】
なお、本明細書において、吸気弁6のリフト量とは、吸気弁6が最もリフトされたときに吸気弁6がリフトされている量を意味する。また、吸気弁6の作用角とは、吸気弁6が開いている期間にクランクシャフトの回転する角度を意味するものであり、吸気弁6の開弁期間とほぼ同義である。また、さらに、吸気弁6の位相角とは吸気弁6が最も開いているときのクランクシャフトの回転位相を意味するものであり、開弁時期、バルブタイミングとほぼ同義である。
【0088】
【発明の効果】
第1および第2の発明によれば、補正筒内吸入ガス量は、吸気弁等へのデポジット付着等の影響が排除されて実際の筒内吸入ガス量とほぼ同一な値となっており、よって吸気弁等へのデポジット付着等による推定誤差の小さい筒内吸入ガス量が推定される。
【0089】
第3の発明によれば、吸気弁等へのデポジット付着等の影響を考慮した補正リフト量指示値に基づいて吸気弁をリフトさせることで、推定された筒内吸入ガス量と実際の筒内吸入ガス量とがほぼ同一となっており、よって吸気弁等へのデポジット付着等による推定誤差の小さい筒内吸入ガス量が推定される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制御装置を備えた内燃機関全体の図を示す。
【図2】内燃機関の一部の拡大図である。
【図3】作用角変更機構を示す図である。
【図4】作用角変更機構の制御装置の図である。
【図5】位相角変更機構を示す図である。
【図6】本発明で用いられる吸入ガス量モデルを示す図である。
【図7】スロットル弁開度と流量係数との関係を示す図である。
【図8】スロットル弁開度と開口断面積との関係を示す図である。
【図9】関数Φ(Pm/Pa)を示す図である。
【図10】スロットルモデルの基本概念を示す図である。
【図11】吸気管モデルの基本概念を示す図である。
【図12】吸気弁モデルの基本概念を示す図である。
【図13】筒内充填ガス量および筒内吸気ガス量の定義に関する図である。
【図14】デポジットの付着等の有無によるリフト量の違いを示す図である。
【図15】リフト量と吸入ガス量誤差率との関係を示す図である。
【図16】リフト量とガス量比率との関係を示す図である。
【図17】補正関数算出制御のフローチャートである。
【図18】筒内吸入ガス量推定値の補正制御のフローチャートである。
【図19】ガス量比率とリフト補正量との関係を示した図である。
【図20】リフト補正量算出制御のフローチャートである。
【図21】噴射量算出制御のフローチャートである。
【符号の説明】
1…機関本体
5…燃焼室
6…吸気弁
7…吸気ポート
8…排気弁
11…燃料噴射弁
13…下流側吸気管
14…サージタンク
15…上流側吸気管
18…スロットル弁
51…リフト量変更機構
71…位相角変更機構
Claims (3)
- リフト量可変な吸気弁と、該吸気弁へのリフト量指示値に基づいて筒内吸入ガス量を推定するメインガス量推定手段とを具備する内燃機関の制御装置において、
吸気管通過空気流量を検出する検出装置と、該検出装置によって検出された吸気管通過空気流量に基づいて実際の筒内吸入ガス量を算出するサブガス量算出手段とをさらに具備し、吸気弁開弁中に吸気弁通過ガス流速がほぼ音速となるような運転期間中に上記メインガス量推定手段によって推定された筒内吸入ガス量と上記サブガス量算出手段によって算出された実際の筒内吸入ガス量との差または比を算出し、上記メインガス量推定手段によって推定された筒内吸入ガス量を上記算出された差または比に基づいて補正した補正筒内吸入ガス量に基づいて内燃機関を制御する内燃機関の制御装置。 - リフト量可変な吸気弁と、該吸気弁へのリフト量指示値に基づいて筒内吸入ガス量を算出するメインガス量推定手段とを具備し、上記メインガス量推定手段によって推定された筒内吸入ガス量に基づいて内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、
吸気管通過空気流量を検出する検出装置と、該検出装置によって検出された吸気管通過空気流量に基づいて実際の筒内吸入ガス量を算出するサブガス量算出手段とをさらに具備し、吸気弁開弁中に吸気弁通過ガス流速がほぼ音速となるような運転期間中に上記メインガス量推定手段によって推定された筒内吸入ガス量と上記サブガス量算出手段によって算出された筒内吸入ガス量との差または比を算出し、次回以降においては、該算出された差または比に基づいてリフト量指示値を補正した補正リフト量指示値に基づいて吸気弁をリフトさせると共に、上記メインガス量推定手段は補正前のリフト量指示値に基づいて筒内吸入ガス量を推定する内燃機関の制御装置。
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