JP4254389B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の燃焼室において燃焼される混合気の空燃比を最適な値とするためには、吸気弁が閉じたときに燃焼室内に充填されている吸気ガスの量(以下、「筒内充填ガス量」と称す)を正確に推定する必要がある。通常、筒内充填ガス量は、流量センサ(エアフロメータ)等の多数のセンサ、およびこれらセンサからの出力値を引数とした多数のマップから推定される。ところが、このようにマップを用いて筒内充填ガス量を推定すると、必要なマップの数およびその引数の数が多くなり、これにより筒内充填ガス量算出時のマップ検索操作が増大し、制御負荷が増大してしまう問題がある。
【0003】
さらに、上記のようにマップに基づいて筒内充填ガス量を算出するためには、各内燃機関の形式毎に実際の測定に基づいて各マップを作成する、いわゆる適合作業を行わなければならないが、この適合作業における測定点はマップの引数の数に応じて増大するため、引数の数が多くなると適合を行う際の工数が多大になり、また引数の数が一つ増えるだけで、その工数は何十倍にも増加してしまう問題がある。
【0004】
そこで、近年において、流体力学等に基づく式で表される吸入ガス量モデルを用いることにより、マップの数および引数を減らして筒内充填ガス量を算出することが検討されている。このような吸入ガス量モデルM10の一つは、例えば、後述するスロットルモデルM11と、吸気管モデルM12と、吸気弁モデルM13とを備え、これら各モデルを用いることによりスロットル弁開度、大気圧、および大気温度から、筒内充填ガス量を求めるようにしている。
【0005】
より詳細には、スロットルモデルM11は、エネルギ保存則、運動量保存則、質量保存則、および状態方程式に基づいて、スロットル弁開度、大気圧、および大気温度から、スロットル弁を通過する空気流量(以下、「スロットル弁通過空気流量」と称す)を算出するようになっている。また、吸気管モデルM12は、エネルギ保存則、質量保存則および状態方程式に基づいて、スロットルモデルM11において算出されたスロットル弁通過空気流量と後述する吸気弁モデルM13において算出された筒内吸入ガス流量とから、吸気管内圧力および吸気管内温度を算出するようになっている。さらに、吸気弁モデルM13は、筒内充填ガス量が吸気管内圧力にほぼ比例するという経験則から導かれた近似式に基づいて、吸気管モデルM12において算出された吸気管内圧力、吸気管内温度、および大気温度から、燃焼室内に流入する吸気ガスの流量(以下、「筒内吸入ガス流量」と称す)および筒内充填ガス量を算出するようになっている。
【0006】
このように、吸入ガス量モデルを用いて筒内充填ガス量を算出することにより、ECUに記憶させるべきマップの数が減少し、適合を行う際の工数を削減すことができる。また、各モデルに用いられる計算式は比較的単純なものであるため、マップを使用する場合に比べて制御負荷を小さくすることができる。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−280202号公報
【特許文献2】
特開2001−41095号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したようにスロットルモデルM11では、スロットル弁開度、大気圧、大気温度、吸気管内圧力等に基づいてスロットル弁通過空気流量を算出している。ところが、スロットル弁周囲の温度、例えばスロットル弁近傍の吸気管の部分の温度に応じてスロットル弁を通過する空気に対する流路抵抗が変わるため、スロットル弁通過空気流量はスロットル弁周囲の温度によっても変わる。しかしながら、上述したスロットルモデルM11においては、スロットル弁通過空気流量を算出するにあたり、このスロットル弁周囲の温度は考慮されておらず、よってスロットル弁通過空気量を正確に算出することができなかった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、より正確にスロットル弁通過空気量を算出することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第1の発明では、内燃機関の燃焼室へと続く吸気通路と、該吸気通路を通る空気の流量を調整する制御弁とを具備し、さらに、少なくとも上記制御弁の吸気上流側における上流側吸気通路内圧力と、上記制御弁の吸気下流側における下流側吸気通路内圧力と、上記制御弁の開度と、流量係数とに基づいて制御弁通過空気流量を算出する制御弁通過空気流量算出手段を具備し、該制御弁通過空気流量算出手段によって算出された制御弁通過空気流量に基づいて内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、上記制御弁周囲の温度を検出する温度検出装置をさらに具備し、上記制御弁通過空気流量算出手段は、該温度検出装置によって検出された制御弁周囲の温度に基づいて上記流量係数変更する
お、「制御弁周囲の温度」とは、例えば制御弁を通過する空気の温度、制御弁近傍の吸気管の部分(以下、「制御弁近傍の吸気管部分」と称す)の温度、制御弁近傍の吸気管部分の外側における空気の温度等を意味する。また、例えば、制御弁近傍の吸気管部分周りに機関冷却水を流通させる場合には、その機関冷却水の温度を意味する。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、上記制御弁通過ガス流量算出手段は、μを制御弁における流量係数、Aeを制御弁の開口断面積、Paを上記上流側吸気通路内圧力、Taを制御弁通過空気の温度、Pmを上記下流側吸気通路内圧力、Reを定数、Φ(Pm/Pa)をPm/Paの値に応じて定まる係数とすると、下記式(2)に基づいて制御弁通過ガス流量mtを算出する
【数2】
Figure 0004254389
第2の発明によれば、制御弁通過空気流量算出手段は、予め用意したマップに基づいてではなく、数値計算によって制御弁通過空気流量を算出する。このため、マップを用いる場合に生じる適合の問題と、算出された制御弁通過空気流量の値の精度の問題とを共に解決することができる。
【0012】
第3の発明では、第1または第2の発明において、上記吸気通路は吸気管により画成され、少なくとも上記制御弁近傍の吸気管の部分を昇温する昇温処理を実行可能な昇温装置をさらに具備する。
第3の発明によれば、制御弁近傍の吸気管部分が昇温されるため、例えば、制御弁に付着した水滴等が制御弁を通過する低温の空気によって凍結して制御弁が固着してしまうことが防止される。また、昇温装置によって制御弁近傍の吸気管部分が昇温されると、これにより制御弁を通って流れる空気が暖められて膨張する。このため、このような昇温装置を用いた場合には、制御弁通過空気流量が特に制御弁周囲の温度の影響を受けやすい。したがって、このような昇温装置を用いた場合に制御弁周囲の温度を考慮に入れて制御弁通過空気流量を算出することは特に有効である。
なお、制御弁近傍の吸気管部分には、制御弁を収容する構造体(例えば、スロットルボディ)も含まれる。また、昇温装置は、制御弁近傍の吸気管部分だけでなく、制御弁自体を昇温してもよい。
【0013】
第4の発明では、第3の発明において、上記昇温装置は、上記制御弁に流入する空気の温度が所定温度以下のときに昇温処理を実行し、上記制御弁に流入する空気の温度が所定温度よりも高いときには昇温処理を禁止する。
一般に、機関出力の観点から見ると、燃焼室に流入する空気の温度は低い方が好ましい。第4の発明によれば、制御弁に流入する空気の温度が所定温度以下のとき、すなわち制御弁が凍結・固着してしまう可能性が高いときには昇温処理が実行され、制御弁に流入する空気の温度が所定温度よりも高いとき、すなわち制御弁が凍結・固着してしまう可能性が低いときには昇温処理が禁止される。このため、制御弁の凍結・固着の防止に加えて、昇温処理の必要が無いときには昇温処理が禁止されるため、燃焼室に流入する空気の温度が低く維持され、よって機関出力を高く維持することができる。すなわち、制御弁の凍結・固着の防止と、機関出力の確保とを両立することができる。
なお、上記の「所定温度」とは、制御弁周りの水滴が凍結して、制御弁が固着してしまうような温度であり、例えば0℃である。
第5の発明では、第1〜第4のいずれか一つの発明において、機関回転数を検出するための回転数検出装置をさらに具備し、上記制御弁通過空気流量算出手段は、該回転数検出装置によって検出された機関回転数に基づいて上記流量係数を変更する。
第6の発明では、第1〜第5のいずれか一つの発明において、スロットル弁の開度を検出するためのスロットル開度検出装置をさらに具備し、上記制御弁通過空気流量算出手段は、該スロットル開度検出装置によって検出されたスロットル弁の開度に基づいて上記流量係数を変更する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1に概略的に示した機関本体1は筒内噴射型火花点火式内燃機関を示す。しかしながら、本発明を別の火花点火式内燃機関や圧縮自着火式内燃機関に適用してもよい。
【0015】
図1に示したように、本発明の第一の実施形態では機関本体1はシリンダブロック2と、シリンダブロック2内で往復動するピストン3と、シリンダブロック2上に固定されたシリンダヘッド4とを具備する。ピストン3とシリンダヘッド4との間には燃焼室5が形成される。シリンダヘッド4には各気筒毎に吸気弁6と、吸気ポート7と、排気弁8と、排気ポート9とが配置される。さらに、図1に示したようにシリンダヘッド4の内壁面の中央部には点火プラグ10が配置され、シリンダヘッド4内壁面周辺部には燃料噴射弁11が配置される。またピストン3の頂面には燃料噴射弁11の下方から点火プラグ10の下方まで延びるキャビティ12が形成されている。
【0016】
各気筒の吸気ポート7は吸気枝管13を介してサージタンク14に連結され、サージタンク14は上流側吸気管15を介してエアクリーナ16に連結される。吸気ポート7、吸気枝管13、サージタンク14、上流側吸気管15は全体として吸気管を構成し、この吸気管は空気を燃焼室5内に流入させるために燃焼室5へと連通する吸気通路を画成する。上流側吸気管15は、ステップモータ17によって駆動されるスロットル弁18を有するスロットルボディ19を有する。すなわち、スロットルボディ19は上流側吸気管15の一部を構成する。スロットル弁18は、吸気管内、すなわち吸気通路を通って流れる空気の流量を調整するための制御弁として用いられる。スロットルボディ19の外壁面上には、後述する昇温機構50が設けられる。一方、各気筒の排気ポート9は排気管20に連結され、この排気管20は排気浄化装置21に連結される。
【0017】
電子制御ユニット(ECU)31はディジタルコンピュータからなり、双方向性バス32を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)33、ROM(リードオンリメモリ)34、CPU(マイクロプロセッサ)35、入力ポート36および出力ポート37を具備する。吸気枝管13には、スロットル弁18下流の吸気管部分内の吸気ガス(新気およびEGRガス)の圧力を検出するための吸気管内圧力センサ40が設けられており、吸気管内圧力センサ40は吸気管内圧力に比例した出力電圧を発生し、この出力電圧が対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。また、排気管19には、内燃機関から排気通路に排出された排気ガスの圧力および温度をそれぞれ検出するための排気圧センサ41、排気温度センサ42が設けられており、同様に出力電圧が対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
【0018】
また、スロットル弁18の開度を検出するためのスロットル開度センサ43と、内燃機関の周囲の大気温度、または上流側吸気管15に吸入される空気の温度(吸気温度)を検出するための大気温度センサ44と、内燃機関の周囲の大気の圧力(大気圧)、または上流側吸気管15に吸入される空気の圧力(吸気圧)を検出するための大気圧センサ45とが設けられ、これらセンサの出力電圧は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。また、アクセルペダル46にはアクセルペダル46の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ47が接続され、負荷センサ47の出力電圧は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。クランク角センサ48は例えばクランクシャフトが30度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが入力ポート36に入力される。CPU35ではこのクランク角センサ45の出力パルスから機関回転数が計算される。一方、出力ポート37は対応する駆動回路39を介して点火プラグ10、燃料噴射弁11、ステップモータ17に接続される。
【0019】
次に、図2を参照して、本発明において用いられる昇温機構50について説明する。図2に示したように、昇温機構50は、スロットルボディ19の外壁面上に内燃機関の冷却水(以下、「機関冷却水」と称す)が流れる環状流路51を画成する外壁部材52を具備する。外壁部材52は、ほぼ円筒状の円筒板と、ドーナツ状の二つの側板とから形成される。本実施形態において、外壁部材52はスロットルボディ19と一体的に形成されているが、別体として形成されてもよい。
【0020】
外壁部材52には二つの開口53、54が設けられ、これら開口53、54には流入流路55および流出流路56が連結される。流入流路55は、機関冷却水を循環させるためのウォータポンプ(図示せず)の出口側に接続されており、流出流路56はウォータポンプの入口側に接続される。流入流路55および流出流路56上にはそれぞれ切替弁57、58が設けられる。切替弁57、58が開弁しているときには機関冷却水が環状流路51内に流入して環状流路51内を循環し、切替弁57、58が閉弁しているときには機関冷却水は環状流路51内には流入せず、よって環状流路51内を循環しない。なお、流出流路56上には切替弁58を設けず、流入流路55上にのみ切替弁57を設けるようにしてもよい。
【0021】
さらに、外壁部材52には環状流路51内を流れる機関冷却水の温度を検出するための温度センサ59が設けられ、この温度センサ59の出力電圧は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。なお、環状流路51内を流れる機関冷却水の温度として、上記温度センサ59とは別の機関本体1内を流れる機関冷却水の温度を検出するための温度センサ(図示せず)等によって検出された温度を利用してもよい。
【0022】
一般に、上流側吸気管15に流入する空気に湿気が含まれていると、吸気管の内壁面等には水滴が付着する。このとき、上流側吸気管15内を通って流れる空気の温度、すなわち内燃機関の周囲の大気温度が低いと、上流側吸気管15の内壁面等に付着した水滴が凍結する。このような現象がスロットル弁18で起こると、スロットル弁18が凍結により固着し、吸気管を通って流れる空気の流量を調整することができなくなってしまう。これに対して、本発明では、上述したようにスロットルボディ19周りに機関冷却水を流通させて、スロットルボディ19およびスロットル弁18自体を昇温する昇温処理が行われるので、スロットル弁18の凍結による固着が防止される。
【0023】
ところが、一般に機関冷却水の温度はスロットル弁18を通って流れる空気の温度よりも高い。このため、環状流路51内を機関冷却水が流れている場合、スロットル弁18を通って流れる空気は、スロットル弁18を通過するときにスロットルボディ19等から熱を受けてその温度が上昇する。したがって、燃焼室5に充填される空気の温度も同様に上昇してしまう。一般に、燃焼室5内に充填される空気の温度が低いほど機関出力が上昇するため、この場合、機関出力が低いものとなってしまう。したがって、このような昇温機構50を具備する内燃機関では、スロットル弁18が固着して凍結してしまうような場合以外は、スロットルボディ19を昇温しない方がよい。
【0024】
そこで本発明では、スロットル弁18に流入する空気の温度として大気温度センサ44により大気温度を検出する。検出した大気温度が所定温度、例えば0℃よりも高い場合には、スロットル弁18が凍結してしまう可能性は非常に低いため、環状流路51には機関冷却水を流さない。すなわち、切替弁57、58を閉弁し、昇温処理を禁止する。逆に、検出した大気温度が0℃以下である場合には、スロットル弁18が凍結してしまう可能性は高いため、環状流路51に機関冷却水を流すようにする。すなわち、切替弁57、58を開弁し、昇温処理を実行する。こうすることにより、スロットル弁18が凍結して固着してしまう可能性が高い場合にのみスロットルボディ19の昇温が行われ、スロットル弁18が凍結して固着してしまう可能性が低い場合にはスロットルボディ19の昇温が行われず、よって機関出力が確保される。すなわち、本発明によれば、スロットル弁18の凍結の防止と、機関出力の低下の防止を両立することができる。
【0025】
なお、上記切替弁57、58の開閉の判定温度、すなわち上記所定温度は0℃でなくてもよい。例えば、安全性を考慮して、上記所定温度を0℃よりも僅かに高い温度にしてもよい。また、一般に、吸気通路内を流れる空気の圧力は大気圧よりも低いことが多く、このため水の凝固点が上昇することを考慮して、上記所定温度を0℃よりも僅かに低い温度にしてもよい。
【0026】
また、上記実施形態では、スロットルボディ19、すなわちスロットル弁18近傍の吸気管部分や、スロットル弁18自体の温度を昇温するために機関冷却水をスロットルボディ19周りに流すようにしているが、電気ヒータを用いる等、他の方法でスロットル弁18近傍の吸気管部分やスロットル弁18自体を昇温するようにしてもよい。
【0027】
さらに、上記実施形態では、スロットル弁18に流入する空気の温度として大気温度センサの出力を用いているが、他のセンサの出力等を利用してもよい。例えば、スロットル弁18の吸気上流において上流側吸気管15内を流れる空気の温度を検出するための温度センサを設けた場合、その温度センサの出力を利用してもよい。
【0028】
次に、図3を参照してスロットルボディ19を昇温するための制御の制御ルーチンについて説明する。まずステップ101において、大気温度が所定温度、本実施形態では0℃以下であるか否かが判別される。大気温度が0℃以下であると判別された場合には、ステップ102へと進む。ステップ102では、切替弁57、58が開弁され、よって環状流路51内に機関冷却水が流通せしめられ、昇温処理が実行される。そして、制御ルーチンが終了せしめられる。一方、ステップ101において、大気温度が0℃よりも高いと判別された場合には、ステップ103へと進む。ステップ102では、切替弁57、58が閉弁され、よって環状流路51内には機関冷却水は流通せしめられず、昇温処理が禁止される。そして、制御ルーチンが終了せしめられる。
【0029】
ところで、内燃機関の制御装置では、内燃機関の燃焼室5において燃焼される混合気の空燃比を目標空燃比にするためには、吸気弁が閉じたときに燃焼室5内に充填されている吸気ガスの量(以下、「筒内充填ガス量Mc」と称す)を推定し、推定された筒内充填ガス量Mcに基づいて混合気の空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射弁によって内燃機関の燃焼室5(または吸気通路)に噴射する燃料の量(以下、「燃料噴射量」と称す)を定めている。したがって、内燃機関の燃焼室5において燃焼される混合気の空燃比を正確に目標空燃比とするためには、筒内充填ガス量Mcを正確に推定する必要がある。
【0030】
通常、筒内充填ガス量Mcは、流量センサ(エアフロメータ)等の多数のセンサ、およびこれらセンサからの出力値を引数とした多数のマップから推定される。ところが、このようにマップを用いて筒内充填ガス量Mcを推定する場合、推定される筒内充填ガス量Mcの値をより正確なものにするためには、必要なマップの数およびその引数の数が多くなる。このようにマップの数が多くなると、マップを保存するためのECUのROMを記憶容量の大きいものにしなければならず、内燃機関の制御装置の製造コストが高くなってしまう。さらに、各マップを作成するにはマップが用いられる内燃機関の形式毎に適合作業を行わなければならないが、この適合作業における測定点はマップの数およびその引数の数に応じて増大するため、マップの数およびその引数の数が多くなると適合作業の工数も増大してしまう。
【0031】
そこで、マップを用いずに様々なモデルを用いて、数値計算により筒内充填ガス量Mcを算出する内燃機関の制御装置が検討されている。このような制御装置では、数値計算を多用することにより必要なマップの数を極力減らすようにしており、これにより適合作業を行う際の工数を大幅に削減しながらも、筒内充填ガス量Mcを正確に算出することができる。このような制御装置のうち本願出願人により提案されたものの一つに、図4に示した吸入ガス量モデルM10を搭載した制御装置がある。以下、図4を参照して、この吸入ガス量モデルM10について簡単に説明する。
【0032】
吸入ガス量モデルM10は、図4に示したようにスロットルモデルM11、吸気管モデルM12、吸気弁モデルM13を備える。スロットルモデルM11には、スロットル開度センサ43によって検出されたスロットル弁18の開度(以下、「スロットル開度」と称す)θtと、大気圧センサ45によって検出された内燃機関周囲の大気圧(または、上流側吸気管15に吸入される空気の圧力)Paと、大気温度センサ44によって検出された内燃機関周囲の大気温度(または、上流側吸気管15に吸入される空気の温度)Taと、後述する吸気管モデルM12において算出されたスロットル弁18から吸気弁6までの吸気枝管13等の吸気管部分(以下、「スロットル弁18下流の吸気管部分」と称す)内の圧力(以下、「吸気管内圧力」と称す)Pmとが入力され、これら入力された各パラメータの値を後述するスロットルモデルM11のモデル式に代入することで、単位時間当たりにスロットル弁18を通過する空気の流量(以下、「スロットル弁通過空気流量」と称す)mtが算出される。スロットルモデルM11において算出されたスロットル弁通過空気流量mtは、吸気管モデルM12へ入力される。
【0033】
吸気管モデルM12には、スロットルモデルM11において算出されたスロットル弁通過空気流量mtと、以下で詳述する単位時間当たりに燃焼室5内に流入する吸気ガスの流量(以下、「筒内吸入ガス流量」と称す。なお、筒内吸入ガス流量mcの定義については、吸気弁モデルM13において詳述する)mcとが入力され、これら入力された各パラメータの値を後述する吸気管モデルM12のモデル式に代入することで、吸気管内圧力Pmと、スロットル弁18下流の吸気管部分内に存在する吸気ガスの温度(以下、「吸気管内温度Tm」と称す)とが算出される。吸気管モデルM12において算出された吸気管内圧力Pmと吸気管内温度Tmは共に吸気弁モデルM13へ入力され、さらに吸気管内圧力PmはスロットルモデルM11にも入力される。
【0034】
吸気弁モデルM13には、吸気管モデルM12において算出された吸気管内圧力Pmおよび吸気管内温度Tmの他に大気温度Taが入力され、これら入力された各パラメータの値を後述する吸気弁モデルM13のモデル式に代入することで、筒内吸入ガス流量mcが算出される。算出された筒内吸入ガス流量mcは、筒内充填ガス量Mcに変換され、この筒内充填ガス量Mcに基づいて燃料噴射弁からの燃料噴射量が決定される。また、吸気管モデルM13において算出された筒内吸入ガス流量mcは吸気管モデルM12に入力される。
【0035】
図4から分かるように、吸入ガス量モデルM10では或るモデルにおいて算出されたパラメータの値が別のモデルへの入力値として利用されるので、吸入ガス量モデルM10全体では、実際に入力される値はスロットル開度θt、大気圧Pa、および大気温度Taの三つのパラメータのみであり、これら三つのパラメータから筒内充填ガス量Mcが算出される。
【0036】
次に、吸入ガス量モデルM10のうちのスロットルモデルM11ついて説明する。スロットルモデルM11では、大気圧Pa、大気温度Ta、吸気内圧力Pm、スロットル開度θtから、下記式(3)に基づいてスロットル弁通過空気流量mtが算出される。ここで、式(3)におけるμはスロットル弁における流量係数であり、これについては以下に詳述する。また、Atはスロットル弁18の開口断面積を示し、スロットル弁開度θtの関数であり、図5に示したようなマップから定まる。また、Raは気体定数に関する定数であり、実際には気体定数を1mol当たりの気体(空気)の質量Mlmolで除算した値である。
【数3】
Figure 0004254389
【0037】
また、Φ(Pm/Pa)は下記式(4)に示した関数であり、この式(4)におけるκは比熱比(一定値とする)である。この関数Φ(Pm/Pa)は図6に示したようなグラフに表すことができるので、実際には式(4)を用いて計算するのではなく、このようなグラフをマップとしてECU31のROM34に保存し、このマップからΦ(Pm/Pa)の値を求めるようにしてもよい。
【数4】
Figure 0004254389
【0038】
これらスロットルモデルM11の式(3)および式(4)は、スロットル弁18上流の気体の圧力を大気圧Pa、スロットル弁18上流の気体の温度を大気温度Ta、スロットル弁18の下流の気体の圧力を吸気管内圧力Pmとして、図7に示したようなスロットル弁18のモデルに対して、質量保存則、エネルギ保存則および運動量保存則を適用し、さらに気体の状態方程式、比熱比の定義式、およびマイヤーの関係式を利用することによって得られる。
【0039】
次に、スロットルモデルM11の式(3)における流量係数μについて説明する。上述したように、本発明では、スロットルボディ19周りに機関冷却水を流すことができる。この場合、上述したように機関冷却水の温度はスロットル弁18に流入する空気の温度、すなわち大気温度よりも高いので、スロットル弁18を通過する空気はスロットル弁18近傍で膨張する。このため機関冷却水の温度が高いほど、空気がスロットル弁18を通過しにくくなる。したがって、機関冷却水の温度が高いほどスロットル弁通過空気流量が減少し、機関冷却水の温度が低いほどスロットル弁通過空気流量が増大する。
【0040】
そこで、本発明では、スロットル弁18近傍の吸気管(スロットルボディ19)等の温度、すなわち機関冷却水の温度Twに応じて、式(3)の流量係数μを変更するようにしている。ここで、機関冷却水の温度Twと流量係数μとの関係は図8(a)に示したように直線で近似できる。
【0041】
また、流量係数μは、機関回転数Neによっても変化する。一般に、機関回転数Neが増大すればスロットル弁18を通過する空気の流速が速くなる。このように空気の流速が速くなると、スロットル弁18を通過する空気とスロットル弁18やスロットルボディ19との間の粘性の影響が大きくなり、流量係数μが低下する。逆に、機関回転数Neが低下すればスロットル弁18を通過する空気の流速は遅くなり、したがって粘性の影響も小さくなるため、流量係数μは増大する。このような関係を、図8(b)に示す。
【0042】
さらに、流量係数μは、スロットル開度θtによっても変化する。流量係数μとスロットル開度θtとの関係は、スロットル弁18の形状等によって異なり、本実施形態においては図8(c)のような関係となる。この理由としては、スロットル弁18が僅かに開弁している時、すなわちスロットル開度θtが小さい時には、スロットル弁18を通過する空気とスロットル弁18との接触面積が広く、したがってスロットル弁18を通過する空気とスロットル弁18との間の粘性の影響が大きくなり、一方、スロットル弁18が大きく開弁している時、すなわちスロットル開度θtが大きい時には、スロットル弁18を通過する空気とスロットル弁18との接触面積は狭く、したがってスロットル弁18を通過する空気とスロットル弁18との間の粘性の影響が小さくなることが挙げられる。
【0043】
したがって、流量係数μは、機関冷却水の温度Twと、機関回転数Neと、スロットル開度θtとの三つのパラメータに応じて定まる係数である。そこで、本実施形態においては、これら三つのパラメータを引数とする三次元マップを予め実験的にまたは計算によって求め、ECU31のROM34に保存する。そして、スロットルモデルM11によってスロットル弁通過空気流量mtを算出する毎に、機関冷却水温Twを温度センサ59によって検出し、機関回転数Neをクランク角センサ48によって算出し、スロットル開度θtをスロットル開度センサ43によって検出し、これら検出および算出した三つのパラメータと、上記三次元マップとに基づいて流量係数μを算出する。算出した流量係数μを式(3)に代入して計算することにより、スロットル弁通過空気流量mtが算出される。
【0044】
このように、スロットルボディ19の温度、すなわち機関冷却水の温度Twを考慮してスロットル弁通過空気流量mtを算出することで、算出されるスロットル弁通過空気流量mtを、より正確な実際の空気流量に近い値とすることができる。特に、本実施形態のように、スロットルボディ19周りに機関冷却水を流通させてスロットルボディ19を昇温させる場合、スロットル弁18を通過する空気がスロットル弁18近傍において膨張する程度は大きく、機関冷却水の温度Twに応じてスロットル弁通過空気流量mtが大きく異なるため、機関冷却水の温度Twに基づいてスロットル弁通過空気流量mtを補正することが特に効果的である。
【0045】
なお、上記実施形態では、機関冷却水の温度Twに基づいて流量係数を算出するようにしているが、大気温度(または、吸気管に流入する空気の温度)Taと機関冷却水の温度Twとの差ΔT(=Tw−Ta)に基づいて流量係数μを定めるようにしてもよい。また、流量係数μは、機関冷却水の温度ではなく、スロットル弁を通過する空気の温度、スロットル弁近傍の吸気管部分の温度、スロットル弁近傍の吸気管部分の外側における空気の温度等、スロットル弁周囲の温度であれば如何なる温度に基づいて算出されてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、機関冷却水の温度Twをスロットル弁18近傍の吸気管部分の温度としている。しかしながら、別のパラメータをスロットル弁18近傍の吸気管部分の温度としてもよい。例えば、スロットル弁18近傍の吸気管、またはスロットルボディ19の温度を直接検出してもよいし、昇温装置としてヒータを設けた場合には、ヒータの温度をスロットル弁18近傍の吸気管の温度としてもよい。
【0047】
さらに、上述したような昇温装置50を設けない場合であっても、機関本体1から発生する熱等によってスロットル弁18近傍の吸気管部分の温度が上昇し、吸気管に流入する空気の温度よりも高くなっていることが多い。したがって、昇温装置が設けない場合であっても本発明のスロットルモデルM11を利用することは効果的である。
【0048】
次に、スロットルモデルM11を内燃機関の制御装置に実装して、実際にスロットル弁通過空気流量mtを算出する場合について説明する。時刻tにおけるスロットル弁通過空気流量mt(t)は、スロットルモデルM11の式(3)より導出される下記式(5)によって算出される。なお、θt(t)は、時刻tにおけるスロットル開度を意味する。また、μ(t)は、時刻tにおける機関冷却水の温度Tw(t)、時刻tにおける機関回転数Ne(t)、時刻tにおけるスロットル開度θt(t)および上記三次元マップから算出される時刻tにおける流量係数である。
【数5】
Figure 0004254389
【0049】
次に、図9に示したフローチャートを参照して、時刻tにおけるスロットル弁通過空気流量mt(t)を算出するための制御の流れについて説明する。まず、ステップ121において、クランク角センサ48の出力に基づいて時刻tにおける機関回転数Ne(t)が算出され、スロットル開度センサ43によって時刻tにおけるスロットル開度θt(t)が検出され、温度センサ59によって時刻tにおける機関冷却水の温度Tw(t)が検出される。次いで、ステップ122では、上記ステップ121で検出および算出された三つのパラメータと、上述した三次元マップとに基づいて時刻tにおける流量係数μ(t)が算出される。
【0050】
次いで、ステップ123では、時刻tにおけるスロットル開度θt(t)に対する開口断面積At(θt(t))が算出され、後述する吸気管モデルM12によりまたは吸気管内圧力センサ40により時刻tにおける吸気管内圧力Pm(t)が算出または検出される。そして、ステップ124において、大気圧Paおよび時刻tにおける吸気管内圧力Pm(t)と、図6に示したマップとから、Φ(Pm(t)/Pa)が算出される。次いで、ステップ125では、上記ステップ122、124で検出または算出された各パラメータの値を式(4)に代入することにより、時刻tにおけるスロットル弁通過空気流量mt(t)が算出される。
【0051】
次に、吸気管モデルM12および吸気弁モデルM13について説明する。なお、吸気管モデルM12および吸気弁モデルM13については従来から提案されているものであるため、本明細書においては簡単に説明する。吸気管モデルM12では、スロットル弁通過空気流量mt、筒内吸入ガス流量mc、および大気温度Taから、下記式(6)および式(7)に基づいて吸気管内圧力Pmおよび吸気管内温度Tmが算出される。なお、式(6)および式(7)におけるVmはスロットル弁18から吸気弁6までの吸気枝管13等の部分(スロットル弁18下流の吸気管部分)の容積に等しい定数である。
【数6】
Figure 0004254389
【0052】
ここで、吸気管モデルM12について図10を参照して説明する。スロットル弁18下流の吸気管部分の総気体量(総吸気ガス量)をMとすると、総気体量Mの時間的変化は、スロットル弁18下流の吸気管部分に流入する気体の流量、すなわちスロットル弁通過空気流量mtと、スロットル弁18下流の吸気管部分から流出する気体の流量、すなわち筒内吸入ガス流量mcとの差に等しいため、質量保存則により下記式(8)が得られ、この式(8)および気体の状態方程式(Pm・Vm=M・R・Tm)より、上記式(6)が得られる。
【数7】
Figure 0004254389
【0053】
また、スロットル弁18下流の吸気管部分内の気体のエネルギM・Cv・Tmの時間的変化量は、スロットル弁18下流の吸気管部分に流入する気体のエネルギとスロットル弁18下流の吸気管部分から流出する気体のエネルギとの差に等しい。このため、吸気管部分に流入する気体の温度を大気温度Ta、スロットル弁18下流の吸気管部分から流出する気体の温度を吸気管内温度Tmとすると、エネルギ保存則により下記式(9)が得られ、この式(9)および上記気体の状態方程式より、上記式(7)が得られる。
【数8】
Figure 0004254389
【0054】
吸気弁モデルM13では、吸気管内圧力Pm、吸気管内温度Tm、および大気温度Taから、下記式(10)に基づいて、筒内吸入ガス流量mcが算出される。なお、式(10)におけるa、bは、機関回転数Neから、さらに吸気弁6の位相角(バルブタイミング)および作用角を変更できる可変動弁機構を備えた内燃機関の場合には吸気弁6の位相角、作用角から定まる値である。
【数9】
Figure 0004254389
【0055】
上述した吸気弁モデルM13について図11を参照して説明する。一般に、吸気弁6が閉じたときに燃焼室5内に充填されている吸気ガスの量である筒内充填ガス量Mcは、吸気弁6が閉弁するとき(吸気弁閉弁時)に確定し、吸気弁閉弁時の燃焼室5内の圧力に比例する。また、吸気弁閉弁時の燃焼室5内の圧力は吸気弁上流の気体の圧力、すなわち吸気管内圧力Pmと等しいとみなすことができる。したがって、筒内充填ガス量Mcは、吸気管内圧力Pmに比例すると近似することができる。
【0056】
ここで、単位時間当たりにスロットル弁18下流の吸気管部分から流出する全吸気ガスの量を平均化したもの、または単位時間当たりにスロットル弁18下流の吸気管部分から全ての燃焼室5に吸入される吸気ガスの量を一つの気筒の吸気行程に亘って(後述するように本実施形態ではクランク角180°分)平均化したものを筒内吸入ガス流量mc(以下で詳述する)とすると、筒内充填ガス量Mcが吸気管内圧力Pmに比例することから、筒内吸入ガス流量mcも吸気管内圧力Pmに比例すると考えられる。このことから、理論および経験則に基づいて、上記式(10)が得られる。なお、式(10)における値aは比例係数であり、値bは燃焼室5内に残存していた既燃ガスを表す値(排気弁8閉弁時に燃焼室5内に残る既燃ガス量を後述する時間ΔT180 °で除算したものと考えられる)である。また、実際の運転では過渡時に吸気管内温度Tmが大きく変化する場合があるため、これに対する補正として理論および経験則に基づいて導かれたTa/Tmが乗算されている。
【0057】
ここで、筒内吸入ガス流量mcについて、図12を参照して内燃機関が4気筒である場合について説明する。なお、図12は横軸がクランクシャフトの回転角度、縦軸が単位時間当たりにスロットル弁18下流の吸気管部分から燃焼室5に実際に流入する吸気ガスの流量である。図12に示したように、4気筒の内燃機関では、吸気弁6が例えば1番気筒、3番気筒、4番気筒、2番気筒の順に開弁し、各気筒に対応する吸気弁6の開弁量に応じてスロットル弁18下流の吸気管部分から各気筒の燃焼室5内へ吸気ガスが流入する。例えば、スロットル弁18下流の吸気管部分から各気筒の燃焼室5内に流入する吸気ガスの流量の変位は図14に破線で示した通りであり、これを総合してスロットル弁18下流の吸気管部分から全気筒の燃焼室に流入する吸気ガスの流量は図12に実線で示した通りである。また、例えば1番気筒への筒内充填ガス量Mcは図12に斜線で示した通りである。
【0058】
これに対して、実線で示した吸気管から全ての気筒の燃焼室に流入する吸気ガスの量を平均化したものが筒内吸入ガス流量mcであり、図中に一点鎖線で示す。そして、この一点鎖線で示した筒内吸入ガス流量mcに、4気筒の場合にはクランクシャフトが180°(すなわち、4ストローク式内燃機関において1サイクル中にクランクシャフトが回転する角度720°を気筒数で割った角度)回転するのにかかる時間ΔT180 °を乗算したものが筒内充填ガス量Mcとなる。したがって、吸気弁モデルM13で算出された筒内吸入ガス流量mcにΔT180 °を乗算することで、筒内充填ガス量Mcが算出される(Mc=mc・ΔT180 °)。より詳細には、筒内充填ガス量Mcが吸気弁閉弁時の圧力に比例することを考慮して、吸気弁閉弁時の筒内吸入ガス流量mcにΔT180 °を乗算したものが筒内充填ガス量Mcとされる。
【0059】
次に、上記吸入ガス量モデルM10を内燃機関の制御装置に実装して、実際に筒内充填ガス量Mcを算出する場合について説明する。筒内充填ガス量Mcは吸入ガス量モデルM10を用いて、式(6)、式(7)、および式(10)を解くことにより表される。この場合、ECU31で処理するために、これらの式を離散化する必要がある。時刻t、計算間隔Δtを用いて、式(6)、式(7)、および式(10)を離散化すると、それぞれ下記式(11)、式(12)、および式(13)が得られる。なお、吸気管内温度Tm(t+Δt)は、式(11)および式(12)によってそれぞれ算出されたPm/Tm(t+Δt)およびPm(t+Δt)から、式(14)によって算出される。
【数10】
Figure 0004254389
【0060】
このようにして実装された吸入ガス量モデルM10では、スロットルモデルM11の式(5)で算出された時刻tにおけるスロットル弁通過空気流量mt(t)と、吸気弁モデルM13の式(13)で算出された時刻tにおける筒内吸入ガス流量mc(t)とが、吸気管モデルM12の式(11)および式(12)に代入され、これにより時刻t+Δtにおける吸気管内圧力Pm(t+Δt)および吸気管内温度Tm(t+Δt)が算出される。次いで、算出されたPm(t+Δt)およびTm(t+Δt)は、スロットルモデルM11および吸気弁モデルM13の式(5)および式(13)に代入され、これにより時刻t+Δtにおけるスロットル弁通過空気流量mt(t+Δt)および筒内吸入ガス流量mc(t+Δt)が算出される。そして、このような計算を繰り返すことによって、スロットル弁開度θt、大気圧Pa、および大気温度Taから、任意の時刻tにおける筒内吸入ガス流量mcが算出され、算出された筒内吸入ガス流量mcに上記時間ΔT180 °を乗算することで、任意の時刻tにおける筒内充填ガス量Mcが算出される。
【0061】
なお、内燃機関の始動時には、すなわち時刻t=0においては、吸気管内圧力Pmは大気圧と等しい(Pm(0)=Pa)とされ、吸気管内温度Tmは大気温度と等しい(Tm(0)=Ta)とされて、各モデルM11〜M13における計算が開始される。
【0062】
なお、上記吸入ガス量モデルM10では、大気温度Taおよび大気圧Paが一定であるとしているが、時刻によって変化する値としてもよく、例えば、大気温度を検出するための大気温度センサ44によって時刻tにおいて検出された値を大気温度Ta(t)、大気圧を検出するための大気圧センサ45によって時刻tにおいて検出された値を大気圧Pa(t)として上記式(5)、式(12)、および式(13)に代入するようにしてもよい。
【0063】
次に、本発明の第二実施形態の制御装置について説明する。第二実施形態の制御装置の構成は第一実施形態の制御装置の構成と同様である。ただし、第二実施形態におけるスロットルモデルM11’は、第一実施形態におけるスロットルモデルM11と部分的に異なる。
【0064】
第一実施形態におけるスロットルモデルM11では、流量係数μを機関冷却水の温度Twと機関回転数Neとスロットル開度θtとの三つのパラメータを引数とする三次元マップから算出している。これに対して、第二実施形態におけるスロットルモデルM11’では、機関回転数Neとスロットル開度θtとの二つのパラメータを引数として暫定流量係数μ’の二次元マップを予め実験的に求め、ECU31のROM34に保存する。ここで暫定流量係数μ’は、環状流路51に機関冷却水を流していない場合、すなわちスロットル弁18を通過するときに空気がほとんど膨張せず、スロットル弁通過空気流量にほとんど影響を及ぼさない場合における流量係数である。したがって、環状流路51に機関冷却水を流していない場合には、この暫定流量係数μ’がそのまま流量係数μとして式(5)に代入される。
【0065】
一方、環状流路51に機関冷却水を流している場合、機関冷却水の温度Twに基づいて暫定流量係数μ’を補正して、流量係数μを算出する。この補正は下記式(15)によって行われる。そして、式(15)によって算出された流量係数μが式(5)に代入され、第一実施形態におけるスロットルモデルM11と同様にスロットル弁通過空気流量mtが算出される。なお、式(15)は図8(a)に示した直線と同様な直線を表す式であり、式(15)におけるc、dは定数であり、実験的にまたは計算によって求められる。
【数11】
Figure 0004254389
【0066】
次に、図13に示したフローチャートを参照して、時刻tにおけるスロットル弁通過空気流量mt(t)を算出するための制御の流れについて説明する。ステップ141、146〜148はそれぞれ図9のステップ121、123〜125と同様であるため説明を省略する。ステップ142では、時刻tにおける機関回転数Ne(t)と、時刻tにおけるスロットル開度θt(t)と、上述した二次元マップとに基づいて時刻tにおける暫定流量係数μ’(t)が算出される。
【0067】
次いで、ステップ143では、昇温機構50の切替弁57、58が開弁しているか否かが判別され、切替弁57、58が開弁していると判別された場合には、ステップ144へと進む。ステップ144では、上述した式(15)より導出される下記式(16)によって暫定流量係数μ’(t)と、時刻tにおける機関冷却水の温度Tw(t)とから時刻tにおける流量係数μ(t)が算出され、ステップ146へと進む。
【数12】
Figure 0004254389
【0068】
一方、ステップ143において、切替弁57、58が開弁していないと判別された場合にはステップ145へと進む。ステップ145では、ステップ142において算出された時刻tにおける暫定流量係数μ’(t)がそのまま時刻tにおける流量係数μ(t)とされる。
【0069】
本実施形態によれば、昇温機構50の環状流路51に機関冷却水を流通させない場合には、スロットル弁通過空気流量mtを算出するのに機関冷却水の温度を考慮していない。したがって、例えば、機関本体1内を流れる機関冷却水の温度を検出する温度センサの出力に基づいて上述した機関冷却水の温度Twを検出しているときに、環状流路51に機関冷却水を流通させていないのに機関本体1内の機関冷却水の温度に基づいてスロットル弁通過空気流量mtを補正してしまうのが防止される。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、上流側吸気通路内圧力と、下流側吸気通路内圧力と、制御弁開度とに基づいてだけでなく、制御弁周囲の温度に基づいて制御弁通過空気流量を算出するため、より正確にスロットル弁通過空気量を算出することができる。
【0071】
第4の発明によれば、制御弁近傍の吸気管の部分または制御弁自体を昇温する必要がある時にのみこれらの昇温処理を行うようにすることにより、制御弁の凍結・固着の防止と、機関出力の確保とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制御装置を備えた内燃機関全体を示す図である。
【図2】スロットルボディに配置された昇温機構を示す図である。
【図3】昇温機構の制御のフローチャートである。
【図4】本発明で用いられる吸入ガス量モデルを示す図である。
【図5】スロットル弁開度と開口断面積との関係を示す図である。
【図6】関数Φ(Pm/Pa)を示す図である。
【図7】スロットルモデルの基本概念を示す図である。
【図8】流量係数と、機関冷却水の温度、機関回転数、およびスロットル開度との関係を示す図である。
【図9】本発明のスロットルモデルにおける制御の流れを示すフローチャートである。
【図10】吸気管モデルの基本概念を示す図である。
【図11】吸気弁モデルの基本概念を示す図である。
【図12】筒内充填ガス量および筒内吸気ガス量の定義に関する図である。
【図13】本発明の第二実施形態のスロットルモデルにおける制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…機関本体
5…燃焼室
6…吸気弁
7…吸気ポート
8…排気弁
11…燃料噴射弁
13…吸気枝管
14…サージタンク
15…上流側吸気管
18…スロットル弁
19…スロットルボディ
50…昇温機構

Claims (6)

  1. 内燃機関の燃焼室へと続く吸気通路と、該吸気通路を通る空気の流量を調整する制御弁とを具備し、さらに、少なくとも上記制御弁の吸気上流側における上流側吸気通路内圧力と、上記制御弁の吸気下流側における下流側吸気通路内圧力と、上記制御弁の開度と、流量係数とに基づいて制御弁通過空気流量を算出する制御弁通過空気流量算出手段を具備し、該制御弁通過空気流量算出手段によって算出された制御弁通過空気流量に基づいて内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、
    上記制御弁周囲の温度を検出する温度検出装置をさらに具備し、上記制御弁通過空気流量算出手段は、該温度検出装置によって検出された制御弁周囲の温度に基づいて上記流量係数変更する内燃機関の制御装置。
  2. 上記制御弁通過ガス流量算出手段は、μを制御弁における流量係数、Aeを制御弁の開口断面積、Paを上記上流側吸気通路内圧力、Taを制御弁通過空気の温度、Pmを上記下流側吸気通路内圧力、Reを定数、Φ(Pm/Pa)をPm/Paの値に応じて定まる係数とすると、下記式(1)に基づいて制御弁通過ガス流量mtを算出する請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
    Figure 0004254389
  3. 上記吸気通路は吸気管により画成され、少なくとも上記制御弁近傍の吸気管の部分を昇温する昇温処理を実行可能な昇温装置をさらに具備する請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 上記昇温装置は、上記制御弁に流入する空気の温度が所定温度以下のときに昇温処理を実行し、上記制御弁に流入する空気の温度が所定温度よりも高いときには昇温処理を禁止する請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 機関回転数を検出するための回転数検出装置をさらに具備し、上記制御弁通過空気流量算出手段は、該回転数検出装置によって検出された機関回転数に基づいて上記流量係数を変更する請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
  6. スロットル弁の開度を検出するためのスロットル開度検出装置をさらに具備し、上記制御弁通過空気流量算出手段は、該スロットル開度検出装置によって検出されたスロットル弁の開度に基づいて上記流量係数を変更する請求項1〜5のいずれか1甲に記載の内燃機関の制御装置。
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