本発明に基づくチップ抵抗器A1は、高電力用(具体的には、数ワット〜十数ワット)のチップ抵抗器であり、図1に示すように構成され、絶縁基板10と、電極部20と、抵抗体70と、保護膜80を有している。
ここで、絶縁基板10は、含有率96%程度のアルミナにて形成された絶縁体である。この絶縁基板10は、全体には、略直方体形状を呈している。なお、図1に示す例では、絶縁基板10は平面視では長方形状を呈するが、他の形状、例えば、正方形状でもよい。なお、この絶縁基板10は、窒化アルミニウムにより形成してもよい。
また、電極部20は、図1に示すように、絶縁基板10の相対する辺部に沿って計一対設けられている。具体的には、絶縁基板10の一方の短手辺(Y1−Y2方向の辺)に沿って電極部20が設けられているとともに、他方の短手辺に沿って電極部20が設けられている。なお、電極部20は、短手辺に沿って形成されているとしたが、長手辺に沿って形成されたものとしてもよい。
ここで、電極部20は、図1に示すように、上面電極30と、下面電極40と、側面電極50と、メッキ60とを有している。
上面電極30は、絶縁基板10の上面の長手方向(X1−X2方向(図1参照))の両端部領域に一対形成されている。つまり、一方の上面電極30は、絶縁基板10の上面のX1側の端部から所定の長さに形成されているとともに、他方の上面電極30は、絶縁基板10の上面のX2側の端部から所定長さに形成されている。この上面電極30は、具体的には、銀系厚膜(銀系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。また、上面電極30のY1−Y2方向(幅方向)の幅は、抵抗体70のY1−Y2方向の幅よりも若干大きく形成されていて、絶縁基板10のY1−Y2方向の幅よりも小さく形成されている。また、Y1−Y2方向には、上面電極30と絶縁基板10の端部には隙間が形成されている。なお、この上面電極30のY1−Y2方向の幅を抵抗体70のY1−Y2方向の幅と同一としてもよい。
また、下面電極40は、図1に示すように、前記絶縁基板10の下面の長手方向(X1−X2方向(図1参照))の両端部領域に一対形成されている。つまり、一方の下面電極40は、絶縁基板10の下面のX1側の端部から所定の長さに形成されているとともに、他方の下面電極40は、絶縁基板10の下面のX2側の端部から所定の長さに形成されている。この下面電極40の長さ(X1−X2方向の長さ)は、上面電極30よりも長く形成され、側面視において、横方向(X1−X2方向)に第2抵抗体74の端部の位置にまで形成されている。つまり、X1側の下面電極40のX2側の端部の位置と、第2抵抗体74のX1側の端部の位置とは、横方向においては一致しており、また、X2側の下面電極40のX1側の端部の位置と、第2抵抗体74のX2側の端部の位置とは、横方向においては一致している。別の言い方をすると、下面電極40の長さ(X1−X2方向の長さ)は、第2抵抗体74の端部(X1−X2方向の端部)から絶縁基板の上面の端部(X1−X2方向の端部)までの長さと同一であるといえる。
なお、下面電極40のY1−Y2方向の幅は、絶縁基板10のY1−Y2方向の幅と略同一(同一としてもよい)に形成されている。この下面電極40は、銀系厚膜(銀系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。
なお、下面電極40は、側面視において、横方向(X1−X2方向)に第2抵抗体74の端部の位置にまで形成されていて、下面電極40の長さ(X1−X2方向の長さ)は、第2抵抗体74の端部(X1−X2方向の端部)から絶縁基板の上面の端部(X1−X2方向の端部)までの長さと同一であるとしたが、下面電極40の端部の位置と第2抵抗体74の端部の位置が横方向において略一致していて、下面電極40の長さ(X1−X2方向の長さ)は、第2抵抗体74の端部(X1−X2方向の端部)から絶縁基板の上面の端部(X1−X2方向の端部)までの長さと略同一であるものとしてもよい。
なお、下面電極40の端部の位置が第2抵抗体74の端部の位置とは一致せず若干ずれる場合には、下面電極40の端部の位置は、他方の下面電極40の側にずれるのが好ましい。つまり、X1側の下面電極40については、X2側の端部の位置は、X1側ではなくX2側にずれるのが好ましく、また、X2側の下面電極40については、X1側の端部の位置は、X2側ではなくX1側にずれるのが好ましい。このようにすることにより、より冷却効果を向上させることができる。以上のように、低発熱部L(後述)の領域に対応する下面側の領域の少なくとも一部にははんだ付け面(又は電極部)が形成されていない構成であればよいといえる。
また、側面電極50は、上面電極30の一部と、下面電極40の一部と、絶縁基板10の側面(つまり、X1側の側面と、X2側の側面と、Y1側の側面の一部と、Y2側の側面の一部)を被覆するように断面略コ字状に層状に形成されている。この側面電極50は、X1側の端部とX2側の端部にそれぞれ設けられている。
また、メッキ60は、ニッケルメッキ(Niメッキ)と、錫メッキとから構成されていて、X1側の端部領域とX2側の端部領域にそれぞれ設けられている。つまり、チップ抵抗器の接続用の電極部の表面にメッキ60が設けられていて、内側層がニッケルメッキで、外側層が錫メッキとなっている。
ここで、ニッケルメッキは、上面電極30の一部と、側面電極50と、下面電極40の一部とを被覆するように形成されている。つまり、上面電極30と側面電極50と下面電極40の露出部分を被覆するように形成されている。このニッケルメッキは、電気メッキにより略均一の膜厚で形成されている。このニッケルメッキは、ニッケルにて形成されており、上面電極30等の内部電極のはんだ食われを防止するために形成されている。このニッケルメッキは、ニッケル以外にも銅メッキが用いられる場合もある。
また、錫メッキは、ニッケルメッキの表面を被覆するように略均一の膜厚で配設されている。なお、錫メッキ以外にはんだメッキが用いられる場合もある。
なお、電極部20において絶縁基板10の下方に形成された部分は、下面電極部22を構成し、この下面電極部22がはんだ付け面を形成する。つまり、はんだ付け面が電極部20の一部により形成されている。この下面電極部22は、下面電極40と、メッキ60の一部と、側面電極50の一部を含むことになる。
また、抵抗体70は、図1に示すように、基本的に前記絶縁基板10の上面に設けられていて、X1−X2方向の両端部は上面電極30に積層して形成されている。つまり、抵抗体70は、長手方向(電極間方向、通電方向としてもよい))(X1−X2方向(図1参照))に帯状に形成されていて、平面視において略長方形状に形成されている。この抵抗体70は、一対の上面電極30間を接続するように形成されている。
この抵抗体70は、第1抵抗体72と、第2抵抗体74とを有していて、第2抵抗体74は、絶縁基板10の上面に層状に形成され、平面視においては方形状を呈している。この第2抵抗体74の端部(X1−X2方向の端部)の位置は、上述したように、下面電極40の端部の位置と横方向に一致していている。この第2抵抗体74は、酸化ルテニウム系厚膜(例えば、酸化ルテニウム系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。なお、この第2抵抗体74を上面電極30と同じ素材により形成してもよい。つまり、上面電極を構成する銀系厚膜(銀系メタルグレーズ厚膜)の抵抗値は、一般に、抵抗体を構成する酸化ルテニウム系厚膜(例えば、酸化ルテニウム系メタルグレーズ厚膜)の抵抗値よりも低いことから、第2抵抗体74を銀系厚膜(銀系メタルグレーズ厚膜)により形成してもよい。この場合には、第2抵抗体74は、電極材料からなる低抵抗導電体により形成されているといえる。
この第2抵抗体74は、低抵抗体であり、第1抵抗体72における第2抵抗体74の上面に積層した領域の抵抗値よりも低い抵抗値に形成されている。例えば、第2抵抗体74の素材は、第1抵抗体72の素材よりも抵抗値が小さい素材により形成されている。つまり、同一形状、同一の大きさの2つの抵抗体とした場合に、第2抵抗体74の抵抗値が第1抵抗体72の抵抗値よりも小さくする。第2抵抗体74の素材を第1抵抗体72の素材よりも低い抵抗値とするには、例えば、酸化ルテニウムの含有割合(重量比)を第1抵抗体72に比べて多くし、ガラス成分の含有割合(重量比)を第1抵抗体72に比べて少なくすることが考えられる。
また、第1抵抗体72は、絶縁基板10と第2抵抗体74の上面に設けられていて、X1−X2方向の両端部は上面電極30上に積層して形成されている。つまり、第1抵抗体72は、長手方向(電極間方向、通電方向としてもよい))(X1−X2方向(図1参照))に帯状に形成されていて、平面視において略長方形状に形成されている。また、第1抵抗体72の中央の領域は、第2抵抗体74の上面に接触して積層していて、その領域の厚みは第1抵抗体72の他の領域の厚みよりも薄く形成されている。この第1抵抗体72も、酸化ルテニウム系厚膜(例えば、酸化ルテニウム系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。
なお、この抵抗体70の両端部間に通電した場合には、第2抵抗体74が形成されている領域においては、電流はほとんど第2抵抗体74を流れるので、抵抗体70の平面視において、第2抵抗体74が形成されている領域の発熱は、抵抗体70の他の領域の発熱に比べると小さい。すなわち、図1に示すように、抵抗体70において、第2抵抗体74が設けられている領域が低発熱部Lとなり、第2抵抗体74が設けられていない領域が高発熱部H1、H2となる。そして、高発熱部H1と低発熱部Lと高発熱部H2とは、直列接続して設けられている。なお、抵抗体70における上面電極30と接している領域は、上面電極30と接しているため発熱が小さく、高発熱部とはならない。
よって、絶縁基板10における、前記高発熱部H1、H2の形成領域に対応する下面側の領域(「絶縁基板10の下面領域における、高発熱部H1、H2の領域の直下の領域」としてもよい)には、下面電極40が形成され、はんだ付け面が形成されているといえる。また、低発熱部Lの領域に対応する下面側の領域にははんだ付け面が形成されていないといえる。
なお、第2抵抗体74の端部と下面電極40の端部とが横方向に一致している場合には、電極部20において絶縁基板10の下方に形成された下面電極部22は、メッキ60の分だけ内側に突出しているといえるが、メッキ60を含めた下面電極部22の端部の位置が、第2抵抗体74の端部の位置と一致(略一致としてもよい)しているようにしてもよい。また、前記の例では、第2抵抗体74は第1抵抗体72の下面に積層しているが、第2抵抗体74が第1抵抗体72の上面に積層するものとしてもよい。
なお、抵抗体70において、第2抵抗体74を形成した領域を低抵抗部ととらえ、抵抗体70における前記低抵抗部以外の領域を高抵抗部ととらえることもできる。
また、保護膜80は、図1に示すように、主に、抵抗体70を被覆するように配設されている。すなわち、この保護膜80の配設位置をさらに詳しく説明すると、Y1−Y2方向には、前記絶縁基板10の幅と略同一(同一としてもよい)に形成され(絶縁基板10の幅よりも短く形成されていてもよい)、さらに、X1−X2方向には、抵抗体70と上面電極30の一部を被覆するように設けられている。この保護膜80は、樹脂(エポキシ、フェノール、シリコン等)により形成されている。なお、ほう珪酸鉛ガラスにより形成してもよい。
前記構成のチップ抵抗器A1の製造方法について、簡単に説明すると、まず、表面と裏面の両面に一次スリットと二次スリットが形成されている無垢のアルミナ基板(このアルミナ基板は、複数のチップ抵抗器の絶縁基板の大きさを少なくとも有する大判のものである)を用意し、このアルミナ基板の裏面(すなわち、底面)に下面電極を形成する。つまり、下面電極用のペースト(例えば、銀系メタルグレーズ等の銀系ペースト)を印刷し、乾燥・焼成する。なお、この下面電極の形成に際しては、隣接するチップ抵抗器について同時に下面電極を形成する。つまり、電極間方向に隣接する2つのチップ抵抗器に対応するアルミナ基板の領域について、一次スリットを跨ぐように1つの印刷領域で下面電極を形成する。さらには、電極間方向に直角な方向には、帯状に連続して下面電極を形成する。つまり、Y方向には複数のチップ抵抗器分まとめて一連の帯状に下面電極を形成し、さらに、X方向に隣接する2つの下面電極については、その2つの下面電極をまとめて形成する。
次に、アルミナ基板の表側の面(すなわち、上面)に上面電極を形成する。すなわち、上面電極ペーストを印刷し、乾燥・焼成する。この場合の上面電極ペーストは、銀系ペースト(例えば、銀系メタルグレーズ)又は銀パラジウムペーストである。なお、チップ抵抗器となった場合に隣接するチップ抵抗器の上面電極で互いに隣接し合う上面電極については1つの印刷領域で形成する。
次に、前記アルミナ基板の表側の面(すなわち、上面)に抵抗体70を形成する。つまり、第2抵抗体74を形成し、その後、第1抵抗体72を形成する。具体的には、第2抵抗体74の抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥・焼成して抵抗体を形成し、その後、第1抵抗体72の抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥・焼成して抵抗体を形成する。なお、第1抵抗体72、第2抵抗体74ともに、この抵抗体ペーストは、酸化ルテニウム系ペースト(例えば、酸化ルテニウム系メタルグレーズ)である。この第1抵抗体72を形成する際の抵抗体ペーストの印刷においては、一対の上面電極の内側の端部に積層するように形成する。
なお、第2抵抗体74を上面電極30と同じ素材で形成する場合には、上面電極を形成する際に同時に第2抵抗体74を形成すればよい。つまり、上面電極ペーストの印刷時に第2抵抗体74の領域にも前記上面電極ペーストを印刷して、乾燥、焼成する。
次に、抵抗体70にトリミング溝を形成して抵抗値を調整する。つまり、レーザートリミングにより抵抗体70にトリミング溝を形成する。トリミング溝を形成する領域は、低発熱部Lと高発熱部H1、H2のいずれでもよい。
次に、少なくとも抵抗体70を覆うように保護膜を形成する。つまり、樹脂ペーストを帯状に印刷し、乾燥・硬化させる。なお、Y1−Y2方向には、絶縁基板の端から離間させて保護膜を形成する。
その後は、一次スリットに沿って一次分割する。次に、前記短冊状基板に対して、側面電極を形成する。つまり、側面電極用ペーストを印刷し、乾燥・硬化する。なお、側面電極用ペーストを印刷し、乾燥・焼成する方法としてもよい。また、スパッタ法により側面電極を金属薄膜で形成してもよい。その後、二次スリットに沿って二次分割する。次に、ニッケルメッキを形成し、その後、錫メッキを形成する。
チップ抵抗器A1の使用状態について説明すると、配線基板(プリント基板としてもよい)に実装して使用する。図2は、金属基板ベースプリント基板90にチップ抵抗器A1を実装した例であり、金属基板ベースプリント基板90は、アルミ板92と、アルミ板92上に設けられた絶縁層94と、絶縁層94上に設けられた導体箔(具体的には、銅箔)96とから構成され、チップ抵抗器A1は、電極部20と導体箔96間にはんだ98を設けることにより、金属基板ベースプリント基板90に実装されている。
チップ抵抗器A1の使用に際して、一対の電極部20間に電流が流れると、抵抗体70に電流が流れるが、抵抗体70の低発熱部Lには第2抵抗体74が設けられているので、低発熱部Lにおいては、電流はほとんど第2抵抗体74を流れ、低発熱部Lからの発熱は少ない。一方、高発熱部H1、H2からは低発熱部Lに比べて発熱量が多いが、高発熱部H1、H2の形成領域に対応する絶縁基板10の下面領域には、下面電極部22が設けられているので、高発熱部H1、H2からの発熱は、絶縁基板10を通して下面電極部22から放熱される。つまり、本実施例のチップ抵抗器A1においては、放熱が困難な抵抗体70の中央の領域に第2抵抗体74を設けることにより、発熱量を小さくするとともに、高発熱部H1、H2に対応する位置には下面電極部22を設けて、高発熱部H1、H2からの発熱を下面電極部22から放熱するので、チップ抵抗器A1全体の冷却を効率的に行うことができるように構成されている。なお、高発熱部H1、H2からの熱は、主として下面電極部22から放熱されるが、厳密には、下面電極部22以外の電極部20からも放熱される。
また、一対の下面電極部22間の距離を長く確保しても、下面電極部22間の領域に対応する領域に第2抵抗体74を設けることにより発熱を抑えることができるので、チップ抵抗器の発熱を抑えながら、絶縁距離、すなわち、一対の下面電極部22間の距離を十分確保することができ、耐電圧を高くすることができる。つまり、低発熱部Lが設けられていることにより、低発熱部Lの直下に下面電極部22を設ける必要がなく(つまり、下面電極部22自体の長さを図13の第3例のように長く確保する必要がなく)、絶縁距離を十分確保することができる。
以上のように、本実施例のチップ抵抗器A1によれば、チップ抵抗器A1を金属基板にはんだ付けして実装した場合に、チップ抵抗器全体の冷却を効率的に行うことができ、また、絶縁距離を確保して耐電圧を高くすることができるので、高電力で使用できるチップ抵抗器が得られる。また、本実施例のチップ抵抗器A1においては、下面電極部22の長さをある程度長く確保することから、金属基板に実装した場合に、金属基板における銅箔は熱伝導率がよいことと相俟って、高発熱部H1、H2の発熱を均一化することができ、従来のチップ抵抗器に比べて高電力で使用できる。
なお、チップ抵抗器全体の冷却を効率的に行うことができ、絶縁距離を確保して耐電圧を高くできるという効果は、金属基板のみならずアルミナセラミック基板やガラスエポキシ基板の場合でも得ることができる。なお、アルミナセラミック基板は、板状のアルミナセラミックの上面に銅箔が形成されたものであり、また、ガラスエポキシ基板は、板状のガラスエポキシの上面に銅箔が形成されたものであり、これらの場合も銅箔が熱伝導率がよいことから、高発熱部H1、H2の発熱を均一化することができ、従来のチップ抵抗器に比べて高電力で使用できる。
また、本実施例のチップ抵抗器A1においては、絶縁基板10の下面の高発熱部H1、H2に対応する領域には下面電極部22が設けられている(つまり、第2抵抗体74に対応する領域以外の領域には下面電極部22が設けられている)ので、基板を薄くした方が配線基板への放熱効率がよく、絶縁基板を薄くすることができる。つまり、従来のチップ抵抗器においては、配線基板への放熱効率がよくないことから、絶縁基板を厚くして周りの空気への熱伝導や周囲への輻射により放熱するようにしていたが、本実施例の場合には、配線基板への放熱を十分に行うことができるので、絶縁基板を薄くすることにより周りの空気への熱伝導や周囲への輻射による放熱効果が小さくなっても、十分に放熱することができ、よって、安価な薄い絶縁基板を使用して高電力用のチップ抵抗器を提供することができる。また、薄い絶縁基板を用いるので、チップ抵抗器の小型化にも資する。
また、絶縁基板10に窒化アルミ等の高熱伝導材料を使用することによってさらに高電力で使用できるチップ抵抗器を得ることができる。
以上のように、本実施例のチップ抵抗器によれば、インバータや通信機器等の金属基板を使用した機器のハイパワー化や小型化、高集積化に適した高電力用チップ抵抗器を得ることができる。
次に、前記実施例1の変形例について説明する。実施例1の変形例におけるチップ抵抗器A1’は、図3に示すように、チップ抵抗器A1と略同様の構成であるが、下面電極40の長さが異なる。すなわち、実施例1のチップ抵抗器A1においては、下面電極40の端部は、横方向に第2抵抗体74の端部位置まで形成されているが、チップ抵抗器A1’においては、下面電極40は、横方向に第2抵抗体74の端部位置までは形成されておらず、絶縁基板10の上面の端部から第2抵抗体74の端部までの長さの略半分の位置にまで形成されている。つまり、一対の下面電極40における各下面電極40においては、下面電極40の長さ(X1−X2方向の長さ)α1は、絶縁基板10の上面の端部から第2抵抗体74の端部までの長さα2の略半分となっていて、例えば、長さα1は、長さα2の40〜60%となっている。
このように、下面電極40の長さが、絶縁基板10の上面の端部から第2抵抗体74の端部までの長さよりも短い場合でも、高発熱部H1、H2からの発熱は、電極部20(特に、下面電極部22)から放熱されるので、十分チップ抵抗器A1’全体の放熱効率を高くすることができる。つまり、高発熱部H1、H2からの発熱は、電極部20(特に、下面電極部22)から放熱され、また、低発熱部Lからの発熱は少ないので、チップ抵抗器A1’全体の放熱効率を高くすることができる。すなわち、抵抗体70が高発熱部H1、H2と低発熱部Lとを有し、高発熱部H1、H2が低発熱部Lよりも電極部20に近い側にあるので、高発熱部H1、H2からの発熱を効率的に放熱することができる。
なお、高発熱部H1、H2からの熱を効率よく放熱するには、絶縁基板10の下面領域において、少なくとも高発熱部H1、H2の平面領域に対応する領域における少なくとも一部には下面電極40(下面電極部22としてもよい)が形成されているものとするのが好ましい。すなわち、下面電極40(下面電極部22としてもよい)の一部が、高発熱部H1、H2の領域の少なくとも一部に上下方向に重なる状態とするのが好ましい。例えば、図3の例では、下面電極40におけるRで示された領域が高発熱部H1と上下方向に重なっているといえる。なお、X2側の下面電極40においても同様となっている。つまり、実施例1のように、高発熱部H1、H2に対応する領域には下面電極40が設けられているものとするのが好ましく、下面電極40の端部位置もなるべく第2抵抗体74の端部位置にまで形成されているものとするのが好ましいが、下面電極40(下面電極部22としてもよい)の一部が、高発熱部H1、H2の領域の少なくとも一部に上下方向に重なる状態とするものでもよい。
次に、実施例2について説明する。この実施例2のチップ抵抗器A2は、図4〜図6に示すように構成され、前記実施例1のチップ抵抗器A1と略同様の構成であるが、抵抗体70の構成が異なる。
すなわち、チップ抵抗器A2における抵抗体70は、方形状の第1抵抗体172と、格子状の第2抵抗体174と、帯状に配列した形状の第3抵抗体176とを有している。
つまり、第1抵抗体172は、方形状の層状を呈し、第2抵抗体174と第3抵抗体176の間の位置に設けられている。
また、第2抵抗体174は、第1抵抗体172の一方の上面電極30側の端部から連設されていて、格子状を呈している。また、格子状を形成する開口部の電極間方向(X1−X2方向)の幅は、上面電極30側に行くに従い、徐々に大きくなるように形成されている。
すなわち、第2抵抗体174は、電極間方向に伸びる複数(図4〜図6の例では、6つ)の帯状部174aと、複数の帯状部174a間に設けられた連結部174bと連結部174cと連結部174dとを有している。
ここで、帯状部174aは、第1抵抗体172のX1側の端部から連設され、帯状、すなわち、細長の長方形状を呈している。各帯状部174aの上面電極30側の端部は、上面電極30上に積層して接している。
また、連結部174bは、第1抵抗体172のX1側の端部から長さaの隙間を介した位置に電極間方向とは直角の方向(Y1−Y2方向)に設けられ、隣接する帯状部174a間をつなぐように設けられている。この連結部174bは、計5つ設けられているが、5つの連結部174bは、Y1−Y2方向に一列に設けられている。また、連結部174cは、連結部174bのX1側の端部から長さcの隙間を介した位置に電極間方向とは直角の方向(Y1−Y2方向)に設けられ、隣接する帯状部174a間をつなぐように設けられている。この連結部174cは、計5つ設けられているが、5つの連結部174cは、Y1−Y2方向に一列に設けられている。また、連結部174dは、連結部174cのX1側の端部から長さeの隙間を介した位置に電極間方向とは直角の方向(Y1−Y2方向)に設けられ、隣接する帯状部174a間をつなぐように設けられている。この連結部174dは、計5つ設けられているが、5つの連結部174dは、Y1−Y2方向に一列に設けられている。以上のように、帯状部174aと、連結部174b〜174dが設けられていることにより第2抵抗体174は全体に格子状に形成されている。
ここで、連結部174bの幅bと、連結部174cの幅dと、連結部174dの幅fとは同じ幅に形成されているが、開口部175aの長さaと、開口部175bの長さcと、開口部175cの長さeとは、a<c<eに形成されていて、上面電極30側に行くに従い開口部の長さが大きくなるように形成されている。前記のように、上面電極30側に行くに従い開口部の長さが大きくなるように形成されているので、この第2抵抗体74においては、X1−X2方向に上面電極30側に行くに従い抵抗値が大きくなっている。
なお、各帯状部174aにおける連結部174dより先端側の部分の長さhは、開口部175cの幅eよりも長く形成され、また、前記先端側の部分における上面電極30に接触していない部分の長さgは、開口部175cの幅eよりも大きくすることが好ましい。
以上のように、第2抵抗体174は、方形状の形状に方形状の開口部と端部においては方形状の切欠部を設けることにより、第2抵抗体174の形状を形成しているといえる。
次に、第3抵抗体176は、複数(図4〜図6の例では、6つ)の帯状部176aから形成され、各帯状部176aは、帯状、すなわち、細長の長方形状を呈している。各帯状部176aは、第1抵抗体172の端部(X2側の端部)から連設されている。各帯状部176aの長さと幅は、同一に形成されていて、各帯状部176a間の隙間も同一に形成されている。各帯状部176aの上面電極30側の端部は、上面電極30上に積層して接している。この第3抵抗体176は、抵抗体の一部をスリット状に形成して設けられたものといえる。
また、抵抗体70は、全体に一体に形成され、全体に同一の材質により形成され、その厚みも同一に形成されている。
本実施例の抵抗体70が前記のように構成されていることによって、第2抵抗体174は、第1抵抗体172よりも抵抗値が高く構成され、また、第3抵抗体176は、第1抵抗体172よりも抵抗値が高く構成されている。これにより、抵抗体70は、図4に示すように、高発熱部H1、H2と低発熱部Lとが形成される。すなわち、低発熱部Lは、第1抵抗体172により構成され、高発熱部H1は、第2抵抗体174の上面電極30に接していない領域により構成され、高発熱部H2は、第3抵抗体176の上面電極30に接していない領域により構成される。ここで、第2抵抗体174と第3抵抗体176の上面電極30と接している領域は、上面電極30と接しているため発熱が小さく、高発熱部とはならない。
よって、絶縁基板10における、前記高発熱部H1、H2の形成領域に対応する下面側の領域(「絶縁基板10の下面領域における、高発熱部H1、H2の領域の直下の領域」としてもよい)には、下面電極40が形成され、はんだ付け面が形成されているといえる。
なお、抵抗体70において、第1抵抗体172の領域を低抵抗部ととらえ、第2抵抗体174や第3抵抗体176の領域を高抵抗部ととらえることもできる。
チップ抵抗器A2における前記の点以外の構成は実施例1のチップ抵抗器A1と同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。
本実施例のチップ抵抗器A2の製造方法は、前記実施例1のチップ抵抗器A1と同様であるが、抵抗体70の形成に当たっては、抵抗体70の形状に抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥・焼成して抵抗体を形成する。つまり、抵抗体70は、全体に同時に形成される。
また、抵抗体70の抵抗値の調整に際しては、第2抵抗体174又は第3抵抗体176にトリミングを行う。具体的には、第2抵抗体174又は第3抵抗体176に電極間方向に直角な方向(Y1−Y2方向)にトリミング溝を形成することにより抵抗値を上昇させて抵抗値を調整する。
なお、第2抵抗体174にトリミング溝を形成する場合には、開口部175aと開口部175bと開口部175cの少なくともいずれかの位置にY1−Y2方向にトリミング溝を形成して抵抗値を調整する。連結部174dよりも先端側(X1側)の領域(つまり、長さhの領域(図5参照))にトリミング溝を形成してもよい。
この第2抵抗体174においては、開口部175a〜175cの長さが上面電極30側に行くほど大きく形成されているので、抵抗値の粗調整と微調整とを行うことができる。つまり、長さが長い方の開口部の方が同じ長さのトリミング溝を形成しても抵抗値の上昇が大きいので、図6に示すように、開口部175cの位置にトリミング溝T1を形成して抵抗値を粗調整した後に、開口部175bの位置にトリミング溝T2を形成して抵抗値を微調整することが可能となる。なお、トリミング溝の先端は、図6に示すように、開口部の位置とし、帯状部174aの途中の位置とはしない。これは、トリミング溝の先端を帯状部174aの途中の位置とすると、第2抵抗体174にクラックの発生の問題があるからである。実施例2のチップ抵抗器A2においては、第2抵抗体174において、長さの異なる開口部が3種類設けられているので、抵抗値の調整段階を3段階設けることができ、例えば、開口部175cの位置で最も荒い調整をしておき、開口部175bの位置で次に荒い調整を行い、開口部175aの位置で最後の微調整を行うようにすることができる。なお、第2抵抗体174における連結部174dよりも先端側の領域(つまり、長さhの領域(図5参照))もトリミング溝形成位置に利用すれば、a<c<e<gとすることにより、4段階の調整が可能となる。
なお、前記の説明においては、トリミング溝T1、T2を形成するものとして説明したが、図6に示すように、トリミング溝T3、T4のように第2抵抗体174において分散してトリミング溝を形成することによって(この場合には、トリミング溝T1、T2は形成しない)、発熱が均一化しより高電力のチップ抵抗器を実現することができる。
また、第3抵抗体176においては、Y1−Y2方向にトリミング溝を形成して、帯状部176aを切断することによりトリミングを行う。この場合も、トリミング溝の先端を帯状部176aの途中の位置とはせずに、トリミング溝が帯状部176a間の隙間の位置にあるようにする。
以上のように、トリミング溝の先端を、第2抵抗体174における開口部の位置や、第3抵抗体176における帯状部176a間の隙間の位置として、抵抗体の途中の位置としないようにすることにより、切断した部分には確実に電流が流れないようにすることができるので、低ノイズのチップ抵抗器を提供できる。
また、本実施例のチップ抵抗器A2の使用状態は、前記実施例1のチップ抵抗器A1と同様であり、金属基板ベースプリント基板やアルミナセラミック基板等の配線基板に実装して使用する。チップ抵抗器A2の使用に際して、一対の電極部20間に電流が流れると、抵抗体70に電流が流れるが、第1抵抗体172の抵抗値は第2抵抗体174や第3抵抗体176よりも小さいので、第1抵抗体172(低発熱部L)からの発熱は少なく、また、高発熱部H1、H2からは低発熱部Lに比べて発熱量が多いが、高発熱部H1、H2の形成領域に対応する絶縁基板10の下面には、下面電極部22が設けられているので、高発熱部H1、H2からの発熱は、絶縁基板10を通して下面電極部22から放熱される。つまり、本実施例のチップ抵抗器A2においては、放熱が困難な抵抗体70の中央の領域を低発熱の領域とすることにより発熱量を小さくするとともに、高発熱部H1、H2に対応する位置には下面電極部22を設けて、高発熱部H1、H2からの発熱を下面電極部22から放熱するので、チップ抵抗器A2全体の冷却を効率的に行うことができるように構成されている。特に、第2抵抗体74においては、X1−X2方向に上面電極30側に行くに従い抵抗値が大きくなっているので、高発熱部としての第2抵抗体174において上面電極30に近い方がより発熱するが、電極部20に近い側となるため放熱効率は高くなるといえる。なお、高発熱部H1、H2からの熱は、主として下面電極部22から放熱されるが、厳密には、下面電極部22以外の電極部20からも放熱される。
また、一対の下面電極部22間の距離を長く確保しても、下面電極部22間の領域に対応する領域に低発熱部Lとしての第1抵抗体172を設けることにより発熱を抑えることができるので、チップ抵抗器の発熱を抑えながら、絶縁距離、すなわち、一対の下面電極部22間の距離を十分確保することができ、耐電圧を高くすることができる。
よって、本実施例のチップ抵抗器A2によれば、チップ抵抗器A2を金属基板にはんだ付けして実装した場合に、チップ抵抗器全体の冷却を効率的に行うことができ、また、絶縁距離を確保して耐電圧を高くすることができるので、高電力で使用できるチップ抵抗器が得られる。また、本実施例のチップ抵抗器A2においては、下面電極部22の長さをある程度長く確保することから、金属基板に実装した場合に、金属基板における銅箔は熱伝導率がよいことと相俟って、高発熱部H1、H2の発熱を均一化することができ、従来のチップ抵抗器に比べて高電力で使用できる。
なお、チップ抵抗器全体の冷却を効率的に行うことができ、絶縁距離を確保して耐電圧を高くできるという効果は、金属基板のみならずアルミナセラミック基板やガラスエポキシ基板の場合でも得ることができる。
また、本実施例のチップ抵抗器A2においては、前記チップ抵抗器A1と同様に、絶縁基板10の下面の高発熱部H1、H2に対応する領域には下面電極部22が設けられている(つまり、第1抵抗体172に対応する領域以外の領域には下面電極部22が設けられている)ので、基板を薄くした方が配線基板への放熱効率がよく、絶縁基板を薄くすることができる。よって、安価な薄い絶縁基板を使用して高電力用のチップ抵抗器を提供することができる。また、薄い絶縁基板を用いるので、チップ抵抗器の小型化にも資する。
また、絶縁基板10に窒化アルミ等の高熱伝導材料を使用することによってさらに高電力で使用できるチップ抵抗器を得ることができる。
以上のように、本実施例のチップ抵抗器によれば、インバータや通信機器等の金属基板を使用した機器のハイパワー化や小型化、高集積化に適した高電力用チップ抵抗器を得ることができる。
また、実施例2においても、実施例1の変形例のように、下面電極40の長さを短くしてもよい。すなわち、下面電極40を横方向に第1抵抗体172の端部位置まで形成せず、絶縁基板10の上面の端部から第1抵抗体172の端部までの長さの略半分の位置にまで形成する。つまり、下面電極40の長さ(X1−X2方向の長さ)を絶縁基板10の上面の端部から第1抵抗体172の端部までの略半分(具体的には、40〜60%)とする。
このように、下面電極40の長さが、絶縁基板10の上面の端部から第1抵抗体172の端部までの長さよりも短い場合でも、高発熱部H1、H2からの発熱は、下面電極部22から放熱されるので、十分チップ抵抗器全体の放熱効率を高くすることができる。
なお、高発熱部H1、H2からの熱を効率よく放熱するには、絶縁基板10の下面領域において、少なくとも高発熱部H1、H2の平面領域に対応する領域における少なくとも一部には下面電極40(下面電極部22としてもよい)が形成されているものとするのが好ましい。すなわち、下面電極40(下面電極部22としてもよい)の一部が、高発熱部H1、H2の領域の少なくとも一部に上下方向に重なる状態とするのが好ましい。つまり、前記実施例2のように、高発熱部H1、H2に対応する領域には下面電極40が設けられているものとするのが好ましく、下面電極40の端部位置もなるべく第1抵抗体172の端部位置にまで形成されているものとするのが好ましいが、下面電極40(下面電極部22としてもよい)の一部が、高発熱部H1、H2の領域の少なくとも一部に上下方向に重なる状態とするものでもよい。
なお、前記の実施例2において、第2抵抗体174を格子状とし、第3抵抗体176を帯状としたが、これに限らず、両方を格子状としてもよいし、両方を帯状としてもよい。また、第2抵抗体174において、格子状を形成する開口部の大きさ(特に、X1−X2方向の幅)が上面電極30側にいくに従い大きくなっているものとして説明したが、抵抗値の粗調整と微調整を行うという意味では、上面電極30側にいくに従い開口部の大きさが小さくなっている構成としてもよい。また、抵抗値の粗調整と微調整の作用を得なくてよいのであれば、開口部の大きさ(特に、X1−X2方向の幅)を同じとして、通常の格子状としてもよい。
次に、実施例3について説明する。この実施例3のチップ抵抗器A3は、図7に示すように構成され、前記チップ抵抗器A1やチップ抵抗器A2と略同様の構成であるが、抵抗体70の構成が異なる。
すなわち、チップ抵抗器A3における抵抗体70は、方形状の第1抵抗体272と、蛇行状の第2抵抗体274と、蛇行状の第3抵抗体276とを有している。
つまり、第1抵抗体272は、方形状の層状を呈し、第2抵抗体274と第3抵抗体276の間の位置に設けられている。
また、第2抵抗体274は、第1抵抗体272のX1側の端部から連設され、蛇行状を呈し、その端部は上面電極30に積層している。つまり、第2抵抗体274は、縦方向部274aと、横方向部274bと、縦方向部274cと、横方向部274dと、縦方向部274eと、横方向部274fと、縦方向部274gとを有していて、蛇行状に形成されている。
また、第3抵抗体276は、第1抵抗体272のX2側の端部から連設され、蛇行状を呈し、その端部は上面電極30に積層している。つまり、第3抵抗体276は、縦方向部276aと、横方向部276bと、縦方向部276cと、横方向部276dと、縦方向部276eと、横方向部276fと、縦方向部276gとを有していて、蛇行状に形成されている。
なお、第2抵抗体274と第3抵抗体276とは、互いに点対称に形成されていて、抵抗体70全体を180度回転しても同一の形状になるようになっている。また、第2抵抗体274と第3抵抗体276とは、各抵抗体の形状に抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥・焼成して形成されている。なお、抵抗体70は、全体に一体に形成されている。
本実施例の抵抗体70が前記のように構成されていて、第2抵抗体274や第3抵抗体276の電流路の幅が第1抵抗体272の電流路の幅よりも狭いので、第2抵抗体274や第3抵抗体276は、第1抵抗体272よりも抵抗値が高く構成されている。これにより、抵抗体70は、図7に示すように、高発熱部H1、H2と低発熱部Lとが形成される。すなわち、低発熱部Lは、第1抵抗体272により構成され、高発熱部H1は、第2抵抗体274の上面電極30に接していない領域により構成され、高発熱部H2は、第3抵抗体276の上面電極30に接していない領域により構成される。ここで、第2抵抗体274と第3抵抗体276の上面電極30と接している領域は、上面電極30と接しているため発熱が小さく、高発熱部とはならない。
よって、絶縁基板10における、前記高発熱部H1、H2の形成領域に対応する下面側の領域(「絶縁基板10の下面領域における、高発熱部H1、H2の領域の直下の領域」としてもよい)には、下面電極40が形成され、はんだ付け面が形成されているといえる。
なお、抵抗体70において、第1抵抗体272の領域を低抵抗部ととらえ、第2抵抗体274や第3抵抗体276の領域を高抵抗部ととらえることもできる。
チップ抵抗器A3における前記の点以外の構成は実施例1のチップ抵抗器A1と同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。
本実施例のチップ抵抗器A3の製造方法は、前記実施例1のチップ抵抗器A1と同様であるが、抵抗体70の形成に当たっては、抵抗体70の形状に抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥・焼成して抵抗体を形成する。つまり、抵抗体70は、全体に同時に形成される。また、抵抗体70の抵抗値の調整に際しては、抵抗体70にトリミングを行うが、トリミング溝を形成する位置としては、例えば、第1抵抗体272とする。また、第2抵抗体274や第3抵抗体276の蛇行状を形成する2本の溝部において、一方を抵抗パターンにより形成し、他方をトリミング溝により形成して抵抗値調整を行ってもよい。その場合、第2抵抗体274と第3抵抗体276の両方にトリミング溝を形成してもよいし、いずれか一方に形成してもよい。
本実施例のチップ抵抗器A3の使用状態、作用、効果は、前記チップ抵抗器A1やチップ抵抗器A2と同様であるので、詳しい説明を省略する。
以上のように、本実施例のチップ抵抗器によれば、インバータや通信機器等の金属基板を使用した機器のハイパワー化や小型化、高集積化に適した高電力用チップ抵抗器を得ることができる。
また、実施例3においても、実施例1の変形例のように、下面電極の長さを短くしてもよい。その場合の構成や効果は、実施例1の変形例と同様であるので詳しい説明を省略する。
次に、実施例4について説明する。この実施例4のチップ抵抗器A4は、図8に示すように構成され、前記各チップ抵抗器、特に、前記チップ抵抗器A3と略同様の構成であるが、抵抗体70の構成が異なる。すなわち、抵抗体70における第2抵抗体や第3抵抗体が蛇行状に形成されているが、第2抵抗体の形成の仕方が異なり、トリミング溝により蛇行状に形成されている。
すなわち、チップ抵抗器A4における抵抗体70は、方形状の第1抵抗体372と、蛇行状の第2抵抗体374と、蛇行状の第3抵抗体376とを有している。
つまり、第1抵抗体372は、方形状の層状を呈し、第2抵抗体374と第3抵抗体376の間の位置に設けられている。
また、第2抵抗体374は、第1抵抗体372のX1側の端部から連設され、蛇行状を呈し、その端部は上面電極30に積層している。この第2抵抗体374は、方形状の抵抗体本体374aと、前記抵抗体本体374aと上面電極30間とを接続する接続部374bと、前記抵抗体本体374aと第1抵抗体372間とを接続する接続部374cとを有していて、抵抗体本体374aにトリミング溝T11やT12を形成することにより蛇行状に形成されている。
また、第3抵抗体376は、第1抵抗体372のX2側の端部から連設され、蛇行状を呈し、その端部は上面電極30上に積層している。つまり、第3抵抗体376は、縦方向部376aと、横方向部376bと、縦方向部376cと、横方向部376dと、縦方向部376eと、横方向部376fと、縦方向部376gとを有していて、蛇行状に形成されている。また、この第3抵抗体376は、前記抵抗体の形状に抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥・焼成して形成されている。なお、抵抗体70は、全体に一体に形成されている。
本実施例の抵抗体70が前記のように構成されていて、第2抵抗体374や第3抵抗体376の電流路の幅が第1抵抗体372の電流路の幅よりも狭いので、第2抵抗体374や第3抵抗体376は、第1抵抗体372よりも抵抗値が高く構成されている。これにより、抵抗体70は、図8に示すように、高発熱部H1、H2と低発熱部Lとが形成される。すなわち、低発熱部Lは、第1抵抗体372により構成され、高発熱部H1は、第2抵抗体374の上面電極30に接していない領域により構成され、高発熱部H2は、第3抵抗体376の上面電極30に接していない領域により構成される。ここで、第2抵抗体374と第3抵抗体376の上面電極30と接している領域は、上面電極30と接しているため発熱が小さく、高発熱部とはならない。
よって、絶縁基板10における、前記高発熱部H1、H2の形成領域に対応する下面側の領域(「絶縁基板10の下面領域における、高発熱部H1、H2の領域の直下の領域」としてもよい)には、下面電極40が形成され、はんだ付け面が形成されているといえる。
なお、抵抗体70において、第1抵抗体372の領域を低抵抗部ととらえ、第2抵抗体374や第3抵抗体376の領域を高抵抗部ととらえることもできる。
チップ抵抗器A4における前記の点以外の構成は実施例3のチップ抵抗器A3と同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。
本実施例のチップ抵抗器A4の製造方法は、前記実施例3のチップ抵抗器A3と同様であるが、抵抗体70の形成に当たっては、抵抗体70の形状においてトリミング溝T11、T12が形成されていない形状に抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥・焼成し、その後、トリミング溝T11とトリミング溝T12を形成して抵抗体を形成する。なお、図8の例では、トリミング溝T11によりまず抵抗値の粗調整を行い、その後、トリミング溝T12により抵抗値の微調整を行っている。なお、トリミング溝T12を形成して粗調整を行い、その後、トリミング溝T11を形成して微調整を行ってもよい。
本実施例のチップ抵抗器A4の使用状態、作用、効果は、前記チップ抵抗器A1〜A3と同様であるので、詳しい説明を省略する。
また、実施例4においても、実施例1の変形例のように、下面電極の長さを短くしてもよい。その場合の構成や効果は、実施例1の変形例と同様であるので詳しい説明を省略する。
次に、実施例5について説明する。この実施例5のチップ抵抗器A5は、図9に示すように構成され、前記チップ抵抗器A3と略同様の構成であるが、抵抗体70の構成が異なる。すなわち、チップ抵抗器A3においては、抵抗体70を一体に構成したのに対して、本実施例の抵抗体70においては、第1抵抗体と第2抵抗体と第3抵抗体とが別体に形成されている。また、第1抵抗体の素材は、第2抵抗体や第3抵抗体の素材に比べて抵抗値が小さい素材により形成されている。
すなわち、チップ抵抗器A5における抵抗体70は、方形状の第1抵抗体472と、蛇行状の第2抵抗体474と、蛇行状の第3抵抗体476とを有している。
つまり、第1抵抗体472は、方形状の層状を呈し、第2抵抗体474と第3抵抗体476の間の位置に設けられている。この第1抵抗体472の素材は、第2抵抗体474や第3抵抗体476の素材に比べて抵抗値が小さい素材により形成されている。このように第1抵抗体472の素材を第2抵抗体474や第3抵抗体476の素材よりも低い抵抗値とするには、例えば、酸化ルテニウムの含有割合(重量比)を第2抵抗体474や第3抵抗体476に比べて多くする。なお、第1抵抗体472を上面電極30と同一の素材により形成してもよい。つまり、第1抵抗体472を電極材料からなる低抵抗導電体により形成してもよい。
また、第2抵抗体474は、第1抵抗体472のX1側の端部から連設され、蛇行状を呈し、その上面電極30側の端部は上面電極30上に積層し、第1抵抗体472側の端部は第1抵抗体472上に積層している。この第2抵抗体474の構成は、チップ抵抗器A3における第2抵抗体274と同様であるので詳しい説明を省略する。
また、第3抵抗体476は、第1抵抗体472のX2側の端部から連設され、蛇行状を呈し、その上面電極30側の端部は上面電極30上に積層し、第1抵抗体472側の端部は第1抵抗体472上に積層している。この第3抵抗体476の構成は、チップ抵抗器A3における第3抵抗体276と同様であるので詳しい説明を省略する。
なお、第2抵抗体474と第3抵抗体476とは、互いに点対称に形成されていて、抵抗体70全体を180度回転しても同一の形状になるようになっている。また、第2抵抗体474と第3抵抗体476とは、各抵抗体の形状に抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥・焼成して形成されている。
本実施例の抵抗体70が前記のように構成されていて、第2抵抗体474や第3抵抗体476の電流路の幅が第1抵抗体472の電流路の幅よりも狭く形成され、また、第1抵抗体472の素材が第2抵抗体474や第3抵抗体476の素材に比べて抵抗値が低い素材により形成されているので、第2抵抗体474や第3抵抗体476は、第1抵抗体472よりも抵抗値が高く構成されている。これにより、抵抗体70は、図9に示すように、高発熱部H1、H2と低発熱部Lとが形成される。すなわち、低発熱部Lは、第1抵抗体472により構成され、高発熱部H1は、第2抵抗体474の上面電極30や第1抵抗体472に接していない領域により構成され、高発熱部H2は、第3抵抗体476の上面電極30や第1抵抗体472に接していない領域により構成される。ここで、第2抵抗体474と第3抵抗体476の上面電極30や第1抵抗体472と接している領域は、発熱が小さく、高発熱部とはならない。
よって、絶縁基板10における、前記高発熱部H1、H2の形成領域に対応する下面側の領域(「絶縁基板10の下面領域における、高発熱部H1、H2の領域の直下の領域」としてもよい)には、下面電極40が形成され、はんだ付け面が形成されているといえる。
なお、抵抗体70において、第1抵抗体472の領域を低抵抗部ととらえ、第2抵抗体474や第3抵抗体476の領域を高抵抗部ととらえることもできる。
チップ抵抗器A5における前記の点以外の構成は、前記チップ抵抗器A3と同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。
本実施例のチップ抵抗器A5の製造方法は、前記実施例1のチップ抵抗器A1と同様であるが、抵抗体70の形成に当たっては、第1抵抗体472を形成した後に、第2抵抗体474と第3抵抗体476を形成する。つまり、第1抵抗体472の形状に抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥・焼成して抵抗体を形成して第1抵抗体472を形成し、その後、第2抵抗体474と第3抵抗体476の形状に抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥・焼成して抵抗体を形成して第2抵抗体474と第3抵抗体476を形成する。つまり、第2抵抗体474と第3抵抗体476は同時に形成される。なお、第1抵抗体472を上面電極30と同一の素材により形成する場合には、上面電極30の形成と同時に第1抵抗体472を形成すればよい。また、抵抗体70の抵抗値の調整に際しては、抵抗体70にトリミングを行うが、トリミング溝を形成する位置としては、第1抵抗体472とするのが好ましい。
本実施例のチップ抵抗器A5の使用状態、作用、効果は、前記チップ抵抗器A1〜A4と同様であるので、詳しい説明を省略する。
また、実施例5においても、実施例1の変形例のように、下面電極の長さを短くしてもよい。その場合の構成や効果は、実施例1の変形例と同様であるので詳しい説明を省略する。
次に、実施例6について説明する。実施例6のチップ抵抗器A6は、図10に示すように構成され、前記各チップ抵抗器とは異なり、上面電極30を比較的長く確保するとともに、絶縁基板10の下面の抵抗体70の高発熱部に対応した領域に熱伝導膜42を設けた点が特徴である。
すなわち、チップ抵抗器A6は、高電力用のチップ抵抗器であり、図10に示すように構成され、絶縁基板10と、電極部20と、抵抗体70と、保護膜80と、熱伝導部24とを有している。
ここで、絶縁基板10の構成は、前記各チップ抵抗器A1〜A5における絶縁基板10の構成と同様である。
また、電極部20の構成も前記各チップ抵抗器の電極部20の構成と略同様であるが、上面電極30が下面電極40よりも電極間方向(X1−X2方向)に長く設けられている点が異なる。なお、上面電極30は、横方向に熱伝導膜42の端部の位置にまで形成され、下面電極部22と熱伝導部24間の距離、すなわち、絶縁距離を確保するとともに、抵抗体70の長さもある程度確保するため、上面電極30の長さ(電極間方向の長さ)は下面電極40の長さ(電極間方向の長さ)の2倍以上とするのが好ましく、また、上面電極30の長さ(電極間方向の長さ)は、絶縁基板10の長さ(電極間方向の長さ)の25〜35%とするのが好ましい。電極部20における前記の点以外の構成は、チップ抵抗器A1にける電極部20と同様であるので詳しい説明を省略する。
また、抵抗体70は、基本的に前記絶縁基板10の上面に設けられていて、X1−X2方向の両端部は上面電極30上に積層して形成されている。つまり、抵抗体70は、長手方向(電極間方向)(X1−X2方向(図10参照))に帯状に形成されていて、平面視において略長方形状に形成されている。この抵抗体70は、一対の上面電極30間を接続するように形成されている。この抵抗体70は、酸化ルテニウム系厚膜(例えば、酸化ルテニウム系メタルグレーズ厚膜)により形成され、全体に一体に形成されている。なお、この抵抗体70には、前記各実施例のように高発熱部と低発熱部は設けられていない。
また、保護膜80の構成は、前記チップ抵抗器A1における保護膜80と同様であるが、少なくとも抵抗体70の全体と上面電極30の一部を覆うように構成する。その際、上面電極30は、Y1−Y2方向においては完全に保護膜80に覆われる。すなわち、本実施例のチップ抵抗器A6の場合には、上面電極30のX1−X2方向の長さが比較的長くなるので、上面電極30の露出を防止するために、保護膜80の幅(Y1−Y2方向の幅)を上面電極30の幅よりも大きくして、上面電極30をY1−Y2方向においては完全に覆うとともに、X1−X2方向にもなるべく長く覆うようにする。つまり、例えば、上面電極30が露出して上面電極30に水分等が付着すると電流が過度に流れて耐電圧が低下するので、保護膜80とメッキ60によって確実に上面電極30を覆うようにする。なお、この点は、後述する実施例7の上面電極30及び上面電極32や、実施例8の上面電極30−1、30−2においても同様である。
また、熱伝導部24は、熱伝導膜42と、メッキ60とから構成され、熱伝導膜42は、下面電極40と同じ素材により形成され、方形状に形成されている。
熱伝導膜42(熱伝導部24としてもよい)の幅(Y1−Y2方向の幅)は絶縁基板の幅と同様に形成され、その長さ(X1−X2方向の長さ)は一対の上面電極30間の距離と同一に形成され、熱伝導膜42の一方の端部(X1側の端部)は、横方向に、一方の上面電極30(X1側の上面電極30)の内側の端部(X2側の端部)と一致しており、また、熱伝導膜42の他方の端部(X2側の端部)は、横方向に、他方の上面電極30(X2側の上面電極30)の内側の端部(X1側の端部)と一致している。つまり、抵抗体70の上面電極30に積層していない領域に対応した領域に熱伝導膜42が形成されている。また、熱伝導部24におけるメッキ60は、熱伝導膜42の表面を被覆するように形成されている。
チップ抵抗器A6は、前記のように構成されているので、抵抗体70における上面電極30に接していない領域は高発熱部Hとなり、上面電極30の領域は低発熱部L1、L2となる。上面電極30は、低発熱部として機能するので、上面電極30における保護膜80により被覆されている領域は、少なくとも低発熱部として機能する。以上のように、絶縁基板10の下面において高発熱部Hに対応した領域に熱伝導膜42が設けられているといえる。よって、前記絶縁基板10における、前記抵抗体70における上面電極30と接していない領域に対応する下面側の領域には、はんだ付け面が形成されているといえる。
なお、前記の説明では、抵抗体70の上面電極30に積層していない領域に対応した領域に熱伝導膜42が形成されているとしたが、抵抗体70の上面電極30に積層していない領域に対応した領域に熱伝導部24が形成されているとしてもよい。すなわち、熱伝導部24の一方の端部(X1側の端部)が、横方向に、一方の上面電極30(X1側の上面電極30)の内側の端部(X2側の端部)と一致しており、また、熱伝導部24の他方の端部(X2側の端部)は、横方向に、他方の上面電極30(X2側の上面電極30)の内側の端部(X1側の端部)と一致しているものとしてもよい。
なお、低発熱部L1、L2からの発熱は少ないので、絶縁基板10における、低発熱部L1、L2の領域に対応する下面側の領域には、はんだ付け面は特に必要なく、その意味では、絶縁基板10における、低発熱部L1、L2の領域に対応する下面側の領域の少なくとも一部にははんだ付け面が形成されていない構成であればよく、また、高発熱部からの熱を放熱するには、高発熱部Hの領域に対応する下面側の領域の少なくとも一部にははんだ付け面が形成されている構成とする必要があるといえる。
チップ抵抗器A6の製造方法は、チップ抵抗器A1と略同様であるが、下面電極40の形成に当たっては、熱伝導膜42も同時に形成し、上面電極30の形成に当たっては、前記のように下面電極40よりも長く形成するとともに、抵抗体70の形成に当たっては、通常の抵抗体と同様に、抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥、焼成して形成する。また、メッキに際しては、熱伝導膜42にもメッキを形成する。
本実施例のチップ抵抗器A6の使用状態、作用、効果は、前記チップ抵抗器A1〜A5と同様であるので、詳しい説明を省略するが、本実施例においては、下面電極部22のみならず、熱伝導部24もはんだ付け面となり、チップ抵抗器A6の使用に際して、一対の電極部20間に電流が流れると、抵抗体70に電流が流れるが、抵抗体70における高発熱部Hから発生した熱は、熱伝導部24から放熱され、また、低発熱部L1、L2からの発熱は小さいので、効率的にチップ抵抗器を冷却することができる。また、上面電極30が下面電極40よりも長く形成されているので、上面電極30の長さをある程度長く確保することにより、下面電極部22と熱伝導部24との間の距離α11、α12の長さを確保できるので、絶縁距離を十分確保でき、耐電圧を高くすることができる。
次に、実施例7について説明する。実施例7のチップ抵抗器A7は、図11に示すように構成され、実施例6のチップ抵抗器A6と略同様の構成であるが、チップ抵抗器A6においては、上面電極30が長く形成されていたのに対して、チップ抵抗器A7においては、上面電極30の内側に第2上面電極32を設けることにより、上面電極の長さを長く確保している点が異なる。
すなわち、上面電極30の長さ(X1−X2方向の長さ)は、下面電極40の長さと同じであるが、第2上面電極32がさらに、上面電極30の内側に接続して設けられている。上面電極30と第2上面電極32の接続部分においては、第2上面電極32が上面電極30の上に積層している。このように上面電極30と第2上面電極32とによって、上面電極30と第2上面電極32からなる上面電極の全体の長さ(電極間方向の長さ)α21は、下面電極40の長さ(電極間方向の長さ)の2倍以上とするのが好ましく、また、前記長さα21は、絶縁基板10の長さ(電極間方向の長さ)の25〜35%とするのが好ましい。電極部20における前記の点以外の構成は、チップ抵抗器A6と同様であるので詳しい説明を省略する。
なお、保護膜80の構成は、前記チップ抵抗器A7における保護膜80と同様であり、少なくとも抵抗体70の全体と上面電極32の大部分を覆うように構成する。その際、上面電極32は、Y1−Y2方向においては完全に保護膜80に覆われる。すなわち、本実施例のチップ抵抗器A7の場合には、上面電極30と上面電極32とからなる上面電極のX1−X2方向の長さが比較的長くなるので、上面電極の露出を防止するために、上面電極をY1−Y2方向においては完全に覆うとともに、X1−X2方向にもなるべく長く覆うようにする。
チップ抵抗器A7は、前記のように構成されているので、抵抗体70における第2上面電極32に接していない領域は高発熱部Hとなり、上面電極30や第2上面電極32の領域は低発熱部L1、L2となる。つまり、絶縁基板10の下面において高発熱部Hに対応した領域に熱伝導膜42が設けられているといえる。よって、前記絶縁基板10における、前記抵抗体70における第2上面電極32と接していない領域に対応する下面側の領域には、はんだ付け面が形成されているといえる。
なお、前記の説明では、抵抗体70の第2上面電極32に積層していない領域に対応した領域に熱伝導膜42が形成されているとしたが、抵抗体70の第2上面電極32に積層していない領域に対応した領域に熱伝導部24が形成されているとしてもよい。すなわち、熱伝導部24の一方の端部(X1側の端部)が、横方向に、一方の第2上面電極32(X1側の第2上面電極32)の内側の端部(X2側の端部)と一致しており、また、熱伝導部24の他方の端部(X2側の端部)は、横方向に、他方の第2上面電極32(X2側の第2上面電極32)の内側の端部(X1側の端部)と一致しているものとしてもよい。
チップ抵抗器A7の製造方法は、チップ抵抗器A6と略同様であるが、上面電極30を形成した後に第2上面電極32を形成する。なお、下面電極40の形成に当たっては、熱伝導膜42も同時に形成する。
チップ抵抗器A7の使用状態や得られる効果は、チップ抵抗器A6と同様であるので、詳しい説明を省略する。
次に、実施例8について説明する。実施例8のチップ抵抗器A8は、図12に示すように構成され、一対の下面電極のうちの一方を長く形成して、抵抗体の高発熱部の下側に配置させる構成となっている。
すなわち、チップ抵抗器A8は、絶縁基板10と、電極部20と、抵抗体70と、保護膜80を有している。
ここで、絶縁基板10の構成は、前記各チップ抵抗器A1〜A7における絶縁基板10の構成と同様である。
また、電極部20の構成も前記各チップ抵抗器の電極部20の構成と略同様であるが、一対の上面電極においては、X1側の上面電極30−1がX2側の上面電極30−2よりも電極間方向(X1−X2方向)に短く形成されている。
また、一対の下面電極においては、X1側の下面電極40−1がX2側の下面電極40−2よりも電極間方向(X1−X2方向)に長く形成されている。さらに、一対の下面電極のうち長く形成されている下面電極40−1は、電極間方向に上面電極30−1よりも長く形成されていて、抵抗体70の上面電極に積層していない領域の下側に位置するように設けられている。すなわち、下面電極40−1のX2側の端部は、抵抗体70の上面電極30−1、30−2に接していない領域のX2側の端部と一致している。これにより、抵抗体70において上面電極30−1、30−2に接していない領域が高発熱部Hとなるが、絶縁基板10の下面の高発熱部Hに対応する領域(つまり、高発熱部Hの下側の領域)には、下面電極40−1が設けられていることになる。また、下面電極40−2は、電極間方向に上面電極30−2よりも短く形成されている。
なお、保護膜80の構成は、前記チップ抵抗器A7、A8における保護膜80と同様であり、少なくとも抵抗体70の全体と上面電極30−1、30−2の一部を覆うように構成する。その際、上面電極30−1、30−2は、Y1−Y2方向においては完全に保護膜80に覆われる。すなわち、本実施例のチップ抵抗器A8の場合には、特に、上面電極30−2のX1−X2方向の長さが比較的長くなるので、上面電極の露出を防止するために、上面電極30−2をY1−Y2方向においては完全に覆うとともに、X1−X2方向にもなるべく長く覆うようにする。
チップ抵抗器A8は、前記のように構成されているので、抵抗体70における上面電極30−1、30−2に接していない領域は高発熱部Hとなり、上面電極30−1、30−2の領域は低発熱部L1、L2となる。つまり、絶縁基板10の下面において高発熱部Hに対応した領域(つまり、高発熱部Hの下側の領域)には下面電極40−1が設けられているといえる。よって、前記絶縁基板10における、前記抵抗体70における上面電極30−1、30−2と接していない領域に対応する下面側の領域には、はんだ付け面(つまり、下面電極40−1)が形成されているといえる。
なお、前記の説明では、抵抗体70の上面電極30−1、30−2に積層していない領域に対応した領域に下面電極40−1が形成されているとしたが、抵抗体70の上面電極30−1、30−2に積層していない領域に対応した領域に下面電極部22−1が形成されているとしてもよい。すなわち、下面電極部22−1の端部(X2側の端部)が、横方向に、高発熱部HのX2側の端部と一致しているものとしてもよい。
チップ抵抗器A8の製造方法は、チップ抵抗器A1と略同様であるが、下面電極の形成に当たっては、下面電極40−1を下面電極40−2よりも長く形成し、上面電極の形成に当たっては、上面電極30−2を上面電極30−1よりも長く形成する。また、抵抗体70の形成に当たっては、通常の抵抗体と同様に、抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥、焼成して形成する。
本実施例のチップ抵抗器A8の使用状態、作用、効果は、前記チップ抵抗器A1〜A7と同様であるので、詳しい説明を省略するが、チップ抵抗器A8の使用に際して、一対の電極部20間に電流が流れると、抵抗体70に電流が流れるが、抵抗体70における高発熱部Hから発生した熱は、下側に位置する下面電極部22−1から放熱され、また、低発熱部L1、L2からの発熱は小さいので、効率的にチップ抵抗器を冷却することができる。また、上面電極30−2が下面電極40−2よりも長く形成されているので、上面電極30−2の長さをある程度長く確保することにより、下面電極部22−1と下面電極部22−2との距離の長さを確保できるので、絶縁距離を十分確保でき、耐電圧を高くすることができる。
なお、前記各実施例においては、抵抗体70は、上面電極30、30−1、30−2(又は第2上面電極32)との接続領域においては、抵抗体70が上面電極30、30−1、30−2(又は第2上面電極32)の上面に積層しているものとして説明したが、上面電極30、30−1、30−2(又は第2上面電極32)との接続領域において、上面電極30、30−1、30−2(又は第2上面電極32)が抵抗体70の上面に積層する構成としてもよい。