JP4202662B2 - 摩擦撹拌接合方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、摩擦撹拌接合方法に係る。摩擦撹拌接合方法とは、2つの接合部材の接合部上にて、軸状部材を回転させて両部材の接合部を可塑化しながら撹拌混合することにより一体化する接合方法である。
【0002】
【従来の技術】
このような摩擦撹拌接合方法は公知であり、例えば特許第2712838号記載のものがある。図7はこの方法を示し、適当な金属からなる第1接合部材1と第2接合部材2の各端部を突き合わせ、この接合部3上に軸状部材4を回転させながら接合部3の両側にある第1接合部材1と第2接合部材2の各接合部近傍を可塑化しつつ撹拌混合して接合する。
【0003】
このとき、軸状部材4は軸方向両端を回転部材5及び6により支持され、可塑化部分はこれら回転部材5及び6の各先端部で押さえられて飛散を防止される。また、軸状部材4は回転部材5側へ取り付けられ、接合が完了すると軸状部材4を回転部材6から分離して、回転部材5とともに上方へ引き上げる。
【0004】
さらに、接合完了時に軸状部材4を回転部材から分離して接合部3上へ残留させることにより、せん断方向の接合強度を上げるための補強部材として利用することも公知である(特願2000−233443号)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例では、回転部材5と6により軸状部材4の両端を両持ち支持することにより、接合部材の肉厚程度に長くした軸状部材4を接合部へ深く差し込んで撹拌混合することができるので、接合強度をアップできる。
【0006】
しかし、上記従来例の場合、接合完了時に軸状部材4を引き抜くため、軸状部材4の引き抜きに伴う体積減少分に相当する穴又は凹部からなる引き抜き痕が残り、接合部の外観を損なうことがある。また残留した軸状部材4を利用して接合部におけるせん断強度をアップさせることも期待できない。
【0007】
一方、軸状部材を接合部材中へ残留させて埋設すれば、軸状部材4により接合部におけるせん断強度を上げることができる。しかし、軸状部材4を残留させることにより、撹拌混合される接合部材の可塑化した部分が軸状部材4の体積分だけあふれ出すことになり、このあふれ出し分を接合完了後に除去するための後加工が必要になるため、多くの手間を要することになる。
【0008】
そこで本願発明は、接合部のせん断強度を高めるとともに、可塑化材料のあふれ出しに伴う接合後における後加工を省略できる摩擦撹拌接合方法及びその接合品の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1に係る摩擦撹拌接合方法は、互いに接合する2つの接合部材の接合部にて軸状部材を回転させて接合する摩擦撹拌接合方法において、
前記2つの接合部材のうちいずれか一方側又は接合部上に予め前記軸状部材を差し込むための初期差込部を形成しておき、この初期差込部へ前記軸状部材を差し込んで回転させながら、前記接合する2つの接合部材の表面に表れる前記突き合わせ接合部の端部の線の上に沿って又はこの線と交差する方向へ移動させることにより前記突き合わせ接合部を撹拌混合するとともに、前記軸状部材が突き合わせ接合部を跨ぐ位置で回転を停止させ、前記軸状部材の軸方向全体が前記突き合わせ接合部に跨るように、前記軸状部材を前記突き合わせ接合部上へ埋設残留させることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る摩擦撹拌接合接合方法は、上記請求項1において、前記初期差込部を前記2部材のうち予め一方側へ前記接合部から離して形成しておき、この初期差込部へ差し込んだ前記軸状部材を回転させながら、接合部と交差する方向へ移動させることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る摩擦撹拌接合接合方法は、上記請求項1又は2において、前記初期差込部が前記接合部材の肉厚方向に貫通する初期差込穴であり、この初期差込穴に差し込ませた前記軸状部材の両端を一対の回転部材で押さえることを特徴とする。
【0012】
【発明の効果】
請求項1の摩擦撹拌接合方法によれば、予め設けられた初期差込部に軸状部材を差し込み、回転させながら接合部を移動させると、接合部は軸状部材により撹拌混合され、可塑化材料は軸状部材の移動方向後方へ回り込む。したがって、接合完了後に軸状部材を接合部に残留させても、その体積分のあふれ出しがなくなり、このあふれ出しを除去するための後加工を省略できる。しかも軸状部材を接合部へ残留させたので、せん断強度をアップできる。
【0013】
請求項2の摩擦撹拌接合方法によれば、予め一方側の接合部材に初期差込部を設け、ここから回転する軸状部材を接合部と交差する方向へ移動させて接合部状へ残留させるので、初期差込部を確実に形成でき、かつ接合部における摩擦撹拌接合も確実に実現できる。
【0014】
請求項3の摩擦撹拌接合方法によれば、初期差込部を接合部材の肉厚方向へ貫通形成し、軸状部材の軸方向両端を一対の回転部材により押さえつけることにより、軸状部材を両持ち支持できるので、接合部に対する軸状部材の差し込みを十分に深くでき、撹拌混合による接合部の長さがほぼ肉厚方向全体に及ぶため、さらに接合強度が大きくなる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。図1は接合完了後の製品を示し、図2はその2−2線断面を示す。図3は図1の接合前の状態を示し、図4はその4−4線断面を回転部材とともに示す。図5は回転部材のスライド構造を示し、図6は図4のバリエーションである。
【0016】
まず、図1及び図2において、この接合品は、自動車のサスペンション用リンクアームであり、このリンクアーム10は、第1接合部材であるロッド11と第2接合部材である目玉部状のブラケット12及びブッシュ13を備える。ブラケット12はブッシュ13を収容するリング部14と、その外周部から径方向外方へ突出する二股部15を有する。
【0017】
二股部15はロッド11の先端部を嵌合する溝状等をなす凹部16を備え、この凹部16を挟む対向位置に外方へ膨らむ肥大部17を設け、この肥大部17の内側にロッド11へ向かって摩擦撹拌部18が形成されている。この摩擦撹拌部18は二股部15とロッド11の突き合わされた接合面に形成される接合部19に達し、この接合部19上に軸状部材20が位置する。接合部19は本願の突き合わせ接合部に相当する。二股部15とロッド11は摩擦撹拌部18及び軸状部材20を介して一体化される。
【0018】
符号21,22は軸状部材20の両端に形成された連結凹部、23はブッシュ13を構成する内筒、24は防振ゴムであり、リング部14と内筒23に加硫接着して一体化されている。軸状部材20は接合部材であるロッド11及びブラケット12より硬くかつある程度の耐熱性があれば、超硬材などの適当な金属材料から制作できる。
【0019】
なお、図1及び3に示すリンクアーム10におけるの半分側の図示を省略してあるが、ロッド11の右端側にも図示と同様構造のブラケット12が左右一対で設けられる。但し、一方のブラケットにおけるブッシュは内筒23の軸線方向を異にしたり、又は全く別構造のブッシュを用いたり、さらにはブラケット及びブッシュ自体を省略した単なる取付部にする等任意にできる。
【0020】
ブラケット12はアルミなどの軽合金等からなる金属又は樹脂等の適宜可塑性材料をリング状部14の軸線方向へ長尺に押し出し成形し、所定のカット幅W(図2)に定尺カットすることにより容易に得られる。このとき、ブラケット12の肥大部17には初期差込穴25を押し出し成形と同時一体に形成できるため、後加工で初期差込穴25を形成する必要がなくなり効率等的である。また、ロッド11も同様材料を用いて中実棒状若しくはパイプ状等適宜に成形できるが、その成形方法は必ずしも押し出し成形によらず、種々可能である。
【0021】
次にこのリンクアーム10の製造方法を説明する。図3及び図4に示すように、肥大部17へ予め初期差込穴25を形成する。この初期差込穴25は前述のように押し出し成形時に一体に形成されるが、別に機械加工して設けてもよい。図4に示すように、この初期差込穴25は二股部15のカット幅方向における肉厚を貫通しており、この中にピン状の軸状部材20が差し込まれる。初期差込穴25の内径は軸状部材20の外径よりも若干大きめにされ、初期差込穴25と軸状部材20の間に若干の間隙が形成される。
【0022】
この状態で、軸状部材20の両端に一対の回転部材26及び27を配置し、それぞれの連結突起28,29を対応する連結凹部21,22へ係合させ、同一方向へ同期回転させる。このとき、例えば回転部材26を駆動側とし、回転部材27は従動側の非駆動部材として、単に軸状部材20の一端を支持するだけのものでもよい。各回転部材26,27の先端部は接合部材の表面へ押しつけられ、可塑化材料の飛散を防止する。
【0023】
なお、図5に示すように、少なくとも回転部材26は、内側部材30と外側部31の内外嵌合構造とし、内側部材30にて軸状部材20と連結するとともに、外側部31を内側部材30の周囲へ軸線方向へスライド自在とし、その先端面32を二股部15及びロッド11の接合部表面へ押し付けるようになっている。
【0024】
また、図6に示すように、軸状部材20の両端に連結突起28,29を形成し、回転部材26,27の側にそれぞれ連結凹部21,22を形成してもよい。
【0025】
次に、回転部材26,27により軸状部材20を回転させるとともに、図5に仮想線で示すように、外側部31を二股部15の表面側へスライドさせて先端面32を押しつけ、一体に回転させつつ接合部19と交差する方向、すなわち図3及び図4に示すように、接合する2つの接合部材である二股部15及びロッド11の表面に表れる接合部19の端部の線と交差するようにロッド11側へ移動させる。なお後述するようにこの線上をこの線に沿って移動してもよい。すると、二股部15の一部は軸状部材20により可塑化しつつ摩擦撹拌されて流動するため、軸状部材20の移動方向後方側へ移動して移動軌跡後方側を埋め、同時に初期差込穴25を埋める。
【0026】
また、外側部材31の先端面32により、二股部15の接触部表面が摩擦撹拌されて可塑化することにより、この可塑化材料によって軸状部材20と初期差込穴25の間に当初存在していた若干の間隙は埋められる。なお、回転部材のスライドに代えて、回転部材26,27の各先端部による押さえ込み量を多めに調節することによっても、前記軸状部材20と初期差込穴25の間における間隙を埋めることができる。
【0027】
この摩擦撹拌接合において、当所の摩擦撹拌は二股部15の肉部だけで行われ、ロッド11の材料との混合はない。しかし、軸状部材20の移動によりその外周部が接合部19に達すると、ロッド11の構成材料を可塑化するので、二股部15側の可塑化材料と撹拌混合することになる。
【0028】
軸状部材20が接合部19を跨ぐ位置まで移動すると、棒状部材20の回転を停止し、回転部材26,27を分離する。これにより軸状部材20は接合部19上に残留され、軸状部材20の軸方向全体が突き合わせ接合部19に跨るように、二股部15とロッド11の接合部中へ埋設一体化される。このため、撹拌混合により二股部15とロッド11は強固に接合するとともに、接合面におけるせん断強度は軸状部材20によりアップされる。
【0029】
しかも、軸状部材20は二股部15の肉厚に貫通形成された初期差込穴25へ差し込むようにしたので、ほぼブラケット12のカット幅方向における肉厚程度に長くでき、かつ回転部材26,27により両端を両持ち支持するから、この長さで軸状部材20による摩擦撹拌接合が可能になる。したがって棒状部材20を二股部15及びロッド11の肉厚程度まで十分深く差し込むことができ、撹拌混合をこれらの肉厚方向全体に及ぶ範囲で生じさせるから、十分に大きな接合強度を得ることができる。
【0030】
そのうえ、予め初期差込穴25を形成することにより、軸状部材20を接合部へ残留させても、その体積相当分の可塑化材料を初期差込穴25にて吸収させることができるから、可塑化材料を接合部表面へあふれ出させないようにできる。その結果、接合後におけるあふれ出し部分を除去するための後加工を省略でき、接合作業の効率アップを図ることができる。
【0031】
しかも、回転部材27の一部をスライド自在の外側部31とし、これにより二股部15の表面を摩擦撹拌するので、初期差込穴25を軸状部材20より若干大きめに形成しても、この間隙を埋めて接合部の外観を良好に保つことができる。また、初期差込穴25を大きくすることにより、軸状部材20の差し込みが容易になる。そのうえ、このようにしてなるブラケット12は、初期差込穴25を接合部19上に形成する場合と比べて単一部材である二股部25側へ形成するため、初期差込穴25を容易に形成でき、かつ後加工不要程度に比較的外観性のよい摩擦撹拌接合を実現できる。
【0032】
なお、本願発明は上記実施例に限定されず、同一の発明原理内において種々に変形や応用が可能である。本願製法にな実施例の接合品は一例であって、リンクアーム以外の防振部材若しくはその他種々用途の接合品に適用可能である。また、接合部19へ達した軸状部材20を接合部19に沿ってさらに移動させれば、接合強度をより強化できる。さらに初期差込穴25を接合部19上に形成し、最初から接合部19に沿って撹拌混合させてもよい。また初期差込穴25に代えて貫通させない凹部により初期差込部としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】接合完了後の製品
【図2】図1の2−2線断面図
【図3】図1の接合前の状態を示す図
【図4】図3の4−4線断面を回転部材とともに示す図
【図5】回転部材のスライド構造を示す図
【図6】図4のバリエーション
【図7】従来の摩擦撹拌接合方法
【符号の説明】
10:リンクアーム、11:ロッド、12:ブラケット、13:ブッシュ、15:二股部、18:摩擦撹拌部、19:接合部、20:軸状部材、25:初期差込穴、26:回転部材、27:回転部材

Claims (3)

  1. 互いに接合する2つの接合部材の突き合わせ接合部にて軸状部材を回転させて接合する摩擦撹拌接合方法において、
    前記2つの接合部材のうちいずれか一方側又は突き合わせ接合部上に予め前記軸状部材を差し込むための初期差込部を形成しておき、この初期差込部へ前記軸状部材を差し込んで回転させながら、前記接合する2つの接合部材の表面に表れる前記突き合わせ接合部の端部の線の上に沿って又はこの線と交差する方向へ移動させることにより前記突き合わせ接合部を撹拌混合するとともに、前記軸状部材が突き合わせ接合部を跨ぐ位置で回転を停止させ、前記軸状部材の軸方向全体が前記突き合わせ接合部に跨るように、前記軸状部材を前記突き合わせ接合部上へ埋設残留させることを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
  2. 前記初期差込部を前記2部材のうち予め一方側へ前記突き合わせ接合部から離して形成しておき、この初期差込部へ差し込んだ前記軸状部材を回転させながら、突き合わせ接合部と交差する方向へ移動させることを特徴とする請求項1に記載した摩擦撹拌接合方法。
  3. 前記初期差込部が前記接合部材の肉厚方向に貫通する初期差込穴であり、この初期差込穴に差し込ませた前記軸状部材の両端を一対の回転部材で押さえることを特徴とする請求項1又は2に記載した摩擦撹拌接合方法。
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