JP4201173B2 - パターン形成体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光性保護基の脱保護が行われた官能基をパターン状に有するパターン形成体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、マイクロ流体チップ用基材として、凹部内に配置された官能基により、凹部内の流体の流れを整流化するものや、凹部内で分析を行ったり、合成を行うことが可能な種々の機能を有するものが製造されている。このようなマイクロ流体チップの凹部内に配置される官能基の中には極めて反応性の高いものもあり、通常このような官能基が保護されない状態の材料を用いて成膜することは、例えば塗工液のゲル化等取り扱いが極めて困難となる場合があった。
【0003】
このような観点から感光性保護基で保護された官能基を有する分子を用いる方法が知られているが、この場合、脱離した保護基由来の化学物質は揮発性に乏しい場合が多く、一般に露光後の洗浄工程は不可避である。
【0004】
また、導電性パターンを形成する際に、無電解めっき用触媒付着性を有する脱保護官能基に、無電解めっき用触媒を付着させる方法として、例えばCharge Constrained Metallization (CCM) processが知られており、この方法は、感光性保護基の付いていないタイプの、すなわち、官能基が露出したタイプの単分子膜形成材料を基板全面に形成し、その上に通常のフォトリソグラフィー法、すなわちレジスト塗布、露光、現像を経て単分子膜が露出したパターンを形成し、そこに無電解めっき用触媒を付着させる工程を含むものである(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、上記の方法によれば、複数の工程が必要である等の問題があった。
【0005】
【非特許文献1】
Mu-San Chen et al., 「Journal of The Electrochemical Society」, vol. 146, p1421-1430, 1999; Mu-San Chen et al., ibid, vol. 147, 2607-2610, 2000
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、官能基の脱保護を短時間で行うことが可能であり、かつ露光後の後処理等が不要であるパターン形成体の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、基体と、前記基体上に形成され、感光性保護基で保護された官能基を有し、かつ光触媒の作用により感光性保護基が脱保護する分子を薄膜状に形成してなる特性変化層とを有するパターン形成体用基板を調整するパターン形成体用基板調整工程と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板における前記光触媒含有層と前記特性変化層とが密着するように配置した後、所定の方向から前記光触媒含有層にエネルギーを照射することにより、前記特性変化層表面に感光性保護基で保護された、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、および1,3−ジオール基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を、前記光触媒含有層に含まれる光触媒の作用により、脱保護して得られる脱保護官能基からなるパターンを形成するパターン形成工程とを有することを特徴とするパターン形成体の製造方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、上記パターン形成体用基板調製工程において、基体上に感光性保護基で保護された官能基を有する分子を薄膜状に形成してなる特性変化層を形成し、上記パターン形成工程において、エネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に感光性保護基で保護された官能基を脱保護して得られる脱保護官能基からなるパターンを高精細に形成することができる。
【0009】
このように特性変化層として感光性保護基で保護された官能基を有する分子を薄膜状に形成してなるものを用いることにより、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、容易に感光性保護基の脱保護を行うことが可能となる。したがって、脱保護された脱保護官能基のパターンを容易に形成することができ、脱保護官能基が露出することにより、表面の特性が変化したパターン形成体として、種々の用途に応用することが可能となる。
【0010】
また、露光後、パターン形成体から光触媒含有層側基板を取り外すので、パターン形成体自体には光触媒含有層が含まれることがなく、したがってパターン形成体の光触媒の作用による経時的な劣化に対する心配がない。さらに、光触媒含有層と特性変化層との間隔が、上述した範囲内であるので、効率よくかつ精度の良好な特性の変化したパターンを有するパターン形成体を得ることができる。
【0011】
上記請求項1に記載された発明においては、請求項2に記載するように、上記光触媒含有層側基板が、基材と、上記基材上にパターン状に形成された光触媒含有層とからなることが好ましい。このように、光触媒含有層をパターン状に形成することにより、フォトマスクを用いることなく特性変化層上に特性の異なるパターンを形成することが可能となるからである。また、光触媒含有層に対応する面のみに脱保護反応が起こるものであるので、照射するエネルギーは特に平行なエネルギーに限られるものではなく、また、エネルギーの照射方向も特に限定されるものではないことから、エネルギー源の種類および配置の自由度が大幅に増加するという利点を有するからである。
【0012】
上記請求項1に記載された発明においては、請求項3に記載するように、上記光触媒含有層側基板が、基材と、上記基材上に形成された光触媒含有層と、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部とからなり、上記パターン形成工程におけるエネルギーの照射が、光触媒含有層側基板から行なわれるものであることが好ましい。
【0013】
このように光触媒含有層側基板に光触媒含有層側遮光部を有することにより、露光に際してフォトマスク等を用いる必要がないことから、フォトマスクと位置合わせ等が不要となり、工程を簡略化することが可能となるからである。
【0014】
上記請求項3に記載された発明においては、請求項4に記載するように、上記光触媒含有層側基板において、上記光触媒含有層側遮光部が上記基材上にパターン状に形成され、さらにその上に上記光触媒含有層が形成されているものであってもよく、また請求項5に記載するように上記光触媒含有層側基板において、上記基材上に光触媒含有層が形成され、上記光触媒含有層上に上記光触媒含有層側遮光部がパターン状に形成されているものであってもよい。
【0015】
光触媒含有層側遮光部は、特性変化層と近い位置に配置されることが、得られる特性パターンの精度上好ましいものであるといえる。したがって、上述した位置に光触媒含有層側遮光部を配置することが好ましいのである。また、光触媒含有層上に光触媒含有層側遮光部を形成した場合は、上記パターン形成工程における光触媒含有層と特性変化層との配置に際してのスペーサとして用いることができるという利点を有するものである。
【0016】
上記請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項6に記載するように、上記光触媒含有層が、光触媒からなる層であることが好ましい。光触媒含有層が光触媒のみからなる層であれば、特性変化層の特性を変化させる効率を向上させることが可能であり、効率的にパターン形成体を製造することができるからである。
【0017】
上記請求項6に記載された発明においては、請求項7に記載するように、上記光触媒含有層が、光触媒を真空製膜法により基材上に製膜してなる層であることが好ましい。このように真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、表面の凹凸が少なく均一な膜厚の均質な光触媒含有層とすることが可能であり、特性変化層表面へのパターンの形成を均一にかつ高効率で行うことができるからである。
【0018】
一方、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項8に記載するように、上記光触媒処含有層が、光触媒とバインダとを有する層であってもよい。このようにバインダを用いることにより、比較的容易に光触媒含有層を形成することが可能となり、結果的に低コストでパターン形成体の製造を行うことができるからである。
【0019】
上記請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項9に記載するように、上記光触媒が、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)から選択される1種または2種以上の物質であることが好ましく、中でも請求項10に記載するように、上記光触媒が酸化チタン(TiO2)であることが好ましい。これは、二酸化チタンのバンドギャップエネルギーが高いため光触媒として有効であり、かつ化学的にも安定で毒性もなく、入手も容易だからである。
【0020】
上記請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項11に記載するように、上記感光性保護基で保護された官能基を有する分子が、さらに基体を構成する分子と結合し得る官能基を有するものであってもよい。このように基体を構成する分子と結合し得る官能基を有することにより、特性変化層を基板と強固に結合させることができるからである。
【0021】
本発明は、また請求項12に記載するように、上記請求項1から請求項11までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法で得られたパターン形成体の特性変化層上における脱保護官能基が、生体物質と結合する生体物質結合性を有する脱保護官能基であることを特徴とするバイオチップ用基材の製造方法を提供する。このように、脱保護官能基が生体物質結合性を有するものであれば、パターン状に形成された脱保護官能基に生体物質を結合させることにより、高精細なバイオチップを容易に形成することができる。
【0022】
本発明は、さらに請求項13に記載するように、請求項1から請求項11までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法で得られたパターン形成体の基体が、流体を流すための凹部を有し、少なくとも上記凹部内の感光性保護基で保護された官能基を有する分子が、上記パターン形成工程において脱保護され、脱保護官能基とされていることを特徴とするマイクロ流体チップ用基材の製造方法を提供する。マイクロ流体チップ用基材の流体の流路となる凹部表面には、流体の流れを制御するような官能基を有することが好ましい。このような官能基を有する膜を形成する場合に、官能基が露出された状態で製膜すると、製膜用の液体がゲル化する等の取扱に問題が生じる場合があった。このため、保護基で保護された官能基を有する材料を用いて製膜することが好ましい。本発明においては、このように感光性保護基で保護された官能基を有する分子を薄膜状に形成した特性変化層を用いているので、製膜に際しての問題が少なく、製膜後少なくとも凹部内を脱保護することができるようにエネルギー照射することのみで、容易に凹部内に流体を制御するための官能基が露出した状態を得ることができる。
【0023】
本発明は、さらにまた請求項14に記載するように、上記請求項1から請求項11までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法で得られたパターン形成体の特性変化層上における脱保護官能基が、無電解めっき用触媒と付着する無電解めっき用触媒付着性を有する脱保護官能基であり、上記基体が電気絶縁性を有することを特徴とする導電性パターン形成用基材の製造方法を提供する。このように、脱保護官能基が無電解めっき用触媒付着性を有するものであれば、パターン状に形成された脱保護官能基に無電解めっき用触媒を付着させることにより、高精細な導電性パターンを容易に形成することができる。
【0024】
本発明においては、請求項15に記載するように、請求項12に記載のバイオチップ用基材の製造方法において得られるバイオチップ用基材の脱保護官能基に対して、生体物質を結合する工程を有することを特徴とするバイオチップの製造方法を提供する。本発明の方法によれば、高密度なバイオチップを比較的容易に得ることが可能である。
【0025】
本発明においては、さらに請求項16に記載するように、上記請求項13に記載のマイクロ流体チップ用基材の製造方法によって得られるマイクロ流体チップ用基材と、貼り合せ基材とを貼り合せる工程を有することを特徴とするマイクロ流体チップの製造方法を提供する。上述したように、本発明の製造方法によれば、凹部内への流体を制御するための官能基の導入が極めて容易に行うことが可能となる。
【0026】
上記請求項16に記載のマイクロ流体チップの製造方法においては、請求項17に記載するように、前記貼り合せ基材が、請求項1から請求項11までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法で得られたパターン形成体の基体であり、前記マイクロ流体チップ用基材と前記貼り合せ基材とを貼り合せた際に、前記マイクロ流体チップ用基材の凹部に対応する前記貼り合せ基材の表面部分の感光性保護基で保護された官能基を有する分子が、前記パターン形成工程において脱保護され、脱保護官能基とされていることが好ましい。貼り合せ基材の凹部に該当する部分に、さらに脱保護官能基が設けられていることにより、マイクロ流体チップの機能をさらには有効に発揮することができるからである。
【0027】
本発明においては、さらにまた、請求項18に記載するように、請求項14に記載の導電性パターン形成用基材の製造方法によって得られる導電性パターン形成用基材の脱保護官能基に対して、無電解めっき用触媒を付着させる触媒付着工程と、上記触媒付着工程によりパターン状に無電解めっき用触媒が付着した基材に対して無電解めっきを行う無電解めっき工程とを有することを特徴とする導電性パターンの製造方法を提供する。高精細な導電性パターンを容易に得ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
まず、本発明のパターン形成体の製造方法について説明する。本発明のパターン形成体の製造方法は、
基体と、上記基体上に形成され、感光性保護基で保護された官能基を有し、かつ光触媒の作用により感光性保護基が脱保護する分子を薄膜状に形成してなる特性変化層とを有するパターン形成体用基板を調整するパターン形成体用基板調整工程と、
光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板における上記光触媒含有層と上記特性変化層とを、200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に感光性保護基で保護された官能基を脱保護して得られる脱保護官能基からなるパターンを形成するパターン形成工程と
を有することを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明においては、光触媒を含有する光触媒含有層および基材を有する光触媒含有層側基板を調整する光触媒含有層側基板調整工程を有していてもよく、この場合、光触媒を含有する光触媒含有層および基材を有する光触媒含有層側基板を調整する光触媒含有層側基板調整工程と、上記光触媒含有層中の光触媒の作用により表面の特性が変化する特性変化層を有するパターン形成体用基板を調製するパターン形成体用基板調製工程と、上記光触媒含有層および前記特性変化層を、200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に特性の変化したパターンを形成するパターン形成工程とを有することを特徴とするパターン形成体の製造方法であって、上記パターン形成体用基板調整工程において、基体上に感光性保護基で保護された官能基を有する分子を薄膜状に形成してなる特性変化層を形成し、上記パターン形成工程において、エネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に感光性保護基で保護された官能基を脱保護して得られる脱保護官能基からなるパターンを形成するものである。
【0030】
本発明においては、特性変化層として感光性保護基で保護された官能基を有する分子を薄膜状に形成してなるものを用いることにより、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、容易に感光性保護基の脱保護を行うことが可能となる。したがって、脱保護された脱保護官能基のパターンを容易に形成することができ、種々の用途に応用することが可能となるからである。
【0031】
さらに、本発明においては、特性変化層上の特性を光触媒含有層中の光触媒の作用により変化させた後、光触媒含有層側基板を取り外してパターン形成体側基板をパターン形成体としたものであるので、得られるパターン形成体には必ずしも光触媒が含有されている必要がない。したがって、得られるパターン形成体が光触媒の作用により経時的に劣化するといった不具合を防止することができる。
【0032】
このような、本発明のパターン形成体の製造方法について、図面を用いて具体的に説明する。図1は、本発明のパターン形成体の製造方法の一例を示すものである。
【0033】
この例においては、まず、基材1上に光触媒含有層2が形成されてなる光触媒含有層側基板3と、基体4上に特性変化層5が形成されてなるパターン形成体用基板6とを調整する(図1(a))。
【0034】
次に、図1(b)に示すように、上記光触媒含有層側基板3とパターン形成体用基板6とを、それぞれの光触媒含有層2および特性変化層5が所定の間隔を有するように配置した後、必要とされるパターンが描かれたフォトマスク7を用い、これを介して紫外光8を光触媒含有層側基板3側から照射する。これにより、図1(c)に示すように、特性変化層5表面に脱保護官能基が露出することにより特性の変化した領域9からなるパターンが形成される(パターン形成工程)。
【0035】
なお、この際、光触媒含有層2と特性変化層5とは、図1では所定の間隔をおいて配置されているが、本発明においては、必要であれば物理的に密着状態で接触するようにしてもよい。
【0036】
また、上記紫外線の照射は、上記例ではフォトマスク7を介したものであるが、後述するように光触媒含有層がパターン状に形成されたものや、光触媒含有層側基板内に遮光部(光触媒含有層側遮光部)が形成されたものを用いてもよく、この場合は、フォトマスク7等を用いることなく、全面に露光することになる。
【0037】
そして、上記パターン形成体用基板6上から光触媒含有層側基板を外す工程が行われ(図1(d))、表面に脱保護官能基が露出することにより特性が変化したパターンを有するパターン形成体6を得ることができる。
【0038】
このような本発明のパターン形成体の製造方法について、各工程毎に詳細に説明する。
【0039】
1.パターン形成体用基板調製工程
本発明おけるパターン形成体用基板調製工程とは、 基体と、上記基体上に形成され、感光性保護基で保護された官能基を有し、かつ光触媒の作用により感光性保護基が脱保護する分子を薄膜状に形成してなる特性変化層とを有するパターン形成体用基板を調整する工程である。
【0040】
本発明においては、特性変化層として、感光性保護基で保護された官能基を有する分子を薄膜状としたものを用いており、このような特性変化層に対して光触媒の作用下で露光することにより、極めて効率よく脱保護された脱保護官能基からなるパターンを得ることができる。
【0041】
すなわち、一般に、官能基から感光性保護基を脱離させるには、エネルギー照射により起こる、触媒作用のない光反応を用いるが、光触媒の作用下でエネルギーを照射することにより、通常の紫外線露光による反応よりもはるかに効率的な光触媒反応を活用でき、結果として非常に短時間で感光性保護基の脱離反応を終了させることができるのである。さらに光触媒反応には、脱離した保護基由来の化学物質を揮発性の高い物質に分解する効果もあり、このことは、露光後の洗浄工程の省略を可能とする効果がある。
【0042】
このような特性を変化させたパターン、すなわち脱保護官能基のパターンを形成することにより、後述するような種々の用途展開を図ることができる。
【0043】
本発明においては、感光性保護基で保護された官能基が少なくとも一つ含まれていれば、その分子が高分子材料であってもよく、また例えば蒸着が可能な程度の低分子の材料であってもよい。
【0044】
ここでいう官能基とは、例えば、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、1,3-ジオール基等を挙げることができる。
【0045】
また、このような官能基を保護する保護基としては、例えば、オルト‐(o-)ニトロベンジル誘導体、o-ニトロベンジルオキシカルボニル誘導体、芳香族アミンN-オキシド誘導体、o-ニトロベンジルカルバメート誘導体、アリルフォルムアミド誘導体、N‐ベンジルアミド誘導体、ベンジルカルバメート誘導体、ベンジルスルフォナミド誘導体、ビス(o-ニトロフェニル)メチルエステル誘導体、S,S-ジベンジルアセタール誘導体及びケタール誘導体、3,5-ジメトキシベンジルカルバメート誘導体、4-(4',8'-ジメトキシナフチルメチル)ベンゼンスルフォナミド誘導体、3,4-ジメトキシ-6-ニトロベンジルカルバメート誘導体、α‐(3,5‐ジメトキシフェニル)フェナシルエステル誘導体、N,N‐ジメチルヒドラゾン誘導体、ジ-2-ニトロベンジルアセタール誘導体、2-(9,10-ジオキソ)アンスリルメチルエステル誘導体、4,5-ジフェニル-3-オキサゾリン-2-オン誘導体、1,3‐ジチオレン誘導体、9-フルオレンカルボキシレートエステル誘導体、p-メトキシベンジルエーテル誘導体、フェナシル誘導体、p-メトキシフェナシルエステル誘導体、N‐メチルアミン誘導体、1‐メチル‐1‐(3,5‐ジメトキシフェニル)エチルカルバメート誘導体、α‐メチルフェナシルエステル誘導体、ニトレートエステル誘導体、ニトロアミド誘導体、o-ニトロアニリド誘導体、N‐o‐ニトロベンジルアミン誘導体、o-ニトロベンジルカーボネート誘導体、o-ニトロベンジルエステル誘導体、o-ニトロベンジルエーテル誘導体、o-ニトロベンジリデンアセタール誘導体、N-7-ニトロインドリルアミド誘導体、m‐ニトロフェニルカルバメート誘導体、4-o-ニトロフェニル-1,3-ジオキソラン誘導体、N‐8‐ニトロ‐1,2,3,4‐テトラヒドロキノリルアミド誘導体、1,3‐オキソチオラン誘導体、フェニル(o-ニトロフェニル)メチルカルバメート誘導体、1‐ピレニルメチルエステル誘導体、トルエンスルフォナミド誘導体、トルエンスルフォネート誘導体、キサンテンカルボキシレートエステル誘導体、ニトロフェニルスルフェニル誘導体などであり、具体的には、例えば、o-ニトロベンジル基、α‐メチル‐ニトロピペロニル基、α‐メチル‐ニトロピペロニルオキシカルボニル基、1‐ピレニルメチルオキシカルボニル基、α,α‐ジメチル‐3,5‐ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、4‐ニトロピリジンN‐オキシド基、m‐ニトロフェニルカルバメート基、3,5‐ジメトキシベンジルカルバメート基、o-ニトロベンジルオキシカルボニル基、3,4‐ジメトキシ-6-ニトロベンジルカルバメート基、フェニル(o-ニトロフェニル)メチルカルバメート基、p-メトキシフェナシル基、1,3‐ジチオレン基、1,3−オキサチオレン基、p-メトキシベンジル基、トシル基、ベンゼンスルフォナミド基などを挙げることができる。
【0046】
このような感光性保護基で保護された官能基に関する文献としては、例えば、“Protective groups in organic synthesis” (Second Edition), by Theodora W. Greene and Peter G. M. Wuts, John Wiley & Sons, 1991)、特表2000‐508542公報等を挙げることができる。
【0047】
本発明においては、上記感光性保護基で保護された官能基を有する材料が、さらに基体を構成する材料と結合し得る官能基を有するものであってもよい。
【0048】
これは、例えば基体上に形成する薄膜状の特性変化層を、基体上に強固に固定したい場合等において有効である。
【0049】
ここでいう基体を構成する材料と結合し得る官能基とは、アルコキシシリル基、ハロゲン化シリル基、チオール基等を挙げることができる。
【0050】
本発明においては、このような特性変化層を基体上に形成する方法としては、以下のような方法を挙げることができる。
【0051】
第1の方法としては、基体上にスピンコーティング、フレキソコーティング、グラビアコーティング、オフセットコーティング等のコーティング法により薄膜状の特性変化層を形成する方法である。この方法は、一般的には、上述したような感光性保護基で保護された官能基を有する分子を溶媒に溶解し、塗工液とすることにより行われるものである。
【0052】
また、上記感光性保護基で保護された官能基を有する分子が、低分子材料である場合は、蒸着法により基体上に薄膜状に形成するようにしてもよい。
【0053】
第2の方法としては、基体上に自己組織化単分子膜(SAM膜)として形成する方法である。この方法を用いる場合は、上述したように感光性保護基で保護された官能基を有する分子が、さらに基体を構成する分子と結合し得る官能基を有するものが用いられる。なお、この自己組織化法(自己組織化単分子膜)に関しては、例えば、Abraham Ulman, “Formation and structure of self-assembled monolayers”, Chemical Review, vol. 96, 1533-1554 (1996)を参照することができる。
【0054】
さらに、第3の方法として、ラングミュア−ブロジェット法(LB法)で基体上に薄膜(LB膜)を形成する方法を挙げることができる。
【0055】
また、上記感光性保護基で保護された官能基を有する分子が高分子電解質である場合等においては、第4の方法として吸着法および交互吸着法により薄膜を形成することも可能である。
【0056】
このような特性変化層が形成される基体としては、シリコンウェハ、金属、クオーツ、ガラス、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、アルミナ、高分子材料などを用いることができ、これらは後述する用途に応じて適宜選択されて用いられるものである。
【0057】
また、用いられる基体の形状としては、特に制限されるものではなく、これも後述する用途に応じて好適な形状とすることが可能であり、具体的には、用途がバイオチップ等の場合は板状のものが好適に用いられ、用途がマイクロ流体チップである場合は、所定の凹部が形成されたものを用いることができる。
【0058】
また、本発明においては、パターン形成体用基板にパターン形成体用基板側遮光部をパターン状に形成したものを用いることが可能である。
【0059】
この場合は、後述するパターン形成工程におけるエネルギー照射を、パターン形成体用基板側から行う必要が生じることから、パターン形成体用基板が透明であることが必要である。
【0060】
このようパターン形成体用基板側遮光部の形成方法は、特に限定されるものではなく、光触媒含有層側遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。
【0061】
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
【0062】
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このよう樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0063】
2.パターン形成工程
次に、本発明におけるパターン形成工程について説明する。本発明のパターン形成工程は、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板における上記光触媒含有層と上記特性変化層とを、所定の間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射することにより、感光性保護基で保護された官能基を脱保護して得られる脱保護官能基からなるパターンを形成する工程である。
【0064】
以下、本工程の各構成について説明する。
【0065】
(光触媒含有層側基板)
まず、本発明に用いられる光触媒含有層側基板について説明する。本発明に用いられる光触媒含有層側基板とは、光触媒を含有する光触媒含有層および基材を有するものである。本発明において用いられる光触媒含有層側基板は、このように、少なくとも光触媒含有層と基材とを有するものであり、通常は基材上に所定の方法で形成された薄膜状の光触媒含有層が形成されてなるものである。また、この光触媒含有層側基板には、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部が形成されたものも用いることができる。以下、光触媒含有層側基板の各構成について説明する。
【0066】
a.光触媒含有層
本発明に用いられる光触媒含有層は、光触媒含有層中の光触媒が、対象とする特性変化層の特性を変化させるような構成であれば、特に限定されるものではなく、光触媒とバインダとから構成されているものであってもよいし、光触媒単体で製膜されたものであってもよい。また、その表面の濡れ性は特に親液性であっても撥液性であってもよい。
【0067】
本発明において用いられる光触媒含有層は、例えば上記図1(a)等に示すように、基材1上に全面に形成されたものであってもよいが、例えば図2に示すように、基材1上に光触媒含有層2がパターン上に形成されたものであってもよい。
【0068】
このように光触媒含有層をパターン状に形成することにより、後述するパターン形成工程において説明するように、光触媒含有層を特性変化層と所定の間隔をおいて配置させてエネルギーを照射する際に、フォトマスク等を用いるパターン照射をする必要がなく、全面に照射することにより、特性変化層上に脱保護官能基が露出することにより特性の変化したパターンを形成することができる。
【0069】
この光触媒処理層のパターニング方法は、特に限定されるものではないが、例えばフォトリソグラフィー法等により行うことが可能である。
【0070】
また、実際に光触媒含有層に面する特性変化層上の部分のみの特性が変化するものであるので、エネルギーの照射方向は上記光触媒含有層と特性変化層とが面する部分にエネルギーが照射されるものであれば、いかなる方向から照射されてもよく、さらには、照射されるエネルギーも特に平行光等の平行なものに限定されないという利点を有するものとなる。
【0071】
このよう光触媒含有層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本発明においては、このキャリアが光触媒含有層近傍に配置される特性変化層中の化合物に作用を及ぼすものであると思われる。
【0072】
本発明で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0073】
本発明においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0074】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0075】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径か50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0076】
本発明における光触媒含有層は、上述したように光触媒単独で形成されたものであってもよく、またバインダと混合して形成されたものであってもよい。
【0077】
光触媒のみからなる光触媒含有層の場合は、特性変化層上の特性の変化に対する効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒とバインダとからなる光触媒含有層の場合は、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。
【0078】
光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能であり、これにより特性変化層上の特性を均一に変化させることが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に特性変化層上の特性を変化させることが可能となる。
【0079】
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0080】
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0081】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することかできる。
【0082】
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX4で表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0083】
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と光触媒の粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基材上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0084】
バインダを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0085】
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることかでき、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0086】
さらに、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0087】
b.基材
本発明においては、図1(a)に示すように、光触媒含有層側基板3は、少なくとも基材1とこの基材1上に形成された光触媒含有層2とを有するものである。
【0088】
この際、用いられる基材を構成する材料は、後述するパターン形成工程におけるエネルギーの照射方向や、得られるパターン形成体が透明性を必要とするか等により適宜選択される。
【0089】
すなわち、例えばパターン形成体が不透明なものを基体として用いる場合においては、エネルギー照射方向は必然的に光触媒含有層側基板側からとなり、図1(b)に示すように、フォトマスク7を光触媒含有層側基板3側に配置して、エネルギー照射をする必要がある。また、後述するように光触媒含有層側基板に光触媒含有層側遮光部を予め所定のパターンで形成しておき、この光触媒含有層側遮光部を用いてパターンを形成する場合においても、光触媒含有層側基板側からエネルギーを照射する必要がある。このような場合、基材は透明性を有するものであることが必要となる。
【0090】
一方、パターン形成体が透明である場合であれば、パターン形成体用基板側にフォトマスクを配置してエネルギーを照射することも可能である。また、後述するようにこのパターン形成体用基板内にパターン形成体側遮光部を形成する場合は、パターン形成体用基板側からエネルギーを照射する必要がある。このような場合においては、基材の透明性は特に必要とされない。
【0091】
また本発明に用いられる基材は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。これは、後述するパターン形成工程におけるエネルギー照射方法により適宜選択されるものである。
【0092】
このように、本発明における光触媒含有層側基板に用いられる基材は特にその材料を限定されるものではないが、本発明においては、この光触媒含有層側基板は、繰り返し用いられるものであることから、所定の強度を有し、かつその表面が光触媒含有層との密着性が良好である材料が好適に用いられる。
【0093】
具体的には、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等を挙げることができる。
【0094】
なお、基材表面と光触媒含有層との密着性を向上させるために、基材上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0095】
c.光触媒含有層側遮光部
本発明に用いられる光触媒含有層側基板には、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部が形成されたものを用いても良い。このように光触媒含有層側遮光部を有する光触媒含有層側基板を用いることにより、露光に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行う必要がない。したがって、光触媒含有層側基板とフォトマスクとの位置合わせが不要であることから、簡便な工程とすることが可能であり、また描画照射に必要な高価な装置も不必要であることから、コスト的に有利となるという利点を有する。
【0096】
このような光触媒含有層側遮光部を有する光触媒含有層側基板は、光触媒含有層側遮光部の形成位置により、下記の二つの実施態様とすることができる。
【0097】
一つが、例えば図3に示すように、基材1上に光触媒含有層側遮光部12を形成し、この光触媒含有層側遮光部13上に光触媒含有層2を形成して、光触媒含有層側基板3とする実施態様である。もう一つは、例えば図4に示すように、基材1上に光触媒含有層2を形成し、その上に光触媒含有層側遮光部13を形成して光触媒含有層側基板3とする実施態様である。
【0098】
いずれの実施態様においても、フォトマスクを用いる場合と比較すると、光触媒含有層側遮光部が、上記光触媒含有層と特性変化層とが間隙をもって位置する部分の近傍に配置されることになるので、基材内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができることから、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
【0099】
さらに、上記光触媒含有層上に光触媒含有層側遮光部を形成する実施態様においては、光触媒含有層と特性変化層とを所定の間隙をおいて配置する際に、この光触媒含有層側遮光部の膜厚をこの間隙の幅と一致させておくことにより、上記光触媒含有層側遮光部を上記間隙を一定のものとするためのスペーサとしても用いることができるという利点を有する。
【0100】
すなわち、所定の間隙をおいて上記光触媒含有層と特性変化層とを接触させた状態で配置する際に、上記光触媒含有層側遮光部と特性変化層とを密着させた状態で配置することにより、上記所定の間隙を正確とすることが可能となり、そしてこの状態で光触媒含有層側基板からエネルギーを照射することにより、特性変化層上にパターンを精度良く形成することが可能となるのである。
【0101】
本発明に用いられる光触媒含有層側遮光部の形成方法については、上述したパターン形成体用基板における遮光部の形成方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0102】
なお、上記説明においては、光触媒含有層側遮光部の形成位置として、基材と光触媒含有層との間、および光触媒含有層表面の二つの場合について説明したが、その他、基材の光触媒含有層が形成されていない側の表面に光触媒含有層側遮光部を形成する態様も採ることが可能である。この態様においては、例えばフォトマスクをこの表面に着脱可能な程度に密着させる場合等が考えられ、パターン形成体を小ロットで変更するような場合に好適に用いることができる。
【0103】
d.プライマー層
次に、本発明の光触媒含有層側基板に用いられるプライマー層について説明する。本発明において、上述したように基材上に光触媒含有層側遮光部をパターン状に形成して、その上に光触媒含有層を形成して光触媒含有層側基板とする場合においては、上記光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層との間にプライマー層を形成してもよい。
【0104】
このプライマー層の作用・機能は必ずしも明確なものではないが、光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層との間にプライマー層を形成することにより、プライマー層は光触媒の作用による特性変化層の特性変化を阻害する要因となる光触媒含有層側遮光部および光触媒含有層側遮光部間に存在する開口部からの不純物、特に、光触媒含有層側遮光部をパターニングする際に生じる残渣や、金属、金属イオン等の不純物の拡散を防止する機能を示すものと考えられる。したがって、プライマー層を形成することにより、高感度で特性変化の処理が進行し、その結果、高解像度のパターンを得ることが可能となるのである。
【0105】
なお、本発明においてプライマー層は、光触媒含有層側遮光部のみならず光触媒含有層側遮光部間に形成された開口部に存在する不純物が光触媒の作用に影響することを防止するものであるので、プライマー層は開口部を含めた光触媒含有層側遮光部全面にわたって形成されていることが好ましい。
【0106】
本発明におけるプライマー層は、光触媒含有層側基板の光触媒含有層側遮光部と光触媒含有層とが接触しないようにプライマー層が形成された構造であれば特に限定されるものではない。
【0107】
このプライマー層を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、光触媒の作用により分解されにくい無機材料が好ましい。具体的には無定形シリカを挙げることができる。このような無定形シリカを用いる場合には、この無定形シリカの前駆体は、一般式SiX4で示され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物であり、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0108】
また、プライマー層の膜厚は、0.001μmから1μmの範囲内であることが好ましく、特に0.001μmから0.1μmの範囲内であることが好ましい。
【0109】
(パターンの形成)
次に、本発明のパターンの形成について説明する。本発明のパターン形成工程においては、上述した光触媒含有層および特性変化層を200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、所定の方向からエネルギーを照射するパターン形成工程が行われる。
【0110】
本発明において上記間隙は、光触媒含有層および特性変化層を密着させてもよいが、パターン精度および特性変化層上の特性の変化の効率の面を考慮して、100μm以下、特に0.2μm〜10μmの範囲内とすることが好ましい。
【0111】
このように光触媒含有層と特性変化層表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より光触媒含有層と特性変化層との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に特性の変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくなく、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が特性変化層に届き難くなり、この場合も特性の変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくないのである。
【0112】
本発明においては、このような間隙をおいた配置状態は、少なくとも露光の間だけ維持されればよい。
【0113】
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒含有層と特性変化層とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができると共に、このスペーサが接触する部分は、光触媒の作用が特性変化層表面に及ばないことから、このスペーサを上述したパターンと同様のパターンを有するものとすることにより、特性変化層上に所定のパターンを形成することが可能となる。
【0114】
本発明においては、このようなスペーサを一つの部材として形成してもよいが、工程の簡略化等のため、上記光触媒含有層側基板の欄で説明したように、光触媒含有層側基板の光触媒含有層表面に形成することが好ましい。なお、上記光触媒含有層側基板調製工程における説明においては、光触媒含有層側遮光部として説明したが、本発明においては、このようなスペーサは特性変化層表面に光触媒の作用が及ばないように表面を保護する作用を有すればよいものであることから、特に照射されるエネルギーを遮蔽する機能を有さない材料で形成されたものであってもよい。
【0115】
次に、上述したような接触状態を維持した状態で、接触する部分へのエネルギー照射が行われる。なお、本発明でいうエネルギー照射(露光)とは、光触媒含有層による特性変化層表面の特性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0116】
通常このような露光に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒含有層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0117】
このような露光に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0118】
上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0119】
また、露光に際してのエネルギーの照射量は、特性変化層表面が光触媒含有層中の光触媒の作用により特性変化層表面の特性の変化が行われるのに必要な照射量とする。
【0120】
この際、光触媒含有層を加熱しながら露光することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な特性の変化を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0121】
本発明における露光方向は、光触媒含有層側遮光部もしくはパターン形成体用基板側遮光部が形成されているか否か等のパターンの形成方法や、光触媒含有層側基板もしくはパターン形成体用基板が透明であるか否かにより決定される。
【0122】
すなわち、光触媒含有層側遮光部が形成されている場合は、光触媒含有層側基板側から露光が行なわれる必要があり、かつこの場合は光触媒含有層側基板が照射されるエネルギーに対して透明である必要がある。なお、この場合、光触媒含有層上に光触媒含有層側遮光部が形成され、かつこの光触媒含有層側遮光部を上述したようなスペーサとしての機能を有するように用いた場合においては、露光方向は光触媒含有層側基板側からでもパターン形成体用基板側からであってもよい。
【0123】
一方、パターン形成体用基板側遮光部が形成されている場合は、パターン形成体用基板側から露光が行われる必要があり、かつこの場合は、パターン形成体用基板が照射されるエネルギーに対して透明である必要がある。なお、この場合も、特性変化層上にパターン形成体用基板側遮光部が形成され、このパターン形成体用基板側遮光部が上述したようなスペーサとしての機能を有するように用いられた場合、露光方向は光触媒含有層側基板側からでもパターン形成体用基板側からであってもよい。
【0124】
また、光触媒含有層がパターン状に形成されている場合における露光方向は、上述したように、光触媒含有層と特性変化層とが接触する部分にエネルギーが照射されるのであればいかなる方向から照射されてもよい。
【0125】
同様に、上述したスペーサを用いる場合も、接触する部分にエネルギーが照射されるのであればいかなる方向から照射されてもよい。
【0126】
フォトマスクを用いる場合は、フォトマスクが配置された側からエネルギーが照射される。この場合は、フォトマスクが配置された側の基板、すなわち光触媒含有層側基板もしくはパターン形成体用基板のいずれかが透明である必要がある。
【0127】
上述したようなエネルギー照射が終了すると、光触媒含有層側基板が特性変化層との接触位置から離され、これにより図1(d)に示すように脱保護官能基が露出することにより特性が変化した特性変化領域9からなるパターンが特性変化層5上に形成される。
【0128】
本発明においては、上記特性変化層が感光性保護基で保護された官能基を有する分子が薄膜状に成膜されていることから、具体的には、このような特性変化層表面におけるエネルギー照射に伴う光触媒の作用による特性の変化は、感光性保護基の脱保護であり、エネルギーをパターン状に照射することにより、感光性保護基が脱保護された脱保護官能基のパターンが特性変化層上に形成することができるのである。
【0129】
本発明においては、このように脱保護官能基のパターンを表面に有するパターン形成体を得ることができるのであるが、このようなパターン形成体は、後述するように、バイオチップ、マイクロ流体チップ、導電性パターン形成体等の種々の用途に用いることができる。
【0130】
3.用途
上述したような本発明のパターン形成体の製造方法により得られるパターン形成体は、その特性変化層の変化による種々のパターンを容易に形成することが可能である。
【0131】
本発明で得られるパターン形成体は種々の用途に用いることが可能であるが、本発明においては、上述した特性変化層が感光性保護基で保護された官能基を有する分子が薄膜状に成膜されており、感光性保護基で保護された官能基を有する分子の種類や、感光性保護基で保護された官能基の種類によって種々の用途に用いることができる。
【0132】
a.バイオチップ
例えば、光触媒の作用により脱保護された脱保護官能基が、生体物質と結合する生体物質結合性を有する場合は、バイオチップとして用いることが可能である。
【0133】
この場合は、上記パターン形成体における特性変化層上の脱保護官能基を、生体物質結合性を有する脱保護官能基を用いたバイオチップ用基材を調製する。次いで、このバイオチップ用基材の脱保護官能基に対して、生体物質を結合、すなわち固定化することによりバイオチップとして用いることができるのである。
【0134】
このようなバイオチップ表面では、脱保護官能基が固定化層として働き、ここにDNAやタンパク質等の生体物質が固定化されて種々の用途に用いられるのである。
【0135】
このような生体物質の固定化技術は、酵素を不溶性担体に固定化したバイオリアクターの研究開発において盛んに研究された固定化技術を応用することができる。その技術内容については、例えば、千畑一郎編、“固定化酵素”、講談社サイエンティフィック、1975及び、その参考文献に詳しい。
【0136】
固定化方式としては、共有結合による固定化、イオン結合(静電的相互作用)による固定化、物理的吸着による固定化の3種に大別することができる。本発明に関する生体物質の固定化においては、一般的に基板上に生体物質を一層固定化する。そのため、生体物質の脱着があってはならず、この点で物理的吸着による固定化技術は不適である。よって、本発明に関する生体物質の固定化法としては、共有結合による固定化及びイオン結合(静電的相互作用)による固定化が適しているといえる。
【0137】
共有結合による固定化においては、例えば基体上の脱保護官能基がカルボニル基(アルデヒド基)である場合は、生体物質のアミノ基と直接反応させていわゆる“シッフ塩基”を形成し固定化することができる。また、脱保護官能基がアミノ基の場合は、生体物質と共に系中にグルタルアルデヒドなどの架橋剤を共存させて直接“シッフ塩基”を形成し固定化することができる。しかし、基体上の脱保護官能基あるいは生体物質の官能基のいずれかを活性化させた後に固定化反応させる技術の方が参考にできる多様な報告例がある。この時、生体物質がタンパク質の場合は、活性化処理中に構造が損なわれるなど悪影響が生じる可能性があるので、一般に基体上の脱保護官能基を活性化させることが好ましい。
【0138】
活性化法としては、脱保護官能基がアミノ基の場合はジアゾ化により活性化する方法、脱保護官能基がカルボキシル基の場合はアジド化、クロリド化、イミド化、イソシアナート化などにより活性化する方法、水酸基の場合は臭化シアンで活性化する方法、エチルクロロフォルメートで活性化する方法などが挙げられる。
【0139】
なお、バイオチップには、電気的読み取り法を用いる場合があり、このような場合は上記バイオチップ用基材表面に電極を形成する必要がある。この際には、後述する導電性パターン形成体の欄で説明する方法により電極を形成してもよく、また一般的なフォトレジスト法等により形成するようにしてもよい。
【0140】
b.マイクロ流体チップ
本発明におけるパターン形成体は、マイクロ流体チップとしても用いることが可能である。この場合は、パターン形成体用の基体が、流体を流すための凹部を有する必要がある。この凹部の形成に際しては、例えば基体が有機高分子材料で構成されている場合は、上述した本発明のパターン形成体における特性変化層を除去して凹部を形成する方法を用いても良い。
【0141】
そして、少なくともこの凹部内の感光性保護基で保護された官能基を有する分子が、上記パターン形成工程において脱保護され、脱保護官能基とされているマイクロ流体チップ用基材を調製する。
【0142】
このようなマイクロ流体チップ用基材において、上述したように凹部内に配置された脱保護された脱保護官能基は、凹部内の流体の流れを整流化する作用を有する場合や、凹部内で分析を行ったり、合成を行うことが可能な種々の機能を有するものである。本発明においては、露光に際しての光触媒の作用により、通常の紫外線露光による反応よりもはるかに効率的な光触媒反応を活用でき、結果として非常に短時間で感光性保護基の脱離反応を終了させることができるのである。
【0143】
そして、本発明においては、凹部内のみをパターン状にエネルギー照射することにより、凹部内のみを脱保護して脱保護官能基として用いることが可能となるという利点を有する。
【0144】
このようなマイクロ流体チップ用基材は、貼り合せ基材と貼り合せることによりマイクロ流体チップとして用いることができる。ここで用いられる貼りあわせ基材は、上記マイクロ流体チップ用基材の凹部に相当する部位に凹部を有するものであってもよく、また平面状のものであってもよい。
【0145】
また、上記貼り合せ基材が、本発明のパターン形成体の製造方法で得られたパターン形成体であり、上記マイクロ流体チップ用基材と上記貼り合せ基材とを貼り合せた際に、上記マイクロ流体チップ用基材の凹部に対応する上記貼り合せ基材の表面部分の感光性保護基で保護された官能基が、上述したようなパターン形成工程において脱保護され、脱保護官能基とされていることが好ましい。このように、凹部を有するマイクロ流体チップ用基材のみならず、貼り合せ基材も本発明のパターン形成体の製造方法により得られたものであり、その凹部に相当する位置の表面の官能基が、脱保護された脱保護官能基であることにより、マイクロ流体チップの流路の内面が全て脱保護官能基を有する面となり、流体の移動や、その他のマイクロ流体チップの機能を効果的に発揮することができる。
【0146】
なお、本発明においては、マイクロ流体チップ用基材側には、脱保護された官能基は存在せず、貼り合せ基材側のみに脱保護された官能基を有するようにすることも可能である。また、貼り合せ基材側に凹部が形成されていてもよく、この場合も凹部内面に脱保護官能基を有する薄膜が形成されていることが好ましい。
【0147】
さらに、このマイクロ流体チップには、電極を形成する必要がある場合があるが、この電極形成に関しても、後述するような本発明のパターン形成体の製造方法を応用した導電性パターン形成体の製造方法により形成してもよく、また通常のフォトリソグラフィー法を用いて形成してもよい。
【0148】
c.導電性パターン形成体
本発明におけるパターン形成体は、導電性パターン形成体としても用いることが可能である。この場合、光触媒の作用により脱保護された脱保護官能基が、無電解めっき用触媒と付着する無電解めっき用触媒付着性を有する脱保護官能基であり、上記基体が電気絶縁性を有する導電性パターン形成体用基板を調製する。
【0149】
本発明においては、通常のレジストワークで消費される薬剤を使用しない点、またレジストワークフリーのため工程が簡略である、などの点で本発明は大きな利点を有するものである。
【0150】
このような導電性パターン形成用基材の製造方法により得られる導電性パターン形成体用基材の、脱保護官能基に対して、無電解めっき用触媒を付着させ(上記従来技術の欄に記載のCCMの文献を参照)、次いで、パターン状に無電解めっき用触媒が付着した状態で無電解めっきを行うことにより、表面に導電性のパターンを有する導電性パターン形成体を得ることができる。
【0151】
また、無電解めっき層だけでは導電性が不十分である場合は、必要に応じて銅などの電解めっきを行う。また、さらに金などの無電解めっきを行う場合もある。
【0152】
この導電性パターンは、種々の用途、例えばプリント配線基板、電気的検出法用DNAチップ、電気的検出法用タンパク質チップ、電気的検出法用細胞チップなどの電気的検出法用バイオチップ用機能性基板、電気泳動工程など電力の入力を必要とする化学チップ(Lab-on-a-Chip)、分析チップなどのマイクロ流体チップ用機能性基板等に用いることが可能となる。
【0153】
なお、本発明においては、表面に導電性のパターンを形成するものであるので、基体は絶縁性を有するものである必要があり、この絶縁性の程度は、用いる導電性パターン形成体の用途に応じて決定されるものである。
【0154】
d.その他
また、上記脱保護官能基が、化学的な結合により、他の物質と接着することが可能な基とすることにより、エネルギー照射することによって、脱保護して接着性を有する脱保護官能基として用いることが可能とすることもできる。
【0155】
また、本発明は感光性保護基および脱保護官能基のレーザの屈折率が異なる材料を用いることにより、メモリーとしての機能を発揮させることができる。
【0156】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0157】
【実施例】
以下に実施例および比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
【0158】
[実施例]
パイレックス(登録商標)ガラス基板を用いたクロムマスク(開口部パターン:φ200μm、ピッチ500μm)表面にテイカ(株)製の光触媒用酸化チタンコーティング剤TKC301をコーティングし、350℃で3時間乾燥させ、光触媒含有層側基板を調製した。
【0159】
次に、ポリ(γ−メチルL−グルタメート)−co−(γ−(p−ニトロベンジル)L−グルタメート)をコーティングした石英スライドを被露光基板として用意し、p−ニトロベンジル基由来の吸収は約240−330nmの範囲に存在することを吸収スペクトル測定により確認した。上記光触媒含有層側基板を該被露光基板上にソフトコンタクトさせ、常温・常圧で300−400nmの波長範囲の紫外線を1時間照射した。その結果、被露光部にp−ニトロベンジル基が分解・脱離することによりカルボキシル基が生成し、該露光部分が親水化された。
【0160】
ここで、カルボキシル基が生成されたことは、次の実験で証明した。すなわち、クロム層の無い(全面が開口部)の光触媒含有層側基板を用いて、上記コーティング済みスライドを露光処理した後、表面のゼータ電位をpH9、10ミリモルNaClの条件で大塚電子製LEZA−600を用いて測定した。その結果、ゼータ電位の平均値は−24.6mVと負の値を示した。また、pH3、10ミリモルNaClの条件でも測定したところ、ゼータ電位の平均値は−3.3mVであった。このゼータ電位のpH依存性から試料表面にはカルボキシル基が生成しているとの結論に至った。
【0161】
[比較例]
単なるパイレックス(登録商標)基板を用い、実施例と同様にして露光処理した試料表面および未露光の試料表面のゼータ電位を実施例と同一条件で測定した。その結果、ゼータ電位の平均値は、pH9の場合は、それぞれ−6.1mV、−4.8mVであった。また、pH3の場合は、露光処理した試料表面および未露光試料表面のゼータ電位の平均値はそれぞれ−3.0mV、+2.2mVであった。
【0162】
【発明の効果】
本発明によれば、上記パターン形成体用基板調製工程において、基体上に感光性保護基で保護された官能基を有する分子を薄膜状に形成してなる特性変化層を形成し、上記パターン形成工程において、エネルギーを照射することにより、上記特性変化層表面に感光性保護基で保護された官能基を脱保護して得られる脱保護官能基からなるパターンを高精細に形成することができる。
【0163】
このように特性変化層として感光性保護基で保護された官能基を有する分子を薄膜状に形成してなるものを用いることにより、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、容易に感光性保護基の脱保護を行うことが可能となる。したがって、脱保護された脱保護官能基のパターンを容易に形成することができ、種々の用途に応用することが可能となる。
【0164】
また、露光後、パターン形成体から光触媒含有層側基板を取り外すので、パターン形成体自体には光触媒含有層が含まれることがなく、したがってパターン形成体の光触媒の作用による経時的な劣化に対する心配がない。さらに、光触媒含有層と特性変化層との間隔が、上述した範囲内であるので、効率よくかつ精度の良好な特性の変化したパターンを有するパターン形成体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパターン形成体の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明に用いられる光触媒含有層側基板の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明に用いられる光触媒含有層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明に用いられる光触媒含有層側基板の他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 … 基材
2 … 光触媒含有層
3 … 光触媒含有層側基板
4 … 基体
5 … 特性変化層
6 … パターン形成体用基板
9 … 特性変化領域
Claims (18)
- 基体と、前記基体上に形成され、感光性保護基で保護された官能基を有し、かつ光触媒の作用により感光性保護基が脱保護する分子を薄膜状に形成してなる特性変化層とを有するパターン形成体用基板を調整するパターン形成体用基板調整工程と、光触媒を含有する光触媒含有層および基体を有する光触媒含有層側基板における前記光触媒含有層と前記特性変化層とが密着するように配置した後、所定の方向から前記光触媒含有層にエネルギーを照射することにより、前記特性変化層表面に感光性保護基で保護された、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、および1,3−ジオール基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を、前記光触媒含有層に含まれる光触媒の作用により、脱保護して得られる脱保護官能基からなるパターンを形成するパターン形成工程とを有することを特徴とするパターン形成体の製造方法。
- 前記光触媒含有層側基板が、基材と、前記基材上にパターン状に形成された光触媒含有層とからなることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記光触媒含有層側基板が、基材と、前記基材上に形成された光触媒含有層と、パターン状に形成された光触媒含有層側遮光部とからなり、前記パターン形成工程におけるエネルギーの照射が、光触媒含有層側基板から行なわれることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記光触媒含有層側基板において、前記光触媒含有層側遮光部が前記基材上にパターン状に形成され、さらにその上に前記光触媒含有層が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記光触媒含有層側基板において、前記基材上に光触媒含有層が形成され、前記光触媒含有層上に前記光触媒含有層側遮光部がパターン状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記光触媒含有層が、光触媒からなる層であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記光触媒含有層が、光触媒を真空製膜法により基材上に製膜してなる層であることを特徴とする請求項6に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記光触媒含有層が、光触媒とバインダとを有する層であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記光触媒が、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)から選択される1種または2種以上の物質であることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記光触媒が酸化チタン(TiO2)であることを特徴とする請求項9記載のパターン形成体の製造方法。
- 前記感光性保護基で保護された官能基を有する分子が、さらに基体を構成する分子と結合し得る官能基を有することを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法。
- 請求項1から請求項11までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法で得られたパターン形成体の特性変化層上における脱保護官能基が、生体物質と結合する生体物質結合性を有する脱保護官能基であることを特徴とするバイオチップ用基材の製造方法。
- 請求項1から請求項11までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法で得られたパターン形成体の基体が、流体を流すための凹部を有し、少なくとも前記凹部内の感光性保護基で保護された官能基を有する分子が、前記パターン形成工程において脱保護され、脱保護官能基とされていることを特徴とするマイクロ流体チップ用基材の製造方法。
- 請求項1から請求項11までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法で得られたパターン形成体の特性変化層上における脱保護官能基が、無電解めっき用触媒と付着する無電解めっき用触媒付着性を有する脱保護官能基であり、前記基体が電気絶縁性を有することを特徴とする導電性パターン形成用基材の製造方法。
- 請求項12に記載のバイオチップ用基材の製造方法において得られるバイオチップ用基材の脱保護官能基に対して、生体物質を結合する工程を有することを特徴とするバイオチップの製造方法。
- 請求項13に記載のマイクロ流体チップ用基材の製造方法によって得られるマイクロ流体チップ用基材と、貼り合せ基材とを貼り合せる工程を有することを特徴とするマイクロ流体チップの製造方法。
- 前記貼り合せ基材が、請求項1から請求項11までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体の製造方法で得られたパターン形成体の基体であり、前記マイクロ流体チップ用基材と前記貼り合せ基材とを貼り合せた際に、前記マイクロ流体チップ用基材の凹部に対応する前記貼り合せ基材の表面部分の感光性保護基で保護された官能基を有する分子が、前記パターン形成工程において脱保護され、脱保護官能基とされていることを特徴とする請求項16に記載のマイクロ流体チップの製造方法。
- 請求項14に記載の導電性パターン形成用基材の製造方法によって得られる導電性パターン形成用基材の脱保護官能基に対して、無電解めっき用触媒を付着させる触媒付着工程と、前記触媒付着工程によりパターン状に無電解めっき用触媒が付着した基材に対して無電解めっきを行う無電解めっき工程とを有することを特徴とする導電性パターンの製造方法。
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