JP4200549B2 - 回転機械の断熱構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転機械、特に常温部に設けられている駆動装置によって回転する回転作動部が、断熱室内の低温雰囲気で回転するような回転機械において、駆動装置の熱が回転軸及び回転作動部を通して低温雰囲気内に持ち込まれるのを極力低減するようにした回転機械の断熱構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、例えば超電導磁石を極低温で冷却するためにヘリウムが用いられており、液体ヘリウムを極低温排気コンプレッサーで極低圧に減圧することによって4K以下の極低温を達成することが行われている。
【0003】
図4は、回転機械として極低温排気コンプレッサーの場合を例にとって示したものであり、断熱室壁1により区画して真空を保持することにより断熱を行うようにした断熱室2を設け、該断熱室2の内部に、作動装置3としての極低温排気コンプレッサーのスクロール4を設けている。スクロール4は、配管経路5,6に接続されており、一方の配管経路5から導入したヘリウムを昇圧して他方の配管経路6に導出するためのものである。
【0004】
更に、前記断熱室壁1外部の常温部には駆動装置7が設けられており、該駆動装置7に回転軸8を介して接続された回転作動部9としてのインペラ10が、前記作動装置3のスクロール4に嵌合するように設けられて、ヘリウムの圧縮を行うようになっている。上記した回転機械では、駆動装置7のケーシング内部が断熱室2に連通するようになり、このために、駆動装置7のケーシング内部も真空に保持されるようになっている。
【0005】
上記極低温排気コンプレッサーでは、ヘリウムの温度を例えば4K前後の極低温まで冷却することを要求される場合があり、このよう場合、断熱室2内部を真空に保持すると、駆動装置7から断熱室2内の作動装置3に伝わる熱は殆んど回転軸8を伝わって侵入する熱のみとなり、従って回転軸8を伝わる熱を小さくする工夫を行えば熱の侵入をかなり小さなものとすることができる。
【0006】
一方、上記したような回転機械においては、駆動装置7、回転軸8、回転作動部9としてのインペラ10等をメンテナンスする必要がある。
【0007】
このようなメンテナンスを実施するためには、前記駆動装置7を着脱可能に構成する必要があるが、駆動装置7を着脱可能として断熱室壁1から取外すと、断熱室2の真空が解除されてしまう。このように断熱室2の真空が解除されてしまうと、断熱室2の容積が大きい場合には、再び断熱室2内を吸引して真空に保持するために多大の時間と動力を必要とするという問題がある。
【0008】
又、図4の回転機械では、スクロール4とインペラ10との間の隙間からヘリウムが断熱室2内に漏洩するために断熱室2内の圧力が上昇してしまう問題があり、このために、常時断熱室2内を排気して真空を保持する必要があるという問題がある。
【0009】
このような問題に対処するため、近年では、図4に二点鎖線で示すように極低温排気コンプレッサーのスクロール4と断熱室壁1との間に区画壁11を設け、前記断熱室2の真空を保持した状態において駆動装置7及びインペラ10を取り外してメンテナンスすることができるようにした方法が考えられるようになってきている。
【0010】
上記したような区画壁11を設けると、スクロール4とインペラ10との隙間から漏れたヘリウムが、区画壁11内部及び駆動装置7のケーシング内部を満たして断熱ガスとなり、且つ断熱室2内にヘリウムが漏出しないようにすることができるので好都合である。
【0011】
図5は、断熱材として考えられている種々の材料の温度T〔K〕と熱伝導率〔W/(m・K)〕との関係を示したものであり、前記ヘリウム(He)は、常温では空気の約6倍前後の熱伝導率を有しているが、例えば5K〜100K前後のような極低温域で使用される場合のヘリウムは、アルミナFRP、ガラスFRP、エポキシ単体等の断熱材に比して、約1桁以上に小さな熱伝達率を達成することができて好都合である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記したように区画壁11を設けて、該区画壁11内部と駆動装置7のケーシング内部とをヘリウム(断熱ガス)で満たすようにした従来の回転機械の断熱構造においても、極低温を発生する作動装置3の効率を高めるためには、回転軸8を伝わって回転作動部9に伝達される熱を極力低減させなければならない。
【0013】
上記回転軸8による熱の伝達を低減させる方法として、回転軸8の内部に真空空間を形成して薄肉の回転軸とすることが考えられる。しかし、このようにした場合にも、回転軸8の強度保持の点から薄肉部の肉厚はある程度以下に小さくすることはできず、そのために回転軸8を伝わる熱の侵入が大きくなってしまう。
【0014】
即ち、回転軸8を伝わる熱の温度分布を図4に併記して曲線X1で示すように、低温部の長さは短くなり(常温部側(約300K)に近い位置の熱伝導率が大きいため)、よって回転作動部9に伝わる熱の侵入が大きくなってしまう問題がある。
【0015】
また、区画壁11内部に満たされたヘリウムがインペラ10の回転によって区画壁11内部を流動するために、ヘリウムの対流によっても駆動装置7側の熱がインペラ10に伝達されることになってしまう。
【0016】
本発明は、かかる従来の問題点を解決すべくなしたもので、断熱室壁外部に着脱可能に設けるようにした駆動装置の熱が、断熱室内部の作動装置に伝達されるのを最小限に抑制することができるようにした回転機械の断熱構造を提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、断熱室内部の作動装置と断熱室壁に設けた開口との間に区画壁を備え、前記開口の外部に駆動装置が着脱可能に設けられ該駆動装置の回転軸に備えた回転作動部が前記区画壁内部を通して前記作動装置に係合され、且つ前記区画壁内部及び駆動装置内部が断熱ガスで満された構成を有して駆動装置の熱が作動装置に侵入するのを防止する回転機械の断熱構造であって、
前記区画壁内部における回転軸に、該回転軸の内部に真空空間を設けることにより薄肉部を形成し、
区画壁内部、内周部に前記薄肉部の外周面を隙間を有して包囲する伝熱フランジを備え、外周部に冷却源が接続された中間伝熱材を設け
前記薄肉部は、前記伝熱フランジの内側において前記伝熱フランジに対して回転することを特徴とする回転機械の断熱構造、に係るものである。
【0018】
又、中間伝熱材を銅板で構成したり、区画壁内部に対流防止材を設け、この対流防止材は、前記作動装置と前記中間伝熱材との間、及び、前記駆動装置と前記中間伝熱材との間に備えられていても良く、更に作動装置が極低温排気コンプレッサーのスクロールであり、回転作動部がインペラであっても良い。
【0019】
本発明によれば、区画壁内部における回転軸に、該回転軸の内部に真空空間を設けることにより薄肉部を形成し、区画壁内部の所要位置に、内周部に前記薄肉部の外周面を小さい隙間で包囲する伝熱フランジを備え、外周部に冷却源が接続された中間伝熱材を設けた構成としているので、中間伝熱材の伝熱により前記隙間を介して回転軸の薄肉部に中間温度域を設けることができ、この中間温度域の存在により、回転軸を介して回転作動部に伝わる熱の侵入を極力低減させることができる。
【0020】
また、中間伝熱材を熱伝導率の高い銅板で構成すると、薄肉部に中間温度域を形成することが容易になり、また区画壁内部に対流防止材を設けると、断熱ガスの対流によって駆動装置側の熱が回転作動部に伝達されるのを防止することができる。
【0021】
上記により、駆動装置を着脱可能に取付けた構成においても、駆動装置側から断熱室内部の作動装置へ熱が伝達するのを極めて小さな値に抑制し得て、高い断熱効果を得ることができる。
【0022】
ヘリウムを極低温に冷却する要求があるような極低温排気コンプレッサーを高効率に作動させることができるようになり、よって極低温を確実に達成できるようになる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、図4と同様の極低温排気コンプレッサーからなる回転機械に適用した場合の本発明の一例を示したもので、図1中、図4と同一のものには同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0025】
図1に示すように、断熱室2内部の作動装置3である極低温排気コンプレッサーのスクロール4と、断熱室壁1に設けた開口12との間に、ステンレスなどの薄板によって形成した区画壁11を設け、前記開口12の外部に、駆動装置7のケーシング13を、シール14を介してボルト15により着脱可能に取付ける。更に、駆動装置7の回転軸8に取付けられた回転作動部9であるインペラ10を、前記区画壁11内部を通して作動装置3である極低温排気コンプレッサーのスクロール4に係合する。
【0026】
また、前記駆動装置7を着脱する際に、極低温排気コンプレッサーを配管経路5,6に対して遮断できるようにするために、スクロール4の入口16と出口17とに開閉弁18を配設している。
【0027】
上記区画壁11の内部及び駆動装置7のケーシング13の内部は、極低温排気コンプレッサーのスクロール4とインペラ10との間の隙間から漏れるヘリウムによって満されるようになっている。
【0028】
図1中、19はケーシング13に形成した水冷ジャケット、20は駆動装置7のモータステータ、21はモータロータ、22は磁気軸受、23はスラスト軸受、24は電源コード等を通すハーナチックコネクタである。
【0029】
又、前記回転軸8は、図2に示すように、駆動装置7からインペラ10への熱の伝達を極力低減するために、回転軸8の内部をくり貫いて薄肉部25を形成し、その内部を真空に保持させた真空空間26を形成するようにしている。このように回転軸8内部に真空空間26を設けて薄肉部25を形成し該薄肉部25の長さを長くとるようにすると、回転軸8を伝わって内部のインペラ10に侵入する熱を低減することができる。
【0030】
しかし、前記回転軸8の薄肉部25の肉厚を薄くし長さを長くして断熱効果を高めようとしても、強度上の限界からある程度の肉厚とする必要が生じて得られる断熱効果に限界があり、しかも回転軸8の温度分布を図4に併記して曲線X1で示したように、低温部分が短くなって、熱の侵入が比較的大きくなるために断熱効果が低下してしまうという問題がある。
【0031】
このため、前記区画壁11内部の所要位置に、内周部に前記薄肉部25の外周面を小さい隙間Sで包囲する伝熱フランジ27を備えた中間伝熱材28を設ける。中間伝熱材28には、例えば銅板のような熱伝導率の高い材料を用いるようにする。
【0032】
前記中間伝熱材28の外周部には、冷却源29を設ける。冷却源29としては、液体窒素(LN2)又はヘリウムガスを通すようにした通路30を前記中間伝熱材28の外周に沿って一体に設けるようにしている。
【0033】
また、区画壁11内部における中間伝熱材28とインペラ10の背面に対して僅かな隙間を隔てた位置との間と、中間伝熱材28と駆動装置7との間の夫々には、内部の断熱ガス(ヘリウム)の対流を防止するようにしたハニカム等の対流防止材31,32を設けるようにしている。対流防止材31,32は、紙、合成樹脂、アラミドFRPなどの極薄の材料で図3に示すようにハニカムが形成され、前記回転軸8と平行に伸びて作動装置3(インペラ10)側端部がたとえばFRP(繊維強化プラスチック)等による閉塞プレート33にて閉塞された多数の対流防止空間34を形成するようになっている。上記対流防止材31,32は、区画壁11内に挿入されることにより前記閉塞プレート33によって区画壁11に固定されるようになっている。
【0034】
次に、上記図1、図2に示した形態例の作用を説明する。
【0035】
図1に示す回転機械において、駆動装置7を作動し、回転軸8を介してインペラ10を回転させると、極低温排気コンプレッサーのスクロール4によってヘリウムの圧縮が行われる。この時、区画壁11の内部及び駆動装置7のケーシング13の内部は、極低温排気コンプレッサーのスクロール4とインペラ10との間の隙間から漏れるヘリウムによって満されている。
【0036】
この状態において、常温部に設けられている駆動装置7の熱(例えば300K以上)は、回転軸8と区画壁11を伝わって作動装置3側に侵入する。この時、区画壁11は薄肉のステンレス(ステンレスの熱伝達率は低い)にて構成しているので、区画壁11を伝わって侵入する熱は少ない。
【0037】
一方、回転軸8に真空空間26を設けて薄肉部25を形成しているが、回転軸8の強度保持の点から薄肉部25の肉厚はある程度以下に小さくすることはできず、そのために回転軸8を伝わる熱の侵入も大きくなる。
【0038】
このとき、回転軸8の長手方向中間部に、薄肉部25の外周面を小さい隙間Sで包囲する伝熱フランジ27を備えた中間伝熱材28を設け、該中間伝熱材28を、外周部に設けた冷却源29によって例えば80K程度に冷却することにより、薄肉部25に中間温度域(80K)を形成するようにしている。
【0039】
上記において、80Kを保持した中間伝熱材28の伝熱フランジ27が僅かな隙間Sで薄肉部25を包囲していることにより、薄肉部25の熱が区画壁11内に満たされているヘリウムを伝わって伝熱フランジ27に伝えられ、中間伝熱材28を介して冷却源29により一定温度(80K)に冷却される。
【0040】
上記ヘリウムの熱伝達率は、金属に比べると約1/100程度と小さいが、空気に比べると6倍程度の高い熱伝達率を有しており、前記薄肉部25と伝熱フランジ27との間の隙間Sは小さく、しかも回転軸8は回転していて上記隙間Sのヘリウムは流動して対流するために充分に熱を伝達することができる。
【0041】
上記したように、回転軸8の薄肉部25に中間伝熱材28によって中間温度域が形成されることにより、図2の回転軸8の温度分布を併記して曲線X2で示すように、低温部の長さを長くすることができ、よって回転作動部9に伝わる熱の侵入を大幅に低減することができるようになる。
【0042】
また、上記したように回転軸8による熱の侵入を低減できるので、回転軸8自体の長さも短くすることができ、よってその分回転軸8の強度を上げることができるので、薄肉部25の厚さを更に薄くすることもできる。
【0043】
前記した構成によれば、ヘリウムを4K前後まで冷却する要求があるような極低温排気コンプレッサーを高効率に作動させることができ、よって前記したような例えば4Kといった極低温を確実に達成することができるようになる。
【0044】
尚、本発明は上記形態例にのみ限定されるものではなく、極低温排気コンプレッサー以外にも、熱の侵入を防止する必要がある種々の回転機械の断熱構造にも適用できること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ること、等は勿論である。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、区画壁内部における回転軸に、該回転軸の内部に真空空間を設けることにより薄肉部を形成し、区画壁内部の所要位置に、内周部に前記薄肉部の外周面を小さい隙間で包囲する伝熱フランジを備え、外周部に冷却源が接続された中間伝熱材を設けた構成としているので、中間伝熱材の伝熱により前記隙間を介して回転軸の薄肉部に中間温度域を設けることができ、この中間温度域の存在により、回転軸を介して回転作動部に伝わる熱の侵入を極力低減させることができる。
【0046】
また、中間伝熱材を熱伝導率の高い銅板で構成すると、薄肉部に中間温度域を形成することが容易になり、また区画壁内部に対流防止材を設けると、断熱ガスの対流によって駆動装置側の熱が回転作動部に伝達されるのを防止することができる。
【0047】
上記により、駆動装置を着脱可能に取付けた構成においても、駆動装置側から断熱室内部の作動装置へ熱が伝達するのを極めて小さな値に抑制し得て、高い断熱効果を得ることができる。
【0048】
ヘリウムを極低温に冷却する要求があるような極低温排気コンプレッサーを高効率に作動させることができるようになり、よって極低温を確実に達成できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転機械の断熱構造の一例を示す切断側面図である。
【図2】図1の要部の拡大断面図である。
【図3】ハニカム部材の一例を示す部分斜視図である。
【図4】従来の回転機械の断熱構造の一例を示す切断側面図である。
【図5】種々の断熱材の温度と、熱伝導率との関係を示す線図である。
【符号の説明】
1 断熱室壁
2 断熱室
3 作動装置
4 スクロール
7 駆動装置
8 回転軸
9 回転作動部
10 インペラ
11 区画壁
12 開口
25 薄肉部
26 真空空間
27 伝熱フランジ
28 中間伝熱材
29 冷却源
31 対流防止材
32 対流防止材
S 隙間

Claims (4)

  1. 断熱室内部の作動装置と断熱室壁に設けた開口との間に区画壁を備え、前記開口の外部に駆動装置が着脱可能に設けられ該駆動装置の回転軸に備えた回転作動部が前記区画壁内部を通して前記作動装置に係合され、且つ前記区画壁内部及び駆動装置内部が断熱ガスで満された構成を有して駆動装置の熱が作動装置に侵入するのを防止する回転機械の断熱構造であって、
    前記区画壁内部における回転軸に、該回転軸の内部に真空空間を設けることにより薄肉部を形成し、
    区画壁内部、内周部に前記薄肉部の外周面を隙間を有して包囲する伝熱フランジを備え、外周部に冷却源が接続された中間伝熱材を設け
    前記薄肉部は、前記伝熱フランジの内側において前記伝熱フランジに対して回転することを特徴とする回転機械の断熱構造。
  2. 中間伝熱材が銅板であることを特徴とする請求項1記載の回転機械の断熱構造。
  3. 区画壁内部に対流防止材を設け
    前記対流防止材は、前記作動装置と前記中間伝熱材との間、及び、前記駆動装置と前記中間伝熱材との間に備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の回転機械の断熱構造。
  4. 作動装置が極低温排気コンプレッサーのスクロールであり、回転作動部がインペラであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の回転機械の断熱構造。
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