以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1に係るシートベルト装置を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態に係るシートベルト装置1は、ウェビング2、タング3およびバックル4を有するシートベルト5と、前記バックル4内に設けたバックルスイッチ6と、バックルスイッチ6が正常かもしくは故障かを診断(判定)するバックルスイッチ故障診断手段としてのコントローラ(マイクロコンピュータ)7と、バックルスイッチ6の故障時に点灯する警告灯8とを備えている。なお、図1のシートベルト5は、車両(自動車)の助手席側に設置した3点式パッシブシートベルトの例である。また、本実施形態に係るシートベルト装置1は、図1に示した助手席以外にも、運転席を含む他の座席(後部座席等)においても同様に構成されている。さらに、このシートベルト装置1を備えた車両(不図示)には、シートベルト5の補助拘束装置としてのエアバック装置(不図示)が設けられている。
コントローラ7は、イグニッションスイッチ9のOFF後およびON後の所定時間以内にバックルスイッチ6の故障の有無を診断する機能(自己診断プログラム)を有し、イグニッションスイッチ9がOFF時の診断情報は、コントローラ7に設けた不揮発性メモリとしてのEEPROM(記憶手段)7aに記憶される(コントローラ7によるバックルスイッチ6の故障診断の手順については後記する)。また、コントローラ7には、イグニッションスイッチ9を介して電気的に接続されたバッテリー電源10と、このバッテリー電源10とは別の補助電源11が電気的に接続されている。この補助電源11としては、例えば、バッテリー電源10のバッテリー電圧が所定値以下に低下した場合でも確実にインフレータを作動させてエアバッグを展開させるために設けられているエアバック用電源を兼用することができる。
シート12に着座した乗員(不図示)を拘束するウェビング2の基端側は、車内側面(図1の右側)に設けた巻き取り部13に引き出し自在に巻き取られており、ウェビング2の先端部は、アンカー14を介して車内側面(図1の右側)の下部に固定されている。ウェビング2に移動自在に挿通されたタング3は、乗員の操作によってバックル4内に係脱(係合・離脱)自在に装着される。
《タングとバックルの構成》
図2は、タングとバックル内を示す正面図であり、(a)は、タングがバックルから離脱している状態(シートベルト非装着状態)を示す図、(b)は、タングがバックルに係合している状態(シートベルト装着状態)を示す図である。
図2(a)に示すように、タング3は、把持部20と挿入プレート部21とで構成されている。把持部20にはウェビング2が挿通する挿通孔20aが形成されており、挿入プレート部21にはバックル4の係止部材22(図2(b)参照)に係止されるロック孔21aが形成されている。バックル4は、バックル本体23に、タング挿入口24と、スライダ部25と、前記バックルスイッチ6と、係止部材22(図2(b)参照)とが設けられている。スライダ部25は、タング3の挿入プレート21の挿入・離脱方向(図2(a),(b)の左右方向)に沿って移動自在な移動機構26と、この移動機構26と一体に移動する押棒27を備えている。バックルスイッチ6は、前記押棒27のタング挿入口24と反対側(図2(a)の右側)に設けられている。
そして、タング3がバックル4から離脱している状態(シートベルト非装着状態:図2(a)参照)からタング3をバックル4に挿入して係合させる場合(シートベルト装着状態:図2(b)参照)には、シート12に着座した乗員(不図示)の操作によりタング3の挿入プレート21を、バックル4のタング挿入口24に挿入する。そして、挿入プレート21の先端面21bを、移動機構26の当接面26aに当接させて、スライダ部25をバックルスイッチ6側(図2(a)の右方向)に移動させる。なお、この移動機構25は、ばね(不図示)によりこの移動方向(図2(a)の右方向)に対して常に反対方向に付勢力が作用しているので、タング3をバックル4に係合するときはこの付勢力に抗してタング3を挿入することになる。
そして、図2(b)に示すように、バックル4のタング挿入口24(図2(a)参照)に挿入プレート21の根元付近までが挿入されると、スライダ部25の下に位置していた係止部材22が上方(紙面に対して手前方向)に摺動してロック孔21aに係止される。これにより、タング3がバックル4に係合される(シートベルト装着状態になる)。なお、係止部材22は、ばね(不図示)により紙面に対して手前方向に常に付勢力が作用している。
タング3がバックル4に係合すると、移動した押棒27の先端側下面がバックルスイッチ6の上面に設けられているアクチュエータ28を押圧することにより、後記するバックルスイッチ6の上面から突出している移動自在な突起部31a(図3(a)参照)が前記アクチュエータ28の押圧で押される。アクチュエータ28は、弾性を有する板状部材によって形成されている。このように、タング3のバックル4への係合に合わせて、アクチュエータ28で突起部31aが押されると、バックルスイッチ6がONし、このバックルスイッチ6から後記する係合信号Eb(図4参照)がハーネス29を通してコントローラ(図1参照)7に出力される。
そして、図2(b)に示す状態から、シート12に着座した乗員(不図示)がバックル本体23に設けたリリースボタン(不図示)を押すことにより、係止部材22がばね(不図示)による付勢力に抗して押し込まれ、ロック孔21aから係止部材22が外れる。そして、移動機構26を付勢している前記ばね(不図示)の付勢力により、タング挿入口24側に移動する移動機構26の当接面26aで挿入プレート21が押されて、タング挿入口24から外れることにより、図2(a)に示すように、タング3がバックル4から離脱した状態となる。
タング3がバックル4から離脱すると、押棒27によるアクチュエータ28の押圧が解除されることにより、突起部31aがバックルスイッチ6の上面に突出した状態に戻る。このように、タング3のバックル4から離脱に合わせて、アクチュエータ28による突起部31aの押さえが解除されると、バックルスイッチ6がOFFし、このバックルスイッチ6から後記する離脱信号Ea(図4参照)がハーネス29を通してコントローラ(図1参照)7に出力される。
《バックルスイッチの構成》
次に、バックルスイッチ6の構成について説明する。図3は、バックルスイッチを示す断面図であり、(a)は、タングがバックルから離脱している状態(シートベルト非装着状態)でのバックルスイッチの断面図、(b)は、タングがバックルに係合している状態(シートベルト装着状態)でのバックルスイッチの断面図、(c)は、図3(a)のI−I線断面図、(d)は、図3(b)のII−II線断面図である。
図3(a)に示すように、バックルスイッチ6は、筐体30と、可動部材31と、蓋部材32と、可撓性部材33と、コイルばね34と、移動接点35と、信号電極36とから構成されている。筐体30は、このバックルスイッチ6の内部空間37を形成するものであって、その底面(図の下側)には、信号電極36が固定されるとともに案内棒38が一体化して設けられている。
可動部材31は、この内部空間37内を案内棒38に案内されて、図中上下方向に移動可能に設けられている。さらに、案内棒38の周囲に設けたコイルばね34が、可動部材31と筐体30の底面との間に介在されて、この可動部材31の図中下方向への移動に対し付勢力を付与している。可動部材31の上面縁側(図では右側)に前記突起部31aが一体に形成されている。蓋部材32の上面縁側(図では右側)には、可動部材31の突起部31aを露出させる開口部32aが設けられている。可動部材31の外周面は、筐体30の内周面にほぼ接している。また、可動部材31の上面には開口部31bが形成されている。
可動部材31の突起部31aは、タング3がバックル4から離脱している状態(シートベルト非装着状態:図2(a)参照)では、蓋部材32の開口部32aから突出しているが(図3(a)参照)、タング3がバックル4に係合している状態(シートベルト装着状態:図2(b)参照)では、アクチュエータ28(図2(b)参照)の押圧によって押し込まれる(図3(b)参照)。これにより、可動部材31がコイルばね34による付勢力に抗して内部空間37の下方(図の下側)に押し下げられる。なお、アクチュエータ28(図2(a)参照)による突起部31aへの押圧が解除されると、(図3(a)に示すように、コイルばね34による付勢力で可動部材31が内部空間37の上方に押し上げられ、突起部31aが開口部32aから突出した状態に戻る。
可撓性部材33は、蓋部材32の上面の内側および開口部32aと突起部31aとの間に形成された隙間を覆って、内部空間37に異物が混入しないよう密閉するものである。この可撓性部材33は、ゴム部材等で構成されており、開口部32aの周囲において突起部31aの上下動に合わせて撓むように変形する。
移動接点35は、互いに電気的に導通している第1接点35a、第2接点35bおよび第3接点35cを有し、高導電性を有しかつ弾性を有する例えば銅合金製の部材等から構成されている。そして、移動接点35の両側は、可動部材31の開口部31bの周囲の下面に固着されており、可動部材31と一体的に上下方向に移動するものである。移動接点35の各接点(第1接点35a、第2接点35bおよび第3接点35c)は、基部35dの上部に突起するようにして一体に形成されている。
信号電極36は、所定間隔をおいて配置された3つの端子(第1出力端子36a、第2出力端子36bおよび入力端子36c)からなり、各端子は、それぞれ筐体30の底面(図の下側)から外に位置する部分と内部空間37に位置する部分(第1出力端子固定接点部36a1、第2出力端子固定接点部36b1および入力端子固定接点部36c1)とに分けられる。信号電極36の各端子(第1出力端子36a、第2出力端子36bおよび入力端子36c)の筐体30の底面(図の下側)から外に露出する部分は、コネクタ(不図示)を介してハーネス29(図2参照)に接続されている。また、第1出力端子36aの第1出力端子固定接点部36a1の先端部に一体に形成した上端固定接点部36a2は、側方向(図の左側)に張り出している。
移動接点35の第2接点35bは、図3(c)に示すように、下側が開口した一対の基部35d,35dから上側に延びるようにして形成された一対の接点板35e,35eからなり、一対の接点板35e,35eの上部は弾性を有するように接している。一対の基部35d,35dの間に位置する信号電極36の第2出力端子固定接点部36b1は、図3(d)に示すように、可動部材31がコイルばね34による付勢力に抗して内部空間37の下方に押し下げられたとき(タング3がバックル4に係合したとき)に、一対の接点板35e,35eの間に摺動状態で挿通される。なお、図3(c),(d)では移動接点35の第2接点35bを示したが、移動接点35の第1接点35aおよび第3接点35cも、前記した第2接点35bとほぼ同様に構成されている。
次に、図3(a),(b)を参照して、タング3がバックル4から離脱しているとき(図3(a))と、タング3がバックル4に係合したとき(図3(b))における、移動接点35と信号電極36との接触状況について説明する。
図3(a),(b)に示すように、第1出力端子36aの第1出力端子固定接点部36a1に形成した上端固定接点部36a2は、第1接点35aが上下方向に移動する軌道上に位置している。よって、移動接点35の第1接点35aは、第1出力端子固定接点部36a1の上端固定接点部36a2においてのみ接触することが可能になっている。これにより、突起部31aが押し込まれていない状態(図3(a)参照)では、第1接点35aと第1出力端子36a(上端固定接点部36a2)とは接触状態になり、突起部31aが押し込まれている状態(図3(b)参照)では、第1接点35aと第1出力端子36a(上端固定接点部36a2)とは非接触状態になる。
第2出力端子36bの第2出力端子固定接点部36b1は、その上端が第1出力端子固定接点部36a1の上端固定接点部36a2の下端より若干下方に位置するように構成されている。さらに、第2出力端子固定接点部36b1は第2接点35bが上下方向に移動する軌道上に位置している。これにより、突起部31aが押し込まれていない状態(図3(a)参照)では、第2接点35bと第2出力端子36b(第2出力端子固定接点部36b1)とは非接触状態になり(図3(c)参照)、突起部31aが押し込まれている状態(図3(b)参照)では、第2接点35bと第2出力端子36b(第2出力端子固定接点部36b1)とは接触状態になる(図3(d)参照)。
入力端子36cの入力端子固定接点部36c1は、上下方向に移動する第3接点35cが上下方向に移動する軌道上のすべての位置で接触するように配置されている。これにより、第3接点35cと入力端子36c(入力端子固定接点部36c1)とは、突起部31aの押込状態に関係なく、常時導通状態にある。よって、移動接点35は、常時入力端子36cと同じ電位である。
次に、図4(a),(b)を参照して、タング3がバックル4から離脱しているとき(図2(a))と、タング3がバックル4に係合したとき(図2(b))の、バックルスイッチ6に設けた信号電極36の各端子(第1出力端子36a、第2出力端子36bおよび入力端子36c)における信号(電圧)状態について説明する(なお、適宜、図1、図2、図3を参照)。
入力端子36cには、本実施形態では、イグニッションスイッチ9がONのとき、およびイグニッションスイッチ9がOFF後の所定時間(例えば、数百msec程度)の間においては、所定電圧(+V)が入力信号(COM)として印加されている。このため、突起部31aが押し込まれていないタング3の離脱状態(図2(a)、図3(a)の状態)のときには、入力端子36cは、前記したように移動接点35を介して第1出力端子36aに導通し、この第1出力端子36aを入力端子36cと同電位(+V)にする。このとき、第2出力端子36bは第2接点35bに接触していないので、第2出力端子36bの電位は0である。
これにより、図2(a)のようにタング3が離脱状態にあり、かつバックルスイッチ6が正常状態であるときは、第1出力端子36aから出力される第1出力信号(NC)は+Vに、第2出力端子36bから出力される第2出力信号(NO)は0になる。本実施形態では、第1出力端子36aから出力される第1出力信号(NC)が+Vで、第2出力端子36bから出力される第2出力信号(NO)が0の状況時を、バックルスイッチ6(信号電極36)からの離脱信号Eaの出力時とする。
一方、突起部31aが押し込まれているタング3の係合状態(図2(b)、図3(b)の状態)のときには、入力端子36cは、前記したように移動接点35を介して第2出力端子36bに導通し、この第2出力端子36bを入力端子36cと同電位(+V)にする。このとき、第1出力端子36aは第1接点35aに接触していないので、第1出力端子36aの電位は0である。
これにより、図2(b)のようにタング3が係合状態にあり、かつバックルスイッチ6が正常状態であるときは、第1出力端子36aから出力される第1出力信号(NC)は0に、第2出力端子36bから出力される第2出力信号(NO)は+Vになる。本実施形態では、第1出力端子36aから出力される第1出力信号(NC)が0で、第2出力端子36bから出力される第2出力信号(NO)が+Vの状況時を、バックルスイッチ6(信号電極36)からの係合信号Ebの出力時とする。
また、タング3が離脱状態から係合状態に切り替わるとき(図4(b)の切り替え期間T)、およびバックルスイッチ6(ハーネス29等も含む)に故障(断線や短絡など)が発生したときにおいては、前記離脱信号Eaまたは前記係合信号Ebのいずれでもない信号(以下、「故障信号Ec」という)が出力される。図4(b)では、切り替え期間Tに出力される故障信号Ecを示している。このように、前記第1出力信号(NC)および前記第2出力信号(NO)がともに0の場合か、もしくは、前記第1出力信号(NC)および前記第2出力信号(NO)がともに+Vの場合に、バックルスイッチ6(信号電極36)から故障信号Ecが出力される。なお、図4(b)では、第1出力信号(NC)および第2出力信号(NO)がともに0の場合である。
次に、図5を参照して、前記した離脱信号Ea、係合信号Ebおよび故障信号Ecが出力されるときの、信号電極36の各端子(第1出力端子36a、第2出力端子36bおよび入力端子36c)と移動接点35(第1接点35a、第2接点35bおよび第3接点35c)との位置関係(接触状態)について詳細に説明する。なお、図5中、縦方向の一点鎖線は、移動接点35が上下方向に移動したときの第1接点35a、第2接点35bおよび第3接点35cの各軌道を示している。
図5に示すAゾーンは、前記したタング3が離脱状態(図2(a)、図3(a)参照)で、離脱信号Eaが出力されるときの第1接点35a、第2接点35bおよび第3接点35cが位置している領域である。また、Bゾーンは、前記したタング3が係合状態(図2(b)、図3(b)参照)で、係合信号Ebが出力されるときの第1接点35a、第2接点35bおよび第3接点35cが位置している領域である。さらに、AゾーンとBゾーンの境界のグレーゾーン(図4(b)に示した切り替え期間Tに対応している)は、前記したタング3が離脱状態から係合状態に切り替わるときに故障信号Ecが出力される領域であり、移動する第1接点35a、第2接点35bおよび第3接点35cがこのグレーゾーンに位置しているときに故障信号Ecが出力される。
なお、タング3をバックル4に係合している状態から離脱状態に切り替えるとき(シートベルト非装着時)にも、このときの切り替え期間に前記故障信号Ecが出力されるが、この場合は、リリースボタン(不図示)の押し操作に合わせてばね(不図示)の付勢力によって素早くタング3が離脱することにより、このときの切り替え期間は無視できるほど短時間である。
ところで、タング3の離脱状態からバックル4に係合するとき(シートベルト装着時)に、乗員がタング3をバックル4に係合する操作に手間取ると、前記グレーゾーン(図5参照)での第1接点35a、第2接点35bおよび第3接点35cの移動が通常よりもゆっくりした摺動移動となり、このグレーゾーンを通過するのに要する時間が通常よりも長くなる。これにより、図4(b)に示した切り替え期間T(故障信号Ecの出力時間)が通常よりも長くなる。
このため、タング3の離脱状態からバックル4に係合するとき(シートベルト装着時)に、前記切り替え期間T(故障信号Ecの出力時間)が予め設定した一定時間内であれば、コントローラ7(図1参照)は、このときに入力される故障信号Ecに基づいてバックルスイッチ6が故障していると誤診断しないように設定している。しかしながら、前記したようにタング3をバックル4に係合するのに手間取って、前記切り替え期間T(故障信号Ecの出力時間)が前記一定時間を越えた場合には、コントローラ7(図1参照)は、このときに入力される故障信号Ecに基づいてバックルスイッチ6が故障していると誤診断して、警告灯8を点灯させることがある。
このため、乗員が車両(自動車)に乗り込んでシート12に着座し、イグニッションスイッチ9をONした前後にタング3をバックル4に係合したとき(シートベルト装着時)に、コントローラ7がバックルスイッチ6の故障診断を開始すると、前記したようにタング3をバックル4に係合するのに手間取った場合に、このときに出力される故障信号Ecによってバックルスイッチ6が実際に故障していないにもかかわらず、故障したと誤診断するおそれがある。
そこで、本発明では、車両を停止(駐車)させてイグニッションスイッチ9をOFFした後の所定時間内に、コントローラ7でバックルスイッチ6の故障診断を実行するようにした。
《バックルスイッチの故障診断》
以下、本実施形態に係るコントローラ7によるバックルスイッチ6の故障診断の手順を、図6(a),(b)に示すフローチャートを参照して説明する。
図6(a)に示すように、まず、イグニッションスイッチ9がON状態である車両を停止(駐車)させた後にイグニッションスイッチ9をOFF(イグニッションOFF)し、このイグニッションOFF後の所定時間(例えば、数百msec程度)内に、コントローラ7は自己診断機能に基づいてバックルスイッチ6の故障診断を開始する(ステップS1)。この際、イグニッションスイッチ9がOFFされているので、イグニッションスイッチ9をOFFして所定時間の間は、補助電源11(図1参照)からコントローラ7およびバックルスイッチ6に所定の電力が供給されている。
そして、コントローラ7は、このときにバックルスイッチ6(信号電極36)から前記故障信号Ec(図4参照)が出力されているか否かを判断して、バックルスイッチ6に故障(断線、短絡等)が発生しているか否かを診断する(ステップS2)。すなわち、一般にイグニッションスイッチ9のOFF後はタング3をバックル4に係合する操作を行う可能性が低く、従来のようにイグニッションスイッチのON前後にタング3をバックル4に係合する際の切り替え時に出力される信号(故障信号Ec)で誤診断することがなくなり、コントローラ7は、バックルスイッチ6に故障が発生したときに出力される故障信号Ecを確実に取り込むことができる。また、イグニッションスイッチ9のOFF後の所定時間内に係合状態にあるタング3をバックル4から離脱させた場合においては、タング3はばね(不図示)の付勢力によって素早く離脱されるので、バックルスイッチ6に故障が発生していると誤診断することはない。
そして、ステップS2で、バックルスイッチ6(信号電極36)から故障信号Ecが出力されていなく、バックルスイッチ6に故障が発生していないと診断すると(ステップS2のNo)、バックルスイッチ6に故障が発生していないこと(非故障情報)をEEPROM7aに記憶し(ステップS3)、イグニッションOFF時における故障診断を終了する。
また、前記ステップS2で、バックルスイッチ6(信号電極36)から故障信号Ecが出力されていて、バックルスイッチ6に故障が発生していると診断すると(ステップS2のYes)、バックルスイッチ6に故障が発生していること(故障情報)をEEPROM7aに記憶し(ステップS4)、イグニッションOFF時における故障診断を終了する。
そして、図6(b)に示すように、次にイグニッションスイッチ9をON(イグニッションON)後に、コントローラ7は、図6(a)の前記ステップS3またはステップS4でEEPROM7aに記憶した情報(バックルスイッチ6の非故障情報または故障情報)を読み出す(ステップS5)。そして、EEPROM7aから読み出した情報が非故障情報の場合(ステップS6のNo)には、予め設定している通常の診断時間でバックルスイッチ6の故障診断(通常の故障診断)を開始する(ステップS7)。そして、コントローラ7は、このときにバックルスイッチ6(信号電極36)から前記故障信号Ec(図4参照)が出力されているか否かを判断して、バックルスイッチ6に故障(断線、短絡等)が発生しているか否かを再度診断する(ステップS8)。
そして、ステップS8で、バックルスイッチ6(信号電極36)から故障信号Ecが出力されていなく、バックルスイッチ6に故障が発生していないと診断すると(ステップS8のNo)、バックルスイッチ6の故障診断を終了する。一方、ステップS8で、バックルスイッチ6(信号電極36)から故障信号Ecが出力されていて、バックルスイッチ6に故障が発生していると診断すると(ステップS8のYes)、警告灯8を点灯して乗員に報知し(ステップS9)、バックルスイッチ6の故障診断を終了する。
また、ステップS6で、EEPROM7aから読み出した情報が故障情報の場合(ステップS6のYes)には、ステップS7における通常の診断時間よりも短縮した診断時間でバックルスイッチ6の故障診断(時間短縮診断)を開始する(ステップS10)。そして、コントローラ7は、このときにバックルスイッチ6(信号電極36)から前記故障信号Ec(図4参照)が出力されているか否かを判断して、バックルスイッチ6に故障(断線、短絡等)が発生しているか否かを再度診断する(ステップS11)。
そして、ステップS11で、バックルスイッチ6(信号電極36)から故障信号Ecが出力されていなく、バックルスイッチ6に故障が発生していないと診断すると(ステップS11のNo)、バックルスイッチ6の故障診断を終了する。一方、ステップS11で、バックルスイッチ6(信号電極36)から故障信号Ecが出力されていて、バックルスイッチ6に故障が発生していると診断すると(ステップS11のYes)、警告灯8を点灯して乗員に報知し(ステップS9)、バックルスイッチ6の故障診断を終了する。
このように、本実施形態では、安価な機械的構造のスライド式スイッチで構成されたバックルスイッチ6の故障診断を、イグニッションスイッチ9のOFF後の所定時間内に行うことにより、従来のようにイグニッションスイッチ9のON前後にタング3をバックル4にゆっくりと係合したとき(シートベルト装着時)に出力される故障信号Ecによって誤診断することなく、精度の高いバックルスイッチ6の故障診断を行うことができる。さらに、本実施形態では、イグニッションスイッチ9のOFF後の所定時間内にバックルスイッチ6の故障診断を行った後、次のイグニッションスイッチ9のON後にバックルスイッチ6の故障診断を再度行うことによって、より精度の高いバックルスイッチ6の故障診断を行うことができる。
また、本実施形態では、前記したように、イグニッションスイッチ9のOFF後の所定時間内に行ったバックルスイッチ6の故障診断で、故障が発生していると診断した場合には、イグニッションスイッチ9のON後に行うバックルスイッチ6の故障診断を通常の故障診断のときよりも短い時間で故障診断を行うことにより、より迅速にバックルスイッチ6の故障の有無を診断して、故障していると診断した場合には、より早く警告灯8を点灯して乗員に報知することができる。
さらに、本実施形態では、前記したように、バックルスイッチ6の故障診断を精度よく行うことができるので、バックルスイッチ6の故障の有無に応じたエアバックの適切な展開制御(展開速度や展開圧力等の制御)を信頼性よく行うことが可能となる。
〈実施形態2〉
本実施形態では、前記した実施形態1の図6(b)のステップS7における、イグニッションスイッチ9のON後のバックルスイッチ6の通常の故障診断を、以下のように行うようにした。なお、本実施形態におけるシートベルト装置の構成は、前記した実施形態1と同様であり、その説明は省略する。
以下、本実施形態に係るコントローラ7によるバックルスイッチ6の故障診断の手順を、図7に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、イグニッションスイッチ9をON(イグニッションON)後に、コントローラ7はバックルスイッチ6の故障診断を開始する(ステップS21)。そして、コントローラ7はバックルスイッチ6からの信号に基づいて、タング3のバックル4への係合状況が正常か否かを判定し(以下、この判定を「正常判定」という)(ステップS22)、タング3のバックル4への係合状況が正常でないと判断した場合(すなわち、前記したようにタング3をバックル4に係合するのに手間取って、前記切り替え期間T(故障信号Ecの出力時間)が一定時間を超えた場合)には(ステップS22のNo(正常ではない場合))、コントローラ7は、故障カウントの値を1つアップし(ステップS23)、故障診断を行う。
なお、図7に示した故障診断のフローは、イグニッションON後の所定時間内で繰り返し実行される。また、前記故障カウントの値は、コントローラ7が故障診断(ステップS21,S22)により正常でないと判定した回数である。
そして、アップされた故障カウントの値と予め設定したカウント値(設定カウント値)とを比較し(ステップS24)、アップされた故障カウントの値よりも設定カウント値の方が大きい場合(故障カウントの値が設定カウント値未満の場合:ステップS24のYes)には、ステップS22における正常判定の時間が設定時間より長いか否かを判定する(ステップS25)。ステップS25で、正常判定の時間が設定時間よりも短い場合(正常判定の時間が設定時間以下の場合:ステップS25のYes)、故障カウントの値を積算してアップする(ステップS26)。
そして、アップされた故障カウントの値と前記設定カウント値とを比較し(ステップS27)、設定カウント値よりもアップされた故障カウントの値の方が大きい場合(アップした故障カウントの値が設定カウント値以上の場合:ステップS27のYes)には、バックルスイッチ6に故障が発生していると診断(判断)して、警告灯8を点灯して乗員に報知する(ステップS28)。
また、ステップS24で、設定カウント値よりもアップされた故障カウントの値の方が大きい場合(故障カウントの値が設定カウント値以上の場合:ステップS24のNo)には、バックルスイッチ6に故障が発生していると診断(判断)して、警告灯8を点灯して乗員に報知する(ステップS28)。さらに、ステップS25で、正常判定の時間が設定時間よりも長い場合(正常判定の時間が設定時間を超える場合:ステップS25のNo)、故障カウントの値をリセットし(ステップS29)、タング3のバックル4への装着/非装着の判定を行う(ステップS30)。また、ステップS22で、タング3のバックル4への係合状況が正常で、バックルスイッチ6に故障が発生していないと判定(診断)した場合(ステップS22のYes)には、タング3のバックル4への装着/非装着の判定を行う(ステップS30)。すなわち、ステップS30では、バックルスイッチ6に故障が発生していないと判定(診断)した後において、タング3がバックル4に正常に装着(係合)されているか、もしくはタング3がバックル4に非装着状態(離脱状態)にあるかを判定する。
なお、図7に示したフローにおけるサブルーチンの処理が終了する条件は、バックルスイッチ6に故障が発生していると診断してステップS28で警告灯8を点灯した場合、およびイグニッションON後における前記した故障診断を実行する所定時間が経過した場合である。
図8は、本実施形態における故障信号の出力状況を示した図である。この図に示すように、コントローラ7によるタング3のバックル4への装着/非装着の判定は、所定時間ごと(図ではS時間ごと)に行っている。なお、このS時間は、図7のステップS25の設定時間に相当している。そして、このS時間よりも短い時間ごとに故障カウントの値を1つアップさせて、故障判定を行う。図のように、故障カウンタの値が設定カウント値N(図7のステップS24,S27の設定カウント値に相当)に達するまでの期間の間連続していると、故障信号が出力されていると判定(診断)する。
このように、本実施形態では、故障カウンタの値が設定カウント値Nに達するまでの期間の間連続している場合に、バックルスイッチ6から故障信号が出力されていると判定(診断)することにより、ノイズ等による誤判定を防止して、精度の高いバックルスイッチ6の故障診断を行うことができる。なお、図6(b)のステップS7における、通常の故障診断の期間は、前記した図8の故障カウンタの値が設定カウント値Nに達するまでの期間(イグニッションONからしばらくの間)であり、また、図6(b)のステップS10における、時間短縮診断の期間は、前記した図8の故障カウンタの値が設定カウント値Nに達するまでの期間の約半分である。
〈実施形態3〉
前記した実施形態1では、図6(b)において、イグニッションON後に読み出した情報が故障情報の場合(ステップS6のYes)は、バックルスイッチ6の時間短縮診断を開始する(ステップS10)ようにしていたが、本実施形態では、図9に示すように、イグニッションON後にEEPROM7aから読み出した情報が故障情報の場合(ステップS6のYes)は、通常の診断時間よりも長くした診断時間でバックルスイッチ6の故障診断(時間延長診断)を開始する(ステップS10’)ようにした。
そして、コントローラ7は、このときにバックルスイッチ6(信号電極36)から故障信号Ec(図4参照)が出力されているか否かを判断して、バックルスイッチ6に故障(断線、短絡等)が発生しているか否かを再度診断する(ステップS11)。以下、前記した実施形態1と同様である。なお、図9のステップS5〜S9(読み出した情報が非故障情報の場合)は、実施形態1における図6(b)のステップS5〜S9と同様である。
このように、本実施形態では、イグニッションスイッチ9のOFF後の所定時間内に行ったバックルスイッチ6の故障診断で、故障が発生していると診断した場合には、イグニッションスイッチ9のON後に行うバックルスイッチ6の故障診断を通常の故障診断のときよりも長い時間をかけて故障診断を行うことにより、より信頼性の高いバックルスイッチ6の故障診断が可能となる。