JP4198802B2 - 溶出制御型農薬粒剤および植物害虫の防除方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、農薬活性原体の溶出速度が制御された溶出制御型農薬粒剤に関し、特に、水易溶性殺虫剤原体の土壌中への溶出速度が制御された、土壌施用の為の溶出制御型農薬粒剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から土壌施用する為の農薬活性原体を含有する製剤として、粒剤が広く用いられている。そして、かかる粒剤を土壌施用する場合においては、作業効率が良いこと及び人体への汚染等が少ない等の理由から、土壌中に農薬活性原体を含有する粒剤を混和して処理する方法が一般的に用いられている。
【0003】
しかしながら、上記の場合において、農薬活性原体が水易溶性農薬原体である場合には、従来公知の製剤化技術では土壌中の水分への水易溶性農薬原体の溶出制御を十分に行うことが困難であり、例えば降雨等の環境の変化により効力の持続性に欠ける場合があった。
【0004】
そこで、農薬活性原体の土壌中での溶出速度を制御する製剤技術の開発が必要となるが、農薬活性原体の溶出を制御する製剤としては、これまでにも種々のものが知られている。例えば、パラフィンワックス等を粒剤中に加えた製剤(特開昭56−169601号,特開昭60−202801号,特開昭63−35504号,特開昭63−45201号,特開平2−288803号,特開平6−107509号,特開平8−92007号,特開平9−110605号)、活性炭及び植物性油を配合した粒剤(特開昭56−169601号)、或いは天然油脂等を配合した製剤(特開平7−242502)等がある。
【0005】
また、本発明に類似する製剤の例として、特開平5−65201号公報に開示された水田除草用粒剤組成物がある。この粒剤は、(a)茎葉吸収型水田用除草活性化合物の1重量部、(b)比重が0.80ないし1未満で粘度が300cps以下であり、水に実質的に不溶性のエステル系油状液体の1〜50重量部、(c)比重が1以上で実質的に水に不溶性の微細固体担体材料の1〜98重量部からなる水田除草用粒剤組成物である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の農薬活性原体の溶出制御する製剤技術によっても、農薬活性原体として水易溶性殺虫剤原体を用いる、土壌施用の為の農薬粒剤の場合には、水易溶性殺虫活性原体の溶出量を的確かつ充分に抑制、制御することができなかった。
【0007】
また、上記特開平5−65201号公報に開示された製剤は、製剤組成としては本発明に類似しているが、農薬活性成分が除草剤であり、主に田植え後の水田の湛水下に水田除草剤として用いられるものである。従って、この技術をそのまま水易溶性殺虫剤の土壌施用の為の製剤に適用することは出来ない。
【0008】
そこで、本発明は、農薬活性原体として水易溶性殺虫剤原体を含有する溶出抑制型農薬粒剤であって、土壌施用した場合に、土壌への水易溶性殺虫剤原体の溶出量を十分にコントロール出来、かつ、長期にわたって優れた殺虫活性を維持することのできる溶出抑制型農薬粒剤、及び該溶出抑制型農薬粒剤を用いる植物害虫の殺虫方法を提供することを目的とする。
【0009】
【解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下に示される農薬粒剤が、特に土壌施用した場合において、土壌への水易溶性殺虫剤原体の溶出量を効果的に制御することができ、長期にわたり優れた殺虫活性を維持することが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、水易溶性殺虫剤原体を難水溶性の脂肪酸エステルに溶解した溶液を、吸油性粒状担体に含浸してなることを特徴とする溶出制御型農薬粒剤である。
【0011】
前記本発明の溶出制御型農薬粒剤において、水易溶性殺虫剤原体としては、20℃に於ける水溶解度が50ppm以上のものを用いるのが好ましい。
【0012】
前記本発明の溶出制御型農薬粒剤において、難水溶性の脂肪酸エステルとしては、融点が50℃以下である脂肪酸エステルを用いるのがより好ましい。
【0013】
また、前記本発明の溶出制御型農薬粒剤において、前記吸油性粒状担体としては、多孔質の粒状担体又は練り込み造粒法により得られた粒状担体であるのが好ましい。
【0014】
また、本発明は、水易溶性殺虫剤原体を難水溶性の脂肪酸エステルに溶解した溶液を、吸油性粒状担体に含浸してなる溶出制御型農薬粒剤を土壌施用することを特徴とする、植物害虫の防除方法を提供する。
【0015】
本発明の溶出抑制型農薬粒剤は、特に土壌施用された場合において、土壌の水分への溶出性をコントロールする機能を有する粒剤形態となっているため、農薬活性成分である水易溶性殺虫剤原体が、長期にわたって優れた殺虫活性が維持された(長い残効性を有する)製剤である。また、本発明の溶出抑制型農薬粒剤を土壌施用する植物害虫の防除方法によれば、有用植物に対する薬害がなく、植物害虫を長期にわたり防除することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
上述したように、本発明は水易溶性殺虫剤原体を難水溶性の脂肪酸エステルに溶解して得られる溶液を、吸油性粒状担体に含浸してなる溶出制御型農薬粒剤である。
【0017】
本発明の溶解制御型農薬粒剤の農薬活性成分である易水溶性殺虫剤原体としては、水に比較的易溶性の物質であり、20℃における水溶解度が50ppm以上である殺虫性化合物であるのが好ましい。また、本発明においては、農薬活性成分として農園芸用殺虫剤原体のほか、易水溶性の農園芸用殺ダニ剤原体、除草剤原体、農園芸用殺菌剤原体、植物生物調節剤原体も用いることができる。
【0018】
本発明に用いることのできる易水溶性殺虫剤原体としては、例えば、(E)−N1−〔(6−クロロ−3−ピリジル)メチル〕−N2−シアノ−N1−メチルアセタミジン〔一般名:アセタミプリド,水溶解度:4200ppm(25℃)〕、O,S−ジメチル−N−アセチルフォスフォロアミドチオエート〔一般名:アセフェート,約650000ppm〕、2,2−ジメチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル−メチルカーバメート・塩酸塩〔一般名:ベンダイオカルブ,水溶解度:26000ppm(25℃)〕、S,S’−2−ジメチルアミノトリメチレン−bis(チオカーバメート)〔一般名:カルタップ,水溶解度:200000ppm(25℃)〕、N2−(4−クロロ−o−トルイル)−N1,N1−ジメチルフォルムアミド;250ppm(20℃)、2,2−ジクロロビニルジメチルフォスフェート〔一般名:DDVP,水溶解度:約1000ppm(室温)〕、2−エチルチオメチルフェニルメチルカーバメート〔一般名:エチオフェンカルブ,水溶解度:1800ppm(20℃)〕、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミン〔一般名:イミダクロプリド,水溶解度:510ppm(20℃)〕、S−メチル−N,N−ジメチル−N−メチルカルバモイルオキシ−1−チオオキサムイミデート〔一般名:オキサミル,水溶解度:280000ppm〕、S−メチル−N−(メチルカルバモイルオキシ)チオアセトイミデート〔一般名:メソミル,水溶解度:58000ppm〕、1,3−ジクロロプロペン〔一般名:D−D,水溶解度:2000ppm〕、(E)−N−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−エチル−N’−メチル−2−ニトロビニリデンジアミン〔一般名:ニテンピラム,水溶解度:約2000ppm〕等を挙げることができる。
【0019】
かかる水易溶性殺虫剤原体は、これらの1種又は2種以上を任意の割合で混合した混合物、或いは該殺虫剤原体と、他の農薬活性成分、例えば、易水溶性の農園芸用殺ダニ剤原体、除草剤原体、農園芸用殺菌剤原体、植物生物調節剤原体との混合物で用いることができる。また、該水易溶性殺虫剤体の配合割合は、本発明の溶出制御型粒剤の全重量に対して、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.1〜10重量%程度である。
【0020】
本発明に於いて用いられる難水溶性脂肪酸エステルは、前記水易溶性殺虫剤原体を均一に溶解し得る難水溶性物質である。この難水溶性脂肪酸エステルは、水易溶性殺虫剤原体が、土壌の水分へ溶出するのを抑制する役割を果たす。
【0021】
かかる脂肪酸エステルとしては、水易溶性殺虫剤原体を溶解し、吸油性粒状担体に含浸せしめる際の取り扱い易さの観点から、融点が50℃以下のものが好ましい。
【0022】
かかる脂肪酸エステルとしては、炭素数が10〜18の脂肪酸のエステルを挙げることができる。具体的には、炭素数が10〜18の高級脂肪酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル等の炭素数1〜6のアルキルエステルを挙げることができる。より具体的には、オレイン酸メチルエステル,オレイン酸エチルエステル,パルミチン酸メチルエステル,パルミチン酸エチルエステル,ステアリン酸メチルエステル,ステアリン酸エチルエステル等が挙げられる。
【0023】
前記脂肪酸エステルは、1種単独又は2種以上を任意の割合で混合した混合物で用いることができる。また、脂肪酸エステルの配合割合は、本発明の溶出制御型粒剤の全重量に対して、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%程度である。
【0024】
本発明に於いて用いられる吸油性粒状担体は、水易溶性殺虫剤原体の脂肪酸エステル溶液を含浸せしめる吸油性物質である。吸油性粒状担体は、水易溶性殺虫剤原体の前記脂肪酸エステル溶液を担持せしめて、固体化し、粒剤化を可能ならしめる役割を果たす。
【0025】
また、吸油性粒状担体は、本発明の溶出制御型農薬粒剤中の有効成分の含有量をより高めることのできる、即ち、水易溶性殺虫剤原体の脂肪酸エステル溶液をより多く含浸せしめることのできる吸油性の高いものが好ましい。
【0026】
かかる吸油性粒状担体としては、例えば、軽石、ベントナイト、珪藻土、バーミキュライト、珪石等を挙げることができる。
前記吸油性担体の粒径は通常、200〜3000μm程度が好ましい。
【0027】
前記吸油性担体の配合割合は、本発明の溶出制御型農薬粒剤の全重量に対して,通常40〜99.9重量%、好ましくは60〜99重量%程度である。
【0028】
さらに本発明の溶出制御型農薬粒剤には、前記水易溶性農薬原体、難水溶性脂肪酸エステル及び吸油性粒状担体の他に、必要に応じてノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、酸化珪素、クレー、ベントナイト、珪藻土等の1種又はこれらの混合物、溶媒等の他の各種添加剤を添加することができる。
【0029】
界面活性剤は、本発明の溶出制御型農薬粒剤が土壌水分へ溶出するのを制御する目的で、酸化珪素、クレー、ベントナイト、珪藻土等は、溶出制御型農薬粒剤を取り扱い易くする目的で、溶媒は、水易溶性殺虫剤原体が脂肪酸エステルへの溶解を助ける目的でそれぞれ添加される。
【0030】
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0031】
前記ノニオン系界面活性剤としては、HLB(hydrophile−lipophile balance)値が好ましくは10以下、より好ましくは7以下であるものを用いることができる。また、前記ノニオン系界面活性剤の配合割合は、本発明の溶出制御型農薬粒剤の全重量に対して、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。
【0032】
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0033】
また、前記アニオン系界面活性剤の配合割合は、本発明の溶出制御型農薬粒剤の全重量に対して、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%である。
【0034】
前記溶媒としては、例えばアイソパーL、アイソパーV、エクゾールD−100(エクソン化学株式会社製)等の石油系直鎖炭化水素、ソルベッソ100,ソルベッソ150,ソルベッソ200(エクソン化学株式会社製)等の石油系芳香族炭化水素、エキセパールMC、エキセパールL−OL(花王株式会社製)等の植物由来のオイル等の非極性溶媒、及びN−メチルピロリドン、シクロヘキサノン、メタノール、イソホロン等の極性溶媒を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0035】
また、前記溶媒の配合割合は、本発明の溶出制御型農薬粒剤の全重量に対して、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0036】
前記酸化珪素は、乾式法及び湿式法で製造される二酸化珪素であり、その吸油量(アマニ油の吸油量)が150ml/100g以上、好ましくは200ml/100g以上のものを用いることができる。
【0037】
前記酸化珪素としては、例えばカープレックス#67、カープレックス#80、カープレックス#1120、カープレックスCS−5、カープレックスCS−7(以上、塩野義製薬株式会社の商品名)等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物で用いることができる。また、前記酸化珪素の配合割合は、本発明の溶出制御型農薬粒剤の全重量に対して、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。
【0038】
本発明に於いては、前記各種添加剤の他に、さらにクレー、ベントナイト、珪藻土等の他の添加物を該粒剤の全重量に対して、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.1〜20重量%の割合で添加することができる。
【0039】
本発明の溶出制御型農薬粒剤は、例えば、次に示す方法により製造することができる。
(方法A)
先ず、(1)所定量の水易溶性殺虫剤原体を所定量の脂肪酸エステルに溶解させ、必要に応じて前記非極性溶媒又はノニオン系界面活性剤を加えた後,該溶液を吸油性粒状担体に含浸させる。次いで、(2)必要に応じて酸化珪素、アニオン系界面活性剤、クレー、珪藻土、ベントナイト等を、得られた含浸物表面に均一に付着させる(或いは散在させる)ことにより製造することができる。
【0040】
(方法B)
或いは、(1)吸放湿性微粉体にアニオン系界面活性剤等を混合し、乾式粉砕し、結合水を添加し、このものをニーダーで練り込み、直径0.5mm〜1.0mmの多穴板の通過させ、乾燥させることによって吸油性粒状担体を得たのち、さらに、(2)必要に応じて溶媒或いはノニオン系界面活性剤を加えた脂肪酸エステルに、水易溶性殺虫剤原体を溶解した溶液を、前記吸油性粒状担体に含浸せしめ、(3)必要に応じて酸化珪素、アニオン系界面活性剤、クレー、珪藻土、ベントナイト等を、該含浸物表面に均一に付着させる(或いは散在させる)ことにより製造することができる。なお、本発明の溶出制御型農薬粒剤は、上記に例示した製造方法に限定されることなく、他の製造方法によっても製造することができる。
【0041】
このようにして得られる本発明の溶出制御型農薬粒剤は、主として、有用植物周辺部の土壌に施用せしめられる。土壌施用する方法としては、土中混和処理、土壌散布処理等がある。
【0042】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、以下に述べるのはあくまで本発明の一実施例であり、用いる水易溶性殺虫剤原体、難水溶性脂肪酸エステル、吸油性粒状担体の種類、及びその配合割合等は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更することができる。
【0043】
実施例1
先ず、(E)−N1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N2−シアノ−N1−メチルアセトアミジン1部を、オレイン酸メチルエステル5部及びN−メチルピロリドン3部の混合溶媒に溶解させた。次いで、この溶液を吸油性粒状担体(石川ライト工業株式会社の商品名「石川ライト3号」を使用)89部に均一に含浸させた。得られた含浸物の表面に、二酸化珪素微粒子(塩野義製薬(株)の商品名「カープレックス#67」を使用)の2部を均一に付着させることにより、実施例1の溶出制御型農薬粒剤を得た。
【0044】
実施例2
先ず、(E)−N1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N2−シアノ−N1−メチルアセトアミジン1部を、オレイン酸メチルエステル7部及びN−メチルピロリドン3部の混合溶媒に溶解させた。次いで、この溶液を吸油性粒状担体(石川ライト工業株式会社の商品名「石川ライト3号」を使用)86部に均一に含浸させた。得られた含浸物の表面に、二酸化珪素微粒子(塩野義製薬(株)の商品名「カープレックス#67」を使用)の3部を均一に付着させることにより、実施例2の溶出制御型農薬粒剤を得た。
【0045】
実施例3
先ず、(E)−N1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N2−シアノ−N1−メチルアセトアミジン1部を、オレイン酸メチルエステル10部及びN−メチルピロリドン3部の混合溶媒に溶解させた。次いで、この溶液を吸油性粒状担体(石川ライト工業株式会社の商品名「石川ライト3号」を使用)82部に均一に含浸させた。得られた含浸物の表面に、二酸化珪素微粒子(塩野義製薬(株)の商品名「カープレックス#67」を使用)の4部を均一に付着させることにより、実施例3の溶出制御型農薬粒剤を得た。
【0046】
実施例4
先ず、2,2−ジクロロビニルジメチルフォスフェート5部をオレイン酸メチルエステル5部に溶解させた。次いで、この溶液を吸油性粒状担体(石川ライト工業株式会社の商品名「石川ライト3号」を使用)86部に均一に含浸させた。得られた含浸物の表面に、二酸化珪素微粒子(塩野義製薬(株)の商品名「カープレックス#67」を使用)の4部を均一に付着させることにより、実施例4の溶出制御型農薬粒剤を得た。
【0047】
実施例5
先ず、2,2−ジクロロビニルジメチルフォスフェート5部をオレイン酸メチルエステル7部に溶解させた。次いで、この溶液を吸油性粒状担体(石川ライト工業株式会社の商品名「石川ライト3号」を使用)83部に均一に吸着させた。得られた含浸物の表面に、二酸化珪素微粒子(塩野義製薬(株)の商品名「カープレックス#67」を使用)の5部を均一に付着させることにより、実施例5の溶出制御型農薬粒剤を得た。
【0048】
実施例6
先ず、2,2−ジクロロビニルジメチルフォスフェート5部をオレイン酸メチルエステル10部に溶解させた。次いで、この溶液を吸油性粒状担体(石川ライト工業株式会社の商品名「石川ライト3号」を使用)79部に均一に吸着させた。得られた含浸物の表面に、二酸化珪素微粒子(塩野義製薬(株)の商品名「カープレックス#67」を使用)の6部を均一に付着させることにより、実施例6の溶出制御型農薬粒剤を得た。
【0049】
比較例1
先ず、(E)−N1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N2−シアノ−N1−メチルアセトアミジン1部をN−メチルピロリドン3部に溶解させた。次いで、得られた溶液を吸油性粒状担体(石川ライト工業株式会社の商品名「石川ライト3号」を使用)94部に均一に吸着させた。得られた含浸物の表面に、二酸化珪素微粒子(塩野義製薬(株)の商品名「カープレックス#67」を使用)の2部を均一に付着させることにより、比較例1の農薬粒剤を得た。
【0050】
比較例2
2,2−ジクロロビニルジメチルフォスフェート5部を、吸油性粒状担体(石川ライト工業株式会社の商品名「石川ライト3号」を使用)93部に均一に吸着させた。次いで、得られた含浸物の表面に、二酸化珪素微粒子(塩野義製薬(株)の商品名「カープレックス#67」を使用)の2部を均一に付着させることにより、比較例2の農薬粒剤を得た。
【0051】
【発明の効果】
以上のようにして得られた実施例1〜6及び比較例1,2の農薬粒剤を用いて、次に示す溶出制御効果試験を行った。
【0052】
溶出制御効果試験
水道水1リットルを入れた溶出試験器(宮本理研工業株式会社製:PJ−6N)のベッセルに、上記実施例及び比較例の各粒剤をそれぞれ2g加え,攪拌羽根を50rpmで回転させた。経時的に水道水中の原体濃度を液体クロマトグラフィーの手法により測定し、溶出率(水道水中の原体濃度/各粒剤中の原体が全て水道水中に溶出したときの原体濃度×100)を算出した。試験結果を下記の表1及び表2に示す。
【0053】
表1は、実施例1〜3及び比較例1の農薬粒剤、即ち、農薬活性成分として(E)−N1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N2−シアノ−N1−メチルアセトアミジンを含有する製剤の試験結果を示している。また、表2は、実施例4〜6及び比較例2の農薬粒剤、即ち、農薬活性成分として、2,2−ジクロロビニルジメチルフォスフェートを含有する製剤の試験結果を示している。なお、表1及び表2において、「実施例1」、「比較例1」等とは、それぞれ実施例1で得られた粒剤、比較例1で得られた粒剤という意味で用いている。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1及び表2に示すように、難水溶性の脂肪酸エステルを含有した本実施例1〜6の各粒剤は、比較例の難水溶性の脂肪酸エステルを含有していない比較例1,2の粒剤に比べて、水易溶性殺虫剤原体の水中への溶出性が著しく制御されていることがわかった。
【0057】
従って、本実施例の溶出制御型農薬粒剤は、特に土壌に施用された場合に、農薬活性成分である水易溶性殺虫剤原体の溶出速度を著しく抑制することができる製剤であり、長期にわたってその殺虫活性を維持することができる、即ち残効力に優れた溶出抑制型農薬粒剤である。
【0058】
以上説明したように、本発明の溶出制御型農薬粒剤は、特に土壌施用の為の農薬粒剤であり、土壌施用された場合に土壌中の水分への水易溶性殺虫剤原体の溶出性を著しく制御することのできるものである。従って、本発明の溶出制御型農薬粒剤は、降雨等による土壌からの水易溶性殺虫剤原体の流出が少なく、残効性に優れた製剤である。
【0059】
また、本発明の溶出抑制型農薬粒剤を土壌施用する植物害虫の防除方法によれば、有用植物に対する薬害がなく、植物害虫を長期にわたり防除することができる。
Claims (2)
- 20℃に於ける水溶解度が50ppm以上の殺虫性化合物を、炭素数が10〜18の高級脂肪酸の、炭素数1〜6のアルキルエステルに溶解した溶液を、軽石、ベントナイト、珪藻土、バームキュライトまたは珪石からなる吸油性粒状担体に含浸してなることを特徴とする、溶出制御型農薬粒剤。
- 請求項1に記載の溶出制御型農薬粒剤を土壌施用することを特徴とする、植物害虫の防除方法。
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