JP4198219B2 - 現像装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上の感光性膜に現像液を供給して現像処理を行う現像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板上に形成された感光性膜に現像処理を行うために現像装置が用いられる。
【0003】
例えば、回転式現像装置は、基板を水平に保持して鉛直軸の周りで回転させる回転保持部と、基板の表面に現像液を供給する現像液吐出ノズルとを備える。現像液吐出ノズルは、水平面内で回動自在に設けられたノズルアームの先端に取り付けられており、基板の上方位置と待機位置との間を移動することができる。
【0004】
現像処理時には、現像液吐出ノズルが待機位置から基板の上方に移動した後、基板上の感光性膜に現像液を供給する。供給された現像液は、基板の回転によって基板の全面に塗り広げられ、感光性膜と接触する。表面張力により基板上に現像液を保持した状態(液盛り)で一定時間基板を静止させることにより感光性膜の現像が行われる。現像液の供給が終了すると、現像液吐出ノズルはノズルアームの回動により基板の上方から退いた待機位置に移動する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来の回転式現像装置では、回転する基板に吐出開始時の現像液が当たることにより基板上の感光性膜が大きな衝撃を受ける。その衝撃で現像液中に気泡が生じ、感光性膜の表面に残留する微小な気泡が現像欠陥となる場合がある。また、吐出開始時の現像液による衝撃で感光性膜が損傷するおそれもある。
【0006】
そこで、スリット状吐出口を有する現像液吐出ノズルから現像液を吐出しながら基板上の一端から他端へ現像液吐出ノズルを直線状に移動させることにより、基板上に現像液を供給する現像方法が提案されている。この現像方法によれば、基板上の感光性膜に衝撃が加わらず、基板上に現像液が均一に供給される。
【0007】
しかしながら、スリット状吐出口を有する現像液吐出ノズルでは、スリット状吐出口の全域にわたって吐出の均一性を確保することが難しい。吐出の均一性が十分でない状態で基板上に現像液を供給すると、基板上に現像液の乗らない部分が生じる現象(液切れ現象)が発生したり、基板上に現像液が一旦乗った後に一時的に現像液が弾く現象(液弾き現象)が発生し易い。それにより、基板面内で現像均一性が悪くなり、現像後のパターン線幅の均一性が低下したり、現像不良が生じることがある。
【0008】
本発明の目的は、均一な現像処理を行うことができる現像装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
第1の発明に係る現像装置は、基板を水平姿勢で保持する基板保持手段と、現像液を吐出するためのスリット状吐出口を有する現像液吐出ノズルと、基板保持手段に静止状態で保持された基板に対して現像液吐出ノズルを相対的に移動させる移動手段とを備え、現像液吐出ノズルは、スリット状吐出口が設けられた平面状の底面を有し、移動手段は、基板保持手段に静止状態で保持された基板の表面に対して現像液吐出ノズルの底面が平行な状態を保つように現像液吐出ノズルを基板に対して相対的に移動させ、スリット状吐出口は、現像液吐出ノズルの移動方向において底面の中心よりも前方側に設けられたものである。
【0010】
第1の発明に係る現像装置においては、現像液吐出ノズルの移動方向においてスリット状吐出口よりも後方側の底面の長さが前方側の底面の長さよりも長くなるので、現像液吐出ノズルのスリット状吐出口から吐出された現像液が現像液吐出ノズルの底面と基板の表面とで形成される微小空間に満たされる際に、現像液が表面張力によりスリット状吐出口の後方側により強く引き寄せられる。
【0011】
それにより、スリット状吐出口の前方側よりも後方側に多くの現像液が供給されるとともに、スリット状吐出口の後方側への現像液の流れが強くなる。その結果、現像液の先行が防止され、かつスリット状吐出口の出口付近での現像液の流れの乱れが小さくなり、基板上への均一な現像液の供給が可能となる。
【0012】
第2の発明に係る現像装置は、第1の発明に係る現像装置の構成において、現像液吐出ノズルのスリット状吐出口の内壁面が親水性を有するものである。
この場合、現像液吐出ノズルのスリット状吐出口の内壁面が親水性を有するので、スリット状吐出口の内壁面での現像液の流動性が高くなる。それにより、現像液吐出ノズルのスリット状吐出口からの現像液の吐出の均一性が確保される。その結果、現像パターンの線幅均一性が向上するとともに、現像不良の発生が防止され、均一な現像処理が行われる。
【0013】
第3の発明に係る現像装置は、第1または第2の発明に係る現像装置の構成において、基板保持手段により保持された基板外の一方側の移動開始位置から現像液吐出ノズルの移動を開始させた後、現像液吐出ノズルが基板保持手段に保持された基板の一方側の端縁に到達するまでにスリット状吐出口から現像液が帯状に垂下するように現像液吐出ノズルによる現像液の吐出を開始させる制御手段とをさらに備えたものである。
【0014】
第4の発明に係る現像装置は、第1〜第3のいずれかの発明に係る現像装置の構成において、制御手段は、現像液吐出ノズルが基板保持手段に保持された基板を通過した後に現像液吐出ノズルによる現像液の吐出を停止させるものである。
【0015】
第5の発明に係る現像装置は、第1〜第4のいずれかの発明に係る現像装置の構成において、現像液吐出ノズルの底面を除く外壁面が撥水性を有するものである。
【0016】
この場合、現像液吐出ノズルの外壁面に現像液が這い上がる現象が抑制される。それにより、現像液吐出ノズルの外壁面での液面の振動による微小な気泡の噛み込みが防止され、微小な気泡の噛み込みによる現像欠陥の発生が防止される。また、現像液吐出ノズルの外壁面に現像液が付着しないので、現像液吐出ノズルの洗浄時に、現像液吐出ノズルの外壁面を洗浄する必要がなくなる。したがって、現像液吐出ノズルの洗浄機構が簡略化される。
【0017】
第6の発明に係る現像装置は、第1〜第5のいずれかの発明に係る現像装置の構成において、現像液吐出ノズルの底面よりも上部の表面が撥水性を有するものである。
【0018】
この場合、現像液吐出ノズルの外壁面に現像液が這い上がる現象が抑制される。それにより、現像液吐出ノズルの外壁面での液面の振動による微小な気泡の噛み込みが防止され、微小な気泡の噛み込みによる現像欠陥の発生が防止される。また、現像液吐出ノズルの外壁面に現像液が付着しないので、現像液吐出ノズルの洗浄時に、現像液吐出ノズルの外壁面を洗浄する必要がなくなる。したがって、現像液吐出ノズルの洗浄機構が簡略化される。
【0019】
第7の発明に係る現像装置は、第1〜第6のいずれかの発明に係る現像装置の構成において、現像液吐出ノズルの底面が親水性を有するものである。
【0020】
この場合、現像液吐出ノズルの底面で保液性が良好となり、現像液吐出ノズルの底面と基板の表面との間に十分な液溜まりが形成される。それにより、現像液吐出ノズルの底面と基板の表面との間で液切れ現象がさらに起こりにくくなる。
【0021】
第8の発明に係る現像装置は、第1〜第7のいずれかの発明に係る現像装置の構成において、現像液吐出ノズルは、スリット状吐出口の前方側および後方側に傾斜面を有し、現像液吐出ノズルの傾斜面が撥水性を有するものである。
【0022】
この場合、現像液吐出ノズルの外壁面に現像液が這い上がる現象が抑制される。それにより、現像液吐出ノズルの外壁面での液面の振動による微小な気泡の噛み込みが防止され、微小な気泡の噛み込みによる現像欠陥の発生が防止される。また、現像液吐出ノズルの外壁面に現像液が付着しないので、現像液吐出ノズルの洗浄時に、現像液吐出ノズルの外壁面を洗浄する必要がなくなる。したがって、現像液吐出ノズルの洗浄機構が簡略化される。
【0023】
第9の発明に係る現像装置は、基板を水平姿勢で保持する基板保持手段と、現像液を吐出する吐出口が設けられた平面状の底面を有する現像液吐出ノズルと、基板保持手段に静止状態で保持された基板の表面に対して現像液吐出ノズルの底面が平行な状態を保つように現像液吐出ノズルを基板に対して現像液吐出ノズルを相対的に移動させる移動手段とを備え、現像液吐出ノズルの吐出口の内壁面が親水性を有し、吐出口は、現像液吐出ノズルの移動方向において底面の中心よりも前方側に設けられたものである。
【0024】
第9の発明に係る現像装置においては、基板保持手段に静止状態で保持された基板に対して現像液吐出ノズルが相対的に移動しつつ現像液吐出ノズルの吐出口から基板上に現像液が吐出される。
【0025】
この場合、現像液吐出ノズルの吐出口の内壁面が親水性を有するので、吐出口の内壁面での現像液の流動性が高くなる。それにより、現像液吐出ノズルの吐出口からの現像液の吐出の均一性が確保される。その結果、現像パターンの線幅均一性が向上するとともに、現像不良の発生が防止され、均一な現像処理が行われる。
【0026】
また、現像液吐出ノズルの移動方向において吐出口よりも後方側の底面の長さが前方側の底面の長さよりも長くなるので、現像液吐出ノズルの吐出口から吐出された現像液が現像液吐出ノズルの底面と基板の表面とで形成される微小空間に満たされる際に、現像液が表面張力により吐出口の後方側により強く引き寄せられる。
【0027】
それにより、吐出口の前方側よりも後方側に多くの現像液が供給されるとともに、吐出口の後方側への現像液の流れが強くなる。その結果、現像液の先行が防止され、かつ吐出口の出口付近での現像液の流れの乱れが小さくなり、基板上への均一な現像液の供給が可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施例における現像装置の平面図、図2は図1の現像装置の主要部のX−X線断面図、図3は図1の現像装置の主要部のY−Y線断面図である。
【0029】
図2および図3に示すように、現像装置は、基板100を水平姿勢で吸引保持する基板保持部1を備える。基板保持部1は、モータ2の回転軸3の先端部に固定され、鉛直方向の軸の周りで回転可能に構成されている。基板保持部1の周囲には、基板100を取り囲むように円形の内側カップ4が上下動自在に設けられている。また、内側カップ4の周囲には、正方形の外側カップ5が設けられている。
【0030】
図1に示すように、外側カップ5の両側にはそれぞれ待機ポット6,7が配置され、外側カップ5の一方の側部側にはガイドレール8が配設されている。また、ノズルアーム9がアーム駆動部10によりガイドレール8に沿って走査方向Aおよびその逆方向に移動可能に設けられている。外側カップ5の他方の側部側には、純水を吐出する純水吐出ノズル12が矢印Rの方向に回動可能に設けられている。
【0031】
ノズルアーム9には、下端部にスリット状吐出口15を有する現像液吐出ノズル11がガイドレール8と垂直に取り付けられている。これにより、現像液吐出ノズル11は、待機ポット6の位置から基板100上を通過して待機ポット7の位置まで走査方向Aに沿って直線状に平行移動可能となっている。
【0032】
図2に示すように、現像液吐出ノズル11には、現像液供給系12により現像液が供給される。制御部13は、モータ2の回転動作、アーム駆動部10による現像液吐出ノズル11の走査および現像液吐出ノズル11からの現像液の吐出を制御する。
【0033】
本実施例では、基板保持部1が基板保持手段に相当し、アーム駆動部10が移動手段に相当する。
【0034】
図4は現像液吐出ノズル11の断面図である。また、図5は現像液吐出ノズル11の底面図である。
【0035】
現像液吐出ノズル11のノズル本体部16は平坦な底面17を有する。ノズル本体部16は、ステンレス鋼、石英ガラス、パイレックスガラス、セラミックス(例えばアルミナ、SiC、αC)等の比較的硬質な親水性材料により形成されている。このノズル本体部16には、鉛直下向きに延びかつ底面17で開口するスリット状吐出口15が設けられている。
【0036】
ノズル本体部16の底面17を除く外壁面18は、PVC(ポリ塩化ビニル)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂系の撥水性材料層20でコーティングされている。
【0037】
スリット状吐出口15の内壁面21およびノズル本体部16の底面17では、親水性材料が露出している。
【0038】
図5に示すように、スリット状吐出口15は現像液吐出ノズル11の走査方向Aと垂直に配置される。スリット状吐出口15のスリット幅tは0.05〜1.0mmであり、本実施例では0.1mmである。また、スリット状吐出口15の吐出幅Lは、処理対象となる基板100の直径と同じかまたはそれよりも大きく設定され、直径8インチの基板100を処理する場合には、本実施例では210mmに設定される。
【0039】
また、スリット状吐出口15は、現像液吐出ノズル11の走査方向Aにおいて底面17の中心よりも前方側に設けられている。スリット状吐出口15の前方側の底面17(以下、前方側底面17aと呼ぶ)の長さaは0.5〜2mmに設定され、本実施例では1mmに設定される。また、スリット状吐出口15の後方側の底面17(以下、後方側底面17bと呼ぶ)の長さbは1〜5mmに設定され、本実施例では3mmに設定される。
【0040】
現像液吐出ノズル11は、底面17が基板100の表面に対して平行な状態を保つように走査方向Aに走査される。スリット状吐出口15と基板100の表面との間隔は、0.2〜5mm、より好ましくは0.5〜2mmであり、本実施例では1mmである。
【0041】
次に、図6および図7を参照しながら図1の現像装置の動作を説明する。現像処理時には、基板100は基板保持部1により静止状態で保持されている。
【0042】
待機時には、現像液吐出ノズル11は、待機ポット6内の位置P0に待機している。現像処理時には、現像液吐出ノズル11が上昇した後、走査方向Aに移動し、外側カップ5内の走査開始位置P1で下降する。
【0043】
その後、現像液吐出ノズル11は、走査開始位置P1から所定の走査速度で走査を開始する。この時点では、現像液吐出ノズル11からまだ現像液の吐出は行わない。本実施例では、走査速度は10〜500mm/秒とする。
【0044】
現像液吐出ノズル11の走査開始後、現像液吐出ノズル11のスリット状吐出口15が基板100上に到達する前に、吐出開始位置P2にて所定の流量で現像液吐出ノズル11による現像液の吐出を開始する。本実施例では、現像液の流量は1.5L/分とする。
【0045】
現像液吐出ノズル11は、現像液を吐出しながら吐出開始位置P2から基板100上を走査方向Aに直線状に移動する(図7参照)。これにより、基板100の全面に現像液が連続的に供給される。供給された現像液は、表面張力により基板100上に保持される。
【0046】
現像液吐出ノズル11が基板100上を通過した後、基板100上から外れた吐出停止位置P3で現像液吐出ノズル11による現像液の吐出を停止させる。そして、現像液吐出ノズル11が外側カップ5内の走査停止位置P4に到達した時点で現像液吐出ノズル11の走査を停止させる。
【0047】
その後、現像液吐出ノズル11は、走査停止位置P4で上昇した後、他方の待機ポット7の位置P5まで移動し、待機ポット7内に下降する。
【0048】
基板100上に現像液が供給された状態を一定時間維持し、現像を進行させる。このとき、モータ2により基板保持部1を回転駆動し、基板100を回転させてもよい。その後、純水吐出ノズル12により純水を基板100上に供給しながら基板100を高速回転させることにより基板100上の現像液を振り切り、基板100を乾燥させて現像処理を終了する。
【0049】
図8は現像液吐出ノズル11からの現像液の吐出状態を示す正面図である。現像液の吐出直後には、図8(a)に示すように、現像液がスリット状吐出口15から滴状に滲み出る。現像液の吐出から一定時間が経過すると、図8(b)に示すように、滴状の現像液がつながってスリット状吐出口15に沿って現像液が帯状に形成される。
【0050】
上記の走査開始位置P1は、現像液吐出ノズル11が走査開始から基板100の端縁に到達するまでに走査速度が所定の速度に達し、かつ図8(b)に示すようにスリット状吐出口15の現像液が帯状になるための時間が確保されるように設定する。例えば、走査開始位置P1は、基板100の端縁から走査方向Aと反対方向に10〜100mm程度離れた位置に設定する。本実施例では、走査開始位置P1は基板100の端縁から50mm離れた位置に設定する。
【0051】
また、吐出開始位置P2は、現像液吐出ノズル11の走査速度および現像液の吐出流量に応じて、現像液吐出ノズル11が基板100の端縁に到達するまでに現像液の吐出状態が帯状になるための時間が確保されるように設定する。
【0052】
走査速度が速くなれば、現像液吐出ノズル11が走査開始位置P1から基板100の端縁に到達するまでの時間が短くなるため、吐出開始位置P2を走査開始位置P1に近づける。例えば、走査速度が100mm/秒の場合には走査開始時点から0.3秒後に現像液の吐出を開始し、走査速度が30mm/秒の場合には走査開始時点から1.3秒後に現像液の吐出を開始する。
【0053】
また、現像液の吐出流量が多い場合には、現像液の吐出状態が短時間で帯状になるので、吐出開始位置P2を基板100の端縁に近づける。例えば、現像液の吐出流量が1.5L/分であり、走査速度が70mm/秒のときには、現像液吐出ノズル11が基板100の端縁に到達する0.1〜1.0秒(例えば0.2秒)前に現像液の吐出を開始する。
【0054】
なお、現像液の無駄な消費量を低減するためには、現像液吐出ノズル11が基板100の端縁に達するまでに現像液の吐出状態が帯状になる範囲で、吐出開始位置P2を基板100の端縁に近づけることが望ましい。
【0055】
図9は基板100上での現像液吐出ノズル11の走査を示す断面図である。
上記のように、ノズル本体部16に設けられたスリット状吐出口15の内壁面21が親水性材料で形成されているので、スリット状吐出口15の内壁面21での現像液の流動性が高くなる。それにより、スリット状吐出口15の全域にわたって現像液の吐出の均一性が確保される。その結果、現像パターンの線幅均一性が向上するとともに、現像不良の発生が防止される。
【0056】
また、上記のように、現像液吐出ノズル11は、底面17が基板100の表面に対して平行な状態を保つように走査方向Aに移動する。この場合、基板100の表面と現像液吐出ノズル11の底面17との間に互いに平行な平面で挟まれた微小空間が形成され、この微小空間にスリット状吐出口15から現像液が供給される。現像液は毛細管現象によりこの微小空間に速やかに満たされる。
【0057】
そのため、この微小空間に満たされた現像液により基板100上への現像液の供給がより均一化され、液切れ現象や液弾き現象が十分に抑えられる。その結果、現像パターンの線幅均一性がさらに向上するとともに、現像不良の発生が十分に防止される。
【0058】
加えて、ノズル本体部16が比較的硬質の親水性材料からなるので、高い加工精度が得られ、経時変化にも強い。したがって、良好な吐出均一性が安定して得られる。
【0059】
図10(a)〜(f)は本実施例の現像液吐出ノズル11を走査方向Aに移動させた場合における現像液の状態の時間的変化を示す図、図11(a)〜(f)は比較例の現像液吐出ノズル11aを走査方向Aに移動させた場合における現像液の状態の時間的変化を示す図である。図10および図11は、数値計算によるシミュレーションにより得られたものである。なお、比較例の現像液吐出ノズル11aでは、スリット状吐出口15が走査方向Aにおいて現像液吐出ノズル11aの底面の中心よりも後方側に設けられている。
【0060】
図10(a)〜(f)に示すように、本実施例の現像液吐出ノズル11では、走査方向Aにおいてスリット状吐出口15の前方側よりも後方側に多くの現像液が供給され、スリット状吐出口15の後方側に良好な液盛りが行われる。
【0061】
図11(a)〜(f)に示すように、比較例の現像液吐出ノズル11aでは、走査方向Aにおいてスリット状吐出口15の後方側よりも前方側に多くの現像液が供給され、スリット状吐出口15の後方側の現像液の量が不足する。これにより、液切れ現象が生じ易くなる。
【0062】
図12は本実施例の現像液吐出ノズル11を走査方向Aに移動させた場合における流体速度ベクトルを示す図、図13は比較例の現像液吐出ノズル11aを走査方向Aに移動させた場合における流体速度ベクトルを示す図である。図12および図13は、数値計算によるシミュレーションにより得られたものである。
【0063】
図12に示すように、本実施例の現像液吐出ノズル11では、全体的にスリット状吐出口15の後方への流れが強くなっている。一方、図13に示すように、比較例の現像液吐出ノズル11aでは、スリット状吐出口15の前方側の底面17の表面張力により前方への流れが強くなり、後方への流れが弱くなっている。これにより、スリット状吐出口15の出口付近で流れの乱れが大きくなっている。
【0064】
上記のように、本実施例の現像液吐出ノズル11では、後方側底面17bの長さが前方側底面17aの長さよりも長いので、現像液が表面張力により後方側底面17bと基板100の表面との間の空間により強く引き寄せられる。それにより、スリット状吐出口15の前方側よりも後方側に多くの現像液が供給されるとともに、スリット状吐出口15の後方側への現像液の流れが強くなる。その結果、現像液の先行による微小な気泡の発生が防止され、かつスリット状吐出口15の出口付近での現像液の流れの乱れが小さくなり、基板100上への均一な現像液の供給が可能となる。
【0065】
なお、現像液吐出ノズル11の外壁面18に現像液が這い上がると、外壁面18で重力との相互作用により現像液の液面が振動する現象が発生する。現像液の液面の振動は、現像液が基板100の表面と接触する部分での微小な気泡の噛み込みを誘発し、現像欠陥の原因となる。
【0066】
本実施例の現像液吐出ノズル11では、ノズル本体部16の外壁面18が撥水性材料層20でコーティングされているので、現像液吐出ノズル11の外壁面18に現像液が這い上がる現象が抑制される。したがって、現像液吐出ノズル11の外壁面18での現像液の液面の振動による微小な気泡の噛み込みが防止され、微小な気泡の噛み込みによる現像欠陥の発生が防止される。また、現像液吐出ノズル11の外壁面18に現像液が付着しないので、現像液吐出ノズル11の洗浄時に、現像液吐出ノズル11の底面17のみを洗浄すればよい。したがって、水洗機構の構造が簡単となる。
【0067】
さらに、現像液吐出ノズル11の底面17が親水性材料により形成されているので、現像液吐出ノズル11の底面17における保液性が良好となり、現像液吐出ノズル11の底面17と基板100の表面との間に十分な液溜まりが形成される。それにより、スリット状吐出口15からの現像液の吐出の均一性が良くない場合でも、現像液吐出ノズル11の底面17と基板100の表面との間で液切れが発生することがない。
【0068】
また、本実施例の現像装置では、現像液吐出ノズル11が静止した基板100上に到達する前に現像液の吐出が開始されるので、吐出開始時の現像液が基板100に衝撃を与えることが回避される。それにより、現像液中の気泡の発生が抑制され、現像欠陥の発生が防止される。
【0069】
また、現像液吐出ノズル11の移動中に空気に接触するスリット状吐出口15付近の現像液が基板100外に廃棄され、現像液吐出ノズル11が基板100上に到達した時点で現像液吐出ノズル11から新しい現像液が静止した基板100上に供給される。それにより、変質した現像液により現像欠陥が発生することが防止されるとともに、乾燥した現像液によるパーティクルが基板100上の感光性膜の表面に付着することが防止される。
【0070】
さらに、現像液吐出ノズル11が静止した基板100上をスリット状吐出口15と基板100の上面とが近接した状態で水平方向に直線状に平行移動し、スリット状吐出口15に形成された帯状の現像液が基板100の表面に連続的に接触するので、基板100の表面に衝撃が加わることなく基板100の全面に現像液が均一に供給される。
【0071】
また、現像液吐出ノズル11が基板100上を通過するまで現像液の供給が続けられるので、吐出停止時の衝撃による液盛り中の現像液への悪影響が防止される。その結果、現像欠陥の発生が抑制されるとともに、現像後の感光性膜パターンの線幅均一性が向上する。
【0072】
また、現像液吐出ノズル11が基板100上を通り過ぎた後に現像液の吐出が停止されるので、吐出停止時の現像液の液だれにより基板100上の感光性膜に衝撃が加わることが防止される。したがって、現像欠陥の発生や感光性膜パターンの線幅均一性の劣化が防止される。
【0073】
なお、本実施例では、現像液吐出ノズル11のノズル本体部16を親水性材料により形成し、ノズル本体部16の外壁面18に撥水性材料層20をコーティングしているが、ノズル本体部16の外壁面18に他の方法で撥水性処理を行ってもよい。また、ノズル本体部16を他の材料により形成し、スリット状吐出口15の内壁面21およびノズル本体部16の底面17に親水性処理を行い、外壁面18に撥水性処理を行ってもよい。
【0074】
図14は本発明の他の実施例における現像液吐出ノズルの断面図である。
図14の現像液吐出ノズル31のノズル本体部36は、走査方向Aにおいて前方側の外壁面38、前方側の傾斜面39、後方側の外壁面40および後方側の傾斜面41を備える。ノズル本体部36は、ステンレス鋼、石英ガラス、パイレックスガラス、セラミックス(たとえばアルミナ、SiC、αC)等の比較的硬質な親水性材料により形成されている。ノズル本体部36には、鉛直下向きに延びかつ前方側の傾斜面39と後方側の傾斜面41との境界部で開口するスリット状吐出口35が設けられている。
【0075】
ノズル本体部36の外壁面38,40および傾斜面39,41は、PVC、PPS、PTFE等の樹脂系の撥水性材料層32でコーティングされている。スリット状吐出口35の内壁面33では、親水性材料が露出している。
【0076】
スリット状吐出口35は現像液吐出ノズル31の走査方向Aと垂直に配置される。スリット状吐出口35のスリット幅および吐出幅は、図5に示したスリット状吐出口15と同様である。
【0077】
本実施例の現像液吐出ノズル31においても、ノズル本体部36に設けられたスリット状吐出口35の内壁面33が親水性材料で形成されているので、スリット状吐出口35の内壁面33での現像液の流動性が高くなる。それにより、スリット状吐出口35の全域にわたって現像液の吐出の均一性が確保される。その結果、現像パターンの線幅均一性が向上するとともに、現像不良の発生が防止される。
【0078】
加えて、ノズル本体部36が比較的硬質の親水性材料からなるので、高い加工精度が得られ、経時変化にも強い。したがって、良好な吐出均一性が安定して得られる。
【0079】
なお、本実施例では、現像液吐出ノズル31のノズル本体部36を親水性材料により形成し、ノズル本体部36の外壁面38,40および傾斜面39,41に撥水性材料層32をコーティングしているが、ノズル本体部36の外壁面38,40および傾斜面39,41に他の方法で撥水性処理を行ってもよい。また、ノズル本体部36を他の材料により形成し、スリット状吐出口35の内壁面33に親水性処理を行い、ノズル本体部36の外壁面38,40および傾斜面39,41に撥水性処理を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における現像装置の平面図である。
【図2】図1の現像装置の主要部のX−X線断面図である。
【図3】図1の現像装置の主要部のY−Y線断面図である。
【図4】現像液吐出ノズルの断面図である。
【図5】現像液吐出ノズルの底面図である。
【図6】図1の現像装置の動作を説明するための図である。
【図7】基板上での現像液吐出ノズルの走査を示す平面図である。
【図8】現像液吐出ノズルからの現像液の吐出状態を示す正面図である。
【図9】基板上での現像液吐出ノズルの走査を示す断面図である。
【図10】実施例の現像液吐出ノズルを走査方向に移動させた場合における現像液の状態の時間的変化のシミュレーション結果を示す図である。
【図11】比較例の現像液吐出ノズルを走査方向に移動させた場合における現像液の状態の時間的変化のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】実施例の現像液吐出ノズルを走査方向に移動させた場合における流体速度ベクトルのシミュレーション結果を示す図である。
【図13】比較例の現像液吐出ノズルを走査方向に移動させた場合における流体速度ベクトルのシミュレーション結果を示す図である。
【図14】本発明の他の実施例における現像液吐出ノズルの断面図である。
【符号の説明】
1 基板保持部
4 内側カップ
5 外側カップ
8 ガイドレール
9 ノズルアーム
10 ノズル駆動部
11,31 現像液吐出ノズル
12 現像液供給系
13 制御部
15,35 スリット状吐出口
16 ノズル本体部
17 底面
17a 前方側底面
17b 後方側底面
18,38,40 外壁面
20 撥水性材料層
21,33 内壁面
39,41 傾斜面
Claims (9)
- 基板を水平姿勢で保持する基板保持手段と、
現像液を吐出するためのスリット状吐出口を有する現像液吐出ノズルと、
前記基板保持手段に静止状態で保持された基板に対して前記現像液吐出ノズルを相対的に移動させる移動手段とを備え、
前記現像液吐出ノズルは、前記スリット状吐出口が設けられた平面状の底面を有し、
前記移動手段は、前記基板保持手段に静止状態で保持された基板の表面に対して前記現像液吐出ノズルの前記底面が平行な状態を保つように前記現像液吐出ノズルを前記基板に対して相対的に移動させ、
前記スリット状吐出口は、前記現像液吐出ノズルの移動方向において前記底面の中心よりも前方側に設けられたことを特徴とする現像装置。 - 前記現像液吐出ノズルの前記スリット状吐出口の内壁面が親水性を有することを特徴とする請求項1記載の現像装置。
- 前記基板保持手段により保持された基板外の一方側の移動開始位置から前記現像液吐出ノズルの移動を開始させた後、前記現像液吐出ノズルが前記基板保持手段に保持された基板の前記一方側の端縁に到達するまでに前記スリット状吐出口から現像液が帯状に垂下するように前記現像液吐出ノズルによる現像液の吐出を開始させる制御手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1または2記載の現像装置。
- 前記制御手段は、前記現像液吐出ノズルが前記基板保持手段に保持された基板を通過した後に前記現像液吐出ノズルによる現像液の吐出を停止させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の現像装置。
- 前記現像液吐出ノズルの前記底面を除く外壁面が撥水性を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の現像装置。
- 前記現像液吐出ノズルの前記底面よりも上部の表面が撥水性を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の現像装置。
- 前記現像液吐出ノズルの前記底面が親水性を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の現像装置。
- 前記現像液吐出ノズルは、前記スリット状吐出口の前方側および後方側に傾斜面を有し、
前記現像液吐出ノズルの前記傾斜面が撥水性を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の現像装置。 - 基板を水平姿勢で保持する基板保持手段と、
現像液を吐出する吐出口が設けられた平面状の底面を有する現像液吐出ノズルと、
前記基板保持手段に静止状態で保持された基板の表面に対して前記現像液吐出ノズルの前記底面が平行な状態を保つように前記現像液吐出ノズルを前記基板に対して前記現像液吐出ノズルを相対的に移動させる移動手段とを備え、
前記現像液吐出ノズルの前記吐出口の内壁面が親水性を有し、
前記吐出口は、前記現像液吐出ノズルの移動方向において前記底面の中心よりも前方側に設けられたことを特徴とする現像装置。
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