JP4197128B2 - 小型艇の排気装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型艇の排気装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の小型艇の排気装置は、艇体内に備えたエンジンから延びた排気管の途中にウォーターマフラーを備え、このウォーターマフラーは複数の膨張室を有している(例えば、特許文献1参照)。
また、ウォーターマフラーを2つ備えているものもある(例えば、特許文献2参照)
【0003】
【特許文献1】
特開平10−212936号公報(要約、0027段落、図1,図3)
【特許文献2】
特開平8−119196公報(要約、0012段落、図2)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の排気装置は、そのウォーターマフラーが複数の膨張室を有しているので、比較的高周波数域の排気音を低減させるのには適していると考えられる。
しかしながら、小型艇において実際に排気音が気になるのはエンジンの回転数が約3000〜7000rpmの領域(例えば4サイクル4気筒エンジンの場合は100〜200Hz程度の領域)である。しかも、小型艇は、排気中に冷却水を排出しているため(上記特許文献1,2参照)、排気温度は100℃以下となり、そのような状況では高周波音は発生しないということが分かった。
すなわち、従来の小型艇の排気装置では、本来必要ではない複数の膨張室を備えているばかりでなく、小型艇において最も気になる低周波数域の排気音を有効に低減させることはできないという課題があった。
また、2つマフラーがあると、1つは低周波を低減させることができるが、容量が倍になり、狭い艇内でのレイアウトが困難なうえコストも倍になるという課題があった。
【0005】
この発明の目的は、以上のような課題を解決し、低周波数域の排気音を有効に低減させることができる小型艇の排気装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の小型艇の排気装置は、艇体内に備えたエンジンから延びた排気管の途中にウォーターマフラーを備えた小型艇において、
前記ウォーターマフラー内を単一の膨張室と、レゾネーターチャンバーとに区画し、その膨張室に、エンジンに連結した前側排気管と、艇外に開ロした後側排気管とを連接するとともに,前記膨張室内に開ロした前側排気管と後側排気管との間において、膨張室内の上側に抑水板を設けたことを特徴とする
【0007】
【作用効果】
請求項1記載の小型艇の排気装置は、艇体内に備えたエンジンから延びた排気管の途中にウォーターマフラーを備えた小型艇において、前記ウォーターマフラー内を単一の膨張室と、レゾネーターチャンバーとに区画し、その膨張室に、エンジンに連結した前側排気管と、艇外に開ロした後側排気管とを連接したので、この小型艇の排気装置によれば、次のような作用効果が得られる。
すなわち、小型艇内におけるレイアウト上限られた容量しかとれないウォーターマフラーの膨張室を単一としてその容量の増大化を図るとともに、この膨張室に、エンジンに連結した前側排気管と、艇外に開ロした後側排気管とを連接することによって、低周波数域の排気音に対する減衰作用を向上させることができる。また、同ウォーターマフラー内に、レゾネーターチャンバーを区画して設けることにより、低周波数域の排気音を一層低減させることができる。
したがって、この排気装置によれば、小型艇において最も気になる低周波数域の排気音を有効に低減させることができる。
しかも、ウォーターマフラー内を単一の膨張室と、レゾネーターチャンバーとに区画してあるので、そのレゾネーターチャンバーをウォーターマフラーとは別に設ける必要もなくなり、排気装置全体としての小型化を図ることもできる。したがってまた、狭い艇内でのレイアウトも容易になり、コストも低減できる。
すなわち、この排気装置によれば、ウォーターマフラーおよび排気装置全体の小型化を図ることができると同時に、かつ、低コストで、小型化を図ったにもかかわらず、小型艇において最も気になる低周波数域の排気音を有効に低減させることができる。
請求項2記載の小型艇の排気装置によれば、請求項1記載の小型艇の排気装置において、前記膨張室内に開ロした前側排気管と後側排気管との間において、膨張室内の上側に抑水板を設けたので、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、上記のようにウォーターマフラー内の膨張室を大容量とし、この膨張室に、エンジンに連結した前側排気管と、艇外に開ロした後側排気管とを連接した場合において、仮に何らの方策も講じないとしたならば、小型艇が転覆した際、膨張室内における水暴れが大きくなり、前側排気管を通じてエンジン側に水が逆流してしまうおそれが大きくなる。
これに対し、この請求項2記載の小型艇の排気装置によれば、膨張室内に開ロした前側排気管と後側排気管との間において、膨張室内の上側に抑水板を設けてあるので、小型艇転覆時に、この抑水板によって、水暴れが抑制され、結果として、エンジン側に水が逆流するおそれが低減される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る小型艇の排気装置の一実施の形態を用いた小型艇の一例を示す概略側面図である。
【0009】
図1に示すように、この小型艇10は、鞍乗り型小型艇であり、艇体11上のシート12に乗員が座り、スロットルレバー付きの操舵ハンドル13を握って操行可能である。
艇体11は、ハル14とデッキ15とを接合して内部に空間16を形成した浮体構造となっている。空間16内において、ハル14上には、エンジン20が搭載され、このエンジン20で駆動される推進手段としてのジェットポンプ(ジェット推進ポンプ)30がハル14後部に設けられている。
【0010】
ジェットポンプ30は、船底に開口した取水口17から艇体後端に開口した噴流口31およびノズル32に至る流路33と、この流路33内に配置されたインペラ34とを有しており、インペラ34のシャフト35がエンジン20の出力軸20aに連結されている。したがって、エンジン20によりインペラ34が回転駆動されると、取水口17から取り入れられた水が噴流口31からノズル32を経て噴出され、これによって艇体11が推進される。エンジン20の駆動回転数、すなわちジェットポンプ30による推進力は、前記操作ハンドル13のスロットルレバー(図示せず)の回動操作によって操作される。ノズル32は、図示しない操作ワイヤーで操作ハンドル13と連係されていて、ハンドル13の操作で回動操作され、これによって進路を変更することができる。
【0011】
エンジン20はDOHC型で直列4気筒のドライサンプ式4サイクルエンジンであり、そのクランクシャフト20aが艇体11の前後方向に沿うように配置されている。
エンジン20の後方にはターボチャージャ24が配置され、このターボチャージャ24のタービン部にエンジン排気マニホルドの排気出口が接続されている。
ターボチャージャ24のタービン部にてタービンを回転させた排気は、それぞれウォータジャケット付きの第1排気管51,転覆時の水の逆流(ターボチャージャ24等への水の侵入)を防止するための逆流防止室52,および第2排気管53(前側排気管)を通じてウォーターマフラ60へと排出され、さらにウォーターマフラ60から、艇外に開ロした排気・排水管(後側排気管)54を経てジェットポンプ30がおさめられるポンプ室へと排出される。
したがって、エンジン20の排気は、ウォータジャケットを有する排気管(この実施の形態では上記第1排気管51,逆流防止室52,および第2排気管53)を通じてそのウォータジャケットを通過した水とともに、ウォータマフラ60内に排出されることとなる。
【0012】
図2はウォーターマフラー60を示す図で、(a)は部分切断側面図、(b)は図(a)における部分省略b−b断面図である。
このウォーターマフラー60は、その内部が、単一の膨張室61と、レゾネーターチャンバー62とに区画されており、その膨張室61に、エンジン20に連結した前側排気管53と、艇外に開ロした後側排気管54とが接続される。上述したように排気ガスGと冷却水Wは、前側排気管53からウォーターマフラー60内に導入され、ウォーターマフラー60から後側排気管54を通じて艇外へと排出される。
ウォーターマフラー60には、膨張室61内に開ロした前側排気管53と後側排気管54との間において、膨張室61内の上側に、抑水板63を設けてある。
レゾネーターチャンバー62は、低周波数域(100〜200Hz)の減衰量が大きい特性を持っている。
64は膨張室61とレゾネーターチャンバー62とを連通している連通管、65は膨張室61とレゾネーターチャンバー62とを連通している連通孔である。
【0013】
このウォーターマフラー60は、第1の筒状体70,第2の筒状体80,第3の筒状体90,および円板100を備えている。
第1の筒状体70は、その前面71が閉塞されており、後面72が開口している。第1の筒状体70には、その上部に、前側排気管53を連結するための連結管73が溶接等により接続されている。後面72には円板100が設けられている。円板100は、その円周部が90度に屈曲されている(屈曲部を符号101で示す)。円板100の略下半分が図2(b)に示すように半円状に打ち抜かれており、この打ち抜き部が半円状の開口102となっているとともに、上部が前記抑水板63を形成している。このような円板100が、その屈曲部101を第1の筒状体70の開口72の内円周部に溶接等することにより第1の筒状体70の後部に接合されている。
第2の筒状体80は、その前面81が開口している。後壁82には連通管64が溶接等により設けられているとともに、その下方において連通口65が開けられている。また、第2の筒状体80の上部には、後側排気管54を連結するための連結管83が溶接等により接続されている。このような第2の筒状体80の前部円周部を前記円板100(および/または第1の筒状体70の後部)に溶接等で接合することにより第1の筒状体70と第2の筒状体80とが接合され、単一の膨張室61が形成されている。
第3の筒状体90は、その前面91が開口しているとともに、後面92が閉塞されている。このような第3の筒状体90の前部円周部を第2の筒状体80の後部円周部に溶接等で接合することによりレゾネーターチャンバー62が形成されている。
図2において、W1は、前側排気管53から排気とともにウォーターマフラー60内に排出された水の水面を示している。抑水板63の下端(開口102の上端)103は水面W1よりも上方に位置しており、連通管64も水面W1よりも上方に位置している。連通口65は水面W1よりも下方に位置している。
【0014】
以上のような小型艇の排気装置は、艇体11内に備えたエンジン20から延びた排気管の途中にウォーターマフラー60を備え、このウォーターマフラー60内を単一の膨張室61と、レゾネーターチャンバー62とに区画し、その膨張室61に、エンジン20に連結した前側排気管53と、艇外に開ロした後側排気管54とを連接したので、この小型艇の排気装置によれば、次のような作用効果が得られる。
すなわち、小型艇内におけるレイアウト上限られた容量しかとれないウォーターマフラー60の膨張室を単一の膨張室61としてその容量の増大化を図るとともに、この膨張室61に、エンジン20に連結した前側排気管53と、艇外に開ロした後側排気管54とを連接することによって、低周波数域の排気音に対する減衰作用を向上させることができる。また、同ウォーターマフラー60内に、レゾネーターチャンバー62を区画して設けることにより、低周波数域の排気音を一層低減させることができる。
したがって、この排気装置によれば、小型艇において最も気になる低周波数域の排気音を有効に低減させることができる。
しかも、ウォーターマフラー60内を単一の膨張室61と、レゾネーターチャンバー62とに区画してあるので、そのレゾネーターチャンバー62をウォーターマフラーとは別に設ける必要もなくなり、排気装置全体としての小型化を図ることもできる。したがってまた、狭い艇内でのレイアウトも容易になり、コストも低減できる。
すなわち、この排気装置によれば、ウォーターマフラー60および排気装置全体の小型化を図ることができると同時に、かつ、低コストで、小型化を図ったにもかかわらず、小型艇において最も気になる低周波数域の排気音を有効に低減させることができる。
上記のようにウォーターマフラー60内の膨張室61を大容量とし、この膨張室61に、エンジンに連結した前側排気管53と、艇外に開ロした後側排気管54とを連接した場合において、仮に何らの方策も講じないとしたならば、小型艇が転覆した際、膨張室61内における水暴れが大きくなり、前側排気管53を通じてエンジン側に水が逆流してしまうおそれが大きくなる。
これに対し、この小型艇の排気装置によれば、膨張室61内に開ロした前側排気管53と後側排気管54との間において、膨張室61内の上側に抑水板63を設けてあるので、小型艇転覆時に、この抑水板63によって、水暴れが抑制され、結果として、エンジン側に水が逆流するおそれが低減される。
【0015】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
例えば、図3に示すように、レゾネーターチャンバー62はウォーターマフラー60の前部に形成してもよい。
【0016】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る小型艇の排気装置の一実施の形態を用いた小型艇の一例を示す概略側面図。
【図2】ウォーターマフラーを示す図で、(a)は部分切断側面図、(b)は図(a)における部分省略b−b断面図。
【図3】変形例を示す部分切断側面図。
【符号の説明】
10 小型艇
11 艇体
20 エンジン
53 前側排気管
54 後側排気管
60 ウォーターマフラー
61 膨張室
62 レゾネーターチャンバー
63 抑水板

Claims (1)

  1. 艇体内に備えたエンジンから延びた排気管の途中にウォーターマフラーを備えた小型艇において、
    前記ウォーターマフラー内を単一の膨張室と、レゾネーターチャンバーとに区画し、その膨張室に、エンジンに連結した前側排気管と、艇外に開ロした後側排気管とを連接するとともに,前記膨張室内に開ロした前側排気管と後側排気管との間において、膨張室内の上側に抑水板を設けたことを特徴とする小型艇の排気
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