JP4197116B2 - レオロジー改質剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水溶液及びスラリーのレオロジー改質剤に関する。さらには、該改質剤を添加する添加方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水溶液やスラリーのレオロジーを改質するために、粘度を目的や用途に応じて適正に調整されることが望まれる。従来、水溶液やスラリーの粘度を調整するためには、増粘剤や減粘剤の添加、加熱や冷却操作、電解質濃度の調整などの方策が採られている。なかでも、水溶性高分子は、安価かつ容易に増粘させることができるため、非常に広範囲に用いられている。しかしながら、水溶性高分子を水に溶解させることは一般に容易でなく、ママコを形成したり、溶解に長時間を要したりするという課題があった。また、溶解時間短縮を目的に予め濃厚な水溶性高分子の水溶液を調整しても、水溶液の粘度が非常に高くなり、添加操作等の作業性に問題があった。また、高電解質濃度系の水溶液やスラリーでは、高分子の凝集等により高い粘度にすることが困難な場合もあった。
【0003】
それらの問題を解決する方法として、本発明者らは、先に特定の性質を満たす異なる2種類の水溶性低分子化合物を含有するスラリーレオロジー改質剤を提案した(特願2002-111211号)。ここでは、4級カチオン基を有する化合物と芳香族アニオン基を有する化合物とを混合することで、会合体を形成させ、系を増粘させる技術が提案されている。
【0004】
しかし、この改質剤では、2種の化合物を別々に計量・添加等の操作をする必要があり、より簡便な操作で使用できる1剤型のレオロジー改質剤が望まれる場合があった。その際、鉄などの腐食性のある金属に接触する部分に増粘した水溶液やスラリーを使用する場合は、金属腐食を促進しない観点から、レオロジー改質剤としてハロゲン元素を含まない化合物を用いる事が望まれる。
【0005】
なお、4級カチオン基と芳香族アニオン基とを同一分子中に有する化合物をドライクリーニング用洗浄剤に使用することが特許文献1に記載されている。しかし、そのような化合物をレオロジー改質剤に使用することは記載されていない。
【0006】
【特許文献1】
特開平11-323383号公報(第4頁、表1、表2)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、容易に水溶液やスラリーに溶解することができる1剤型のレオロジー改質剤を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炭素数10から26の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級カチオン基(a1)と芳香族アニオン基(a2)とを含む4級塩型カチオン性化合物(A)を含有するレオロジー改質剤に関する。
【0009】
また、本発明は、上記本発明のレオロジー改質剤と、水硬性粉体と、水とを含有する水硬性スラリーに関する。
【0010】
また、本発明は、上記本発明のレオロジー改質剤を、4級塩型カチオン性化合物(A)を含む水溶液中又はスラリーの水相中での4級塩型カチオン性化合物(A)の濃度が0.01〜20重量%となるように、水溶液又はスラリーに添加する水溶液又はスラリーの製造方法に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明では、水溶液やスラリー中で会合体を形成し増粘させる機能を有する4級カチオン基と芳香族アニオン基とを有する4級塩型カチオン性化合物を使用することで、2種の薬剤を別々に計量・添加する必要がなく、1種の薬剤の計量・添加で同様の増粘状態が得られるため作業性に優れる。
【0012】
4級カチオン基と芳香族アニオン基とを有する4級塩型カチオン性化合物は、その製造方法上、ハロゲン元素が含まれない、もしくは除去されるため、使用する場所に金属が存在していた場合でも、その腐食を促進する恐れがなくなる。
【0013】
4級塩型カチオン性化合物(A)は、炭素数10から26の炭化水素基を少なくとも1つ有する4級カチオン基(a1)の1種以上を有する。4級カチオン基(a1)において、前記炭化水素基の炭素数は12から22がより好ましく、14から18が特に好ましい。4級カチオン基として、長鎖アルキル(炭素数10〜26)ヒドロキシエチルジメチルアンモニウム基やモノ長鎖アルキル(炭素数10〜26)トリメチルアンモニウム基が挙げられる。4級カチオン基(a1)は、4級塩型カチオン性化合物に由来することができ、当該化合物としては、具体的には、テトラデシルヒドロキシエチルジメチルアンモニウム、ヘキサデシルヒドロキシエチルジメチルアンモニウム、オクタデシルヒドロキシエチルジメチルアンモニウム、オレイルヒドロキシエチルジメチルアンモニウム、タローヒドロキシエチルジメチルアンモニウム、水素化タローヒドロキシエチルジメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、オレイルトリメチルアンモニウム、タロートリメチルアンモニウム、水素化タロートリメチルアンモニウム、ヘキサデシルジヒドキシエチルメチルアンモニウム、オクタデシルジヒドキシエチルメチルアンモニウム、オレイルジヒドキシエチルメチルアンモニウム、タロージヒドキシエチルメチルアンモニウム、水素化タロージヒドキシエチルメチルアンモニウム、ヘキサデシルピリジニウム、1,1-ジメチル-2-ヘキサデシルイミダゾリニウム等が挙げられる。これらのうち、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、タロートリメチルアンモニウム、水素化タロートリメチルアンモニウム、が特に好ましい。
【0014】
また、4級塩型カチオン性化合物(A)は芳香族アニオン基(a2)の1種以上を含有する。アニオン基としてスルホン基やカルボキシル基等が挙げられ、芳香族基としてベンゼン環等が挙げられる。芳香族アニオン基(a2)は、アニオン性芳香族化合物に由来することができ、該化合物としては、具体的には、パラトルエンスルホネート、サリシレート、メタキシレンスルホネート、クメンスルホネート、スチレンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート等が挙げられる。これらのうち、パラトルエンスルホネートが特に好ましい。
【0015】
本発明では、4級塩型カチオン性化合物(A)として、下記一般式(1)の化合物が好ましい。
【0016】
【化1】
Figure 0004197116
【0017】
(式中、R1は炭素数10〜26のアルキル基、R2は炭素数1〜22のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、R3、R4は、それぞれ、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、Yはエチレン基又はプロピレン基、nは0又は1の数、X-はアニオン性芳香族化合物、好ましくはパラトルエンスルホン酸に由来するアニオン基を表す。)。
【0018】
本発明のレオロジー改質剤では、増粘する温度領域を広くできる点で、(a1)として炭化水素基の長さが異なる4級カチオン基が2種以上存在することが好ましく、そのためには、4級カチオン基の炭化水素基の長さが異なる4級塩型カチオン性化合物(A)を2種以上併用しても、1つのカチオン基に長さが異なる炭化水素基が2つ以上結合した4級カチオン基を有する4級塩型カチオン性化合物(A)を使用しても、炭化水素基の長さが異なる4級カチオン基を2つ以上有する4級塩型カチオン性化合物(A)を使用しても、更にこれらの組み合わせでも、何れでもよい。これらのうちで、水への溶解性とレオロジー改質の効果の点から、4級カチオン基の炭化水素基の長さが異なる4級塩型カチオン性化合物(A)を2種以上併用するのが好ましい。
【0019】
4級塩型カチオン性化合物(A)の製造方法としては、▲1▼3級アミンをアニオン性芳香族化合物の酸型で中和しそこにエチレンオキサイドを反応させる方法、▲2▼4級塩型カチオン性化合物とアニオン性芳香族化合物の混合物を脱塩する方法、▲3▼4級塩型カチオン性化合物の対イオンを芳香族アニオン基(a2)で対イオン交換する方法などが挙げられる。これらの製造工程では、ハロゲン元素は元々含まれないか、または系外に除去されるので、金属が存在する部分に使用しても腐食を起こさないことから、これらの製造法が好ましい。
【0020】
本発明のレオロジー改質剤中の4級塩型カチオン性化合物(A)の含有量は、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜100重量%である。本発明のレオロジー改質剤の固形分中の4級塩型カチオン性化合物(A)の固形分の比率は50重量%以上が好ましい。
【0021】
本発明のレオロジー改質剤は、4級塩型カチオン性化合物(A)に、必要に応じて、(A)以外の有機化合物を含有することが好ましい。有機化合物として例えば、レオロジー特性の観点から、4級塩型カチオン性化合物やアニオン性芳香族化合物が挙げられる。具体的には、4級塩型カチオン性化合物としてヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、タロートリメチルアンモニウム塩、水素化タロートリメチルアンモニウム塩等が挙げられ、アニオン性芳香族化合物としてパラトルエンスルホン酸塩、サリチル酸塩、安息香酸塩等が挙げられる。
【0022】
また、4級塩型カチオン性化合物(A)は、元々会合体を形成する組成となっているため、濃厚化した製品を調製しようとすれば非常に高粘度になるが、そこに(A)以外の有機化合物として溶剤や界面活性剤を添加することで減粘させ、ハンドリングを改善させることができる。溶剤としてメタノール、エタノール、2−プロパノール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられ、界面活性剤としてノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
4級塩型カチオン性化合物(A)は、粉末状で使用することが可能である。粉末化により取り扱いを容易にすることができ、その場合、各種粉体や粉末状の添加剤と予め混合して使用することも可能となる。
【0024】
本発明のレオロジー改質剤を水溶液に添加することで水溶液の粘度を上げ、水と粉体を含有するスラリーに添加することで、スラリーの粘度を上げることができる。本発明のレオロジー改質剤の水溶液又はスラリーへの添加量は水(スラリーの場合は水相)に対する4級塩型カチオン性化合物(A)を含む水溶液又はスラリーの水相中での4級塩型カチオン性化合物(A)の濃度が0.01〜20重量%であることが好ましく、特に0.1〜10重量%が好ましい。
【0025】
本発明のレオロジー改質剤は、水溶液やスラリー中で会合体を形成し増粘させる機能を有するので、粉体の影響を受けにくく、また、イオン強度の高い水溶液でも増粘できる点から、スラリー系に適用することが有用であり、特に水硬性粉体と水とを含有するスラリーに適用することが有用である。
【0026】
本発明のレオロジー改質剤は、水粉体比(水/粉体 重量比)10〜1000%のスラリーに適用できる。このスラリーを製造する際の粉体としては、水和反応により硬化する物性を有する水硬性粉体を用いることができる。例えばセメントや石膏が挙げられる。また、フィラーも用いることができ、例えば炭酸カルシウム、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム、ベントナイト、クレー(含水珪酸アルミニウムを主成分とする天然鉱物:カオリナイト、ハロサイト等)が挙げられる。これらの粉体は単独でも、混合されたものでもよい。更に、必要に応じてこれらの粉体に骨材として砂や砂利、及びこれらの混合物が添加されてもよい。また、酸化チタン等の上記以外の無機酸化物系粉体のスラリーや土に適用することもできる。
【0027】
本発明のレオロジー改質剤と、水硬性粉体と、水とを含有する水硬性スラリーでは、スラリーの水相に対する4級塩型カチオン性化合物(A)の有効分濃度が0.01〜20重量%、更に0.1〜10重量%を満たした上で、4級塩型カチオン性化合物(A)と水硬性粉体の重量比は、水硬性粉体/化合物(A)=100000/1〜1/2、更に10000/1〜1/1であることが好ましい。
【0028】
本発明のレオロジー改質剤を水硬性スラリーに適用しても、粉体の硬化を妨げず良好な硬化体が得られる。本発明のレオロジー改質剤はコンクリート構造体やコンクリート製品等に適用できる。
【0029】
【発明の効果】
本発明のレオロジー改質剤は、容易に水溶液やスラリーに溶解でき、添加操作等の作業性に優れ、ハロゲン元素を含まないので金属腐食防止の面でも優れる。
【0030】
【実施例】
製造例(A-1、A-2の製造)
フラスコに水50g、p-トルエンスルホン酸1水和物95.1g、IPA85.0gを仕込み、60℃に昇温、攪拌して溶解した。混合調整溶液を50から60℃に保ち、予め融解させておいた硬化牛脂ジメチルアミン145.4gを、60℃に保持して3時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃でさらに1時間攪拌後、ジメチルアルキルアミンのp-トルエンスルホン酸塩のIPA/水溶液(1)375.5gを得た。
【0031】
2Lのオートクレーブに、溶液(1)375gを仕込み、攪拌後、系内を窒素置換した。65℃まで昇温し、エチレンオキサイド28.6gを仕込み、3時間反応させた。反応器内の残圧を系外にブローし、45℃で200torr、30分間の脱気した。さらに、pH調整(p-トルエンスルホン酸1水和物、IPA)を行い、目的とするジメチルヒドロキシエチルアルキルアンモニウムp-トルエンスルホネート混合溶液(A-2)390gを得た。混合溶液の分析値は、以下の通りであった。さらに、A-2をロータリーエバポレーターでIPAを除去した後、凍結乾燥法により溶媒を除去しA-1を得た。
pH;6.2、水分:14.6重量%、IPA:20.6重量%、残アミン価;0.10、固形分64.8重量%。
【0032】
実施例1
A-1、A-2それぞれの所定量を水に溶解(濃度は表1に示す)し、レオロジー改質の指標として粘度の測定を行った。結果を表1に示す。粘度は、B型粘度計を用い、20℃で測定した。なお、B型粘度計の測定条件は以下の通りである。
【0033】
粘度100mPa・s以下:ローターNo.1 回転数60rpm
粘度100mPa・s超〜1000mPa・s以下:ローターNo.2 回転数30rpm
粘度1000mPa・s超〜10000mPa・s以下:ローターNo.3 回転数12rpm
粘度10000mPa・s超〜100000mPa・s以下:ローターNo.4 回転数 6rpm
【0034】
【表1】
Figure 0004197116
【0035】
A-1:水素化タロージメチルヒドロキシエチルアンモニウムp-トルエンスルホネート(100%品、粉末)
A-2:水素化タロージメチルヒドロキシエチルアンモニウムp-トルエンスルホネート(IPA溶液、有効分64.8重量%)。
【0036】
実施例2
実施例1のA-1、A-2を用いて、スラリーに対するレオロジー改質効果を評価した。セメント400重量部と水400重量部をステンレスカップ中でハンドミキサーにより30秒混合し、次いでこれにA-1又はA-2を所定量添加し、更にハンドミキサーで90秒混合し、増粘したスラリーを得た。結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
Figure 0004197116

Claims (3)

  1. 下記一般式 (1) で表される4級塩型カチオン性化合物(A)を含有するレオロジー改質剤。
    Figure 0004197116
    (式中、R 1 は炭素数 10 26 のアルキル基、R 2 は炭素数1〜 22 のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、R 3 は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、R 4 は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、Yはエチレン基又はプロピレン基、nは0又は1の数、X はアニオン性芳香族化合物に由来するアニオン基を表す。)
  2. 請求項1記載のレオロジー改質剤と、水硬性粉体と、水とを含有する水硬性スラリー。
  3. 請求項1記載のレオロジー改質剤を、4級塩型カチオン性化合物(A)を含む水溶液中又はスラリーの水相中での4級塩型カチオン性化合物(A)の濃度が0.01〜20重量%となるように、水溶液又はスラリーに添加する水溶液又はスラリーの製造方法。
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