JP4196699B2 - 光学的記録媒体および光学的記録再生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトクロミック化合物を用いた光学的記録媒体および該媒体に対する光学的記録再生方法に関し、更に詳しくは、記録時に用いる光よりも低エネルギーの電磁波、特に赤外線波長領域の光を用いて非破壊読み出しを行なうための光学的記録媒体および光学的記録再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトクロミック化合物とは、光の作用により、色をはじめ種々の光学特性が異なる2つの状態(構造異性体)を、可逆的に生成する分子のことである。
このフォトクロミック化合物は、このような光異性化反応(フォトクロミック反応という)に基づく光学特性の変化を利用し、光学的記録媒体または光スイッチ素子等のオプトエレクトロニクス分野への応用が検討されている。
【0003】
また、フォトクロミック化合物を使用した光学的記録媒体への記録・再生方法としては、構造異性体間で吸光度に大きな差がある波長の光を、情報の記録に使用し、また同じ波長で強度の弱い光を再生に用いる方法が最も一般的である。しかし、記録と再生に同じ(または近い)波長の光を使用した場合、繰り返し再生することにより、再生光にて意図せぬ記録がなされてしまう、つまり再生を重ねることにより被記録部分を破壊していくことになる、という問題があった。従って、フォトクロミック化合物が広く情報記録材料として利用されるためには、非破壊読み出し機能の導入が必須であることが指摘されている。(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
こうした中、近年、フォトクロミック化合物によっては、フォトクロミック反応前後において赤外吸収強度に違いがあることが見出されている(例えば、非特許文献2を参照)。
【0005】
【非特許文献1】
M.Irie、Chem.Rev.,100,1685−1716(2000)
【非特許文献2】
F.Stellacci、 C.Bartarelli, T.Toscano, M.C.Gallazzi, G.Zerbi, Chem. Phys. Letters, 302, 563−570 (1999)
【非特許文献3】
日本化学会第81春季年会(2002)講演予稿集 p138右下欄 講演番号3C4−13
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一方、本発明者らも、従来よりフォトクロミック化合物の光異性化反応前後の赤外吸収強度(スペクトル)変化に関係する分子振動の解析を詳細に行なっており、分子振動の変化を増大させる分子設計について研究を重ねてきた。そして、チオフェン基の3位がエテン部位に結合してなるジアリールエテン系分子に、ベンゼン環やカルボニル基を導入することによって、フォトクロミック反応前後における赤外吸収強度変化を大きくすることができた旨、既に報告済みである(非特許文献3参照)。
【0007】
本発明者らは、更なる研究の結果、上記以外の化合物でも、同様にフォトクロミック反応前後で赤外吸収強度の変化量が大きな化合物が存在することを見いだし、本発明に至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、フォトクロミック反応前後の赤外吸収に関係する分子振動の解析を詳細に行い、分子振動の変化を大きくさせる分子設計について研究した。分子振動の解析は、理論化学計算とりわけ分子軌道法計算を用いて行った。先ず、ジアリールエテン系分子について検討を行い、該化合物のフォトクロミック反応の前後において赤外吸収強度が大きく異なるのは、1600cm-1付近の分子振動のモードが関与していることを明らかにした。次に、フォトクロミック反応前後の異性体において、その振動の赤外吸収強度が大きく変化するような分子、またはその振動と相互作用をして赤外吸収強度が大きく変化するような分子を目指して試行錯誤と創意工夫を行った。そして、ついに反応前後の状態の何れかにしか存在しない吸収帯を持つ分子設計を実現した。本発明は、こうして設計された新たな分子のフォトクロミック反応前後の赤外吸収の変化が顕著であることを初めて見いだしたことにより成されたものである。
【0009】
すなわち、上記目的を達成する本発明の光学的記録再生方法は、下記一般式(I)で表される化合物から選ばれた少なくとも1つの化合物を含む記録層を有する光学的記録媒体に対する記録再生方法であって、記録層に含まれる一般式(I)で表される化合物のうち、少なくとも1種類の化合物を光異性化反応せしめるエネルギーの光を照射することにより、情報の記録または消去を行い、該記録層の被記録部分について、特定振動数における記録前後の赤外吸収強度変化を検出することにより情報の再生を行うことを特徴とする。
【0010】
【化2】
【0011】
(上記一般式(I)において、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、或いは炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基を表す。X1およびX2は、各々独立に硫黄原子または酸素原子を表し、Y1およびY2は、各々独立に窒素原子または−CR5−基(但し、R5は水素原子または任意の置換基を表す。)を表す。R3およびR4は各々独立に、水素原子または任意の置換基を表す。
【0012】
なお、Y1および/またはY2が−CR5−であり、該R5が任意の置換基である場合には、隣接するR5とR3および/またはR5とR4が結合し、置換基を有しうる環を形成していても良い。)
前記一般式(I)で表されるフォトクロミック化合物は、フォトクロミック反応前後の状態の赤外吸収に大きな相違があるので、該化合物を使用した光学的記録媒体は、記録光よりも低エネルギーの電磁波である赤外光を利用して、非破壊的かつ選択的に再生することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の光学的記録媒体および光学的記録再生方法について詳しく説明する。
本発明の光学的記録媒体および光学的記録方法は、フォトクロミック反応前後における赤外吸収の変化が大きい、前記一般式(I)で表されるフォトクロミック化合物を見いだしたことにより達成されたものである。
【0015】
ジアリールエテン系化合物において、光閉環反応により形成されるC=C二重結合の非対称結合伸縮振動は、分子軌道計算による詳細な分子科学的解析の結果、ほぼ1600cm-1付近に出現する。その結果、開環体には殆ど出現しないこの帯域の振動を検出することにより、記録された情報の非破壊的かつ選択的な読出しを行うことができる。
【0016】
本発明の光学的記録媒体および光学的記録再生方法は、フォトクロミック反応前後における赤外吸収の変化が著しく大きい化合物を見出したことにより達成されたものである。
さらに、上述したフォトクロミック化合物に、もともとこの帯域に赤外吸収を持つ官能基を導入すれば、上述したC=C二重結合の非対称結合伸縮振動とのカップルを期待でき、反応の前後に大きな変化をもたらすことを見いだした。具体的には、フォトクロミック反応前後の分子構造に対し、分子軌道法計算を行ない赤外吸収強度の変化を予測し、導入する官能基を予測して分子設計を行った。
【0017】
その結果、下記一般式(I)で表される化合物において、フォトクロミック反応前後の赤外吸収スペクトルが大きく変化することを見いだした。
【0018】
【化3】
【0019】
(上記一般式(I)において、R1およびR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、或いは炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基を表す。X1およびX2は、各々独立に硫黄原子または酸素原子を表し、Y1およびY2は、各々独立に窒素原子または−CR5−基(但し、R5は水素原子または任意の置換基を表す。)を表す。R3およびR4は各々独立に、水素原子または任意の置換基を表す。
【0020】
なお、Y1および/またはY2が−CR5−であり、該R5が任意の置換基である場合には、隣接するR5とR3および/またはR5とR4が結合し、置換基を有しうる環を形成していても良い。)
R1とR2は、同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0021】
X1およびX2は、各々独立に硫黄原子または酸素原子を表し、Y1およびY2は、各々独立に窒素原子または−CR5−基(但し、R5は水素原子または任意の置換基を表す。)を表す。またR3およびR4は各々独立に、水素原子または任意の置換基を表す。
なお、Y1およびY2がともに−CR5−である場合、これら2つのR5は同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
(X1,Y1)の組合せ、および(X2,Y2)の組合せとしては、各々独立に、(−O−,−CR5−)、(−S−,−CR5−)、または(−S−,−N=)がより好ましい。
R3、R4およびR5が任意の置換基である場合、該置換基として、好ましくはハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のフッ化アルキル基、ニトロ基、シアノ基、および炭素数6〜10の芳香族炭化水素基等があげられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、フッ化アルキル基は、鎖状または環状のいずれであってもよく、また鎖状の場合、直鎖でも分岐していてもよい。
【0023】
前記一般式(I)で表される化合物として好ましくは、ハロゲン原子または炭素数1〜12のアルキル基で置換されているか、或いは無置換である。より好ましくは、ハロゲン原子で置換されているか、無置換の化合物である。
また、Y1および/またはY2が−CR5−であり、該R5が任意の置換基である場合には、それぞれ隣接する、R5とR3および/またはR5とR4が結合し、置換基を有しうる環を形成していても良い。このような環としては、ベンゼン環等があげられ、該環が有しうる置換基としては、R3、R4およびR5の例として前述した基等があげられる。
【0024】
一般式(I)で表される化合物としては、R5とR3および/またはR5とR4が結合している化合物より、これらが各々別の基である化合物の方が好ましい。
上述した化合物の作り方としては、K.Uchida and M.Irie, Chemistry Letters,1995,(No.11)969−970.等に記載の方法を例示することができる。
【0025】
次に、本発明の光学的記録再生方法について説明する。
本発明の光学的記録再生方法は、上述した本発明の光学的記録媒体に対する記録再生方法であり、記録光照射により情報が記録または消去され、該記録光よりも低エネルギーの電磁波(赤外線)を用いて再生される。詳しくは、記録層に含まれる前記一般式(I)で表される化合物のうち、少なくとも1種類の化合物を光異性化反応せしめるエネルギーの光を照射することにより、情報の記録または消去を行い、該記録層の被記録部分について、特定振動数における記録前後の赤外吸収強度変化を検出することにより、情報の再生を行う。
【0026】
前記一般式(I)で表されるフォトクロミック化合物は、紫外線波長領域〜可視光波長領域の光で、効率的に光異性化反応を生じるものが多いため、この波長領域(具体的には、190nm〜800nm程度)の光を記録光または消去光として用いることが好ましい。通常、該波長領域の中で、比較的短波長の光で閉環体が生成し、長波長の光で開環体が生成する。そうした波長の異なる光を照射することにより、上述したフォトクロミック化合物が可逆変化を起こし、情報の記録および消去が行なわれる。なお、光源は特に限定されないが、半導体レーザー等が好ましく適用される。
【0027】
記録された情報の再生は、上述した記録光よりも低エネルギーの電磁波である赤外線波長領域の光により行なわれる。上述した本発明に係るフォトクロミック化合物は、閉環体と開環体とで赤外吸収に大きな相違があるので、光学的記録媒体の記録層における記録光が照射された部分(被記録部分)に赤外光を照射し、その吸収信号を変換することにより、情報を再生することができる。
【0028】
本発明における光学的記録媒体の記録層は、例えば、前記フォトクロミック化合物を、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等のバインダ樹脂と共に、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、四塩化炭素、クロロホルム等の溶媒に分散または溶解させて、適当な基板に塗布する方法や、フォトクロミック化合物を上記溶媒に溶解してなる溶液を、基板上に塗布・乾燥することにより成膜する方法、或いはフォトクロミック化合物溶液を、ガラスセル等に封入する方法等により形成される。得られた媒体の扱い易さの点からは、記録層は固体(膜状)であることが好ましく、中でも、アモルファス状の膜が得やすい点から、適当なバインダ樹脂と共に成膜する方法がより好ましい。
【0029】
本発明に用いられる光学的記録媒体は、例えば適当な基板上に、上述した、フォトクロミック化合物含有樹脂膜からなる記録層を設けることにより作成される。記録層の上に、或いは基板と記録層との間に反射層を設けても良い。また、最外層(記録層や反射層などの積層部分に対し、基板側とは逆の側の最外層)に、各層を保護する保護層を設けても良い。さらに、2枚の基板間に記録層や、必要に応じて反射層などの任意の層を設けても良い。これら以外にも、上述の各層間に、本発明の要旨を超えない範囲で任意の層を有していても良い。
本発明に用いられる光学的記録媒体において、上述の基板、反射層、保護層などは、現在一般的に使用されている材料から適宜選択して使用することができる。
【0030】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
フォトクロミック化合物として、下記構造式で表される2位でエテン部位に結合した1,2−ビス(3,5−ジメチル−2−チエニル)パーフルオロペンテン(i35Me)を用いた。
【0031】
【化4】
【0032】
この化合物は、原料である3,5−ジメチルチオフェン、およびn−ブチルリチウム、オクタフルオロペンテン、テトラヒドロフランを用いて、K.Uchida and M.Irie,Chemistry Letters,1995,(No.11)969−970.に準じて合成した。
この化合物(開環体)200mgをヘキサン2Lに溶解し、該ヘキサン溶液中の開環体(i35Me−O)に波長365nmの光を照射して閉環体(i35Me−C)を生成させ、閉環体を含む光定常状態に至らせた(2.5×10-4M)。この光定常状態(i35Me−O+i35Me−C)の溶液を減圧下、溶剤を留去した。得られた光定常状態混合物の赤外吸収(IR)スペクトルをNaCl錠剤法により測定した。次に、この光定常状態混合物を含むNaCl錠剤に対し、光源としてキセノンランプを使用し、これにカットオフフィルタを組み合わせて、波長450nm以下の光をカットしたものを照射し、全てを開環体(i35Me−O)に変換して、同様にIR測定を行った。(以下の実施例および比較例における「可視光」も、同様に、キセノンランプとカットオフフィルタを組み合わせて得られた光である。)
【0033】
この2つの状態(光定常状態および開環体)に対応した(すなわちフォトクロミック反応前後の)該化合物の赤外吸収スペクトル変化を図1に示した。閉環体(i35Me−C)を含む光定常状態のスペクトルには、開環体(i35Me−O)では吸収のない1593、1630、1651cm-1の3本の大きな吸収ピークがみられ、後述する比較例1と較べて、より明瞭に反応前後のIRスペクトル変化が生じていることが分かる。
【0034】
(実施例2)
実施例1にて使用したフォトクロミック化合物(i35Me)の赤外吸収スペクトルを、6−31G基底を用いた非経験的分子軌道法(Hartree−Fock法、HF/6−31G法と略)でシミュレートした結果を、図2に示す。下が実測の赤外吸収、上が計算結果である。HF/6−31G法は、市販ソフトのGaussian98を利用して行った。HF/6−31G法の計算は、赤外吸収の波数を過大に計算することが知られているので、0.9倍した。
図2より、分子軌道法計算は、実施例1の化合物が、開環体は1600cm-1付近に赤外吸収を持たないが、閉環体(実測では、開環体を含む光定常状態)は大きな赤外吸収があることを、再現できていることが分かる。
【0035】
(実施例3〜5)
以下、下記構造式(a)〜(c)で表される化合物につき、実施例2と同様にシミュレーションを行った。結果を図3〜図5に示す。いずれの化合物についても、振動数1600cm-1付近で、開環体と閉環体の赤外吸収強度に大きな差があることが分かる。
【0036】
【化5】
【0037】
(比較例1)
フォトクロミック材料として、下記構造式で表される1,2−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)パーフルオロペンテン(T−O(開環体)、T−C(閉環体))を用いた。
【0038】
【化6】
【0039】
これは、既存文献(F.Stellacci、C.Bartarelli, T.Toscano, M.C.Gallazzi, G.Zerbi, Chem. Phys. Letters, 302, 563−570 (1999))の追試を比較対照のために行ったものである。
この化合物をヘキサンに溶解し、ヘキサン溶液中の開環体(T−O)に波長313nmの光を照射して閉環体(T−C)を生成させた(1.2×10-4M)。閉環体(T−C)は538nmに吸収極大をもち、溶液は赤色を呈していた。その状態、即ち光定常状態での開環体(T−O)と閉環体(T−C)の比は、約20:80であった。この溶液から溶媒を留去し、メタノールより再結晶して閉環体(T−C)の結晶を単離した。得られた閉環体(T−C)結晶のIRスペクトルを、NaCl錠剤法により測定した。次に、この閉環体(T−C)を含むNaCl錠剤に対して可視光を照射し、全てを開環体(T−O)に変換してIRを測定した。
【0040】
この2つの状態(閉環体および開環体)に対応した(すなわちフォトクロミック反応前後の)赤外吸収スペクトル変化を図2に示した。反応前後の赤外吸収のチャートが殆ど重なっておりこの分子では赤外吸収の変化は小さい。
(実施例6)
フォトクロミック化合物として、チオフェン環の2位でエテン部位に結合したベンゾチエニル基を持つ1,2−ビス(3−メチルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)パーフルオロシクロペンテン(iBz)を用いた。
【0041】
【化7】
【0042】
この化合物は、原料である3−メチルベンゾ[b]チオフェン、およびn−ブチルリチウム、オクタフルオロペンテン、テトラヒドロフランを用いて、K.Uchida and M.Irie,Chemistry Letters,1995,(No.11)969−970に準じて合成した。
この化合物をヘキサンに溶解し、ヘキサン溶液中の開環体(iBz−O)に波長365nmの光を照射して閉環体(iBz−C)を生成させ、閉環体のみを単離した(2.0×10-4M)。単離した閉環体(iBz−C)について、比較例1と同様にIR測定を行なった。次に、この閉環体溶液に可視光を照射し、全てを開環体(iBz−O)に変換して、同様にIR測定を行った。
【0043】
この2つの状態(閉環体と開環体)に対応した(すなわちフォトクロミック反応前後の)赤外吸収スペクトル変化を図3に示した。閉環体(iBz−C)のスペクトルには、開環体(iBz−O)では吸収のない1587cm-1および1637cm-1に2本の大きな吸収ピークがみられた。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光学的記録媒体および光学的記録方法によれば、フォトクロミック反応前後の状態の赤外吸収に大きな相違を有するフォトクロミック材料を含むので、記録光よりも低エネルギーの電磁波である赤外光を利用して、非破壊的かつ選択的に情報の再生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の化合物の、フォトクロミック反応前後の赤外吸収スペクトル線図である。
【図2】実施例2にて行った、HF/6−31G法による本発明化合物(i35Me)のシミュレート結果である。
【図3】実施例3にて行った、HF/6−31G法による本発明化合物(a)のシミュレート結果である。
【図4】実施例4にて行った、HF/6−31G法による本発明化合物(b)のシミュレート結果である。
【図5】実施例5にて行った、HF/6−31G法による本発明化合物(c)のシミュレート結果である。
【図6】比較例1の化合物の、フォトクロミック反応前後の赤外吸収スペクトル線図である。
【図7】実施例6の化合物の、フォトクロミック反応前後の赤外吸収スペクトル線図である。
Claims (1)
- 下記一般式(I)で表される化合物から選ばれた少なくとも1つの化合物を含む記録層を有する光学的記録媒体に対する記録再生方法であって、記録層に含まれる一般式(I)で表される化合物のうち、少なくとも1種類の化合物を光異性化反応せしめるエネルギーの光を照射することにより、情報の記録または消去を行い、該記録層の被記録部分について、特定振動数における記録前後の赤外吸収強度変化を検出することにより情報の再生を行うことを特徴とする光学的記録再生方法。
X1およびX2は、各々独立に硫黄原子または酸素原子を表し、Y1およびY2は、各々独立に窒素原子または−CR5−基(但し、R5は水素原子または任意の置換基を表す。)を表す。R3およびR4は各々独立に、水素原子または任意の置換基を表す。
なお、Y1および/またはY2が−CR5−であり、該R5が任意の置換基である場合には、隣接するR5とR3および/またはR5とR4が結合し、置換基を有しうる環を形成していても良い。)
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