JP4196519B2 - 内燃機関の高圧燃料供給装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料タンクに貯留された燃料を内燃機関の高圧燃料噴射系に圧送供給すると共に、その圧送量をスピル弁によって調量する内燃機関の高圧燃料供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の高圧燃料供給装置としては、例えば特開平10−176618号公報、あるいは特開平10−176619号公報等に記載された装置が知られている。
【0003】
これら公報の記載からも明らかなように、この種の高圧燃料供給装置にあっては通常、高圧燃料ポンプを備え、内燃機関により回転駆動されるカムによってそのシリンダ内のプランジャが往復動される。そして、同ポンプのそれらシリンダとプランジャとにより区画される加圧室の容積が拡大される吸入行程において燃料タンクから低圧燃料系を介して加圧室に燃料が吸入される。一方、同加圧室の容積が縮小される圧送行程において、この吸入された燃料が高圧燃料系に圧送される。ただし、この圧送行程ではスピル弁(電磁スピル弁)の閉弁期間が制御され、同行程における実質的な燃料圧送量は、この制御されるスピル弁の閉弁期間に応じて決定される。すなわち、圧送行程とはいえ、スピル弁が開弁状態にあるときには、加圧室で加圧される燃料がリターン配管を介して燃料タンクに溢流されるようになっており、同燃料の加圧中に適宜のタイミングでスピル弁が閉弁されることによって初めて上記高圧燃料系への燃料圧送が開始される。そしてその後、同スピル弁が再び開弁されるタイミングをもって、圧送中の燃料がリターン配管にスピルされ、同燃料の圧送が中断される。高圧燃料供給装置にあってはこのように、スピル弁を用いることで、精度の高い燃料圧送量の調量が可能となっている。
【0004】
ところで、こうした高圧燃料供給装置にあっては、加圧室に吸入されて高温となった燃料が上記リターン配管を介して燃料タンクに戻されるために、同燃料タンク内での燃料蒸発量が多くなってしまう。そこで、上記リターン配管を廃止し、加圧室から高圧燃料系に圧送する必要のない余剰の燃料についてはこれをプレッシャレギュレータ等によって一定の燃料圧力に保持されている低圧燃料系に戻すようにした、いわゆるリターンレス式の高圧燃料供給装置も考えられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなリターンレス式の高圧燃料供給装置によれば、加圧室に吸入された燃料の余剰分がスピル弁の開弁期間を利用して低圧燃料系に戻されたたとしても、同低圧燃料系には上記プレッシャレギュレータ等によって略一定の圧力に保たれている燃料が充填されているため、この戻された燃料が直接燃料タンクに戻ることはなくなる。このため、燃料タンク内での燃料蒸発は確かに抑制される。しかし、同装置の場合、高圧燃料通路に圧送要求される燃料量が少ない機関低負荷時などにおいては、加圧室から低圧燃料系に戻される燃料の量が多くなるため、低圧燃料系での燃圧脈動が大きくなる。そしてこの場合には、こうした燃圧脈動に伴う騒音の発生や、低圧燃料系における構成部品の信頼性の低下等も無視できないものとなる。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、リターンレス構造をとりながらも、スピル弁の開閉制御を通じた燃料圧送量の調量精度を維持しつつ、低圧燃料系での燃圧脈動を抑制することのできる内燃機関の高圧燃料供給装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1に記載の発明は、シリンダと該シリンダ内を往復動するプランジャとにより区画形成される加圧室に低圧燃料系から燃料を吸入するとともに、同加圧室内の燃料を高圧燃料系に圧送するに際し、スピル弁の開閉制御を通じてその燃料圧送量の調量、並びに余剰燃料の前記低圧燃料系への戻流を行う内燃機関の高圧燃料供給装置において、前記高圧燃料系への燃料圧送量の要求値に応じて前記余剰燃料の前記低圧燃料系への戻流を少なくするように前記プランジャの最大リフト量を可変とする可変手段を備えることを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、プランジャの最大リフト量を可変とすることで同プランジャの往復移動幅が変更され、吸入行程中に低圧燃料系から加圧室に吸入される燃料の量が変更される。すなわち、加圧室に吸入される燃料の量は、最大リフト量を小としてプランジャの往復移動幅を小さくすることで少なくなり、逆に最大リフト量を大としてプランジャの往復移動幅を大きくすることで多くなる。こうして加圧室に吸入された燃料のうち、高圧燃料系に圧送される燃料についてはその圧送量が圧送行程中でのスピル弁の開閉制御を通じて精度よく要求される値に調量され、高圧燃料系に圧送されない余剰の燃料については低圧燃料系に戻される。従って、高圧燃料系への燃料圧送量の要求値に応じて余剰燃料の低圧燃料系への戻流を少なくするようにプランジャの最大リフト量を可変とし、同要求値に対応する分の燃料を吸入行程中に低圧燃料系から加圧室に吸入することで、圧送行程中に加圧室から低圧燃料系に戻される上記余剰の燃料を少なくすることができる。そして、この余剰の燃料の量を少なくすることにより、同余剰の燃料が戻されることに伴い低圧燃料系に発生する燃圧脈動を抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の高圧燃料供給装置において、前記可変手段は、前記燃料圧送量の要求値が小さいほど前記プランジャの最大リフト量を小とするものであることを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、燃料圧送量の要求値が小さいほど吸入行程中に加圧室に吸入される燃料が少なくされるため、加圧室に吸入された燃料のうち、高圧燃料系に圧送されずに低圧燃料系に戻される余剰の燃料か的確に少なくなる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の内燃機関の高圧燃料供給装置において、前記可変手段は、前記燃料圧送量の要求値よりも僅かに多い量の燃料が前記加圧室に吸入されるようにその最大リフト量が設定されるものであることを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、吸入行程中に加圧室に吸入される燃料が高圧燃料系への燃料圧送量の要求値よりも僅かに多いため、高圧燃料系への燃料圧送量に不足を生じさせることなく、且つ低圧燃料系に戻される余剰の燃料を極力少なくすることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の高圧燃料供給装置において、前記可変手段は、当該機関により回転駆動されるカムシャフトに設けられて前記プランジャを往復動せしめるカムであってその軸方向にカムプロフィールが連続的に変化する3次元カムと、同3次元カムをその軸方向に変位せしめるアクチュエータとを備えて構成されることを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、3次元カムをカム軸方向に徐々に変位させると、これに応じて加圧室に吸入される燃料の量も徐々に変化するようになる。従って、カム軸方向についての3次元カムの位置調節により、加圧室に吸入される燃料の量を適切な値へと的確に制御することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の高圧燃料供給装置において、前記スピル弁は、前記燃料圧送量の要求値及び前記可変手段により可変とされる前記プランジャの最大リフト量に応じてその開閉期間が制御されることを要旨とする。
【0016】
吸入行程中に低圧燃料系から加圧室に吸入される燃料の量は、プランジャの最大リフト量を可変とすることにより変更される。そして、圧送行程中におけるスピル弁の閉弁期間を制御することにより、加圧室から高圧燃料系への燃料圧送量が要求値へと調量されるとともに、加圧室から低圧燃料系に戻される余剰の燃料の量が変化する。上記構成によれば、燃料圧送量の要求値及びプランジャの最大リフト量に応じてスピル弁の閉弁期間が制御されるため、高圧燃料系への燃料圧送量を要求される値へと的確に調量しつつ、低圧燃料系に戻される余剰の燃料を的確に少なくすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内燃機関の高圧燃料供給装置を具体化した一実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態にかかる内燃機関の高圧燃料供給装置の概略構成を示している。この高圧燃料供給装置は、エンジン11の各気筒の燃焼室に高圧燃料を直接噴射供給するための装置であり、高圧燃料ポンプ20、蓄圧配管(デリバリパイプ、コモンレール等)14、インジェクタ15等を備えて構成されている。
【0019】
ここで、高圧燃料ポンプ20は燃料を高圧に加圧してこれを蓄圧配管14に圧送するためのものであり、ポンプシリンダ21と、同ポンプシリンダ21内で往復運動するプランジャ22と、ポンプシリンダ21の内周壁面及びプランジャ22の上端面により区画形成された加圧室23と、同加圧室23に設けられたスピル弁(電磁スピル弁)25とを備えて構成されている。
【0020】
このように構成される高圧燃料ポンプ20において、プランジャ22の下端に取り付けられたポンプリフタ26は、スプリング27の付勢力によりカムシャフト35に設けられているポンプカム36に圧接されている。カムシャフト35はエンジン11により回転駆動され、このカムシャフト35の回転に伴ってポンプカム36が回転することにより、プランジャ22がポンプシリンダ21内を往復動して加圧室23の容積が変化する。
【0021】
高圧燃料ポンプ20の加圧室23はスピル弁25及び低圧燃料通路50を介して燃料タンク12に接続されている。そして、燃料タンク12内には低圧フィードポンプ13、燃料フィルタ51及びプレッシャレギュレータ52が配設されている。低圧フィードポンプ13は、エンジン11の始動に伴い電気的に駆動され、燃料タンク12内の燃料を低圧燃料通路50を介して上記高圧燃料ポンプ20に移送する。低圧燃料通路50を燃料が通過する際、燃料内に混入している不純物は燃料フィルタ51によって取り除かれる。また、低圧燃料通路50内の燃料圧力(燃圧)はプレッシャレギュレータ52によって予め定められた一定値に保たれる。すなわち、低圧燃料通路50内の燃圧がこの一定値以上になる場合には、プレッシャレギュレータ52を通じて低圧燃料通路50内から燃料タンク12内に燃料が戻されるようになっている。
【0022】
上記低圧燃料通路50を通過した燃料は上記スピル弁25を介して高圧燃料ポンプ20の加圧室23内に導入される。このスピル弁25は常開型の電磁弁であり、ソレノイドコイル28への通電の有無に基づいて閉弁状態あるいは開弁状態に制御されるものである。すなわち、上記ソレノイドコイル28への通電がないときには、スプリング29の付勢力によって弁体30が加圧室23のシート部31から離座する開弁状態に維持される。一方、上記ソレノイドコイル28への通電が行われると、スプリング29の付勢力に抗して弁体30がシート部31に着座し、閉弁状態になる。
【0023】
また、上記加圧室23には、逆止弁54及び高圧燃料通路53を介して上記蓄圧配管14が接続されている。そして、蓄圧配管14には加圧室23から、高圧の燃料が供給されるようになっている。この蓄圧配管14は、燃料を高圧の状態に保持するとともに、その燃料をエンジン11の各気筒に設けられたインジェクタ15に分配するためのものである。これら各インジェクタ15からは、エンジン11の各気筒の燃焼室に対して所定量の燃料が噴射される。また、高圧燃料通路53に設けられた逆止弁54は、加圧室23から蓄圧配管14に向かう燃料の流通のみを許容する弁であり、同弁54によって蓄圧配管14から加圧室23への燃料の逆流が規制されている。
【0024】
そして、カムシャフト35の回転に伴いプランジャ22が下動する高圧燃料ポンプ20の吸入行程中には、低圧燃料通路50内の燃料が加圧室23内に吸入される。一方、カムシャフト35の回転に伴いプランジャ22が上昇する高圧燃料ポンプ20の圧送行程中には、加圧室23内の燃料が高圧燃料通路53及び蓄圧配管14に圧送される。ただし、高圧燃料通路53、蓄圧配管14に燃料が圧送されるのは、圧送行程中において、スピル弁25が閉弁している期間のみであって、圧送行程中においてスピル弁25が開弁している期間には加圧室23内の燃料は低圧燃料通路50に戻される。従って、圧送行程中におけるスピル弁の閉弁期間を制御することにより、高圧燃料通路53に圧送される燃料を調量することができる。
【0025】
こうした高圧燃料通路53への燃料圧送量を調量するためのスピル弁25の開閉制御は、エンジン11の運転を統括制御する電子制御装置(以下、「ECU」という)60によって行われる。ECU60は、圧送行程中においてソレノイドコイル28への通電開始時期(スピル弁25の閉弁開始時期)を制御することにより、圧送行程中でのスピル弁25の閉弁期間を制御し、高圧燃料通路53への燃料圧送量を高い精度で要求される値へと調量する。
【0026】
ここで、スピル弁25の閉弁開始時期(閉弁期間)の変化に対し、高圧燃料通路53への燃料圧送量、及び加圧室23から低圧燃料通路50に戻される燃料の量がどのように変化するかを図4を参照して説明する。なお、図4(a)はポンプカム36の回転(カム角度の変化)に伴うプランジャ22のリフト量変化の概念を示すものであって、図4(b)はポンプカム36の回転に伴うスピル弁25の開閉態様を示すものである。
【0027】
高圧燃料通路53への燃料圧送量の要求値は、インジェクタ15からの燃料噴射量に応じて変化する。即ち、機関高負荷時などインジェクタ15からの燃料噴射量が多いときには要求される燃料圧送量が多くなり、機関低負荷時などインジェクタ15からの燃料噴射量が少ないときには要求される燃料圧送量が少なくなる。インジェクタ15からの燃料噴射量が多くなる機関高負荷時など、要求される燃料圧送量が大のときには、図4(b)に示すようにスピル弁25の閉弁開始時期が例えば圧送行程初期へと早められて図中左方へと変化し、圧送行程中におけるスピル弁25の閉弁期間が長くされる。そして、このスピル弁25の閉弁期間中に加圧室23から高圧燃料通路53への燃料圧送が行われるため、図4(a)中のGで示される部分に対応した量の燃料が高圧燃料通路53に圧送され、要求される燃料圧送量が得られるようになる。また、圧送行程中においてスピル弁25が閉弁開始される前の開弁中には、高圧燃料通路53に圧送されない燃料(余剰の燃料)が加圧室23から低圧燃料通路50に戻される。低圧燃料通路50に戻される余剰燃料の量は、図4(a)中にFで示される部分の面積に対応した値となる。
【0028】
一方、インジェクタ15からの燃料噴射量が少なくなる機関低負荷時など、要求される燃料圧送量が小のときには、圧送行程中におけるスピル弁25の閉弁開始時期が例えば圧送行程終期まで遅らされて図中右方へ変化し、圧送行程中におけるスピル弁25の閉弁開始時期が短くされる。そして、このスピル弁25の閉弁期間中に加圧室23から高圧燃料通路53への燃料圧送が行われるため、図4(a)のIで示される部分に対応した量の燃料が高圧燃料通路53に圧送され、要求される燃料圧送量が得られるようになる。また、この場合には、圧送行程中においてスピル弁25の閉弁期間が短くなることに伴い、同スピル弁25における閉弁開始前の開弁期間は長くなる。その結果、加圧室23から低圧燃料通路50に戻される余剰燃料の量は、図4(a)中にHで示される部分の面積に対応した値となり、要求される燃料圧送量が大のときの値(図中Fで示される部分に対応)よりも大きくなる。
【0029】
このように機関低負荷時など要求される燃料圧送量が小であるときには加圧室23から低圧燃料通路50に戻される燃料の量が多くなる。そして、低圧燃料通路50に戻される燃料量が多くなると、低圧燃料系での燃圧脈動が大きくなり、同燃圧脈動に伴う騒音の発生や、低圧燃料系における構成部品の信頼性の低下等も無視できないものとなる。
【0030】
そこで本実施形態では、プランジャ22の最大リフト量を可変とする最大リフト量可変装置を設け、高圧燃料通路53への燃料圧送量の要求値が小さくなるほど、プランジャ22の最大リフト量が小となるよう上記可変装置を作動させる。この場合、同可変装置によりプランジャ22の最大リフト量を小とするほど、同プランジャ22の往復移動幅が小さくなり、吸入行程中に低圧燃料通路50から加圧室23に吸入される燃料の量が少なくなる。従って、高圧燃料通路53への燃料圧送量の要求値に応じてプランジャ22の最大リフト量を可変とすることで、同要求値に対応する分の燃料を低圧燃料通路50から加圧室23に吸入することができる。これにより、圧送行程中におけるスピル弁の25の開閉制御を通じて高圧燃料通路53への燃料圧送量を精度よく要求値へと調量する際、加圧室23から高圧燃料通路53に戻される余剰の燃料の量が少なくなり、低圧燃料通路50内での燃圧脈動が抑制されるようになる。
【0031】
次に、上記最大リフト量可変装置について図2を参照して詳しく説明する。この可変装置は、カムシャフト35に取り付けられた3次元カムであるポンプカム36、同ポンプカム36をカムシャフト35の軸線方向(カム軸方向)に変位させる油圧アクチュエータ40、同油圧アクチュエータ40を駆動制御するためのオイルコントロールバルブ(OCV)70等を備えて構成されている。
【0032】
上記ポンプカム36は、カムシャフト35の軸線を挟んで互いに反対方向へ突出する二つのカム山36aを有している。そのカム山36aの高さ(突出量)は同図2に矢印A1で示す方向に向かうにつれて徐々に大となる。従って、ポンプカム36を矢印A1と逆方向に変位させるほど、ポンプリフタ26(プランジャ22)の最大リフト量が徐々に大きくなる。そして、本実施の形態では、ポンプカム36の図中左端がポンプリフタ26と当接したときにプランジャ22の最大リフト量が「0」になり、ポンプカム36の図中右端がポンプリフタ26と当接したときにプランジャ22の最大リフト量が最も大きくなる。
【0033】
また、ポンプカム36が取り付けられるカムシャフト35は回転可能、且つその軸線方向に移動可能にエンジン11の図示しないシリンダヘッドに配設されている。このカムシャフト35の一端側(図中右端側)には、上記油圧アクチュエータ40が配設されている。
【0034】
このアクチュエータ40は、ケース41内にカム軸方向へ変位可能に配設されたピストン43を有して構成されている。このピストン43にはカムシャフト35と同一軸線上で延びるロッド42の一端が連結され、同ロッド42の他端にはベアリング44等を介してカムシャフト35が連結されている。そして、ケース41内は、ピストン43により油圧室45aと油圧室45bとに仕切られている。
【0035】
これら油圧室45a、45bには、オイルポンプ71から吐出される作動油がOCV70及び油通路46a、46bを介して選択的に供給されるようになっている。OCV70は、油圧室45a、45bとオイルポンプ71との接続状態を切り換えるためのものであって、ECU60によって駆動制御される。ECU60は、OCV70を駆動制御することにより、油圧室45a、45bへの作動油の供給を制御する。そして、油圧室45a内に作動油が供給されるとピストン43(ポンプカム36)が矢印A1方向へ移動し、プランジャ22の最大リフト量が小となって吸入行程中に低圧燃料通路50から加圧室23内に吸入される燃料が少なくなる。また、45b内に作動油が供給されると、ピストン43(ポンプカム36)が矢印A1と逆方向に移動し、プランジャ22の最大リフト量が大きくなって吸入行程中に低圧燃料通路50から加圧室23内に吸入される燃料が多くなる。
【0036】
ECU60は、高圧燃料通路53への燃料圧送量の要求値に応じてOCV70を駆動制御することにより、カムシャフト35の軸線方向についてのポンプカム36の位置を調節し、上記要求値よりも僅かに多い量の燃料が吸入行程中に低圧燃料通路50から加圧室23に吸入されるようにする。即ち、ECU60は、エンジン11の運転状態に応じて変化する上記要求値が小となるほど、ポンプカム36が徐々に図中矢印A1方向に変位するようOCV70を駆動制御し、プランジャ22の最大リフト量が徐々に小さくなるようにする。そして、このようにプランジャ22の最大リフト量を可変とすることで、加圧室23に吸入される燃料量を上記要求値よりも僅かに大きい値に調整する。言い換えれば、ECU60は、加圧室23に吸入される燃料量が上記要求値よりも僅かに大きい値となるよう上記最大リフト量の可変量を設定し、こうした設定に基づき最大リフト量を変更する。
【0037】
次に、上記のように高圧燃料通路53への燃料圧送量の要求値に応じてプランジャ22の最大リフト量を可変とした場合、吸入行程中でのスピル弁25の閉弁開始時期(閉弁期間)、高圧燃料通路53への燃料圧送量、及び加圧室23から低圧燃料通路50に戻される燃料の量が、従来と比較してどのように変化するかについて、図3及び図4を参照して説明する。なお、図3(a)はポンプカム36の回転(カム角度の変化)に伴うプランジャ22のリフト量変化の概念を示すものであって図4(a)と対応しており、図3(b)ポンプカム36の回転に伴うはスピル弁25の開閉態様を示すものであって図4(b)と対応している。
【0038】
図3(a)に示されるように、高負荷時など高圧燃料通路53への燃料圧送量の要求値が大であるときには、プランジャ22の最大リフト量が大とされる。この状態にあって、吸入行程中に低圧燃料通路50から加圧室23に吸入される燃料量は、上記要求値よりも僅かに多い値になる。そして、ECU60は、圧送行程中におけるスピル弁25の閉弁開始時期(閉弁期間)を制御し、高圧燃料通路53への燃料圧送量を高い精度で要求される値へと調量する。圧送行程中において、スピル弁25の閉弁に基づき加圧室23から高圧燃料通路53に圧送される量は、図中Cで示される部分の面積に対応した値となる。また、圧送行程中においてスピル弁25の開弁中には、加圧室23内の燃料が高圧燃料通路53に圧送されない余剰の燃料として低圧燃料通路50に戻される。低圧燃料通路50に戻される余剰燃料の量は、加圧室23に吸入された燃料が上記燃料圧送量の要求値よりも僅かに多い量であることから少ないものとなり、図3(a)にBで示される部分の面積に対応した値となる。
【0039】
一方、低負荷時など高圧燃料通路53への燃料圧送量の要求値が小であるときには、図3(a)に示されるようにプランジャ22の最大リフト量が高負荷時よりも小となる。この状態にあっても、吸入行程中に低圧燃料通路50から加圧室に吸入される燃料量は、上記要求値よりも僅かに多い値になる。そして、ECU60は、圧送行程中におけるスピル弁25の閉弁開始時期(閉弁期間)を制御し、高圧燃料通路53への燃料圧送量を高い精度で要求される値へと調量する。
【0040】
こうした圧送行程中におけるスピル弁25の閉弁開始時期の制御は、要求される燃料圧送量に応じて可変とされるプランジャ22の最大リフト量を加味して行われる。即ち、加圧室23に吸入される燃料量が上記燃料圧送量の要求値よりも僅かに多い値となるようプランジャ22の最大リフト量が可変とされるため、これに対応してスピル弁25の閉弁開始時期が従来に比べて早い時期となるよう制御される。これは、従来は高負荷時にも要求される燃料圧送量が得られるようプランジャ22の最大リフト量が一定値に設定されるためである。このように本実施の形態ではプランジャ22の最大リフト量に応じてスピル弁25の閉弁開始時期が制御されるようになる。
【0041】
また、圧送行程中においては、スピル弁25の閉弁開始前の開弁中に、加圧室23内の燃料が低圧燃料通路50に戻される。しかし、吸入行程で加圧室23に吸入される燃料が上記要求値よりも僅かに多い量となるため、燃料圧送量を高い精度で要求値へと制御すべく上記スピル弁25の閉弁開始時期制御が行われることに伴い、低圧燃料通路50に戻される燃料(余剰燃料)は、図3(a)にDで示されるように少ないものとなる。なお、図3(a)にDで示される部分の面積は、上記余剰燃料の量に対応したものであって、従来の余剰燃料の量に対応した値である図4(a)にHで示される部分の面積よりも小さくなる。また、吸入行程で加圧室23に吸入される燃料が上記要求値よりも僅かに多い量とされることにより、高圧燃料通路53への燃料圧送量に不足が生じることもなくなる。
【0042】
ところで、要求される燃料圧送量の変化に応じてプランジャ22の最大リフト量を変化させる場合には、油圧アクチュエータ40を動かすための作動油の流動抵抗等に起因して同最大リフト量の変化に応答遅れが生じる。ただし、こうした応答遅れの期間中にあっても、ECU60を通じて燃料圧送量を要求値へと調量すべくスピル弁25の閉弁開始時期(閉弁期間)の制御が行われる。そのため、上記最大リフト量の変化に応答遅れが生じても、同応答遅れに伴い燃料圧送量の調量精度が低下するのを抑制することができる。
【0043】
以上詳述したように、この実施の形態にかかる内燃機関の高圧燃料供給装置によれば、以下に示すような優れた効果が得られるようになる。
(1)プランジャ22の最大リフト量を可変とすることでプランジャ22の往復移動幅が変更され、高圧燃料ポンプ20の吸入行程中に加圧室23に吸入される燃料の量が変化する。吸入行程中に加圧室23に吸入された燃料のうち、高圧燃料通路53に圧送される燃料については、その圧送量が圧送行程中でスピル弁25の開閉を通じて要求される値へと精度よく調量される。一方、圧送行程中に加圧室23から高圧燃料通路53へと圧送されない燃料については、同圧送行程でのスピル弁25の開弁中に加圧室23から低圧燃料通路50へと戻されることとなる。従って、高圧燃料通路53への燃料圧送量の要求値に応じて同要求値が小さくなるほどプランジャ22の最大リフト量を小とし、上記要求値に対応した分の燃料を吸入行程中に加圧室23に吸入することで、圧送行程中に加圧室23から低圧燃料通路50に戻される燃料が少なくなる。こうしてスピル弁25の開閉制御を通じた高圧燃料通路53への燃料圧送量の調量精度を維持しつつ、加圧室23から低圧燃料通路50に戻される燃料を的確に少なくし、低圧燃料通路50内での燃圧脈動を抑制することができる。
【0044】
(2)吸入行程中に加圧室23に吸入される燃料の量が高圧燃料通路53への燃料圧送量の要求値よりも僅かに多くなるよう、ECU60を通じて最大リフト量の設定が行われ、同可変量の設定に基づきプランジャ22の最大リフト量が変更される。このように加圧室23に吸入される燃料を上記要求値よりも僅かに多くすることで、高圧燃料通路53に圧送される燃料の圧送量に不足を生じさせることなく、且つ低圧燃料通路50に戻される燃料を極力少なくすることができる。
【0045】
(3)プランジャ22の最大リフト量を変更することは、3次元カムであるポンプカム36を油圧アクチュエータ40によりカムシャフト35の軸線方向(カム軸方向)へ移動させることによって行われる。そして、ポンプカム36をカム軸方向へ徐々に移動させると、これに応じてプランジャ22の最大リフト量も徐々に変化し、吸入行程中に加圧室23に吸入される燃料の量も徐々に変化する。従って、カム軸方向についてのポンプカム36の位置を調節することにより、加圧室23に吸入される燃料の量を適切な値へと的確に制御することができる。
【0046】
(4)圧送行程中におけるスピル弁25の閉弁開始時期(閉弁期間)を制御することにより、加圧室23から高圧燃料通路53への燃料圧送量が精度よく要求値へと調量されるとともに、加圧室23から高圧燃料通路53に戻される余剰の燃料の量が変化する。従って、燃料圧送量の要求値及びプランジャ22の最大リフト量に応じてスピル弁25の閉弁開始時期(閉弁期間)を制御することにより、高圧燃料通路53への燃料圧送量を要求値へと的確に調量しつつ、加圧室23から低圧燃料通路50に戻される余剰の燃料量を的確に少なくすることができる。
【0047】
(5)高圧燃料通路53への燃料圧送量の要求値が変化する場合において、この変化に応じてプランジャ22の最大リフト量を変化させる際に応答遅れが生じても、圧送行程中でのスピル弁25の開閉制御を通じて上記燃料圧送量が要求値へと精度よく調量される。従って、上記のように最大リフト量の変化に応答遅れが生じても、同応答遅れに伴い燃料圧送量の調量精度が低下するのを抑制することができる。
【0048】
(6)低圧燃料通路50内の燃圧脈動が過度に大きくなる場合には、通常、同低圧燃料通路50中における継ぎ手等の部品を上記燃圧脈動に耐え得る信頼性の高いものにしたり、上記燃圧脈動に起因する脈動音を遮蔽するための遮音材を設けたりしなければならないが、こうした過大な燃圧脈動に起因する問題の対策を講じる必要がなくなる。
【0049】
なお、上記実施の形態は、例えば以下のように構成を適宜変更することもできる。
・低圧燃料通路50内に生じる燃圧脈動の一層の抑制を図るべく、低圧燃料通路50の途中にパルセーションダンパ等を設けてもよい。
【0050】
・ポンプカム36において、そのカム山36aの数を三つ等に変更したり、カム軸方向ついてのカム山36aの傾斜角度を適宜変更したりしてもよい。
・上記実施の形態では、圧送行程中におけるスピル弁25の閉弁期間時期を制御して閉弁期間を調整することにより、高圧燃料通路53への燃料圧送量を調量したが、本発明はこれに限定されない。例えば、スピル弁25の閉弁開始時期を圧送行程初期に固定するとともに、スピル弁25の閉弁終了時期を制御して閉弁期間を調整することにより、高圧燃料通路53への燃料圧送量を調量してもよい。この場合、圧送行程中において燃料圧送量が要求値に達したときにスピル弁25を開弁するよう同スピル弁25の開閉制御を行うことにより、一層的確に要求される燃料圧送量を得ることができる。
【0051】
・上記実施の形態において、吸入行程で加圧室23に吸入される燃料の量は、必ずしも高圧燃料通路53への燃料圧送量の要求値よりも僅かに多い量である必要はない。
【0052】
・上記実施の形態では、油圧アクチュエータ40によりポンプカム36をカム軸方向へ変位させたが、ポンプカム36をカム軸方向へ変位させる油圧アクチュエータとして、例えば電動モータなどその他のアクチュエータを採用してもよい。
【0053】
・上記実施の形態では、3次元カムであるポンプカム36をカム軸方向へ移動させてプランジャ22の最大リフト量を変更したが、本発明はこれに限定されない。例えば、カム山の高さが異なる複数のカムを備えるとともに、これらカムのうちの一つがプランジャ22を往復動させるカムとして用いられるようカムの切り換えを行うカム切換機構を設け、このカム切換機構によるカムの切り換えにより最大リフト量の変更を行ってもよい。また、最大リフト量を変更するための機構として、ポンプカムに突出片を出没可能に設けてカム山の高さを可変とする機構を採用してもよい。この機構では、突出片をポンプカムから突出させることによりカム山が高くなり最大リフト量が大とされ、突出片をポンプカムに没入させることによりカム山が低くなり最大リフト量が小とされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる高圧燃料供給装置の一実施の形態についてその概略構成を示す略図。
【図2】プランジャの最大リフト量を可変とするための最大リフト量可変装置の概略構成を示す略図。
【図3】ポンプカムの回転に伴うプランジャのリフト量変化の概念及びスピル弁の開閉弁態様を示すタイミングチャート。
【図4】ポンプカムの回転に伴うプランジャのリフト量変化の概念及びスピル弁の開閉弁態様の従来例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
11…エンジン、12…燃料タンク、13…低圧フィードポンプ、14…蓄圧配管、15…インジェクタ、20…高圧燃料ポンプ、21…ポンプシリンダ、22…プランジャ、23…加圧室、25…スピル弁(電磁スピル弁)、26…ポンプリフタ、30…弁体、35…カムシャフト、36…ポンプカム、36a…カム山、40…油圧アクチュエータ、45a、45b…油圧室、46a、46b…油通路、50…低圧燃料通路、51…燃料フィルタ、52…プレッシャレギュレータ、53…高圧燃料通路、54…逆止弁、60…電子制御装置(ECU)、70…オイルコントロールバルブ(OCV)、71…オイルポンプ。
Claims (5)
- シリンダと該シリンダ内を往復動するプランジャとにより区画形成される加圧室に低圧燃料系から燃料を吸入するとともに、同加圧室内の燃料を高圧燃料系に圧送するに際し、スピル弁の開閉制御を通じてその燃料圧送量の調量、並びに余剰燃料の前記低圧燃料系への戻流を行う内燃機関の高圧燃料供給装置において、
前記高圧燃料系への燃料圧送量の要求値に応じて前記余剰燃料の前記低圧燃料系への戻流を少なくするように前記プランジャの最大リフト量を可変とする可変手段を備える
ことを特徴とする内燃機関の高圧燃料供給装置。 - 前記可変手段は、前記燃料圧送量の要求値が小さいほど前記プランジャの最大リフト量を小とするものである
請求項1記載の内燃機関の高圧燃料供給装置。 - 前記可変手段は、前記燃料圧送量の要求値よりも僅かに多い量の燃料が前記加圧室に吸入されるようにその最大リフト量が設定されるものである
請求項1または2記載の内燃機関の高圧燃料供給装置。 - 前記可変手段は、当該機関により回転駆動されるカムシャフトに設けられて前記プランジャを往復動せしめるカムであってその軸方向にカムプロフィールが連続的に変化する3次元カムと、同3次元カムをその軸方向に変位せしめるアクチュエータとを備えて構成される
請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の高圧燃料供給装置。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の高圧燃料供給装置において、
前記スピル弁は、前記燃料圧送量の要求値及び前記可変手段により可変とされる前記プランジャの最大リフト量に応じてその開閉期間が制御される
ことを特徴とする内燃機関の高圧燃料供給装置。
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