JP4196271B2 - 印刷データ処理装置およびデータ処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クライアントコンピュータから受信した印刷データを順次イメージデータに展開する印刷データ処理装置およびクライアントコンピュータから受信したデータを順次処理するデータ処理装置にかかわり、特に、受信データの格納場所として受信バッファと補助記憶装置を備えた印刷データ処理装置およびデータ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷装置では、通常、クライアントコンピュータなどのデータ供給装置から印刷データを受信バッファに受信し、この受信バッファから展開部が印刷データを順次読み出してイメージデータに展開し、対応する画像を記録紙上に形成し出力するようになっている。印刷データがページディスクリプト言語(PDL)で記述されている場合は、受信した印刷データを解析してイメージデータに展開するまでの処理に比較的長い時間を要する。またページディスクリプト言語で記述された印刷データの解析処理はページ毎に行なわれるので、印刷データの解析中に他のページの印刷データを受信しても、他のページに対する解析処理は、現在のページに対する解析処理が終了するまで待ちになってしまう。
【0003】
クライアントコンピュータから受信した印刷データがこのような要因によって受信バッファから読み出されなくなったり、読み出し速度が遅くなったりすると、クライアントコンピュータが印刷データの送信処理のために長い間拘束されてしまう。
【0004】
そこで、受信バッファがフルになったとき、受信バッファ内の印刷データをハードディスク装置などの補助記憶装置に格納して空き領域を受信バッファに生成し、クライアントコンピュータを印刷データの送信処理から早期に解開放する技術が提案されている(たとえば、特許文献1や特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−99291号公報
【特許文献2】
特開2000−259373号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、クライアントコンピュータから到来する印刷データを大容量の補助記憶装置に格納することで、クライアントコンピュータを印刷データの送信処理から早期に解開放することができる。しかしながら、ハードディスク装置などの補助記憶装置は、データの読み書き速度が、受信バッファに使用される半導体メモリに比べて低速である。また従来は、このような低速性にもかかわらず、受信バッファに空き領域が無くなると、その後の格納先を補助記憶装置に固定的に切り替えたり、印刷データが補助記憶装置に一旦保存されると、必ず補助記憶装置の印刷データを使用したりするように構成されており、受信バッファと補助記憶装置の切り替えが効率的でなかった。
【0007】
特に、補助記憶装置を経由して印刷を行なうと、補助記憶装置への印刷データの書込処理と読出処理が並行に行なわれるため、たとえば、補助記憶装置としてハードディスク装置を使用した場合には、ハードディスク装置のヘッドが頻繁に移動し、データの読み書き速度が著しく低下する可能性があった。その結果、イメージデータに展開するための処理時間が長くなって印刷速度がさらに低下してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、印刷速度を犠牲にすることなくクライアントコンピュータを印刷データの送信処理から早期に解放することのできる印刷データ処理装置および受信したデータに対する処理速度を犠牲にすることなくクライアントコンピュータをデータの送信処理から早期に解放することのできるデータ処理装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
請求項1にかかわる発明は、印刷データを受信する受信手段(11)と、前記受信手段(11)が受信した印刷データを一時的に格納する受信バッファ(20)と、印刷データの受信処理を一時停止させる受信制御手段(11)と、印刷データを格納し得る補助記憶装置(14)と、前記補助記憶装置(14)への印刷データの書き込み動作を制御する書込制御手段(15)とを備え、
前記受信制御手段(11)は、前記受信バッファ(20)に空き領域が無くなったとき受信処理を一時停止させるとともに、受信処理を一時停止させた状態で前記受信バッファ(20)に所定量以上の空き領域が生じたとき前記一時停止を解除して受信処理を再開させるものであり、前記書込制御手段(15)は、前記受信バッファ(20)に空き領域が無くなったとき、前記受信バッファ(20)に格納されている印刷データを前記補助記憶装置(14)に書き込む書込処理を開始し、前記書込処理が完了する前に印刷データが前記受信バッファ(20)から読み出されることによって前記受信バッファ(20)に前記所定量以上の空き領域が生じたときは前記書込処理を中止するとともに今回の書込処理で前記補助記憶装置(14)に書き込んだ印刷データを前記補助記憶装置(14)から破棄し、前記書込処理が完了したときはこの書込処理で前記補助記憶装置(14)に書き込んだ印刷データが前記受信バッファ(20)において格納されていた領域を空き領域にすることを特徴とする印刷データ処理装置である。
【0010】
上記発明によれば、受信バッファ(20)が印刷データでフルになると、受信を一時停止させ、受信バッファ(20)内の印刷データを補助記憶装置(14)に移して格納する書込処理が開始される。書込処理の実行中に展開手段(13)が動作し、書込処理が完了する前に所定量以上の空き領域が受信バッファ(20)に生じたときは、補助記憶装置(14)への書込処理を中止し、かつ途中まで格納した印刷データを補助記憶装置(14)から破棄して、受信を再開する。一方、受信バッファ(20)に所定量以上の空き領域が生じる前に書込処理が完了した場合は、その分の空き領域を受信バッファ(20)に作って受信を再開する。たとえば、受信バッファ(20)内のすべての印刷データを格納した場合には、受信バッファ(20)を空にする。
【0011】
このように、一度、受信バッファ(20)がフルになって補助記憶装置(14)への格納を開始した場合でも、書込処理が完了する前に所定量以上の空き領域が受信バッファ(20)に生じると、補助記憶装置(14)の使用を中止して、受信バッファ(20)による印刷データの受け渡しが継続される。その結果、補助記憶装置(14)を経由して展開処理が行なわれる場合が少なくなり、補助記憶装置(14)の読み書きにかかわるオーバーヘッドが軽減され、印刷速度の低下が防止される。
【0012】
一方、書込処理が完了するまでに所定量以上の空き領域が受信バッファ(20)に生じなかったときは、補助記憶装置(14)への印刷データの書込処理を完了させて受信バッファ(20)にその分の空き領域を作るので、クライアントコンピュータを印刷データの送信処理から早期に解放することができる。また受信バッファ(20)内のデータ量のみに着目して補助記憶装置(14)への書き込みを制御するので、システムの様々な状況に応じた複雑な条件判断を必要とせず、印刷装置等への実装が容易になり、異機種への再利用も可能になる。
【0013】
請求項2にかかわる発明は、前記受信制御手段(11)は、前記受信バッファ(20)に格納されている印刷データのデータ量が第1の閾値(21)を下回ったとき前記受信処理を前記高速受信モードにし、前記第1の閾値(21)より前記受信バッファ(20)の空き領域が少なくなる第2の閾値(22)を前記受信バッファ(20)に格納されている印刷データのデータ量が上回ったとき前記受信処理を前記高速受信モードよりも受信速度が低速になる前記低速受信モードにし、前記受信バッファ(20)に空き領域が無くなったとき前記受信処理を一時停止モードにし、前記一時停止モードの状態で前記受信バッファ(20)に格納されている印刷データのデータ量が前記受信バッファ(20)に前記所定量の空き領域が生じる第3の閾値(23)を下回ったとき前記一時停止モードを解除して受信処理を再開させることを特徴とする請求項1に記載の印刷データ処理装置である。
【0014】
上記発明によれば、受信バッファ(20)に格納されている印刷データのデータ量(すなわち、受信バッファ(20)の空き領域の大きさ)に応じて、受信処理を高速受信モードと低速受信モードに切り替える。また受信バッファ(20)が印刷データでフルになると、受信バッファ(20)の印刷データを補助記憶装置(14)に移して格納する書込処理を開始し、書込処理の完了前に所定量以上の空き領域が受信バッファ(20)に生じた場合には、補助記憶装置(14)への書込処理を中止し、かつ途中まで格納した印刷データを補助記憶装置(14)から破棄し、受信を再開する。一方、書込処理が完了したときはその分の空き領域を受信バッファ(20)に生成して、受信を再開する。
【0015】
このように、受信バッファ(20)内のデータ量に応じた制御を行なうので、展開手段(13)が印刷データを受信バッファ(20)から読み出す速度とクライアントコンピュータ等から印刷データを受信する速度との関係が様々に変化しても、常に受信処理と展開処理が最適なバランスとなって効率の良い処理が実行される。特に、一旦、補助記憶装置(14)への書き込みを始めても、後で不要と判断された場合は、書込処理を中断するので、補助記憶装置(14)を経由することによりオーバーヘッドが軽減される。
【0016】
また受信バッファ(20)内のデータ量のみに着目して補助記憶装置(14)への書き込みを制御するので、システムの様々な状況に応じた複雑な条件判断を必要とせず、印刷装置等への実装が容易になるほか、異機種への再利用性が高まる。
【0017】
請求項3にかかわる発明は、前記印刷データ処理装置は、さらに、前記受信バッファ(20)または前記補助記憶装置(14)から印刷データを読み出してイメージデータに展開する展開手段(13)を備え、
該展開手段(13)は、前記書込処理の完了した印刷データが前記補助記憶装置(14)に存在する場合は、書き込まれた順に印刷データを前記補助記憶装置(14)から読み出してイメージデータに展開し、前記書込処理の完了した印刷データが前記補助記憶装置(14)に存在しない場合は、前記受信バッファ(20)にある印刷データを読み出してイメージデータに展開することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷データ処理装置である。
【0018】
請求項にかかわる発明は、データを受信する受信手段(11)と、前記受信手段(11)が受信したデータを一時的に格納する受信バッファ(20)と、データの受信処理を一時停止させる受信制御手段(11)と、データを格納し得る補助記憶装置(14)と、前記補助記憶装置(14)へのデータの書き込み動作を制御する書込制御手段(15)とを備え、
前記受信制御手段(11)は、前記受信バッファ(20)に空き領域が無くなったとき受信処理を一時停止させるとともに、受信処理を一時停止させた状態で前記受信バッファ(20)に所定量以上の空き領域が生じたとき前記一時停止を解除して受信処理を再開させるものであり、前記書込制御手段(15)は、前記受信バッファ(20)に空き領域が無くなったとき、前記受信バッファ(20)に格納されているデータを前記補助記憶装置(14)に書き込む書込処理を開始し、前記書込処理が完了する前にデータが前記受信バッファ(20)から読み出されることによって前記受信バッファ(20)に前記所定量以上の空き領域が生じたときは前記書込処理を中止するとともに今回の書込処理で前記補助記憶装置(14)に書き込んだデータを前記補助記憶装置(14)から破棄し、前記書込処理が完了したときはこの書込処理で前記補助記憶装置(14)に書き込んだデータが前記受信バッファ(20)において格納されていた領域を空き領域にすることを特徴とするデータ処理装置である。
請求項にかかわる発明は、前記データ処理装置は、さらに、前記受信バッファ(20)または前記補助記憶装置(14)からデータを順次読み出して所定の処理を実行する処理手段を備え、
該処理手段は、前記書込処理の完了したデータが前記補助記憶装置(14)に存在する場合は、書き込まれた順にデータを前記補助記憶装置(14)から読み出して前記所定の処理を実行し、前記書込処理の完了したデータが前記補助記憶装置(14)に存在しない場合は、前記受信バッファ(20)にあるデータを読み出して前記所定の処理を実行することを特徴とする請求項に記載のデータ処理装置である。
上記発明によれば、受信バッファ(20)がデータでフルになると、受信を一時停止し、受信バッファ(20)に格納されているデータを補助記憶装置(14)に移して格納する書込処理が開始される。書込処理の実行中に処理手段が動作し、書込処理が完了する前に所定量以上の空き領域が受信バッファ(20)に生じたときは、補助記憶装置(14)への書込処理を中止し、かつ途中まで格納したデータを補助記憶装置(14)から破棄して、受信を再開する。一方、受信バッファ(20)に所定量以上の空き領域が生じる前に書込処理が完了した場合には、この書込処理で補助記憶装置(14)に格納したデータの分だけ受信バッファ(20)に空き領域が生成される。
【0019】
このように、一度、受信バッファ(20)がフルになって補助記憶装置(14)への格納を開始した場合でも、書込処理が完了する前に所定量以上の空き領域が受信バッファ(20)に生じると、補助記憶装置(14)の使用を中止し、受信バッファ(20)を用いたデータの受け渡しが継続される。その結果、補助記憶装置(14)を経由して処理が行なわれる場合が少なくなり、補助記憶装置(14)の読み書きにかかわるオーバーヘッドが軽減され、処理速度の低下が防止される。また書込処理が完了したときは、補助記憶装置(14)へのデータの書込処理を完了させて受信バッファ(20)にその分の空き領域を作るので、クライアントコンピュータをデータの送信処理から早期に解放することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の一実施の形態を説明する。
図2は、本発明の実施の形態にかかわる印刷データ処理装置10の機能構成を示している。印刷データ処理装置10は、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)などのネットワークを介してクライアントコンピュータ等の印刷データ送信装置から印刷データを受信し、これをイメージデータに展開し、対応する画像を記録紙に形成して出力するプリンタ装置や印刷装置としての機能を備えている。
【0021】
印刷データ処理装置10は、CPU(中央処理装置)とROM(リード・オンリ・メモリ)とRAM(ランダム・アクセス・メモリ)とを主要部とした回路で構成され、受信部11と、受信バッファ20と、受信バッファ管理部12と、展開手段13と、補助記憶装置14と、補助記憶書込部15と、印刷バッファ16と、印刷制御部17としての機能を備えている。受信バッファ20と印刷バッファ16にはそれぞれRAM上の所定領域が割り当てられている。
【0022】
受信部11は、ネットワークを通じてクライアントコンピュータなどの印刷データ送信装置から印刷データを受信する機能と、受信した印刷データを受信バッファ20に書き込む機能を備えている。印刷データの受信処理には、高速受信モードと、これよりも受信処理が低速になる低速受信モードと、受信処理を一時停止させる一時停止モードがある。受信部11は、これらのモードを切り替える受信制御手段としての機能を果たす。たとえば、低速受信モードの切り替えは、リアルタイムオペレーティングシステムを用いている場合には、受信処理にかかわるタスクの優先度を落としたり、受信部11が何らかの待ちを行なったりすることで実現される。
【0023】
受信バッファ管理部12は、RAM上の所定領域に配置された受信バッファ20を管理する機能を果たす。受信バッファ管理部12は、受信バッファ20に格納されている印刷データのデータ量と比較される第1の閾値21と、第2の閾値22と、第3の閾値23を記憶している。これらの閾値21〜23は予め定めた固定値であってもよいし、後から再設定可能なものであってもよい。受信バッファ管理部12は、常に受信バッファ20内のデータ量を認識しており、受信バッファ20内のデータ量が上記の閾値21〜23を上回ったときと、下回ったときと、受信バッファ20がフル(空き領域無し)になったときに、その旨を受信部11と補助記憶書込部15とを含めた各種の処理部(たとえば、各タスクの優先度を制御する部分)に通知する機能を備えている。
【0024】
補助記憶装置14は、ハードディスク装置など大容量の記憶装置で構成され、印刷データを保存することができる。補助記憶書込部15は書込制御手段としての役割を果たし、受信バッファ管理部12から到来する通知に応じて受信バッファ20内の印刷データを補助記憶装置14に書き込む書込処理の実行機能を有している。また、この書込処理を途中で中止し、かつ中止するまでに今回の書込処理で書き込んだ印刷データおよびこれに関連するデータを補助記憶装置14から破棄する機能を有する。さらに書込処理が完了したときは、その旨を受信バッファ管理部12に通知するようになっている。この通知には書き込んだデータ量も含まれる。
【0025】
展開手段13は、受信バッファ管理部12または補助記憶装置14から印刷データを読み出し、これを解析してラスタイメージデータに展開する機能を果たす。展開手段13は、テキストデータのほか、各種のページディスクリプト言語に対応している。印刷バッファ16は、RAM上に配置されており、展開手段13が展開したラスタイメージデータを格納する。印刷制御部17は、印刷バッファ16内のラスタイメージデータを読み出して、対応する画像を記録紙に形成して出力する機能を果たす。
【0026】
次に上記構成を有する印刷データ処理装置10の動作を説明する。
図1は、受信側の状態遷移を、図3は、展開側の状態遷移を示している。受信開始時には、受信バッファ20内のデータ量が第1の閾値21を下回っている(通常はデータ無なし)ので、高速受信モードで受信処理が行なわれる(図1、St1)。
【0027】
その後、受信バッファ20内のデータ量が増加し、受信バッファ管理部12から受信部11に対してデータ量が第2の閾値22を上回った旨の通知があると、受信部11は受信処理の優先度を落として、低速受信モードに遷移する(St2)。低速受信モードでは、受信処理の優先度が落ちることにより、展開手段13が動作可能な状態にあれば、展開手段13の処理が受信部11の処理より優先され、受信バッファ20内のデータ量が減る傾向になる。
【0028】
低速受信モードに切り替えた結果、受信バッファ20内のデータ量が減少し、受信バッファ管理部12から受信部11に、受信バッファ20内のデータ量が第1の閾値21を下回った旨の通知があると、受信処理は再び高速受信モードになる(St1)。このように、受信バッファ20内のデータ量に応じて低速受信モードと高速受信モードとの切り替えによる優先度制御が行なわれる。たとえば、リアルタイムオペレーティングシステムを用いて実装した場合は、優先度制御を行なわない場合に比べて、タスクの切り替え回数を少なくすることができ、タスクの切り替えに基づくオーバーヘッドが軽減される。
【0029】
低速受信モードの状態(St2)において、受信バッファ20がフル(空き領域無し)になると、補助記憶装置14への退避状態(St3)に遷移する。すなわち、受信バッファ管理部12から受信部11に対して、受信バッファ20がフル(空き領域無し)になった旨の通知があると、受信部11は受信処理を一時停止する。これと同時に、受信バッファ管理部12から補助記憶書込部15に受信バッファ20がフルである旨の通知が出され、これを受けた補助記憶書込部15は受信バッファ20内の印刷データ(PDLデータ)を補助記憶装置14に書き込む書込処理を開始する。
【0030】
低速受信モードになっているにもかかわらず受信バッファ20がフルになって退避状態(St3)に遷移するのは、展開手段13の展開処理が非常に低速で動作しているか、あるいは停止していると考えられる。このような状況では、展開処理以降の速度を優先するよりも、受信を早く終わらせて、クライアントコンピュータを印刷データの送信処理から早く解放する方が、ユーザーにとってのメリットが大きい。そこで、受信を再開できるように受信バッファ20内の印刷データを補助記憶装置14に退避する書込処理を開始させている。書込処理では、受信バッファ20に格納されている印刷データを一括して書き込んでもよいし、受信バッファ20をブロックに分けて管理している場合は、ブロック単位に書き込んでもよい。また、補助記憶装置14上にファイルシステムを構成しておけば、データを管理し易くなる。
【0031】
書込処理が完了する前に、受信バッファ管理部12から補助記憶書込部15に対して受信バッファ20内のデータ量が第3の閾値23を下回った旨の通知があると、補助記憶書込部15は補助記憶装置14への書込処理を中止し、今回の書込処理が無かった状態となるように補助記憶装置14上の関連するデータを破棄する。
【0032】
受信バッファ20内のデータ量が第3の閾値23を下回った旨の通知は受信部11にも同時に出され、これを受けた受信部11は、低速受信モードに移行して受信処理を再開させる。このように受信バッファ20内のデータ量が書込処理の完了前に第3の閾値23を下回ったということは、それまで低速または停止していた展開処理が高速で動作する状態に復旧したと考えられる。そこで、データの入出力速度が低速な補助記憶装置14への退避を即刻中止し、受信バッファ20のみを介して印刷データが展開手段13に引き渡される状態に再度切り替えることで、展開処理が無駄に低速になることを防止している。
【0033】
受信バッファ20内のデータ量が第3の閾値23を下回ることなく補助記憶書込部15への書込処理が完了した場合は、受信バッファ20内の印刷データは不要になるので破棄する。そして受信処理を再開して受信を続行する。ここでは、高速受信モードに遷移して受信処理を再開している。
【0034】
展開手段13は、図3に示すように、書込処理が完了した印刷データが補助記憶装置14上にあれば(St10)、それを読み出して、ラスタイメージデータへの展開処理を実施する。その後、展開済みの印刷データを補助記憶装置14から削除する。書込処理が完了した印刷データが補助記憶装置14上に無ければ(St11)、受信バッファ20から優先的に印刷データを読み出して、ラスタイメージデータへの展開処理を実施する。
【0035】
なお、補助記憶装置14への書込処理が始まってから完了するまでの間に、受信バッファ20内のデータ量が第3の閾値23を下回らない範囲で展開手段13が受信バッファ20から印刷データを読み出して展開処理を行なうことがある。このような場合は、補助記憶装置14に退避した印刷データの先頭部分が既に展開済みなので、重複展開を避けるためには補助記憶装置14から読み出した印刷データに対する展開処理の開始位置を調整して整合を取る必要がある。たとえば、書込処理の実行中に展開手段13が受信バッファ20から読み出したデータ量をどこかに記憶しておき、後でこれを参照して展開処理の開始位置を調整するように構成するとよい。
【0036】
図4から図6は、上記の動作に伴って、受信バッファ20内のデータ量が遷移する様子の各種の例を示している。図4(a)は、受信開始直後で、受信バッファ20内のデータ量が第2の閾値22をまだ越えておらず、高速受信モードで受信が行なわれている状態を示している。図4(b)は、受信バッファ20内のデータ量が第2の閾値22を上回り、低速受信モードに切り替えて受信処理が行なわれている状態を示している。図4(c)は、その後、受信バッファ20内のデータ量が第1の閾値21を下回り、再び高速受信モードになった状態を示している。
【0037】
図5(a)は、受信開始直後であって受信バッファ20内のデータ量が第2の閾値22を上回っておらず、高速受信モードで受信が行なわれている状態を示している。図5(b)は、受信バッファ20内のデータ量が第2の閾値22を上回り、低速受信モードで受信処理が行なわれている状態を示している。図5(c)は、受信バッファ20がフルになって、受信が一時停止し、補助記憶装置14への書込処理を開始した状態を示している。図5(d)は、補助記憶装置14への書込処理が完了する前に展開手段13が受信バッファ20から印刷データを読み出して展開処理し、受信バッファ20内のデータ量が第3の閾値23を下回った状態を示している。書込処理の完了前にデータ量が第3の閾値23を下回ると、補助記憶装置14への書込処理が中止され、補助記憶装置14上の関連データが破棄されて受信処理が再開される。
【0038】
図6(a)は、受信開始直後の高速受信モードの状態を示している。その後、図6(b)に示すように受信バッファ20内のデータ量が第2の閾値22を上回ると、低速受信モードに切り替わる。図6(c)に示すように受信バッファ20がフルになると、受信が一時停止し、補助記憶装置14への書込処理が開始する。図6(d)は、受信バッファ20内のデータ量が第3の閾値23を下回ること無く補助記憶装置14への書込処理が完了し、受信バッファ20内のデータが破棄され、空き領域が生じて受信バッファ20が空になった状態を示している。受信バッファ20内のデータ量が第1の閾値21を下回っているので、高速受信モードで受信処理が再開されている。
【0039】
以上、本発明の実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。たと例えば、実施の形態では、補助記憶装置14への書込処理において、受信バッファ20内のすべてのデータを補助記憶装置14に退避したが、一部のデータだけを退避するように構成してもよい。一部のデータだけを退避した場合は、その分だけ受信バッファ20内のデータを破棄して空き領域を生成すればよい。なお、一部のみを退避する場合は、書込処理の完了後に低速受信モードで受信処理を再開するように構成してもよい。また、書込処理の完了によって生じた空き領域の大きさに応じて、高速受信モードに移行するか低速受信モードに移行するかを切り替えるように構成するとよい。
【0040】
また実施の形態では、印刷データを受信し、これをイメージデータに展開する機能を備えた印刷データ処理装置を例に説明したが、受信するデータは印刷データでなくてもよく、また受信したデータに対する処理はイメージデータへの展開処理に限定されない。すなわち、受信したデータに対して処理手段が所定の処理を施すデータ処理装置についても本発明は有効である。
【0041】
このほか実施の形態では、3つの閾値を、第1の閾値21<第2の閾値22<第3の閾値23の関係に設定したが、第3の閾値23が第2の閾値22より高い必要はない。第3の閾値23は受信バッファ20にある程度の空き領域が生じる値であればよく、他の閾値と相関無く任意の値に設定することができる。さらに、実施の形態では、受信処理を高速受信モードと低速受信モードに切り替えることで処理の最適化を図ったが、受信速度の切り替え機能は無くてもかまわず、受信バッファ20がフルのときに受信を一時停止する機能を備えていればよい。
【0042】
【発明の効果】
本発明に係かかる印刷データ処理装置およびデータ処理装置によれば、一度、受信バッファがフルになって補助記憶装置への格納を開始した場合でも、書込処理が完了する前に所定量以上の空き領域が受信バッファに生じると、補助記憶装置の使用を中止し、受信バッファによるデータの受け渡しが継続するようになっている。これにより、処理速度や印刷速度を犠牲にすることなくクライアントコンピュータをデータの送信処理から早期に解放することができる。すなわち、補助記憶装置を経由して展開等の処理が行なわれる場合が少なくなり、補助記憶装置の読み書きにかかわるオーバーヘッドが軽減され、処理速度や印刷速度の低下が防止される。また補助記憶装置への書込処理が完了したときは、受信バッファに空き領域が生じて受信処理が再開されるので、クライアントコンピュータをデータの送信処理から早期に解放することができる。
【0043】
さらに、受信バッファに格納されている印刷データのデータ量に応じて、受信処理を高速受信モードと低速受信モードに切り替える機能を備えたものでは、展開手段が印刷データを受信バッファから読み出す速度とクライアントコンピュータから印刷データを受信する速度との関係が様々に変化しても、常に受信処理と展開処理とが最適なバランスとなって効率良く処理が実行される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷データ処理装置における受信側の状態遷移図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る印刷データ処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る印刷データ処理装置における展開側の状態遷移図である。
【図4】低速受信モードから高速受信モードに復帰する場合における受信バッファ内のデータ量の遷移の一例を示す説明図である。
【図5】受信バッファがフルになってから補助記憶装置への書込処理が完了する前にデータ量が第3の閾値を下回った場合における受信バッファ内のデータ量の遷移の一例を示す説明図である。
【図6】受信バッファがフルになった後、補助記憶装置への書込処理が完了した場合における受信バッファ内のデータ量の遷移の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
10…印刷データ処理装置
11…受信部
12…受信バッファ管理部
13…展開手段
14…補助記憶装置
15…補助記憶書込部
16…印刷バッファ
17…印刷制御部
20…受信バッファ
21…第1の閾値
22…第2の閾値
23…第3の閾値

Claims (5)

  1. 印刷データを受信する受信手段と、
    前記受信手段が受信した印刷データを一時的に格納する受信バッファと、
    印刷データの受信処理を一時停止させる受信制御手段と、
    印刷データを格納し得る補助記憶装置と、
    前記補助記憶装置への印刷データの書き込み動作を制御する書込制御手段とを備え、
    前記受信制御手段は、前記受信バッファに空き領域が無くなったとき受信処理を一時停止させるとともに、受信処理を一時停止させた状態で前記受信バッファに所定量以上の空き領域が生じたとき前記一時停止を解除して受信処理を再開させるものであり、
    前記書込制御手段は、前記受信バッファに空き領域が無くなったとき、前記受信バッファに格納されている印刷データを前記補助記憶装置に書き込む書込処理を開始し、前記書込処理が完了する前に印刷データが前記受信バッファから読み出されることによって前記受信バッファに前記所定量以上の空き領域が生じたときは前記書込処理を中止するとともに今回の書込処理で前記補助記憶装置に書き込んだ印刷データを前記補助記憶装置から破棄し、前記書込処理が完了したときはこの書込処理で前記補助記憶装置に書き込んだ印刷データが前記受信バッファにおいて格納されていた領域を空き領域にする
    ことを特徴とする印刷データ処理装置。
  2. 前記受信制御手段は、前記受信バッファに格納されている印刷データのデータ量が第1の閾値を下回ったとき前記受信処理を高速受信モードにし、前記第1の閾値より前記受信バッファの空き領域が少なくなる第2の閾値を前記受信バッファに格納されている印刷データのデータ量が上回ったとき前記受信処理を前記高速受信モードよりも受信速度が低速になる前記低速受信モードにし、前記受信バッファに空き領域が無くなったとき前記受信処理を一時停止モードにし、前記一時停止モードの状態で前記受信バッファに格納されている印刷データのデータ量が前記受信バッファに前記所定量の空き領域が生じる第3の閾値を下回ったとき前記一時停止モードを解除して受信処理を再開させる
    ことを特徴とする請求項1に記載の印刷データ処理装置。
  3. 前記印刷データ処理装置は、さらに、前記受信バッファまたは前記補助記憶装置から印刷データを読み出してイメージデータに展開する展開手段を備え、
    該展開手段は、前記書込処理の完了した印刷データが前記補助記憶装置に存在する場合は、書き込まれた順に印刷データを前記補助記憶装置から読み出してイメージデータに展開し、前記書込処理の完了した印刷データが前記補助記憶装置に存在しない場合は、前記受信バッファにある印刷データを読み出してイメージデータに展開する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷データ処理装置。
  4. データを受信する受信手段と、
    前記受信手段が受信したデータを一時的に格納する受信バッファと、
    データの受信処理を一時停止させる受信制御手段と、
    データを格納し得る補助記憶装置と、
    前記補助記憶装置へのデータの書き込み動作を制御する書込制御手段とを備え、
    前記受信制御手段は、前記受信バッファに空き領域が無くなったとき受信処理を一時停止させるとともに、受信処理を一時停止させた状態で前記受信バッファに所定量以上の空き領域が生じたとき前記一時停止を解除して受信処理を再開させるものであり、
    前記書込制御手段は、前記受信バッファに空き領域が無くなったとき、前記受信バッファに格納されているデータを前記補助記憶装置に書き込む書込処理を開始し、前記書込処理が完了する前にデータが前記受信バッファから読み出されることによって前記受信バッファに前記所定量以上の空き領域が生じたときは前記書込処理を中止するとともに今回の書込処理で前記補助記憶装置に書き込んだデータを前記補助記憶装置から破棄し、前記書込処理が完了したときはこの書込処理で前記補助記憶装置に書き込んだデータが前記受信バッファにおいて格納されていた領域を空き領域にする
    ことを特徴とするデータ処理装置。
  5. 前記データ処理装置は、さらに、前記受信バッファまたは前記補助記憶装置からデータを順次読み出して所定の処理を実行する処理手段を備え、
    該処理手段は、前記書込処理の完了したデータが前記補助記憶装置に存在する場合は、書き込まれた順にデータを前記補助記憶装置から読み出して前記所定の処理を実行し、前記書込処理の完了したデータが前記補助記憶装置に存在しない場合は、前記受信バッファにあるデータを読み出して前記所定の処理を実行する
    ことを特徴とする請求項に記載のデータ処理装置。
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