JP4196268B2 - 位置調整式ステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステアリングホイールの位置をチルト調整またはテレスコ調整可能な位置調整式ステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
運転者の体格や運転姿勢等に応じてステアリングホイールの高さを変えられるようにしたチルトステアリング装置がある。また、上記のチルトステアリング装置において、ステアリングホイールをステアリングシャフトの軸方向に沿って位置調整する、いわゆるテレスコ調整機能を付加したものもある。
これらの位置調整式のステアリング装置として、車体側ブラケットによって、コラム側ブラケットを所定の挟持力で挟持して、チルトロック等を達成するものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
上記の挟持力を得る方式としては、操作レバーの回動操作に基づくカム変位を用いて上記の挟持力を得るカム式と、操作レバーの回動操作に基づくねじの螺進を用いて上記の挟持力を得るねじ式がある。
例えば上記のねじ式で挟持力を得る位置調整式ステアリング装置では、通例、固定ブラケットおよびコラムブラケットの側板を貫通する支軸としてのロックボルトを有し、ロックボルトの回りに操作レバーを回動操作することで、ロックボルト先端のねじ部に螺合するナットを連れ回りさせて螺進させ、該ナットとロックボルト頭部との間で、固定ブラケットの一対の側板を挟持して該一対の側板をコラムブラケットの対応する側板に圧接してチルトロック等を達成する。
【0004】
一方、操作レバーを上記ロック時とは逆方向に回動操作することで、ロックボルト上でナットを後退させ、固定ブラケットの一対の側板に対する挟持力を解除して、チルトロック等を解除する。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−362377号
【特許文献2】
特開2002−255041号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のロックおよびロック解除を確実に達成するためには、ロックボルトのねじ部へのナットの締め付けトルクの設定が重要である。
そのため、従来は、図6に示すように、ロックボルトのねじ部80にナット81を規定トルクで締め付けた後、ナット81の外周形状の対応する例えば六角穴82を有するストッパプレート83をナット81の外周に遊嵌させた後、該ストッパプレート83の円弧溝84を通して固定ねじ85を操作レバー86にねじ込み、ストッパプレート83を操作レバー86に固定するようにしている。これにより、操作レバー86とナット81との相対回動を規制し、操作レバー86の回動操作時にナット81が同伴回転するようにしている。
【0007】
上記の円弧溝84はナット81の締め付けトルクを微調整するときに、上記の固定ねじ85を少し緩めてストッパプレート83をナット81の軸線87の回りに微小回転させるときに、当該微小回転を許容するために用いられる。
ところが、ストッパプレート83を操作レバー86に固定するために固定ねじ85を締め付けるときに、ナット81が微小量変位したり、或いは、ナット81の外周面とこれを取り囲む六角穴82の内周面との間に隙間88の分だけナット81が微小量変位したりする傾向にある。
【0008】
この場合、ナット81の締め付けトルクがばらつくので、ロックボルトの軸力がばらつく結果、操作レバー86の操作力がばらついたり、側板に対する挟持力(すなわちロック保持力)がばらつくという問題がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、操作レバーの操作力やロックの保持力のばらつきを抑制することができる位置調整式ステアリング装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記目的を達成するため、第1発明は、車体に固定された固定ブラケットの一対の側板およびステアリングコラムに固定されたコラムブラケットの一対の側板の支軸挿通孔を挿通する支軸と、この支軸の軸線回りに回動操作される操作レバーと、この操作レバーの回動に伴って固定ブラケットおよびコラムブラケットの対応する側板間に押圧力を与えてチルトロック又はテレスコロックを達成するためのロック機構とを備える位置調整式ステアリング装置において、上記支軸の一端のねじ部に螺合し支軸の他端の挟持部との間に両ブラケットを挟持可能な環状の螺合部材と、操作レバーに設けられ螺合部材の周面を弾力的に押圧して螺合部材の操作レバーに対する相対回動を抑制するための弾性体と、操作レバーに固定され上記弾性体を保持する保持部材とを備え、上記螺合部材は多角形をなす外周面を有するナットを含み、上記弾性体は複数の頂部をナットの外周面に弾性接触させる波板ばねを含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明では、弾性体によって常に螺合部材を押圧することで、操作レバーに対する螺合部材の相対回動を確実に抑制できるので、操作レバーによるロック時において挟持部と螺合部材との間の挟持力を安定させることができ、また、操作レバーによるロック解除時に上記挟持力を解除して確実にロック解除を達成することができる。
また、上記螺合部材は多角形をなす外周面を有するナットを含み、上記弾性体は複数の頂部をナットの外周面に弾性接触させる波板ばねを含むので、ナットの締め付け時において、例えば六角形をなすナットの角部が波板ばねの各頂部を弾性変形させつつ順次に乗り越えていくことになり、いわゆるラチェット式としてナットの締め付け状態を確実に保持することができる。
また、第2発明は、上記波板ばねの複数の頂部が、ナットの外周面に含まれる複数の平坦面のそれぞれに同時に弾性接触していることを特徴とするものである。
【0011】
第3発明は、第1又は第2発明において、上記螺合部材の座面側の外周縁にテーパが設けられることを特徴とするものである。本発明では、保持部材に弾性体を保持した状態で螺合部材を回動して支軸のねじ部に装着するときに、螺合部材が支軸の軸方向に進むにしたがって、テーパが弾性体を螺合部材の径方向外方へ撓ませるので、螺合部材のねじ部への装着作業を容易に実施することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施の形態の位置調整式ステアリング装置のステアリングコラムの縦断面図である。図1を参照して、本位置調整式ステアリング装置A(以下では、単にステアリング装置Aともいう)は、軸方向上端にステアリングホイール(不図示)が固定されるステアリングシャフト1を回動可能に支承するステアリングコラム2を備えている。
【0013】
ステアリングコラム2は、ステアリングシャフト1を回動自在に支承するチューブからなるアッパージャケット3と、このアッパジャケット3に固定された全体として溝形をなすコラムブラケット4とを含む。コラムブラケット4は上向きに開放する溝形をなす補強板40と、この補強板40の一対の側板41の外面にそれぞれ沿わせた一対の側板5,6を有している。これらコラムブラケット4の一対の側板5,6には、円形の支軸挿通孔7がそれぞれ形成されている。補強板40の各側板41にも支軸挿通孔42がそれぞれ形成されている。
【0014】
固定ブラケット8は車両に固定されるものであり、相対向する一対の側板9,10と、これら側板9,10の上端部を互いに連結する上板11とを備えて下方に開放する溝形をなしている。各側板9,10には円弧状をなす縦長の支軸挿通孔12が形成されている。各側板9,10の一部の上縁を外向きに折り曲げることにより取付ステー13,14が形成されており、各取付ステー13,14を挿通するボルト15により、固定ブラケット8が車両に固定されるようになっている。
【0015】
図示していないが、上記アッパジャケット3にはチューブからなるロアージャケットが嵌合されており、このロアージャケットは車体に支持されるピボット軸(チルト中心軸)の回りに揺動自在に支持されている。これにより、ステアリングコラム2全体が揺動自在に支持されている。
コラムブラケット4の一対の側板5,6の支軸挿通孔7および補強板40の一対の側板41の支軸挿通孔42、並びに固定ブラケット8の一対の側板9,10の支軸挿通孔12に、ボルトからなる支軸16が挿通されている。
【0016】
支軸16の一端16aにはねじ部17が設けられ、このねじ部17には螺合部材としてのナット18が螺合している。このナット18は、支軸16の他端16bに設けられる挟持部としての頭部19との間で固定ブラケット8の一対の側板9,10を挟持して締め付けることができるようになっている。
頭部19と固定ブラケット8の側板10の外面10aとの間には、平座金20が介在している。また、支軸16の頭部19に近接する部分16cは、固定ブラケット8の側板10の縦長の支軸挿通孔12に係合しており、支軸16の回動を規制している。支軸16の残りの部分16dは円柱からなる。
【0017】
支軸16は当該支軸16の軸線Cの回りに回動可能な操作レバー21を支持しており、操作レバー21はナット18の座面22と側板9の外面9aとの間に介在している。
操作レバー21は、基端部に支軸16を挿通させる支軸挿通孔23を有し側板9に沿わされる長尺のレバー本体24と、レバー本体24の先端から折り曲げ状に延設された延設部25と、延設部25に設けられた握り部26とを備える。
【0018】
ナット18は、操作レバー21に固定された保持部材27によって保持された弾性体としての例えば波板ばね28によって、その周面を弾性的に押圧されることにより、操作レバー21に対する相対回動が規制されている。
このため、操作レバー21の回動操作にナット18が同伴回転して、該ナット18がねじ部17にねじ込まれたり、ねじ戻されたりするようになっている。これにより、ナット18と支軸16の頭部19との間の軸方向距離が増減し、固定ブラケット8の側板9,10がコラムブラケット4の側板5,6に対する挟持を強めてチルトロックを実現したり、挟持を解除してロック解除を実現したりできるようになっている。ナット18とねじ部17とによりねじ式のロック機構Rが構成されている。
【0019】
図2を参照して、保持部材27は例えば直方体形状をなし、図1に示すように操作レバー21のレバー本体24に例えば溶接により固定される。保持部材27はナット18の例えば六角形状をなす外周面29の例えば半周を取り囲むように円弧状をなすばね収容部30を形成しており、上記波板ばね28はこのばね収容部30に収容されることで、波板の複数の頂部31をナット18の外周面29の複数の平坦面29aに弾性接触させている。これにより、ナット18の操作レバー21に対する相対回動が規制されている。
【0020】
円弧状をなすばね収容部30の端部には、波板ばね28がばね収容部30からナット18の周方向に抜脱しないように規制するストッパ32が設けられている。
また、図3を参照して、保持部材2はばね収容部30を一対の側壁35間に区画している。また、ナット18の座面22側の外周縁にはテーパ33が形成されている。このテーパ33は、保持部材27に波板ばね28を保持した状態でナット18を回動して支軸16のねじ部17に装着するときに、ナット18が支軸16の軸方向Xに進むにしたがって、テーパ33が波板ばね28をナット18の径方向外方Yへ撓ませるので、ナット18のねじ部17への装着作業を容易に実施することができ、ステアリング装置Aの組立性が良い。
【0021】
以上説明した本実施の形態によれば、弾性体としての波板ばね28によってナット18の外周面29を常にガタなく押圧することで、操作レバー21に対するナット18の相対回動を確実に抑制できるので、操作レバー21によるロック時において挟持部としての頭部19とナット18との間の挟持力を安定させることができ、また、操作レバー21によるロック解除時に上記挟持力を緩め又は完全に解除して確実にロック解除を達成することができる。
【0022】
また、ナット18の締め付け時において、ナット18の外周面29の角部34が波板ばね28の各頂部31を弾性変形させつつ順次に乗り越えていくことになり、いわゆるラチェット式としてナット18の締め付け状態を確実に保持することができる。
上記の実施の形態においては、ばね収容部30が円弧状をなしていたが、これに限らず、ナット18の外周面29を取り囲む環状をなすようにしても良い。
【0023】
また、上記の実施の形態では、ロック機構としてねじ式を採用したが、これに代えて、カム式のものを採用することもできる。また、弾性体として波板ばね28に代えて、ナット18の外周面29に対向する波形状の起伏面を有する弾性ゴムや弾性樹脂を用いることもできる。
また、図4に示すように、ばね収容部30の一方の側壁35と操作レバー21のレバー本体24との間にばね収容部30を区画する保持部材27Aを用いるようにしても良い。
【0024】
また、図5に示すように、上記の保持部材27に代えて、側板9の縁部を折り返して形成してU字状の保持部36を設けてばね収容部30を区画するようにしても良い。
また、本発明をテレスコ調節機能を付加したチルトステアリング装置に適用しても良い。その他、本発明の範囲で種々の変更を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態としての位置調整式ステアリング装置の概略断面図である。
【図2】ナットを回り止めする機構の概略断面図である。
【図3】支軸へのナットの組み込み工程を説明する模式的断面図である。
【図4】本発明の別の実施の形態の位置調整式ステアリング装置における保持部材を示す概略断面図である。
【図5】 本発明のさらに別の実施の形態の位置調整式ステアリング装置において、操作レバーとこれに一体に形成される保持部を示す概略断面図である。
【図6】従来のチルトステアリング装置において、ナットを操作レバーに回り止めする構造を示す概略図である。
【符号の説明】
S 位置調整式ステアリング装置
1 ステアリングシャフト
2 ステアリングコラム
3 アッパシャケット
4 コラムブラケット
5,6 側板
7 支軸挿通孔
8 固定ブラケット
9,10 側板
12 支軸挿通孔
16 支軸
16a 一端
16b 他端
17 ねじ部
18 ナット(螺合部材)
19 頭部(挟持部)
21 操作レバー
22 座面
24 レバー本体
27,27A 保持部材
28 波板ばね(弾性体)
29 外周面
29a 平坦面
30 ばね収容部
31 頂部
32 ストッパ
33 テーパ
34 角部
36 保持部(保持部材)
R ロック機構

Claims (3)

  1. 車体に固定された固定ブラケットの一対の側板およびステアリングコラムに固定されたコラムブラケットの一対の側板の支軸挿通孔を挿通する支軸と、
    この支軸の軸線回りに回動操作される操作レバーと、
    この操作レバーの回動に伴って固定ブラケットおよびコラムブラケットの対応する側板間に押圧力を与えてチルトロック又はテレスコロックを達成するためのロック機構とを備える位置調整式ステアリング装置において、
    上記支軸の一端のねじ部に螺合し支軸の他端の挟持部との間に両ブラケットを挟持可能な環状の螺合部材と、
    操作レバーに設けられ螺合部材の周面を弾力的に押圧して螺合部材の操作レバーに対する相対回動を抑制するための弾性体と、
    操作レバーに固定され上記弾性体を保持する保持部材とを備え、
    上記螺合部材は多角形をなす外周面を有するナットを含み、上記弾性体は複数の頂部をナットの外周面に弾性接触させる波板ばねを含むことを特徴とする位置調整式ステアリング装置。
  2. 請求項1において、上記波板ばねの複数の頂部が、ナットの外周面に含まれる複数の平坦面のそれぞれに同時に弾性接触していることを特徴とする位置調整式ステアリング装置。
  3. 請求項1又は2において、上記螺合部材の座面側の外周縁にテーパが設けられることを特徴とする位置調整式ステアリング装置。
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