従来の技術においては、画像入力装置において画像データを作成する段階で適正な画質にすることができなかった画像について、自動で適切な画質にすることが困難であった。例えば、画像データ作成時における露出の過不足を補うための露出補正やホワイトバランス調整など色のバランスを修正するための色バランス補正を適正に行うことが困難であった。特に、露出の過不足や色バランス補正を行うために光の量や色毎の階調値を定数倍するのみでは、適切な補正を行うことができず、自動、あるいは人為的に適切な補正を行うことが困難であった。また、階調値を定数倍する補正以外にも非線形な補正、例えばγ補正等が実施され得るが、当該非線形な補正であっても適切な非線形特性を自動、あるいは人為的に決定することは困難であった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、画像入力装置において画像データを作成する段階で適正な画質にすることができなかった画像について、自動で適切な画質にすることが可能な画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラムの提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、画像入力装置が上記画像データを作成する際に実施する色調整処理の逆の処理に相当する変換処理を考える。すなわち、デジタルカメラなど、画像入力装置のセンサにおいて光の量に略比例する信号を取得したとしても、画像入力装置においては、一般的に色調整処理を行っている。例えば、人間の目にとって滑らかな色調変化は光の量に比例した変化ではないため、人間の目にとって滑らかな色調変化となるように階調値を変換したり、画像データの規格(例えばsRGB)に合わせる変換を行ったり、画像の印象を向上するための処理(例えばコントラスト強調)を行うなどしている。
このような処理により、画像データにおける色成分毎の階調値は、一般的に光の量に略比例する信号となっていない。従って、本来、露出や色バランスが光の量を定数倍させることによって調整できる性質の物理量であったとしても、画像データの階調値を定数倍することによる調整では適切な補正にならない。しかし、本発明では、上述の各種処理を含む色調整処理の逆の変換処理を想定し、この変換処理を行ったデータに対して画質調整処理を行った場合の画像を示す画質調整済データを取得する。従って、階調値の定数倍など、非常に単純な画質調整処理を行うことで、適正な画像補正処理を実施することが可能になり、画像入力装置において画像データを作成する段階で適正な画質にすることができなかった画像であっても、自動で適切な画像にすることができる。
ここで、画像データは、画像入力装置によって作成された画像データであって、画像入力装置によって所定の色調整処理が実施されたデータであれば良く、色成分や色数は特に限定されない。例えば、モノクロ画像であれば一つの色成分(明度等)、カラー画像であれば三つの色成分(RGBやYCbCr等)毎に階調を指定したデータであればよい。但し、画像入力装置によって光の量に比例した信号を取得し、これに対して色調整処理を施した画像データを想定しているため、色調整処理を実施していないRawデータ等は本発明の画像データに含まれない。尚、ここで、光の量は画像を形成するために利用される光の量であり、単位面積当たりの輝度と露光時間によって決定される。
色調整処理は、画像入力装置が画像データを作成する際に実施する画像処理の総てを含み、複数の処理の重畳であっても良いし、一つの処理であっても良い。いずれにしてもこの処理の逆の処理を上記変換処理として定義できるような処理であればよい。尚、逆の処理を定義するためには、階調値の変換特性を規定した関数等を定義するのが好ましいが、むろん、代表的な階調値に対する変換特性のみを定義するテーブルデータによって変換処理を定義することも可能である。
画像補正手段においては、画像データに対してこの変換処理を実施した状態で画質調整処理を行った場合の画像を示す画質調整済データを生成することができれば良い。従って、実際に変換処理および画質調整処理を行っても良いし、画像データに対して変換処理および画質調整処理を行った場合の変換特性を算出し、この変換特性に基づいて画質調整済データを取得してもよく、種々の構成を採用可能である。
尚、画像データの線形性に着目することによって、画像データが示す画像を自動で適切な画像にする構成を採用しても良い。すなわち、階調値が光の量に対して線形に変化するように画像データを変換する変換処理を考える。この変換処理によれば、上記画像データにおける色成分毎の階調値が光の量に対して線形に(比例して)変化するデータでなかったとしても、光の量に対して線形に変化するデータに変換することが可能になる。
従って、上記変換処理後のデータに対して階調値の定数倍など、非常に単純な画質調整処理を行うことで、適正な画像補正処理を実施することが可能になり、画像入力装置において画像データを作成する段階で適正な画質にすることができなかった画像であっても、自動で適切な画像にすることが可能になる。ここで、画像データは、光の量に対して非線形に変化する階調値で画像を表現した画像データであればよく、色成分や色数は特に限定されない。例えば、モノクロ画像であれば一つの色成分(明度等)、カラー画像であれば三つの色成分(RGBやYCbCr等)毎に階調を指定したデータであればよい。但し、光の量に対して非線形に変化する階調値で画像を表現しているため、光の量に対して略非線形に信号強度が変化するRawデータ等は本発明の画像データに含まれない。
また、変換処理においては、階調値が光の量に対して線形に変化するように上記画像データを変換することができればよく、種々の構成を採用可能である。例えば、階調値が光の量に対して線形に変化する信号を変換して画像データを作成したのであれば、その逆変換を本発明の変換処理にすればよい。尚、逆の処理を定義するためには、階調値の変換特性を規定した関数等を定義するのが好ましいが、むろん、代表的な階調値に対する変換特性のみを定義するテーブルデータによって変換処理を定義することも可能である。
また、画像補正手段においては、画像データに対してこの変換処理を実施した状態で画質調整処理を行った場合の画像を示す画質調整済データを生成することができれば良い。従って、実際に変換処理および画質調整処理を行っても良いし、画像データに対して変換処理および画質調整処理を行った場合の変換特性を算出し、この変換特性に基づいて画質調整済データを取得してもよく、種々の構成を採用可能である。
尚、本発明においては、上述のように色調整処理の逆に相当する変換処理や階調値の線形性を変化させる変換処理を適用した後のデータを想定しているので、画像補正手段において非常に単純な画質調整処理を行うのみで画質調整済データを取得することができる。そこで、画質調整処理の好ましい例としては、単純な露出補正と色バランス補正とのいずれかまたは双方を採用することができる。
すなわち、画像の明るさを定数倍する処理、例えば、画像の輝度成分を示す階調値であって、上記変換処理を適用した後のデータについて定数倍する処理によれば、非常に単純な処理によって露出補正を行うことができる。すなわち、露出の過不足は、画像入力装置にて画像を取得する際にセンサで取得する光の強弱で評価し、通常は、基準の露出量に対する光の増減率(EV(Exposure Value)等)によって定義している。従って、上記変換処理を適用した後のデータであれば、上記増減率から算出した定数をデータに乗じることで適正な露出補正をすることができる。
また、有彩色成分毎に異なる定数で有彩色成分を定数倍する処理によれば、非常に単純な処理によって色バランス補正を行うことができる。すなわち、特定色の画像について有彩色成分毎に光の量を比較したときに、特定の色成分において基準の量より光の量が増加あるいは減少している場合に色バランスの不調が生じる。この不調は、画像入力装置が備えるセンサによって光の量に比例する信号を取得することができる場合、有彩色成分毎のセンサの相対的な感度によって評価することができる。従って、上記変換処理の後に、特定の有彩色成分におけるデータを定数倍すれば、上記相対的な感度を調整することになり、容易に色バランス補正を実施することができる。
本発明においては、デジタルカメラ等の画像入力装置が独自の色調整処理を行って画像データを作成することに起因して自動の画像調整が困難になるところ、この色調整処理がなされたとしても容易に適切な補正を行うように、上述の変換処理を導入する。すなわち、画像入力装置における色調整処理は、当該画像入力装置のメーカーが独自に策定するものであり、通常、その内容が公開されていない。従って、画像入力装置毎に内容が異なり、色調整処理の逆処理を行うことを想定したとき、各画像入力装置について個別の逆処理を導入する必要があるように考えるのが通常である。
しかし、本願出願人の分析によれば、多数のメーカーが独自に策定した色調整処理がほとんど同じ特性で記述できることが判明した。そこで、この色調整処理の逆変換に相当する変換処理であって、画像入力装置のメーカーに依存しない変換処理を導入すれば、多数のメーカーの画像入力装置で作成した画像データについて適切な処理を実施できるように構成することが可能である。
より具体的には、色調整処理は、階調値の表色系を変換する意味合いの調整処理と、画像の見栄えを良くするための調整処理との重畳処理であることが判明した。前者はどのようなメーカーの画像入力装置であっても略共通であり、メーカー独自の思想を導入する余地は少ない。一方、後者のような画像の見栄えは主観的な要素も含むので、メーカー毎に差が生じていても良いが、実際はほとんどのメーカーで同じようなコントラスト調整処理を実施していた。
すなわち、色成分毎の明るさに相当する階調値を入力値とし、所定の入出力特性に従って入力値を出力値に変換する処理によって多数のメーカーにおける当該コントラスト強調処理を記述した場合、入力値を横軸、出力値を縦軸としたグラフにおいて、この入出力特性は緩やかなS字曲線で記述可能である。さらに、上記入出力特性において入力値の略中央の値での入出力の変化率は1.1〜1.4であり、肌色に相当する所定の入力値での入出力の変化率は1であることが判明した。尚、入出力の変化率は上記グラフにおける傾きである。
つまり、このグラフにおいて、入力値が0から大きくなるにつれ、入出力の変化率が1以下の状態から徐々に大きくなり、入力値の略中央の値に達する前に変化率が1を超え、入力値の略中央の値で変化率は概ね1.1〜1.4であった。そして、ある入力値から徐々に変化率が小さくなり、肌色における入力値で変化率が1となり、さらに入力値の増加によって変化率が小さくなる。そこで、上記入出力特性において入力値の略中央の値での入出力の変化率を1.1〜1.4、肌色に相当する所定の入力値での入出力の変化率を1とすれば、多数のメーカーの色調整処理とほぼ同様な性質の持つ入出力特性を定義することができる。
従って、この入出力特性に必要に応じて上記階調値の表色系を変換する意味合いの調整処理を重畳すれば、上述の変換処理を定義することが可能になり、本発明のように、単純な画質調整処理によって適正な画像補正を実施することが可能になる。尚、入力値の略中央の値は、入力値域の略中央の値であれば良く、例えば、明度(L*)が40〜60となるような色の入力値がこれに相当する。また、肌色に相当する所定の入力値は、肌色に分類し得る色の入力値が含まれる値域であれば良く、例えば、明度(L*)が60〜75となるような色の入力値がこれに相当する。
上述のように、画像補正手段においては、画像データに対してこの変換処理を実施した状態で画質調整処理を行った場合の画像を示す画質調整済データを生成することができれば良いが、画質調整済データを生成する際の構成例として、上記変換処理の特性を示す変換特性データを利用する構成を採用可能である。例えば、当該変換特性データを予め所定の記憶媒体に保持しておく。
上記画像補正手段においては、同変換特性データに基づいて上記画像データを変換した後、上記画質調整処理を行った場合に得られる画像を示す画質調整済データを取得すればよい。むろん、ここでは、実際に変換特性データに基づく変換処理および画質調整処理を行っても良いし、画像データに対して変換処理および画質調整処理を行った場合の変換特性を算出し、この変換特性に基づいて画質調整済データを取得してもよく、種々の構成を採用可能である。
また、画質調整済データは、露出補正や色バランス補正等の画質調整処理を行った後、さらに上記変換処理の逆特性による変換を行った場合のデータであっても良い。このデータを作成する際に好ましい構成としては、上記変換特性データが示す変換処理と上記画質調整処理と上記変換処理の逆変換とを重畳して得られる変換特性を示す画質調整特性データを定義する構成を採用可能である。
すなわち、画質調整特性データを定義すれば、当該画質調整特性データを参照して上記画像データを変換することによって、容易に上記画質調整済データを取得することができる。むろん、ここでも、画像データに基づいて実際に上記変換処理と画質調整処理とを実施して画質調整特性データを作成してもよいし、予め補正量(例えば、露出補正量や色バランス補正のために乗じる定数)に応じて画質調整特性データに相当するプロファイルデータを作成しておいても良い。
さらに、上記変換処理の特性を示す変換特性データが画像データに含まれている場合には、当該画像データを参照することで、上記画像補正手段における補正を実施することが可能である。変換特性データを画像データに含める構成としては、種々の構成を採用可能であり、例えば、画像データにおいて画像を示す実データと画像以外の情報を示すタグデータを構成し、当該タグデータにおいて変換特性データを記述すればよい。このようなデータとしては、Print Image Matching(PIM:PIMはセイコーエプソン株式会社の登録商標)やExif Print(Exifは電子情報技術産業協会の登録商標)といった規格に対応した画像データが挙げられる。
尚、以上の構成を採用した場合、画像データを作成する画像入力装置のメーカーが変換特性データを定義することができるので、上述の色調整処理を正確に反映した変換特性データにすることができる。従って、画像補正手段において上記変換処理による影響を確実に排除した状態で画質調整処理を実施することができ、より確実に適切な画質調整処理を実施することが可能になる。
さらに、より高画質の画像を得るための画質調整処理を行った場合の画質調整済データを取得してもよい。このための構成としては、種々の構成を採用可能であり、画質調整に伴って階調の欠損が生じ得る場合には、その階調欠損を抑えるように画質調整処理を行って画質調整済データを生成してもよい。すなわち、画像データにおいては、一般的に色成分毎に階調値を特定することによって画素の色を表現しており、その階調域は有限である。
従って、画質調整処理によってある特性に基づいて階調値を変更すると、変更後の階調値がある階調値(例えば、階調値の最大値)に偏り、この結果画像の階調性が損なわれることがある。そこで、ある特性の画質調整処理を行った場合に欠損が生じ得る階調値については、この特性に基づいて画質調整処理を行うことはせず、階調欠損を抑える特性で画質調整処理を行う。この結果、画質調整処理を行ったとしても豊かな階調性を持つ画像を得ることが可能になる。
このような階調欠損としては、高階調域で階調値が上限値あるいはその近傍の値に集中する階調の飽和が挙げられる。この場合は、階調値の最高値を含む階調域において上記画質調整処理前に階調変化が存在した画像データに対して上記階調欠損を抑える画質調整処理を適用すればよい。この結果、高階調域で階調の飽和を抑えることができ、画像の画質を維持することができる。ここで、階調値の最高値を含む階調域としては、階調値の最高値を含む値域であればよく、予め決められた階調域について階調の欠損を抑えるようにしてもよいし、画像補正の対象となる画像の内容を解析し、その解析結果に基づいて階調の欠損を抑えるようにしてもよい。
尚、画質調整処理における変換特性が、高階調域で入力値より大きな出力値を与え、階調の飽和が生じ得るような特性であれば、高階調域で階調の欠損を抑えることにより顕著な画質維持効果を奏するが、むろん、変換特性によっては低階調域で階調の欠損を抑える構成を採用してもよい。すなわち、入力値より小さな出力値を与えるような変換特性においては、画質調整処理によって低階調域で階調の飽和が生じ得る。そこで、このような場合に階調の欠損を抑えるようにすれば、低階調域の階調性を維持し、高画質の画像補正を行うことができる。
階調の欠損を抑える対象となる階調域は、種々の手法によって決定することができる。例えば、上述のように適正な露出補正や色バランス補正を行う処理と階調の欠損を行う処理とは同時に実施できない可能性があることを想定し、画像の明るさを定数倍する処理と複数の有彩色成分毎に異なる定数で有彩色成分を定数倍する処理とのいずれかまたは双方を行う部分以外において階調の欠損を抑える処理を行う。このとき、階調の欠損を抑える部分を上記階調域で特定すればよい。このような処理を行えば、画像のある部分では、適正な露出補正や色バランス補正を行い、他の部分では階調の欠損を抑えることができる。
ここでは、露出補正や色バランス補正を実施すべき画像の部分と階調欠損を抑える部分とを特定することができればよく、種々の手法を採用可能である。例えば、画像を明部と暗部とに分割し、上記階調域によって明部を指定すれば、当該明部に対して階調欠損を抑える処理を行うことができる。むろん、明部以外の暗部については、適正な露出補正や色バランス補正がなされるように画質調整処理を行う。この結果、暗部は適正な露出補正や色バランス補正を行いながらも、明部における階調欠損も抑えることができ、高画質を維持することができる。尚、このような補正の対象としては、逆光画像が挙げられる。
さらに、本発明の画質調整処理として画像の明るさを定数倍する処理と複数の有彩色成分毎に異なる定数で有彩色成分を定数倍する処理とのいずれかまたは双方を実施する際に、画像内の明るさいや色バランスの相対関係に基づいて補正の程度を調整する構成を採用してもよい。すなわち、露出補正や色バランス補正を画像データに対して定数を乗じることによって実施する場合、この定数を画像の内容に従って調整すれば、補正の効果を調整することができる。
このとき、画像内の部分毎の明るさや色バランスの相対関係に基づいて補正の程度を調整する。すなわち、画像内のある部分と他の部分とで明るさの平均値を比較したとき、その平均値の差が大きいほど露出補正量を大きくなるように補正を行えば、画像の内容に従って、補正の効果がより明確に現れるように補正を行うことができる。むろん、色バランスにおいても同様であり、画像の部分毎に色バランスのずれが大きいほど色バランスの補正量が大きくなるように補正を行えば、画像の内容に従って、補正の効果がより明確に現れるように補正を行うことができる。
また、請求項1の発明は、画像入力装置によって作成された画像データを取得する画像データ取得手段と、上記画像データの輝度分布を算出するとともに当該輝度分布において画像の明部と暗部とを分ける境界を設定し、当該設定した境界以下の輝度の画像データに基づいて、露出の過不足の程度を取得する画像データ解析手段と、上記画像入力装置が上記画像データを作成する際に実施する色調整処理の逆の処理に相当する変換処理と、上記取得された露出の過不足の程度に応じて決定した定数に基づく露出補正と、上記変換処理の逆変換とを重畳して得られる入出力変換特性を参照して、上記暗部に対応する画像データを変換するとともに、出力値に変化がなくなることを防止する入出力特性を参照して上記明部に対応する画像データを変換する画像補正手段とを備える画像処理装置としている。
以上のようにして補正を行った画像データに基づいて印刷を実行する印刷制御装置としても発明が成立する。すなわち、画像を示す画像データを取得してこの画像を印刷するに際して、上述の処理と同様の処理により補正を行い、補正後の画像データに基づいて画像を印刷すれば、画像入力装置において画像データを作成する段階で適正な画質にすることができなかった画像について、自動で適切な画質にして印刷することができる。
ところで、上述した画像処理装置や印刷制御装置は、単独で実施される場合もあるし、ある機器に組み込まれた状態で他の方法とともに実施されることもあるなど、発明の思想としては各種の態様を含むものであって、適宜、変更可能である。また、上述した画像処理や印刷制御の手法は、方法としても適用可能であり、請求項2にかかる発明においても、基本的には同様の作用となる。
本発明を実施しようとする際に、画像処理装置や印刷制御装置にて所定のプログラムを実行させる場合もある。そこで、そのプログラムとしても本発明を実施可能であり、請求項3にかかる発明においても、基本的には同様の作用となる。また、いかなる記憶媒体もプログラムを提供するために使用可能である。例えば、磁気記録媒体や光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。また、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現される場合においても本発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記録しておいて必要に応じて適宜読み込む形態のものも含まれる。さらに、一次複製品、二次複製品などの複製段階についても同等である。
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)印刷制御装置の構成:
(2)印刷制御処理:
(2−1)変換特性データの詳細:
(2−2)画質調整特性データの詳細:
(3)他の実施形態:
(1)印刷制御装置の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる画像処理装置および印刷制御装置の概略構成を示している。本実施形態ではコンピュータ10の機能の一部によって画像処理装置と印刷制御装置とが実現される。コンピュータ10は演算処理の中枢をなすCPU11を備えており、このCPU11はシステムバス10aを介してコンピュータ10全体の制御を行う。同システムバス10aには、ROM12、RAM13、USBI/F14やハードディスクドライブ(HDD)15,図示しないCRTI/Fや入力機器I/F等が接続されている。
ハードディスクドライブ15には、ソフトウェアとしてオペレーティングシステム(OS)、画像処理および印刷制御を行うためのプリンタドライバ(PRTDRV)21等が格納されており、これらのソフトウェアは、実行時にCPU11によって適宜RAM13に転送される。CPU11は、RAM13を一時的なワークエリアとして適宜アクセスしながらOSの制御下で種々のプログラムを実行する。
入力機器I/Fには、キーボード16やマウス17が操作用入力機器として接続される。また、CRTI/Fには、表示用のディスプレイ18が接続されている。従って、コンピュータ10では、キーボード16やマウス17による操作内容を受け付け、また、ディスプレイ18に各種情報を表示することが可能である。さらに、USBI/F14には、プリンタ20が接続されており、コンピュータ10が出力するデータに基づいて画像を印刷することが可能である。むろん、プリンタ20との接続I/FはUSBI/Fに限られる必要もなく、パラレルI/F,シリアルI/F,SCSI接続など種々の接続態様を採用可能であるし、今後開発されるいかなる接続態様であっても同様である。
本実施形態で使用するプリンタ20は、インクジェットプリンタであってもよいし、レーザープリンタであっても良く、各種のプリンタを採用することができる。いずれにしても、コンピュータ10ではプリンタ20にて解釈可能な印刷データを作成し、USBI/F14を介して出力する。プリンタ20では当該印刷データに基づいて画像を構成する各画素について記録材を記録することによって画像を印刷する。
さらに、本実施形態においてはコンピュータ10によって画像処理装置および印刷制御装置を構成しているが、プリンタ20に搭載するプログラム実行環境によって本発明にかかる画像処理装置および印刷制御処理を実施可能に構成し、プリンタ20に対して直接的に接続されるデジタルカメラから画像データを取得して印刷制御処理を行ってもよい。むろん、同様の構成においてデジタルカメラにて画像処理装置および印刷制御処理を実施してもよいし、他にも分散処理によって本発明にかかる画像処理装置および印刷制御処理を実施するなど種々の構成を採用可能である。画像を取り込むスキャナと画像を印刷するプリンタとが一体となったいわゆる複合機において本発明にかかる画像処理装置および印刷制御処理を行ってもよい。
(2)印刷制御処理:
PRTDRV21では図示しないアプリケーションプログラムから印刷指示が行われた画像について所定の処理を行って印刷を実行可能である。PRTDRV21は、印刷を実行するために画像データ取得モジュール21aと画像補正モジュール21bと色変換モジュール21cとハーフトーン処理モジュール21dと印刷データ生成モジュール21eとを備えている。上述の印刷指示がなされると上記PRTDRV21が駆動され、各モジュールによって画像データ15aに対する処理が実施され、印刷データが生成される。生成された印刷データはUSBI/F14を介してプリンタ20に出力され、プリンタ20は当該印刷データに基づいて印刷を実行する。
図2は、この印刷制御処理を示すフローチャートである。すなわち、上記印刷指示がなされると、まず上記画像データ取得モジュール21aは上記アプリケーションプログラムで印刷指示がなされた画像を示す画像データ15aを取得する(ステップS100)。このとき、画像データ15aの画素数に過不足があれば印刷に必要な画素を確保するため適宜解像度変換処理を行う。本実施形態において、この画像データ15aはRGB(レッド,グリーン,ブルー)の各色成分を階調表現して各画素の色を規定したデータであり、各色256階調である。
また、画像データ15aは、デジタルカメラ30によって作成されたデータであり、このデータは図示しない接続ケーブルや記憶媒体を介してハードディスクドライブ15に転送される。本実施形態において、デジタルカメラ30を提供するメーカーや機種は限定されないが、デジタルカメラ30においては、その内部で色調整処理を行っている。
すなわち、デジタルカメラ30が備える図示しないセンサにおいては、色成分毎に光の量に比例した信号を取得するが、画像データ15aにおける階調値は、この信号そのものではなく、所定の色調整処理が実施されたデータである。また、本実施形態においてはRGB色成分によって色を表現した画像データ15aを例にして説明するが、YCbCr表色系を採用したJPEG画像データやCMYK表色系を採用した画像データ等、種々のデータを採用可能である。尚、本実施形態においては、上記ステップS100が上述の画像データ取得手段に相当する。
画像補正モジュール21bは、本発明における画像補正を実施するモジュールであり、画像解析部21b1と画質調整特性データ作成部21b2と補正処理部21b3とを備えている。画像解析部21b1は画像データを解析し(ステップS105)、画像データ15aに対して実施すべき補正の内容を把握する。すなわち、本実施形態においては露出補正あるいは色バランス補正を行って画質調整を行うようになっており、このステップS105においては、画像データ15aに基づいて露出の過不足や色バランスの不調を検出する。
ここで、露出の過不足や色バランスの不調を検出するためのアルゴリズムとしては、公知の手法および今後開発されるあらゆる手法を適用することができる。尚、本実施形態においては、露出の過不足をEVにて検出する。すなわち、理想的なEVを"0"とし、露出不足である場合にEVを負の値、過露出である場合にEVを正の値とする。また、光の量が2倍になる度にEVの絶対値が1増加し、光の量が1/2倍になる度にEVの絶対値が1減少する。従って、例えば、EV="−1"であれば、画像データ15aにおける光の量は適正露出の1/2倍であることを示し、EV="1"であれば、画像データ15aにおける光の量は適正露出の2倍であることを示している。
色バランスの不調は、白色板を撮影した場合に得られると思われるRGB各色の階調値によって表現する。例えば、RGB色成分のうちG成分を基準とし、G成分に対するR成分、B成分の相対的な値によって検出する。より具体的には、ある基準の光源下で白色板を撮影したとき、RGB各色の相対値は1:1:1になるはずである。ところが、色バランスがずれていると、白色板を撮影したときにRGB各色の相対値はx:1:yとなる(x≠1,y≠1)。そこで、G成分に対するR成分の相対的な値xとG成分に対するB成分の相対的な値yで色バランスを表現し、x,yのそれぞれが1ではないときに色バランスが不調であるとする。尚、ここでは、露出の過不足や色バランスの不調を検出することができれば良く、この検出のためには種々の手法を採用することが可能である。
画質調整特性データ作成部21b2は、変換特性データ15bを参照して画質を調整する際の特性を示す画質調整特性データ15cを作成する(ステップS110)。ここで、変換特性データ15bは、予め作成されたデータであり、デジタルカメラ30によって行われる上記所定の色調整処理の逆の変換処理特性(以下、正変換特性と呼ぶ)を示すデータとこの正変換処理の逆特性(以下、逆変換特性と呼ぶ)を示すデータである。尚、本実施形態においては、正変換特性および逆変換特性を示すデータを変換特性データとしているが、むろん、いずれか一方のみを予め作成しておき、画像補正モジュール21bによってその逆特性を示すデータを作成しても良い。
いずれにしても、変換特性データ15bを参照すれば、画像データ15aに対して上記色調整処理を実施していない状態のデータを取得することができる。このデータは、光の量に比例したRGB色成分毎のデータとなるため、このデータに対し定数を乗じれば、露出補正や色バランス補正を実施することができる。そこで、上記検出したEVやRGB各色の相対値に基づいて理想的な露出あるいは理想的な色バランスにするための定数を取得し、この定数を上記光の量に比例したRGB色成分毎のデータに対して乗じて得られる変換特性を想定する。
このような補正による変換特性を想定すれば、上記正変換特性と補正による変換特性と上記逆変換特性とを重畳することによって、露出補正あるいは色バランス補正の特性を示す画質調整特性を定義することができる。そこで、ステップS110においては、この画質調整特性を示す画質調整特性データ15cを作成し、ハードディスクドライブ15に記録する。尚、以上の変換特性データ15bと画質調整特性データ15cとは、複数の階調値について変換前の値(入力値)と変換後の値(出力値)とを対応づけたテーブルデータであるが、むろん、ここでは、変換特性を定義することができればよいので、関数等によってその特性を定義することも可能である。
画質調整特性データ15cを作成したら、補正処理部21b3はこの画質調整特性データ15cを参照して画像補正を実施する(ステップS115)。すなわち、上記画像データ15aにおける色成分毎の階調値を画質調整特性データ15cに基づいて変換する。この結果、光の量に比例したRGB色成分毎のデータに対して露出補正や色バランス補正を実施し、その結果に対して上記色調整処理を実施した場合のRGBデータが得られる。尚、本実施形態においては、上記ステップS105〜ステップS115における処理が上記画像補正手段における処理に相当する。
色変換モジュール21cは各画素の色を示す表色系を変換する(ステップS120)。すなわち、ハードディスクドライブ15に記録されたLUT(色変換テーブル)15dを適宜参照し、RGB表色系で色を表現したデータをCMY表色系で色を表現したデータに変換する。尚、ここで、CMY表色系の色成分数は3に限定されず、プリンタ20が搭載するインクの色数が色成分数となる。例えば、プリンタ20がCMYKlclm(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ)の各色インクを搭載するとき、CMY表色系の色成分はCMYKlclmである。
LUT15dはRGB表色系とCMY表色系とのそれぞれによって色を表現するとともに両者を対応づけ、複数の色についてこの対応関係を記述したテーブルである。従って、RGB表色系で表現した任意の色に関し、その周りの色であってLUT15dに規定されたRGBの色を参照すれば補間演算によって当該任意の色に対応したCMY表色系の色を算出することができ、色変換を実施することができる。
また、当該CMY表色系のデータはCMY表色系の各色成分について予め決められた階調数(例えば、256階調)で階調表現した画像データであり、各階調値が各画素、各色のインク量に対応している。色変換モジュール21cによって色変換がなされると、ハーフトーン処理モジュール21dは、CMY表色系で表現された各画素の階調値を各画素におけるインクの吐出/非吐出を特定したハーフトーン画像データに変換する(ステップS125)。すなわち、プリンタ20における各画素についてインク滴の吐出/非吐出を決定する。
さらに、印刷データ生成モジュール21eはかかるハーフトーン画像データを受け取って、プリンタ20で使用される順番に並べ替え、一回の主走査にて使用されるデータを単位にして逐次プリンタ20に出力する(ステップS130)。プリンタ20においては、このデータに基づいて印刷媒体上に画像を形成する。本実施形態では、ステップS120〜S130が上記印刷手段に相当する。
(2−1)変換特性データの詳細:
次に、上述の変換特性データ15bについて詳説する。本発明においては、複数のデジタルカメラにおける色調整処理が略共通の特性によって記述できることを出願人が発見したことにより、変換特性データ15bに基づいて露出補正あるいは色バランス補正を単純化する技術が実現された。
図3は、デジタルカメラ30によって実施される色調整処理の特性を示すグラフである。下段のグラフは当該色調整処理の特性、すなわち、上述の逆変換特性に相当する入出力特性を示しており、上段のグラフは当該色調整処理の特性を4つに分割した入出力特性を示している。これらのグラフにおいて、横軸は入力値、縦軸は出力値であり、各入力値が実線で示す特性に従ってグラフ上で対応する出力値に変換されることを示している。尚、破線で示す直線は入力値と出力値が等しい場合の特性を示している。また、図3では、各グラフに1〜5の番号を付しており、以下、グラフ1〜5として各グラフを特定する。
グラフ5は、上記逆変換特性であり、横軸は光の量である。また、縦軸は画像データ15aであり、本実施形態においてはRGBの各色成分について同様の入出力特性である。従って、この逆変換特性(色調整処理の特性)においては、デジタルカメラ30のセンサで取得するRGB毎の光の量をグラフ5に示す入出力特性で変換し、画像データ15aにおけるRGB毎の階調値を取得していると考えることができる。尚、図3に示すように、RGB毎の光の量をYと表記し、逆変換特性に基づく出力値をF-1(Y)と表記する。
グラフ1〜4は、デジタルカメラ30独自の色調整処理を抽出するために上記逆変換特性を分割して得られる入出力特性であり、グラフ1,グラフ3,グラフ4は階調値の表色系を変換する意味合いの調整処理、グラフ2は画像の見栄えを良くするための調整処理である。デジタルカメラ30のメーカーは画像の見栄えを良くするために独自の色調整処理を実施していると考えられるが、当該画像の見栄えは、人間の目にとってRGB各色が人間の目にどのように知覚されるのかを考慮しながら決定されるべき事項である。
そこで、光の量に応じた信号をsRGB規格の信号に変換する処理の中に、人間の目による知覚を評価し易い状態の信号で見栄えを向上させる処理が含まれていると想定して上記グラフ1〜4のように色調整処理を分解した。すなわち、グラフ1は光の量に比例した値を人間の目に知覚される明るさに比例した値に変換するための特性であり、グラフ2は人間の目に知覚される明るさに比例した値を画像の見栄えを向上させる値に変換するための特性である。グラフ3とグラフ4は、画像の見栄えを向上させる値をsRGB規格の信号に変換するための特性である。
具体的には、グラフ1の横軸は光の量(上記Y)であり、縦軸は明度L*に相当する値(後述のsL*)である。すなわち、明度L*の値が増加するとその値の変化に比例して人間に知覚される明るさが変化するので、3刺激値の輝度を明度L*に変換するCIELabの下記式(1)
L*=116Y-1/3−16…(1)
を利用すれば、光の量Yを明度L*に相当する値へ変換する特性を記述することができる。本実施形態において、デジタルカメラ30はRGBの色毎に光の量Yを示す信号を取得するが、RGB各色の光量Yを式(1)に代入すると、人間に知覚される明るさと比例関係にある階調値をRGBの色毎に取得することができる。本実施形態においては、この値をsL*と呼ぶ。
グラフ2の横軸は上記sL*であり、縦軸は画像の見栄えを向上するための変換がなされた値であって、本実施形態ではこの値をpL*と呼ぶ。この入出力特性は、デジタルカメラ30のメーカーが独自に決定するものであるが、本願出願人の解析によれば、メーカー毎にわずかな相違があるものの、各メーカーの入出力特性は略同じ特性で記述できることが判明している。すなわち、図3のグラフ2に示すように、中間調以下では入力値をより小さな出力値に変換し、中間調以上では入力値をより大きな出力値に変換するS字カーブ(pL*=G(sL*))によって入出力特性を記述できる。
図4は、グラフ2の入出力特性G(sL*)を拡大して示す図である。同図に実線で示す入出力特性G(sL*)において、入力値が"0"から増加する方向に分析すると、低階調域では入出力の変化率が1以下であるとともに徐々に変化率が大きくなり、階調値"40"程度で入力=出力となる。階調値"40"を超えてしばらくは変化率が増加し、階調値"50"程度で概ね変化率が"1.1〜1.4"である。階調値"60"を超える当たりから再び変化率が低下し始め、階調値"70"程度で変化率が"1"となり、その後階調値"100"まで変化率が低下する。
この入出力特性G(sL*)により、多数のメーカーが独自に決定したはずの色調整処理を記述することができた。すなわち、多数のメーカーの色調整処理をグラフ1〜4のように解析し、グラフ2に相当する入出力特性を抽出すると、概ね、図4の実線に示すような略S字のカーブとなり、階調値"50"より小さな入力値において変化率が"1"を超え、階調値"50"程度で変化率は概ね"1.1〜1.4"であった。また、肌色の輝度に相当する階調値"70"の近辺で変化率"1"であった。そこで、図4に示すように入出力特性G(sL*)を決定することで、多数のメーカーが独自に決定した色調整処理とほぼ同様の特性を記述することができる。
図3のグラフ3において横軸は上述のpL*、縦軸は光の量に相当する値pYであり、グラフ4において横軸は当該光の量に相当する値pY、縦軸は画像データ15aにおける階調値である。上述のように、図3に示す各入出力特性はRGB毎に適用されるため、グラフ4においてもRGB毎に値を取得することができる。
ここで、グラフ3とグラフ4は、上記pL*からsRGB規格に従った画像データを取得するための入出力変換である。すなわち、sRGB規格においては、RGBの各データを各色の光の量Yの(1/2.2)乗に比例するデータとして取得する。そこで、グラフ3では、明度に相当する上記pL*から光の量に相当する値をCIELabの式(2)によって取得する。
pY=((pL*+16)/116)3…(2)
以上の変換により、画像の見栄えを向上するための変換がなされた後の光の量pYを取得することができるので、グラフ4では、この光量pYに対して以下の式(3)に基づいてγ変換を適用する。
RGB=pY1/2.2…(3)
ここで、RGBはRGB各色のデータである。尚、式(3)においては、光の量Yの(1/2.2)乗に比例するデータを算出できればよく、右辺に係数を乗じるなどしてもよい。
以上の解析により、グラフ1〜グラフ4の入出力特性を重畳した入出力特性であるグラフ5がデジタルカメラ30の各メーカーにおける色調整処理とほぼ同様の特性を記述できることが分かる。そこで、本発明においては、グラフ5に示す逆変換特性F-1(Y)とその逆の正変換特性Y=F(RGB)を示すテーブルを上記変換特性データ15bとする((RGB)はRGBいずれかの階調値)。この結果、正変換特性F(RGB)によって画像データ15aを光の量に比例する値に変換することができるし、逆変換特性F-1(Y)によって光の量に比例する値を画像データ15aに変換することができる。
(2−2)画質調整特性データの詳細:
次に、上述の画質調整特性データ15cについて詳説する。本発明においては、上記変換特性データ15bに基づいて、画像データ15aを光の量に比例する値に変換し、また、光の量に比例する値を画像データ15aに変換することができる。そこで、光の量に比例する値にて調整を行うことにより、単純な処理で露出補正と色バランス補正を行い、この補正を示す入出力特性を画質調整特性データ15cとする。
図5は、露出補正の様子を示すグラフである。下段のグラフは、露出補正を行った場合の画質調整特性を示しており、上段のグラフは当該画質調整特性を得るために実施されるべき変換処理の特性を示している。これらのグラフにおいて、横軸は入力値、縦軸は出力値であり、各入力値が実線で示す特性に従ってグラフ上で対応する出力値に変換されることを示している。ここでも、破線で示す直線は入力値と出力値が等しい場合の特性を示している。また、図5では、各グラフに6〜9の番号を付しており、以下、グラフ6〜9として各グラフを特定する。
グラフ6およびグラフ8は、それぞれ、上記正変換特性および逆変換特性であり、グラフ7は露出補正の入出力特性である。すなわち、グラフ6に示す正変換特性によれば、画像データ15aの階調値をRGBの色成分毎に光の量Yに変換することができる。露出補正は、光の量を定数倍することによって実施できるので、本実施形態においてはグラフ7のように光の量Yをα倍することで露出補正特性を規定する。
尚、ここで定数αは、上記ステップS105にて検出されるEVから算出される定数であり、EVが負の数であればαは2|EV|、EVが正の数であればαは(1/2)EVである。例えば、EV="−1"であればαは2、EV="1"であればαは1/2である。また、図5においては、露出補正後の光の量をeYとし、横軸を光の量Y、縦軸を露出補正後の光の量eYとして示している。当該露出補正後の光の量eYをグラフ8のように上記逆変換特性F-1で変換すると、露出補正後の画像データをRGBの色成分毎に取得することができる。
グラフ9は、上記グラフ6〜グラフ8の変換特性を重畳した結果であり、上記画質調整特性である。すなわち、横軸は画像データ15aにおけるRGBの各色成分値であり、縦軸はRGBの各色成分について露出補正を行った後の画像データである。このように、正変換特性と逆変換特性とを利用することにより、グラフ7のような非常に単純な補正で各EVに対する画質調整特性データ15cを定義することができる。
この画質調整特性データ15cは、グラフ9に示すように、非常に複雑な形状をしており、入出力特性を手動で調整するUI等を利用して人為的に規定するのは非常に困難である。また、本発明のような解析に基づくことなく、適切な非線形特性を自動で規定するのも困難である。しかし、本発明においては、上述のように変換特性データ15bを予め用意してあり、この変換特性データ15bが多数のメーカーのデジタルカメラ30によってなされた色調整処理を記述していることが分かっている。従って、本発明によれば、上記グラフ7のように非常に単純な処理によってグラフ9のように複雑な画質調整特性データ15cを規定することができ、また、このデータによって適切な露出補正を実施することが可能である。
図6は、色バランス補正の様子を示すグラフである。下段のグラフは、色バランス補正を行った場合の画質調整特性を示しており、上段のグラフは当該画質調整特性を得るために実施されるべき変換処理の特性を示している。これらのグラフにおいて、横軸は入力値、縦軸は出力値であり、各入力値が実線で示す特性に従ってグラフ上で対応する出力値に変換されることを示している。ここでも、破線で示す直線は入力値と出力値が等しい場合の特性を示している。また、図6では、各グラフに10〜13の番号を付しており、以下、グラフ10〜13として各グラフを特定する。
グラフ10およびグラフ12は、それぞれ、上記正変換特性および逆変換特性であり、グラフ11は色バランス補正の入出力特性である。すなわち、グラフ10に示す正変換特性によれば、画像データ15aの階調値をRGBの色成分毎に光の量Yに変換することができる。色バランス補正は、光の量をRGBの色成分毎に異なる定数で定数倍することによって実施できる。本実施形態においては、グラフ11のようにG成分を基準成分として入力値=出力値とし、R成分をγ倍、B成分をβ倍することで色バランス補正特性を規定する。
尚、ここで定数γ、βは、上記ステップS105にて検出される「G成分に対するR成分の相対的な値x」と「G成分に対するB成分の相対的な値y」に基づいて算出する。すなわち、G成分に対するR成分の相対的な値がxであるとき、適正な色バランスの場合と比較してR成分はx倍の階調値になっていることから、定数γ=1/xである。同様に定数β=1/yである。また、図6においては、色バランス補正後の光の量をeYとし、横軸を光の量Y、縦軸を色バランス補正後の光の量eYとして示している。(むろん、本実施形態において、R成分とB成分とでは乗じられる定数が異なるため、実際はRGB毎の光の量Yr,Yg,Ybに対して補正後の光の量eYr,eYg,eYbが得られ、eYr=γ・Yr,eYb=β・Yb,eYg=Ygである。)
当該色バランス補正後の光の量eYをグラフ12のように上記逆変換特性F-1で変換すると、色バランス補正後の画像データをRGBの色成分毎に取得することができる。グラフ13は、上記グラフ10〜グラフ12の変換特性を重畳した結果であり、上記画質調整特性である。すなわち、横軸は画像データ15aにおけるRGBの各色成分値であり、縦軸はRGBの各色成分について色バランス補正を行った後の画像データである。このように、色バランス補正についても、正変換特性と逆変換特性とを利用することにより、グラフ11のような非常に単純な補正で画質調整特性データ15cを定義することができる。尚、以上においては、露出補正と色バランス補正とを分けて説明したが、双方を実施すべき時は、上記正変換特性による変換の後に双方の補正を行い、さらに逆変換特性による変換を行ったことを想定して画質調整特性データ15cを定義すればよい。
(3)他の実施形態:
以上の実施形態においては、デジタルカメラ30において何らかの色調整処理がなされていることを想定し、当該色調整処理に相当する逆変換特性と、その逆処理に当たる正変換特性とを定義することによって簡易な計算に基づく補正を実現していた。しかし、上述の変換特性データ15bは、画像データ15aの各色成分値を光の量に比例する値に変換するためのデータであると考えることもできる。従って、変換特性データ15bを作成する際の解析においては、デジタルカメラ30のメーカーが実施しているであろう色調整処理を想定する構成に限定されず、光の量と画像データ15aとの変換特性を規定することができればよい。
また、変換特性データ15bを予め作成し、ハードディスクドライブ15に記録しておく構成に限定されることもなく、少なくとも画像調整特性データ作成部21b2による処理に際して利用可能に提供されればよい。例えば、画像データ15aに上記変換特性データ15bが含まれるように構成しても良い。このような画像データ15aとしては、Print Image Matching(PIM:PIMはセイコーエプソン株式会社の登録商標)やExif Print(Exifは電子情報技術産業協会の登録商標)といった規格に対応した画像データが挙げられる。
すなわち、これらの規格のデータにおいて、画像ファイルのタグ部分にてデジタルカメラ30のセンサにおける信号値と画像データ15aとの関係を記述することができるので、このタグを利用する。このタグを利用して記述する内容は、デジタルカメラ30のメーカーが決めるので、この構成を採用すれば、各メーカーが行う色調整処理を忠実に反映した変換特性データ15bを取得することができ、正確な画質調整特性データ15cを作成することが可能である。
また、画像データ15aの形式は上述のようにRGB色成分による構成に限定されることはなく、例えば、YCbCr色成分によって色を規定しても良い。この場合、上記変換特性データ15bとしては、YCbCr色成分をYCbCr色成分に変換するデータとなるので、必要に応じて表色系を変換する入出力特性を規定し、人間に知覚される明るさと比例関係にある階調値を想定する。そして、この階調値について実施される、各メーカーにほぼ共通の色調整処理特性を抽出すれば、変換特性データ15bを定義することができる。
さらに、本発明においては、画像補正モジュール21bによって補正が実施されればよいため、このための構成としては、上述のように画質調整特性データ15cを作成する構成の他、種々の構成を採用可能である。例えば、予め総ての入力値に対して画質調整特性データ15cを作成するのではなく、必要な入力値に対してのみ上記図5に示すグラフ6〜8や図6に示すグラフ10〜12の処理を実施するようにしても良い。
すなわち、正変換特性に基づいて画像データ15aを光の量に変換し、変換後のデータについて露出補正や色バランス補正を行い、さらに逆変換特性に基づいてRGBデータに戻す処理を実施する。この処理を全画素について繰り返すことによって、画像データ15aに対して補正を実施することができる。むろん、一度変換を実施した画像データ15aの値については、その変換特性を一時記憶しておき、再度同じデータの画素が処理対象となった場合にその変換特性を再利用するのが好ましい。
さらに、複数のEVやRGB各色の相対値、およびその組み合わせに対して予め画質調整特性を算出し、テーブルデータとして予めハードディスクドライブ15に記録しておく構成を採用しても良い。この構成によれば、画質調整特性データ作成部21b2による処理は不要であり、画像解析部21b1による解析の後、適切な画質調整特性テーブルを選択して変換処理を実施すればよい。
さらに、上記逆変換特性や正変換特性の替わりに、上記図3のグラフ2に示す入出力特性をハードディスクドライブ15に記録しておく構成を採用しても良い。すなわち、上記図3において、グラフ1,3,4は予め決められた式によって入出力特性を記述することができる。そこで、グラフ2を示す入出力特性を決めておけば、グラフ2およびグラフ1,3,4を重畳することによって逆変換特性を記述することができるし、正変換特性を記述することも可能である。
さらに、本発明にかかる画像補正を適用する範囲を制限する構成を採用し、画像補正に伴って階調の欠損が生じることを防止してもよい。すなわち、上記図5のグラフ9に示すように、露出補正後の画像データは高階調(RGB値が大きい値、高輝度域)側で入力値に対する出力値の変化度合いが小さくなり、露出補正量によってはその変化が飽和する。出力値の変化が飽和すると、画像において階調が欠損し、画質が劣化してしまう。
そこで、画像データがある階調値を超える部分については上記グラフ9に示す画像補正を適用せずに、出力値の飽和を防止するような入出力特性とすれば、階調の欠損を防止することができる。このためには、例えば、上記図1に示す構成とほぼ同様な構成を採用し、画像解析部21b1と画質調整特性データ作成部21b2とにおいて実施する図2のような処理の一部を図7に示すような処理に変更すればよい。
図7は、印刷制御処理において図2に示す処理と異なる処理を実行する部分を示すフローチャートである。同図におけるステップS1050,S1051は上記図2に示すステップS105の代わりに実施する処理であり、ステップS1100,S1101は上記図2に示すステップS110の代わりに実施する処理である。この実施形態においては、図2と同様にステップS100にて画像データを取得すると、画像データのRGB色成分に基づいて各画素の輝度成分を算出する。そして、当該輝度成分からその輝度分布(ヒストグラム)を算出し、画像の明部と暗部とを分ける境界Boを設定する(ステップS1050)。
また、この実施形態においては境界Bo以下の輝度を持つ画素の画像データ(暗部の画像データ)に基づいてそのEVを決定し(ステップS1051)、当該暗部の画像データについて、上記図5と同様の考え方によって画質調整特性データ15cを作成する(ステップS1100)。従って、暗部については当該画質調整特性データ15cを参照することで、適正な露出補正が可能である。尚、画質調整特性データ15cは入力値をRGB値とした入出力変換特性を示すので、RGB値についても暗部を定義する必要があるが、境界Boの輝度値と等しいRGBの各値を境界として明暗を定義してもよいし、境界Boの輝度値からその輝度値に対応するRGB値を求める構成を採用してもよく種々の構成を採用可能である。
さらに、残りの明部については、階調欠損を低減するため、予め決められた規則に基づいて入力値に対する出力値が滑らかに変化するように入出力特性を定義し、画質調整特性データ15cとする(ステップS1101)。従って、明部については当該画質調整特性データ15cを参照することで、階調欠損を抑えながら補正を行うことが可能である。以上のように、暗部と明部とについて異なった思想に基づいて作成された入出力特性を定義し、画質調整特性データ15cとしておけば、この後は、図2のステップS115〜S130における処理を行って、印刷制御処理を完結する。
図8は、以上のようにして作成した画質調整特性データ15cの入出力特性の例を示している。同図においても、上記図5のグラフ9と同様に横軸は画像データ15aにおけるRGBの各色成分値、縦軸はRGBの各色成分について露出補正を行った後の画像データである。このグラフにおいては、RGBの各値が境界Bo以下である場合に本発明における補正を行うこととしており、境界Bo以下においては、図5のグラフ9と同じ入出力特性である。従って、デジタルスチルカメラ30において色調整処理が実施されていたとしても適正に露出補正を行うことができる。むろん、この特性は、露出補正量によって変動し得るが、図8においては"−2eV"の補正を行う場合の入出力特性を示している。また、境界Bo以上においては、入力に対して出力がリニアに対応している。従って、ある入力値に対して階調が欠損することはない。
以上のような画質調整特性データ15cに基づく処理の利点は、逆光画像にて特に顕著に現れる。図9は、画像の主要部以外の背景に明るい部分を含む逆光画像の輝度分布である。同図に示すように、逆光画像の輝度分布においては高輝度部分と低輝度部分にある程度の度数が偏在することが多く、低輝度部分が画像の主要部となる。画像の主要部は低輝度であるため、この主要部の情報に基づいて上記露出補正を行えば主要部について適正な露出補正を行うことができる。
一方、高輝度部分のすべてが背景であるとは限らず、人間の顔の一部が高輝度であるなど、階調が欠損すると好ましくない部分が高輝度となる場合もある。上述のように図5のグラフ9に示す補正を行うと、高輝度部分の階調が欠損する恐れがあるが、高輝度部分で入力値に対して出力値が滑らかに変化するように構成し、また、出力値の変化が飽和することを防止しているので階調欠損を抑えることができる。従って、上述のように明暗を分けることによって画像の主要部を暗部とし、主要部以外を明部とすれば、高輝度部分の階調欠損を抑えながら、主要部については適正露出になるように補正を行うことができる。
尚、上記ステップS1050では、輝度に基づいて画像の明部と暗部とを分けることができればよく、種々の手法を採用可能である。すなわち、画像について明暗の境界を定義し、この境界より高輝度側では階調欠損を抑え、この境界より低輝度側では適切な画質となるように境界を定義できればよい。従って、明暗を決定できる限りにおいて各種の基準を採用可能である。例えば、予め決められた輝度を境界としてもよく、この場合は輝度分布を算出する必要はない。逆光画像について主要部と主要部意外とで入出力特性を変えるためには、輝度分布に基づいて明暗を分ければよく、例えば、高輝度側の度数の和と低輝度側の度数の和が所定の比となるように、両者の比に基づいて境界Boを決定するなどの構成を採用可能である。
むろん、以上の構成は、階調域の一部について、適正な露出補正を行い、他の部分について階調欠損を防止する補正を行うことができればよいので、補正対象としては逆光画像に限られない。すなわち、画像の主要部、例えば、人間の顔が明部であり、背景が暗部であるような画像に適用してもよく、この場合は、人間の顔について階調欠損が生じることを防止しながら露出補正を行うことができる。また、上記図6に示すような色バランスの補正について階調域毎に入出力特性の思想を変化させる構成、すなわち、一部では適正な色バランスになるようにグラフ13を適用し、他の部分では、階調欠損を防止するために出力値の飽和を防止する構成としてもよい。
さらに、階調の欠損は、上述のように高階調域のみで発生するとは限らないし、出力値の飽和のみによって生じるとも限らない。例えば、上記グラフ9やグラフ13に示す画質調整特性と異なり、入力値より出力値が小さくなるような補正を行う際に所定の境界以下の低階調域で出力値が飽和するような特性となる場合、当該低階調域で出力値が飽和しないように階調の欠損を抑える補正を行ってもよい。また、上記グラフ9の1eVに示すように、同じ入力値に対して複数の出力値を割り当て可能である場合(最大入力値に対して複数の出力値を対応可能である場合)、ある入力階調値から最大の入力階調値に対して出力値がリニアに変化するように入出力特性を定義してもよい。むろん、この定義によって画質がより劣化して見えるのであれば、階調の欠損を許容することとしてもよい。
さらに、以上の各実施形態において、露出補正量を決定するための手法は種々の手法が採用可能である。例えば、露出補正を行う主要部(画像の中央や人間の顔等)と他の部分(背景等)とを分離し、両者の平均的な輝度に基づいて露出補正量を調整してもよい。すなわち、主要部が同じ平均輝度であるとしても他の部分がその平均輝度に対して明るい場合と暗い場合とで比較すると、人間の感覚としては前者の方が露出補正の効果が現れにくく、後者の方が露出補正の効果が現れ易い。
そこで、予め決められた規則に基づいて露出量を決定し、画像を主要部と他の部分とにおける平均輝度に基づいてこの露出量を変化させるように構成すれば、露出補正量をさらに適正な補正量に設定することが可能である。むろん、上記図6に示すような色バランスの補正について領域毎の輝度や色バランスに基づいて色バランスの補正量を変更する構成としてもよい。尚、この構成において主要部と他の部分とを分離するための構成としては種々の構成を採用可能であり、人間の顔等の所定パターンを抽出することで主要部を特定したり、予め決められた部分を主要部と定義するなど種々の構成を採用可能である。
10…コンピュータ、10a…システムバス、11…CPU、12…ROM、13…RAM、15…ハードディスクドライブ、15a…画像データ、15b…変換特性データ、15c…画質調整特性データ、15d…LUT、16…キーボード、17…マウス、18…ディスプレイ、20…プリンタ、21a…画像データ取得モジュール、21b…画像補正モジュール、21b1…画像解析部、21b2…画質調整特性データ作成部、21b3…補正処理部、21c…色変換モジュール、21d…ハーフトーン処理モジュール、21e…印刷データ生成モジュール、30…デジタルカメラ