JP4196079B2 - プラズマディスプレイパネルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大画面で、薄型、軽量のディスプレイ装置として知られるプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと記す)の構造物の形成を行うプラズマディスプレイパネルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
PDPは、ガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で蛍光体を励起して発光させることにより画像表示を行っている。
【0003】
PDPには、大別して、駆動的にはAC型とDC型とがあり、放電形式では面放電型と対向放電型とがあるが、高精細化、大画面化および構造の簡素性に伴う製造の簡便性から、現状では、3電極構造の面放電型のPDPが主流である。その構造は、ガラス等の基板上に、走査電極と維持電極とからなる表示電極と、それを覆う誘電体層と、さらにそれを覆う保護層とを有する前面板と、表示電極に対して直交する複数のアドレス電極と、それを覆う誘電体層と、誘電体層上の隔壁とを有する背面板とを対向配置させることにより、表示電極とデータ電極との交差部に放電セルを形成し、且つ放電セル内に蛍光体層を備えたものである。
【0004】
このようなPDPは、液晶パネルに比べて高速の表示が可能であり、視野角が広いこと、大型化が容易であること、自発光型であるため表示品質が高いことなどの理由から、フラットパネルディスプレイの中で最近特に注目を集めており、多くの人が集まる場所での表示装置や家庭で大画面の映像を楽しむための表示装置として各種の用途に使用されている。
【0005】
以上の構成においては、表示電極および/またはアドレス電極のような電極には、その形状および配設ピッチに精度が要求されることから、例えば、金属材料等のような導電性材料に、感光性材料を含有させた材料を基板全面に塗布、乾燥し、それを電極のパターンに露光する露光パターンを備えたフォトマスクにより露光し、その後、それを現像するという、いわゆるフォトリソグラフィ法によってパターニングすることで、所定の位置に所定形状の電極を形成する。
【0006】
上述のようなフォトリソグラフィ法においては、フォトマスクが備える露光パターンの露光部にダスト等が付着していると、その部分に対応する感光性材料が感光せず重合されないことから、現像時に溶解し、「抜け」となってしまうことから、電極の場合、最悪の場合、断線に至ってしまう。ここで、断線が発生してしまうと、断線発生箇所より給電方向下流側の画素に電力を供給することができず、PDPにおいては画像表示に支障が生じ、致命的な欠陥となる。
【0007】
そこで、上述のような断線の発生を抑制するために、露光を、同一の露光パターンを備える複数のフォトマスクを用いて、複数回、行うという方法がある。これは、異なるフォトマスクのそれぞれの露光パターンは、そのパターンの同一箇所にダストが付着している可能性は非常に小さく、したがって、露光を、例えば2枚のフォトマスクを用いて、フォトマスク毎にそれぞれ一回、計2回行うことによれば、一方のフォトマスクに付着したダストのために、そのフォトマスクでの露光が遮られ未感光となるとしても、もう一方のフォトマスクでの露光の際には感光するので、これにより、未感光となる領域を、ほとんどなくすことが可能となるというものである(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平1−281448号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、例えば露光を2回行うと、感光性材料の露光の履歴としては、1回目と2回目との両方の露光を受けた領域(2回露光領域)と、1回目もしくは2回目の一方の露光のみを受けた領域(1回露光領域)とに分かれる。
【0010】
ここで、露光により感光性材料は架橋反応し、硬化するが、2回露光領域においては、その露光が過露光となる場合があり、そのような場合には架橋反応が過度に進行してしまい、形成した電極には応力が内在した状態となり、このような状態で焼成を行うと、電極が収縮し、エッジ部での反り上がりや剥がれといった問題が発生する場合がある。このような問題は、エッジ部が過露光となった場合に特に顕著となる。
【0011】
また、PDPにおいては、大画面であるにも関わらず、例えば隔壁など、その構造物には精度を要求されることから、形成には同様にフォトリソグラフィ法が用いられる場合がある。このような場合も、上述と同様の問題が発生し、同様に画像表示に支障が生じてしまう場合がある。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、PDPの構造物の形成をフォトリソグラフィ法により行うPDPの製造方法において、フォトマスクに付着したダスト等により、PDPの構造物に断線などの欠陥が発生することを抑制し、且つ、構造物の反り上がり、剥がれなども抑制することができるプラズマディスプレイパネルの製造方法を実現することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明のプラズマディスプレイパネルの製造方法は、ネガ型感光性材料を用いてフォトリソグラフィ法により形成した構造物を有するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、形成する構造物のパターンに対する露光を、その略中央領域をパターン露光する第一の露光と、この第一の露光による露光領域に一部を重複させて、前記構造物のパターンのうちの残りの領域をパターン露光する第二の露光とにより行うことで、前記重複させる領域を、構造物のパターンの領域の1/5以下で、且つ構造物のパターンの内側に入った箇所とした、ことを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明の請求項1に記載の発明は、ネガ型感光性材料を用いてフォトリソグラフィ法により形成した構造物を有するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、形成する構造物のパターンに対する露光を、その略中央領域をパターン露光する第一の露光と、この第一の露光による露光領域に一部を重複させて、前記構造物のパターンのうちの残りの領域をパターン露光する第二の露光とにより行うことで、前記重複させる領域を、構造物のパターンの領域の1/5以下で、且つ構造物のパターンの内側に入った箇所とした、ことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法である。
【0015】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の発明において、前記構造物は、線状の構造物であり、第一の露光は、この線状構造物のパターン線幅Tよりも小さい開口幅t1の線状開口部を備える第1のフォトマスクを用いて行い、第二の露光は、第1のフォトマスクが備える線状開口部の位置に対して、一部オーバーラップしてその両側となる位置に形成した開口部を備える第2のフォトマスクを用いて行い、この開口部の外幅t2は、ネガ型感光性材料に対して前記線状構造物のパターンの線幅Tとなるように露光することができる幅であり、内幅t3は、開口幅t1よりも狭いものである、ことを特徴とするというものである。
【0016】
以下、本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法について、図を用いて説明する。
【0017】
まず、PDPの構造の一例について説明する。図1は、本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法により製造される、PDPの概略構成の一例を示す断面斜視図である。
【0018】
PDP1の前面板2は、前面側の、例えばフロート法により得られたガラスのような、平滑、透明且つ絶縁性の基板3の一主面上に形成した、走査電極4と維持電極5とからなる表示電極6と、隣接する表示電極6間に設けた遮光層7と、表示電極6と遮光層7とを覆う誘電体層8と、さらにその誘電体層8を覆う、例えばMgOによる保護層9とを有する構造である。走査電極4と維持電極5は、電気抵抗の低減を目的として、透明電極4a、5aに金属材料のような良導電性材料によるバス電極4b、5bを積層した構造である。また、遮光層7は、非発光時に蛍光体層(後述)からの白色を遮蔽し、コントラストを向上させるためのものである。
【0019】
背面板10は、背面側の、例えばフロート法により得られたガラスのような、平滑、且つ絶縁性の基板11の一主面上に形成したアドレス電極12と、そのアドレス電極12を覆う誘電体層13と、誘電体層13上の、隣り合うアドレス電極12の間に相当する場所に位置する隔壁14と、隔壁14間の蛍光体層15R、15G、15Bとを有する構造である。
【0020】
そして、前面板2と背面板10とは、隔壁14を挟んで、表示電極6とアドレス電極12とが直交するように対向し、周囲を封着部材により封止した構成であり、前面板2と背面板10との間に形成された放電空間16には、例えばNe−Xe5%の放電ガスを66.5kPa(500Torr)の圧力で封入している。
【0021】
そして、放電空間16の表示電極6とアドレス電極12との交差部が放電セル17(単位発光領域)として動作する。
【0022】
次に、上述した構造のPDP1について、その製造方法を同じく図1を参照しながら説明する。
【0023】
前面板2は、基板3上にまず、走査電極4および維持電極5を例えばストライプ状に形成する。具体的には、基板3上に透明電極4a、5aの材料、例えばITOによる膜を、例えば電子ビーム蒸着法により形成し、さらにその上にレジストを、透明電極4a、5aのパターンとして残るようにパターニングして形成した後、エッチングにより透明電極4a、5aの材料による膜をエッチングし、その後、レジストを剥離することで、透明電極4a、5aを形成する。なお、透明電極材料としてはSnO2等も用いることができる。そして、上述のようにして形成した透明電極4a、5aの上にバス電極4b、5bを形成する。具体的には、黒色顔料、ガラスフリット(PbO−B2O3−SiO2系やBi2O3−B2O3−SiO2系等)、重合開始剤、光硬化性モノマー、有機溶剤を含む感光性黒色ペーストを用いスクリーン印刷法等によりガラス基板上に黒色電極膜を成膜した後、乾燥し、引き続き、スクリーン印刷法等により黒色電極膜の上にAgを材料に含有する導電性材料、ガラスフリット(PbO−B2O3−SiO2系やBi2O3−B2O3−SiO2系等)、重合開始剤、光硬化性モノマー、有機溶剤を含む感光性Agペーストを用いて金属電極膜を成膜し、再度、乾燥する。そしてその後、フォトリソグラフィ法によってパターニングし、焼成することで、バス電極4b、5bを形成することができる。以上により、走査電極4および維持電極5からなる表示電極6を形成することができる。
【0024】
次に、遮光層7を形成する。これは、感光性黒色ペーストをスクリーン印刷法等により成膜した後、フォトリソグラフィ法によってパターニングし、焼成することで形成することができる。なお、遮光層7は、バス電極4b、5bの下地黒色層と同時に形成してもよい。また、黒色であるならペーストを用いた形成方法でなくとも良い。また、バス電極4b、5b形成の前に形成しても良い。
【0025】
次に、以上のようにして形成した表示電極6と遮光層7とを、誘電体層8で被覆する。誘電体層8は、鉛系のガラス材料を含むペーストを例えばスクリーン印刷で塗布、乾燥した後、焼成することによって形成する。
【0026】
次に、誘電体層8を、保護層9で被覆する。保護層9は、例えばMgOからなるものであり、蒸着やスパッタなどの成膜プロセスにより形成する。
【0027】
一方、背面板10は、基板11上に、アドレス電極12を、例えばストライプ状に形成する。具体的には、基板11上に、アドレス電極12の材料、例えば感光性Agペーストを用い、スクリーン印刷法等により膜を形成し、その後、フォトリソグラフィ法などによってパターニングし、焼成することで形成することができる。
【0028】
次に、以上のようにして形成したアドレス電極12を、誘電体層13により被覆する。誘電体層13は、例えば、鉛系のガラス材料を含むペーストを、例えば、スクリーン印刷で塗布、乾燥した後、焼成することによって形成する。また、ペーストをスクリーン印刷する代わりに、成型されたフィルム状の誘電体層の前駆体をラミネートして焼成することによって形成しても良い。
【0029】
次に、隔壁14を例えばストライプ状に形成する。隔壁14は、Al2O3等の骨材とガラスフリットとを主剤とする感光性ペーストを印刷法やダイコート法等により成膜し、フォトリソグラフィ法によりパターニングし、焼成することで形成することができる。または、例えば、鉛系のガラス材料を含むペーストを、例えば、スクリーン印刷法により所定のピッチで繰り返し塗布、乾燥した後、焼成することによって形成してもよい。ここで、隔壁14の間隙の寸法は、例えば32インチ〜50インチのHD−TVの場合、130μm〜240μm程度である。
【0030】
そして、隔壁14と隔壁14との間の溝には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各蛍光体粒子により構成される蛍光体層15R、15G、15Bを形成する。これは、各色の蛍光体粒子と有機バインダとからなるペースト状の蛍光体インキを塗布、乾燥し、これを400〜590℃の温度で焼成して有機バインダを焼失させることによって、各蛍光体粒子が結着してなる蛍光体層15R、15G、15Bとして形成する。
【0031】
以上のようにして作製した前面板2と背面板10とを、前面板2の表示電極6と背面板10のアドレス電極12とが直交するように重ね合わせるとともに、周縁に封着用ガラス等の封着部材を介挿し、これを例えば450℃程度で10〜20分間焼成して形成した気密シール層(図示せず)により封着する。そして、一旦、放電空間16内を高真空(例えば、1.1×10-4Pa)に排気した後、放電ガス(例えば、He−Xe系、Ne−Xe系の不活性ガス)を封入することによってPDP1を作製する。
【0032】
ここで、PDP1は大画面であると同時に、表示電極6、遮光層7、アドレス電極12、隔壁14などのPDP1の構造物には、形状および位置に対する精度が要求されるため、これら、PDP1の構造物の形成方法としては、フォトリソグラフィ法が多く用いられている。
【0033】
そこで、本発明によるPDP1の製造方法におけるフォトリソグラフィ法について、アドレス電極12をPDPの構造物の一例として、その形成工程を、本発明の特徴的な点である、露光での工程の流れを中心に、図を用いて説明する。
【0034】
図2は、アドレス電極12を形成する際の工程の概略の流れを示す図である。また、図3は、その際に用いる第一のフォトマスクと第二のフォトマスクの開口パターンの相対関係を模式的に示すための部分拡大平面図である。また、図4は、露光による露光領域を模式的に示すための部分拡大平面図である。
【0035】
まず、図2(a)に示すように、アドレス電極12の材料となるAg材料を有する感光性Agペーストを用い、これをスクリーン印刷法等により基板11に均一に塗布することで、感光性Agペースト膜21を形成する。
【0036】
次に、図2(b)に示すように、開口部22aを備える第1のフォトマスク22を、所定の位置に位置合わせして設置する。ここで、開口部22aの開口幅t1は、アドレス電極12のパターンの線幅Tよりも小さく形成している。
【0037】
この状態で、図2(c)に示すように、感光性Agペースト膜21に対する第一の露光を行う。具体的には、超高圧水銀ランプによる紫外線23を照射する。この露光により、開口幅t1がパターンの線幅Tよりも小さいことから、図4(a)に示すように、アドレス電極12のパターン30の略中央領域31が露光される。
【0038】
次に、図2(d)に示すように、開口部24aを備える第2のフォトマスク24を、所定の位置に位置合わせして設置する。ここで、図3に示すように、第2のフォトマスク24における開口部24aは、第1のフォトマスク22における開口部22aの位置に対して、一部オーバーラップしてその両側となる位置に形成したものである。なお、開口部24aの外幅t2は、感光性Agペースト膜21に対してアドレス電極12のパターン30の線幅Tに露光することができる幅である。
【0039】
そして、この状態で、図2(e)に示すように、超高圧水銀ランプによる紫外線23を照射し、感光性Agペースト膜21に対する第二の露光を行う。この露光により、図4(b)に示すように、第一の露光による露光領域31に一部を重複させた状態で、アドレス電極12のパターン30のうちの残りの領域32が露光され、これにより、パターン30の全領域が露光されることとなる。
【0040】
そして以上のようにして、アドレス電極12のパターンを露光した感光性Agペースト膜21に対して、現像を行うことで、感光性Agペースト膜21をアドレス電極12のパターンに形成することができ、それを焼成することでアドレス電極12が完成する。
【0041】
ここで、第1のフォトマスク22および第2のフォトマスク24に、それぞれダストが付着していたとしても、感光性Agペースト膜21に対する相対位置が一致する確率は非常に小さい。具体的には、40インチクラスのPDPの製造に用いられるフォトマスク上に直径100μmの円状の異物が100個程度付着したとき、第1のフォトマスクと第2のフォトマスクとで付着した異物の位置が一致する確率は0.1%程度以下となる。すなわち、フォトマスクの交換毎に露光を行う場合、感光性Agペースト膜21に対してフォトマスクの交換によってでも同じ箇所にダストが位置するという確率は非常に小さく、したがって、フォトマスクの交換を行って、その交換毎に露光を行えば、フォトマスクに付着したダストにより露光が遮られ未露光となり断線してしまうという領域を、大幅に抑制することが可能となる。
【0042】
したがって、上述したような2回露光によりパターン30中に形成された、第一の露光による露光領域31と、第二の露光による露光領域32とが重複する2回露光の領域は、フォトマスクへのダストの付着に関わらず1回は露光される確率が非常に高まるため、このことにより、アドレス電極12のパターン30は、最悪でも、上述した二回露光の領域の存在により、断線に至る確率は非常に小さくなる。
【0043】
ここで、図3に示すように、第1のフォトマスク22と第2のフォトマスク24とは、その位置合わせの誤差による、第一の露光と第二の露光とで露光される領域の位置ずれを抑制するために、第2のフォトマスク24の開口部24aの外幅t2は,感光性Agペースト膜21に対して、アドレス電極12のパターンの線幅Tに露光できる幅とし、第1のフォトマスク22の開口部22aの開口幅t1は、第2のフォトマスク24の開口部24aの内幅t3よりも若干、広くしたものとしている。このことにより、第1のフォトマスク22による第一の露光による露光領域に一部を重複して、第二の露光が行われるため、その位置合わせの誤差によるパターン30の「抜け」という問題は抑制される。なお、第1のフォトマスク22の開口部22aの開口幅t1に対する、第2のフォトマスク24の開口部24aの外幅t2と内幅t3とは、露光パターンのデザイン、各フォトマスクの位置決め精度、および感光性材料の焼成時の収縮率などの材料特性に基づき決定すればよい。
【0044】
また、ここで、露光により感光性Agペースト膜21は架橋反応し、硬化するが、アドレス電極12のパターン30の全領域を、第一の露光と第二の露光とで露光してしまうと、フォトマスクに付着したダストの影響を抑制することは可能とはなるが、2回露光領域においては架橋反応が過度に進行し、過露光となってしまうため、アドレス電極12には、応力が内在した状態となる。このような状態のアドレス電極12を焼成すると、焼成の際に異常な収縮が発生し、アドレス電極12のエッジ部が反り上がったり、剥がれが発生したりする。逆に、2回露光領域の過露光を抑制するために、第一の露光と第二の露光とでの露光量をそれぞれ一様に低減すると、ダストの存在により1回露光のみとなってしまう領域においては露光不足となり、架橋反応の進行が不十分となる場合がある。露光不足の状態とは、露光時の光照射は膜表面から行われるため、架橋反応は膜表面から進行し電極膜表面では硬化が十分に行われているが、電極膜内部では硬化が不充分な露光不足の状態のことであり、このような場合も、現像時や焼成時に剥がれが発生しやすい状態である。
【0045】
しかしながら、上述したような、本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法における露光方法では、第一の露光による露光領域31と第二の露光による露光領域32の重複する箇所、すなわち過露光となる箇所が、アドレス電極12のパターン30に対して、内側に入った箇所となり、エッジ部および中央部は1回露光となることから、過露光により発生する応力が原因となるエッジ部での反りや剥がれといった問題の発生が抑制される。
【0046】
ここで、図5に示すように、第1のフォトマスク22の開口部22aの開口幅をt1、第2のフォトマスク24の開口部24aのそれぞれの開口幅をt4とし、それぞれを、パターン30の線幅Tに対して、t1=2×T/3、t4=T/5とすれば、二回露光領域の占める面積は、片側でT/15となり、過露光により発生する応力は十分小さくなる。
【0047】
なお、本発明者の検討により、二回露光領域の占める割合が、パターンの線幅Tに対して、1/5程度以下であれば過露光部が存在しても、反り上がり等不具合が発生しないことを実験的に確認している。
【0048】
また、以上より、本発明によれば、PDPの構造物は、その露光後、焼成前の状態において、内部に架橋反応状態が異なる領域を有する状態を呈する。これは具体的には、例えば、炭素濃度の状態で確認することが可能である。また、その異なる領域は、構造物の形成する際の全露光領域に対し、1/5以下である。
【0049】
また、一方のフォトマスクの開口幅を大きくすると、二回露光領域の面積を小さくするためにもう一方のフォトマスクの開口幅を小さくする必要があるが、この時の開口幅が、ダストの大きさと同等となってしまうと、パターン30の仕上がり形状が悪化する。このため、第2のフォトマスク24の開口部24aの開口幅の和と第1のフォトマスク22の開口部22aの開口幅は少なくともアドレス電極12のパターン30の線幅Tの1/4程度以上とすることが望ましい。
【0050】
以上の説明では、最初に、アドレス電極12のパターンの略中央領域を露光する第一の露光を行い、次に、第一の露光による露光領域に一部を重複させて、アドレス電極12のパターンのうちの残りの領域を露光する第二の露光を行うという形態を示したが、上記での第一、第二はその露光の順序を指定するものではなく、したがって、先に第二の露光を行い、その後、第一の露光を行う形態によっても、本発明の効果を同様に得ることが可能である。
【0051】
また、以上は、PDPの構造物の一例として、アドレス電極12を例として説明したが、表示電極6、遮光層7、アドレス電極12、隔壁14など、フォトリソグラフィ法を用いて形成するPDP1の構造物に対しても同様の効果を得ることができる。
【0052】
以上説明した、本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイパネルの製造方法によれば、上述したような、第1のフォトマスクと第2のフォトマスクとを用いた二回露光を行うので、フォトマスクに付着した異物によるパターンの断線と、二回露光による形状不良の発生とを抑制することが可能となる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、PDPの構造物の形成をフォトリソグラフィ法により行うPDPの製造方法において、フォトマスクに付着したダスト等により、PDPの構造物に断線などの欠陥が発生することを抑制し、且つ、その構造物の反り上がり、剥がれなども抑制することができるプラズマディスプレイパネルの製造方法を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態によるPDPの製造方法により製造される、PDPの概略構成の一例を示す断面斜視図
【図2】アドレス電極を形成する際の工程の概略の流れを示す図
【図3】形成するアドレス電極のパターンを模式的に示す平面図
【図4】第一のフォトマスクと第二のフォトマスクの開口パターンを模式的に示す平面図
【図5】露光による露光領域を模式的に示す平面図
【符号の説明】
11 基板
21 感光性Agペースト膜
22 第1のフォトマスク
22a 開口部
24 第2のフォトマスク
24a 開口部
31、32 領域
Claims (2)
- ネガ型感光性材料を用いてフォトリソグラフィ法により形成した構造物を有するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
形成する構造物のパターンに対する露光を、その略中央領域をパターン露光する第一の露光と、この第一の露光による露光領域に一部を重複させて、前記構造物のパターンのうちの残りの領域をパターン露光する第二の露光とにより行うことで、前記重複させる領域を、構造物のパターンの領域の1/5以下で、且つ構造物のパターンの内側に入った箇所とした、
ことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。 - 前記構造物は、線状の構造物であり、
第一の露光は、この線状構造物のパターン線幅Tよりも小さい開口幅t1の線状開口部を備える第1のフォトマスクを用いて行い、
第二の露光は、第1のフォトマスクが備える線状開口部の位置に対して、一部オーバーラップしてその両側となる位置に形成した開口部を備える第2のフォトマスクを用いて行い、この開口部の外幅t2は、ネガ型感光性材料に対して前記線状構造物のパターンの線幅Tとなるように露光することができる幅であり、内幅t3は、開口幅t1よりも狭いものである、
ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
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