JP4200264B2 - シート状誘電体材料およびそれを用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート状誘電体材料およびそれを用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、双方向情報端末として大画面、壁掛けテレビへの期待が高まっている。そのための表示デバイスとして、液晶表示パネル、フィールドエミッションディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の数多くのものがあり、そのうちの一部は市販され、一部は開発中である。これらの表示デバイス中でもプラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)は、自発光型で美しい画像表示ができ、大画面化が容易である等の理由から、PDPを用いたディスプレイは、視認性に優れた薄型表示デバイスとして注目されており、高精細化および大画面化が進められている。
【0003】
このPDPには、大別して、駆動的にはAC型とDC型があり、放電形式では面放電型と対向放電型の2種類があるが、高精細化、大画面化および製造の簡便性から、現状では、AC型で面放電型のPDPが主流を占めるようになってきている。
【0004】
図5にPDPのパネル構造の一例を示しており、この図5に示すようにPDPは、前面パネル1と背面パネル2とから構成されている。
【0005】
前面パネル1は、フロート法による硼珪素ナトリウム系ガラス等からなるガラス基板などの透明な前面側の基板3上に、ストライプ状の表示電極4を複数対配列して形成し、そしてその表示電極4群を覆うように誘電体層5を形成し、その誘電体層5上にMgOからなる保護膜6を形成することにより構成されている。なお、表示電極4は、透明電極4aおよびこの透明電極4aに電気的に接続されたCr/Cu/CrまたはAg等からなるバス電極4bとから構成されている。また、図示していないが、前記表示電極4間には、遮光膜としてのブラックストライプが表示電極4と平行に複数列形成されている。
【0006】
また、背面パネル2は、前記前面側の基板3に対向配置される背面側の基板7上に、表示電極4と直交する方向にCr/Cu/CrまたはAg等からなるアドレス電極8を形成するとともに、そのアドレス電極8を覆うように誘電体層9を形成し、そしてアドレス電極8間の誘電体層9上にアドレス電極8と平行にストライプ状の複数の隔壁10を形成するとともに、この隔壁10間の側面および誘電体層9の表面に蛍光体層11を形成することにより構成されている。なお、カラー表示のために前記蛍光体層11は、通常、赤、緑、青の3色が順に配置されている。
【0007】
そして、これらの前面パネル1と背面パネル2とは、表示電極4とアドレス電極8とが直交するように、微小な放電空間を挟んで基板3、7を対向配置するとともに、周囲を封着部材により封止し、そして前記放電空間にネオンおよびキセノンなどを混合してなる放電ガスを66500Pa(500Torr)程度の圧力で封入することによりパネルが構成されている。
【0008】
このパネルの放電空間は、隔壁10によって複数の区画に仕切られており、そしてこの隔壁10間に発光画素領域となる複数の放電セルが形成されるように表示電極4が設けられるとともに、表示電極4とアドレス電極8とが直交して配置されている。そして、このPDPでは、表示電極4、アドレス電極8に印加される周期的な電圧によって放電を発生させ、この放電による紫外線を蛍光体層に照射して可視光に変換させることにより、画像表示が行われる。
【0009】
このようなPDPにおいては、アドレス電極8、および表示電極4のバス電極4bには、AgやCr−Cu−Cr等が用いられ、このうちAgによる電極の製造方法としては、スクリーン印刷法のようにAg、樹脂、溶剤などを含有するAgペーストを用いる方法や、ラミネート法のように、Ag、樹脂などを含有するフィルムを用いる方法などがある。いずれの場合においても、樹脂を除去する目的、あるいはAg同士を融着して導電率を上昇させる目的で、500℃以上での加熱、焼成処理を行う必要がある。
【0010】
さらに、これらの電極を被覆する誘電体層は、プラズマを発生させるために必須の材料であり、放電効率をより高く、かつ背面板の蛍光体からの発光光をよく通すといった機能が必要とされる重要な構成要素である。
【0011】
また、誘電体層は、従来低融点鉛ガラスなどの粉末と結着樹脂(膜形成材料層を構成する有機物質)などを含むガラスペースト組成物をスクリーン印刷、ダイコート塗布等の方法によって塗工し、500℃以上で加熱、焼成することで形成されていた。
【0012】
ガラス基板上に形成する膜形成材料層の厚さは、焼成工程における有機物質の除去に伴う膜厚の目減量を考慮して、形成すべき誘電体層の膜厚の1.3〜2倍程度とすることが必要であり、例えば誘電体層の膜厚を5〜40μmとするためには、7〜80μm程度の厚さの膜形成材料層を形成する必要がある。
【0013】
しかしながら、上記ガラスペースト組成物をスクリーン印刷法によって塗布する場合において、1回の塗布処理によって形成される塗膜の厚さは5〜25μm程度である。スクリーン印刷法で形成する場合には、複数回に亘り、多重印刷が必要となり、工程の煩雑さによる作業効率の低下、膜厚分布の低下、平滑性の低下、欠陥の発生確率の増大等がさけられない。また、ダイコート塗布法の場合においても、コートの開始・終了部分の膜厚分布が悪く、誘電特性のばらつきの原因となり、駆動電圧のマージンを低下させる原因となっている。
【0014】
これらの課題に対して、例えば特開平10−291834号公報に開示されているように、ガラスペースト組成物を支持フィルム上に形成したシート状誘電体材料を用いて、ラミネート法などの方法によって貼り付けた後、500℃以上で加熱、焼成することで誘電体層を形成する方法が提案されている。
【0015】
図6を用いてこのシート状誘電体材料の説明をすると、図6(a)はロール状に巻回されたシート状誘電体材料12を示す概略構成図であり、図6(b)は図6(a)のX部のシート状誘電体材料12の層構成を示す断面図である。この図6に示すシート状誘電体材料12は、支持フィルム13と、この支持フィルム13の表面に剥離可能に形成された膜形成材料層14と、この膜形成材料層14の表面に剥離容易に形成されたカバーフィルム15とにより構成されている。
【0016】
この予め膜形成材料が作製されたシート状誘電体材料12を用いることにより、膜厚の大きな誘電体層、例えば5〜40μmの誘電体層であっても効率的に形成することができ、誘電体層の形成工程における工程改善が図れ、PDPの製造効率を向上させることが可能となる。しかも、膜厚の均一性および表面の平滑性に優れ、ピンホールやクラックなどの欠陥のない誘電体層を形成することができる。
【0017】
一方、PDPの高精細化、高輝度化の要求に伴って、例えば特開平8−250029号公報に開示されているように、放電を制御し遮蔽される部分での放電を極力抑制するために、前記誘電体層を立体的に構成するという新しい構造を持つ誘電体層が提案されている。
【0018】
立体構造の誘電体層を作製するためには、シート状誘電体材料をパターニングする必要があるが、その技術としては、例えば特開平11−231525号公報に開示されている。その内容を図7(a)〜(i)に示している。
【0019】
図7(a)〜(c)に示すように、ガラス基板16上に、支持フィルム13に無機粉体分散ペーストによる膜形成材料層14が形成されたシート状誘電体材料12を転写し、その上に図7(d)に示すようにレジスト層17を形成し、その後図7(e)、(f)に示すように、露光用マスク18を合わせてレジスト層17を所定のパターンに露光、現像することにより所定のパターンのレジスト層17を形成し、その所定のパターンのレジスト層17をマスクとして、図7(g)、(h)に示すように無機粉体分散ペーストの膜形成材料層14を所定のパターン形状にエッチングした後、レジスト層17を除去し、その後図7(i)に示すように所定の温度で焼成することで無機パターン19を作製する方法である。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のシート状誘電体材料とパターニングプロセスを用いて、PDPの誘電体層の立体構造を作製する方法においては、以下に示す問題点がある。
【0021】
すなわち、PDPの誘電体層の立体構造では、例えば図8(a)、(b)に示すように、前面パネル1の誘電体層5に発光画素領域単位で凹部20を設ける場合、誘電体層5に所定のパターンで厚みの厚い部分5aと薄い部分5bをばらつきなく作製することが要求される。なお、図8(b)は図8(a)のA−A線で切断した際の断面を示す図である。
【0022】
上記従来のパターニング方法では、例えば図7(g)の途中でエッチングを止めて誘電体層5に薄い部分5bを残す必要があるが、このように途中でエッチングを止めると、PDPのように大面積のパネルの場合、パネル全体のエッチングばらつきがそのまま形状および深さの寸法ばらつきとなってしまい、全体に亘って精度よく誘電体層の立体構造を得ることができない。
【0023】
そこで、薄い部分での厚みに相当するシート状誘電体材料により先に第一の誘電体層を焼成し形成した後に、厚い部分での厚みに合わせるシート状誘電体材料を用いて上述した従来のパターニング方法により第二の誘電体層を形成することで、立体構造を得ることが考えられるが、この場合はシート状誘電体材料を2回精度良く基板に転写する必要があり、工程が煩雑となる。また、PDPにおける放電開始電圧の観点からすると、下層の第一の誘電体層においても膜厚に分布を持たせ、最も膜厚の低下させた部分を種火放電として利用すれば、さらに放電電圧を下げることができるが、上述のような下層を焼成により形成した後、その上部に誘電体を塗布し、パターニングする方法では、下層の形状を変形させることができなかった。
【0024】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、立体構造を持つ誘電体層を安定に精度良く、しかも作業効率よく形成することができるようにすることを目的とするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本発明は、ガラス粉末、アルカリ現像型結着樹脂、反応性モノマーおよび光重合開始剤を含有する感光性誘電体形成材料層と、この感光性誘電体形成材料層上に形成されかつガラス粉末、結着樹脂および標準電極電位が0.8V以上の単体または化合物である酸化剤を含有する誘電体形成材料層とを備えたシート状誘電体材料を用い、基板上に誘電体形成材料層が基板側となるように重ね合わせて誘電体形成材料層および感光性誘電体形成材料層を基板に転写した後、感光性誘電体形成材料層を所定のパターンを有するマスクを用いて露光し、現像することにより、所定のパターン形状の誘電体層を形成するものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明の請求項1に記載の発明は、支持フィルム上に形成されかつガラス粉末、アルカリ現像型結着樹脂、反応性モノマーおよび光重合開始剤を含有する感光性誘電体形成材料層と、この感光性誘電体形成材料層上に形成されかつガラス粉末、結着樹脂および標準電極電位が0.8V以上の単体または化合物である酸化剤を含有する誘電体形成材料層とを備え、感光性誘電体形成材料層に含有される結着樹脂の分解温度または燃焼温度または揮発温度が、誘電体形成材料層の結着樹脂の分解温度または燃焼温度または揮発温度以下であることを特徴とするシート状誘電体材料である。
【0027】
また、請求項2に記載の発明では、酸化剤が、Ce、Mn、As、Sb、Au、Cuの単体または化合物の少なくとも一つであることを特徴としている。
【0029】
さらに、本発明の請求項3に記載の発明では、ガラス粉末、アルカリ現像型結着樹脂、反応性モノマーおよび光重合開始剤を含有する感光性誘電体形成材料層と、この感光性誘電体形成材料層上に形成されかつガラス粉末、結着樹脂および標準電極電位が0.8V以上の単体または化合物である酸化剤を含有する誘電体形成材料層とを備えたシート状誘電体材料を用い、前記シート状誘電体材料を基板上に誘電体形成材料層が基板側となるように重ね合わせて誘電体形成材料層および感光性誘電体形成材料層を基板に転写する転写工程と、転写した感光性誘電体形成材料層を所定のパターンを有するマスクを用いて露光し、現像するパターン形成工程と、その後感光性誘電体形成材料層および誘電体形成材料層を焼成して誘電体層を形成する焼成工程とを有し、かつ感光性誘電体形成材料層に含有される結着樹脂の分解温度または燃焼温度または揮発温度が、誘電体形成材料層の結着樹脂の分解温度または燃焼温度または揮発温度以下であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法である。
【0030】
そして、請求項4に記載の発明では、パターン形成工程で感光性誘電体形成材料層を露光、現像することにより、プラズマディスプレイパネルの発光画素領域毎に誘電体層に少なくとも一つの凹部を形成し、その凹部の底面の誘電体層の膜厚を小さくしたことを特徴としている。
【0031】
また、請求項5に記載の発明では、プラズマディスプレイパネルの製造方法において、酸化剤が、Ce、Mn、As、Sb、Au、Cuの単体または化合物の少なくとも一つであることを特徴としている。
【0033】
以下、本発明の一実施の形態について、図1、図2の図面を参照しながら説明する。
【0034】
まず、図1を用いて本発明の一実施の形態によるシート状誘電体材料の説明をすると、図1(a)はロール状に巻回されたシート状誘電体材料21を示す概略構成図であり、図1(b)は図1(a)のX部のシート状誘電体材料21の層構成を示す断面図である。図1に示すように、シート状誘電体材料21は、支持フィルム22と、この支持フィルム22上に形成した感光性誘電体形成材料層23と、この感光性誘電体形成材料層23上に形成した誘電体形成材料層24と、この誘電体形成材料層24上に配置したカバーフィルム25とが積層された構成である。
【0035】
ここで、誘電体形成材料層24および感光性誘電体形成材料層23は、ガラス粉末および結着樹脂が必須成分として含有され、かつ感光性誘電体形成材料層23は感光性樹脂が含有され、誘電体形成材料層24は酸化剤が添加されている。
【0036】
シート状誘電体材料を構成する支持フィルム22は、耐熱性および耐溶剤性を有するとともに可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルム22が可撓性を有することにより、ロールコータなどによって膜厚の均一な膜形成材料層を形成することができるとともに、当該膜形成材料層をロール状に巻回した状態で保存することができる。支持フィルム22を形成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。
【0037】
シート状誘電体材料を構成する感光性誘電体形成材料層23および誘電体形成材料層24は、焼成されることによってガラス焼結体(誘電体層)となるものであり、誘電体形成材料層24に含有されるガラス粉末としては、例えばZnO−B2O3−SiO2系の混合物、PbO−B2O3−SiO2系の混合物、PbO−B2O3−SiO2−Al2O3系の混合物、PbO−ZnO−B2O3−SiO2系の混合物などを挙げることができる。
【0038】
感光性誘電体形成材料層23に含有される感光性樹脂としては、少なくともアルカリ現像型結着樹脂、反応性モノマーおよび光重合開始剤が含まれ、また添加剤として、増感剤、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、分散剤、可塑剤、安定剤、消泡剤等を必要に応じて含有することができる。
【0039】
本発明の結着樹脂としてはアクリル系とセルロース系を代表的に挙げることができる。この場合に感光性誘電体形成材料層と誘電体形成材料層に用いる樹脂としては、例えばブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートおよび2−エトキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができるが、これに限るものではない。
【0040】
また、上記誘電体形成材料層24に含有される結着樹脂としては、感光性誘電体形成材料層23の結着樹脂が誘電体形成材料層24の結着樹脂の分解または燃焼または揮発温度よりも低いことを特徴とする。最も好ましくは、アクリル系樹脂を感光性誘電体形成材料に使用し、セルロース系樹脂を誘電体形成材料層に用いることが望ましい。
【0041】
これにより、異なる機能をもつ2層を同時に形成することができ、工程数を大幅に削減することができる。また、2層を2種類の別々のシートを用いて作製する場合にはそれぞれに2枚の支持フィルムを必要とするが、本発明によれば廃棄物として非常に膨大になる支持フィルムを半減することができ、環境に対する負荷を低下させることができる。
【0042】
また、PDPを作製する上で、前記シート状誘電体材料をガラス基板上に転写し、誘電体形成材料層24の乾燥または焼成時にガラス基板に対して上層に形成される層から段階的に結着樹脂を揮発または燃焼または分解させることができ、下層の結着樹脂は上層の結着樹脂が全て除去された後、ガス化するため、上層を容易に通過することができる。このため、2層を同時に焼成することができ、工程数を削減することができる。また、焼成回数の低下により、消費エネルギーを低減でき、環境に対する負荷を低下させることができる。これらについては、後述するPDPの製造方法で詳細を述べる。
【0043】
さらに、誘電体形成材料層24および感光性誘電体形成材料層23は、ガラス粉末および結着樹脂が必須成分として含有され、かつ感光性誘電体形成材料層23は感光性樹脂が含有され、かつ溶剤が前記2層共に含有されていても良い。
【0044】
この場合に感光性誘電体形成材料層23と誘電体形成材料層24に用いる溶剤としては、当該誘電体形成材料層24および感光性誘電体形成材料層23に適度な粘性(例えば500〜10,000cp)を付与することができ、乾燥されることによって容易に蒸発除去できるものであることが好ましく、例えばメチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テレビン油、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、ベンジルアルコール、乳酸メチル、乳酸エチル、ブチルセロソルブアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、ブチルセロソルブなどを挙げることができる。
【0045】
また、上記溶剤としては、誘電体形成材料層24と感光性誘電体形成材料層3の分解または燃焼または揮発温度が異なることを特徴とする。好ましくは、支持フィルム22上に形成される感光性誘電体形成材料層23の溶剤が誘電体形成材料層24の溶剤よりも分解または燃焼または揮発温度が低いことを特徴とする。
【0046】
ここで、例えば上記溶剤の組み合わせとして、感光性誘電体形成材料層23に少なくとも誘電体形成材料層24よりも分解または燃焼または揮発温度が低いものを選出する。好ましくは、前記感光性誘電体形成材料層23にテレビン油(沸点155〜165℃)、前記誘電体形成材料層24にテルピネオール(沸点約180℃)を選出する。これにより、前記結着樹脂で述べた効果と同様の効果を発現することができる。
【0047】
ここで用いられるシート状誘電体材料21の製造方法としては、支持フィルム22上に前記感光性誘電体形成材料層23を形成し、さらにその上に誘電体形成材料層24を形成し、その上にカバーフィルム25を圧着により設けることにより製造することができる。誘電体形成材料層24の形成方法としては、少なくともガラス粉末、結着樹脂を含有し、好ましくは溶剤を含有するガラスペースト組成物からなる誘電体形成材料層24を塗布した後、その塗膜を乾燥して前記溶剤の一部または全部を除去する方法を挙げることができる。ガラスペースト組成物からなる誘電体形成材料層24を塗布する方法としては、ローラーコーターによる塗布方法、ドクターブレードなどのブレードコーターによる塗布方法、カーテンコーターによる塗布方法などを挙げることができる。
【0048】
また、本発明においては、感光性誘電体形成材料層23および誘電体形成材料層24からなるシート状誘電体材料の誘電体形成材料層24にのみ酸化剤を含有させることを特徴としており、表示電極に用いられる銀の還元防止を最も効果的に実現することができる。しかも、この酸化剤として、標準電極電位が0.8V以上の単体または化合物を用いることにより、銀の標準電極電位が約0.8Vであるため、それよりも大きな値を持つ単体または化合物の酸化剤により、Ag+が還元されてAgコロイドになり、ガラス基板および誘電体層が着色するのを防止することができる。これらの単体または化合物としては、Ce、Mn、As、Sb、Au、Cuが効果的であり、これらの少なくとも一つを用いればよい。
【0049】
ところで、銀の還元を防止する材料の含有割合が過大である場合には、その材料そのものの色によりパネル材料が着色される問題が生じる。例えば、CeO2、Mn、CuOを用いた場合はそれぞれ黄、紫、青に着色するため、含有量を制限する必要がある。また、同様の理由により、ガラスフリットに銀の還元防止材料を添加すると、ガラスフリット自体の物性、例えば軟化点、転移点などが変化したり、着色したりする問題が生じるため、含有量の制限が必要である。
【0050】
一方、ペースト組成物を扱う場合は、その流動性から界面に材料を添加しても拡散により容易に全体に広がる。特に、ペースト組成物の乾燥工程では、ベナードセルと呼ばれる対流が発生することが知られており、そのため膜全体に広がりやすい。また、銀の拡散を誘電体焼成後に膜断面のEDX(エネルギー・ディスパーシブ・Xレイ・スペクトロメーター:Energy DispersiveX−ray Spectrometer)で調査すると、銀は電極を中心に電極の周りに存在し、誘電体膜全体に広がらないことが明らかとなっている。
【0051】
すなわち、誘電体または電極材料の膜全体に銀の還元防止剤を含有させても効率がよくなく、また着色は誘電体層にも発生するが、その大部分はガラス基板で発生することから、電極とガラス基板、誘電体層とガラス基板の界面が銀の還元防止に最も重要である。
【0052】
本発明においては、感光性誘電体形成材料層23および誘電体形成材料層24からなるシート状誘電体材料の誘電体形成材料層24にのみ酸化剤を含有させており、誘電体層と電極およびガラス基板との界面の最も還元防止に重要な部分にのみ選択的に還元剤を含有させることができ、ガラスまたはペースト組成物の特性を変化させることなく効果を発揮させることができる。
【0053】
次に、本発明によるPDPの製造方法において、前面パネルの製造工程を図2を用いて説明する。
【0054】
図2(a)に示す第1の工程は、前面パネルの前面側基板としてのガラス基板31上に、ITOやSnO2等からなる透明電極材料膜32をスパッタ法により一様に成膜する工程である。このとき透明電極材料膜32の膜厚は約100nmである。
【0055】
図2(b)に示す第2の工程は、フォトリソグラフィー法を用いて透明電極材料膜32を所望の形状にパターニングし透明電極33を形成する工程である。ノボラック樹脂を主成分とするポジ型レジストを1.5〜2μmの膜厚で塗布し、所望のパターンの露光乾板を介して紫外線を露光し、レジストを硬化させる。このときの紫外線の光源は超高圧水銀ランプであり、光量は300mJ/cm2である。次にアルカリ水溶液で現像を行い、レジストパターンを形成する。その後、塩酸を主成分とする溶液に基板を浸漬させてエッチングを行い、不要部分の除去を行い、最後にレジストを剥離して透明電極33を形成する。
【0056】
図2(c)に示す第3の工程は、黒色電極材料膜34を塗工する工程である。黒色電極材料膜34は、RuO2等からなる黒色顔料、ガラスフリット(PbO−B2O3−SiO2系やBi2O3−B2O3−SiO2系等)、重合開始剤、光硬化性モノマー、有機溶剤を成分として含有するネガ型感光性ペーストをスクリーン印刷法を用いてガラス基板31に一様に塗布することで形成される。その後赤外線乾燥炉を用いた90℃、10分間の乾燥工程によりペーストに含まれる溶剤は塗膜から除去される。
【0057】
図2(d)に示す第4の工程は、金属電極材料膜35を黒色電極材料膜34上に形成する工程である。この工程は用いられる材料がAg等の導電性材料、ガラスフリット(PbO−B2O3−SiO2系やBi2O3−B2O3−SiO2系等)、重合開始剤、光硬化性モノマー、有機溶剤を成分として含有するネガ型感光性ペーストであることを除いて、第3の工程と同様である。
【0058】
図2(e)に示す第5の工程は、バス電極36を形成する工程である。金属電極材料膜35と黒色電極材料膜34とからなる電極材料膜に、所望のパターンの露光乾板を介して紫外線を照射し露光部を硬化させる。このときの紫外線の光源は超高圧水銀ランプであり、光量は300mJ/cm2である。その後、アルカリ性現像液(0.3wt%の炭酸ナトリウム水溶液)を用いて現像してパターンを形成し、その後空気中でガラス材料の軟化点以上の温度で焼成を行い、電極を基板に固着させる。
【0059】
このように透明電極33上にバス電極36を形成することにより、前面パネルの表示電極を形成することができる。
【0060】
図2(f)に示す第6の工程は、上述したシート状誘電体材料21を用いて酸化剤を含有する誘電体形成材料層37と感光性誘電体形成材料層38との2層からなる誘電体材料層を形成する工程である。誘電体材料層はシート状誘電体材料21のカバーフィルム25を剥離した後、誘電体材料層の表面がガラス基板31に接するようにシート状誘電体材料21を重ね合わせながら、支持フィルム22側から加熱ローラーで圧着してガラス基板31に固着する。その後、ガラス基板31上に固着された誘電体材料層から支持フィルム22を剥離除去する。このとき、圧着に使用する手段としては、加熱ローラー以外に加熱しない単なるローラーでもよい。
【0061】
図2(g)に示す第7の工程は、感光性誘電体形成材料層38を露光する工程である。所望のパターンの開口部を有する露光マスク39を介して誘電体材料層の感光性誘電体形成材料層38に紫外線を照射して露光部を硬化する。このときの紫外線の光源は超高圧水銀ランプであり、光量は600mJ/cm2である。
【0062】
図2(h)に示す第8の工程は、発光画素領域に凹部を形成することにより厚みの厚い部分と薄い部分を有する立体構造の誘電体層を形成する工程である。アルカリ性現像液(0.3wt%の炭酸ナトリウム水溶液)を用いて誘電体材料層の感光性誘電体形成材料層38を現像し、感光性誘電体形成材料層38の非露光部を除去する。
【0063】
このとき、誘電体形成材料層37を構成する結着樹脂は現像液に対して溶解性を有さないため除去されないか、あるいはエッチング速度が感光性誘電体形成材料層38のエッチング速度よりも小さいため、第一層の誘電体形成材料層37との界面近傍のわずかな領域のみが除去される。そのため、所望の立体構造を有する誘電体材料層が形成される。なお、このときの非露光部と露光部の誘電体材料層の膜厚はそれぞれ30μmと20μmであることが望ましい。
【0064】
その後、空気中でガラス材料の軟化点以上の温度で焼成を行ってガラス成分を固着させることにより、立体構造を有する誘電体層が形成される。
【0065】
ここで、本発明においては、上述したように感光性誘電体形成材料層38の溶剤が誘電体形成材料層37の溶剤よりも分解または燃焼または揮発温度が低いことを特徴としている。そのため、焼成時にはガラス基板31をベースとして上層側の前記感光性誘電体形成材料層38の溶剤が先に分解または燃焼または揮発し、その後下層の誘電体形成材料層37の溶剤が遅れて分解または燃焼または揮発するため、容易に上層をすり抜けることができ、2層の同時焼成が可能となる。
【0066】
同様に、感光性誘電体形成材料層38の結着樹脂が誘電体形成材料層37の結着樹脂よりも分解または燃焼または揮発温度が低いことを特徴としているため、焼成時には上層側の前記感光性誘電体形成材料層38の結着樹脂が先に分解または燃焼または揮発し、その後下層の誘電体形成材料層37の結着樹脂が遅れて分解または燃焼または揮発するため、容易に上層をすり抜けることができ、2層の同時焼成が可能となる。よって、従来は2層を別々に焼成していたものが2層を同時に焼成することができ、工程数の削減による低コスト化を実現することができる。また、焼成回数の低減により、使用電力を削減できるため、環境に対してもやさしい工程となる。
【0067】
さらに、本発明の重要な機能として、前記2層を同時に焼成することによって、自発的にパターニングで取り除かれた凹部の底面となる下層が上層誘電体の収縮時の応力により引かれることで、下層の底面の膜厚をなだらかに変化させることができ、誘電体膜厚が小さくなるように湾曲させることができ、下層を効果的に加工することができる。
【0068】
図2(i)に示す第9の工程は、保護膜40の成膜工程である。保護膜40はMgOからなり電子ビーム蒸着法により誘電体層に一様に成膜される。このときの保護膜40の膜厚は約600nmである。
【0069】
以上の工程で、所望の立体構造の誘電体を有するPDPの前面パネルが得られる。
【0070】
次に、本発明によるPDPの製造方法において、背面パネルの製造方法について説明すると、まずフロート法により製造された背面パネルの背面側基板としてのガラス基板に対し、前面パネルと同様にしてアドレス電極を形成する。その上に前面パネルと同様にして誘電体層を形成し、その上に隔壁を形成する。
【0071】
この誘電体層および隔壁の形成に利用する材料としては、ガラス粉末、結着樹脂および溶剤を含有するペースト状のガラス粉末含有組成物(ガラスペースト組成物)を調製し、このガラスペースト組成物を支持フィルム上に塗布した後、塗膜を乾燥して膜形成材料層を形成したもので、支持フィルム上に形成された膜形成材料層を、アドレス電極が形成されたガラス基板の表面に上記前面パネルと同様の手法で転写により固着し、この転写で固着された膜形成材料層を焼成することにより、前記ガラス基板の表面に誘電体層を形成することができる。
【0072】
その後、隔壁を形成する方法としては、フォトリソグラフィー法やサンドブラスト法を用いて形成することができる。
【0073】
次に、R、G、Bに対応する蛍光体を塗布し焼成を行って隔壁間に蛍光体層を形成することにより、背面パネルを得ることができる。
【0074】
そして、このようにして作製した前面パネルと背面パネルとを、それぞれの表示電極とアドレス電極がほぼ直角に交差するように位置合わせをして対向配置し、その周辺部をシール材によって封着して貼り合わせ、その後隔壁で仕切られた空間のガスの排気を行い、次にNe、Xe等の放電ガスを封入してガス空間を封止することにより、図5に示すような構成のPDPを完成させることができる。
【0075】
ところで、以上のようにして作製される本発明によるPDPにおいては、誘電体層は、ガラス基板などの前面側の基板上に形成される下層誘電体と、発光画素領域毎に少なくとも一つの凹部が形成されるように所定の形状にパターニングされた上層誘電体とからなる2層構造であることを特徴とする。すなわち、前面側基板に形成される各行の表示電極は、マトリクス表示の各ラインにおいて、放電ギャップを挟んで隣接するように配列されており、隔壁と一対の表示電極で囲まれた領域が発光画素領域となり、この各発光画素領域の誘電体層に少なくとも一つの凹部が形成された形状となる。
【0076】
PDPの高効率化を達成するためには、各発光画素領域において放電を制御することが不可欠である。特に、図5において、表示電極4に垂直な放電の広がりにおいては、バス電極4bが蛍光体からの発光光を遮るため、遮蔽される部分まで放電が広がることを抑制する必要がある。また、この方向には隔壁10が存在しないため、そこから漏れる紫外線や蛍光体からの発光は全てブラックストライプに遮蔽されることとなる。さらに、表示電極4と平行な方向の放電の広がりは、隔壁10付近での電子温度の低下により効率の低下を招く。
【0077】
本発明の製造方法によれば、図8(a)に示されるように前面側基板3の誘電体層5にバス電極4bおよび隔壁10よりも内側になるように、例えば深さ20μmの凹部20を形成することで、膜厚の薄くなった凹部20の底面は誘電体膜厚の低下により容量が大きくなるため、その部分に形成される壁電荷は他の部分よりも多くなり、さらに膜厚の低下により放電開始電圧が低下するため、放電は凹部20の底面を主として発生することとなる。
【0078】
このような構成により、表示電極4に水平および垂直に広がる放電を抑えることができ、効率の向上が図れる。なお、凹部20の形態は多角形、円柱、円錐、直方体、台形なども考えられるが、これに限るものではない。
【0079】
また、図8(b)に示されるように、凹部20の側面はなだらかに膜厚が変化してもよく、この場合は底面の放電で発生したVUVの広がりを有効に利用できる。さらに、凹部20の底面を誘電体膜厚が小さくなるように湾曲させることで、最も膜厚が低下した個所の放電電圧が低下するため、種火としての効果を得ることができる。
【0080】
その他の高効率化として、蛍光体からの発光の取り出し効率を上げる、すなわち開口率を上げる方法がある。この場合は、バス電極4bを可能な限り発光画素領域から離す必要があるが、平行に走る隣のセルの表示電極4との距離が狭くなるため、電荷の移動が容易となり、発光を望まないセルが発光する、いわゆるクロストークが発生し、表示品質が著しく低下する問題がある。
【0081】
本発明の製造方法において、凹部20の形状を調整することで壁電荷の発生する位置を制御することができ、クロストークの発生も防止することができる。
【0082】
さらに、PDPの効率向上のその他の方法として、Xe分圧を増加させる報告が多数なされているが、この場合はXe分圧の上昇に伴い放電開始電圧も上昇するため、トレードオフの関係にある。そのため、Xe分圧で上昇する放電開始電圧をその他の方法で低下させる必要がある。この方法の一つとして誘電体層の薄膜化が考えられるが、誘電体層を薄くすると、異物などによる誘電体層の欠陥に起因する絶縁破壊の生じる確率が上昇し歩留りが低下する問題が生じる。特に、抵抗を下げる目的で形成されるバス電極は膜厚が4から7μmと厚いため、誘電体層を薄くするとバス電極上の実効膜厚が低下し、絶縁破壊がバス電極近傍に集中する問題がある。
【0083】
本発明の製造方法によれば、絶縁破壊が最も発生しやすいバス電極上の誘電体層の膜厚を容易に厚く形成することが可能なため、バス電極付近の絶縁破壊を防止でき、また誘電体層の膜厚の薄い部分は約0.1μmの透明電極のみが存在するため、実効膜厚はほとんど変化しなく、これによって誘電体層の凹部を形成した構造とXe分圧の上昇を合わせて用いることで、PDPの高歩留りと高効率を両立することができる。
【0084】
また、誘電体層の透過率の向上や放電電流の制限の観点から、誘電体層に形成する凹部の底面は、膜厚がなだらかに変化するような形状のものが好ましいが、本発明の製造方法により2層のシート状誘電体材料を用いると、上層誘電体の収縮時の応力により、下層が上層に引かれることで、下層の底面の膜厚をなだらかに変化させることができ、これにより底面の膜厚がなだらかに変化するような形状の凹部を有する誘電体層を容易に作製することができる。
【0085】
次に、感光性誘電体形成材料層とこの感光性誘電体形成材料層上に形成されかつ酸化剤を含有する誘電体形成材料層とを備えたシート状誘電体材料を用い、基板上に所定のパターン形状の誘電体層を形成する本発明の効果について、図3、図4および表1を用いて説明する。
【0086】
まず、本発明の効果を確認するために、図2で示す方法で作製した下記の3種の試料を用意した。
(試料1)酸化剤を添加しない従来品
(試料2)酸化剤を上層誘電体層と下層誘電体層とのいずれにも添加した従来品
(試料3)酸化剤を下層誘電体層に添加した誘電体層に凹部を形成した本発明品
試料の特性は誘電体層の焼成後、分光色差計(日本電色製 品番NF−999)および分光光度計(日立製 品番U−3310)を用いてパネルの着色および添加剤による可視光の吸収量により評価した。なお、Agコロイドによるパネルの着色の評価における光源は、L*a*b*系(JIS Z 8729)のうち、b*を使用し、添加剤による光吸収量は、各試料の透過率スペクトルから前面側のガラス基板、誘電体層、銀電極、ブラックストライプの吸収をキャンセルすることで求めた。この結果を表1に示している。
【0087】
なお、評価に用いた試料の詳細な構造を図3に示しており、図3において、ガラス基板41には、約60mm角に分割したフロート法で作製した日本電気硝子製PP8を使用し、その上に黒色電極層42と銀電極層43とをこの順に積層した帯状の電極を形成した。黒色電極層42と銀電極層43の膜厚はそれぞれ約2μmと約5μmである。また、電極材料のパターニングには、開口幅および非開口部がいずれも100μmのストライプ状の露光マスクを用いた。
【0088】
試料2および試料3には、酸化剤としてCuOを添加したシート状誘電体材料を用い、また試料1には酸化剤が添加されていないシート状誘電体材料を用いて誘電体層44を形成した。なお、このシート状誘電体材料のガラス材料としては、PbO−B2O3−SiO2系ガラスを用いた。
【0089】
試料3については、電極のパターニングに用いたマスクを用いて誘電体層44のパターニングを行い、焼成後の非電極形成部45と電極形成部46の誘電体膜厚がそれぞれ30μmと10μmとなる立体構造とした。また試料1および試料2の誘電体膜厚はいずれも30μmとした。電極と誘電体層の焼成条件はいずれも600℃(15分)とした。
【0090】
【表1】
【0091】
このような試料において、表1に示すように、基板の着色は、従来品の試料1がb*=3.0と顕著な着色が確認されたが、本発明品である試料3はb*=1.2と着色強度は減少し、また還元剤による吸収は上層誘電体層と下層誘電体層のいずれにも還元剤を添加した試料2と比べて、本発明品の試料3の吸収強度はおよそ1/3となり、図4の特性図に示すように、添加剤による光吸収は減少し、前面パネルの基板の透過率は向上した。試料3の誘電体層は従来品よりも薄い部分があるため、誘電体層の光吸収量が減少し、光透過率は向上した。なお、添加剤を上下の誘電体層に添加した試料2の着色はb*=1.1と試料3と同等であった。
【0092】
以上の説明から明らかなように、表示電極に銀を用いる場合、表示電極あるいは誘電体の形成工程における焼成工程において、表示電極中の銀がイオン化してガラス基板中あるいは誘電体層中に拡散し、その銀イオンがフロート法にて形成されたガラス基板や誘電体層中に存在する還元性の物質によって還元されて銀のコロイド粒子を折出してしまう。そして、この銀コロイドは、400nm近傍光を吸収する特性を有するため、黄変というガラスの着色が発生し、パネルの画質を著しく劣化させてしまうが、本発明によれば、感光性誘電体形成材料層および誘電体形成材料層からなるシート状誘電体材料の誘電体形成材料層にのみ酸化剤を含有させるものであり、表示電極に用いられる銀の還元防止を最も効果的に実現することができる。
【0093】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、PDPにおいて、放電開始電圧の低下に効果のある立体構造を持つ誘電体層を安定に精度良く、しかも作業効率の高い状態で容易に形成することができるという効果が得られる。また、本発明によれば、表示電極に用いられる銀の還元防止を効果的に実現できるため、ガラス基板および誘電体層の黄変という着色を防止することができるとともに、前面パネルの透過率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)は本発明の一実施の形態によるシート状誘電体材料を示す概略構成図および断面図
【図2】(a)〜(i)は本発明の一実施の形態によるプラズマディスプレイパネルの製造方法を示す工程断面図
【図3】本発明による効果を説明するために行った実験に用いた試料の構造を示す断面図
【図4】本発明品と比較例とにおいて、前面パネルの透過率を比較して示す特性図
【図5】プラズマディスプレイパネルを示す斜視図
【図6】(a)、(b)は従来のシート状誘電体材料を示す概略構成図および断面図
【図7】(a)〜(i)は従来のプラズマディスプレイパネルの製造方法を示す工程断面図
【図8】(a)、(b)はプラズマディスプレイパネルの要部構造を示す斜視図および断面図
【符号の説明】
1 前面パネル
2 背面パネル
3、7 基板
4 表示電極
5、9 誘電体層
8 アドレス電極
21 シート状誘電体材料
22 支持フィルム
23、38 感光性誘電体形成材料層
24、37 誘電体形成材料層
25 カバーフィルム
31 ガラス基板
33 透明電極
36 バス電極
Claims (5)
- 支持フィルム上に形成されかつガラス粉末、アルカリ現像型結着樹脂、反応性モノマーおよび光重合開始剤を含有する感光性誘電体形成材料層と、この感光性誘電体形成材料層上に形成されかつガラス粉末、結着樹脂および標準電極電位が0.8V以上の単体または化合物である酸化剤を含有する誘電体形成材料層とを備え、感光性誘電体形成材料層に含有される結着樹脂の分解温度または燃焼温度または揮発温度が、誘電体形成材料層の結着樹脂の分解温度または燃焼温度または揮発温度以下であることを特徴とするシート状誘電体材料。
- 酸化剤が、Ce、Mn、As、Sb、Au、Cuの単体または化合物の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載のシート状誘電体材料。
- ガラス粉末、アルカリ現像型結着樹脂、反応性モノマーおよび光重合開始剤を含有する感光性誘電体形成材料層と、この感光性誘電体形成材料層上に形成されかつガラス粉末、結着樹脂および標準電極電位が0.8V以上の単体または化合物である酸化剤を含有する誘電体形成材料層とを備えたシート状誘電体材料を用い、前記シート状誘電体材料を基板上に誘電体形成材料層が基板側となるように重ね合わせて誘電体形成材料層および感光性誘電体形成材料層を基板に転写する転写工程と、転写した感光性誘電体形成材料層を所定のパターンを有するマスクを用いて露光し、現像するパターン形成工程と、その後感光性誘電体形成材料層および誘電体形成材料層を焼成して誘電体層を形成する焼成工程とを有し、かつ感光性誘電体形成材料層に含有される結着樹脂の分解温度または燃焼温度または揮発温度が、誘電体形成材料層の結着樹脂の分解温度または燃焼温度または揮発温度以下であることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
- パターン形成工程で感光性誘電体形成材料層を露光、現像することにより、プラズマディスプレイパネルの発光画素領域毎に誘電体層に少なくとも一つの凹部を形成し、その凹部の底面の誘電体層の膜厚を小さくしたことを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
- 酸化剤が、Ce、Mn、As、Sb、Au、Cuの単体または化合物の少なくとも一つであることを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
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