JP4193282B2 - 適応型制御装置及び適応型制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業用ロボットあるいは電気回路基板の部品実装機等において、高速な位置決めを必要とする駆動系、例えば駆動モータ等の制御対象の動作を制御する適応型制御装置及び適応型制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
産業用ロボットあるいは部品実装機等の駆動系の一部をなす電動機(駆動モータ)等の制御対象の動作を制御するにあたり、従来においては、比例動作、積分動作及び微分動作の制御を組み合わせて動作制御を行うPID制御装置が用いられており、この制御装置の一つとして、例えば特開平8−171402号公報に開示されたものが知られている。
【0003】
この公報に開示の制御装置は、所定のパラメータを有する関数で表される制御対象としての駆動モータを含む制御系のPID制御を行なうべく、フィードフォワード制御回路及びフィードバック制御回路並びに加算回路からなる制御演算部、制御演算部における制御関数の制御パラメータを算出する変数変換部、変数変換部に対して数値設定を行なう数値設定部、制御系において外乱が最小となる極の位置を算出して変数変換部に出力する最適極配置演算部、制御演算部から出力されたディジタル制御信号をアナログ制御信号に変換するD/A変換回路、D/A変換回路から出力されるディジタル制御信号に応じて駆動モータに供給する電力を調節するモータドライバ、駆動モータの回転角度を検出するエンコーダ、エンコーダにより検出された回転角度を一定周期でサンプリングするサンプラ回路等を備えている。
【0004】
この制御装置においては、数値設定部により極及び零点の指定値を入力し、この指定値に応じて変数変換部及び最適極配置演算部により最適な制御パラメータ、すなわち、比例ゲインKp 、積分ゲインKi 、微分ゲインKd 、フィードフォワードゲインα、速度フィードフォワードゲインβが算出される。そして、この制御パラメータは制御演算部に入力され、制御演算部は、目標位置データ、エンコーダ及びサンプラ回路を介して得られた回転角度データ、及び制御パラメータを代入した制御関数に基づいて得られた制御信号を出力し、D/A変換器及びモータドライバを介して駆動モータの動作を制御し、エンコーダにより駆動モータの回転角度を検出して、制御演算部にフィードバックするようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の制御装置の変数変換部では、伝達関数を表すZ変換の関数の式として、分母式が(z−a+bj)(z−a−bj)(z−c)(z−d)(z−e) 、又、分子式が(z−f+gj)(z−f−gj) を含むように、極の位置a±bj,c,d,e、零点の位置f±gjを直接用いて表されていた。すなわち、伝達関数の極の位置をa±bj,c,d,e、零点の位置をf±gjという形で指定するようになっていたため、これら極及び零点が実数かあるいは虚数かは明確に区別されることになる。したがって、例えば零点f±gjを実軸上の異なる2点に配置することはできず、これに対処するには別の変数変換式を採用する必要がある。
【0006】
また、指定した極の位置から自動的に配置が決まる2つ極d,eが存在するものの、この2つの極d,eも実数を想定しているので、これらの極が虚数となる場合には、計算機エラーが発生して制御パラメータを算出することができなくなる場合がある。
すなわち、自動的に決まる極d,eが虚数になるのは、配置する極a±bj,cをz=1の近くに配置するときすなわちサーボ帯域が低い場合に起こり易い。例えば、制御対象としてベルト等の剛性の低い機構部品を用い、この機構部品において共振が発生し易い状態で、サーボ帯域を著しく低くしてサーボ制御を行なうことは、極a±bj,cをz=1の近くに配置することに相当する。したがって、このような場合には、計算機エラーを生じて制御パラメータを算出することができない場合がある。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、極及び零点が実数であるか虚数であるかにかかわらず、制御パラメータを確実に算出することができ、これにより、極及び零点の配置の自由度を増加させてより幅広い制御性能を実現することができる適応型制御装置及び適応型制御方法を提供することにある。また、低剛性の制御対象に対応した低サーボ帯域制御を行なう際に、計算機エラー等を生じることなく、確実にサーボ制御を実現できる適応型制御装置及び適応型制御方法を提供することにある。
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、以下の如き構成をなす発明を見出すに至った。
すなわち、本発明の適応型制御装置は、制御対象を含む制御系の伝達関数の極及び零点の位置として与えられた値に応じて制御関数の制御パラメータを変数変換により算出する変数変換部と、前記変数変換部により算出された制御パラメータを用いた前記制御関数に基づいて演算処理を行い制御信号を出力し、PID動作によるフィードバック制御及びフィードフォワード制御を行う制御演算部とを備え、前記変数変換部は、因数を構成する多項式の次数が2次以下かつ係数が実数であって、少なくとも正規二次式を因数として因数分解される形式で表される高次式を、Z変換の関数として表される前記伝達関数の分子式及び分母式のそれぞれとして構成させ、上記伝達関数の極及び零点の位置として与えられた値のうち所定の一組の値を選択し、前記選択した値の和を前記正規二次式の一次係数と規定し、前記選択した値の積を前記正規二次式の定数項の係数と規定することにより、上記規定された前記一次係数及び前記定数項の係数を前記制御関数の制御パラメータを算出する際に利用する変換部を有する。
【0009】
上記構成において、制御対象を表す関数は、パラメータとして時定数及びゲインを有し、制御関数は、制御パラメータとして比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲイン、フィードフォワードゲイン及び速度フィードフォワードゲインを有し、伝達関数は、制御対象を表す関数のパラメータ及び制御関数の制御パラメータを含む構成を採用することができる。
また、上記構成において、伝達関数の極の内で制御系の外乱が最小となる最適な極の位置を算出して上記変数変換部に出力する最適極配置演算部を設けた構成を採用することができる。
【0010】
本発明の適応型制御方法は、制御対象を所定のパラメータを有する関数で表し、前記制御対象を含む制御系の伝達関数の極及び零点の位置として与えられた値に応じて制御関数の制御パラメータを変数変換により算出し、PID動作によるフィードバック制御及びフィードフォワード制御を行うために、算出された制御パラメータを用いた前記制御関数に基づいて演算処理を行い制御信号を出力し、前記変数変換の際に、因数を構成する多項式の次数が2次以下かつ係数が実数であって、少なくとも正規二次式を因数として因数分解される形式で表される高次式を、Z変換の関数として表される前記伝達関数の分子式及び分母式のそれぞれとして構成させ、上記伝達関数の極及び零点の位置として与えられた値のうち所定の一組の値を選択し、前記選択した値の和を前記正規二次式の一次係数と規定し、前記選択した値の積を前記正規二次式の定数項の係数と規定することにより、上記規定された前記一次係数及び前記定数項の係数を前記制御関数の制御パラメータを算出する際に利用する
【0011】
上記構成において、制御対象を、時定数及びゲインからなるパラメータを用いた関数で表し、制御関数を、比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲイン、フィードフォワードゲイン及び速度フィードフォワードゲインからなる制御パラメータを用いた関数で表し、伝達関数を、制御対象を表す関数のパラメータ及び制御関数を表す制御パラメータを用いた関数で表す構成を採用することができる。
また、上記構成において、伝達関数の極の内で制御系の外乱が最小となる最適な極の位置を算出し、算出した最適な極を上記変数変換部に出力する構成を採用することができる。
【0012】
本発明の適応制御装置及び方法においては、制御対象を所定のパラメータ(ゲインK及び時定数T0 )を有する関数で表し、制御対象を含む制御系の伝達関数を導出し、この伝達関数の極及び零点の位置を表す式を導出する。そして、変数変換部において、極の位置を表す式に制御系を安定にする極を指定する数値を代入することにより、一部の制御パラメータ(比例ゲインKp 、積分ゲインKi 、及び微分ゲインKd )を算出する。
続いて、変数変換部において、制御対象のゲインK、時定数T0 、制御関数の積分ゲインKi 及び微分ゲインKd を用いた零点の位置に関する変数変換式に、零点を指定する数値を代入することにより、フィードフォワードゲインα及び速度フィードフォワードゲインβを求める。
以上のように求められた比例ゲインKp 、積分ゲインKi 、微分ゲインKd 及びフィードフォワードゲインα、速度フィードフォワードゲインβを、制御演算部の制御関数に代入し、この制御関数に基づき演算を行なって制御信号を出力し、制御対象に対してPID動作の制御を行う。
【0013】
ここで、変数変換部においては、極及び零点の位置を直接入力するのではなく、z変換の関数の高次式例えば2次式の係数として入力するようになっているので、極及び零点が実数であっても虚数であっても、zの係数は必ず実数になり、いずれの場合においても同様に制御パラメータが算出される。
すなわち、極及び零点が実数か虚数かにかかわらず、一つの式で制御パラメータが算出される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る適応型制御装置の構成を示す構成図である。この適応型制御装置は、制御対象として所定の駆動部を駆動する駆動モータMを適用し、この駆動モータに対してPID動作のサーボ制御を行なうものである。
【0015】
この適応型制御装置は、図1に示すように、所定の演算処理を行なって制御信号を出力する制御演算部10、制御演算部10における制御関数の制御パラメータを算出する変数変換部20、変数変換部20に対して数値設定を行なう数値設定部30、制御系において外乱が最小となる最適な極の位置(最適極配置)を算出して変数変換部20に出力する最適極配置演算部40、制御演算部10から出力されたディジタル制御信号をアナログ制御信号に変換するD/A変換回路50、D/A変換回路50から出力されるディジタル制御信号に応じて駆動モータMに供給する電力を調節するモータドライバ60、駆動モータMの回転角度を検出するエンコーダ70、エンコーダ70により検出された回転角度を一定周期でサンプリングするサンプラ回路80等により構成されている。
【0016】
制御演算部10は、比例動作、微分動作、及び積分動作を組み合わせたPID動作による制御信号を出力するものであり、フィードフォワード制御回路(FF制御回路)11、フィードバック制御回路(FB制御回路)12、加算回路13、及び加算回路14により構成されている。FF制御回路11及びFB制御回路12は、それぞれ図1に示すような制御関数を備えており、それぞれの制御関数の制御パラメータのうち、Kp は比例ゲイン、Ki は積分ゲイン、Kd は微分ゲイン、αはフィードフォワードゲイン、βは速度フィードフォワードゲインをそれぞれ示すものであり、又、Tはサンプラ回路80のサンプル周期を示すものである。
【0017】
FF制御回路11は、外部から入力された目標位置データ及び図1中に示したフィードフォワード制御関数により、駆動モータMの回転動作をフィードフォワード制御するフィードフォワード制御データを生成し、このフィードフォワード制御データを加算回路14に対して出力する。
加算回路13は、サンプラ回路80から入力された駆動モータMの回転角度データと目標位置データとを加算し、その加算結果を加算結果データとしてFB制御回路12に対して出力する。
FB制御回路12は、加算回路13の加算結果データ及び図1に示したフィードバック制御関数により、駆動モータMの回転動作をフィードバック制御するフィードバック制御データを生成し、このフィードバック制御データを加算回路14に対して出力する。
加算回路14は、FF制御回路11により生成されたフィードフォワード制御データ及びFB制御回路12により生成されたフィードバック制御データを加算し、その加算結果を制御信号すなわち制御データとしてD/A変換回路50に対して出力する。
【0018】
D/A変換回路50は、制御演算部10から出力されたディジタル形式の制御信号をアナログ形式の制御信号に変換し、このアナログ制御信号をモータドライバ60に対して出力する。
モータドライバ60は、このアナログ制御信号に従って駆動モータMに供給する電力を調節し、駆動モータMの回転動作を制御する。
エンコーダ70は、駆動モータMの回転角度を検出する。
サンプラ回路80は、エンコーダ70により検出された駆動モータMの回転角度を一定周期Tでサンプリングし、回転角度データとして出力する。
【0019】
変数変換部20は、制御演算部10のそれぞれの制御関数に用いられる制御パラメータ、すなわち、Kp (比例ゲイン)、Ki (積分ゲイン)、Kd (微分ゲイン)、α(フィードフォワードゲイン)、β(速度フィードフォワードゲイン)を、数値設定部30により指定された数値あるいは後述する最適極配置演算部40により出力された信号に基づき算出し、その算出結果を制御演算部10に対して出力する。
【0020】
ここで、制御対象としての駆動モータM及び駆動部は、駆動モータMへの指令電流を入力、駆動部の位置を出力とする伝達関数で表すことができ、予め測定したこの駆動モータMの時定数をT0 、ゲインをKとすると、この伝達関数は、K/s(sT0 +1)で表される。
【0021】
また、この伝達関数を、制御演算部10の表現に合わせて、Z変換した関数(Z関数)すなわち離散時間表現で表すと、K( A+Bz)/(z−1)(z−P)、但し、P=exp(−T/T0 )、A=−T0(P−1)−TP、B=T0(P−1)+T、となる。
上記離散時間表現の伝達関数を用いて、制御対象を含めた制御系をブロック線図で表すと、図2に示すようになる。このブロック線図の閉ループ伝達関数G(z) は、次式1で表される。
【0022】
【数1】
Figure 0004193282
【0023】
式1に示したように、伝達関数G(z)の分母式(分母多項式)及び分子式(分子多項式)は、それぞれ5次式および3次式であることから、この伝達関数G(z)には、5個の極と3個の零点が存在することになる。これらの極座標及び零点座標は、z平面での座標とする。
また、伝達関数の極及び零点の配置を考慮して式1を変形すると、次式2で表すことができる。
【0024】
【数2】
Figure 0004193282
【0025】
この式2で表された伝達関数G(z) は、分母式(分母多項式)がZ関数の2次式(z2 −ae z+be ) 及び(z2 −de z+ee ) と1次式(z−ce ) の積で表されており、分子式(分子多項式)がZの2次式(z2 −fe z+ge ) と1次式(A+Bz)の積で表されている。
すなわち、伝達関数G(z) が、Zの2次式の係数ae 、be 、de 、ee あるいはfe 、ge 等の実数を用いた形で表されるため、極及び零点が実数か虚数かにかかわらず、この同一の式に基づいて、後述するように制御演算部10内の制御パラメータを算出することができる。
【0026】
ここで、変数変換部20の原理について説明すると、先ず、数値設定部30から入力される極及び零点の座標値a、b、c、f、g(z平面での座標)において、a,b及びf,gはそれぞれ実数かあるいは共役な複素数であり、cは実数である。
したがって、これらの値a、b、c、f、gは、次式3ないし式7として表すことができる。
【0027】
【数3】
e = a+b …(3)
【数4】
e = a・b …(4)
【数5】
e = c …(5)
【数6】
e = f+g …(6)
【数7】
e = f・g …(7)
【0028】
尚、これらの座標値a、b、c、f、gは、数値設定部30から入力されるものに限らず、後述の最適極配置演算部40で算出された最適な極配置に基づいて決定される場合もある。
また、上記式1と式2とにおいて、分母多項式を展開して係数比較を行なうと、以下の各式8ないし式12に示す連立方程式が得られる。
【0029】
【数8】
Figure 0004193282
【0030】
【数9】
Figure 0004193282
【0031】
【数10】
Figure 0004193282
【0032】
【数11】
Figure 0004193282
【0033】
【数12】
Figure 0004193282
【0034】
また、上記式1と式2とにおいて、分子多項式を展開して係数比較を行なうと、以下の式13及び式14に示す連立方程式が得られる。
【0035】
【数13】
Figure 0004193282
【0036】
【数14】
Figure 0004193282
【0037】
さらに、式8を変形することで、以下の式15が得られる。
【0038】
【数15】
Figure 0004193282
【0039】
また、式7を変形することで、以下の式16が得られる。
【0040】
【数16】
Figure 0004193282
【0041】
また、式15及び式16を用いて式11を変形することで、以下の式17が得られる。
【0042】
【数17】
Figure 0004193282
【0043】
また、式15、式16及び式17を用いて式10を変形することで、以下の式18が得られる。
【0044】
【数18】
Figure 0004193282
【0045】
また、式15、式16、式17及び式18を用いて式9を変形することで、以下の式19が得られる。
【数19】
Figure 0004193282
【0046】
上記式15乃ないし式19に示した変数変換式を用い、極の位置を指定することで、制御演算部10内の制御関数に関する制御パラメータ、すなわち、Kp (比例ゲイン)、Ki (積分ゲイン)、Kd (微分ゲイン)が算出される。
さらに、式13及び式14を変形することで、以下の式20及び式21が得られる。
【0047】
【数20】
Figure 0004193282
【0048】
【数21】
Figure 0004193282
【0049】
上記式20及び式21に示した変数変換式を用い、零点の位置を指定することで、制御演算部10内の制御関数に関する制御パラメータ、すなわち、α(フィードフォワードゲイン)及びβ(速度フィードフォワードゲイン)が算出される。
【0050】
以下、変数変換部20の動作を図3のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、ステップS1において、数値設定部30から3つの極座標a,b,cと2つの零点座標f,gを入力する。
【0051】
次に、ステップS2において、入力された値a,bを式3及び式4に代入してZの2次式の係数ae 、be を求め、入力された値cを式5に代入してce を求め、入力された値f,gを式6及び式7に代入してZの2次式の係数fe 、ge を求める。
【0052】
次に、ステップS3において、得られた係数値ae 、ce を式15に代入してZの2次式の係数de を求める。
次に、ステップS4において、得られた係数値ae 、be 、ce 、de を式19に代入してZの2次式の係数ee を求める。
【0053】
次に、ステップS5において、得られた係数値ae 、be 、ce 、de 、ee を式18に代入して、制御パラメータKp (比例ゲイン)を求める。
次に、ステップS6において、得られた係数値be 、ce 、ee 、及び制御パラメータKp (比例ゲイン)を式17に代入して、制御パラメータKd (微分ゲイン)を求める。
【0054】
次に、ステップS7において、得られた係数値ae 、be 、ce 、de 、ee 、及び制御パラメータKp (比例ゲイン)を式16に代入して、制御パラメータKi (積分ゲイン)を求める。
次に、ステップS8において、得られた係数値fe 、ge 、及び制御パラメータ制御パラメータKi (積分ゲイン)を式20に代入して、制御パラメータα(フィードフォワードゲイン)を求める。
【0055】
次に、ステップS9において、得られた係数値fe 、ge 、及び制御パラメータKi (積分ゲイン)、Kd (微分ゲイン)を式21に代入して、制御パラメータβ(速度フィードフォワードゲイン)を求める。
最後に、ステップS10において、上記ステップにより得られた制御パラメータ、すなわち、Kp (比例ゲイン)、Ki (積分ゲイン)、Kd (微分ゲイン)、α(フィードフォワードゲイン)、及びβ(速度フィードフォワードゲイン)を、制御演算部10に対して出力する。
【0056】
上記のように、極及び零点が実数か虚数かにかかわらず、極及び零点の位置を指定することができ、又、指定された極及び零点から自動的に定まる他の極についても、それが実数か虚数かにかかわらず制御パラメータを算出することができる。
【0057】
上記制御パラメータ算出の手順は、数値設定部30を介して設定された極座標a,b,c及び零点座標f,gを用いて行なう場合について説明したが、最適極配置演算部40を介して入力された極座標及び零点座標についても同様の処理が行なわれる。
すなわち、変数変換部30は、後述する最適極配置演算部40により算出される外乱が最小となる最適な極の位置を示す最良極位置データと、算出した零点の位置とにより、前述の算出処理に基づき制御演算部10における制御関数の制御パラメータKp ,Kd ,Ki ,α,βを算出し、制御演算部10に対して出力する。尚、この最適極配置演算部40としては、例えば特開平8−171402号公報等に開示された内容のものを適用することができる。
【0058】
上記実施形態においては、本発明の適応型制御装置及び方法を、制御対象としての駆動モータに適用した例を示したが、その他の2自由度系の制御対象に適用することも可能である。
また、図1に示したFF制御回路11及びFB制御回路12は例示であり、他の制御関数を用いてもよい。
さらに、変数変換部20によりあるいは最適極配置演算部40も加えて算出される前述の制御パラメータは例示であり、他の制御パラメータを算出するように構成してもよい。
【0059】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る適応型制御装置及び方法によれば、制御パラメータを算出する変数変換部での変数変換式において、極及び零点の座標を直接入力するのではなく、Zの高次式(2次式)の係数として入力することから、極及び零点が実数であっても虚数であっても、同一の式で制御パラメータを算出することができる。
これにより、極零配置の自由度が大きくなり、又、極配置により決定される2つの極が実数でない場合であっても、計算機エラーを招くことなく制御パラメータを確実に算出することができ、低剛性の制御対象に対応した低サーボ帯域制御を行なう場合でも、計算機エラーを生じずに確実にサーボ制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る適応型制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】制御対象を含めた制御系を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る適応型制御装置の一部をなす変数変換部における各制御パラメータの算出処理を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
10…制御演算部、11…FF制御回路、12…FB制御回路、13…加算回路、14…加算回路、20…変数変換部、30…数値設定部、40…最適極配置演算部、50…D/A変換回路、60…モータドライバ、70…エンコーダ、80…サンプラ回路

Claims (6)

  1. 制御対象を含む制御系の伝達関数の極及び零点の位置として与えられた値に応じて制御関数の制御パラメータを変数変換により算出する変数変換部と、
    前記変数変換部により算出された制御パラメータを用いた前記制御関数に基づいて演算処理を行い制御信号を出力し、PID動作によるフィードバック制御及びフィードフォワード制御を行う制御演算部と
    を備え、
    前記変数変換部は、因数を構成する多項式の次数が2次以下かつ係数が実数であって、少なくとも正規二次式を因数として因数分解される形式で表される高次式を、Z変換の関数として表される前記伝達関数の分子式及び分母式のそれぞれとして構成させ、
    上記伝達関数の極及び零点の位置として与えられた値のうち所定の一組の値を選択し、前記選択した値の和を前記正規二次式の一次係数と規定し、前記選択した値の積を前記正規二次式の定数項の係数と規定することにより、
    上記規定された前記一次係数及び前記定数項の係数を前記制御関数の制御パラメータを算出する際に利用する変換部を有する
    適応型制御装置。
  2. 前記制御対象を表す関数は、パラメータとして、時定数及びゲインを有し、
    前記制御関数は、制御パラメータとして、比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲイン、フィードフォワードゲイン及び速度フィードフォワードゲインを有し、
    前記伝達関数は、前記制御対象を表す関数のパラメータ及び前記制御関数の制御パラメータを含む、
    請求項1記載の適応型制御装置。
  3. 前記伝達関数の極の内で前記制御系の外乱が最小となる最適な極の位置を算出して前記変数変換部に出力する最適極配置演算部を有する、
    請求項1記載の適応型制御装置。
  4. 制御対象を所定のパラメータを有する関数で表し、前記制御対象を含む制御系の伝達関数の極及び零点の位置として与えられた値に応じて制御関数の制御パラメータを変数変換により算出し、
    PID動作によるフィードバック制御及びフィードフォワード制御を行うために、算出された制御パラメータを用いた前記制御関数に基づいて演算処理を行い制御信号を出力し、
    前記変数変換の際に、因数を構成する多項式の次数が2次以下かつ係数が実数であって、少なくとも正規二次式を因数として因数分解される形式で表される高次式を、Z変換の関数として表される前記伝達関数の分子式及び分母式のそれぞれとして構成させ、上記伝達関数の極及び零点の位置として与えられた値のうち所定の一組の値を選択し、前記選択した値の和を前記正規二次式の一次係数と規定し、前記選択した値の積を前記正規二次式の定数項の係数と規定することにより、上記規定された前記一次係数及び前記定数項の係数を前記制御関数の制御パラメータを算出する際に利用する
    適応型制御方法。
  5. 前記制御対象を、時定数及びゲインからなるパラメータを用いた関数で表し、
    前記制御関数を、比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲイン、フィードフォワードゲイン及び速度フィードフォワードゲインからなる制御パラメータを用いた関数で表し、
    前記伝達関数を、前記制御対象を表す関数のパラメータ及び前記制御関数を表す制御パラメータを用いた関数で表す、
    請求項4記載の適応型制御方法。
  6. 前記伝達関数の極の内で前記制御系の外乱が最小となる最適な極の位置を算出し、算出した最適な極を前記変数変換部に出力する、
    請求項4記載の適応型制御方法。
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