JP4193188B2 - 薄形複合プレートヒートパイプ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はプレートヒートパイプの構造に関するもので、特に小型で接着面積の小さな発熱体の熱量を大型放熱器の大きな接着面積に高感度で且つ効率的に拡散輸送する従来のプレートヒートパイプの機能を全く損なわず且つ如何なる適用姿勢でも熱量輸送性能を保持することを可能ならしめる薄形複合プレートヒートパイプの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術におけるプレートヒートパイプでは図6に例示の如くプレートヒートパイプ11にはプレート状密閉コンテナ11−1が内蔵せしめられて構成され、密閉コンテナの両内壁面間はピン群13により相互に連結結合せしめられることにより密閉コンテナ内の作動液の飽和蒸気圧の変化による正負の内圧に耐え得るよう補強されてあり、更に密閉コンテナの両内壁面の夫々にはピン間隙にウイック14が形成されてあり、密閉コンテナ内には高真空に脱気の後に所定の二相凝縮性作動液5の所定の量が封入封止されて構成されてあることが一般的であった。この様なプレートヒートパイプ11は高感度で熱拡散機能を発揮し、その受熱面11−2に装着された小型発熱体6の小面積の接着面からも良好に熱量を吸収し、放熱面11−3に装着された大型ヒートシンク7の広い接着面にも効率よく且つ全面均一に熱量を輸送することを可能ならしめ、ヒートシンク7のフィン群7−1から冷却対流8に良好に熱量を伝達するものであった。プレートヒートパイプが小型の場合は図5に例示のウイック14は省略されることがある。この場合にも機能的な特徴には大差がない。
【0003】
上述のごとく構成されたプレートヒートパイプは図6の如く受熱面を底面として水平に保持した場合は以下の如く作動する。密閉コンテナ11−1の底面のウイック14に充満した二相凝縮性作動液15は小型発熱体6からの熱入力により小型発熱体6の接着面に対応した密閉コンテナ1−1の底面における、小型発熱体6の接着面よりやや広い部分を蒸発部として蒸発する。この際の蒸発の潜熱を吸収した作動液蒸気は作動液蒸気流15−2の矢印の如く蒸発部(高温高蒸気圧部)から総ての低温部(低蒸気圧部)に向かって高速度で移動し、低温部で凝縮の潜熱を放出しながら凝縮して低温部に熱量を供給する。低温部で凝縮液化された凝縮作動液は15−2はピン群を介して密閉コンテナ11−1の底面に移動し、更にウイック14の作用により蒸発部に還流する。この様な作動液の相変化を伴う循環により小型発熱体6による供給熱量は密閉コンテナ11−1内の、受熱部より温度の低い総ての部分に熱量を供給する。この場合受熱部との温度差の大きい部分に向かう作動液蒸気流15−2程流速が早く、即ち温度差の大きい部分程多くの熱量が供給されることになる。従ってこの様なプレートヒートパイプはその総ての部分に熱量を高感度効率的に拡散せしめるとともに表面温度を均一化せしめる特長を備えている。
【0004】
図6に例示の従来技術のプレートヒートパイプは上述の如く作動するから受熱面を底面として水平に保持した場合に最も良好な性能を示し、傾斜角度が大きくなるほど性能が低下する。密閉コンテナ11−1の厚さが4mm前後の如く薄い場合は受熱面を頂面に放熱面を底面とした場合でも比較的良好に作動する。この保持姿勢の場合は放熱面に凝縮作動液15−1が停滞し、受熱面に作動液が不足となり、作動困難になる筈であるが、実際にはピン群13の伝熱により放熱面側に停滞した作動液が沸騰しこれにより、受熱面に作動液が供給されてヒートパイプとしての作動が可能になる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のごとく従来技術のプレートヒートパイプは熱量を高感度効率的に拡散せしめるとともに表面温度を均一化せしめる優れた特長を有するが、従来技術の円筒ヒートパイプと同様な各種の問題点を有しており、産業界ではその優れた機能を損なうことなくその問題点を解決することが要望されている。即ち本願発明のプレートヒートパイプは従来技術のプレートヒートパイプの優れた特長を維持しつつその大きな問題点である熱輸送性能及び熱拡散性能の保持姿勢依存性を改善することを目的としている。
【0006】
プレートヒートパイプは必ずしも水平保持姿勢またはそれに準ずるような小傾斜角度姿勢のみで使用されるとは限らない。傾斜角度が大きくしかも小型発熱体6の接着位置が放熱部に対し相対的に水位が高い姿勢の場合即ちトップヒートモードでは性能が大幅に低下する。その極端な場合として図7に示してある例ではプレートヒートパイプが垂直に保持され小型発熱体6は最も水位の高い位置に接着されてある。このような保持姿勢の場合には凝縮作動液15−1は密閉コンテナ11−1の低位置に図の如く停滞する。凝縮作動液15−1はウイック14の作用により密閉コンテナ11−1の内壁に沿って上昇するが重力に妨げられて極めて少量のみが小型発熱体6が接着されている位置まで到着するに過ぎない。従って作動液蒸気の発生量も極めて少ないので作動液蒸気流15−2は図示されていない。これは放熱面側のウイック14を通じて行われるべき作動液の還流も極めて少なく、停滞凝縮作動液15−1は殆ど増減が無いことになる。結局作動液の循環量は極めて少ないものとなり、図7に例示の如き保持姿勢におけるこのプレートヒートパイプ放熱性能はピン群13の金属間熱伝導による放熱性能より若干良好な程度となり大幅に低下することになる。
【0007】
ウイック14が省略されたウイックレスのプレートヒートパイプの場合は停滞凝縮作動液15−1からの蒸発部に対する作動液還流は更に困難になりプレートヒートパイプの作動は全く停止する。同様の理由からこのプレートヒートパイプは傾斜角度が少なくても放熱性能は極めて悪化する。このようなプレートヒートパイプの放熱はピン群13による金属間熱伝導による放熱のみとなりヒートパイプとは云い難いような低性能のものとなる。
【0008】
またウイックレス構造のプレートヒートパイプにおいて内蔵する密閉コンテナ11−1の厚さが3mm以下の如く極めて薄い場合は上記の如き熱性能の保持姿勢依存性は更に大きくなる。即ち傾斜により偏在した凝縮作動液15−1はコンテナ内の処々においてコンテナを充填する状態になり、作動液蒸気流の流れが妨害され、作動液蒸気の分布が不均一になりプレートヒートパイプの最大の特長の温度均一化性が失われるに至る。
【0009】
【課題を解決する為の手段】
従来型プレートヒートパイプの熱輸送及び熱拡散性能の保持姿勢依存性の改善手段としては保持姿勢依存性の極めて少ない蛇行細管ヒートパイプとの複合化型とすることによりこの二種類のヒートパイプの機能を相互補完せしめ、保持姿勢依存性を解消せしめる。
【0010】
複合型プレートヒートパイプについて、本発明者は先に特願平8−182588号及び特願平8−224298号を提案し現在実用化に努めつつある。然しこの先特願の複合型プレートヒートパイプは構成も複合化により得られる機能も本願発明とは全く異なるものである。先特願の複合型プレートヒートパイプにおいては薄形プレートの片面に突起成形された蛇行細管ヒートパイプを主体として、その特性を、その突起間隙を従来型の作動液の相変化の潜熱により熱量を輸送する方式のヒートパイプとして構成し、このヒートパイプの機能と突起形成された従来型細管ヒートパイプのプレートヒートパイプの機能とが相互に補完し合って高性能化されるものであった。それに対して本願発明の薄形複合プレートヒートパイプは後述する通り従来型プレートヒートパイプのウイックとして蛇行細管ヒートパイプを適用して複合化せしめて従来型プレートヒートパイプの熱輸送性能を改善するものである。
【0011】
図1は本願発明の薄形複合プレートヒートパイプの基本構造を示す説明図の断面図である。その片側の面はその面積に対して比較的大きな接触面を有するヒートシンク7が装着されて面放熱せしめられるコンテナ放熱面であり、他の片側の面は放熱面より大幅に小さな接触面を有する小型放熱体が装着されて面加熱せしめられるコンテナ受熱面であり、この様な両面を有する中空金属プレートの中空空間がプレート形状の密閉ヒートパイプコンテナ1−1として形成されてある面間熱輸送用の複合プレートヒートパイプ1であって、コンテナ内には外径1.4mm以下の極細金属管で形成された多数ターンの蛇行細管ヒートパイプ2が充填配設されてあり、その蛇行細管ヒートパイプ2はその直管部が相互に平行並列に相互に近接配置せしめられ、且つコンテナ内壁面1−2、1−3に直接または補助ウイック4を介して、接触展開して配設され、コンテナ内壁面1−2、1−3と蛇行細管ヒートパイプ2の表面、蛇行細管の相互近接面等に形成される微小間隙の毛細管作用を有効利用するヒートパイプウイックとして適用されてあり、コンテナ内における蛇行細管ヒートパイプ2の配設の余剰空間の所定の部分には必須構成要素とはしない補助ウイック4が配設され更に高真空度に脱気の後に所定の二相凝縮性作動液5が封入封止されてヒートパイプ化されてあることを特徴としている。この場合補助ウイック4は製作工程上蛇行細管ヒートパイプ2とコンテナ内壁面との間隙、蛇行細管ヒートパイプ2の細管相互間の間隙、等が大きくなり、ウイックとしての機能が低下する恐れある場合にその間隙に充填してウイック機能を補助する為に使用する。従って必須構成要素とはならない。
【0012】
【作用】
このような薄形複合プレートヒートパイプ1において蛇行細管ヒートパイプ2は小型発熱体6から受熱した熱量によりその全表面がほぼ受熱部の温度と同一温度に上昇し、これと接触する作動液5はその全表面から活発に蒸発する。この蒸気は最短の距離を流路としてコンテナ放熱側内壁面1−3に到達して冷却凝縮せしめられる。この場合作動液の蒸発による大量の潜熱がコンテナ受熱側内壁面1−2を介して小型発熱体6から熱量を奪いこれを冷却する。また作動液蒸気の凝縮による大量の潜熱が放出されこの潜熱はコンテナ放熱側内壁面1−3を介してヒートシンク7及びそのフィン群7−1に熱量を伝導し冷却対流8の中に熱量を捨て去る。この様な構成の薄形複合プレートヒートパイプ1はは従来型のプレートヒートパイプに比較して次の如き優れた作用を発揮する。
【0013】
(1)蒸発部面積が拡大されて蒸気発生量が増加し放熱性能が大幅に向上する。図6に例示の従来型のプレートヒートパイプ11の作動液蒸発面積は受熱面11−2における小型放熱器6の接着面積にほぼ等しいコンテナ内壁面積であり、極めて小さな蒸発面である。これに対して本発明の薄形複合プレートヒートパイプ1の蒸発面積はコンテナ内部に接触充填された蛇行細管ヒートパイプ2の全表面積から接触面積を除いた面積であり、従来型のプレートヒートパイプ11に比較して桁違いに広い蒸発面積となる。これは低入力でも多量の蒸気が容易に発生することを意味する。視点を変えれば本発明の薄形複合プレート
ヒートパイプ1の作動感度が極めて敏感になることを意味する。
【0014】
(2)蒸気の移動距離が極めて短くなり、蒸気移動による熱量損失が極めて少ない。
従来型のプレートヒートパイプ11においては図6に例示の如く小型発熱体6に近い蒸発部で発生する蒸気は作動液蒸気流15−2として遠距離を移動して放熱面11−3の低温部のすべての部分に到達して凝縮して液化される。この間の圧力損失を避けるため密閉コンテナ11−1は受熱側と放熱側の両内壁面は図の如く相互間に十分な間隔を必要とし、それでも内壁面のウイック、両内壁面の耐圧補強の為に設けられてあるピン群等の圧力損失による熱損失は避けられない。これに対して図1に例示の本発明の薄形複合プレートヒートパイプ1における作動液蒸気の移動距離は蛇行細管ヒートパイプ2の表面からコンテナ放熱側内壁面1−3に至る距離であり、図示不可能な程の微小距離である
従って蒸気の移動に依る熱損失は無視しても良い程度に少ないものとなる。
【0015】
(3)複合プレートヒートパイプを極めて薄形に構成することを可能にする。
上述の如く蒸気の移動距離が微小距離であるから、従来型のプレートヒートパイプ11の如ごとく蒸気移動の圧力損失増加を防ぐためコンテナ受熱側内壁面1−2とコンテナ放熱側内壁面1−3の間隔を拡大せしめる必要がなく、蛇行細管ヒートパイプ2を挿入して接触充填出来る程度の間隔まで小間隔化出来る。これは本発明の薄形複合プレートヒートパイプ1を飛躍的に薄形化するための必須条件であり、極めて重要な効果である。
【0016】
(4)此の様な本発明の構成は薄形複合プレートヒートパイプの熱輸送及び熱拡
散性能の保持姿勢に対する無依存性を保証する。
通常型プレートヒートパイプは保持姿勢に因って大幅に熱輸送性能及び表面温度均一性が変化する。これはその作動液の相変化サイクルにおける受熱部(蒸発部)に対する作動液の還流(補充)能力が保持姿勢の変化に依存して変化することに因る。これは作動液の還流が重力の補助に依ってなされるその作動原理に起因している。性能の姿勢依存性のもっとも厳しい条件としては蒸発部を上部に保持した垂直姿勢即ちトップヒートモードの場合であり、図7はその状態を示している。図7においては凝縮作動液15−1は還流が極めて困難なことに依り、底部に滞留している。此の場合はウイック14は重力の妨害に依り毛細管としての機能が殆ど失なわれるに至る。即ちヒートパイプとしての作動は殆ど不可能になり、熱量の輸送能力も、温度均一化機能も共に殆ど 失われる。
【0017】
これに対して図1に例示の如く本願発明の薄形複合プレートヒートパイプ1においては蛇行細管ヒートパイプ2がコンテナ内壁面の全面にわたり展開されて接触配設されてあり、蛇行細管ヒートパイプ2はその基本的特性として保持姿勢無依存性であり如何なる姿勢でも良好に作動し、その全表面が蒸発部とほぼ等しい温度になるから、凝縮作動液5を如何なる部分にも滞留せしめること無く、それを完全に蒸発せしめ、その蒸気はコンテナの全内壁面に供給されて凝縮しその潜熱により熱量を放熱側内壁面1−3に伝達せしめる。即ち相変化により熱輸送が行われるプレートヒートパイプと作動液の振動を熱輸送原理とする蛇行細管ヒートパイプ2とが相互に補完しあって、保持姿勢依存性の全く無い優れた機能を薄形複合プレートヒートパイプ1に与える。
【0018】
(5) 蛇行細管ヒートパイプ2とコンテナ1−1内の蛇行細管ヒートパイプ2を配設した余剰空間に作動液を封入したプレートヒートパイプの夫々の作動液の組み合わせにより多様の作動領域の薄形複合プレートヒートパイプ1を構成することが出来る。
純水、純水の組み合わせでは300℃でも適用可能な高温高性能複合プレートヒートパイプを構成することが出来るが50℃では性能が低下し10℃以下では作動困難になる。HCFC−142b、純水の組み合わせは適用温度範囲5℃〜180℃の高感度複合プレートヒートパイプとなり、HFC−134a、HCFC−142bの組み合わせは適用温度範囲−20℃〜100℃の極めて高感度でかつ低温度での適用が可能な複合プレートヒートパイプを提供する。
【0019】
[第一実施例] 図1は本発明の薄形複合プレートヒートパイプ1の第一実施例の説明図であって側面の断面図として示してある。薄形複合プレートヒートパイプ1は幅200mm以下、長さ200mm以下、厚さ3mm以下、コンテナ壁の厚さ0.5mm以下の薄肉薄型の中空金属プレートで構成されてあり、コンテナ内に充填配設される蛇行細管ヒートパイプ2は外形1.4mm以下、内径1.1mm以下、蛇行ターン数40ターン以上に構成され、封入封止される二相凝縮性作動液としては沸点20℃以下、凝固点−60℃以下、臨界温度100℃以上の作動液が適用されてあることを特徴とし、コンテナ内における余剰空間に封入封止される二相凝縮性作動液としては純水作動液が使用されてあり、プレートヒートパイプとしての適用温度はプレート全体の平均温度として100℃以下、5℃以上であることを特徴としている。
【0020】
蛇行細管ヒートパイプ2が如何なる保持姿勢でも良好に作動する必要条件としてはそのターン数が40ターン以上が必要なことは実用化に際しての多数の実験結果で確認されている。実験の結果はでは40ターンではトップヒートモードでも、作動するが僅かな性能低下が認められ、60ターン以上ではトップヒートモードでの性能低下は極めて少なく、80ターン以上ではトップヒートモードにおける性能は極めて良好で完全な保持姿勢無依存性となった。第一実施例の条件である薄形複合プレートヒートパイプ1の外形構造200mm×200mm×3mmでは外形1.4mm、内径1.1mmの細管で125ターンの蛇行細管ヒートパイプ2を形成してこれを内蔵させることが可能である。120mm×120mm×2mmの外形では外径0.8mm、内径0.6mmの細管で120ターンの蛇行細管ヒートパイプ2を形成してこれを内蔵させることが可能である。実験の結果ではこれらは何れも如何なる保持姿勢でも全く性能が悪化しない優れた機能を薄形複合プレートヒートパイプ1に付与することが出来た。またこれらは第一実施例の条件を満足せしめる作動液として蛇行細管ヒートパイプ内にHFC−134aを封入した場合、熱輸送熱量及び熱拡散熱量としてプレート厚さ3mmの前者は500W、プレート厚さ2mmの後者は120Wの熱入力でトップヒートモードでも良好に作動させることが可能であった。
【0021】
本実施例はコンテナ内の作動液としては純水が使用され、蛇行細管ヒートパイプ内には例えばHCFC−134の如き低温用作動液が適用されてある場合は、純水作動液の作動が困難な10℃以下の低温であっても蛇行細管ヒートパイプの補完によって本発明の薄形複合プレートヒートパイプ1は活発に作動する。このような作動温度の相互補完作用も本実施例の有効な作用である。
【0022】
また蛇行細管ヒートパイプは極めて細く形成できることから、薄形複合プレートヒートパイプの厚さを夫々それぞれ3mm以下、2mm以下の如く薄形に構成することを容易ならしめた。またコンテナ内における余剰空間に封入封止される二相凝縮性作動液として純水作動液をが使用することにより、コンテナ内に発生する作動液の飽和蒸気圧は、本実施例における薄形複合プレートヒートパイプ1の適用温度範囲100℃以下においては一気圧を越えることなく、即ち内圧が常に負圧である為コンテナ壁には何等の補強手段を施すことなく、その厚さを0.2mmと薄肉にすることが可能であった。この点も薄形複合プレートヒートパイプの薄形化、及び高感度化に大きく貢献している。また純水作動液は0℃で凍結し、5℃以下では実用上の2相凝縮性作動液としての機能を失うに至る。従って本実施例の薄形複合プレートヒートパイプの適用温度の下限は5℃になり、この状態におけるコンテナ内圧はほぼ−1気圧となる。この負圧に対するコンテナ壁の圧潰の危険は蛇行細管ヒートパイプ2及び補助ウイック4が支柱としての機能を発揮することにより容易に防止することが出来た。この点も薄形複合プレートヒートパイプの薄形化に貢献する。
【0023】
本実施例の実用化に際してはコンテナの構成用金属材料として純銅を適用して極めて良好な結果が得られた。作動液を純水にすることに因りアルミ、ステンレス、鉄等の使用が不可能となるが、純水作動液との適合性の良好な純銅、ニッケル等のメッキまたは薄膜クラッドを施すことに因りこれらの金属材料を適用することが可能になる。
【0024】
[第二実施例] 本発明の薄形複合プレートヒートパイプの構成金属材料がアルミニゥムの如き純水作動液と適合性の悪い金属で構成され純水以外の作動液を適用する必要ある場合、または適用温度範囲が100℃を越える薄形複合プレートヒートパイプを構成する場合は第一実施例とは大幅に異なる構成にする必要がある。即ち密閉コンテナ1−1内における余剰空間に封入封止される二相凝縮性作動液として純水以外の実用的作動液を使用する殆ど全ての場合、及び作動液として純水が用されてあっても適用温度が100℃を越える場合は、コンテナ内の飽和蒸気圧は1気圧を越えることになる。第一実施例の構造はコンテナ内の飽和蒸気圧が負圧であることを前提とする構造であるからその構造は大幅に変更する必要がある。
【0025】
図5はそのような場合に適用されることを前提とした本発明の薄形複合プレートヒートパイプの第二実施例を示す説明図であって側面の断面図として示してある。図5において薄形複合プレートヒートパイプ1は幅200mm以下、長さ200mm以下、厚さ5mm以下、コンテナ壁の厚さ1.0mm以下の薄肉薄形の中空金属プレートで構成されてあり、コンテナ内における受熱側内壁面1−2と放熱側内壁面1−3とは多数のピン群3により連結接続されて、コンテナ内における作動液の飽和蒸気圧の変化による正負の内圧に耐えるよう補強されてあり、コンテナ内に充填配設される蛇行細管ヒートパイプ2はピン群3の間隙に圧入されて充填配設されてあり、蛇行細管ヒートパイプ2は外形1.4mm以下、内径1.1mm以下、蛇行ターン数40ターン以上に構成され、封入封止される二相凝縮性作動液としては沸点−20℃以下、凝固点−60℃以下、臨界温度100℃以上、200℃以下の作動液が適用されてあることを特徴とし、コンテナ内における余剰空間に封入封止される二相凝縮性作動液5としては沸点−20℃以下、凝固点−60℃以下、臨界温度100℃以上200℃以下の作動液が使用されてあり、プレートヒートパイプとしての適用温度はプレート全体の平均温度として200℃以下、−10℃以上であることを特徴としている。
【0026】
本実施例は密閉コンテナ1−1の内圧が1気圧を越える場合、即ち複合プレートヒートパイプ1の適用温度領域の上限が100℃を越える場合の構成であり、適用温度領域の下限が純水の氷点以下である場合の構成である。これは換言すれば密閉コンテナ1−1内における余剰空間に封入封止される二相凝縮性作動液5として純水以外の作動液が適用される場合の構成である。ピン群3により補強された密閉コンテナ1−1はピンの断面積、及び単位面積あたり本数の選択によっては50Kgの内圧にも耐えるよう構成することが出来る。また上述の作動液の必要条件を満足せしめる作動液の例として、密閉コンテナ1−1内における余剰空間に封入封止される二相凝縮性作動液としてHCFC−123、蛇行細管ヒートパイプに封入される二相凝縮性作動液としてHCFC−142bを適用することにより適用温度領域の上限を180℃、下限を−10℃とすることが可能になった。
【0027】
[第三実施例] 図5の複合プレートヒートパイプの耐内圧強度が強化された構造は構成素材を純銅とする場合は純水作動液との適合性が極めて良好であるから、蛇行細管ヒートパイプに封入される二相凝縮性作動液としても、密閉コンテナ1−1内における余剰空間に封入封止される二相凝縮性作動液としても、何れにも純水作動液を適用することが出来る。純水作動液は他の作動液に比較して飽和蒸気圧が低く且つ臨界温度が極めて高いので適用温度領域の上限を充分に高くすることが出来る。しかし低温度における補完作用が少なくなるから下限は若干上昇する。従って適用温度領域の上限を250℃、下限を10℃とする薄形複合プレートヒートパイプを提供することが出来る。
【発明の効果】
プレートヒートパイプと蛇行細管トンネルプレートヒートパイプとの複合化により熱拡散性能が良好で且つ姿勢依存性の極めて少ない薄形複合プレートヒートパイプを提供することが出来るようになった。近来の半導体発熱素子の進歩は極めて大きな熱量を発生する極めて小型な半導体素子が出現しつつある。そのヒートシンクとの接触面は極めて小面積であり、放熱にはプレートヒートパイプを熱拡散手段として適用する以外に適切な手段がなかった。然しこのような小型発熱素子は適用姿勢が各種各様であり従来のプレートヒートパイプでは姿勢依存性が大きく適用出来なかった。本願発明の薄形複合プレートヒートパイプはこのような半導体素子の冷却を如何なる保持姿勢でも可能ならしめて業界の強い要望に応える事が出来るようになった。
【0028】
更に上記のような小型強力な半導体素子の出現により業界ではプレートヒートパイプに対し更なる小形化と薄形化を要望するようになっている。本発明の適用によって、15mm×15mmの如き小面積で120Wの如き大きな発熱量の小型強力な発熱素子を冷却する場合、本願発明を適用することにより僅かに放熱面積100mm×100mm厚さ2mmの如き小形極薄形の薄形複合プレートヒートパイプを構成して冷却することが出来るようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の薄形複合プレプレートヒートパイプの基本構造及び第一実施例の断面説明図である。
【図2】本願発明薄形複合プレートヒートパイプ図1の断面の一部拡大図である。
【図3】本願発明薄形複合プレートヒートパイプ図1の直交断面の一部拡大図である。
【図4】本願発明薄形複合プレートヒートパイプの平面略図である。
【図5】本願発明の薄形複合プレプレートヒートパイプの第二実施例、及び第三実施例の断面説明図である。
【図6】従来型構造のプレートヒートパイプの構造を示し、且つ水平姿勢に保持されてある場合の作動状態を示す断面説明図である。
【図7】従来型構造のプレートヒートパイプの構造を示し、且つ垂直姿勢に保持されてある場合の作動状態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
1 薄形複合プレートヒートパイプ
1−1 密閉コンテナ
1−2 コンテナ受熱側内壁面
1−3 コンテナ放熱側内壁面
2 蛇行極細管ヒートパイプ
3 ピン群
4 補助ウイック
5 凝縮作動液
6 小型発熱体
7 ヒートシンク
7−1 フィン群
8 冷却対流
11 プレートヒートパイプ
11−1 密閉コンテナ
11−2 受熱面
11−3 放熱面
13 ピン群
14 ウイック
15−1 凝縮作動液
15−2 作動液蒸気流

Claims (3)

  1. 片側の面は受熱面積に比較して比較的大きな放熱面を有する放熱面であり、
    他の片側の面は上記放熱面より大幅に小さな接触面を有する小型発熱体が接着配置されて面受熱せしめられる受熱部と残余の部分が放熱面として適用されることもある部分とからなる受熱面であり、この様な両面を有する中空金属プレートの中空空間がプレート形状の密閉ヒートパイプコンテナとして形成されてある面間熱輸送用のプレートヒートパイプであって、コンテナ内には外径1.4mm以下の極細金属管で形成された多数ターンの蛇行細管ヒートパイプが充填配設されてあり、その蛇行細管ヒートパイプはその直管部が相互に平行並列に相互に近接して配置せしめられ、且つコンテナ内壁面に直接または補助ウイックを介して接触展開して配設され、コンテナ内壁面と蛇行細管表面の近接部、蛇行細管の相互近接面等に形成される微小間隙の毛細管作用を有効利用するヒートパイプウイックとして適用されてあり、コンテナ内における蛇行細管ヒートパイプ配設の余剰空間には、所定の部分に必須構成要素とはしない補助ウイックが配設され更に高真空度に脱気の後に所定の二相凝縮性作動液が封入封止されてヒートパイプ化されてあり、前期薄形複合プレートヒートパイプは幅200mm以下、長さ200mm以下、厚さ5mm以下、コンテナ壁の厚さ1.0mm以下の薄肉薄型の中空金属プレートで構成されてあり、前記コンテナ内における受熱側壁面と放熱側壁面とは多数のピン群により連結接続されて、前記コンテナ内における作動液の飽和蒸気圧の変化による正負の内圧に耐えるよう補強されてあり、前記コンテナ内に充填配設される蛇行細管ヒートパイプはピン群の間隙に圧入されて充填配設されてあり、蛇行細管ヒートパイプは外形1.4mm以下、内径1.1mm以下、蛇行ターン数40ターン以上に構成され、封入封止される二相凝縮性作動液としては沸点−20℃以下、凝固点−60℃以下、臨界温度100℃以上200℃以下の作動液が適用されてあることを特徴とし、コンテナ内における余剰空間内に封入封止される二相凝縮性作動液としては沸点−20℃以下、凝固点−60℃以下、臨界温度100℃以上200℃以下の作動液が使用されてあり、プレートヒートパイプとしての適用温度はプレート全体の平均温度として200℃以下、−10℃以上であることを特徴とする薄形複合プレートヒートパイプ。
  2. 片側の面は受熱面積に比較して比較的大きな放熱面を有する放熱面であり、
    他の片側の面は上記放熱面より大幅に小さな接触面を有する小型発熱体が接着配置されて面受熱せしめられる受熱部と残余の部分が放熱面として適用されることもある部分とからなる受熱面であり、この様な両面を有する中空金属プレートの中空空間がプレート形状の密閉ヒートパイプコンテナとして形成されてある面間熱輸送用のプレートヒートパイプであって、コンテナ内には外径1.4mm以下の極細金属管で形成された多数ターンの蛇行細管ヒートパイプが充填配設されてあり、その蛇行細管ヒートパイプはその直管部が相互に平行並列に相互に近接して配置せしめられ、且つコンテナ内壁面に直接または補助ウイックを介して接触展開して配設され、コンテナ内壁面と蛇行細管表面の近接部、蛇行細管の相互近接面等に形成される微小間隙の毛細管作用を有効利用するヒートパイプウイックとして適用されてあり、コンテナ内における蛇行細管ヒートパイプ配設の余剰空間には、所定の部分に必須構成要素とはしない補助ウイックが配設され更に高真空度に脱気の後に所定の二相凝縮性作動液が封入封止されてヒートパイプ化されてあり、前記薄形複合プレートヒートパイプは幅200mm以下、長さ200mm以下、厚さ5mm以下、前記コンテナ壁の厚さ1.0mm以下の純銅を構成素材とする薄肉薄形の中空金属プレートで構成されてあり、コンテナ内における受熱側壁面と放熱側壁面とは多数のピン群により連結接続されて、前記コンテナ内における作動液の飽和蒸気圧の変化による正負の内圧に耐えるよう補強されてあり、コンテナ内に充填配設される蛇行細管ヒートパイプはピン群の間隙に圧入されて充填配設されてあり、蛇行細管ヒートパイプは外形1.4mm以下、内径1.1mm以下、蛇行ターン数40ターン以上に構成され、細管内に封入封止される二相凝縮性作動液としては純水作動液が適用されてあり、また前記コンテナ内における余剰空間 内に封入封止される二相凝縮性作動液としても純水作動液が適用されてあり、プレートヒートパイプとしての適用温度はプレート全体の平均温度として250℃以下、10℃以上であることを特徴とする薄形複合プレートヒートパイプ。
  3. 前記薄形複合プレートヒートパイプは幅200mm以下、長さ200mm以下、厚さ3mm以下、前記コンテナ壁の厚さ0.5mm以下の薄肉薄型の中空金属プレートで構成されてあり、前記コンテナ内に充填配設される蛇行細管ヒートパイプは外形1.4mm以下、内径1.1mm以下、蛇行ターン数40ターン以上に構成され、封入封止される二相凝縮性作動液としては沸点20℃以下、凝固点−60℃以下、臨界温度100℃以上の作動液が適用されてあることを特徴とし、前記コンテナ内における余剰空間に封入封止される二相凝縮性作動液としては純水作動液が使用されてあり、プレートヒートパイプとしての適用温度はプレート全体の平均温度として100℃以下、5℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の薄形複合プレートヒートパイプ。
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