JP4192573B2 - レーザ溶接方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重ね合せた溶接対象物の重合部をレーザ溶接するレーザ溶接方法及びレーザ溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、重ね合せた少なくとも2つの溶接対象物間の重合部をレーザ溶接するには、図10(A)に示すように上下に重ね合わされた溶接対象物20,21のうち上部の溶接対象物20の端部角部20aに向けてレーザビーム23を照射し、図10(B)に示すように上部溶接対象物20の端部角部20aの一部を溶融し、その溶融物20bにより上下の溶接対象物20,21の重合部に隅肉溶接を行っている。また、レーザビーム23は図10(A)に示すように、垂直方向に対して15°程度傾けることにより上部溶接対象物20の端部角部20aに照射している。また、図10(A)及び(B)に示すように、上部溶接対象物20を治具24により圧下して、該上部溶接対象物20を下部溶接対象物21の重合部に密着させ、その重合部に隙間をなくしている。
【0003】
しかしながら、図10(C)に示すように、上下の溶接対象物20,21間に製造公差を超えた隙間Sが形成されてしまった場合には、該隙間Sを溶接治具24により完全に修正することができず、溶融物20bにより溶接対象物間20,21間の隙間Sを完全に埋めて溶接することは不可能となる。
【0004】
上記の問題点を解決する技術が下記特許文献1に開示されている。下記特許文献1の技術は、溶接対象物のギャップ幅に応じて溶接条件を制御するという内容のものである。下記特許文献1では、前記溶接条件の制御として、溶接電流,溶接電圧,溶接速度及び溶接トーチ先端のオフセット量のうち少なくとも1つの量を制御している。
【特許文献1】
特開平7−080643号公報
【0005】
これは、上記特許文献1では、上下に重ね合わされた溶接対象物間に形成されるギャップ量に応じて溶接部位を変更しないことに起因する。また、特許文献1では、オフセット量を実際にどのように変更するかが具体的に開示されていないものである。
【0006】
【発明の目的】
本発明の目的は、溶接対象物間の重合部に形成される隙間を完全に埋め込むのに必要な溶接対象物の溶融量を確保してレーザ溶接するレーザ溶接方法及びその装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、重ね合わされた溶接対象物間の重合部をレーザビームの照射によりレーザ溶接するレーザ溶接方法において、前記溶接対象物間に形成されるギャップ量を計測し、該計測したギャップ量に対応して、レーザビームの照射位置を溶接対象物の隅肉溶接位置より内側へ変更するという構成を採っている。
【0008】
請求項1に記載の発明では、溶接対象物間に形成されるギャップ量を計測し、該ギャップ量に対応して、隅肉溶接位置に対するレーザビームの照射位置の距離が変更されることとなる。
【0009】
したがって、溶接対象物間のギャップ量に対応して溶接対象物の溶融量が増減することとなり、溶接対象物間の隙間に溶融物を完全に埋めこんで溶接対象物間の重合部を溶接することができ、溶接品質を向上させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、隅肉溶接位置からオフセットさせた領域にまでレーザビーム照射による溶融範囲を拡大するという構成を採っている。
【0011】
請求項2の発明では、レーザビームの照射位置が隅肉溶接位置に固定されることがなく、必要に応じて溶融範囲が拡大される。
【0012】
したがって、充分な溶融量を確保して、隙間が生じた溶接対象物間の重合部を確実に溶接することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、溶融範囲を拡大して溶接対象物を溶融させて、これを溶接対象物間の隙間に埋設するという構成を採っている。
【0014】
したがって、溶接対象物間の隙間を完全に埋め込むに必要な溶融量を確保することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、レーザ溶接の進行前方位置において、前記ギャップ量を、前記溶接対象物間の板厚方向での隙間寸法として計測するという構成を採っている。
【0016】
請求項4の発明によれば、レーザ溶接進行前方位置において、ギャップ量を、溶接対象物の板厚方向での隙間寸法として計測するため、リアルタイムでギャップ量を正確に計測することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、ギャップ量に基いて変更した距離に対応して、レーザビームの出力,溶接速度を変更するという構成を採っている。
【0018】
請求項5の発明によれば、ギャップ量に対応してレーザビームの出力,溶接速度がリアルタイムで変更することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、重ね合わされた溶接対象物間の重合部をレーザビームの照射によりレーザ溶接するレーザ溶接装置において、溶接対象物間に形成されるギャップ量を計測する計測手段と、計測手段が計測したギャップ量に対応して、レーザビームの照射位置を溶接対象物の隅肉溶接位置より内側へ変更する照射位置制御手段とを有するという構成を採っている。
【0020】
請求項6の発明では、溶接対象物間に形成されるギャップ量を計測し、該ギャップ量に対応して、隅肉溶接位置とレーザビームの照射位置との距離が変更される。
【0021】
したがって、溶接対象物間のギャップ量に対応して溶接対象物の溶融量が増減することとなり、溶接対象物間の隙間に溶融物を完全に埋めこんで溶接対象物間の重合部を溶接することができ、溶接品質を向上させることができる。
【0022】
また照射位置制御手段は、隅肉溶接位置からオフセットさせた領域にまでレーザビーム照射による溶融範囲を拡大する機能を備えていることが望ましいものであり、計測手段は、前記ギャップ量を溶接対象物間の板厚方向での隙間寸法として計測するものであることが望ましいものである。また、照射位置制御手段は、ギャップ量に基いて変更した前記距離に対応して、レーザビームの出力,溶接速度を変更する機能を備えていることが望ましいものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図に基いて説明する。図1に示す本発明に係るレーザ溶接装置における溶接ロボットRは、溶接トーチを3次元方向に位置制御してレーザ溶接を行う汎用のものを用いているため、溶接トーチを3次元方向に位置制御する機構のみを図7に基いて説明する。図7に示すように、横梁1が水平に保持されて3次元のY方向に移動可能に支持され、移動体2が水平な横梁1にX方向に摺動可能に支持されている。さらに、移動体2には、縦梁3がZ方向に移動可能に支持されている。なお、横梁1の両端を支えてY方向に移動可能に支持する構造は、汎用のものであるので省略してある。また、縦梁3は、鳩尾状案内面としてのアリ溝を使って移動体2に移動可能に支持しているが、この構造のものに限定されるものではなく、縦梁3と移動体2の間には、縦梁3が移動体2から下方へ脱落するのを防止する手段(汎用のものであるため図示略)が講じられている。
【0024】
上述したX,Y及びZ方向は互いに直交する方向に向いており、X方向は溶接をしながら移動体2が進行する方向(図中の前後方向)に設定し、Y方向は溶接位置の距離を変更する方向(図中の左右方向)に設定し、かつZ方向は図中の上下方向に設定し、縦梁3の下端部が直交するX,Y及びZ方向に沿って溶接対象物に対して前後,上下及び左右方向に移動するようになっている。そして、縦梁3の下端部には、溶接トーチ4と計測手段をなすレーザカメラ5とが設置されている。これらの溶接トーチ4とレーザカメラ5との配置関係は、図1において溶接トーチ4をX方向に沿って溶接対象物6,7の重合部Aに溶接を行う際に溶接トーチ4よりも前方位置(レーザ溶接の進行前方位置)で溶接されていない状態の重合部Aの画像を取り込むような位置関係になっている。
【0025】
計測手段をなすレーザカメラ5について説明する。図8に示すように、計測手段をなすレーザカメラ5は、レーザダイオード5aと、レンズ5bと、集光レンズ5cと、画像表示部5dとからなっている。そして、レーザダイオード5aからレンズ5bに通してレーザ光5eを溶接対象物6,7の重合部Aに照射し、該重合部Aでの反射光を集光レンズ5cで集光し、これを電気信号に変換して画像表示部5dに表示する。画像表示部5dには、重ね合せた溶接対象物6,7の稜線6a,7aが、その高さの違いに応じて上下方向に離れて表示されるようになっている。2つの溶接対象物6,7間の重合部Aに隙間がなく密着している場合には、上部の溶接対象物6の稜線6aが下部の溶接対象物7の稜線7aの位置より上部の溶接対象物6の板厚tの分だけずれた位置に表示される。
【0026】
さらに、溶接ロボットRには、照射位置制御手段を有している。この照射位置制御手段は、レーザカメラ5からのデータに基づいて算出したギャップ量G1に対応して、隅肉溶接位置に対する溶接トーチ4からのレーザビーム4aの照射位置の距離yを変更する機能を有している。ここに、上記ギャップ量G1は、溶接対象物6,7間に形成されるギャップ量であり、以下、このギャップ量G1を計測ギャップ量という。
【0027】
上述した照射位置制御手段は、溶接トーチ4からのレーザビーム4aの光路を調節するウインドウ8と、ウインドウ8の傾斜角を変更するガルバノメータ8bと、演算部Bとから構成されている。
【0028】
上記ウインドウ8は図1及び図2に示すように、溶接トーチ4から溶接対象物6,7の重合部Aに向けて照射されるレーザービーム4aの光路中に設けられ、水平軸8aの周りに回転される。ウインドウ8は、厚みw,屈折率nであって、溶接トーチ4からのレーザビーム4aを透過する性質を有し、予めレーザビーム4aの光軸に対してr°傾斜した実線で示す姿勢に設けてあり、その屈折率nによりレーザビーム4aを溶接対象物の端部角部に設定した隅肉溶接位置y1に向けて屈折させるようになっている。また、ウインドウ8は、水平軸8aの周りに逆方向にr°回転されて点線で示す水平姿勢になったときに、レーザビーム4aを屈折させずにそのまま透過させることにより、上記隅肉溶接位置(溶接対象物の端部角部)y1より内側の位置に距離yを変更してオフセットした照射位置y2に向けて照射するようになっている。上記r°は、計測ギャップG1に基づいて設定されるオフセット量yに対応して種々変更される。ここで、上記内側とは、重ね合わされた溶接対象物6,7の内の溶接トーチ4側となる溶接対象物6の側で隅肉溶接位置y1から離間する方向を意味する。
【0029】
上記ガルバノメータ8bは、ウインドウ8の水平軸8aに連動し、水平軸8aを正逆回転させることにより、レーザ光4aの光路に対するウインドウ8の姿勢(傾き角度)を制御している。
【0030】
上記演算部Bはパソコン(Personal Computer)により構成されており、具体的には図1に示すように、少なくとも中央処理装置9と、メインメモリ10と、サブメモリ11と、入力データを入力する入力装置12と、中央処理装置9で演算処理された結果を出力する出力装置13と、ファイル装置14とから構成されている。
【0031】
メインメモリ10には、中央処理装置9が演算処理するための制御プログラムが記憶され、サブメモリ11には、ガルバノメータ8bからの角度信号やレーザカメラ5からの計測データCなどが一時的に記憶される。また、ファイル装置14には、重ね合わされる溶接対象物6,7のうち上層の溶接対象物6の板厚tのデータ,溶接トーチ4からのレーザビーム4aの波長,ウインドウ8の屈折率n,ウインドウ8の厚みwなどのデータファイルと、図4(a)に示すような予め設定されたギャップ量Gとオフセット量yとの関係を示すデータファイルDなどが記憶されている。以下、上記予め設定されたギャップ量Gを設定ギャップ量という。また、図4(a)に示すデータファイルDでは、上層の溶接対象物6の板厚tを3mmに設定している。図4(a)のデータファイルでは、設定ギャップ量Gが0.5mm以下であるとき、オフセット量yを0mmに設定し、設定ギャップ量Gが0.5mm以上0.8mm未満であるとき、オフセット量yを0.2mmに設定し、設定ギャップ量Gが08mm以上1.0mm未満であるとき、オフセット量yを0.5mmに設定し、設定ギャップ量Gが1.0mmであるとき、オフセット量yを105mmに設定している。
【0032】
なお、図4(a)に示すデータファイルDは一例を示すものであり、しかも、溶接対象物6の板厚tが3mmの場合における設定ギャップ量Gとオフセット量yとを対応させたものである。さらに、この図4(a)のデータファイルDでは、設定ギャップ量Gが0.2mm以下までは、通常の隅肉溶接位置で対応可能であるとして設定している。しかし、この図4(a)のデータファイルDは一例を示すものであり、これに限られるものではなく、また、設定ギャップ量Gが0.2mm以下では照射位置のオフセットを行わないように設定しているが、オフセットを行う基準寸法は上述した数値に限られるものではない。
【0033】
また、レーザカメラ5,演算部Bなどにより、レーザカメラ5からの計測データCに基づいて、図9に示すように溶接治具14で上層の溶接対象物6を下層の溶接対象物7に密着させる方向に押圧した後の2つの溶接対象物6,7間に形成される計測ギャップ量G1を計測する計測手段が構成される。なお、レーザカメラ5から出力される計測データCの寸法データは、図1及び図2に示す上層の溶接対象物6の板厚tに、2つの溶接対象物6,7間に形成される計測ギャップG1を加えた寸法データである。
【0034】
次に、本発明に係るレーザ溶接装置を用いて上下に重ね合せた溶接対象物の重合部に溶接を行う動作を図3に基いて説明する。図3においては、図4(a)に示すデータファイルDを用い、設定ギャップ量Gが0.5mm以上の場合にオフセット動作を行って溶接処理を行うようになっている。予め図4(a)のデータファイルDを用いるために必要なデータ(例えば、ウインドウ8の厚みw,ウインドウ8の屈折率n,溶接トーチ4の出射するレーザビーム4aの波長λなどのデータ)を入力装置12を使って入力し、これらをファイル装置14に記憶する。
【0035】
次に、重ね合せた溶接対象物6,7の重合部AをX方向に沿って溶接トーチ4で倣い、溶接ロボットにティチングを行う。このティチングは、溶接対象物6,7の重合部Aに0.5mm以上の隙間がないことを前提とするものである。溶接ロボットにティチングを行った後に溶接ロボットを動作して溶接を行う。
【0036】
先ず、入力装置12から溶接開始信号が入力されると、図1に示す中央処理装置9は、メインメモリ10から制御プログラムを読み出し、動作モードに切替える。そして、中央処理装置9は、レーザカメラ5や溶接ロボットRへの指令信号を出力装置13に出力する。
【0037】
レーザカメラ5は、出力装置13からの指令を受信すると、レーザダイオード5aを起動してレーザ光5eを溶接対象物6,7の重合部Aにレーザ溶接の進行前方位置から照射し、未だレーザ溶接されていない溶接対象物6,7の重合部Aでの隙間、すなわち計測ギャップ量G1を監視する状態を整える。一方、溶接ロボットRは、出力装置13からの指令を受信すると、予めティチングされた記憶データに基いて溶接トーチ4を溶接開始位置に位置決めし、ティチング内容に基いて溶接を開始する(図3のステップS1)。
【0038】
溶接が開始されて溶接トーチ4がX方向に移動する際に、レーザカメラ5は、溶接トーチ4が進行する前方位置で溶接対象物6,7の重合部Aにギャップ(隙間)が発生していないかどうかを監視し、その結果をサブメモリ11に出力させる。すなわち、レーザカメラ5は、溶接対象物6,7の重合部Aからの反射光を受光すると、その重合部Aでの反射光を集光レンズ5cで集光し、これを電気信号に変換して画像表示部5dに表示する。画像表示部5dには、重ね合せた溶接対象物6,7の板厚を示す稜線6a,7aが表示され、このデータ(計測データC)をサブメモリ11に出力する。一方、サブメモリ11では、レーザカメラ5からのデータ(計測データC)を一時的に記憶する(図3のステップS2)。
【0039】
中央処理装置9は、メインメモリ10から読み出した制御プログラムに基いて、ファイル装置14に記憶されている一方の溶接対象物6の板厚寸法t、及び図4(a)に示すテーブルデータDを読み出し、かつサブメモリ11に記憶されているレーザカメラ5からの計測データCを読み出す。そして、中央処理装置9は、サブメモリ11から読み出した計測データCから一方の溶接対象物6の板厚寸法tを差し引いて計測ギャップ量G1を算出し、その算出した計測ギャップ量G1と図4(a)に示すテーブルデータDに設定されている設定ギャップGとを比較して、計測ギャップ量G1に対応するオフセット量yを割り出す。
【0040】
中央処理装置9は、算出した計測ギャップ量G1が設定ギャップ量Gである0.5mm以下である場合には、溶接対象物6,7の重合部Aに形成される計測ギャップ量G1が製造公差の範囲内であるとして、オフセット量yを「0」に設定する(図3のステップS3;イエス(YES))。
【0041】
溶接ロボットRは、出力装置13を通して中央処理装置9からオフセット量yが「0」である旨の信号を受信すると、予め教示されているティチングの内容に基いて溶接を行う(図3のステップS4)。すなわち、溶接ロボットRは図5に示すように、上下に重ねられた溶接対象物6,7の重合部Aに隙間がない(上記例では隙間が0.5mm以下)場合には、溶接トーチ4からのレーザビーム4aが上層の溶接対象物6の端部角部の隅肉溶接位置y1に照射されるように上述した照射位置制御手段で溶接トーチ4の位置制御を行い、溶接トーチ4からレーザビーム4aを飛ばして隅肉溶接を行う。溶接トーチ4をX方向に移動させ上記動作を繰返して行い溶接処理を進行させる(図3のステップS4)。
【0042】
一方、中央処理装置9は、上記レーザカメラ5からの計測データCから溶接対象物6の板厚tを差し引いた差分が計測ギャップ量G1の0.5mmより大きい場合には、2つの溶接対象物6,7の重合部Aに製造公差を超えた隙間が形成されて溶接対象物6,7間が離れていると判断し、上記算出した計測ギャップ量G1と図4(a)のデータファイルDの設定ギャップGとを比較して、オフセット量yを設定する(図3のステップS3;ノー(NO)、ステップS5)。
【0043】
そして、中央処理装置9は、ファイル装置14に記憶されている図4(a)に示すテーブルデータDに基いて、上記計測ギャップ量G1に対応するオフセット量yを決定するための演算を行い、その結果を出力装置13に出力する。また、中央処理装置9から出力装置13には、レーザビームの出力,溶接速度を変更する抑制指令が出力される。ここに、オフセット量yは、上層の溶接対象物6側での隅肉溶接位置y1に対する内側への距離である。
【0044】
中央処理装置9から出力装置13にオフセット量yが出力されると、ガルバノメータ8bは図6に示すように、上記オフセット量yに応じてウインドウ8を水平な回転軸8aの周りに回転させる。これにより、図9(A)に示すように溶接トーチ4からのレーザ光4aの光路が偏光されて、オフセット量yに対応してレーザ光4aの照射位置が溶接対象物6の端部角部の隅肉溶接位置y1から内側への距離が変更され、上記隅肉溶接位置y1からオフセットさせた領域(オフセット位置y2)にまでレーザビーム照射による溶融範囲を拡大することとなる(図3のステップS6)。
【0045】
溶接ロボットは、中央処理装置9から出力装置13を介して出力される、レーザビームの出力増加指令,溶接速度の抑制指令に基いて、溶接に要する総エネルギ量を増大して溶接対象物6,7の端部から距離が変更された領域(オフセット位置y2)まで溶融させる。
【0046】
この場合、図9(B)及び(C)に示すように、溶接トーチ4からのレーザ光4aは、溶接対象物6の隅肉溶接位置y1から内側にオフセットされた位置y2までの範囲を溶融させるため、隅肉溶接位置y1における溶融量と比較して溶融量が増加する。このため図9(D)に示すように、この溶融物20cにより溶接対象物6,7間に形成された隙間Sが塞がれて溶接対象物6,7間が完全に隙間なく溶接される。これによりオフセットさせた溶接が完了する(ステップS7)。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載の発明は、重ね合わされた溶接対象物間の重合部をレーザビームの照射によりレーザ溶接するレーザ溶接方法において、前記 溶接対象物間に形成されるギャップ量を計測し、該計測したギャップ量に対応して、レーザビームの照射位置を溶接対象物の隅肉溶接位置より内側へ変更するという構成を採っているため、溶接対象物間のギャップ量に対応して溶接対象物の溶融量が増減することとなり、溶接対象物間の隙間に溶融物を完全に埋めこんで溶接対象物間の重合部を溶接することができ、溶接品質を向上させることができる。
【0048】
請求項2に記載の発明は、隅肉溶接位置から内側へ変更(オフセット)させた領域にまでレーザビーム照射による溶融範囲を拡大するという構成を採っているため、充分な溶融量を確保して、隙間が生じた溶接対象物間の重合部を確実に溶接することができる。
【0049】
請求項3に記載の発明は、溶融範囲を拡大して溶接対象物を溶融させて、これを溶接対象物間の隙間に埋設するという構成を採っているため、溶接対象物間の隙間を完全に埋め込むに必要な溶融量を確保することができる。
【0050】
請求項4に記載の発明は、レーザ溶接の進行前方位置において、前記ギャップ量を、前記溶接対象物間の板厚方向での隙間寸法として計測するという構成を採っているため、リアルタイムでギャップ量を正確に計測することができる。
【0051】
請求項5に記載の発明は、ギャップ量に基いて変更した距離に対応して、レーザビームの出力,溶接速度を変更するという構成を採っているため、ギャップ量に対応してレーザビームの出力,溶接速度がリアルタイムで変更することができる。
【0052】
請求項6に記載の発明は、重ね合わされた溶接対象物間の重合部をレーザビームの照射によりレーザ溶接するレーザ溶接装置において、溶接対象物間に形成されるギャップ量を計測する計測手段と、計測手段が計測したギャップ量に対応して、隅肉溶接位置に対するレーザビームの照射位置の距離を変更する照射制御手段とを有するという構成を採っているため、溶接対象物間のギャップ量に対応して溶接対象物の溶融量が増減することとなり、溶接対象物間の隙間に溶融物を完全に埋めこんで溶接対象物間の重合部を溶接することができ、溶接品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るレーザ溶接装置における溶接状態と、レーザ光の照射位置制御手段の構成とを示すブロック図である。
【図2】本発明において、溶接位置をオフセットさせて溶接を行う場合を示すブロック図である。
【図3】本発明に係るレーザ溶接装置を用いて溶接を行う処理を示すフローチャートである。
【図4】(a)は、ギャップ量とオフセット量との一例を示すテーブルデータを示す図、(b)は各寸法を説明する図である。
【図5】本発明において、オフセットさせずに溶接を行う状態を示す斜視図である。
【図6】本発明において、オフセットさせて溶接を行う状態を示す斜視図である。
【図7】本発明に用いた溶接ロボットにおける溶接トーチとレーザカメラとの関係を示す斜視図である。
【図8】本発明に用いた計測手段としてのレーザカメラの主要な構成を示す斜視図である。
【図9】本発明において、オフセットさせて溶接を行う状態を工程順に示す断面図である。
【図10】従来例における溶接状態を工程順に示す断面図である。
【符号の説明】
2 移動体
4 溶接トーチ
5 レーザカメラ
6,7 溶接対象物
8 ウインドウ
9 中央処理装置
10 メインメモリ
11 サブメモリ
12 入力装置
13 出力装置
14 ファイル装置
Claims (5)
- 重ね合わされた溶接対象物間の重合部をレーザビームの照射によりレーザ溶接するレーザ溶接方法において、
前記溶接対象物間に形成されるギャップ量を計測し、
該計測したギャップ量に対応して、レーザビームの照射位置を溶接対象物の隅肉溶接位置より内側へ変更させ、
前記隅肉溶接位置から内側に変更させた領域にまでレーザビーム照射による溶融範囲を拡大し、
前記溶融範囲の溶接対象物を溶融させて、これを溶接対象物間の隙間に埋設することを特徴とするレーザ溶接方法。 - 請求項1に記載のレーザ溶接方法において、
レーザ溶接の進行前方位置において、前記ギャップ量を、前記溶接対象物間の板厚方向での隙間寸法として計測することを特徴とするレーザ溶接方法。 - 請求項1に記載のレーザ溶接方法において、
前記ギャップ量に基いて変更した前記距離に対応して、レーザビームの出力,溶接速度を変更することを特徴とするレーザ溶接方法。 - 重ね合わされた溶接対象物間の重合部をレーザビームの照射によりレーザ溶接するレーザ溶接装置において、
前記溶接対象物間に形成されるギャップ量を前記溶接対象物間の板厚方向での隙間寸法として計測するものであること計測する計測手段と、
前記計測手段が計測したギャップ量に対応して、レーザビームの照射位置を溶接対象物の隅肉溶接位置より内側へ変更し、前記隅肉溶接位置から内側へ変更させた領域にまでレーザビーム照射による溶融範囲を拡大する照射位置制御手段とを有することを特徴とするレーザ溶接装置。 - 請求項4に記載のレーザ溶接装置において、
前記照射位置制御手段は、前記ギャップ量に基いて変更した前記距離に対応して、レーザビームの出力,溶接速度を変更する機能を備えたものであることを特徴とするレーザ溶接装置。
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