JP4189068B2 - 低級炭化水素ガスからジメチルエーテルを製造する方法 - Google Patents

低級炭化水素ガスからジメチルエーテルを製造する方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭酸ガスを含む低級炭化水素ガスからジメチルエーテルを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
低級炭化水素ガスを、炭酸ガス存在下、限定量のスチームでリフォーミング反応(合成ガス生成反応)させて、水素と一酸化炭素からなる合成ガスに転換し、この合成ガスからジメチルエーテルを製造する方法は知られている。このような方法においては、そのリフォーミング工程で炭素析出による触媒被毒の問題が生じる。このような方法に関連する従来技術を示すと、以下の通りである。
▲1▼特開昭60−235889、US4640766
これらの文献には、リフォーミング工程でNi含有触媒を使用しており、触媒上への炭素析出の問題を解決できる技術の開示はない。
▲2▼US5621155、US5620670
これらの文献に示された方法は、炭酸ガスの炭化水素への転換をねらったものであるが、合成ガスの生産効率を上げようとすると、やはりリフォーミング工程で炭素析出に遭遇することになる。しかし、これらの方法も従来のNi含有触媒を使用しており、炭素析出防止に関する技術開示はない。
【0003】
前記のように、炭酸ガスを含む低級炭化水素ガスをリフォーミング反応させて合成ガスとし、これをジメチルエーテル合成反応によりジメチルエーテルを製造する方法は知られている。この方法の課題は、高いエネルギー消費と設備コストを要する合成ガス製造工程での生産効率を上げることにある。合成ガス製造工程での生産効率を上げることは、処理する低級炭化水素ガス、炭酸ガス及びスチームの合計量に対して生産される合成ガスの量を上げることに他ならない。それには、低級炭化水素ガスのリフォーミング反応工程で、炭酸ガスが一酸化炭素に変換される効率(炭素変換効率)が最大となる炭酸ガス濃度で、さらにジメチルエーテル合成に適する合成ガスを直接製造するのに必要とする最低限のスチーム添加量で、リフォーミング反応を行うことが必要となる。
しかしながら、このような方法の場合、原料ガスである低級炭化水素ガス中に混入させる炭酸ガスとスチームの量を低濃度範囲に調節すると、その低級炭化水素ガスのリフォーミング工程において触媒上に著量の炭素析出が起り、触媒が短時間で失活してしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、合成ガス生成工程とジメチルエーテル合成反応工程を含む低級炭化水素からのジメチルエーテルの製造方法において、高い炭素利用率でかつ触媒被毒の原因となる炭素析出を防止することにより、ジメチルエーテルを工業的に有利に製造する方法を提供することをその課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、炭酸ガスを含む低級炭化水素ガスをジメチルエーテルへ転換する方法において、
(i)炭酸ガスを30〜70モル%含む原料低級炭化水素ガスに、水及び又はスチームを添加して、各成分が下記式を満たす混合ガスを調製する工程、
0.5≦([CO2]+[H2O]/[C]≦2.5
(式中、[CO2]はCO2のモル数、[H2O]はH2Oのモル数及び[C]は低級炭化水素ガス中に含まれる炭素のモル数を示す)
(ii)該混合ガス中に含まれる低級炭化水素ガスを、主に酸化マグネシウムからなる担体にロジウム及び/又はルテニウムの触媒金属を担持させた触媒であって、該触媒の比表面積が5m2/g以下で、かつ触媒金属の担持量が金属原子基準で担体金属酸化物に対して0.10〜5000重量ppmである触媒に、10〜75気圧の圧力、600〜1000℃の温度で接触させて、水素/一酸化炭素のモル比が0.5〜1.5の合成ガスを生成させる工程、
(iii)該合成ガスを、メタノール合成活性、脱水反応性及びCOシフト反応活性を有する1種又は複数種の触媒の存在下で反応させてジメチルエーテルを含む反応生成物を生成させる工程、
(iv)該反応生成物からジメチルエーテルを分離する工程、
からなることを特徴とするジメチルエーテルの製造方法が提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、炭酸ガスを含む原料低級状炭化水素ガスを水素と一酸化炭素へ転換するリフォーミング反応が、より改善された炭素変換効率で促進されるように、そのリフォーミング反応工程において、炭酸ガスの十分な利用を図りつつ、ジメチルエーテル合成に必要とする水素/一酸化炭素比の合成ガスを生産する。ジメチルエーテル合成では、合成ガスの組成はH2/CO比=1が理想的であり、実際には、0.5〜1.5近辺に調整する必要がある。
軽質炭化水素をジメチルエーテル合成に要求される組成の合成ガスに転換させる技術としては、下記式(1)で示される軽質炭化水素をCO2リフォーミングする方法が適している。
CH4+CO2=2H2+2CO (1)
この反応では、化学量論的にはH2/CO=1.0のガスが製造されるが、実際のリフォーミング反応条件下では下記式、(2)に示す逆シフト反応が起こる。
2+CO2=H2O+CO (2)
このため、生成したH2が未反応CO2と反応し、COとH2Oが生成するため合成ガス組成としては、H2/CO=1.0よりもCOの過剰のガスが生成する。従って、H2/CO比を任意に0.5〜1.5の範囲にコントロールするためには、原料にH2Oを添加し下記式(3)に示すスチームリフォーミング反応を組み合わせることが必要となる。
CH4+H20=3H2+CO (3)
従って、前記式(1)の炭酸ガスリフォーミングと前記式(3)のスチームリフォーミングの両反応を同時に進行させ、水素/一酸化炭素のモル比が0.5〜1.5の合成ガスを生成させるのが本発明の基本反応原理である。ここで解決しなければならない課題は、高いエネルギー消費と設備コストを要する合成ガス生成工程での生産効率を上げることである。この場合、合成ガス生成工程での生産効率を上げることは下記式で示される、処理する低級炭化水素ガス、炭酸ガス及びスチームの合計量に対する合成ガスの量の割合(合成ガス生産効率)を上げることである。
【0007】
R(CO+H2)={([CO]+[H2]/([C]+[CO2]+[H2O])}×100 (4)
R(CO+H2):合成ガス生産効率(モル%)
[CO]:COのモル数
[H2]:H2のモル数
[C]:低級炭化水素ガス中に含まれる炭素のモル数
[CO2]:CO2のモル数
[H2O]:スチームのモル数
【0008】
合成ガスの生産効率R(CO+H2)を向上させるには、下記式(5)で示される、前記反応式(1)のリフォーミング反応により炭酸ガスとメタンから生成される一酸化炭素の割合(炭素変換効率)が最大化される炭酸ガス濃度で、さらにジメチルエーテルの合成に適する組成の合成ガスを製造するのに必要とする最低限のスチーム添加量で、リフォーミング反応を行う必要がある。要するに、リフォーマーへの供給原料中の低級炭化水素ガスに対する炭酸ガスと水蒸気及び水の供給量を、できるだけ反応量論近くまでに減少させてリフォーミング反応するのがその効率を最大化することになる。しかし、前記式(1)、(3)の反応の両方とも大きな吸熱の可逆反応であり、反応の進行程度は反応条件(温度と圧力)に大きく依存し、高温で低圧ほど、合成ガスの生産に好都合となる。
【0009】
R(CO)={([CO]/([C]+[CO2])}×100 (5)
R(CO):炭素変換効率(モル%)
[CO]:COのモル数
[C]:低級炭化水素ガスに含まれる炭素のモル数
[CO2]:CO2のモル数
【0010】
現在工業的に採用されている実際のリフォーマーは、600〜1000℃温度範囲で、スチームが大過剰(原料炭化水素の2〜5倍モル)で運転されている。低い[H2O]/[C]比率はプロセス系内のスチームをより少なくでき、よりよい熱経済性を与えるが、[H2O]/[C]比率を引き下げると触媒層へのカーボン析出が激しく、差圧増大による運転停止の危険性があり、スチームリフォーミングでの限界[H2O]/[C]比率は約1.5といわれている。また、このカーボン析出の限界領域での運転を避けるには、原料中の炭酸ガス濃度が高くなるほど[H2O]/[C]比を高くする必要がある(“Studies inSurface Science and Catalysis 81,Natural Gas Conversion II”,ed. by H.E.Curry−Hyde,R.F.Howe,p.25(1994),ELSEVIER)。
【0011】
本発明で適用する炭酸ガスとスチームの限定された濃度領域、すなわち炭酸ガスを30から70モル%含む低級炭化水素ガスに、水及び/又はスチームを添加し、([CO2]+[H2O])/[C]が0.5〜2.5の範囲に調整された原料ガスを既存のNi系リフォーミング触媒で処理すると、触媒層に多量のカーボンが析出して比較的短時間に運転不能となる。
この深刻な問題は、本発明による特定の触媒の使用により解決することができる。
【0012】
本発明で用いる触媒は、主に酸化マグネシウムからなる担体にロジウム及び/又はルテニウムの触媒金属を担持させた触媒であって、該触媒の比表面積が5m2/g以下で、かつ触媒金属の担持量が金属原子基準で担体金属酸化物に対して0.10〜5000重量ppmである触媒である。
【0013】
本発明においては、原料低級炭化水素ガス中の炭酸ガスの濃度を30〜70モル%、好ましくは40〜60モル%に規定する。低級炭化水素ガス中の炭酸ガスが前記範囲外では、前記(5)式の炭素利用率をモル基準で50%以上に上げることができない。
【0014】
水及び/又はスチーム添加量は、できるだけ少ない方がエネルギー効率を高くでき好ましいが、合成ガス中の水素/一酸化炭素のモル比を0.5〜1.5の範囲に調整するのに必要な量としては、該低級炭化水素ガスがCH4である場合は、炭素原子に対してモル比で0.4〜2.0の割合で添加する必要がある。また、合成ガスの原料組成を、その([CO2]+[H2O])/[C]比が0.5〜2.5、好ましくは1〜2の範囲になるように調整することにより、該合成ガス生成工程の合成ガス生産効率を80%以上という高いレベルに保持できる。さらに、([CO2]+[H2O])/[C]比が1〜2の混合ガスを用いると効率がより高められる。
【0015】
本発明における出発原料は、低級炭化水素ガス又は低級炭化水素ガスのほかに炭酸ガスを含むものである。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン等の炭素数1〜4の低級炭化水素が用いられ、特に、メタンを主成分とし、それ以外にエタン、プロパン、ブタン、イソブタン等の低級炭化水素を含むものが用いられる。本発明では、原料ガスとしては、天然ガス、特に炭酸ガスを含む天然ガスが好ましい。
供給原料ガス中に過剰な炭酸ガスが含まれている場合に、その濃度を調整する方法としては、操作圧力10〜80気圧、より好ましくは操作圧力20〜50気圧の加圧蒸留塔を用い、その塔底より主に炭酸ガスを分離し、塔頂より所定の炭酸ガス濃度の原料ガスを得る方法が有効である。操作圧力を上記範囲より低くすると、蒸留塔内に炭酸ガスの凝固点以下の部分が生じ、炭酸ガスの固体が析出して蒸留不能となる。また、塔頂温度を−60℃以上の操作条件にすると、炭酸ガスの固体析出なく加圧蒸留ができる。一方、圧力が上記範囲を超えると設備等のコストが高くなり不経済となる。炭酸ガスが多量に含まれる高圧の天然ガスを本発明の原料とする場合には、この加圧蒸留により回収される余剰の天然ガスは高圧状態を保持しているので、そのま井戸元に戻すことも可能である。
【0016】
本発明の合成ガス生成工程で用いる触媒(以下、本発明触媒とも言う)は、特定性状の担体金属酸化物に、ロジウム(Rh)及びルテニウム(Ru)の中から選択された少なくとも1種の触媒金属を担持させた触媒である。この場合、触媒金属は、金属状態で担持されていてもよいし、酸化物等の金属化合物の状態で担持されていてもよい。
本発明触媒は炭酸ガスを含む低級炭化水素ガスのリフォーミング反応に必要な活性は保有し、且つ副反応である炭素析出反応を著しく抑制する作用を有することを特徴とする。
本発明で用いる炭素析出反応を著しく抑制する触媒は、
(i)主に酸化マグネシウムからなる担体であること、
(ii)その触媒の比表面積が5m2/g以下であること、
(iii)該金属触媒の担持量が該担持金属酸化物に対して0.1〜5000重量ppmであること、
を特徴とする触媒である。
このような炭素析出活性の著しく抑制された触媒は、本発明者らによって初めて見出されたものである。担体としては、酸化マグネシウム(MgO)の単一金属酸化物の他、MgO/CaO、MgO/BaO、MgO/ZnO、MgO/Al23、MgO/ZrO2、MgO/La23等の複合金属酸化物及び混合物が挙げられる。
本発明で用いる比表面積が5m2/g以下の触媒は、触媒金属の担持前に担体金属酸化物を300〜1300℃、好ましくは650〜1200℃で焼成することによって得ることができる。焼成温度の上限値は特に規定されないが、通常、1500℃以下、好ましくは1300℃以下である。この場合、その焼成温度と焼成時間によって、得られる触媒又は担体金属酸化物の比表面積をコントロールすることができる。本発明触媒又は本発明で用いる担体の好ましい比表面積は5m2/g以下である。その比表面積の下限値は、0.1m2/g程度である。担体金属酸化物に対する触媒金属の担持量は、金属換算量で、担体金属酸化物に対し、0.1重量ppm以上で、その上限値は5000重量ppm程度である。
【0017】
本発明の触媒において、その触媒の比表面積と担体金属酸化物の比表面積とは実質的にはほぼ同じであり、本明細書中では、その触媒の比表面積と担体金属酸化物の比表面積とは同義として用いた。
なお、本明細書中で触媒又は担体金属酸化物に関して言う比表面積は「BET」法により、温度15℃で測定されたものである。その測定装置としては、柴田化学社製の「SA−100」が用いられた。
【0018】
本発明で用いるこのような触媒は、その結晶化度が高いためにその触媒の比表面積が小さく、かつその触媒金属の担持量が非常に少量であるため、炭素析出活性の著しく抑制されたものであり、且つ、原料低級炭化水素ガスに対する炭酸ガス及びスチームによる充分なリフォーミング活性を有するものである。
本発明で用いる触媒は、常法に従って調製することができる。本発明触媒の1つの好ましい調製法は、含浸法である。この含浸法により本発明触媒を調製するには、水中に分散させた担体金属酸化物に触媒金属塩又はその水溶液を添加、混合した後、その担体金属酸化物を水溶液から分離し、次いで乾燥し、焼成する。また、担体金属酸化物を排気後、細孔容積分の金属塩溶液を少量ずつ加え、担体表面を均一に濡れた状態にした後、乾燥、焼成する方法(incipient−wetness法)も有効である。これらの方法の場合、その触媒金属塩としては、水溶性塩が用いられる。このような水溶性塩には、硝酸塩、塩化物等の無機酸塩や、酢酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩が包含される。また、金属のアセチルアセトナト塩等をアセトン等の有機溶媒に溶解し、担体金属酸化物に含浸させてもよい。触媒金属塩を水溶液として含浸させた金属金属酸化物の乾燥温度は常温〜200℃、好ましくは常温〜150℃である。本発明触媒を調製する場合、その担体である金属酸化物は、市販の金属酸化物や、市販の金属水酸化物を焼成して得られる金属酸化物であることができる。この金属酸化物の純度は97重量%以上、好ましくは98重量%以上であるが、炭素折出活性を高める成分や高温、還元ガス雰囲気下で分解する成分、例えば鉄、ニッケル等の金属や二酸化ケイ素(SiO2)等の混入は好ましくなく、それらの不純物は、金属酸化物中、1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下にするのがよい。
【0019】
本発明触媒の好ましい調製方法を示すと、以下の通りである。
先ず、第1工程において、比表面積が5m2/g以下の担体MgOを得る。工業触媒においては、ペレット状やリング状等の形状に成形した担体が好ましく用いられるが、このような形状のMgO成形体を用いる場合、そのMgOの比表面積が前記範囲より大きくなり、結晶化度が低くなると、触媒金属の担持に際してそのMgO成形体を水溶液中に浸した場合、そのMgO成形体に割れを生じるという問題がある。また、工業触媒の場合、通常、30〜40kg/個の半径方向の圧縮強度を有する必要があるが、比表面積が前記範囲より大きくなり、その結晶化度が低いMgO成形体ではこのような強度を得ることが困難になる。
さらに、担体MgOの結晶化度が低くなると、触媒金属の担持量が多くなり、また、触媒の酸強度が強くなりすぎて、触媒表面の酸的特性が不満足のものとなる。一方、担体MgOの結晶化度が大きくなりすぎると、触媒金属の担持量が少なくなりすぎて、十分な活性を有する触媒が得られなくなる。この点から、担体MgOの比表面積は0.01m2/g以上にするのが好ましい。
【0020】
前記範囲の比表面積を有する担体MgOを得る1つの方法としては、水酸化マグネシウムを1000〜1500℃、好ましくは1100〜1300℃で焼成することにより製造することができる他、炭酸マグネシウム又は塩基性炭酸マグネシウムを1000〜1500℃、好ましくは1100〜1300℃で焼成することにより製造することができる。また、1000℃以下の低い温度で焼成する場合も、焼成の際に副生する水の分圧を高くしてMgOの結晶化促進し、MgOの比表面積を5m2/g以下に制御することによって所望の担体MgOを得ることができる。さらに、市販のMgO等のその比表面積が前記範囲より小さいものは、そのMgOを1000〜1500℃、好ましくは1100〜1300℃で焼成することにより、所望の担体MgOを得ることができる。
さらに、低比表面積の担体MgOを得る場合、1000℃以下の温度でその焼成系に高い水の分圧を形成することによりそのMgOの結晶化を促進させることができるが、この場合、水の分圧に代えて、CO2のようなガス(気体)の高い分圧を形成することによっても、MgOの結晶化を促進させることができる。
前記焼成に際しての雰囲気としては、通常、空気雰囲気が使用されるが、他のガス、例えば、窒素ガス等の不活性ガスであってもよい。焼成時間は1時間以上、好ましくは3時間以上であり、その上限値は特に制約されないが、通常、72時間程度である。また、焼成のみに限らず、このような低比表面積のMgOを得ることができれば、いかなる方法を採用してもよい。
【0021】
本発明による担体MgOは、高い結晶化度を有し、そのMgOの表面は安定化され、強酸点を極力抑えたMgOとなる。そして、このような安定化されたMgOでは、酸強度(Ho)が2以上の酸点のみを有し、その量が0.03mmol/gより少ないMgOが得られる。従って、1000℃以上の高温焼成された高結晶化度のMgOを触媒金属担持用担体として用いることにより、強酸点の発現を極力抑え、炭素析出反応が抑制された安定した活性を有する触媒を得ることが可能となる。本発明で用いるMgOの比表面積は0.01〜5m2/g、好ましくは0.05〜3m2/gである。担体MgOの比表面積が前記範囲より高くなると、触媒金属の担持量が多くなり、また、触媒の酸強度が強くなりすぎて、触媒表面の酸的特性が不満足のものとなる。一方、担体MgOの比表面積が前記範囲より小さくなると、触媒金属の担持量が少なくなりすぎて、十分な活性を有する触媒が得られなくなる。
【0022】
一般に、金属酸化物の表面積とその結晶子サイズは、ほぼ反比例の関係にあることが良く知られている。従って、本発明で規定しているMgOの比表面積は、その粒子サイズにより規定することも可能である。例えば、比表面積が5m2/g以下のMgOの結晶子サイズは、粒子を球形又は立方体の均一粒子と仮定することにより、MgOの密度、比表面積から算出することができる。この方法は、文献「触媒講座3(固体触媒のキャラクタリゼーション)」(1985年出版、講談社サイエンティフィク、触媒学会編、P203)に記載されている。例えば、1010℃で焼成した比表面積5m2/gのMgOの結晶子サイズは、3500Åとなる。
また、MgOの結晶子サイズは、X線回折法を用いて測定することもできる。本明細書中の比表面積が5m2/g以下のMgOの結晶子サイズを、X線回折法を用いた「ラインブロードニング」法により測定すると、その値は、900Å以上となった。測定装置としては、島津製作所のX線回折装置「XRD−6000」が用いられた。標準物質として、金属Siを用いて測定を行うと、MgOの結晶子サイズは、MgOの2θ=42.7°の回折ピークとSiのMgOの2θ=28.4°の回折ピークの半値幅から算出した。X線回折測定における測定条件を以下に示す。
X線管球:Cu(λ=1.5406Å)
管電圧:40.0kV、管電流:30.0mA
測定範囲:40.0〜80.0°
ステップ幅:0.02°
計数時間:0.6秒
スリット:DS(発散スリット)=0.5°、SS(散乱防止)=0.5°、RS(受光)=0.15mm
標準物質:金属Si
このラインブロードニング法の詳細は、文献「実験化学講座4(固体物理化学)」(1956年出版、丸善、日本化学会編、P238〜P250)に記載されている。
【0023】
前記のようにして得た担体酸化マグネシウムに対しては、第2工程(触媒金属担持工程)において、触媒金属を含む水溶液を用い、平衡吸着法にてpH8以上のアルカリ領域でその触媒水溶液を担持させる。本発明では、触媒金属としては、ロジウム及び/又はルテニウムが用いられる。
前記担持工程では、触媒金属は水溶液状で担体酸化マグネシウムに担持されるが、この場合の触媒金属は水溶性化合物の形態で用いられる。このようなものとしては、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩(酢酸塩等)、錯塩(キレート)等が挙げられる。
担体MgOに対する触媒金属水溶液の担持には、平衡吸着法が採用される。この方法は、担体を触媒水溶液中に浸漬し、平衡条件下で水溶液中の触媒金属を担体に吸着担持させる方法である。この場合、触媒金属を担体に担持させる時間(浸漬時間)は1時間以上、好ましくは3時間以上であり、その上限は、特に制約されないが、通常、48時間程度である。この平衡吸着法の詳細は、文献「触媒調製化学」(1980年出版、講談社サイエンティフィク、P49)に記載されている。
【0024】
前記のようにして触媒金属を担体MgOに担持させる場合、その触媒水溶液のpHは8以上、好ましくは8.5以上のアルカリ領域とする。その上限値は、特に制約されないが、通常、pH13程度である。その水溶液のpH調節には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ性物質が用いられる。
本発明においては、担体MgOに対する触媒金属の担持量は、触媒金属換算量で、担体MgOに対して10〜5000wtppm、好ましくは100〜2000wtppmの割合に規定する。触媒金属担持量が前記範囲より多くなると、触媒コストが高くなるとともに、触媒の炭素析出活性が高くなり、触媒の使用に際し、炭素析出量が多くなる。一方、前記範囲より少ないと、十分な触媒活性が得られなくなる。触媒金属担持量の調節は、担体MgOに対して触媒金属水溶液を担持する際の条件、例えば、水溶液中の触媒金属濃度や、担体MgOの表面積等によって行うことができる。
【0025】
前記のようにして、担体MgOに触媒金属を水溶液状で担持させることによって得られた触媒金属担持MgOは、第3工程(乾燥工程)において、35℃以下の温度で6時間以上保持して乾燥させる。好ましい乾燥温度は10〜25℃である。乾燥時間は6時間以上であればよく、好ましくは12時間以上であり、その上限値は、特に制約されないが、通常、約72時間程度である。このような乾燥処理により、MgOからの急激な水分の蒸発が回避され、その結果、触媒金属は凝集することなく担体MgOに高分散状態で担持される。乾燥温度や乾燥時間が前記範囲を逸脱すると、高分散性の触媒金属を含む触媒を得ることができなくなる。
【0026】
前記のようにして得られた乾燥物は、これを第4工程において、200℃以上の高温で焼成(2次焼成)する。この場合、焼成雰囲気としては、通常、空気が用いられるが、他のガス(不活性ガス等)であってもよい。焼成温度は200℃以上であり、好ましくは500℃以上であり、その上限値は、特に制約されないが、通常、1100℃程度である。好ましい焼成時間は2時間以上であり、より好ましくは3時間以上であり、その上限値は、特に制約されないが、通常24時間程度である。この2次焼成により、触媒金属の熱安定性が高められ、熱安定性の良い触媒を得ることができる。
【0027】
触媒コストの低減化を図るには、担体に担持させる触媒金属の担持量をできるだけ低減化させると同時に、十分な反応活性を発現するように、担体に担持された触媒金属粒子の凝集化をできるだけ抑制して微粒子化することが必要となる。本発明者らの研究によれば、担体MgOの結晶化を高めてその比表面積を5m2/g以下に保持するとともに、その担体MgOに対する触媒金属の担持量を10〜5000wtppmと極く少量に保持し、かつその触媒金属を担体MgOに担持させるに際し、平衡吸着法により触媒金属を平衡条件下で長時間をかけてゆっくりと水溶液状で担持させ、その担持後においては、35℃以下の温度でゆっくりと乾燥するときには、触媒金属は均一に担持され、炭化水素改質用触媒として十分な活性を有する安価な触媒が得られることが見出された。
【0028】
前記した触媒の調製方法においては、種々の変更が可能である。例えば、担体酸化マグネシウムに触媒金属を担持させる方法としては、平衡吸着法に限らず、他の方法、例えば、慣用の含浸法や、浸漬法、イオン交換法等を用いることができる。また、触媒金属を含む水溶液を担体酸化マグネシウムに担持させた後、乾燥する場合には、場合によっては35〜200℃程度の加温条件を採用するし、また、その乾燥物の焼成は、場合によっては、200〜800℃程度の温度で行うことも可能である。
【0029】
本発明により触媒を調製する場合、その触媒担体形成用酸化マグネシウムは、酸化マグネシウムに成形助剤を配合して形成した酸化マグネシウム成形体として用いるのが好ましい。この成形助剤を用いることによって、成形時の作業性が向上すると共に得られた成形体の強度は向上する。この場合の成形助剤としては、(i)炭素(カーボン)、(ii)炭素数12〜22の脂肪酸又はそのマグネシウム塩、(iii)カルボキシルメチルセルロース(CMC)又はそのマグネシウム塩及び(iv)ポリビニルアルコールの中から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いるのが好ましい。これらの成形助剤は、通常、粉末状で用いられる。
前記カーボンとしては、カーボンブラックやグラファイト、活性炭等が用いられる。前記脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
【0030】
前記触媒担体用酸化マグネシウム成形体を製造するには、粉末状の酸化マグネシウムに成形助剤を添加し、均一に混合した後、この混合物を所要形状に成形する。粉末状酸化マグネシウムの平均粒径は1〜1000μm、好ましくは10〜100μmである。一方、成形助剤の平均粒径は1〜1000μm、好ましくは10〜100μmである。酸化マグネシウムに添加する成形助剤の量は、酸化マグネシウムと成形助剤の合計量に対し、0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3.0重量%である。
前記酸化マグネシウムと成形助剤との混合物を形成する場合、その成形条件としては、通常、常温で3000〜100kg/cm2G、好ましくは2000〜200kg/cm2の圧力が採用される。成形方法としては、プレス成形法が採用されるが、その他、打錠成形法等も採用することができる。成形体の形状は、特に制約されず、通常の触媒に採用されている形状であればよい。このような形状には、タブレット状、円柱状、リング状、中空円筒状等が包含される。その成形体の寸法は、通常、その長軸長さで、3〜30mm、好ましくは5〜25mmであるが、触媒床に応じて適宜の寸法を採用すればよい。
【0031】
本発明による前記酸化マグネシウム成形体は、焼成後の機械的強度にすぐれ、通常、30〜70kg/個の半径方向の圧縮強度を有する。
従って、このような成形体は、取扱い性の良好なもので、その焼成に際して、容易に破壊されるようなことはない。
また、この酸化マグネシウム成形体は、そのMgOの結晶化度が低いときには、所望する担体酸化マグネシウムを得るために、通常、1000℃以上の高温で一次焼成されるが、この一次焼成により、成形体中の成形助剤は酸化除去される。このようにして得られる酸化マグネシウムは、本発明触媒の調製に用いる担体酸化マグネシウムとして好適のものである。
【0032】
前記のようにして得られる本発明触媒において、その触媒金属担持量は、担体MgOに対して、10〜5000wtppm、好ましくは100〜2000wtppmであり、その比表面積は0.01〜5m2/g、好ましくは0.05〜3m2/gである。
【0033】
前記のようにして得られる本発明の触媒は、炭化水素改質用触媒として好ましい酸的性質を有する。触媒表面に強い酸点が多量に存在すると、その酸点上で副反応である炭素析出反応が促進され、炭素が析出し、この析出炭素によって触媒被毒が生じるようになる。
【0034】
本発明の触媒は、一般的には、その酸強度(Ho)は2より大きい、好ましくは3.3以上の酸点のみからなり、その含量は0.03mmol/gより少なく、好ましくは0.02mmol/g以下である。酸強度(Ho)の調節は、担体MgOを1次焼成する際の温度及び時間により行うことができる。本発明の触媒は、強酸点の発現が抑制され、炭素析出活性が大きく抑制されたものである。
【0035】
なお、本明細書で言う酸強度(Ho)は、触媒が塩基性指示薬(B-)にプロトンを与える能力として表示され、次式で表される。
Ho=pKa(=pKB - H +)+log[B]/[B-+] (1)
前記式中、KB - H +は、塩基性指示薬B-と酸性点H+Bとを反応させて、塩基性指示薬の酸性体(B-+)を生成させる反応におけるその酸性体B-+の解離定数を示す。[B]/[B-+]は、B-とB-+の濃度比を示す。
強酸点ほど、pKB - H +の小さな指示薬をより多くプロトン化するのでそのHo値は小さくなる。
【0036】
本明細書における酸強度は以下のようにして測定されたものである。
(酸強度の測定方法)
本明細書における酸強度Ho(ハメット指数)関数は、酸強度関数で、触媒学会編「触媒実験ハンドブック」(1986年出版、講談社サイエンティフィク)、p.172に記載の「Benesi法」により測定されたものである。触媒にpKaが分かっている指示薬を添加し、変色すると、HoがそのpKaより小さい酸点があることを示す。塩基性分子であるブチルアミンを酸点に所定量吸着させ、pKaの異なる指示薬で滴定すると、ブチルアミンの量から酸点の数が、pKaの値から酸強度が測定できる。測定温度は室温である。
【0037】
本発明触媒は、粉末状、顆粒状、球形状、円柱状、円筒状等の各種の形状で用いられ、その形状は使用される触媒床の方式に応じて適宜選定される。
【0038】
本発明により合成ガスを製造するには、前記触媒の存在下において、低級炭化水素ガスと炭酸ガス及びスチームとリフォーミング反応させればよい。その反応温度は600〜1000℃、好ましくは650〜950℃である。その反応圧力は加圧であり、10〜70気圧、好ましくは15〜40気圧である。また、この反応を固定床方式で行う場合、そのガス空間速度(GHSV)は1,000〜10,000hr-1、好ましくは2,000〜8,000hr-1である。
本発明の合成ガス生成工程は、固定床方式、流動床方式、懸濁床方式、移動床方式等の各種の触媒方式で実施されるが、好ましくは固定床方式で実施される。また、反応は1段階に限らず複数段で行うこともできる。
【0039】
本発明においては、前記合成ガス生成工程で得られた合成ガスは、水素/一酸化炭素のモル比が0.5〜1.5の組成のジメチルエーテル合成用原料ガスとして用いられる。
本発明では、この合成ガスは、これを水素及び/又は炭酸ガスを分離して合成ガスの組成を調整する工程を経ずに、直接ジメチルエーテル合成反応工程に導入し得るが、このことも本発明の優位となる点である。
本発明では、前記合成ガスを、触媒の存在下で反応させてジメチルエーテルを含む反応生成物を生成させる。この場合の反応は、下記反応式で示されるように、(a)メタノール合成反応、(b)メタノール脱水反応及び(c)COシフト反応の組合せによって起る。
2H2 + CO = CH3OH (a)
2CH3OH = CH3OCH3 (b)
CO + H2O = CO2 + H2O (c)
前記反応(a)、(b)及び(c)の全体反応式は次の通りである。
3CO + 3H2 = CH3OCH3 + CO2 (d)
前記反応式(a)、(b)及び(c)からわかるように、ジメチルエーテル合成用触媒としては、前記反応(a)、(b)及び(c)を促進させる活性を有するものであればよく、従来公知の各種のものが用いられる。この場合のジメチルエーテル合成反応触媒は、単一種の触媒から構成することができる他、2種以上の複数種の触媒の組合せによって構成することができる。2種以上の触媒を組合せた触媒を示すと、例えば、前記反応(a)を促進させる第1触媒と、反応(b)及び(c)を促進させる第2触媒との組合せ、前記反応(a)及び(b)を促進させる第1触媒と、反応(c)を促進させる第2触媒との組合せ、前記反応(a)及び(c)を促進させる第1触媒と、反応(b)を促進させる第2触媒との組合せ、前記した反応(a)を促進させる第1触媒、反応(b)を促進させる第2触媒及び反応(c)を促進させる第3触媒の組合せを示すことができる。このような複数の触媒の組合せを用いる場合、それらの触媒は、それらを混合した混合触媒床として使用し得る他、各触媒を積層した多層触媒床あるいは多段触媒床として使用することができる。
ジメチルエーテル合成反応に用いられる触媒の具体例を示すと、例えば、メタノール合成反応活性を有する触媒としては、酸化銅−酸化亜鉛/酸化クロム、酸化銅−酸化亜鉛/アルミナ等がある。メタノール合成触媒は通常COシフト反応を促進させる触媒活性を有するので、COシフト触媒を兼ねることも可能である。メタノール脱水触媒としては、Al23、SiO2・Al23、固体リン酸、ThO2、TiO2、ZrO3などの金属酸化物触媒やゼオライト、層状シリケート、イオン交換樹脂等が挙げられる。COシフト触媒としては、鉄・クロム系触媒、銅・亜鉛系触媒、銅・クロム・亜鉛系触媒を、代表的な触媒系として挙げることができる。
ジメチルエーテルを合成する反応条件は、温度150〜400℃、圧力20〜70Kg/cm2Gであり、反応器の形式は、固定床方式、流動床方式、懸濁床方式、移動床方式等の各種の形式で実施される。
ジメチルエーテルを合成するための合成ガス組成は、前記反応式(d)からわかるように、H2/CO=1が理想的であり、本発明では、合成ガス生成条件をコントロールして、0.5〜1.5の近辺に調節する。
【0040】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0041】
触媒調製例1
市販の純度98.1wt%の酸化マグネシウム(MgO)の粉末に成形助剤としてカーボン3.0wt%を混合してタブレット成形した1/8インチペレットを、空気中に於いて1100℃にて3h焼成した後、含浸法で0.075wt%Rhを維持し、更に空気中に於いて900℃で焼成することによりRh担持MgO触媒を得た。この含浸体は、焼成MgOペレットをロジウム(III)アセテート塩の水溶液中に約12時間浸した後ろ過し、空気中に於いて常温にて24h乾燥、同雰囲気中900℃にで3h焼成し、Rh担持MgO触媒(比表面積0.6m2/g)とした。
【0042】
触媒調製例2
市販の純度98.1wt%の酸化マグネシウム(MgO)の粉末に成形助剤としてステアリン酸マグネシウムを2.0wt%を混合してタブレット成形した1/8インチペレットを空気中に於いて1050℃にて3h焼成した後、含浸法で0.1wt%Ruを維持し、更に空気中に於いて800℃で焼成することによりRu担持MgO触媒を得た。この含浸体は、焼成MgOペレットをルテニウム(III)アセトナト塩のメタノール溶液中に約12時間浸した後ろ過し、空気中に於いて常温にて24h乾燥、同雰囲気中800℃にで3h焼成し、Ru担持MgO触媒(表面積1.1m2/g)とした。
【0043】
触媒調製例3
市販の純度98.7wt%以上の酸化マグネシウム(MgO)の粉末に成形助剤として3.0wt%のカーボンを混合し、タブレット形成した1/8インチペレットを空気中で1060℃で3h(時間)焼成し、これを触媒担体MgO(A)として用いた。
次に、3.9wt%のRhを含むロジウム(III)アセテート水溶液に26h(時間)浸漬した。その水溶液は水酸化マグネシウム水溶液を用い、pHは9.7に調整した。このようにして、Rhを触媒担体MgO(A)に平衡吸着させた後、濾過して、Rhを水溶液状で吸着した触媒担体MgO(A)を得た。この場合のRh担持量は、Rh金属換算量で、担体MgO(A)に対して、3750wtppmである。
次に、Ruを吸着した担体MgO(A)を空気中において35℃の温度で52h乾燥した後、空気中において850℃で3h焼成し、本発明触媒(A)を得た。
この触媒(A)はRhをRh金属として担体MgOに対し3750wtppm含有するもので、その表面積は1.2m2/gであった。また、その酸点は、酸強度(Ho)が3.3以上の酸点のみからなり、その含量は0.01mmol/gであった。
【0044】
触媒調製例4
市販の純度99.9wt%以上の酸化マグネシウム(MgO)を用いて形成したMgOの1/8インチペレットを空気中で1000℃にて2h(時間)焼成し、これを触媒担体MgO(B)として用いた。
次に、0.1wt%のRuを含むルテニウム(III)クロライド水溶液に19h(時間)浸漬した。その水溶液は水酸化マグネシウム水溶液を用い、pHは9.7に調整した。このようにしてRuを触媒担体MgO(B)に平衡吸着させた後、濾過して、Ruを水溶液状で吸着した触媒担体MgO(B)を得た。この場合のRu担持量は、Ru金属換算量で担体MgO(B)に対して、125wtppmである。
次に、Ruを吸着した担体MgO(B)を空気中において30℃の温度で72h乾燥した後、空気中において860℃で2.5h焼成し、本発明触媒(B)を得た。
この触媒(B)はRuをRu金属として担体MgO(B)に対し125wtppmの割合で含有するもので、その表面積は4.8m2/gであった。また、その酸点は、酸強度(Ho)が3.3以上の酸点のみからなり、その含量は0.03mmol/gであった。
【0045】
触媒調製例5
市販の純度98.0wt%の酸化マグネシウム(MgO)を用いて形成したMgOの1/8インチペレットを空気中で1200℃にて2.5h(時間)焼成し、これを触媒担体MgO(C)として用いた。
次に、2.6wt%のRhを含むロジウム(III)アセテート水溶液に26h(時間)浸漬した。その水溶液は水酸化マグネシウム水溶液を用い、pHは9.7に調整した。このようにしてRhを触媒担体MgO(C)に平衡吸着させた後、濾過して、Rhを水溶液状で吸着した触媒担体MgO(C)を得た。この場合のRh担持量は、Rh金属換算量で、担体MgO(C)に対して、1750wtppmである。
次に、Rhを吸着した担体MgO(C)を空気中において20℃の温度で34h乾燥した後、空気中において950℃で3.5h焼成し、本発明触媒(C)を得た。
この触媒(C)はRhをRh金属として担体MgOに対し1750wtppm含有するもので、その表面積は0.2m2/gであった。また、その酸点は、酸強度(Ho)が3.3以上の酸点のみからなり、その含量は0.002mmol/gであった。
【0046】
比較触媒調製例1
空気中に於いて370℃にて3h焼成した酸化マグネシウムを0.27〜0.75mmに整粒後、含浸法でRhを担持し、更に空気中に於いて370℃で焼成することによりRh担持MgO触媒(RhはMg 1gに対して2.6×10-3g担持されており、mol換算の担持量は0.10mol%)を得た。この含浸体は焼成MgOにロジウム(III)アセテート水溶液を極めて少量ずつ滴下、滴下毎に混振することにより得られる。滴下したロジウム(III)アセテート水溶液中のRh濃度は1.7wt%である。この含浸体を空気中に於いて120℃にて2.5h乾燥、同雰囲気中370℃にて3h焼成し、Rh担持MgO触媒(表面積98m2/g)とした。
【0047】
炭酸ガス蒸留例1
原料として、炭酸ガス72.5mol%、メタン24.3mol%、エタン2.9mol%、プロパン0.3mol%を含む天然ガスより、蒸留により炭酸ガスを分離した。蒸留塔の理論段は7段であり、圧力40Kg/cm2G、塔頂温度−23.4℃、塔底温度5.0℃、還流比=1.5の条件で蒸留を行い、塔頂より炭酸ガス50.0mol%、メタン45.6mol%、エタン4.3mol%、プロパン0.1mol%の組成のガスを得た。
【0048】
実施例1
(1)合成ガス生成工程
前記炭酸ガス蒸留例1より得られた、炭酸ガス50.0mol%含む塔頂ガスを原料として用い、触媒調製例1に示した触媒を用いて、合成ガス製造試験を行った。
触媒は予め900℃で約1.5HR還元後、原料ガス中の低級炭化水素全モル数に対する水のモル比が、1:0.36になるようにH2Oを加え(CO2+H2O/低級炭化水素の炭素原子=1.28)、触媒層出口温度を900℃とし、圧力20kg/cm2G、入口ガス全量基準のGHSVを4500HR-1とした。反応でのCH4の転化率は67%であり、得られた合成ガスの組成は、H2=38.5mol%、CO=38.5mol%(H2/CO=1.0)、CH4=7.7mol%、CO2=6.5mol%、H2O=8.8mol%であった。
【0049】
(2)ジメチルエーテル合成工程
前記合成ガス生成工程で得られた合成ガスを冷却し、H2Oを除去した後、ジメチルエーテル合成用原料ガスとしてジメチルエーテル合成試験を実施した。触媒としては、Cu−Zn−Al系(CuO:42wt%、ZnO:47wt%、Al23:11wt%)のメタノール合成触媒とCuOをγ−Al23に担持したメタノール脱水触媒を15ccずつ物理混合したものを用いた。
原料合成ガスを、前記触媒の存在下で、反応温度250℃、圧力50kg/cm2G、GHSV=4000HR-1の反応条件で反応させた結果、CO転化率は84.7%であり、また、合成ガスからのジメチルエーテルの収率は42.9%であった。
【0050】
合成ガス生成反応例1
触媒調製例1で調製した触媒30ccを、反応器に充填し、メタンからの合成ガス製造試験を実施した。
触媒は、予めH2気流中900℃で1h還元処理を行った後、CH4:CO2:H2Oモル比=1:1.22:0.6(原料(CO2+H2O)/CH4=1.82)の原料ガスを圧力20kg/cm2G、触媒層出口温度850℃、原料ガス基準のGHSV=5000hr-1の条件で処理した。生成ガスH2/COモル比は、1.0であり、反応開始から5h経過後の合成ガス生産効率は98%、炭素変換効率は62%であり、また、反応開始から2000h経過後の合成ガス生産効率は98%、炭素変換効率は62%であった。
【0051】
合成ガス生成反応例2
触媒調製例2で調製した触媒30ccを、反応器に充填した以外は、前記合成ガス生成反応例1で示した条件とまったく同一条件で、合成ガス製造試験を実施した。
生成ガスH2/COモル比は、2.0であり、反応開始から5h経過後の合成ガス生産効率は97%、炭素変換効率は61%であり、また、反応開始から1500h経過後の合成ガス生産効率は96%、炭素変換効率は60%であった。
【0052】
合成ガス生成反応例3
触媒調製例1で調製した触媒30ccを反応器に充填し、メタンに種々の混合比のH2O、CO2を加え合成ガス製造試験を行った。触媒は予め900℃で約2.0HR還元処理を行い、触媒層出口温度を850℃、圧力20kg/cm2G、入口ガス組成全量基準のGHSVを4000HR-1として、生成物中のH2/CO比がほぼ1.0となるように、原料CH4、CO2、H2O比を調整し、反応試験を実施した。試験結果を下表に示した。
【0053】
【表1】
Figure 0004189068
【0054】
比較反応例1
実施例1の(1)合成ガス生成工程において、触媒として比較触媒調製例1で得た触媒を用いた以外は同様にして実験を行った。この場合の反応開始から5h経過後のCH4転化率は65%であった。また、反応開始から200h経過後のCH4の転化率は37%であった。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、メタンや天然ガス等の低級炭化水素ガスを出発原料として用い、長時間にわたって安定的にかつ経済的にジメチルエーテルを収率よく製造することができる。

Claims (11)

  1. 炭酸ガスを含む原料低級炭化水素ガスをジメチルエーテルへ転換する方法において、
    (i)炭酸ガスを30〜70モル%含む低級炭化水素ガスに、水及び/又はスチームを添加して、各成分が下記式を満たす混合ガスを調製する工程、
    0.5≦([CO2]+[H2O])/[C]≦2.5
    (式中、[CO2]はCO2のモル数、[H2O]はH2Oのモル数及び[C]は低級炭化水素ガス中に含まれる炭素のモル数を示す)
    (ii)該混合ガス中に含まれる低級炭化水素ガスを、主に酸化マグネシウムからなる担体に、ロジウム及び/又はルテニウムの触媒金属を担持させた触媒であって、該触媒の比表面積が5m2/g以下で、かつ触媒金属の担持量が金属原子基準で担体金属酸化物に対して0.10〜5000重量ppmである触媒に、10〜75気圧の圧力、600〜1000℃の温度で接触させて、水素/一酸化炭素のモル比が0.5〜1.5の合成ガスを生成させる工程、
    (iii)該合成ガスを、メタノール合成活性、脱水反応活性及びCOシフト反応活性を有する1種又は複数種の触媒の存在下で反応させてジメチルエーテルを含む反応生成物を生成させる工程、
    (iv)該反応生成物からジメチルエーテルを分離する工程、
    からなることを特徴とするジメチルエーテルの製造方法。
  2. 該混合ガス調製工程において、炭酸ガスを40〜60モル%含む低級炭化水素ガスに、水及び/又はスチームを添加して、各成分が下記式を満足する混合ガスを調製する請求項1に記載の方法。
    1≦([CO2]+[H2O])/[C]≦2
    (式中、[CO2]はCO2のモル数、[H2O]はH2Oのモル数及び[C]は低級炭化水素ガス中に含まれる炭素のモル数を示す)
  3. 該合成ガス生成工程において、次式で現わされる合成ガス生産効率がモル基準で80%以上である請求項1又は2に記載の方法。
    {([CO]+[H2])/([C]+[CO2]+[H2O])}×100%
    (式中、[CO]はCOのモル数、[H2]はH2のモル数、[C]は低級炭化水素ガス中に含まれる炭素のモル数、[CO2]はCO2のモル数及び[H2O]はH2Oのモル数を示す)
  4. 該合成ガス生成工程において、次式で現わされる炭素変換効率がモル基準で50%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
    {[CO]/([C]+[CO2])}×100%
    (式中、[CO]はCOのモル数、[C]は低級炭化水素ガス中に含まれる炭素のモル数及び[CO2]はCO2のモル数を示す)
  5. 該低級炭化水素ガスが天然ガスである請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 該低級炭化水素ガス中の過剰炭酸ガスの濃度を調整するために、該低級炭化水素を、操作圧力10〜80気圧の低温加圧蒸留塔を用いて蒸留し、塔底より炭酸ガスを分離し、塔頂より所定の炭酸ガス濃度の低級炭化水素ガス得る請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 該低温加圧蒸留塔の操作圧力が20〜50気圧である請求項6に記載の方法。
  8. 該低温加圧蒸留塔の塔頂温度が−60℃以上の温度である請求項6又は7に記載の方法。
  9. 談合成ガス生成工程からの合成ガスを、水素及び/又は炭酸ガスの分離工程を経ずに、直接ジメチルエーテル合成反応工程に導入する請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 該合成ガスを、メタノール合成触媒、脱水触媒及びCOガスシフト触媒の中から選ばれる少なくとも2種の触媒を組み合せた触媒の存在下で1段又は多段で反応させジメチルエーテルを含む反応生成物を生成させる請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 該ジメチルエーテル合成反応生成物からジメチルエーテルを分離した後の、メタン、水素、炭酸ガスを含むガス状生成物の一部もしくは全量を、原料低級炭化水素ガス中の炭酸ガス濃度を調整する低温加圧蒸留塔へ循環することを特徴とする請求項6に記載の方法。
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