JP4187810B2 - タイヤ成形方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、タイヤ成形方法及びその装置に係わり、更に詳しくはビードの接合・組立て工程での、シート状成形材料の両端部の絞り込み機構を大幅に簡素化すると共に、成形ドラム周上により均一な成形材料の絞り込みを実現したタイヤ成形方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ビード内径よりも大きな外径を持つ成形ドラムを用いたタイヤ成形方法では、成形ドラムに数枚のシート状の成形材料を巻付けた後、成形ドラムの両端から張り出した成形材料の両端部を成形ドラムの外径よりも小さく絞り込んで、成形材料の側面にビードを供給して接合した後、シート状の成形材料の両端部をビードを覆うように折り返してタイヤを成形している。
【0003】
従来より、このシート状の成形材料の両端部を絞り込む手段としては、例えばフィンガーと呼称される一端を環状の支持部材により保持された数枚の拡縮する板で行う方式である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような多数枚のフィンガーが拡縮するように組立てられた絞り込み操作手段は、機構的に複雑であることに加えて片持ち構造のドラム軸を一層長大化させ、かつ重量的な負荷を与えるため、装置の製作コストや保全コストを著しくアップさせる要因になっていた。
【0005】
また、上記のような機構を構成する部品の大部分は、ビード内径が異なるタイヤを成形する毎に交換を必要とするサイズ交換部品であるため、段取り替え作業にも悪影響を与えた。更に、より均一なタイヤを製造するためには、フィンガーで押圧する箇所は周方向に連続性を有することが望ましいが、そのために増加するフィンガーの枚数には物理的な限界があった。従って、均一な絞り込み操作にも精度上に限界があった。
【0006】
この発明の目的は、成形ドラムに巻付けられたシート状成形材料の突出端部の絞り込みを簡単な機構で、しかも均一に行うことが出来るタイヤ成形方法及びその装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明のタイヤ成形方法は、中空状の成形ドラム上にシート状の成形材料を巻付けて、前記成形ドラムの両端から成形材料を張り出した状態にし、前記成形ドラムの両端部に設けた膨張収縮可能なブラダーを膨張させて前記成形ドラムの両端から張り出した成形部材の突出端部の下面側に当接させて、前記成形ドラムの両側面を略密閉状態にした後、該成形ドラム内を負圧状態にして前記成形材料の突出端部を前記成形ドラムの側面側に吸引した状態にしつつ、前記ブラダーを収縮させて該突出端部をこのブラダーの収縮に伴なって該成形ドラムの側面側に折り込んで成形ドラムの縮径方向に絞り込むことを要旨とするものである。
【0008】
このタイヤ成形方法では、前記成形ドラムの縮径方向に絞り込んだ成形材料の側面にビードを接合させた後、前記ブラダーを膨張させることにより前記突出端部を、前記ビードを包み込んだ状態で成形ドラム上に折り返し、この折り返した成形材料の両端部を成形ドラム上の成形材料に圧着することができる。
【0009】
また、この発明のタイヤ成形装置は、中空状の成形ドラムに、該成形ドラムの内部を負圧状態にする吸引手段を接続したタイヤ成形装置であって、前記成形ドラムの両端側部に、膨張収縮可能なブラダーからなる折り返し手段と、前記成形ドラムの両端側面に沿って成形ドラムの縮径方向に絞り込まれた成形材料に環状のビードを接合させる接合手段と、前記ブラダーを外側から成形ドラム方向に押し込んで変形させることにより前記接合したビードを包み込んだ状態で折り返された成形材料の両端部を成形ドラム上の成形材料に圧着させる圧着手段とをドラム軸方向に水平移動可能に設け、前記ブラダーを、前記成形ドラム上に巻付けられた成形材料の成形ドラムの両端から張り出した突出端部の下面側に当接させて前記成形ドラムの両側面を略密閉状態にするように前記成形ドラムの外径と略同一径となるまで膨張させる設定手段と、前記成形ドラムの両端側面に沿って前記成形材料の突出端部を成形ドラムの縮径方向に絞り込むように前記吸引手段の吸引ポンプの駆動とともに前記成形ドラムの外径と略同一径となるまで膨張させているブラダーを収縮させる設定手段と、該絞り込まれた成形材料に前記接合手段により環状のビードが接合された後に、前記収縮させたブラダーを、この成形材料の両端部がビードを包み込んだ状態で成形ドラムのドラム軸方向に対して略垂直に折り返されるまで膨張させる設定手段とを有することを要旨とするものである。
【0010】
このように、この発明では成形ドラムに巻付けられたシート状の成形材料の両端部を成形ドラム内を負圧にすることにより自動的に絞り込むことが出来るので、従来のような複雑なフィンガー装置を用いることなく、効率良い作業を行うことが出来、また成形ドラムの主軸長さを短縮出来ると共に、装置自体を簡素化でき、安価に製造出来るタイヤの製品精度を高めることが出来る。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
図1は、この発明を実施したタイヤ成形装置1の一部切欠した正面図、図2は図1の平面図、図3は図1の右側面図、図4は図1の要部拡大正面図を示している。
【0012】
前記タイヤ成形装置1は、ベースフレーム2上の長手方向の中央部に片持ち状態で拡縮可能な分割型(この実施形態では10分割)の円筒状に形成された成形ドラム3が設置され、この成形ドラム3を水平に支持する中空状のドラム軸4は、架台2上に設置された支持フレーム5上に軸受6を介して回転自在に支持されている。
【0013】
ドラム軸4の一端には、従動プーリ7が取付けられ、この従動プーリ7とベースフレーム2に取付けられた主軸駆動モータ8の駆動軸8aに取付けられた駆動プーリ9とは伝達ベルト10を介して連結されている。なお、主軸駆動モータ8からの駆動力の伝達は、上記のようなプーリやベルトに限定されず、スプロケット,チェーンあるいは歯車機構等により行うことも可能である。
【0014】
前記中空状のドラム軸4の内部には、分割された成形ドラム3を拡縮操作する操作軸11が摺動可能に挿通され、成形ドラム3の中心部に挿通されたドラム軸4内の操作軸11と分割された成形ドラム3の複数のセグメント3aとは、ピン12及びリンク部材13を介してそれぞれ連結されている。
また、ドラム軸4の一端側から突出した操作軸11は、クラッチ機構14を介してベースフレーム2上の支持フレーム15に固定された拡縮シリンダー16のロッド17に接続または分離可能に連結されている。
【0015】
従って、拡縮シリンダー16が伸縮作動すると、ロッド17に連結された操作軸11が図1及び図2の左右方向に往復移動し、操作軸11とピン及びリンク部材13を介して連結されている成形ドラム3の複数のセグメント3aが拡縮作動するものである。
ベースフレーム2上には、長手方向に沿って二本の平行なガイドレール18a,18bが敷設され、このガイドレール18a,18bには、成形ドラム3を挟んで、左右一対のブラダー装置19A,19Bが支持フレーム20A,20Bを介して摺動可能に設置されている。
【0016】
ドラム軸4側に位置するブラダー装置19Bの支持フレーム20Bは、前記操作軸11が挿通されたドラム軸4が貫通する筒状の支持部材21を成形ドラム3側に突出させ、この支持部材21には、エアーを供給してゴム材料により袋状に形成された折り返し手段としてのブラダー22bを膨張,収縮させるブラダー支持部材23が取付けられている。ブラダー支持部材23には、ブラダー22aにエアーを給排する図示しない通路が形成され、高圧のエアーが供給されるようになっている。
【0017】
また、成形ドラム3を挟んでブラダー装置19Bと反対側に位置するブラダー装置19Aは、上記ブラダー装置19Bと同様にガイドレール18a,18b上に支持フレーム20Aが摺動可能に設置され、この支持フレーム20Aには、成形ドラム3側に向かって筒状の支持部材24とブラダー支持部材25とが取付けられ、ブラダー支持部材25には、エアーを供給してゴム材料により袋状に形成された折り返し手段としてのブラダー22aが取付けられている。
【0018】
前記支持フレーム20Aのガイド筒24には、成形ドラム3の内部を負圧状態にする吸引手段26が接続し、この吸引手段26は、装置外部に設置された吸引ポンプ27に接続したフレキシブルなホース28が前記支持フレーム20Aのガイド筒24の開口部に気密的に取付けられている。
従って、成形ドラム3の両側面に左右一対のブラダー装置19A,19Bを当接させた状態で、吸引手段26により成形ドラム3内を吸引すると、成形ドラム3内は負圧状態となり、この負圧力により成形ドラム3に巻付けられているシート状の成形材料Wの両端突出部Waを成形ドラム3の縮径方向側に絞り込まれるようになっている。
【0019】
前記ガイドレール18a,18b上に摺動可能に載置されたブラダー装置19A,19Bの支持フレーム20A,20Bは、ベースフレーム2に取付けられた移動用駆動モータ29a,29bと往復移動機構30a,30bを介して成形ドラム3の側面に対して往復移動するように構成されている。
往復移動機構30a,30bは、ベースフレーム2の上面下方に長手方向に沿ってネジ軸31a,31bが回転自在に取付けられ、このネジ軸31a,31bには、支持フレーム20A,20Bから吊設されたナット部材32が螺嵌し、またネジ軸31a,31bの端末部にはプーリ33aが取付けられ、このプーリ33aと前記移動用駆動モータ29a,29bの駆動軸に取付けられたプーリ33bとには、駆動力を伝達するベルト34が掛け回されている。
【0020】
なお、上記の実施形態では、ドラム軸4側に位置するブラダー装置19Bの支持フレーム20Bは、移動ストロークが短いため、ネジ軸31bも吸引手段26側に位置するネジ軸31aよりも短く構成されており、また一本のネジ軸を使用して左右ねじを設けるようにすることも可能である。
従って、移動用駆動モータ29a,29bの回転駆動によりネジ軸31a,31bが正転,または逆転駆動すると、ネジ軸31a,31bに螺嵌されたナット部材32を介して支持フレーム20A及び20Bが成形ドラム3に対して接近または離反する方向に移動し、これと同時にブラダー装置19A,19Bも移動することになる。
【0021】
支持フレーム20A,20Bの前後部には、それぞれ移動用シリンダー35a,35b及び36a,36bがドラム軸4と平行に取付けられ、この移動用シリンダー35a,35b及び36a,36bのロッドの先端には、前記成形ドラム3に巻付けられ、かつ両端が絞り込まれた成形材料Wの側面に環状のビードQを接合する接合手段37(ビードセットリング)と、ビードQが接合された成形材料Wの折り返えされた端末部を成形ドラム3の両端表面に圧着させる円筒状のプッシャーリング38(圧着手段)とが取付けられている。
【0022】
前記接合手段37及びプッシャーリング38は、前記移動用シリンダー35a,35b及び36a,36bにより成形ドラム3の側面側に向かって進退するように構成されている。
プッシャーリング38は、移動用シリンダー35a,35b及び36a,36bのロッドとビードQの接合手段37の連結及び切離しを行う機構によって、単独に移動出来る。
【0023】
次に、上記のような構成から成るタイヤ成形装置1における成形材料Wの両端部Waの絞り込み方法を、図5(a)〜(h)を参照しながら説明する。
なお、以下の説明で、成形ドラム3の両端側面に折込まれる成形材料Wは、略同時に同一動作で行われるので、以下の説明では成形ドラム3の片側装置のみの動作について説明する。
【0024】
まず、図5(a)に示すように、ブラダー装置19A,19Bのブラダー22a,22bが収縮した状態で、かつ接合手段37及びプッシャーリング38が待機位置にある状態から、中空状の成形ドラム3上に成形ドラム3のドラム幅Hよりも幅広なゴムシートまたはカーカス等のシート状の成形材料Wを左右対象位置に巻付ける。
【0025】
次いで、図5(b)に示すように、ブラダー装置19A,19Bのブラダー22a,22bを成形ドラム3の外径と略同一径となるまで膨張させて、成形材料Wの張り出した突出端部Waの下面側にブラダー22a,22bを当接させる。この状態から、吸引手段26の吸引ポンプ27を駆動して成形ドラム3内を負圧状態にする。すると、成形ドラム3の側面に位置するブラダー22a,22bの隙間から成形材料Wの突出端部Wa,Wbは成形ドラム3の側面側に吸引された状態となる。
【0026】
この状態で、図5(c)に示すように、ブラダー22a,22bを収縮させると、成形材料Wの突出端部Waはブラダー22a,22bの収縮に伴って、成形ドラム3の側面側に吸引された状態で折り込まれると同時に絞り込まれた状態となる。この状態から図5(d)に示すように待機位置に待機しているビードQを保持した接合手段37を、移動用シリンダー35a,35b及び36a,36bを駆動して成形ドラム3の側面側まで移動させ、接合手段37で保持されているビードQを折り込まれた成形材料Wの突出端部Waの側面に圧着接合させる。
【0027】
ビードQの接合作業が終了したら、接合手段37を一旦待機位置まで移動させ、図5(e)に示すように前記収縮させたブラダー22a,22bを再び膨張させて、図5(f)に示すように成形材料Wの突出端部WaをビードQを包み込んだ状態で略垂直に折り返す。
次に、図5(g)に示すように待機位置にあるプッシャーリング38を再度移動用シリンダー35a,35b及び36a,36bで成形ドラム3側に移動させ、今度は筒状のプッシャーリング38により、ブラダー22a,22bを外側から成形ドラム3方向に押し込んで変形させることにより折り返された成形材料Wの両側突出端部Waを成形ドラム3上の成形材料Wに折り返して圧着させる。
【0028】
その後、図5(h)に示すように、移動用シリンダー35a,35b及び36a,36bを介してプッシャーリング38を待機位置まで後退させ、次の成形材料Wの巻付け作業まで待機する。
以上のような操作を繰返し行うことで、タイヤ成形装置1における成形材料Wの両端部の絞り込み作業を効率良く行うことが出来る。
【0029】
なお、上記の実施形態は、タイヤ成形方法が大径または大々径のタイヤについてビードQを横側からの圧着接合方式について説明したが、小径または小々径のタイヤについてビードQを横側からの圧着接合する方式にも適用出来るものである。
【0030】
【発明の効果】
この発明は、上記のように成形ドラムに巻付けられたシート状の成形材料の両端部を負圧力により自動的に絞り込むようにしたので、より均一な成形材料の絞り込みを実現でき、タイヤの品質を向上させることが出来ると共に、従来のようなフィンガーが不要となるので、成形ドラムのまわりの機構を大幅に簡素化でき、更に成形機全長の短縮と、タイヤ成形機の製作コスト、保全性,段取作業性を大幅に改善することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を実施したタイヤ成形装置の一部切欠した正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の右側面図である。
【図4】図1の要部拡大正面図である。
【図5】(a)〜(e)は、タイヤ成形装置における成形材料の両端部の絞り込み工程を示す説明図である。
【符号の説明】
1 タイヤ成形装置 3 成形ドラム
4 ドラム軸 19A,19B ブラダー装置
22a,22b ブラダー(折り返し手段)
26 吸引手段 38 プッシャーリング(圧着手段)
37 接合手段(ビードセットリング)
W シート状の成形材料 Wa 成形材料の両端部
Q ビード
Claims (4)
- 中空状の成形ドラム上にシート状の成形材料を巻付けて、前記成形ドラムの両端から成形材料を張り出した状態にし、前記成形ドラムの両端部に設けた膨張収縮可能なブラダーを膨張させて前記成形ドラムの両端から張り出した成形部材の突出端部の下面側に当接させて、前記成形ドラムの両側面を略密閉状態にした後、該成形ドラム内を負圧状態にして前記成形材料の突出端部を前記成形ドラムの側面側に吸引した状態にしつつ、前記ブラダーを収縮させて該突出端部をこのブラダーの収縮に伴なって該成形ドラムの側面側に折り込んで成形ドラムの縮径方向に絞り込むタイヤ成形方法。
- 前記成形ドラムの縮径方向に絞り込んだ成形材料の側面にビードを接合させた後、前記ブラダーを膨張させることにより前記突出端部を、前記ビードを包み込んだ状態で成形ドラム上に折り返し、この折り返した成形材料の両端部を成形ドラム上の成形材料に圧着する請求項1に記載のタイヤ成形方法。
- 中空状の成形ドラムに、該成形ドラムの内部を負圧状態にする吸引手段を接続したタイヤ成形装置であって、前記成形ドラムの両端側部に、膨張収縮可能なブラダーからなる折り返し手段と、前記成形ドラムの両端側面に沿って成形ドラムの縮径方向に絞り込まれた成形材料に環状のビードを接合させる接合手段と、前記ブラダーを外側から成形ドラム方向に押し込んで変形させることにより前記接合したビードを包み込んだ状態で折り返された成形材料の両端部を成形ドラム上の成形材料に圧着させる圧着手段とをドラム軸方向に水平移動可能に設け、前記ブラダーを、前記成形ドラム上に巻付けられた成形材料の成形ドラムの両端から張り出した突出端部の下面側に当接させて前記成形ドラムの両側面を略密閉状態にするように前記成形ドラムの外径と略同一径となるまで膨張させる設定手段と、前記成形ドラムの両端側面に沿って前記成形材料の突出端部を成形ドラムの縮径方向に絞り込むように前記吸引手段の吸引ポンプの駆動とともに前記成形ドラムの外径と略同一径となるまで膨張させているブラダーを収縮させる設定手段と、該絞り込まれた成形材料に前記接合手段により環状のビードが接合された後に、前記収縮させたブラダーを、この成形材料の両端部がビードを包み込んだ状態で成形ドラムのドラム軸方向に対して略垂直に折り返されるまで膨張させる設定手段とを有するタイヤ成形装置。
- 前記圧着手段が円筒状のプッシャーリングである請求項3に記載のタイヤ成形装置。
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