JP4186694B2 - 超音波伝播速度測定方法およびそれを用いた固体表層部状態測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波伝播速度測定方法およびそれを用いた固体表層部状態測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、超音波を用いた固体部材の探傷方法としては、例えば、特開平11−23540号公報(特許文献1)に記載された車軸の探傷を行うものがある。この車軸の探傷方法は、車軸の端面に粘性媒体を介して圧着された水平探触子セグメント構造体から探傷検査部分に向けて超音波である横波水平波ビームを発信し、探傷検査部分に入射して後探傷検査部分で反射した後、探傷検査部分に入射したルートと逆のルートをたどって水平探触子セグメント構造体までもどってきた探傷検査部分の傷の情報を含んだ横波水平波ビームを、水平探触子セグメント構造体で受信して、上記傷の情報を含んだ横波水平波ビームを電気信号に変換して、この電気信号を解析することによって車軸の探傷検査部分の探傷を行っている。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−23540号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の超音波を用いた固体部材の探傷方法では、車軸の端面と水平探触子セグメント構造体の間に塗布される粘性媒体の量を少なくしずぎると、水平探触子セグメント構造体と車軸の間にできる粘性媒体の膜厚が小さくなりすぎて、水平探触子セグメント構造体の車軸の端面に対する固定が不安定になって、上記電気信号のSN比(シグナルノイズ比)が小さくなって上記電気信号をとらえにくくなり、探傷検査部分の探傷が難しくなるという問題がある。
【0005】
一方、車軸の端面と水平探触子セグメント構造体の間に塗布される粘性媒体の量を多くしすぎると、粘性媒体のメニスカスが、水平探触子セグメント構造体と車軸の間に高範囲に広がり、水平探触子セグメント構造体から発信される横波水平波ビームが、上記車軸の端面に沿って広がったメニスカスを上記端面と平行な方向に伝播した後に、車軸に伝達するという現象が起こる。このことから、水平探触子セグメント構造体から探傷検査部分に正確に横波水平波ビームを打ち込むことができず、探傷検査部分の傷の有無を正確に判断できないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、探傷測定機としての超音波送信機および超音波受信機と、被探傷物としての鋼製部品である軸受の軌道面の間の粘性媒体の量が適正に設定されて、鋼製部品である軸受の軌道面の表層部を伝播する超音波の伝播速度を正確に測定できる超音波伝播速度測定方法およびそれを用いた固体表層部状態測定方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の超音波伝播速度測定方法は、
超音波送信機の超音波送信面の算術平均粗さを0 . 6μm〜0 . 8μmにして、上記超音波送信面を、油性横波用粘性媒体である第1粘性媒体を介して鋼製部品である軸受の軌道面の第1箇所に固定する工程と、
超音波受信機の超音波受信面の算術平均粗さを0 . 6μm〜0 . 8μmにして、上記超音波受信面を、油性横波用粘性媒体である第2粘性媒体を介して上記軌道面の第1箇所と異 なる第2箇所に固定する工程と、
上記超音波送信機から送信されて上記軌道面の表層部を伝播したSH波である超音波を、上記超音波受信機で受信して、上記超音波の上記軌道面の上記表層部における伝播速度を測定する工程と
を備えることを特徴としている。
また、請求項2の発明の超音波伝播速度測定方法は、
超音波送信機の超音波送信面の算術平均粗さを0 . 6μm〜0 . 8μmにして、鋼製部品である軸受の軌道面の表面の第1箇所と上記超音波送信機の上記超音波送信面の少なくとも一方に、油性横波用粘性媒体である第1粘性媒体を塗布して、上記超音波送信面を、0 . 1mg/mm 2 〜0 . 3mg/mm 2 の上記第1粘性媒体を介して上記軌道面の上記表面の上記第1箇所に固定する工程と、
超音波受信機の超音波受信面の算術平均粗さを0 . 6μm〜0 . 8μmにして、上記鋼製部品である軸受の軌道面の表面の第2箇所と上記超音波受信機の上記超音波受信面の少なくとも一方に、油性横波用粘性媒体である第2粘性媒体を塗布して、上記超音波受信面を、0 . 1mg/mm 2 〜0 . 3mg/mm 2 の上記第2粘性媒体を介して上記軌道面の上記表面の上記第2箇所に固定する工程と、
上記超音波送信機から送信されて上記軌道面の表層部を伝播したSH波である超音波を、上記超音波受信機で受信して、上記超音波の上記軌道面の上記表層部における伝播速度を測定する工程と
を備えることを特徴としている。
【0008】
尚、この明細書で、表層部といった場合、この表層部は表面を含むものとする。
【0009】
また、この明細書では、上記超音波として、主振動方向が伝播方向に垂直でかつ固体部材の表面に略平行な方向で、かつ、固体部材の表面に沿って伝播する超音波であるSH波(horizontal polalized shear wave)を想定しているものとする。
【0010】
また、上記第1粘性媒体と上記第2粘性媒体は、同じ粘性媒体でも良く、異なる粘性媒体でも良いことにする。
【0011】
本発明者は、被伝播速度測定物である固体部材の表面と超音波送信機の超音波送信面の間に塗布される第1粘性媒体の量と、上記固体部材の表面と超音波受信機の超音波受信面の間に塗布される第2粘性媒体の量の少なくとも一方を0.1mg/mm2より小さくすると、超音波の種類、超音波が伝播する被伝播速度測定物である固体部材の距離または上記固体部材の表層部の材質に因らず、上記超音波送信機と上記超音波受信機の少なくとも一方と上記固体部材との密着性が不十分になって、上記超音波送信機と上記超音波受信機の少なくとも一方から上記固体部材に超音波が伝達しにくくなり、上記超音波送信機から送信されて上記固体部材の表層部を伝播して上記超音波受信機で受信された超音波の波形の波形くずれが非常に大きくなって、超音波の固体部材の表面における伝播速度を超音波の波形から測定できないことを発見した。また、本発明者は、被伝播速度測定物である固体部材の表面と超音波送信機の超音波送信面の間に塗布される第1粘性媒体の量と、上記固体表面と超音波受信機の超音波受信面の間に塗布される第2粘性媒体の量の少なくとも一方を0.3mg/mm2より大きくすると、超音波送信機と超音波受信機の少なくとも一方と固体表面との間に大きな粘性媒体のメニスカスが形成されて、超音波が超音波の伝達速度が速い上記メニスカスを伝播するようになって、固体部材の表層部の超音波の伝播速度の測定を行うための超音波が伝播する固体部材の表面距離が、超音波が伝播することが意図された所定の固体部材の表面距離より短くなって、固体部材の表層部を伝播する超音波の伝播速度が計算上速くなってしまうということを発見した。
【0012】
一方、本発明者は、被伝播速度測定物である固体部材の表面と超音波送信機の超音波送信面の間に塗布される第1粘性媒体の量と、上記固体表面と超音波受信機の超音波受信面の間に塗布される第2粘性媒体の量を、ともに0.1mg/mm2〜0.3mg/mm2にすると、固体部材の表層部を伝播する超音波の伝播速度を正確に測定できることを発見した。
【0013】
上記請求項2の発明の超音波伝播速度測定方法によれば、被伝播速度測定物である固体表面と超音波送信機の超音波送信面の間に塗布される第1粘性媒体の量と、上記固体表面と超音波受信機の超音波受信面の間に塗布される第2粘性媒体の量を、ともに0.1mg/mm2〜0.3mg/mm2にした上で、鋼製部品である軸受の軌道面の表層部における超音波の伝播速度の測定を行ったので、鋼製部品である軸受の軌道面の表層部を伝播する超音波の伝播速度を正確に測定できる。
【0014】
また、請求項3の発明の超音波伝播速度測定方法は、請求項2に記載の超音波伝播速度測定方法において、上記超音波送信面を、0.15mg/mm2〜0.25mg/mm2の上記第1粘性媒体を介して上記鋼製部品である軸受の軌道面の上記第1箇所に固定すると共に、上記超音波受信面を、0.15mg/mm2〜0.25mg/mm2の上記第2粘性媒体を介して上記鋼製部品である軸受の軌道面の上記第2箇所に固定することを特徴としている。
【0015】
上記請求項3の発明の超音波伝播速度測定方法によれば、上記超音波送信面を、0.15mg/mm2〜0.25mg/mm2の上記第1粘性媒体を介して上記鋼製部品である軸受の軌道面の上記第1箇所に固定すると共に、上記超音波受信面を、0.15mg/mm2〜0.25mg/mm2の上記第2粘性媒体を介して上記鋼製部品である軸受の軌道面の上記第2箇所に固定したので、鋼製部品である軸受の軌道面の表層部を伝播する超音波の伝播速度を更に正確に測定できる。
【0016】
【0017】
本発明者は、超音波送信機の超音波送信面の算術平均粗さ(以下、Raという)、および超音波受信機の超音波受信面のRaの内の少なくとも一方が、0.6μmよりも小さくなると、このRaが0.6μmよりも小さい面が滑らかになりすぎて、このRaが0.6μmよりも小さい面上に粘性媒体を塗布したとき、この粘性媒体に表面張力がはたらいて、このRaが0.6μmよりも小さい面に大きな粘性媒体のメニスカスが形成されるということを発見した。また、本発明者は、超音波送信機の超音波送信面のRaおよび超音波受信機の超音波受信面のRaの内の少なくとも一方が、0.8μmよりも大きくなると、このRaが0.8μmよりも大きな面の表面粗さが大きくなりすぎて、このRaが0.8μmよりも大きな面の密着性が悪くなり、超音波送信機と超音波受信機の少なくとも一方と、固体部材の表面の接触位置が不安定になるということを発見した。
【0018】
一方、本発明者は、超音波送信機の超音波送信面のRaおよび超音波受信機の超音波受信面のRaが、両方とも0.6μm〜0.8μmの範囲内にあると、超音波送信機および超音波受信機と固体部材の間の粘性媒体のメニスカスを小さくできると共に、超音波送信機および超音波受信機を固体部材に密着して取り付けることができて、固体部材の固体部材の表層部を伝播する超音波の伝播速度を正確に測定できることを発見した。
【0019】
上記請求項1の発明の超音波伝播速度測定方法によれば、超音波送信機の超音波送信面のRaおよび超音波受信機の超音波受信面のRaを、0.6μm〜0.8μmの範囲内に収めた上で、鋼製部品である軸受の軌道面の表層部における超音波の伝播速度の測定を行ったので、鋼製部品である軸受の軌道面の表層部を伝播する超音波の伝播速度を正確に測定できる。
また、請求項4の発明の超音波伝播速度測定方法は、請求項1乃至3のいずれか1つに 記載の超音波伝播速度方法において、上記鋼製部品は、軸受鋼からなることを特徴としている。
また、請求項5の発明の超音波伝播速度測定方法は、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の超音波伝播速度方法において、上記鋼製部品は、内輪であることを特徴としている。
【0020】
また、請求項6の発明の固体表層部状態測定方法は、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の超音波伝播速度測定方法によって測定された鋼製部品である軸受の軌道面の表層部における超音波の伝播速度を、
ひずみが生じているか否かを識別するための鋼製部品である軸受の軌道面の表層部における超音波の伝播速度のひずみ基準値、脱炭を生じているか否かを識別するための鋼製部品である軸受の軌道面の表層部における超音波の伝播速度の脱炭基準値、および、研磨焼けを生じているか否かを識別するための鋼製部品である軸受の軌道面の表層部における超音波の伝播速度の研磨焼け基準値の内の少なくとも1つと比較して、
上記鋼製部品である軸受の軌道面の表層部のひずみ、脱炭、研磨焼けの内の少なくとも1つを判断することを特徴としている。
【0021】
固体部材の表層部を伝播する超音波の伝播速度は、固体部材の表層部の材質によって変化し、また、固体部材の表層部の状態によっても変化する。詳細には、固体部材の表層部を伝播する超音波の伝播速度は、固体部材の表層部の材質ごとに変化し、また、固体部材の表層部のひずみ、脱炭および研磨焼け等による劣化の度合によっても変化する。そして、ひずみ、脱炭および研磨焼けがない正常な固体部材における超音波の伝播速度の範囲、ひずみを生じている固体部材における超音波の伝播速度の範囲であるひずみ基準値、脱炭を生じている固体部材における超音波の伝播速度の範囲である脱炭基準値および研磨焼けを生じている固体部材における伝播速度の範囲である研磨焼け基準値は、夫々材質ごとに決まっている。
【0022】
上記請求項6の固体表層部状態測定方法は、鋼製部品である軸受の軌道面の表層部の伝播速度の測定値を、上記様々な伝播速度の基準値と比較して、上記鋼製部品である軸受の軌道面の表層部のひずみ、脱炭、研磨焼けの内の少なくとも1つを判断するものである。
尚、固体表層部の疲労度は、ひずみと対応しているため、上記ひずみを測定することで疲労度を測定できる。
【0023】
尚、この明細書において、上記研磨焼とは、鋼製部品の表面を研磨する最終工程で、鋼製部品の表層部の温度が上がって、鋼製部品がもう一度焼き入れされて鋼製部品の材質が再焼でかたくてもろくなったり、鋼製部品の焼戻しが生じて鋼製部品の材質が軟化したりして、出来上がった鋼製部品が、所定の規格に合わなくなる現象をいう。
【0024】
また、上記脱炭とは、酸化性の雰囲気下で鋼を加熱する時、鋼中酸素と反応することにより生じる現象であり、軸受鋼のような高炭素鋼の場合は、比較的容易に生じることが知られている。
【0025】
上記請求項6の固体表層部状態測定方法によれば、上記超音波伝播速度測定方法によって測定された鋼製部品である軸受の軌道面の表層部における超音波の伝播速度を、ひずみ基準値、脱炭基準値および研磨焼け基準値の内の少なくとも1つと比較して、上記鋼製部品である軸受の軌道面の表層部のひずみ、脱炭、研磨焼けの内の少なくとも1つを判断するので、安全で扱い易い超音波を用いて上記鋼製部品である軸受の軌道面の表層部のひずみ、脱炭、研磨焼け等の表層部の状態の内の少なくとも1つを正確に測定できる。したがって、ひずみ、脱炭および研磨焼け等によって劣化して、規定の性能が発揮できなくなった軸受の軌道輪の取り換え時期を、安全簡単安価に、かつ、正確に知ることが可能になる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0027】
先ず、図1および図2を用いて、この発明の超音波伝播速度測定方法の一実施形態である普通焼入のSUJ2軸受鋼製の円筒ころ軸受の内輪10の軌道面10Aの表層部におけるSH波の伝播速度の測定方法を説明する。
【0028】
図1は、上記内輪10の軌道面10Aの平面図であり、図2は、内輪10の正面図である。この実施形態では、図1、図2に示すように、超音波送信機の一例としてのSH波送信機1と固体部材の一例としての内輪10の軌道面10Aとが接触線3で線接触するように、SH波送信機1を、油性横波用で媒体粘度が36Pa・s(20℃)の第1粘性媒体の層を介して、内輪10の軌道面10Aの略中央における接触線3に対応する第1箇所に取り付ける一方、超音波受信機の一例としてのSH波受信機2をSH波送信機1から周方向に離間した状態で、SH波受信機2と内輪10の軌道面10Aとが接触線5で線接触するように、SH波受信機2を、第1粘性媒体と同じ粘性媒体である第2粘性媒体の層を介して内輪10の軌道面10Aの略中央における接触線5に対応する第2箇所に取り付ける。上記SH波送信機1およびSH波受信機2の軸方向の寸法D1は、内輪10の軸方向の寸法D2の3分の1になっている。
【0029】
また、図2に示すように、上記SH波送信機1の接触線3を、SH波送信機1の軌道面10Aに対する対向面1AのうちのSH波を発生する有効部分である超音波送信面の一例としてのSH波送信面7に位置させると共に、SH波受信機2の接触線5を、SH波受信機2の軌道面10Aに対する対向面2AのうちのSH波を検知可能な有効部分である超音波受信面の一例としてのSH波受信面8に位置させている。
【0030】
上記SH波送信面7およびSH波受信面8のRaは、両方とも0.6μm〜0.8μmの範囲に設定されている。また、図示はしないが、上記第1粘性媒体は、SH波送信面7と軌道面10Aの間に、その量が0.15mg/mm2〜0.25mg/mm2となっている状態で介在し、上記第2粘性媒体は、SH波受信面8と軌道面10Aの間に、その量が0.15mg/mm2〜0.25mg/mm2となっている状態で介在している。
【0031】
上記構成において、SH波送信機1が内蔵する圧電素子からなるSH波発振部(図示せず)を駆動することで、対向面1Aの有効部分7を振動させて、SH波送信機1からSH波を発信する。そして、上記SH送信機1から発信されて内輪10の表層付近を伝播したSH波をSH波受信機2で受信して、SH波の伝播速度の測定を行う。具体的には、SH波の波形における振幅が0になるSH波のゼロクロス点を計時基準にして、SH波送信機1の接触線3からSH波受信機2の線接触5までのSH波の伝播時間tを求め、以下の式(1)からSH波の伝播速度Vを測定する。
【0032】
V=2πr・(α/360°)・(1/t)[m/s]・・・・・・(1)
(ここで、αは、SH波送信機1の接触線3と内輪10の中心P0とを結ぶ直線Lrと、SH波受信機2の接触線5と上記中心P0とを結ぶ直線Lqとがなす角度[°]である。上記αは、接触線3,5における接線が成す角度であるセンサ角度θと、α=180°−θの関係がある。また、rは、軌道面10Aの半径[m]であり、πは、円周率である。)
図3は、上記SH波送信機1と軌道面10Aの間に介在している上記第1粘性媒体のメニスカス31を誇張して示した図である。また、図4は、SH波送信機40(SH波送信機1と同一構造)のSH波送信面のRaを0.6μm〜0.8μmにし、かつ、SH波送信機40と軌道面42A(軌道面10Aと同一構造)の間の第1粘性媒体の量を0.1mg/mm2よりも小さくした場合に形成される第1粘性媒体のメニスカス41を誇張した図である。また、図5は、SH波送信機50(SH波送信機1と同一構造)のSH波送信面のRaを0.6μm〜0.8μmにし、かつ、SH波送信機50と軌道面52A(軌道面10Aと同一構造)の間の第1粘性媒体の量を0.3mg/mm2よりも大きくした場合に形成される第1粘性媒体のメニスカス51を誇張した図である。
【0033】
SH波送信機40と軌道面42Aの間に介在させる第1粘性媒体の量を0.1mg/mm2よりも小さくすると、図4に示すように、SH波送信機40と軌道面42Aの間に介在している第1粘性媒体の量が少なすぎて、例えば、SH波送信機40が軌道面42Aに対して傾く等、SH波送信機40を軌道面42Aに確実に固定できなくなる。このことから、SH波送信機40から軌道面42AにSH波が伝達しにくくなるので、SH波送信機40から送信されて軌道面42Aの表層部を伝播してSH波受信機で受信されたSH波の波形の波形くずれが非常に大きくなって、SH波の軌道面42Aにおける伝播速度をSH波の波形から測定できなくなる。
【0034】
また、SH波送信機50と軌道面52Aの間に介在させる第1粘性媒体の量を0.3mg/mm2よりも大きくすると、図5に示すように、SH波送信機50と軌道面52Aの間に、第1粘性媒体の大きなメニスカス51が形成され、SH波送信機50から発信されて接触線53付近から軌道面52Aに伝わるSH波ではなくて、SH波送信機50から発信されて、メニスカス51を軌道面52Aに沿ってを伝播した後、メニスカス51の先端部分と軌道面52Aとの接点である接触線54を通じて、軌道面52Aに伝わるSH波をSH波受信機で受信することになる(SH波受信機はSH波送信機50の紙面のおける右方にあるものとする)。このため、軌道面52Aの表層部のSH波の伝播速度の測定を行うためのSH波が伝播する軌道面52Aの表面距離が、SH波が伝播することが意図された所定の軌道面52Aの表面距離より短くなって、軌道面52Aの表層部を伝播するSH波の伝播速度が計算上速くなってしまう(SH波のメニスカスにおける伝播速度は、SH波の軌道面52Aにおける伝播速度よりも速い。)。
【0035】
一方、この実施形態にように、上記SH波送信機1と軌道面10Aの間に介在させる上記第1粘性媒体の量を最適な量、すなわち、0.15mg/mm2〜0.25mg/mm2の範囲(0.1mg/mm2〜0.3mg/mm2の範囲であれば良い)に設定すると、図3に示すように、SH波送信機1と軌道面10Aの間に、適切な大きさの第1粘性媒体のメニスカス31を形成できる。このことから、SH波送信機1を軌道面10Aに確実に取り付けることができると共に、SH波を、メニスカス31を伝達させずに接触線3を介して、SH波送信機1から軌道面10Aに伝達させることができて、SH波の軌道面10Aにおける伝播速度を正確に測定できる。
【0036】
尚、上記図3〜図5に示されたSH波送信機1,40,50のSH波送信面のRaを、全て0.6μm〜0.8μmにしたが、SH波送信機のSH波送信面のRaを0.6μmより小さい値にすると、SH波送信面が滑らかになりすぎて、SH波送信面上に粘性媒体を塗布したとき、この粘性媒体に表面張力がはたらいて、SH波送信面に粘性媒体の大きなメニスカスが形成されて、軌道面の伝播時間が計算上速くなる。また、SH波送信機のSH波送信面のRaを0.8μmより大きい値にすると、SH波送信面が粗くなりすぎて、SH波送信機を軌道面に密着させにくくなってSH波送信機の接触位置が不安定になり、SH波送信機を軌道面に確実に取り付けできなくなる。
【0037】
また、図3、図4および図5では、例として、SH波送信機と軌道面の間の第1粘性媒体のメニスカスを取り上げたが、SH波受信機と軌道面の間の第2粘性媒体のメニスカスを取り上げてもまったく同じことが成り立つのは勿論である。
【0038】
図6は、上記実施形態の超音波伝播速度測定方法において、SH波送信機およびSH波受信機と、軌道面との間の第1および第2粘性媒体の量を0.2mg/mm2にした場合と、0.35mg/mm2にした場合の夫々について、センサ角度を変化させたときの、SH波送信機1からSH波受信機2までのSH波の到達時間を示す図である。尚、図6に示す測定を、素材がSUJ2(高炭素クロム軸受鋼)で、外径が38.5mmの脱炭や研磨焼け等を生じていない正常な内輪の軌道面を用いて行った。また、第1および第2粘性媒体として、油性横波用で、粘度が36Pa・s(20℃)の粘性媒体を使用した。
【0039】
図6において、黒丸は、SH波送信機およびSH波受信機と、軌道面との間の第1および第2粘性媒体の量を0.2mg/mm2にした場合の測定点を示し、白丸は、SH波送信機およびSH波受信機と、軌道面との間の第1および第2粘性媒体の量を0.35mg/mm2にした場合の測定点を示している。また、図6において、直線Aは、マルテンサイト鋼における超音波の伝播速度の理論値(3240m/sec)を示す直線である。
【0040】
図6に示すように、軌道面10Aとの間の第1および第2粘性媒体の量を0.35mg/mm2にした場合の測定点である白丸は、直線Aから大きくかい離する一方、軌道面10Aとの間の第1および第2粘性媒体の量を0.2mg/mm2にした場合の測定点である黒丸は、直線の値と近似している。このことから、軌道面10AとSH波送信機の間の第1粘性媒体の量と、軌道面10AとSH波受信機の間の第2粘性媒体の量を、ともに0.1mg/mm2〜0.3mg/mm2にすると、軌道面10Aの表層部を伝播する超音波の伝播速度を正確に測定できる。尚、0.1mg/mm2〜0.3mg/mm2の範囲を規定したのは、この範囲で測定される伝播速度であれば、前記固体部材の表層部状態の測定に有効と判明したからである(この用途での許容誤差範囲内)。
【0041】
尚、本発明者は、油性横波用で、かつ、粘度が7Pa・s(20℃)〜36Pa・s(20℃)の範囲内の粘性媒体と、水性横波用で、かつ、粘度が36Pa・s(20℃)〜115Pa・s(20℃)の範囲内の粘性媒体について同様な測定を行い、図6と略同等な結果を得た。このことから、SH波の伝播速度の測定に、油性横波用で、かつ、粘度が7Pa・s(20℃)〜36Pa・s(20℃)の範囲内の粘性媒体や、水性横波用で、かつ、粘度が36Pa・s(20℃)〜115Pa・s(20℃)の範囲内の粘性媒体を用いても正確にSH波の伝播速度を測定できることを見出した。
【0042】
図7は、軌道面の径が38.5mmで素材がSUJ2軸受鋼の内輪を用い、センサ角度を170°に設定し、水性横波用で粘度115Pa・s(20℃)の粘性媒体を用い、かつ、SH波発信機と軌道面、および、SH波受信機と軌道面の間の上記粘性媒体の塗布量を共に0.2mg/mm2と0.35mg/mm2にしたときに、SH波受信機で測定されるSH波の波形を示す図である。図7において、波形Cは、塗布量を0.2mg/mm2としたときの波形であり、波形Dは、塗布量を0.35mg/mm2としたときの波形である。また、図8は、センサ角度を170°に設定し、水性横波用で粘度115Pa・s(20℃)の粘性媒体を用い、かつ、SH波発信機と軌道面、および、SH波受信機と軌道面の間の粘性媒体の塗布量を共に0.1mg/mm2以下としたときにSH波受信機で測定される代表的なSH波の波形を示す図である。
【0043】
図8に示すように、SH波受信機と軌道面の間の粘性媒体の塗布量を共に0.1mg/mm2以下とした場合には、SH波受信機で受信されたSH波の波形に大きな波形くずれが生じており、波形から得た伝播速度の速度誤差が大きくなる。
【0044】
一方、図7の波形Cに示すように、SH波発信機と軌道面、および、SH波受信機と軌道面の間の上記粘性媒体の塗布量を共に0.2mg/mm2にして、SH波発信機と軌道面、および、SH波受信機と軌道面の間に塗布される粘性媒体の量を0.1mg/mm2〜0.3mg/mm2の範囲に収めた場合には、SH波受信機で受信されたSH波の波形に波形くずれが生じておらず、波形から伝播時間を正確に読み取ることができる。
【0045】
尚、図7に示すSH波の波形に基づいて、軌道面を伝播するSH波の伝播速度の測定を行う際には、粘性媒体の量を0.35mg/mm2にした場合には、図7に矢印Eに示す波形Dにおける最大ピークの二つ前のピークの立下りのゼロクロス点を計時基準にして、軌道面を伝播するSH波の伝播速度を測定し、粘性媒体の量を0.2mg/mm2にした場合には、図7に矢印Fに示す波形Cにおける最大ピークの一つ前のピークの立下りのゼロクロス点を計時基準にして、軌道面を伝播するSH波の伝播速度を測定を行った。
【0046】
更に、本発明者は、上記図7の波形Cを用いて、この発明の一実施形態の固体表層部状態測定方法を以下のように行った。
【0047】
先ず、図7に矢印Fに示す波形Cにおける最大ピークの二つ前のピークの立下りのゼロクロス点を計時基準にして、軌道面を伝播するSH波の伝播速度を測定した。
【0048】
次に、上記測定されたSH波の軌道面の伝播速度を、ひずみが生じているか否かを識別するための軌道面の表層部におけるSHの伝播速度のひずみ基準値(素材がSUJ2軸受鋼)、脱炭を生じているか否かを識別するための軌道面の表層部におけるSHの伝播速度の脱炭基準値(素材がSUJ2軸受鋼)および研磨焼けを生じているか否かを識別するための軌道面の表層部におけるSH波の伝播速度の研磨焼け基準値(素材がSUJ2軸受鋼)の内の少なくとも1つと比較して、上記軌道面の表層部のひずみ、脱炭、研磨焼けの内の少なくとも1つを判断した。
【0049】
上記実施形態の超音波伝播速度測定方法によれば、SH波送信面7を、0.15mg/mm2〜0.25mg/mm2の第1粘性媒体を介して軌道面10Aの上記第1箇所に固定すると共に、SH波受信面8を、0.15mg/mm2〜0.25mg/mm2の第2粘性媒体を介して軌道面10Aの第2箇所に固定したので、軌道面10Aの表層部を伝播する超音波の伝播速度を精度良く測定できる。
【0050】
また、上記実施形態の超音波伝播速度測定方法によれば、SH波送信機1のSH波送信面7のRaおよびSH波受信機2のSH波受信面8のRaを、0.6μm〜0.8μmの範囲内に収めた上で、軌道面10Aの表層部におけるSH波の伝播速度の測定を行ったので、軌道面10Aの表層部を伝播するSH波の伝播速度を正確に測定できる。
【0051】
また、上記実施形態の固体表層部状態測定方法によれば、上記実施形態の超音波伝播速度測定方法によって測定された軌道面の表層部におけるSH波の伝播速度を、上記ひずみ基準値、上記脱炭基準値および上記研磨焼け基準値の内の少なくとも1つと比較して、軌道面の表層部のひずみ、脱炭、研磨焼けの内の少なくとも1つを判断するので、安全で扱いやすいSH波を用いて軌道面の表層部のひずみ、脱炭、研磨焼けの内の少なくとも1つを正確に測定できる。したがって、ひずみ、脱炭および研磨焼け等によって劣化して、規定の性能が発揮できなくなった軌道面を有する内輪の取り換え時期を安全簡単安価にかつ正確に知ることが可能になる。
【0052】
尚、上記実施形態の超音波伝播速度測定方法では、固体部材として、円筒ころ軸受の内輪10を採用したが、固体部材として、円筒ころ軸受の外輪、円筒ころ軸受のころ、玉軸受の内輪、玉軸受の外輪、玉軸受の玉、一方向クラッチの部品類、歯車、レール、無段変速機の摺動部品等を採用しても良い。
【0053】
また、上記実施形態の超音波伝播速度測定方法では、固体部材としてSUJ2軸受鋼製の内輪40を用いたが、例えば、固体部材として浸炭焼入を行ったSAE5120鋼の内輪等のSUJ2軸受鋼製以外から成る固体部材を用いてもよい。
【0054】
また、上記実施形態の超音波伝播速度測定方法では、SH波送信機1およびSH波受信機2と、軌道面10Aとを線接触させたが、SH波送信機、SH波受信機および固体部材の形状によって、SH波送信機およびSH波受信機と、固体部材とを点接触させても良く、面接触させても良い。
【0055】
また、上記実施形態の超音波伝播速度測定方法では、第1粘性媒体と第2粘性媒体を同一の粘性媒体にしたが、この発明の超音波伝播速度測定方法では、固体部材の形状または材質、および、超音波送信機や超音波受信機の形状または材質によって、第1粘性媒体と第2粘性媒体を自由に選択することができて、第1粘性媒体と第2粘性媒体を異なる粘性媒体で構成しても良い。
【0056】
また、上記実施形態の超音波伝播速度測定方法では、第1粘性媒体と第2粘性媒体の粘度範囲を0.15mg/mm2〜0.25mg/mm2にしたが、第1粘性媒体と第2粘性媒体の粘度範囲を、0.1mg/mm2〜0.3mg/mm2にしても良く、この場合も、第1粘性媒体と第2粘性媒体の粘度範囲を0.15mg/mm2〜0.25mg/mm2にした場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
また、上記実施形態の超音波伝播速度測定方法では、超音波としてSH波を用いたが、この発明の超音波伝播速度測定方法では、超音波として表面波等のSH波以外の超音波を用いて固体部材におけるその超音波の伝播速度を測定しても良く、例えば、SH波以外の超音波用の超音波送信機および超音波受信機と固体部材の間に塗布される粘性媒体の量を0.1mg/mm2〜0.3mg/mm2にしたとき正確な速度測定ができる等、SH波以外の超音波用の超音波送信機および超音波受信機と、固体部材との間に塗布される粘性媒体の量や、SH波以外の超音波用の超音波送信機および超音波受信機の送信面および受信面のRaについて、超音波としてSH波を用いた場合とまったく同等なことが成立する。
【0058】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項2の発明の超音波伝播速度測定方法によれば、被伝播速度測定物である固体表面と超音波送信機の超音波送信面の間に塗布される第1粘性媒体の量と、上記固体表面と超音波受信機の超音波受信面の間に塗布される第2粘性媒体の量を、ともに0.1mg/mm2〜0.3mg/mm2にした上で、固体部材の表層部における超音波の伝播速度の測定を行ったので、超音波送信機および超音波受信機と、固体部材の間に粘性媒体の大きなメニスカスが形成されることがなく、また、超音波送信機および超音波受信機を、固体部材に確実に取り付けできる。したがって、固体部材の表層部を伝播する超音波の伝播速度を正確に測定できる。
【0059】
また、請求項3の発明の超音波伝播速度測定方法によれば、上記超音波送信面を、0.15mg/mm2〜0.25mg/mm2の上記第1粘性媒体を介して上記固体部材の上記第1箇所に固定すると共に、上記超音波受信面を、0.15mg/mm2〜0.25mg/mm2の上記第2粘性媒体を介して上記固体部材の上記第2箇所に固定したので、固体部材の表層部を伝播する超音波の伝播速度を更に正確に測定できる。
【0060】
また、請求項1の発明の超音波伝播速度測定方法によれば、超音波送信機の超音波送信面のRaおよび超音波受信機の超音波受信面のRaを、0.6μm〜0.8μmの範囲内に収めた上で、固体部材の表層部における超音波の伝播速度の測定を行ったので、超音波送信機および超音波受信機と、固体部材の間に粘性媒体の大きなメニスカスが形成されることがなく、また、超音波送信機および超音波受信機を、固体部材に確実に取り付けできる。したがって、固体部材の表層部を伝播する超音波の伝播速度を正確に測定できる。
【0061】
また、請求項6の発明の固体表層部状態測定方法によれば、上記超音波伝播速度測定方法によって測定された固体部材の表層部における超音波の伝播速度を、ひずみ基準値、脱炭基準値および研磨焼け基準値の内の少なくとも1つと比較して、上記固体部材の表層部のひずみ、脱炭、研磨焼けの内の少なくとも1つを判断するので、安全で扱いやすい超音波を用いて上記固体部材の表層部のひずみ、脱炭、研磨焼けの内の少なくとも1つを正確に測定できる。したがって、ひずみ、脱炭および研磨焼け等によって劣化して、規定の性能が発揮できなくなった固体部材の取り換え時期を安全簡単安価にかつ正確に知ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態の超音波伝播速度測定方法である円筒ころの内輪の表層部を伝播するSH波の伝播速度の測定方法を行うときの内輪の軌道面上のSH波送信機およびSH波受信機の配置を示す図である。
【図2】 上記内輪の軸方向の正面図である。
【図3】 上記実施形態において、SH波送信機と軌道面との間に形成された第1粘性媒体のメニスカスを誇張して示した図である。
【図4】 SH波送信機と軌道面との間に塗布された第1粘性媒体の量が少ない場合に、SH波送信機と軌道面との間に形成される第1粘性媒体のメニスカスを誇張して示した図である。
【図5】 SH波送信機と軌道面との間に塗布された第1粘性媒体の量が多い場合に、SH波送信機と軌道面との間に形成される第1粘性媒体のメニスカスを誇張して示した図である。
【図6】 媒体塗布量とSH波の到達時間の関係を示す図である。
【図7】 適切な量の媒体を塗布した場合に、SH波受信機で測定されるSH波の波形を示す図である。
【図8】 塗布される媒体の量が少ない場合に、SH波受信機で測定される代表的なSH波の波形を示す図である。
【符号の説明】
1,40,50 SH波送信機
2 SH波受信機
3,5,53 接触線
7 SH波送信面
8 SH波受信面
10 内輪
10A,42A,52A 軌道面
31,41,51 メニスカス
θ センサ角度
Claims (6)
- 超音波送信機の超音波送信面の算術平均粗さを0 . 6μm〜0 . 8μmにして、上記超音波送信面を、油性横波用粘性媒体である第1粘性媒体を介して鋼製部品である軸受の軌道面の第1箇所に固定する工程と、
超音波受信機の超音波受信面の算術平均粗さを0 . 6μm〜0 . 8μmにして、上記超音波受信面を、油性横波用粘性媒体である第2粘性媒体を介して上記軌道面の第1箇所と異なる第2箇所に固定する工程と、
上記超音波送信機から送信されて上記軌道面の表層部を伝播したSH波である超音波を、上記超音波受信機で受信して、上記超音波の上記軌道面の上記表層部における伝播速度を測定する工程と
を備えることを特徴とする超音波伝播速度測定方法。 - 超音波送信機の超音波送信面の算術平均粗さを0 . 6μm〜0 . 8μmにして、鋼製部品である軸受の軌道面の表面の第1箇所と上記超音波送信機の上記超音波送信面の少なくとも一方に、油性横波用粘性媒体である第1粘性媒体を塗布して、上記超音波送信面を、0 . 1mg/mm 2 〜0 . 3mg/mm 2 の上記第1粘性媒体を介して上記軌道面の上記表面の上記第1箇所に固定する工程と、
超音波受信機の超音波受信面の算術平均粗さを0 . 6μm〜0 . 8μmにして、上記鋼製部品である軸受の軌道面の表面の第2箇所と上記超音波受信機の上記超音波受信面の少なくとも一方に、油性横波用粘性媒体である第2粘性媒体を塗布して、上記超音波受信面を、0 . 1mg/mm 2 〜0 . 3mg/mm 2 の上記第2粘性媒体を介して上記軌道面の上記表面の上記第2箇所に固定する工程と、
上記超音波送信機から送信されて上記軌道面の表層部を伝播したSH波である超音波を、上記超音波受信機で受信して、上記超音波の上記軌道面の上記表層部における伝播速度を測定する工程と
を備えることを特徴とする超音波伝播速度測定方法。 - 請求項2に記載の超音波伝播速度測定方法において、
上記超音波送信面を、0 . 15mg/mm 2 〜0 . 25mg/mm 2 の上記第1粘性媒体を介して上記鋼製部品である軸受の軌道面の上記第1箇所に固定すると共に、上記超音波受信面を、0 . 15mg/mm 2 〜0 . 25mg/mm 2 の上記第2粘性媒体を介して上記鋼製部品である軸受の軌道面の上記第2箇所に固定することを特徴とする超音波伝播速度測定方法。 - 請求項1乃至3のいずれか1つに記載の超音波伝播速度方法において、
上記鋼製部品は、軸受鋼からなることを特徴とする超音波伝播速度測定方法。 - 請求項1乃至4のいずれか1つに記載の超音波伝播速度方法において、
上記鋼製部品は、内輪であることを特徴とする超音波伝播速度測定方法。 - 請求項1乃至5のいずれか1つに記載の超音波伝播速度測定方法によって測定された鋼製部品である軸受の軌道面の表層部における超音波の伝播速度を、
ひずみが生じているか否かを識別するための鋼製部品である軸受の軌道面の表層部における超音波の伝播速度のひずみ基準値、脱炭を生じているか否かを識別するための鋼製部品である軸受の軌道面の表層部における超音波の伝播速度の脱炭基準値、および、研磨焼けを生じているか否かを識別するための鋼製部品である軸受の軌道面の表層部における超音波の伝播速度の研磨焼け基準値の内の少なくとも1つと比較して、
上記鋼製部品である軸受の軌道面の表層部のひずみ、脱炭、研磨焼けの内の少なくとも1つを判断することを特徴とする固体表層部状態測定方法。
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