JP4186050B2 - マルチピースソリッドゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ソリッドコアと、ソリッドコアを被覆する少なくとも1層の中間層と、中間層を被覆するカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールに関し、更に詳述すると、従来のスリーピースゴルフボールと同等のスピン及び弾道特性を有し、繰り返し打撃耐久性、耐擦過傷性、生産性に優れたマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、練習用のゴルフボールとしては、耐久性に優れるワンピースボールや、飛びが比較的良好なツーピースボールなどが用いられている。しかし、ワンピースボールは、反発があまりにも低すぎること、ドライバーやアイアンでのフルショット時にスピンがかかりすぎて吹き上がる弾道となることなど、コースで主に用いられるボールとの違いが大きすぎるものである。
【0003】
また、練習用のツーピースボールは、カバーが硬いアイオノマー樹脂で形成されているが、スピン量がプロや上級者がコースで使用するボールに比べ少なすぎること、耐擦過傷性に劣ることなどからプロや上級者の練習用ボールとしては不向きである。
【0004】
一方、ここ数年プロや上級者がコースで使用するボールとしては、ポリウレタンエラストマーをカバーとして用いたスリーピースソリッドゴルフボール等のマルチピースソリッドゴルフボールが普及しており、これらは飛び、フィーリング、スピンなどの諸特性に優れ、耐久性についてもある程度改善がなされているが、練習用など繰り返し何度も打撃されるボールとしては耐久性が不十分である。
【0005】
また、特開2001−54588号公報(特許文献1)には、カバーに熱可塑性ポリウレタンエラストマーを被覆したスリーピースゴルフボールが提案されているが、中間層に使用するアイオノマー樹脂との密着がよくないため、中間層を被覆した後にプライマーを塗布してからカバーを形成する必要があり、生産性において改良の余地が残されている。
【0006】
一方、特開平9−215778号公報(特許文献2)には、熱可塑性ポリウレタンエラストマーをカバーとしたツーピースゴルフボールが記載されているが、このツーピースボールは上述のような密着の問題は生じないものの、カバーとコアとの間に硬度の高い中間層を有するスリーピースボールに比べ、ドライバーやアイアンのフルショット時にスピンがかかりすぎ、吹き上がり気味の軌道になってしまう。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−54588号公報
【特許文献2】
特開平9−215778号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、飛距離がワンピースボールよりも優れ、プロや上級者がコース用として用いるカバーに熱可塑性ポリウレタンエラストマーを被覆した従来のスリーピースゴルフボールと同等のスピン及び弾道特性を有し、繰り返し打撃耐久性、耐擦過傷性に優れると共に、生産性にも優れたゴルフボールを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ソリッドコアと、該ソリッドコアを被覆する少なくとも1層の中間層と、該中間層を被覆するカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールについて、ソリッドコアを有機硫黄化合物を含有する基材ゴム、中間層をポリウレタン系エラストマーを50重量%以上含有する基材樹脂、カバーをポリウレタン系エラストマーを主材として形成し、更にソリッドコアと中間層の硬度差及び中間層とカバーの硬度差を最適化したマルチピースソリッドゴルフボールが、飛距離に優れ、従来のスリーピースゴルフボールと同等のスピン及び弾道特性を有し、繰り返し打撃耐久性、耐擦過傷性、生産性に優れたものであり、特に練習用として好適であること知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記のマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。
[請求項1] ソリッドコアと、該ソリッドコアを被覆する少なくとも1層の中間層と、該中間層を被覆するカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、ソリッドコアが有機硫黄化合物を含有する基材ゴムを主材として形成され、中間層が熱可塑性ポリウレタン系エラストマーを50重量%以上含有する基材樹脂を主材として形成されると共に、カバーが、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキシレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、ジシクロヘキシルメチルメタンジアミン(水添MDA)及びイソホロンジアミン(IPDA)の群から選ばれる単分子鎖延長剤が含まれるポリウレタン系エラストマーに、1分子中に官能基として2個以上のイソシアネート基をもつイソシアネート化合物を該イソシアネート基と実質的に反応しない熱可塑性樹脂中に分散させたイソシアネート混合物を混合してなるものにより形成され、ソリッドコア表面のショアD硬度が45〜58、中間層のショアD硬度が55〜60、カバーのショアD硬度が47〜55であり、リッドコア表面のショアD硬度と中間層のショアD硬度とが0<{(中間層のショアD硬度)−(ソリッドコア表面のショアD硬度)}≦10を満たし、かつ中間層のショアD硬度とカバーのショアD硬度とが0<{(中間層のショアD硬度)−(カバーのショアD硬度)}≦10を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
[請求項2] 中間層の厚さが1.0〜2.2mmである請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
[請求項3] カバーの厚さが0.9〜2.1mmである請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
[請求項4] 中間層材料として使用されるポリウレタン系エラストマーには、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキシレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、ジシクロヘキシルメチルメタンジアミン(水添MDA)及びイソホロンジアミン(IPDA)の群から選ばれる単分子鎖延長剤が含まれる請求項1〜3のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
[請求項5] カバー材料に含まれるイソシアネート化合物として、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、及びキシリレンジイソシアネートの群から選ばれる化合物が用いられる請求項1〜4のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
[請求項6] 中間層材料及びカバー材料として使用されるポリウレタン系エラストマーに、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーの群から選ばれるエラストマーを添加する請求項1〜5のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、ソリッドコアと、ソリッドコアを被覆する少なくとも1層の中間層と、中間層を被覆するカバーとからなるものである。
【0012】
上記ソリッドコアは、有機硫黄化合物を含有する基材ゴムを主材とするゴム組成物により形成する。
【0013】
この場合、基材ゴムとしては、ポリブタジエンを使用したものが好ましい。このポリブタジエンとしては、従来からソリッドゴルフボールに用いられているものを使用することができ、シス構造を少なくとも40%以上有する1,4−シスポリブタジエンが好適に用いられる。また、この基材ゴム中には、所望により上記ポリブタジエンに天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴムなどを適宜配合することができる。
【0014】
上記ゴム組成物には、通常、不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩と、有機過酸化物と、無機充填剤とを配合する。
【0015】
ここで、不飽和カルボン酸として具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸であることが好ましい。
【0016】
また、不飽和カルボン酸の金属塩としては、メタクリル酸亜鉛、アクリル酸亜鉛等の不飽和脂肪酸の亜鉛塩、マグネシウム塩等を配合し得るが、特にアクリル酸亜鉛を好適に使用し得る。
【0017】
上記不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩は、上記基材ゴム100重量部に対し、10重量部以上、好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上、上限として60重量部以下、好ましくは50重量部以下、更に好ましくは45重量部以下、最も好ましくは40重部以下配合する。配合が多すぎると硬くなりすぎてしまい、耐え難い打感になり、少なすぎると反発性が低下してしまう。
【0018】
無機充填剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を挙げることができ、その配合量は、上記基材ゴム100重量部に対し、5重量部以上、好ましくは7重量部以上、上限として50重量部以下、好ましくは40重量部以下、更に好ましくは30重量部以下、最も好ましくは20重量部以下とする。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な重量、及び適正な反発性を得ることができない。
【0019】
有機過酸化物としては、市販品を挙げることができ、例えば、パークミルD(日本油脂社製)、パーヘキサ3M(日本油脂社製)、Luperco 231XL(アトケム社製)等が挙げられる。必要に応じて2種以上の異なる有機過酸化物を混合して用いてもよい。
【0020】
有機過酸化物は、上記基材ゴム100重量部に対し、0.1重量部以上、好ましくは0.3重量部以上、更に好ましくは0.5重量部以上、最も好ましくは0.7重量部以上、上限として5重量部以下、好ましくは4重量部以下、更に好ましくは3重量部以下、最も好ましくは2重量部以下配合する。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると好適な打感、耐久性及び反発性を得ることができない。
【0021】
また、必要に応じて老化防止剤を配合することができ、例えば、市販品としてノクラックNS−6、同NS−30(大内新興化学工業(株)製)、ヨシノックス425(吉富製薬(株)製)等が挙げられる。上記基材ゴム100重量部に対し、通常0重量部以上、好ましくは0.05重量部以上、更に好ましくは0.1重量部以上、最も好ましくは0.2重量部以上、上限として3重量部以下、好ましくは2重量部以下、更に好ましくは1重量部以下、最も好ましくは0.5重量部以下とすることが、好適な反発性、耐久性を得ることができる点から推奨される。
【0022】
本発明においては、上記ゴム組成物に有機硫黄化合物を配合する。
有機硫黄化合物は反発性を向上させるために配合するが、具体的には、チオフェノール、チオナフトール、ハロゲン化チオフェノール又はそれらの金属塩等を配合することが推奨され、より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2〜4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等が挙げられるが、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。このような、有機硫黄化合物の配合量は、上記基材ゴム100重量部に対し、通常0.05重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、更に好ましくは0.2重量部以上、上限として5重量部以下、好ましくは4重量部以下、更に好ましくは3重量部以下、最も好ましくは2.5重量部以下であることが推奨される。少なすぎると、十分なコアの反発が得られず、所望する飛距離が得られなくなることがある。多すぎると、反発の改良効果が、それ以上期待できなくなったり、コアの硬度が軟らかくなりすぎて、打感が悪くなったりすることがある。
【0023】
上記ソリッドコアは、上記成分を含有するゴム組成物を、公知の方法で加硫・硬化させてソリッドコアを製造することができるが、例えば、通常の混練機、例えばバンバリーミキサーやロール等を用いて混練し、コア用金型に圧縮又は射出成形し、成形体を架橋剤及び共架橋剤が作用するのに十分な温度、例えば架橋剤としてジクミルパーオキサイドを用い、共架橋剤としてアクリル酸亜鉛を用いた場合には、通常約130〜170℃、特に150〜160℃で10〜40分、特に12〜20分の条件にて適宜加熱硬化して製造することができる。
【0024】
また、上記ソリッドコア表面のショアD硬度は45以上、特に48以上で、58以下、特に55以下の範囲が好ましい。この場合、ソリッドコアの配合材料、架橋剤、共架橋剤の種類や量、加硫条件などを適宜選定することにより、上述した本発明の範囲内の表面硬度(ショアD硬度)を得ることが可能となる。ソリッドコア表面の硬度が上記の範囲よりも小さい場合には、打感が軟らかくなったり、反発性が低下して飛距離が出なくなることがあり、硬度が上記の範囲よりも大きい場合には、打感が硬くなったり、吹き上がる弾道となることがある。
【0025】
また、上述したソリッドコアの構造については、単層又は複数層に形成することができ、スピン量を調整するためには複層、特に2層に形成することが好ましい。複数層のソリッドコアを用いる場合には、本発明におけるソリッドコア表面の硬度とは、ソリッドコアの最外層の表面硬度を意味するものである。
【0026】
なお、上記ソリッドコアの直径は35mm以上、特に36mm以上とすることが好ましく、一方、上限としては40mm以下、特に38mm以下とすることが好ましい。また、重さは25〜32g、特に27〜30gであることが好ましい。
【0027】
本発明において、中間層は上記ソリッドコアを被覆するように形成され、ポリウレタン系エラストマーを50重量%以上含有する基材樹脂を主材として形成されるものである。
【0028】
上記基材樹脂は、ポリウレタン系エラストマー、好ましくは熱可塑性ポリウレタン系エラストマーを50重量%以上、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、更に好ましくは100重量%含有するものであり、必要に応じてポリウレタン系エラストマー以外の成分として、例えば、アイオノマー樹脂やポリウレタン系以外のエラストマーを添加する。ポリウレタン系エラストマーの量が50重量%未満では、カバーとの密着性が悪くなり、繰り返し打撃したときの反発性の低下が早く発生してしまう。
【0029】
上記ポリウレタン系エラストマーの分子構造は、一般に、ソフトセグメントを構成する高分子ポリオール化合物と、ハードセグメントを構成する単分子鎖延長剤及びジイソシアネートからなるものである。
【0030】
高分子ポリオール化合物としては、特に制限されるものではないが、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール等が挙げられ、反発弾性が高く、低温特性に優れる点で、ポリエーテル系の方がポリエステル系に比べて好ましく用いられる。ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、特に、ポリテトラメチレングリコールが好ましく用いられる。また、これらの数平均分子量は約1000〜5000、好ましくは2000〜4000である。
【0031】
ジイソシアネートとしては、特に制限されるものではないが、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。本発明では、後述するイソシアネート化合物を配合した場合、該化合物との反応安定性の点から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく採用される。
【0032】
単分子鎖延長剤としては、特に制限されず、通常の多価アルコール、アミン類を用いることができ、具体的には1,4−ブチレングリコール、1,2−エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキシレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、ジシクロヘキシルメチルメタンジアミン(水添MDA)、イソホロンジアミン(IPDA)などが挙げられる。これら鎖延長剤の平均分子量は20〜15000であることが好ましい。
【0033】
このようなポリウレタン系エラストマーとしては、市販品を用いることができ、例えばパンデックスT7890,同T7298,同TR3080,同T8290,同T8295,同T8260(ディーアイシーバイエルポリマー社製)やレザミン2593,同2597(大日精化工業社製)などが挙げられる。
【0034】
一方、ポリウレタン系エラストマーに添加するアイオノマー樹脂としては、例えばオレフィン−不飽和カルボン酸二元ランダム共重合体、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル三元ランダム共重合体又はそれらの金属イオン中和物が挙げられる。これらは市販品を使用することも可能であり、例えば、ニュクレル1560、同1214、同1035(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、ESCOR5200、同5100、同5000(いずれもEXXONMOBIL CHEMICAL社製)等の二元ランダム共重合体、ニュクレルAN4311、同AN4318(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、ESCOR ATX325、同ATX320、同ATX310(いずれもEXXONMOBIL CHEMICAL社製)等の三元ランダム共重合体、ハイミラン1554、同1557、同1601、同1605、同1706、同AM7311(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、サーリン7930(米国デュポン社製)、アイオテック3110、同4200(EXXONMOBILCHEMICAL社製)等の二元ランダム共重合体の金属イオン中和物、ハイミラン1855、同1856、同AM7316(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、サーリン6320、同8320、同9320、同8120(いずれも米国デュポン社製)、アイオテック7510、同7520(いずれもEXXONMOBIL CHEMICAL社製)等の三元ランダム共重合体の金属イオン中和物をそれぞれ挙げることができる。
【0035】
また、ポリウレタン系エラストマーに添加するポリウレタン系以外のエラストマーとしては、具体的には、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等を挙げることができ、これらは熱可塑性であることが好ましく、反発性を更に高めることができる点から、特にオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマーを好適に使用することができる。これらは、市販品を使用してもよく、例えば、オレフィン系エラストマーとして、ダイナロン(JSR社製)、ポリエステル系エラストマーとして、ハイトレル(東レ・デュポン社製)等を挙げることができる。
【0036】
上記中間層は、上記基材樹脂に、必要に応じて種々の添加剤を添加し、これを公知の方法、例えば、射出成形によりソリッドコア上に成形することにより形成することができる。上記添加剤として、具体的には、顔料、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを加えることができる。このような添加剤として、より具体的には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン等の無機充填剤を挙げることができる。
【0037】
また、上記中間層のショアD硬度は55以上、特に56以上で、60以下、特に59以下の範囲が好ましい。この場合、中間層の配合材料の種類や量、成形条件を適宜選定することにより、上述した本発明の範囲内の硬度(ショアD硬度)を得ることが可能となる。中間層の硬度が上記の範囲よりも小さい場合には、反発が低下したりスピン量が増えすぎて飛距離が出なくなることがあり、硬度が上記の範囲よりも大きい場合には、打感が硬くなったり耐擦過傷性や繰り返し打撃耐久性が悪くなることがある。
【0038】
なお、上記中間層の厚さとしては、1.0mm以上、特に1.4mm以上、上限としては2.2mm以下、特に1.8mm以下であることが好ましい。薄すぎると、生産性が悪くなると共に、フルショット時のスピンが増え、吹き上がり気味になることがある。厚すぎると、反発性が低下して所望する飛距離が得られなくなることがある。
【0039】
本発明において、カバーは上記中間層を被覆するように形成され、ポリウレタン系エラストマーを主材として形成されるものである。
【0040】
この場合、ポリウレタン系エラストマーとしては、具体的には中間層で例示した熱可塑性ポリウレタン系エラストマーを用いることできる。熱可塑性のものは、熱硬化性のものと異なりカバーを成形する際に予備成型が必要ないので生産性の点から有利である。
【0041】
このような熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとしてより具体的には、例えばパンデックスT7890,同T7298,同TR3080,同T8290,同T8295,同T8260(ディーアイシーバイエルポリマー社製)やレザミン2593,同2597(大日精化工業社製)などの市販品を挙げることができる。
【0042】
また、本発明のカバーとしては、上述した熱可塑性ポリウレタン系エラストマーに後述する特定のイソシアネート化合物を更に配合したものを用いることができる。これにより、上記のようにポリウレタン系エラストマー単独を主材として形成されたカバーを用いたゴルフボールと比べて、耐カット性、耐擦過傷性を更に優れたものとすることができるものである。
【0043】
ここで、上記特定のイソシアネート化合物とは、(i)1分子中に官能基として2個以上のイソシアネート基をもつイソシアネート化合物と(ii)該イソシアネート基と実質的に反応しない熱可塑性樹脂とからなり、(i)成分のイソシアネート化合物を(ii)成分の熱可塑性樹脂中に分散させたイソシアネート混合物のことを意味する。
【0044】
上記(i)成分のイソシアネート化合物としては、従来のポリウレタンに関する技術において使用されているイソシアネート化合物はいずれも使用でき、これらに限定されることはないが、例えば芳香族イソシアネート化合物としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート及びこの両者の混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニルジイソシアネート等が挙げられる。また、上記芳香族イソシアネート化合物の水添物、例えばジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを用いることもできる。更に、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
また、上記イソシアネート化合物の配合量は、上記ポリウレタン系エラストマー100重量部に対して、通常1重量部以上、好ましくは5重量部以上、更に好ましくは8重量部以上、上限として50重量部以下、好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下とすることが好ましく、少なすぎると十分な架橋反応が得られず、物性の向上が認められないことがあり、多すぎると経時、熱、紫外線による変色の増大、反発の低下等の問題が生じる場合がある。
【0046】
上記カバーは、上記成分に必要に応じて他の成分、即ち、顔料、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、可塑剤等の公知の各種添加剤を配合し、これを公知の方法、例えば、射出成形により中間層上に成形することにより形成することができる。
【0047】
また、上記カバーのショアD硬度は47以上、特に50以上で、55以下、特に54以下の範囲が好ましい。この場合、カバーの配合材料の種類や量、成形条件を適宜選定することにより、上述した本発明の範囲内の硬度(ショアD硬度)を得ることが可能となる。カバーの硬度が上記の範囲よりも小さい場合には、スピンがかかりすぎて飛距離が出なくなることがあり、硬度が上記の範囲よりも大きい場合には、スピン量が減ってコントロール性が悪くなることがある。
【0048】
なお、上記カバーの厚さとしては、0.9mm以上、特に1.3mm以上、上限としては2.1mm以下、特に1.7mm以下であることが好ましい。薄すぎると、生産性が悪くなると共に、耐擦過傷性が悪くなることがある。厚すぎると、反発性が低下したり、スピンが増えたりして、所望する飛距離が得られなくなることがある。
【0049】
本発明においては、ソリッドコア表面のショアD硬度と中間層のショアD硬度を0<{(中間層のショアD硬度)−(ソリッドコア表面のショアD硬度)}≦10、特に2≦{(中間層のショアD硬度)−(ソリッドコア表面のショアD硬度)}≦8を満たすようにすることが好ましい。この硬度差が上記範囲より大きいと相対的にソリッドコアが軟らかくなることになり、反発が低下して飛距離が出なくなり、中間層とソリッドコアとの密着力が低下して繰り返し打撃したときの反発低下が早く発生してしまい、硬度差が小さいと相対的に中間層が軟らかくなることになり、スピン量が多すぎたり反発が低下して飛距離が出なくなる。
【0050】
また、本発明においては、中間層のショアD硬度とカバーのショアD硬度を0<{(中間層のショアD硬度)−(カバーのショアD硬度)}≦10、好ましくは2≦{(中間層のショアD硬度)−(カバーのショアD硬度)}≦8を満たすようにする。この硬度差が上記範囲より大きいと相対的にカバーが軟らかくなることになり、スピンがかかりすぎて飛距離が出なくなり、また、中間層とカバーとの密着力が低下して繰り返し打撃したときの反発低下が早く発生してしまう。硬度差が小さいと相対的に中間層が軟らかくなることになり、スピン量が多すぎたり反発が低下して飛距離が出なくなることがある。
【0051】
なお、本発明において、中間層は1層又は2層以上に形成するが、中間層を2層以上形成する場合には、中間層のいずれの層も上記範囲にあることが必要である。
【0052】
本発明においては、上記中間層とカバーとの密着性が良好であることから、中間層とカバーとの間に従来のマルチピースボールのように接着剤層を設ける必要がなく、中間層形成後にプライマーを塗布する工程を必要としないので、生産性の向上に寄与することができる。
【0053】
また、本発明のゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、直径42.67mm以上、重量45.93g以下に形成することができるが、特にこれに限定されない。なお、本発明のゴルフボールは特に練習用としても好適である。通常、直径は42.67〜42.90mm、特に42.70〜42.80mm、重量は44.9〜45.93g、特に45.2〜45.6gである。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、飛距離がワンピースボールよりも優れ、プロや上級者がコース用として用いるカバーに熱可塑性ポリウレタンエラストマーを被覆した従来のスリーピースゴルフボールと同等のスピン及び弾道特性を有し、繰り返し打撃耐久性、耐擦過傷性に優れると共に、中間層とカバーとの間にプライマーを塗布したり、カバーを予備成型したりする必要がないため生産性にも優れたマルチピースソリッドゴルフボールを与えることができる。
【0055】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0056】
[実施例1〜3,比較例1〜9]
<実施例1〜3及び比較例1〜7のボールの製造>
ポリブタジエン(BR11,BR18、いずれもJSR株式会社製)を主成分とする表1に示したコア材料を用いて、加硫温度157℃、加硫時間15分で加硫し、各ソリッドコアを作製し、得られたソリッドコアの諸物性を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
次に、表2,3に示す組成の材料を用い、ソリッドコア表面上にインジェクション成形により中間層を成形して諸物性を測定し、更に表2,3に示す組成の材料を用いて中間層上にインジェクション成形によりカバーを成形してゴルフボールを得、その諸物性を測定した。上記諸物性の測定結果を表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
※1 パークミルD(ジクミルパーオキサイド) 日本油脂社製商品名
※2 パーヘキサ3M−40(1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン) 日本油脂社製商品名
※3 ノクラックNS−6(大内新興化学工業社製)
※4 ソリッドコア表面の硬度をASTM D−2240に従って測定
【0060】
【表2】
【0061】
※5 ソリッドコアに中間層を被覆したときと同じ温度条件にて厚さ2mmのシートを射出成形にて作製し、約2週間放置後、ASTM D−2240に従って測定
※6 中間層にカバーを被覆したときと同じ温度条件にて厚さ2mmのシートを射出成形にて作製し、約2週間放置後、ASTM D−2240に従って測定
【0062】
【表3】
【0063】
なお、表中に記載した商品名、材料は以下の通りである。
「ハイミラン」シリーズ:三井・デュポンポリケミカル社製 アイオノマー樹脂
「サーリン」シリーズ:デュポン社製 アイオノマー樹脂
「パンデックス」シリーズ:ディーアイシーバイエルポリマー社製 熱可塑性ポリウレタンエラストマー
【0064】
また、イソシアネート化合物については以下のものを使用した。
イソシアネート化合物
商品名クロネートEM30:大日精化工業社製のイソシアネートマスターバッチを使用[4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを30重量%含有(JIS−K1556によるアミン逆滴定イソシアネート測定濃度5〜10重量%)、マスターバッチベース樹脂はポリエステルエラストマー]
なお、イソシアネート化合物は射出成形と同時に他のカバー材料に混練して使用した。
【0065】
<ボールの諸特性の評価>
上記で製造した各ゴルフボール及び下記に示す市販品のゴルフボール(比較例8,9)の諸特性を下記の通り評価した。結果を表4に示す。
比較例8:ブリヂストンスポーツ社製ツーピース練習ボール 『Range Altus Softfeel(緑)』
比較例9:ブリヂストンスポーツ社製ワンピース練習ボール 『Bridgestone Range』
【0066】
【表4】
【0067】
なお、ボールの評価方法と基準は下記の通り。
飛び
ドライバー(W#1)を用い、HS=50m/sで打撃したときのボールの飛距離(キャリーとトータル距離)を測定して下記の基準で評価した。ドライバー(W#1)は、ブリヂストンスポーツ社製品 TourStage X500(ロフト角8°)を使用した。
〇:良好(トータル飛距離が260m以上)
×:悪い(トータル飛距離が260m未満)
コントロール性
サンドウェッジ(SW、ブリヂストンスポーツ社製 J’s Classical Edition)、HS=20m/sでアプローチショットしたときのボールのスピン量を測定して下記基準で評価した。
〇:スピン量が5500rpm以上
×:スピン量が5500rpm未満
フィーリング
プロゴルファー5名が、各ボールに対し、ドライバー(W#1)を用いてそれぞれ打撃したときの打感について評価した。
〇:5名中4名がしっかり感のある良好な打感と評価
×:5名中4名が軟らかすぎると評価
繰り返し打撃時の耐久性
ドライバー(W#1)、HS=50m/sで繰り返し打撃し、ボールの反発が連続して3%低下するまでの回数を計数し、この回数から実施例1における回数を100とした場合の相対指数を算出してこの値により下記の基準で評価した。
〇:80以上
×:50未満
耐擦過傷性
溝が角溝であるピッチングウェッジ(PW)を用い、HS=45m/sで1回打撃した後のボール表面の状態を下記の基準で評価した。
〇:まだ使用することができる
△:使用することができるが、クラブフェーズにカバーが付くため好ましくない
×:ボール表面に傷がつき使用することができない
【0068】
本発明のゴルフボールは、飛距離、コントロール性、フィーリング、繰り返し打撃耐久性、耐擦過傷性、生産性のいずれについても欠点がなく、総合的に優れたボール特性を有することが表4の結果からわかる。これに対して、比較例1〜9のゴルフボールについては、飛距離、コントロール性、フィーリング、繰り返し打撃耐久性、耐擦過傷性、生産性の少なくともいずれか1つに劣るものであり、総合的に優れたボール特性を有していないことが表4の結果からわかる。
【0069】
比較例1〜9のゴルフボールについて具体的に説明すると下記の通りである。
比較例1:カバーがアイオノマー樹脂であるので、中間層との密着が悪く、繰り返し打撃耐久性に劣ると共に、耐擦過傷性も悪い
比較例2:中間層がアイオノマー樹脂であるので、カバーとの密着が悪く、繰り返し打撃耐久性に劣る
比較例3:中間層がソリッドコア表面及びカバーより軟らかいため、ドライバー(W#1)での打撃時のスピン量が増えると共に、反発も低下するため飛距離が出ない
比較例4:中間層がソリッドコア表面より軟らかいため、ドライバー(W#1)での打撃時のスピン量が多すぎて飛距離が出ない
比較例5:カバーが中間層より軟らかすぎる(硬度差が10より大きい)ため、ドライバー(W#1)での打撃時のスピンがかかりすぎて飛距離が出ない
比較例6:ソリッドコア表面が中間層より軟らかい(硬度差が10より大きい)ため、フィーリングが軟らかくなりすぎると共に、反発も低下して飛距離が出ない
比較例7:ソリッドコアに有機硫黄化合物が含有されていないため反発が低く飛距離が出ない
比較例8:硬いアイオノマーカバーのツーピースボールでありスピン量が少なくコントロール性が極めて悪い
比較例9:ワンピースボールであり飛距離が極端に出ない
Claims (6)
- ソリッドコアと、該ソリッドコアを被覆する少なくとも1層の中間層と、該中間層を被覆するカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、ソリッドコアが有機硫黄化合物を含有する基材ゴムを主材として形成され、中間層が熱可塑性ポリウレタン系エラストマーを50重量%以上含有する基材樹脂を主材として形成されると共に、カバーが、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキシレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、ジシクロヘキシルメチルメタンジアミン(水添MDA)及びイソホロンジアミン(IPDA)の群から選ばれる単分子鎖延長剤が含まれるポリウレタン系エラストマーに、1分子中に官能基として2個以上のイソシアネート基をもつイソシアネート化合物を該イソシアネート基と実質的に反応しない熱可塑性樹脂中に分散させたイソシアネート混合物を混合してなるものにより形成され、ソリッドコア表面のショアD硬度が45〜58、中間層のショアD硬度が55〜60、カバーのショアD硬度が47〜55であり、リッドコア表面のショアD硬度と中間層のショアD硬度とが0<{(中間層のショアD硬度)−(ソリッドコア表面のショアD硬度)}≦10を満たし、かつ中間層のショアD硬度とカバーのショアD硬度とが0<{(中間層のショアD硬度)−(カバーのショアD硬度)}≦10を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
- 中間層の厚さが1.0〜2.2mmである請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- カバーの厚さが0.9〜2.1mmである請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- 中間層材料として使用されるポリウレタン系エラストマーには、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキシレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、ジシクロヘキシルメチルメタンジアミン(水添MDA)及びイソホロンジアミン(IPDA)の群から選ばれる単分子鎖延長剤が含まれる請求項1〜3のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- カバー材料に含まれるイソシアネート化合物として、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、及びキシリレンジイソシアネートの群から選ばれる化合物が用いられる請求項1〜4のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
- 中間層材料及びカバー材料として使用されるポリウレタン系エラストマーに、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーの群から選ばれるエラストマーを添加する請求項1〜5のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
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