JP4185906B2 - 画像耐ガス性試験方法 - Google Patents
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Description
1.試験槽内のオゾン及び二酸化窒素を少なくとも含有する混合ガス雰囲気に画像サンプルを設置して該画像サンプルの耐ガス性を評価する画像耐ガス性試験方法であって、以下の(1)及び(2)を満たす条件で上記混合ガス雰囲気に画像サンプルを設置することを特徴とする画像耐ガス性試験方法。
(1)上記混合ガス中のオゾン濃度が75ppb以上300ppb以下、二酸化窒素濃度が150ppb以上3000ppb以下であり、上記混合ガス中のオゾン濃度と二酸化窒素濃度との比率(オゾン:二酸化窒素)が1:2から1:10である。
(2)試験槽内に設置した上記混合ガスを攪拌する攪拌用のファンにより、上記混合ガスを画像サンプル表面上に0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給する。
2.画像サンプルを試験槽内に設置し、該試験槽内で画像サンプルを循環させる上記の画像耐ガス性試験方法。
3.混合ガスが、それぞれに希釈されたオゾン及び二酸化窒素を混合して得られたものである上記いずれかの画像耐ガス性試験方法。
4.更に、画像サンプルを暗室内に設置する上記いずれかの画像耐ガス性試験方法。
5.混合ガスは、更に二酸化硫黄を25ppb以上3000ppb以下含有したものである上記いずれかの画像耐ガス性試験方法。
(実際の室内環境と、該環境下に保持された画像の劣化の分析)
<実験方法>
表1に示したように、複数の家庭及びオフィスの複数箇所において、各環境因子の測定、及びこれらの箇所に配置した各画像に生じた画像劣化の測定を継続して行った。測定期間は2003年2月より2004年1月であり、画像の劣化については、原則として、各画像について1回/月のペースで、測定物の回収→測定→再設置を繰り返した。家庭は関東近辺より4家庭を選び、オフィスはキヤノン(株)社内の3事業所を選び、表1中に○で示したそれぞれの箇所で、ガス及び温湿度の測定を行い、又、○で示した各箇所に画像サンプルを設置した。画像サンプルとしてはインクジェット画像及び銀塩写真画像を使用した。インクジェット画像としては、具体的には、キヤノン(株)の6色プリンターPIXUS F900を用いてPR101に印字したカラー画像をサンプルに用いた。
家庭及びオフィスにおける表1に示したそれぞれの箇所において、オゾン(O3)、二酸化窒素(NO2)及び二酸化硫黄(SO2)のそれぞれのガス濃度を測定した。測定方法は、パッシブサンプラーを用いた簡易環境測定方法により平均濃度を見積もった。環境因子を代表するガスとして、上記の3種を選んだ理由は以下の3つである。
〔1〕実環境に多く存在することが予想される。
〔2〕公共機関におけるデータが豊富である。
〔3〕測定、分析が容易である。
家庭及びオフィスにおける表1に示した各箇所において、温湿度計データロガー(佐藤計器製作所製)を使用して温湿度を測定した。当該装置は自動記録であり、1時間毎の温度[℃]と相対湿度[%]を継続して記録した。
インクジェット画像及び銀塩写真において、同様の画像が形成された画像サンプルを作成し、それらを表1に示した各箇所に設置した。画像サンプルは、一月毎に回収し、光学色濃度(Optical Density)をSpectrolino(GretagMacbeth社製)を用いて測色し、経時変化に伴い生じる画像劣化の程度を追跡調査した。
上記のようにして得た各環境測定データ及び画像劣化データの総合的な関係を統計学的に解析するために、多変量解析の1つである重回帰分析を用いた。各画像の光学色濃度に対するO3濃度、NO2濃度、SO2濃度、及び湿度(/温度)を重回帰分析にかけ、どの因子がどの程度画像堅牢性に影響を与えているかを検討した。計算には、統計解析ソフトのSPSS ver11.5J for Windows(SPSS社製)を用いた。
<ガス濃度測定結果>
図1に示したように、春〜秋にかけてのO3濃度が屋内外ともに高くなる傾向が見られた。又、図1〜3に示したように、O3濃度は、屋外と比べて屋内は大幅な濃度減少(1/10程度)が見られたが、NO2及びSO2においては、屋内外で大差がない傾向が見られた。年間を通した屋内環境ガス濃度平均の比率はO3:NO2:SO2=3ppb:19ppb:1ppbとなった(図1〜図3:破線は各屋内のデータ、直線は各屋外のデータ、●は屋内平均、■は屋外平均を示す)。画像の劣化を予測すること、即ち、画像の寿命予測をする際には、画像が設置される室内の想定環境を設定することが重要となるが、本発明は、この想定環境をO3:NO2:SO2=3ppb:19ppb:1ppbと具現化するという意義をも有する。
屋内の温度及び湿度の測定結果は、図4のようであった。温度、湿度ともに、夏場に増加し冬場に低下する傾向を示した。
インクジェット画像の劣化を見ると、図5に示したように、4月〜9月にかけての画像劣化は冬場のそれよりも大きいことが確認された。又、その劣化挙動は、画像が置かれた環境に由来し、その環境は、大きく屋内/屋外環境に分類できる(図5参照)。一方銀塩写真では、図6に示したように、インクジェット画像と比較して高い画像堅牢性を有しており、屋外に置いた場合においても、その発色のOD残存率は80%以上で、長期間の保存によっても画像が良好な状態が保持されることを示している。
(1)インクジェット画像劣化
図7及び8に、環境データと各種画像劣化における関係を重回帰分析で解析した結果を示した。係数が矢印の方向にあれば、その因子が画像劣化に寄与しているといえ、係数がこれとは逆方向にあれば、画像劣化の抑制に寄与しているといえる。C、M、Y及びKは、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックを示す。図7に示したように、インクジェット画像劣化においては、O3ガスによる劣化に加え、NO2/SO2の影響が見られた。このうち、特に含有量の多いNO2の影響が大きかった。又、湿度に関しても見かけ上画像劣化の抑制に働いている傾向が見られた。これらのことからガス劣化には、O3に加えNO2/SO2(特にNO2)も影響を与えており、又、湿度はマイグレーションに影響し、見かけ上の画像保持に関与していると考えられる(図7参照)。
銀塩写真においては、図8に示したように、NO2とO3による退色への影響に加え、湿度やSO2による影響が見られた。
実際の環境における画像堅牢性を検討することを目的として、実環境におけるガス及び温湿度の測定、及びその環境下における画像劣化挙動の測定を行った。この結果、オゾンは屋内外の濃度差が大きく、それに伴い屋外環境と屋内環境におけるガス比率も変わってくる。屋外と比べると、屋内環境では、オゾンに対してNO2やSO2の割合が高くなっていることがわかった。
<試験サンプル>
インクジェット画像の試験サンプルは、キヤノン(株)製PIXUS F900を用いてPR101で出力した。測定パッチは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)のOD1.0の箇所を用い、ブラックについては、カラーバランスを見積もるために、シアン(Kc)、マゼンタ(Km)、イエロー(Ky)のそれぞれについてもODの測定を行った。又、銀塩写真についても、同様にOD1.0のパッチを用いた。
表2にガス劣化加速試験に用いた混合ガスの濃度条件を示したが、先に説明した長期に渡る測定の結果得られたO3、NO2及びSO2の屋内環境の実測平均値に鑑みて、濃度条件A〜Dにおいて、各条件における混合ガス中のそれぞれの濃度比率がいずれも3:18:1で一定となるように各濃度を設定した。そして、試験槽内の温度が24℃、試験槽内の湿度が60%で、72時間の曝露条件を標準(1サイクル)に試験を行った。比較のために、条件EとしてO3のみによる処理を行った。尚、表2の各ガスの量についての単位は、ppbである。
<混合ガス試験に対する画像劣化挙動>
図9に、表2中のガス濃度条件B(混合ガス)及び濃度条件E(オゾンガス単独)で行ったガス試験後のインクジェット画像のOD残存率(%)と、実環境試験1年後のOD残存率の平均値とを比較したものを示す。混合ガス試験(条件B)は実環境試験の平均値とよく一致しており、ガス濃度条件Bでの混合ガスによる試験1サイクルで、実環境における画像劣化の一年相当条件としてみなすことができる。条件Bにおける画像に対するガス曝露積算量(ガス濃度と曝露時間の積算値)は、オゾンガスで10.8ppm・hであり、これは、屋内環境の測定値(平均)の26.3ppm・hと比較して4割程度のガス曝露積算量であった。
図12〜図17に、3種ガスの濃度比率を一定として、ガスの全濃度を変化させた場合の各色パッチのOD残存率(%)とガス曝露積算量(オゾン濃度を使用:ppm・h)との関係を示した。この結果、図12〜図17に示した通り、今回、試験を実施したガス濃度(オゾン濃度値で75ppb〜300ppb)の範囲では、ガスの濃度に関わらず、ガス濃度積算値とOD残存率(%)は一致していた。
次に、上記で検討した混合ガスによる画像劣化の加速試験(混合ガス試験)を、銀塩写真画像へと適用することを試みた。図18及び図19に、銀塩写真に関して、混合ガス試験(図18)と、オゾンガス単独(図19)による画像劣化の加速試験をそれぞれ行った結果を示した。この結果、オゾンガス単独試験では、画像劣化の加速試験の対象とした銀塩写真は、約60ppm・h以上の高いオゾンガス曝露を受けた場合においてもほとんど退色していなかったのに対して、本発明にかかる混合ガス試験では、標準ガス濃度条件の5サイクル程度(インクジェット画像での5年相当)の曝露で、退色が十分に認識できるほどOD残存率が低下した。銀塩写真画像の実環境保存(屋内放置)は、現在最長のもので3年を経ようとしている段階であり、本発明にかかる画像劣化の加速試験方法と、長期間に渡って実環境下に保持した場合に生じる画像劣化との相関を実際に確認できる状態にないが、現在までに得られているデータにおいても、画像の設置場所によってはOD残存率が90%程度まで低下しているものもある。そして、このような退色は、オゾンガス単独での劣化加速試験では決して再現することはできない。
図20に、これまでに本発明者らが鋭意検討することで得た上記混合ガスを用いた劣化加速試験を用いて設計した一例の染料インクを用いて形成したインクジェット画像に対する、本発明にかかる混合ガス試験の結果を例示する。図20に示したように、染料インクによって形成した画像の弱点と言われる耐ガス性について、大幅に改善される染料が存在することが確認できた。このような染料インクを用いることにより、銀塩写真を凌駕する耐ガス性能(混合ガス試験)の達成も可能となる。このような画質と、画像の堅牢性の双方を満足する高堅牢な染料系インクジェットシステムが実用化されることで、写真画像出力機としてのインクジェットプリンターの重要度は、今後ますます高まるものと期待される。
以上の検討結果をまとめると、以下の結論となる。
(1)本発明にかかる混合ガスを用いた画像耐ガス性試験方法(画像の劣化加速試験方法)は、インクジェット画像(PIXUS F900、PR101)の屋内実環境下での画像劣化を、忠実に相関よく再現させることができる。
(2)本発明にかかる画像耐ガス性試験方法は、オゾンガス単独の試験では画像劣化することのない銀塩写真を退色させることが可能であり、このことは、銀塩写真を長期に屋内裸放置した場合に生じる画像劣化を相関よく再現しているものと考えられる。
本発明で使用する混合ガスは、オゾン及び二酸化窒素を含有し、該混合ガス中のオゾン濃度が75ppb以上であり、二酸化窒素濃度が150ppb以上であることを1つの特徴とする。即ち、これよりも少ない量では、試験装置上での量の管理が困難となり、正確なシミュレーションが困難となるためである。又、より好ましい、オゾンと二酸化窒素との比率は、オゾン:二酸化窒素が、1:2から1:10である。尚、この比率中、1:2及び1:10も本発明の好ましい比率として含まれる。この比率は、上記の、年間を通した屋内環境ガス濃度平均の比率がO3:NO2:SO2=3ppb:19ppb:1ppbとなった環境分析結果を反映したものであり、この中で特に影響の大きいオゾン及び二酸化窒素の比率を規定したものである。又、オゾン濃度は300ppb以下であることが好ましく、二酸化窒素濃度は3000ppb以下であることが好ましい。更に、二酸化硫黄濃度は25ppb以上3000ppb以下であることが好ましい。
本発明にかかる画像耐ガス性試験方法では、更に、混合ガスが、画像サンプル表面上に、0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給されるようにすることを1つの特徴とする。本発明者らの検討によれば、特定の混合ガスが、0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給されることにより、サンプル表面近傍で生じてしまうガスの濃度勾配[表面近傍ほどガス濃度減少(アルミナ等を用いたインク受容層が設けられているインクジェット用記録媒体で特に顕著)]を防ぐことが可能となり、この結果、評価する画像サンプルの周辺の雰囲気を、本発明で規定する量でオゾンと二酸化窒素とが含有された混合ガス、より好ましくは、混合ガス中のオゾンと二酸化窒素との比率を特定のものとすることができるためである。これに対し、画像サンプル表面上への混合ガスの供給が0.2m/s未満の流速であると、試験槽内でのガス濃度分布が不均一となり、正確な画像耐ガス性試験ができなくなる。一方、流速が3.0m/sを超えると、混合ガスの流れによって試験槽内で評価サンプルが激しく振動してしまい、評価サンプルの周辺の雰囲気が均一にならない場合がある。
本発明では、オゾン及び二酸化窒素を少なくとも含有する混合ガスを、サンプル表面上に0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給することを、1つの特徴とする。ここで、具体的な画像サンプル表面上の流速の測定方法は、試験槽内のサンプル表面近傍(具体的には、サンプル表面から1センチメートル程度の距離)に流速測定器を持っていくことで簡単に測定できる。
本発明にかかる画像耐ガス性試験方法においては、試験槽に温度調節手段及び湿度調節手段を設置することが好ましい。これらを設置することにより、例えば、24℃、60%RH環境といった特定の環境下での画像の耐候性を、より正確且つ簡便にシミュレートすることが可能となる。温度調節手段としては、熱交換式の調節手段であることが好ましい。又、湿度調節手段としては、水を加熱することによって得られる蒸気で加湿する手段を試験槽以外の個所に設け、更に、前記蒸気に起因して発生する水滴が試験槽内に進入することを回避する水滴防止機構を備えている加湿手段であることが好ましい。このようにすることにより、インクジェット記録のような温湿度に敏感な素材を用いる記録方式においても、正確な耐ガス性試験が可能となる。
本発明にかかるインクセットは、複数のインクが組み合わされてなるインクジェット用のインクセットであるが、複数のインクのいずれもが、該インクによって形成した各画像について、下記の(1)及び(2)を満たす条件で画像耐ガス性試験を連続して360時間行った場合の画像濃度(O.D.)残存率の差が1%未満であることを特徴とする。
(1)上記混合ガス中のオゾン濃度が75ppb以上及び二酸化窒素濃度が150ppb以上である。
(2)上記混合ガスをサンプル表面上に0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給する。
図21に、本発明にかかる画像耐ガス性試験方法を行うのに好適な試験装置の一例を示した。以下、これについて説明する。該試験装置は、本発明の好ましい一実施形態である、簡便で、光の影響を受けない暗室での試験を行う構成に対応できる装置の一例である。NO2ボンベ、SO2ボンベ2及びオゾン発生機3からの高濃度ガスを、1のドライユニットにて乾燥させた空気にて、それぞれ5の試験槽内のガス濃度値が所定の値となるように希釈した後、更に、各希釈ガスを混合したものを試験槽内に一定流量で供給する。又、9の湿度発生機は、希釈用の空気を一部流用し槽内湿度コントロールを行っている。試験温度に関しては、希釈用空気の温度コントロールを行ってもよいし、試験槽内の内壁の温度コントロールにて行ってもよい(不図示)。このような構成の試験槽内に供給された混合ガスは、4の試験槽内攪拌用のファンにより、所定の流速でサンプル8に連続供給される。8のサンプルは上端をクリップにて7のサンプル回転ホルダーに固定されている(図では下端は固定されていないが、固定しても良い)。7のサンプル回転ホルダーは自公転式で画像サンプルを回転させ、混合ガスは、画像サンプル表面に対して水平方向から供給されている。6の排気ファンにて試験槽内のガスは一定流量で排気され、この排気流量と供給流量は等しくなる。
<実施例1〜5、参考例1、2及び比較例1>
O3及びNO2(実施例4ではSO2も使用)のそれぞれを、表3に示した濃度となるようにして使用し、これをそれぞれ、実施例1〜5、参考例1、2及び比較例1の画像耐ガス性試験で使用する混合ガスとした。そして、これらの混合ガスを、試験槽内に設置したファンにより、画像サンプル表面上水平方向に流速0.3m/sで供給し、24℃、60%で、72hの曝露条件を標準(1サイクル)に、画像耐ガス性試験を行った。尚、表3の各ガスの量についての単位は、ppbである。又、実施例5については、O3、NO2及びSO2のそれぞれが10%希釈されたガスを用いて、O3、NO2及びSO2のそれぞれの濃度が、表3に示した濃度となるように設定した。
インクジェット画像の試験サンプルは、キヤノン(株)製PIXUS F900を用いてPR101で出力した。測定パッチは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のOD1.0の箇所を用い、ブラックについてはカラーバランスを見積もるために、シアン(Kc)、マゼンタ(Km)及びイエロー(Ky)のそれぞれについてもODの測定を行った。
上記の実施例1〜5、参考例1、2及び比較例1の画像耐ガス性試験の結果、得られた画像のOD残存率の結果と、前記した表1に示した関東近辺の各家庭及びキヤノン(株)社内の各事業所室内のオフィスにおける各測定箇所に設置した各画像における、実環境下での試験1年後のOD残存率の平均結果との差を求め、以下の基準で判断した。その結果を表4に示した。
◎:全てのパッチでOD残存率の差が5%未満
○:OD残存率の差が最大のパッチで5%以上10%未満
△:OD残存率の差が最大のパッチで10%以上15%未満
×:OD残存率の差が最大のパッチで15%以上
サンプル表面上表面方向の流速を0.1mに変えた以外は実施例1と同様にして画像耐ガス性試験を行ったところ、同一サンプル上、試験槽内の混合ガスの流れ方向に対して退色ムラが発生してしまい、正確な画像耐ガス性試験を行うことができなかった。
銀塩写真サンプルには、インクジェット画像で使用した場合と同様の画像についての、一般の写真プリント店(富士写真フィルム純正品取扱店)にてデジタル画像を出力したものを用いた。
表5に示したように、O3、NO2及びSO2の濃度が表5に示したようになるように設定し、これらのガスを使用して画像耐ガス性試験を行った。これをそれぞれ実施例8及び比較例3とした。その際、混合ガスを槽内に設置したファンにより、画像サンプル表面上水平方向に流速0.3m/sで供給し、24℃、60%で、72hの曝露条件を標準(5サイクル)に試験を行った。尚、表5の各ガスの量についての単位は、ppbである。
上記した実施例8及び比較例3の画像耐ガス性試験による画像サンプルにおけるOD残存率の結果と、前記の表1に示した関東近辺の各家庭及びキヤノン(株)社内の各事業所室内のオフィスにおける各測定箇所に設置した各画像における、実環境試験1年後のOD残存率を5年まで外挿したものの平均結果との差を求め、以下の基準で判断した。その結果を表6に示す。
○:全てのパッチでOD残存率の差が5%未満
×:OD残存率の差が最大のパッチで5%以上
(インクセット)
<色材の調製>
(イエローインク用色材)
ジアゾ化した4−ニトロ−4’−アミノスチルベン−2,2−ジスルホン酸と3−アミノナフタレン−1−スルホン酸とをカップリングさせ、これをトリアゾール化し、ニトロ基をアミノ基に還元する公知の方法で製造したアミノスチルベン−トリアゾールを水に溶解し、亜硝酸ナトリウム、塩酸を滴下しジアゾ化した。これを、下記式(α)の化合物の水溶液に滴下させ、カップリングさせた後、塩化ナトリウムにより塩析した。この化合物を亜硝酸ナトリウム水溶液でジアゾ化し、この混濁液に、6−アミノナフタレン−2−スルホン酸水溶液を添加し、これをトリアゾール化したものを塩化ナトリウムで塩析することにより、式(1)の色材を得た。
キシレン中に下記式(β)の化合物、炭酸ナトリウム、ベンゾイル酢酸エチルエステルを反応させ、反応物を濾過、洗浄した。これをN,N−ジメチルホルムアミド中で、メタアミノアセトアニリド、酢酸銅、炭酸ナトリウムを順次仕込み反応させ、反応物を濾過、洗浄した。更にこれを、発煙硫酸中でスルホン化し、濾過、洗浄を行い、これを水酸化ナトリウム存在下、シアヌルクロライドと縮合反応を行った。この反応液中にアンスラニル酸を添加し、水酸化ナトリウム存在下、縮合反応を行った。これを濾過、洗浄し、式(2)の色材を得た。
スルホラン、4−スルホフタル酸モノナトリウム塩、塩化アンモニウム、尿素、モリブデン酸アンモニウム、塩化銅(II)を加熱攪拌し、メタノールで洗浄後、水を加え、水酸化ナトリウム水溶液でpH11に調整した。そして攪拌しながら塩酸水溶液を加え、そこに塩化ナトリウムを徐々に添加した。析出した結晶を濾過し20%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、続いてメタノールを加え析出した結晶を濾別し、70%メタノール水溶液で洗浄後乾燥して、所望の銅フタロシアニン(トリ又はテトラ)スルホン酸(トリ又はテトラ)ナトリウム塩を青色結晶として得た。
上記で得た各色材をそれぞれ用い、下記表7に示すような処方で各色インクを調製した。その際、各成分を混合した後、それぞれを0.2μmのメンブランフィルターを通し加圧ろ過した。上記で得られた各色インクを組み合わせて実施例9のインクセットを得た。但し、下記組成は質量部である。
O3、NO2、SO2のそれぞれの濃度を表8に示したように設定し、夫々実施例9、比較例4とした。そして、混合ガスを槽内に設置したファンにより、サンプル表面上水平方向に流速0.3m/s(濃度勾配を形成しない速度の一例)で供給し、温度24℃、湿度60%で、72hの曝露条件を標準(5サイクル)に試験(5年相当)を行った。尚、表8の各ガスの量についての単位は、ppbである。
○:全てのパッチでOD残存率の差が1%未満
×:OD残存率の差が最大のパッチで1%以上
(1)上記混合ガス中のオゾン濃度が75ppb以上及び二酸化窒素濃度が150ppb以上である。
(2)上記混合ガスをサンプル表面上に0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給する。
2:NO2、SO2ボンベ
3:オゾン発生機
4:槽内攪拌用ファン
5:ガス濃度計
6:排気ファン
7:サンプル回転ホルダー(自公転)
8:サンプル
9:湿度発生機
10:温湿度測定部
11:排ガス処理装置
Claims (5)
- 試験槽内のオゾン及び二酸化窒素を少なくとも含有する混合ガス雰囲気に画像サンプルを設置して該画像サンプルの耐ガス性を評価する画像耐ガス性試験方法であって、以下の(1)及び(2)を満たす条件で上記混合ガス雰囲気に画像サンプルを設置することを特徴とする画像耐ガス性試験方法。
(1)上記混合ガス中のオゾン濃度が75ppb以上300ppb以下、二酸化窒素濃度が150ppb以上3000ppb以下であり、上記混合ガス中のオゾン濃度と二酸化窒素濃度との比率(オゾン:二酸化窒素)が1:2から1:10である。
(2)試験槽内に設置した上記混合ガスを攪拌する攪拌用のファンにより、上記混合ガスを画像サンプル表面上に0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給する。 - 前記画像サンプルを試験槽内に設置し、該試験槽内で画像サンプルを循環させる請求項1に記載の画像耐ガス性試験方法。
- 前記混合ガスが、それぞれに希釈されたオゾン及び二酸化窒素を混合して得られたものである請求項1又は2に記載の画像耐ガス性試験方法。
- 更に、画像サンプルを暗室内に設置する請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像耐ガス性試験方法。
- 前記混合ガスは、更に二酸化硫黄を25ppb以上3000ppb以下含有したものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像耐ガス性試験方法。
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