JP4185906B2 - 画像耐ガス性試験方法 - Google Patents

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Description

本発明は、画像の耐ガス性試験方法、及びこれを利用して設計した耐ガス性に優れるインクセットに関し、更に詳しくは、環境ガスに対して敏感なインクジェット画像及び銀塩写真画像等の画像における耐ガス性を、実際の環境下における画像の耐ガス性と相関よく評価することができる耐ガス性試験方法に関する。
近年、インクジェットプリンターは性能の向上に伴い、その用途を様々な分野に広げている。写真プリントもその1つであり、そのスピードと高画質は従来の銀塩写真と遜色ないレベルにまできた。一方、保存等している間に、一般に存在する環境因子(例えば、ガス、光、熱、水等)によって画像が退色を起こす画像堅牢性においては、インクジェット分野に限らず、銀塩写真分野においても課題が残されている。
画像堅牢性を評価するにあたり現在ISO(国際標準化機構)において、インクジェット画像を含めたデジタル写真画像の堅牢性評価基準を規定すべく議論がなされている。議題項目としては、耐水性、耐湿性、耐ガス性、耐熱性(暗所保存)、室内耐光性、屋外耐候性、End Pointの新基準がある。その中で、耐ガス性の評価方法としてはオゾンテストが取り上げられており、数多くの報告がなされている。しかしながら、実環境にはオゾン以外にも様々なガス種が存在しており、これらのガスによる画像の耐ガス性への影響が懸念されるが、オゾン以外に実環境に存在するガスを組み合わせたテストは少ない。
オゾン以外に実環境に存在するガスを組み合わせたテストをしているものとしては、例えば、画像をオゾン及びオゾン以外の少なくとも一種のガスの混合ガス雰囲気に設置する工程、並びに該混合ガス雰囲気下の画像に所定の波長を有する光を所定の光量照射する工程を有することを特徴とする画像耐候性試験方法が開示されている(特許文献1参照)。
又、シリコーンオイル等の色材を溶解しない不揮発性の液体部分を有した記録物についての開示があり、この中で、混合ガスを用いた耐ガス性試験が行われている(特許文献2参照)。
特開2004−170403公報 特開2003−118228公報
背景技術にあるように、耐ガス性の評価試験方法としてオゾンテストが主に行われてきたが、実環境にはオゾン以外にも様々なガス種が存在しており、この方法では、必ずしも実環境での画像劣化の度合いを正確にシミュレートできていなかった。更に、近年のインクジェット写真画像の高耐候性化によって実環境試験は開発日程的に非常に困難となっており、耐ガス性能を検証する手段としてのシミュレート技術の重要性はますます高まっている。
又、混合ガスを用いた耐ガス性の評価方法も、インクジェット画像及び銀塩写真画像等が主に保存される環境である室内環境に照準を合わせて画像劣化の度合いを正確にシミュレートできるものはなく、室内環境に照準を合わせて画像劣化の度合いを正確にシミュレートできる簡便な画像耐ガス性評価試験方法を提案することが課題であった。
前記した特許文献1で開示されている発明は、ガスだけではなく、光の影響をも考慮したものである。しかし、画像は、常に光のあるところで保存されるわけではなく、戸棚の中や暗室のような暗所で保存される場合もあることから、光の影響を考慮する必要がない場合がある。又、該発明において使用される装置は、非常に高価なものであるため、簡便な画像耐ガス性評価試験方法が求められている。
又、上記特許文献2で開示されている耐ガス性試験は、色材の評価方法ではなく、シリコーンオイルについての評価である。このため、ここで開示されている試験条件は、本発明が目的としている評価方法とは何ら関係がないものであり、ここから、室内環境における画像劣化の度合いを正確にシミュレートした画像耐ガス性試験方法を読み取ることはできず、依然として、室内環境における画像劣化の度合いを正確にシミュレートできる画像耐ガス性評価試験方法が求められていた。
更に、上記に挙げた特許文献を含め、従来の耐ガス性試験は、槽内に一定流量のガスを流入させる方法であったが、本発明者らの検討によれば、同じ槽内にあっても、本発明が目的とする画像サンプル表面上では、微妙にガス濃度が異なるため、実環境の試験結果とズレを生じる場合があり、これを解決することが課題であった。
従って、本発明の目的は、インクジェット記録画像や銀塩写真画像等についての実環境下における耐ガス性を、正確に且つ簡便にシミュレートすることが可能な画像耐ガス性試験方法及びこれを利用して設計した耐ガス性に優れるインクセットを提供することである。
上記課題を解決するため、本発明者等は、実際の環境、特にインクジェット画像及び銀塩写真画像が主に保存される環境である室内環境において生じる画像劣化に注目し、これを正確にシミュレートすることができる試験方法の開発を行った。先ず、一般的な環境における環境因子の中から、ガス濃度及び温湿度を選択し、これらの値を種々の測定地点で継続的に測定し、且つ、当該測定地点にそれぞれ配置した画像についての画像劣化を継続的に測定した。そして、それら環境因子と画像劣化の相関を総合的に検討することにより、実環境下の画像劣化現象を把握した。更に、これらの結果より、様々なデジタル画像が実環境下に置かれた場合に生じる画像劣化に正確且つ公平に対応して画像の耐ガス性を簡便に評価することができる画像耐ガス性の加速試験条件へと展開した。より具体的には、一般的な室内環境因子の世界平均値を、日本各地の室内環境因子及び日本と世界の屋外環境因子から予測し、様々なデジタル画像において、実環境下において生じる画像劣化に正確且つ公平に対応することができる世界標準となり得る加速試験条件を提案するための展開である。
本発明は、一定量以上のオゾン及び二酸化窒素を含む混合ガスを用い、該混合ガスを画像サンプル表面上に一定の範囲の流速で供給することを特徴とする。このように構成することで、画像サンプルは、オゾンと二酸化窒素との特定の共存状態により生成する酸化性ガス(硝酸等)が含有された酸性雰囲気下に置かれ、しかも画像サンプル表面近傍が、この状態の均一な混合ガスで充満した状態となるので、実環境における画像劣化と高い相関を示す画像劣化の加速試験条件とできたものと考えられる。更に、本発明者等が鋭意検討した結果、この混合ガスにおける二酸化窒素の比率を、オゾンの比率よりも十分多いという特徴的な比率とすることで、オゾンと二酸化窒素との共存によって生成する酸化性ガス(硝酸等)濃度がより好適な量となり、インクジェット画像等が主に保存或いは設置される室内環境において実際に生じる画像劣化により正確に対応(相関)した画像劣化を、短期間に生じさせることができる酸性雰囲気下が作られることを見出し、本発明に到った。
尚、本発明は、上記した通り、オゾン及び二酸化窒素を特定の量で混合して使用し、且つ、該混合ガスを画像サンプル表面上に一定の範囲の流速で供給することで、上記混合ガスとしたことによって硝酸等の酸化性ガスが生成され、しかも画像サンプル表面近傍に存在することとなる硝酸等の酸化性ガスが適当量に保持されることで、実際の環境下で生じる画像劣化と同じような劣化を画像に短期間に生じさせたものであり、先に説明した、単に、オゾン及びオゾン以外の少なくとも一種のガスの混合ガス雰囲気に画像を設置する手段を構成要件の一つとする特許文献1に記載されている発明とは、構成も技術思想も全く別の発明である。
本発明は、具体的には下記に示す通りである。
1.試験槽内のオゾン及び二酸化窒素を少なくとも含有する混合ガス雰囲気に画像サンプルを設置して該画像サンプルの耐ガス性を評価する画像耐ガス性試験方法であって、以下の(1)及び(2)を満たす条件で上記混合ガス雰囲気に画像サンプルを設置することを特徴とする画像耐ガス性試験方法。
(1)上記混合ガス中のオゾン濃度が75ppb以上300ppb以下、二酸化窒素濃度が150ppb以上3000ppb以下であり、上記混合ガス中のオゾン濃度と二酸化窒素濃度との比率(オゾン:二酸化窒素)が1:2から1:10である。
(2)試験槽内に設置した上記混合ガスを攪拌する攪拌用のファンにより、上記混合ガスを画像サンプル表面上に0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給する。
上記本発明にかかる画像耐ガス性試験方法の好ましい形態としては、下記に挙げるものがある。
.画像サンプルを試験槽内に設置し、該試験槽内で画像サンプルを循環させる上記の画像耐ガス性試験方法。
.混合ガスが、それぞれに希釈されたオゾン及び二酸化窒素を混合して得られたものである上記いずれかの画像耐ガス性試験方法。
.更に、画像サンプルを暗室内に設置する上記いずれかの画像耐ガス性試験方法。
.混合ガスは、更に二酸化硫黄を25ppb以上3000ppb以下含有したものである上記いずれかの画像耐ガス性試験方法。
本発明によれば、インクジェット記録画像及び銀塩写真画像等の耐ガス性を、実環境下に保持された画像に生じる画像劣化に対応して、正確に且つ簡便にシミュレートすることが可能な画像耐ガス性試験方法が提供される。更に、本発明によれば、この方法を利用して設計されたインクを組み合わせてインクセットとすることで、形成した画像が実環境下に保持された場合に十分な耐ガス性が発揮されるものとなるインクセットが提供される。
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
(実際の室内環境と、該環境下に保持された画像の劣化の分析)
<実験方法>
表1に示したように、複数の家庭及びオフィスの複数箇所において、各環境因子の測定、及びこれらの箇所に配置した各画像に生じた画像劣化の測定を継続して行った。測定期間は2003年2月より2004年1月であり、画像の劣化については、原則として、各画像について1回/月のペースで、測定物の回収→測定→再設置を繰り返した。家庭は関東近辺より4家庭を選び、オフィスはキヤノン(株)社内の3事業所を選び、表1中に○で示したそれぞれの箇所で、ガス及び温湿度の測定を行い、又、○で示した各箇所に画像サンプルを設置した。画像サンプルとしてはインクジェット画像及び銀塩写真画像を使用した。インクジェット画像としては、具体的には、キヤノン(株)の6色プリンターPIXUS F900を用いてPR101に印字したカラー画像をサンプルに用いた。
Figure 0004185906
<ガス濃度測定>
家庭及びオフィスにおける表1に示したそれぞれの箇所において、オゾン(O3)、二酸化窒素(NO2)及び二酸化硫黄(SO2)のそれぞれのガス濃度を測定した。測定方法は、パッシブサンプラーを用いた簡易環境測定方法により平均濃度を見積もった。環境因子を代表するガスとして、上記の3種を選んだ理由は以下の3つである。
〔1〕実環境に多く存在することが予想される。
〔2〕公共機関におけるデータが豊富である。
〔3〕測定、分析が容易である。
<温湿度測定>
家庭及びオフィスにおける表1に示した各箇所において、温湿度計データロガー(佐藤計器製作所製)を使用して温湿度を測定した。当該装置は自動記録であり、1時間毎の温度[℃]と相対湿度[%]を継続して記録した。
<画像劣化測定>
インクジェット画像及び銀塩写真において、同様の画像が形成された画像サンプルを作成し、それらを表1に示した各箇所に設置した。画像サンプルは、一月毎に回収し、光学色濃度(Optical Density)をSpectrolino(GretagMacbeth社製)を用いて測色し、経時変化に伴い生じる画像劣化の程度を追跡調査した。
<重回帰分析>
上記のようにして得た各環境測定データ及び画像劣化データの総合的な関係を統計学的に解析するために、多変量解析の1つである重回帰分析を用いた。各画像の光学色濃度に対するO3濃度、NO2濃度、SO2濃度、及び湿度(/温度)を重回帰分析にかけ、どの因子がどの程度画像堅牢性に影響を与えているかを検討した。計算には、統計解析ソフトのSPSS ver11.5J for Windows(SPSS社製)を用いた。
(結果)
<ガス濃度測定結果>
図1に示したように、春〜秋にかけてのO3濃度が屋内外ともに高くなる傾向が見られた。又、図1〜3に示したように、O3濃度は、屋外と比べて屋内は大幅な濃度減少(1/10程度)が見られたが、NO2及びSO2においては、屋内外で大差がない傾向が見られた。年間を通した屋内環境ガス濃度平均の比率はO3:NO2:SO2=3ppb:19ppb:1ppbとなった(図1〜図3:破線は各屋内のデータ、直線は各屋外のデータ、●は屋内平均、■は屋外平均を示す)。画像の劣化を予測すること、即ち、画像の寿命予測をする際には、画像が設置される室内の想定環境を設定することが重要となるが、本発明は、この想定環境をO3:NO2:SO2=3ppb:19ppb:1ppbと具現化するという意義をも有する。
尚、本発明においては、混合ガス試験をO3:NO2:SO2=3ppb:18ppb:1ppbで行っている。実環境5年相当の混合ガス試験においては、混合ガスの比率をO3:NO2:SO2=3ppb:19ppb:1ppbで行った場合とO3:NO2:SO2=3ppb:18ppb:1ppbで差はない。しかし、より精度が求められる、実環境10年相当、或いはそれ以上の期間を想定した試験においては、より精度の良い、混合ガスの実測平均値である比率がO3:NO2:SO2=3ppb:19ppb:1ppbで試験を行うことが好ましい。
<温湿度測定結果>
屋内の温度及び湿度の測定結果は、図4のようであった。温度、湿度ともに、夏場に増加し冬場に低下する傾向を示した。
<画像劣化追跡結果>
インクジェット画像の劣化を見ると、図5に示したように、4月〜9月にかけての画像劣化は冬場のそれよりも大きいことが確認された。又、その劣化挙動は、画像が置かれた環境に由来し、その環境は、大きく屋内/屋外環境に分類できる(図5参照)。一方銀塩写真では、図6に示したように、インクジェット画像と比較して高い画像堅牢性を有しており、屋外に置いた場合においても、その発色のOD残存率は80%以上で、長期間の保存によっても画像が良好な状態が保持されることを示している。
<重回帰分析結果>
(1)インクジェット画像劣化
図7及び8に、環境データと各種画像劣化における関係を重回帰分析で解析した結果を示した。係数が矢印の方向にあれば、その因子が画像劣化に寄与しているといえ、係数がこれとは逆方向にあれば、画像劣化の抑制に寄与しているといえる。C、M、Y及びKは、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックを示す。図7に示したように、インクジェット画像劣化においては、O3ガスによる劣化に加え、NO2/SO2の影響が見られた。このうち、特に含有量の多いNO2の影響が大きかった。又、湿度に関しても見かけ上画像劣化の抑制に働いている傾向が見られた。これらのことからガス劣化には、O3に加えNO2/SO2(特にNO2)も影響を与えており、又、湿度はマイグレーションに影響し、見かけ上の画像保持に関与していると考えられる(図7参照)。
(2)銀塩写真退色
銀塩写真においては、図8に示したように、NO2とO3による退色への影響に加え、湿度やSO2による影響が見られた。
<実際の室内環境の分析からの結論>
実際の環境における画像堅牢性を検討することを目的として、実環境におけるガス及び温湿度の測定、及びその環境下における画像劣化挙動の測定を行った。この結果、オゾンは屋内外の濃度差が大きく、それに伴い屋外環境と屋内環境におけるガス比率も変わってくる。屋外と比べると、屋内環境では、オゾンに対してNO2やSO2の割合が高くなっていることがわかった。
又、重回帰分析の結果から、インクジェット画像のガス劣化においては、O3に加え、NO2及びSO2(特にNO2)の影響が確認され、銀塩写真においてもこれらのガスの影響が見られた。これらの結果より、デジタル写真画像の堅牢性、特にガス劣化を評価するにあたりO3単独ではなく、NO2及びSO2のような他ガスを加えることを特徴とした混合ガス試験のほうがより実環境をシミュレートすると考えられる。様々な方式におけるデジタル写真画像の堅牢性を評価する上で、実環境に多く存在する環境因子、例えば、今回のような酸化性ガスも含めることにより更に信頼性が高く、且つ公平な加速試験を行うことができるということがわかった。
(混合ガスによるガス劣化加速試験方法の検討)
<試験サンプル>
インクジェット画像の試験サンプルは、キヤノン(株)製PIXUS F900を用いてPR101で出力した。測定パッチは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)のOD1.0の箇所を用い、ブラックについては、カラーバランスを見積もるために、シアン(Kc)、マゼンタ(Km)、イエロー(Ky)のそれぞれについてもODの測定を行った。又、銀塩写真についても、同様にOD1.0のパッチを用いた。
<混合ガス試験>
表2にガス劣化加速試験に用いた混合ガスの濃度条件を示したが、先に説明した長期に渡る測定の結果得られたO3、NO2及びSO2の屋内環境の実測平均値に鑑みて、濃度条件A〜Dにおいて、各条件における混合ガス中のそれぞれの濃度比率がいずれも3:18:1で一定となるように各濃度を設定した。そして、試験槽内の温度が24℃、試験槽内の湿度が60%で、72時間の曝露条件を標準(1サイクル)に試験を行った。比較のために、条件EとしてO3のみによる処理を行った。尚、表2の各ガスの量についての単位は、ppbである。
Figure 0004185906
<結果と考察>
<混合ガス試験に対する画像劣化挙動>
図9に、表2中のガス濃度条件B(混合ガス)及び濃度条件E(オゾンガス単独)で行ったガス試験後のインクジェット画像のOD残存率(%)と、実環境試験1年後のOD残存率の平均値とを比較したものを示す。混合ガス試験(条件B)は実環境試験の平均値とよく一致しており、ガス濃度条件Bでの混合ガスによる試験1サイクルで、実環境における画像劣化の一年相当条件としてみなすことができる。条件Bにおける画像に対するガス曝露積算量(ガス濃度と曝露時間の積算値)は、オゾンガスで10.8ppm・hであり、これは、屋内環境の測定値(平均)の26.3ppm・hと比較して4割程度のガス曝露積算量であった。
一方、オゾンガス単独の試験では、実環境試験に対してマゼンタの退色が著しく、特にブラック(コンポジット)のマゼンタODの退色が顕著であった。退色のバランスは画像劣化のエンドポイントを判断する重要なファクターであり、オゾンガス単独では加速試験方法として問題があると結論できる。これに対して、混合ガスによる試験では、実環境試験の平均値と比較して、各色ともOD残存率はよく一致しており、退色のカラーバランス(色相角の違い)についても、実環境下で生じた画像の退色を相関よく再現できることがわかった。
図10及び図11に、それぞれガス濃度条件B(混合ガス)及びガス濃度条件E(オゾンガス単独)の曝露時間を変化させて試験したインクジェット画像のOD残存率(%)と、1年間の家庭及びオフィスの実環境下の試験後の全データとを比較したものを示した。図10及び図11から明らかなように、実環境下に置いた画像の退色は、画像の設置場所によってOD残存率(%)の絶対値には大きな違いが認められるものの、退色のカラーバランスに関しては大きな違いは認められなかった。これに対して、図10中に太い実線で示した混合ガスによる画像劣化の加速試験による結果では、この退色のカラーバランスを維持したまま、曝露時間を変化させることによって、実環境下における画像の設置場所による絶対値の違いを再現することができた。これに対し、図11中に太い実線で示したオゾンガス単独での劣化加速試験の結果から、本発明にかかる方法の場合と異なり、この場合は、曝露時間を変化させても、該試験によって得られた退色のバランスは、屋内の実環境下における曝露試験による劣化状態を相関よく再現できるものとはならなかった。尚、図9〜11は、退色のバランスの違いを視覚的に識別しやすくするために各色のプロットを実線で結んでいる。
<混合ガス試験の濃度依存性>
図12〜図17に、3種ガスの濃度比率を一定として、ガスの全濃度を変化させた場合の各色パッチのOD残存率(%)とガス曝露積算量(オゾン濃度を使用:ppm・h)との関係を示した。この結果、図12〜図17に示した通り、今回、試験を実施したガス濃度(オゾン濃度値で75ppb〜300ppb)の範囲では、ガスの濃度に関わらず、ガス濃度積算値とOD残存率(%)は一致していた。
<混合ガス試験の銀塩写真への適用>
次に、上記で検討した混合ガスによる画像劣化の加速試験(混合ガス試験)を、銀塩写真画像へと適用することを試みた。図18及び図19に、銀塩写真に関して、混合ガス試験(図18)と、オゾンガス単独(図19)による画像劣化の加速試験をそれぞれ行った結果を示した。この結果、オゾンガス単独試験では、画像劣化の加速試験の対象とした銀塩写真は、約60ppm・h以上の高いオゾンガス曝露を受けた場合においてもほとんど退色していなかったのに対して、本発明にかかる混合ガス試験では、標準ガス濃度条件の5サイクル程度(インクジェット画像での5年相当)の曝露で、退色が十分に認識できるほどOD残存率が低下した。銀塩写真画像の実環境保存(屋内放置)は、現在最長のもので3年を経ようとしている段階であり、本発明にかかる画像劣化の加速試験方法と、長期間に渡って実環境下に保持した場合に生じる画像劣化との相関を実際に確認できる状態にないが、現在までに得られているデータにおいても、画像の設置場所によってはOD残存率が90%程度まで低下しているものもある。そして、このような退色は、オゾンガス単独での劣化加速試験では決して再現することはできない。
上記した通り、銀塩写真のガス堅牢性については、実環境保存データの蓄積がまだ十分とは言えず、シミュレーションの段階である。今後は、実環境保存のデータ蓄積はもとより、これまでに得られている混合ガス試験による銀塩写真画像の劣化挙動を詳細に検討することで、屋内裸保存における銀塩写真の劣化シミュレーションの正確さと精度を更に向上させることが可能である。
<高堅牢性染料インク>
図20に、これまでに本発明者らが鋭意検討することで得た上記混合ガスを用いた劣化加速試験を用いて設計した一例の染料インクを用いて形成したインクジェット画像に対する、本発明にかかる混合ガス試験の結果を例示する。図20に示したように、染料インクによって形成した画像の弱点と言われる耐ガス性について、大幅に改善される染料が存在することが確認できた。このような染料インクを用いることにより、銀塩写真を凌駕する耐ガス性能(混合ガス試験)の達成も可能となる。このような画質と、画像の堅牢性の双方を満足する高堅牢な染料系インクジェットシステムが実用化されることで、写真画像出力機としてのインクジェットプリンターの重要度は、今後ますます高まるものと期待される。
<混合ガスによるガス劣化加速試験方法の検討のまとめ>
以上の検討結果をまとめると、以下の結論となる。
(1)本発明にかかる混合ガスを用いた画像耐ガス性試験方法(画像の劣化加速試験方法)は、インクジェット画像(PIXUS F900、PR101)の屋内実環境下での画像劣化を、忠実に相関よく再現させることができる。
(2)本発明にかかる画像耐ガス性試験方法は、オゾンガス単独の試験では画像劣化することのない銀塩写真を退色させることが可能であり、このことは、銀塩写真を長期に屋内裸放置した場合に生じる画像劣化を相関よく再現しているものと考えられる。
(混合ガス)
本発明で使用する混合ガスは、オゾン及び二酸化窒素を含有し、該混合ガス中のオゾン濃度が75ppb以上であり、二酸化窒素濃度が150ppb以上であることを1つの特徴とする。即ち、これよりも少ない量では、試験装置上での量の管理が困難となり、正確なシミュレーションが困難となるためである。又、より好ましい、オゾンと二酸化窒素との比率は、オゾン:二酸化窒素が、1:2から1:10である。尚、この比率中、1:2及び1:10も本発明の好ましい比率として含まれる。この比率は、上記の、年間を通した屋内環境ガス濃度平均の比率がO3:NO2:SO2=3ppb:19ppb:1ppbとなった環境分析結果を反映したものであり、この中で特に影響の大きいオゾン及び二酸化窒素の比率を規定したものである。又、オゾン濃度は300ppb以下であることが好ましく、二酸化窒素濃度は3000ppb以下であることが好ましい。更に、二酸化硫黄濃度は25ppb以上3000ppb以下であることが好ましい。
本発明者らの検討によれば、この範囲内においては、オゾンと二酸化窒素との共存により生成する酸化性ガス(硝酸等)濃度が適当量となり、より室内環境に近い酸性雰囲気下を作ることができる。このため、インクジェット画像が主に保存(設置)される環境である室内環境下において生じる画像劣化と同じような劣化を、加速して相関よく生じさせることができる。
尚、上記のとおり、実環境においては、二酸化硫黄も上記比率で含有されており、二酸化硫黄も画像耐ガス性に影響することから、混合ガス中に含有されることが好ましく、更に好ましい、オゾン:二酸化窒素:二酸化硫黄の比率は、3:19:1である。又、本発明における試験ガスの濃度、比率は全て体積比で表される。又、本発明に用いられる混合ガスには、上記に加えて更に他のガスを混合させることもできる。本発明において用いる他のガスとしては、例えば、硫化水素、アンモニア、塩素、塩化水素及びフッ化水素等が挙げられる。
(混合ガスの供給手段)
本発明にかかる画像耐ガス性試験方法では、更に、混合ガスが、画像サンプル表面上に、0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給されるようにすることを1つの特徴とする。本発明者らの検討によれば、特定の混合ガスが、0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給されることにより、サンプル表面近傍で生じてしまうガスの濃度勾配[表面近傍ほどガス濃度減少(アルミナ等を用いたインク受容層が設けられているインクジェット用記録媒体で特に顕著)]を防ぐことが可能となり、この結果、評価する画像サンプルの周辺の雰囲気を、本発明で規定する量でオゾンと二酸化窒素とが含有された混合ガス、より好ましくは、混合ガス中のオゾンと二酸化窒素との比率を特定のものとすることができるためである。これに対し、画像サンプル表面上への混合ガスの供給が0.2m/s未満の流速であると、試験槽内でのガス濃度分布が不均一となり、正確な画像耐ガス性試験ができなくなる。一方、流速が3.0m/sを超えると、混合ガスの流れによって試験槽内で評価サンプルが激しく振動してしまい、評価サンプルの周辺の雰囲気が均一にならない場合がある。
混合ガスを画像サンプル表面上に上記したような流速で供給する手段としては、特に限定はされないが、例えば、試験槽内に攪拌用のファンを設け、サンプルに循環風を当てる方法や、予め所定のガスの種類、濃度及び温湿度に調整した混合ガスを、画像サンプル表面に所定の流速で直接吹き付ける方法等が挙げられる。
又、本発明者らの検討によれば、画像劣化の測定結果を、実環境下におけるものと、特定の混合ガスによって行う本発明にかかる画像耐ガス性試験方法(画像劣化促進試験)とで比較すると、実環境試験での一年間の画像劣化の結果が、本発明にかかる画像耐ガス性試験方法を実施した72時間の間に生じる画像劣化と一致することがわかった。ここで、画像表面が曝されたと考えられる各々のガスの総曝露量(積算曝露量)ppm・hrを求めると、例えば、オゾン濃度で計算してみると、実環境における年間総曝露量は、実環境下における試験で得られた一年間のオゾン総曝露量年間平均は3ppbであるので、3ppb×24hr/day×365day/year=26280ppbhr=26ppmhrとなる。一方、本発明にかかる画像耐ガス性試験方法において使用したオゾン濃度を150ppbとすると、総曝露量(積算曝露量)は150ppb×72hr=10800ppbhr=11ppmhrとなる。このように、実環境下と混合ガスによる画像劣化加速試験下とにおける画像サンプル表面への総曝露量は、合わなかった。
本発明者らの検討によれば、上記の原因としては、試験槽内の相対湿度とサンプル表面上の混合ガスの流速の因子があり、相対湿度に関しては、湿度が高いほど退色しやすく、湿度が低いほど退色しにくくなる。一方、画像サンプル表面上の流速に関しては、流速を高く設定すると退色しやすく、流速を低くすると退色しにくくなる。前述したように、試験槽内におけるガス濃度の分布を均一に保つためには、画像サンプル表面上へ0.2m/s以上の流速でガスを供給する必要があるのに対して、実際の屋内環境でのガスの動きは0.1m/s以下であり、試験槽内で実環境の流速を再現することは困難となる。従って、加速試験の積算曝露量としては、試験ガスの画像サンプル上への衝突頻度を考慮した以下の補正を加えることが好ましい。
Figure 0004185906
尚、上記の式は、画像サンプル面への垂直方向の流速に関して有効であるが、画像サンプル面への水平方向の流速については、サンプル表面近傍での濃度勾配の補正として近似的には有効となる。従って、サンプル面水平方向の流速に関しては、1.0m/sを超えない値で使用することが好ましく、1.0m/s以上では、加速試験の流速を1.0m/sに固定することが好ましい。
更に、好ましい試験方法の形態としては、1rpm程度で、試験槽内の画像サンプルを回転(循環)させることが挙げられる。即ち、画像サンプルを回転(循環)させることにより、試験槽内のガス濃度をより均一に保つことが可能となる。サンプルの回転(循環)速度は特に制限されないが、サンプルが激しく振動してしまわない程度に調整することが好ましい。又、本発明で使用する混合ガスは、それぞれを別々に試験槽へと供給してもよいし、予め混合してから試験槽内に供給してもよい。尚、ガスの供給手段としては、ガス発生器によるものでも、通常のガスボンベから供給するものでも、いずれでもよい。
(画像サンプル表面における流速の測定方法)
本発明では、オゾン及び二酸化窒素を少なくとも含有する混合ガスを、サンプル表面上に0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給することを、1つの特徴とする。ここで、具体的な画像サンプル表面上の流速の測定方法は、試験槽内のサンプル表面近傍(具体的には、サンプル表面から1センチメートル程度の距離)に流速測定器を持っていくことで簡単に測定できる。
又、本発明にかかる画像耐ガス性試験方法の好ましい一実施態様として、試験槽内に設置した画像サンプルを試験槽内で循環させることが挙げられる。このようにすれば、より正確にサンプル表面上に混合ガスを供給することができるからである。又、この実施態様の場合は、画像サンプルを静止した状態で、画像サンプル表面上での流速を測定する。即ち、この状態で該混合ガスをサンプル表面上に0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給されていれば、本発明に該当することを意味する。言い換えれば、この流速で混合ガスを連続供給するということは、混合ガスの各成分が、サンプル表面上でサンプルに吸着する等の要因で消費され、サンプル表面上で濃度勾配を作らない流速で混合ガスを連続供給するということを意味する。
(試験温度及び湿度)
本発明にかかる画像耐ガス性試験方法においては、試験槽に温度調節手段及び湿度調節手段を設置することが好ましい。これらを設置することにより、例えば、24℃、60%RH環境といった特定の環境下での画像の耐候性を、より正確且つ簡便にシミュレートすることが可能となる。温度調節手段としては、熱交換式の調節手段であることが好ましい。又、湿度調節手段としては、水を加熱することによって得られる蒸気で加湿する手段を試験槽以外の個所に設け、更に、前記蒸気に起因して発生する水滴が試験槽内に進入することを回避する水滴防止機構を備えている加湿手段であることが好ましい。このようにすることにより、インクジェット記録のような温湿度に敏感な素材を用いる記録方式においても、正確な耐ガス性試験が可能となる。
(インクセット)
本発明にかかるインクセットは、複数のインクが組み合わされてなるインクジェット用のインクセットであるが、複数のインクのいずれもが、該インクによって形成した各画像について、下記の(1)及び(2)を満たす条件で画像耐ガス性試験を連続して360時間行った場合の画像濃度(O.D.)残存率の差が1%未満であることを特徴とする。
(1)上記混合ガス中のオゾン濃度が75ppb以上及び二酸化窒素濃度が150ppb以上である。
(2)上記混合ガスをサンプル表面上に0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給する。
ここでいうインクセットとは、複数のインクの組み合わせを独立で含むものであることは勿論、インクタンク部が複数一体になっているインクタンク自体は無論のこと、単独のインクタンクを複数共に使用する場合の状態をも含み、更に、それらにヘッド部を一体にしたものも含まれるものである。又、本発明にかかるインクセットの好ましい実施形態としては、上記したようなインクセットを、ディスポーザブルインクカートリッジで用いることが挙げられる。
(試験装置)
図21に、本発明にかかる画像耐ガス性試験方法を行うのに好適な試験装置の一例を示した。以下、これについて説明する。該試験装置は、本発明の好ましい一実施形態である、簡便で、光の影響を受けない暗室での試験を行う構成に対応できる装置の一例である。NO2ボンベ、SO2ボンベ2及びオゾン発生機3からの高濃度ガスを、1のドライユニットにて乾燥させた空気にて、それぞれ5の試験槽内のガス濃度値が所定の値となるように希釈した後、更に、各希釈ガスを混合したものを試験槽内に一定流量で供給する。又、9の湿度発生機は、希釈用の空気を一部流用し槽内湿度コントロールを行っている。試験温度に関しては、希釈用空気の温度コントロールを行ってもよいし、試験槽内の内壁の温度コントロールにて行ってもよい(不図示)。このような構成の試験槽内に供給された混合ガスは、4の試験槽内攪拌用のファンにより、所定の流速でサンプル8に連続供給される。8のサンプルは上端をクリップにて7のサンプル回転ホルダーに固定されている(図では下端は固定されていないが、固定しても良い)。7のサンプル回転ホルダーは自公転式で画像サンプルを回転させ、混合ガスは、画像サンプル表面に対して水平方向から供給されている。6の排気ファンにて試験槽内のガスは一定流量で排気され、この排気流量と供給流量は等しくなる。
以下に、実施例、参考例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
<実施例1〜5、参考例1、2及び比較例1>
3及びNO2(実施例4ではSO2も使用)のそれぞれを、表3に示した濃度となるようにして使用し、これをそれぞれ、実施例1〜5、参考例1、2及び比較例1の画像耐ガス性試験で使用する混合ガスとした。そして、これらの混合ガスを、試験槽内に設置したファンにより、画像サンプル表面上水平方向に流速0.3m/sで供給し、24℃、60%で、72hの曝露条件を標準(1サイクル)に、画像耐ガス性試験を行った。尚、表3の各ガスの量についての単位は、ppbである。又、実施例5については、O3、NO2及びSO2のそれぞれが10%希釈されたガスを用いて、O3、NO2及びSO2のそれぞれの濃度が、表3に示した濃度となるように設定した。
Figure 0004185906
(インクジェット画像サンプル)
インクジェット画像の試験サンプルは、キヤノン(株)製PIXUS F900を用いてPR101で出力した。測定パッチは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のOD1.0の箇所を用い、ブラックについてはカラーバランスを見積もるために、シアン(Kc)、マゼンタ(Km)及びイエロー(Ky)のそれぞれについてもODの測定を行った。
(耐ガス性試験結果)
上記の実施例1〜5、参考例1、2及び比較例1の画像耐ガス性試験の結果、得られた画像のOD残存率の結果と、前記した表1に示した関東近辺の各家庭及びキヤノン(株)社内の各事業所室内のオフィスにおける各測定箇所に設置した各画像における、実環境下での試験1年後のOD残存率の平均結果との差を求め、以下の基準で判断した。その結果を表4に示した。
◎:全てのパッチでOD残存率の差が5%未満
○:OD残存率の差が最大のパッチで5%以上10%未満
△:OD残存率の差が最大のパッチで10%以上15%未満
×:OD残存率の差が最大のパッチで15%以上
Figure 0004185906
<比較例2>
サンプル表面上表面方向の流速を0.1mに変えた以外は実施例1と同様にして画像耐ガス性試験を行ったところ、同一サンプル上、試験槽内の混合ガスの流れ方向に対して退色ムラが発生してしまい、正確な画像耐ガス性試験を行うことができなかった。
(銀塩写真画像サンプル)
銀塩写真サンプルには、インクジェット画像で使用した場合と同様の画像についての、一般の写真プリント店(富士写真フィルム純正品取扱店)にてデジタル画像を出力したものを用いた。
<実施例8及び比較例3>
表5に示したように、O3、NO2及びSO2の濃度が表5に示したようになるように設定し、これらのガスを使用して画像耐ガス性試験を行った。これをそれぞれ実施例8及び比較例3とした。その際、混合ガスを槽内に設置したファンにより、画像サンプル表面上水平方向に流速0.3m/sで供給し、24℃、60%で、72hの曝露条件を標準(5サイクル)に試験を行った。尚、表5の各ガスの量についての単位は、ppbである。
Figure 0004185906
(耐ガス性試験の結果)
上記した実施例8及び比較例3の画像耐ガス性試験による画像サンプルにおけるOD残存率の結果と、前記の表1に示した関東近辺の各家庭及びキヤノン(株)社内の各事業所室内のオフィスにおける各測定箇所に設置した各画像における、実環境試験1年後のOD残存率を5年まで外挿したものの平均結果との差を求め、以下の基準で判断した。その結果を表6に示す。
○:全てのパッチでOD残存率の差が5%未満
×:OD残存率の差が最大のパッチで5%以上
Figure 0004185906
<実施例9及び比較例4>
(インクセット)
<色材の調製>
(イエローインク用色材)
ジアゾ化した4−ニトロ−4’−アミノスチルベン−2,2−ジスルホン酸と3−アミノナフタレン−1−スルホン酸とをカップリングさせ、これをトリアゾール化し、ニトロ基をアミノ基に還元する公知の方法で製造したアミノスチルベン−トリアゾールを水に溶解し、亜硝酸ナトリウム、塩酸を滴下しジアゾ化した。これを、下記式(α)の化合物の水溶液に滴下させ、カップリングさせた後、塩化ナトリウムにより塩析した。この化合物を亜硝酸ナトリウム水溶液でジアゾ化し、この混濁液に、6−アミノナフタレン−2−スルホン酸水溶液を添加し、これをトリアゾール化したものを塩化ナトリウムで塩析することにより、式(1)の色材を得た。
Figure 0004185906
(マゼンタインク用色材)
キシレン中に下記式(β)の化合物、炭酸ナトリウム、ベンゾイル酢酸エチルエステルを反応させ、反応物を濾過、洗浄した。これをN,N−ジメチルホルムアミド中で、メタアミノアセトアニリド、酢酸銅、炭酸ナトリウムを順次仕込み反応させ、反応物を濾過、洗浄した。更にこれを、発煙硫酸中でスルホン化し、濾過、洗浄を行い、これを水酸化ナトリウム存在下、シアヌルクロライドと縮合反応を行った。この反応液中にアンスラニル酸を添加し、水酸化ナトリウム存在下、縮合反応を行った。これを濾過、洗浄し、式(2)の色材を得た。
Figure 0004185906
(シアンインク用色材)
スルホラン、4−スルホフタル酸モノナトリウム塩、塩化アンモニウム、尿素、モリブデン酸アンモニウム、塩化銅(II)を加熱攪拌し、メタノールで洗浄後、水を加え、水酸化ナトリウム水溶液でpH11に調整した。そして攪拌しながら塩酸水溶液を加え、そこに塩化ナトリウムを徐々に添加した。析出した結晶を濾過し20%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、続いてメタノールを加え析出した結晶を濾別し、70%メタノール水溶液で洗浄後乾燥して、所望の銅フタロシアニン(トリ又はテトラ)スルホン酸(トリ又はテトラ)ナトリウム塩を青色結晶として得た。
次に、クロロスルホン酸中に銅フタロシアニン(トリ又はテトラ)スルホン酸(トリ又はテトラ)ナトリウム塩を徐々に仕込み、更に、塩化チオニルを滴下し反応を行った。反応液を冷却し、析出している結晶を濾過し、所望の銅フタロシアニン(トリ又はテトラ)スルホニルクロライドのウェットケーキを得た。これを攪拌懸濁させ、アンモニア水、下記式(γ)の化合物を注加し、反応を行った。これに、水、塩化ナトリウムを投入し結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、再度、濾過、洗浄後、乾燥し、式(3)の色材を得た。
Figure 0004185906
上記式(γ)で表わされる化合物の製造は以下のようにして行った。氷水中にリパールOH、塩化シアヌル、アニリン−2,5−ジスルホン酸モノナトリウム塩を投入し、水酸化ナトリウム水溶液を添加しながら反応を行った。次に反応液に、水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH10.0に調整した。この反応液に28%アンモニア水、エチレンジアミンを投入し反応を行った。続いて、塩化ナトリウム、濃塩酸を滴下し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾過分取し、20%塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキをメタノール、水を加え、濾過し、メタノールで洗浄、乾燥して上記(γ)を得た。
Figure 0004185906
<インクの調製>
上記で得た各色材をそれぞれ用い、下記表7に示すような処方で各色インクを調製した。その際、各成分を混合した後、それぞれを0.2μmのメンブランフィルターを通し加圧ろ過した。上記で得られた各色インクを組み合わせて実施例9のインクセットを得た。但し、下記組成は質量部である。
Figure 0004185906
実施例9のインクセットをキヤノン製BJC−210J用のインクタンクに充填した。又、比較例4として、BJC−210J用の純正インクカートリッジ(BC−05)を用意した。
(耐ガス性試験結果)
3、NO2、SO2のそれぞれの濃度を表8に示したように設定し、夫々実施例9、比較例4とした。そして、混合ガスを槽内に設置したファンにより、サンプル表面上水平方向に流速0.3m/s(濃度勾配を形成しない速度の一例)で供給し、温度24℃、湿度60%で、72hの曝露条件を標準(5サイクル)に試験(5年相当)を行った。尚、表8の各ガスの量についての単位は、ppbである。
Figure 0004185906
上記の実施例9及び比較例4のOD残存率の結果と、上記、関東近辺の実環境試験で平均的な退色を示した表1中のC宅roomでの3年後のOD残存率を5年まで外挿したものとの差を求め、以下の基準で判断した。この結果を表9に示した。又、上記関東近辺の実環境試験で平均的な退色を示した表1中のC宅roomでの5年後のOD残存率と、上記の実施例9及び比較例4のOD残存率の結果も同様に表9と同じ結果であった。
○:全てのパッチでOD残存率の差が1%未満
×:OD残存率の差が最大のパッチで1%以上
Figure 0004185906
上述した説明は、本発明の試験方法が如何に実際の状況に酷似した結果を短時間でもたらすことができるかという説明をしてきたが、以下では、図20を用いて、インクの組み合わせにおける発明が本試験方法の検証中に生まれていることを説明する。図20は参考のYMCのOD残存率を示しており、各色とも優れた耐ガス性能を有しているだけでなく、退色性の度合いも良く一致していることがわかる。このことは、これらインクセットを用いた場合の2次色や3次色の退色挙動が、カラーバランスを維持しながらの非常に優れた退色特性であることを示している。これらの画像を時間軸を同じにする全てのパッチでOD残存率の差が1%未満であった。従って、この測定による画像を時間軸(好ましくは5年、10年或いはそれ以上)を同じにする全てのパッチでOD残存率の差が1%未満の画像を形成できるインクセットは、極めて優れたインクの組み合わせということができる。よって、ここにおける本発明のインクセットは、複数のインクのいずれもが、該インクによって形成した各画像について、以下の(1)及び(2)を満たす条件で画像耐ガス性試験を連続して360時間行った場合の画像濃度(O.D.)残存率の差が1%未満であることを特徴とするインクセットである。
(1)上記混合ガス中のオゾン濃度が75ppb以上及び二酸化窒素濃度が150ppb以上である。
(2)上記混合ガスをサンプル表面上に0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給する。
本発明は、実用化されている、インクジェット画像や銀塩写真等に代表される画像全般の、より精度の高い耐ガス性試験方法としては無論のこと、各種記録画像にも、又、今後展開される各種の試験方法として利用できる。加えて、上記条件を展開することで、所望期間の共通水準の試験方法として利用でき、日本国内の測定水準にもすることができるほか、世界標準の試験方法としても採用できるものである。
年間を通した屋内外環境におけるオゾン濃度を示す図である。 年間を通した屋内外環境における二酸化窒素濃度を示す図である。 年間を通した屋内外環境における二酸化硫黄濃度を示す図である。 年間を通した屋内環境における温度及び湿度を示す図である。 年間を通した屋内外環境におけるインクジェット画像劣化を示す図である。 年間を通した屋内外環境における銀塩写真画像劣化を示す図である。 インクジェット画像劣化におけるオゾン、二酸化窒素、二酸化硫黄及び湿度の影響を示す図である。 銀塩写真画像劣化におけるオゾン、二酸化窒素、二酸化硫黄及び湿度の影響を示す図である。 特定条件で行ったガス試験後のインクジェット画像のOD残存率(%)と実環境試験1年後のOD残存率の平均値とを比較した図である。 混合ガスの曝露時間を変化させて試験したインクジェット画像のOD残存率(%)と1年間の家庭及びオフィスの実環境試験後のデータとを比較したものを示す図である。 オゾンガス単独の曝露時間を変化させて試験したインクジェット画像のOD残存率(%)と1年間の家庭及びオフィスの実環境試験後のデータとを比較したものを示す図である。 混合ガスの濃度比率を一定として全濃度を変化させた場合のシアンパッチのOD残存率(%)とガス曝露積算量(オゾン濃度を使用:ppm・h)の関係を示す図である。 混合ガスの濃度比率を一定として全濃度を変化させた場合のマゼンタパッチのOD残存率(%)とガス曝露積算量(オゾン濃度を使用:ppm・h)の関係を示す図である。 混合ガスの濃度比率を一定として全濃度を変化させた場合のイエローパッチのOD残存率(%)とガス曝露積算量(オゾン濃度を使用:ppm・h)の関係を示す図である。 混合ガスの濃度比率を一定として全濃度を変化させた場合のブラックパッチのシアン成分のOD残存率(%)とガス曝露積算量(オゾン濃度を使用:ppm・h)の関係を示す図である。 混合ガスの濃度比率を一定として全濃度を変化させた場合のブラックパッチのマゼンタ成分のOD残存率(%)とガス曝露積算量(オゾン濃度を使用:ppm・h)の関係を示す図である。 混合ガスの濃度比率を一定として全濃度を変化させた場合のブラックパッチのイエロー成分のOD残存率(%)とガス曝露積算量(オゾン濃度を使用:ppm・h)の関係を示す図である。 銀塩写真のOD残存率(%)と混合ガス曝露積算量(ppm・h)の関係を示す図である。 銀塩写真のOD残存率(%)とオゾンガス曝露積算量(ppm・h)の関係を示す図である。 特定の染料インクを用いたインクジェット画像の混合ガス試験の一例を示す図である。 耐ガス性試験方法を行うのに好適な試験装置の一例を示す図である。
符号の説明
1:希釈用空気ドライユニット
2:NO2、SO2ボンベ
3:オゾン発生機
4:槽内攪拌用ファン
5:ガス濃度計
6:排気ファン
7:サンプル回転ホルダー(自公転)
8:サンプル
9:湿度発生機
10:温湿度測定部
11:排ガス処理装置

Claims (5)

  1. 試験槽内のオゾン及び二酸化窒素を少なくとも含有する混合ガス雰囲気に画像サンプルを設置して該画像サンプルの耐ガス性を評価する画像耐ガス性試験方法であって、以下の(1)及び(2)を満たす条件で上記混合ガス雰囲気に画像サンプルを設置することを特徴とする画像耐ガス性試験方法。
    (1)上記混合ガス中のオゾン濃度が75ppb以上300ppb以下、二酸化窒素濃度が150ppb以上3000ppb以下であり、上記混合ガス中のオゾン濃度と二酸化窒素濃度との比率(オゾン:二酸化窒素)が1:2から1:10である。
    (2)試験槽内に設置した上記混合ガスを攪拌する攪拌用のファンにより、上記混合ガスを画像サンプル表面上に0.2m/s以上3.0m/s以下の流速で連続供給する。
  2. 前記画像サンプルを試験槽内に設置し、該試験槽内で画像サンプルを循環させる請求項1に記載の画像耐ガス性試験方法。
  3. 前記混合ガスが、それぞれに希釈されたオゾン及び二酸化窒素を混合して得られたものである請求項1又は2に記載の画像耐ガス性試験方法。
  4. 更に、画像サンプルを暗室内に設置する請求項1〜のいずれか1項に記載の画像耐ガス性試験方法。
  5. 前記混合ガスは、更に二酸化硫黄を25ppb以上3000ppb以下含有したものである請求項1〜のいずれか1項に記載の画像耐ガス性試験方法。
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