JP4185889B2 - 複合板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、主として住宅建築用の部材や家具、建具などの材料として使用される複合板およびその製造方法に関する。
従来の複合板としては、たとえば、下記特許文献1に記載のものが知られている。この複合板は、針葉樹基材の表面に接着剤を介して、全体厚に対して約8〜17%であって且つ2mm以下の厚さの木質繊維板を載置した後、全体を熱圧することにより製造される。
特許第2530952号公報
基材に木質繊維板を接着剤を介して重ね合わせ、熱圧により貼着すると、木質繊維板の表面が加熱され、その表面側の水分が放散するので、木質繊維板の表面側の含水率が低下する。木質繊維板は略等方性であるため、表面側の含水率が低下すると、裏面側を凸とする椀状の反りや変形が生ずることになるので、これを防止するために、上記特許文献1においては、木質繊維板の厚さを小さなものとしているが、反面、表面傷や凹みなどの損傷を受けやすくなり、また、平坦度が損なわれやすくなるなどの不利欠点が生じ、用途上の制約が大きくなる恐れがある。
また、上記特許文献1記載のような従来の複合板は、その木口縁に実を形成したときに、実の表面側にバリやササクレが発生しやすく、実を介しての複合板同士の嵌合に支障を来たすことがあった。さらには、実を形成したときに節や節抜け、木目の凹みなどの欠陥があると、局部的な強度不足を生じ、実の欠損を招くことがあった。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、反りや変形を防止するとともに、実を形成したときにその表面を滑らかに形成することのできる、新規な構成の複合板およびその製造方法を提供することにある。
上記の課題を達成するため、請求項1にかかる本発明は、4枚の単板が接着剤を介して重合されてなる積層体と、該積層体の表面に接着剤を介して貼着される繊維板とからなり、該積層体の最表面側および最裏面側に位置する単板の繊維方向は該積層体の長手方向に略一致するとともに、これら最表面側および最裏面側の単板間に位置する2枚の中間単板の繊維方向は該長手方向と直交する方向に略一致し、且つ、最表面側の単板と下側の中間単板とが略同一厚みtであって最裏面側の単板と上側の中間単板の板厚が(0.7〜1.0)×tであることを特徴とする複合板である。
請求項2にかかる本発明は、請求項1記載の複合板を製造する方法であって、繊維方向が長手方向に略一致する最裏面側の単板の上に、繊維方向が長手方向と直交する方向に略一致する2枚の中間単板を接着剤を介して積層し、その上に繊維方向が長手方向に略一致する最表面側の単板を接着剤を介して積層し、この最表面側の単板の上にさらに繊維板を接着剤を介して積層した後熱圧により一体化することを特徴とする。
本発明の複合板は、4枚の単板が接着剤を介して重合されてなる積層体の表面に繊維板が貼着されてなり、主として住宅建築用の部材や家具、建具などの材料として使用される。
本発明の複合板に用いる積層体4枚の単板が接着剤を介して重合されてなるものであるが、その表裏の単板(最表面側および最裏面側の単板)は積層体(または複合板)の長手方向に略一致した繊維方向を有するものとし、これら最表面側および最裏面側の単板の間に位置する2枚の中間単板積層体の長手方向と直交する方向(すなわち短手方向または幅方向)に略一致した繊維方向を有するものとする。中間単板として2枚の単板を用いることにより各単板の欠点が分散され、局部的な強度不足を解消することができる。積層体を形成する各単板は、針葉樹単板であっても広葉樹単板であっても良く、これらを任意に組み合わせた積層体を用いても良い。
単板同士または単板と繊維板との間に介在させる接着剤は、ホルムアルデヒドの発散が少ない熱硬化性接着剤を用いることが好ましく、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂またはそれらの変性樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、合成ゴム系接着剤などから任意選択される一種または複数種を使用することが好ましい。
繊維板は、複合板の用途によりミディアムデンシティファイバーボード(以下、MDFという。)やハードファイバーボードなどから選定すると良い。積層体を形成する単板として針葉樹材を使用する場合、繊維板の板厚は比較的大きい(厚い)ものを使用し、たとえば2mmを超えるものを使用すると良い。積層体の単板として広葉樹材を使用する場合は、繊維板の板厚は比較的小さい(薄い)ものを使用することができ、たとえば1.5mm厚前後のものを使用することができる。
積層体を形成する各単板および繊維板の板厚はいずれも任意に設定することができ、たとえば積層体を形成する各単板をいずれも略同一厚みとしても良いが、2枚の中間単板のうち下側にあるものと最表面側単板とを略同一厚みtとしながら、最裏面側単板と、2枚の中間単板のうち上側にあるものの板厚を(0.7〜1.0)×tとし、且つ、繊維板の板厚を(1.0〜1.2)×tとしても良い。
実(さね)を形成する場合は、少なくとも複合板の長手方向に沿って延長するように形成する。さらに、複合板の短手方向に沿って延長する実を併せて形成しても良い。複合板の長手方向に沿って延長するように形成された実(雄実、雌実)の繊維板側の表面は、この繊維板に隣接する単板(すなわち最表面側の単板)からなるものとすることが好ましい。既述のように、最表面側の単板の繊維方向は複合板の長手方向と略一致している。
熱圧は、たとえば、表面が平坦な上下二つの熱圧盤の間に上記積層体を挟んで熱圧プレスすることによって行う。熱圧条件としては、たとえば熱圧圧力:8〜12kgf/cm、熱圧盤温度:110〜140°C、熱圧時間:4〜6分であり、さらに望ましくは熱圧圧力:10kgf/cm、熱圧盤温度:125°C、熱圧時間:5分で行われる。熱圧されたままの繊維板の表面は、不要な凹凸や傷などがあるので、サンダーやプレーナーなどにより表層を削って平滑化すると良い。
請求項1にかかる本発明によれば、反りの発生がほとんどなく、実を形成したときにその表面にささくれなどの欠陥がなく滑らかな複合板が得られる。
より詳しく言えば、本発明の複合板は、4枚の単板が接着剤を介して重合されてなる積層体の表面に接着剤を介して繊維板を貼着した積層構成を有しており、且つ、積層体を形成する単板の繊維方向を、該積層体の最表面側および最裏面側の単板の繊維方向は該積層体の長手方向に略一致させるとともに、これら最表面側および最裏面側の単板間に位置する2枚の中間単板の繊維方向は該長手方向と直交する方向(短手方向)に略一致させているため、後述するように、熱圧後に解圧したときに、その横断面においても縦断面においても、中心線を境にして上下の単板および繊維板が複合板の上反りおよび下反りに対して拮抗した影響を与え、結果として複合板の反りを実質的に防止する作用を果たしている。
さらに、積層体は、4枚の単板から形成されるので、いずれかの単板に節や節抜けあるいは木目の凹みなどの欠陥が存在しても、これに隣接する単板の欠陥と重なることは実際上ほとんどあり得ず、欠陥が分散され局部的な強度不足が解消される。
請求項2にかかる本発明によれば、上記のように反りの発生がほとんどない複合板を効率良く製造することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明の実施例1による複合板の横断面図(長手方向に直交する垂直面で切断したときの断面図)である。図1において、雄実14と雌実15との間の積層部分は短手方向Yに縮小して示されている。この複合板10は、住宅建築用の床板として使用されるもので、4枚の単板11a〜11d(これらにより積層体11が形成されている)とMDF12とが隣接する各層間に介在する接着剤により積層貼着一体化されて構成されている。複合板10の大きさは、製品寸法でたとえば幅W=303mm、厚みT=12mm、長さL=1818mmである。この寸法は製品寸法であるので、熱圧による圧縮代や削り代を予め考慮して製造される。
MDF12の表面には、床の模様を有する化粧シート13が貼着される。MDF12の厚みは、単板11a〜11dとして針葉樹材を使用する場合は、2.0mm(熱圧後)を超えるもの、たとえば2.8(熱圧前3.0)mm厚とする。単板11a〜11dとして広葉樹材を使用する場合は、MDF12の厚みは2.0mm以下(熱圧後)のものでも良く、たとえば1.5mm厚のMDF12を使用することができる。
積層体11は、最裏面側の単板11a、2枚の中間単板11b,11cおよび最表面側の単板11dから形成され、各単板間は接着剤により熱圧着される。積層体の表裏側に設けられる最裏面側の単板11aおよび最表面側の単板11dの繊維方向は、積層体11または複合板10の長手方向(図1において紙面鉛直方向)に略一致している。最裏面側の単板11aと最表面側の単板11dの間に位置する2枚の中間単板11b,11cの繊維方向は、長手方向と直交する方向(図1において左右方向、言い換えれば積層体11または複合板10の短手方向)に略一致している。
各単板の厚みは、たとえば最裏面側の単板11aの厚みは1.95mm、2枚の中間単板の厚みは、下側11bが2.55mm、上側11cが2.00mm、最表面側の単板11dの厚みは、2.55mmとする。これは一例であって、用途などに応じて任意に設定することができる。
単板11a,11b間、単板11b,11c間、単板11c,11d間、および単板11dとMDF12との間に介在させる接着剤は、ホルムアルデヒドの発散が少ない熱硬化性接着剤を用い、たとえば変性フェノール樹脂接着剤を使用する。
さらに、複合板10は、その長手方向に沿って延長する雄実14および雌実15を有する。これら雄実14および雌実15のMDF12側の表面は、積層体11または複合板10の長手方向に略一致した繊維方向を有する最表面側の単板11dによって形成されている。図示からは明らかではないが、複合板10は、その長手方向に沿って延長する雄実14および雌実15に加えて、その短手方向に沿って延長する実をさらに有するものであっても良い。
この複合板10の製造方法について説明する。先ず、長手方向に略一致した繊維方向を有する最裏面側の単板11aの上に、長手方向と直交する方向(短手方向Y)に略一致した繊維方向を有する下側の中間単板11bおよび上側の中間単板11cを、各単板間に接着剤を介在させて積層する。この場合、接着剤を下側の中間単板11bの表裏両面にロールコーターなどにより塗布しておくと、最裏面側の単板11aと上側の中間単板11cには接着剤を塗布しておく必要がなく、接着剤塗布作業を簡略化できるので好ましい。
さらに、上側の中間単板11cの上に、長手方向に略一致した繊維方向を有する最表面側の単板11dを接着剤を介して積層する。この際、最表面側の単板11dの表裏両面にロールコーターなどにより接着剤を塗布しておき、最後に、最表面側の単板11dの上にMDF12を積層する。
このようにして、単板11a〜11dおよびMDF12が順次に接着剤を介して積層されてなる5層積層板を得た後、これを熱圧プレスの下側熱圧盤と上側熱圧盤の間に挟んで熱圧する。
接着剤としては変性フェノールが使用される。熱圧条件は、単板11a〜11dおよびMDF12の種類、使用する接着剤の種類、その他の条件に応じて調整するが、たとえば圧力10kgf/cm、温度125°C、時間5分である。熱圧されたままの複合板10のMDF12表面には不要な凹凸や傷などがあるので、サンダーやプレーナーなどにより表層を削る。
このようにして熱圧成形した複合板10の長手方向に沿って実14,15を形成する。この際、実14,15のMDF12側の表面が最表面側の単板11dによって形成されるように、複合板10厚み方向の実形成位置を設定する。
以上のようにして、複合板10が製造される。
次に、複合板10の作用について、その横断面図である図1を参照して説明すると、熱圧後に解圧すると、繊維方向が長手方向Z(図2)に略一致している最裏面側の単板11aおよび最表面側の単板11dは短手方向Yに収縮しようとする。また、繊維方向が無方向性であるMDF12は長手方向Zおよび短手方向Yに収縮しようとする。これに対して上側および下側の中間単板11b,11cはその繊維方向が短手方向Yに略一致しているので短手方向Yの収縮率は非常に小さい。
すなわち、解圧後の収縮率の大きさを短手方向Yにおいて比較すると、最裏面側の単板11aおよび最表面側の単板11dの収縮率が一番大きく、次にMDF12の収縮率が大きく、中間単板11b,11cの収縮率が一番小さい。さらに、各板の収縮が複合板10全体に与える影響は、複合板10の厚み方向の中心線Xからの距離が大きいほど大きく影響する。
最裏面側の単板11aは複合板10の厚み方向の中心線Xから最も遠く、この短手方向Yの収縮率が一番大きいため、複合板10を上反り(上方に凸となる反り)させようとする。これに対して、最表面側の単板11dも短手方向Yの収縮率が大きいが、複合板10の厚み方向の中心線Xに近く、複合板10を下反り(下方に凸となる反り)させようとするが、中心線Xに近い分だけその影響は小さい。MDF12は最裏面側の単板11aと同様に中心線Xからの距離が大きく、複合板10を下反りさせようとするが、その短手方向Yの収縮率が比較的小さいことから、下反りに対する影響はそれ程大きくない。中間単板11b,11cは短手方向の収縮率がこれら5層の中で最小であり、且つ、中心線Xを含む厚み範囲内またはそれに近接した位置にあるので、複合板10の反りに対する影響は小さく、ほとんど無視することができる。
結局、最裏面側の単板11aが複合板10を上反りさせようとする作用に対して、最表面側の単板11dとMDF12とがこれに抗して複合板10を下反りさせようと作用するため、これらの作用が拮抗して複合板10全体としては反りのほとんどない状態となる。
図2は、この複合板10の縦断面図(長手方向Zに沿った垂直面で切断したときの断面図)である。解圧後の収縮率の大きさを長手方向Zにおいて比較すると、中間単板11b,11cの収縮率が最も大きく、次いでMDF12の収縮率が大きく、最裏面側の単板11aと最表面側の単板11dの収縮率が最も小さい。各板の収縮が複合板10全体に与える影響が、複合板10の厚み方向の中心線Xからの距離が大であるほど大きいことは、前述したと同様である。
したがって、複合板10の縦断面における解圧後の収縮を考えると、中間単板11b,11cは長手方向Zの収縮率が大きいものの、中心線Xを含む厚み範囲内またはそれに近接した位置にあるので、複合板10を上反りさせようとする作用は比較的小さく抑えられる。最裏面側の単板11aは、中心線Xから遠く離れた位置にあるが、長手方向Zの収縮率が最も小さく、複合板10を上反りさせようとする作用は小さい。最表面側の単板11dは中心線Xに近接しており、且つ、長手方向Zの収縮率も最小であるので、複合板10の上反りに対する影響はほとんど無視し得る程度である。MDF12は最裏面側の単板11aと同様に中心線Xからの距離が大きく、その収縮によって複合板10を下反りさせようとするが、その長手方向Zの収縮率が比較的小さいことから、下反りに対する影響はそれ程大きくない。
結局、中間単板11b,11cが複合板10を上反りさせようとする作用に対して、MDF12がこれに抗して複合板10を下反りさせようと作用するため、これらの作用が拮抗して複合板10全体としての反りはほとんどないものとなる。
したがって、複合板10においては、熱圧後に解圧したときに、その横断面(短手方向Y)においても縦断面(長手方向Z)においても、中心線Xを境にして上下の単板および繊維板が複合板の上反りおよび下反りに対して拮抗した影響を与え、結果として複合板の反りが実質的に防止される。
図3は、本発明の実施例2による複合板16を示す横断面図である。図3において、雄実14を含んで短手方向Yに突出している部分と雌実15を含んで短手方向Yに凹んでいる部分との間の積層部分は短手方向Yに縮小して示されている。複合板16において、実施例1による複合板10におけると同一または対応する要素ないし部材には同一の符号が付されている。
この複合板16は、最裏面側の単板11aと下側の中間単板11bとで形成される下側積層体と、上側の中間単板11cと最表面側の単板11dとMDF12とで形成される上側積層体とが短手方向Yにずれた構造を有している。この複合板16の大きさは、たとえば、実施例1の複合板10と同様に、厚みT=12mm、幅W=303mm、長さL=1818mmである。この複合板16を製造するには、実施例1の複合板10と同様に、接着剤を介して最裏面側の単板11a、上下の中間単板11b,11c、最表面側の単板11dおよびMDF12を順次に積層して得た5層積層体を熱圧成形一体化することにより製造される。このような構造においても、実施例1の複合板10について既述したと同様の作用により、反りの発生がほとんどなく、且つ、実14,15を表面滑らかに形成することができる。
複合板16のその他の構造および作用は、実施例1の複合板10と同様であるので、説明を省略する。
本発明の一実施形態(実施例1)による複合板の横断面図である。 この複合板の縦断面図である。 本発明の他の実施形態(実施例2)による複合板の横断面図である。
符号の説明
10 複合板
11 積層体
11a 最裏面側の単板
11b 下側の中間単板
11c 上側の中間単板
11d 最表面側の単板
12 MDF(繊維板)
13 化粧シート
14 雄実
15 雌実
16 複合板
X 複合板の厚み方向中心線
Y 複合板の短手方向
Z 複合板の長手方向

Claims (2)

  1. 4枚の単板が接着剤を介して重合されてなる積層体と、該積層体の表面に接着剤を介して貼着される繊維板とからなり、該積層体の最表面側および最裏面側に位置する単板の繊維方向は該積層体の長手方向に略一致するとともに、これら最表面側および最裏面側の単板間に位置する2枚の中間単板の繊維方向は該長手方向と直交する方向に略一致し、且つ、最表面側の単板と下側の中間単板とが略同一厚みtであって最裏面側の単板と上側の中間単板の板厚が(0.7〜1.0)×tであることを特徴とする複合板。
  2. 請求項1記載の複合板を製造する方法であって、繊維方向が長手方向に略一致する最裏面側の単板の上に、繊維方向が長手方向と直交する方向に略一致する2枚の中間単板を接着剤を介して積層し、その上に繊維方向が長手方向に略一致する最表面側の単板を接着剤を介して積層し、この最表面側の単板の上にさらに繊維板を接着剤を介して積層した後、熱圧により一体化することを特徴とする複合板の製造方法。
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