JP4185197B2 - 酸化ビスマス(iii )の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、菱形の形状を有する酸化ビスマス(III )の製造方法に関する。さらに詳細には、粒径が均一で凝集性のない菱形の形状を有する酸化ビスマス(III )を効率よく、且つ経済的に製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酸化ビスマス(III )は、低融点物質としてガラス成分、電極用ペースト成分に、また、炭化水素系の接触気相酸化に優れた活性や選択性を示す触媒成分として多くの用途に用いられている。
1960年代後半からセラミックス半導体材料成分としても注目を浴び研究開発が盛んに進められている。また、高いイオン導電率を示すことから酸素センサー等の応用が期待されている。
従来、酸化ビスマスは、(1)ビスマス塩、例えば硝酸ビスマス、炭酸ビスマスを加熱分解する方法、(2)ビスマス塩溶液に水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等のアルカリを加えて水酸化ビスマス又は酸化ビスマス水和物として沈殿させ、この沈殿を空気中で焼成する方法、(3)ビスマス塩を含む水溶液に第三物質を介在させ、焼成工程を経て酸化ビスマスを製造する方法、(4)ビスマスアルコキシドを原料として酸化ビスマスを製造する方法、によって製造されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらいずれの方法で製造された酸化ビスマスも、粒子形状が針状、棒状あるいは球状と形状も多様であり、粒径も不揃いであった。また、複雑な原料合成過程を必要とし、且つ、いずれの方法も高い焼成温度を必要とするためエネルギーコストが高くつくのを免れない。導電性ペースト等に用いる場合には、Blain値、嵩比重あるいは配向性の観点からも問題があった。前記従来の方法では、いずれも微細な粒子を製造することに力点が置かれていた。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、平均粒径が15μmと大きく、菱形の形状を有する酸化ビスマス(III )を、焼成工程を経ることなく、製造することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その目的を達成するため、三価のビスマスイオンを含む硝酸酸性水溶液に、アルカリを添加しpH2〜4に調整してビスムチル塩を生成沈殿せしめ、ビスムチル塩の沈殿を含む溶液の温度を70〜100℃に上げて、アルカリを添加しpHを12〜14に調整して、20〜40分熟成した後、沈殿物を洗浄、濾過、乾燥する。
【0005】
【作用】
本発明において用いられる三価のビスマスイオンを含む硝酸酸性水溶液は、水に可溶なビスマス塩、例えば、硝酸ビスマス(III )結晶、を水に溶かして得られる。ビスマス塩を水に溶解した際、加水分解を受け易いため、該溶液に硝酸を添加し安定性をもたせる。また、金属ビスマスを硝酸に溶解しても得られる。
該三価のビスマスイオンの濃度については特に制限はないが、通常0.3〜1.2モル/リットルの範囲で選ばれる。
本発明においては、このように調整された三価の硝酸ビスマス溶液にアルカリを添加して、ビスムチル塩を沈殿させる。その際pHを2〜4に厳密に制御することが必要である。pH2.0以下では目的のビスムチル塩が生成されず、一方pH4以上としたのでは、ビスムチル塩は得られるけれども、その後の工程を経て最終的に得られた酸化ビスマス(III )は針状又は棒状の形状を呈する。
【0006】
pH2〜4で生成したビスムチル塩の沈殿物のX線回折パターンを図1及び図2に示す。図1はX線回折パターンの前半であり、図2はX線回折パターンの後半である。X線回折は、X線源としてCuKαを使用して、40KV・30mAでニッケルフィルターを用いて、回折計(フラット粉末)法によった。この回折パターンはASTMカードに掲載されていない。この沈殿物は、ビスムチル塩で、一般式[Bi65 (OH)3 ](NO3X ・3H2 で示される構造を有しているものと考えられる。
添加するアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物を含む水溶液が好ましく用いられる。添加するアルカリ水溶液の濃度は特に制限はないが、通常5〜12.5モル/リットルの範囲で選ばれる。
pH2〜4の範囲で反応生成したビスムチル塩を含む溶液の温度を70〜100℃、好ましくは80〜100℃に加温してその温度に保つ。70℃以下の温度では脱水及び組成転移に時間を要する。強アルカリ液であるので温度を上げ過ぎることは望ましくないので、上限は100℃とする。
【0007】
次いで、該アルカリを添加しpH12〜14に制御する。pH12以下では複雑に縮合した塩基性硝酸塩が生成し酸化ビスマス(III )が生成されない。一方pH14以上では酸化ビスマス(III )の収率はそれ以上増えず、アルカリを無駄に消費するのみである。
このpH濃度と温度とで20〜40分熟成する。20分以下では脱水及び組成転移完了に不十分であり、40分を越えてもそれ以上の進行が望めない。
このようにして析出した酸化ビスマス(III )の沈殿は、濾過や遠心分離等により固液分離し、乾燥する。
【0008】
140℃で乾燥した酸化ビスマス(III )の示差熱分析結果を図5に示す。図5のB線に示されるとおりに500℃まで加熱昇温しても、A線で示されるとおり重量は一定であり、水和物等ではなく、酸化ビスマス(III )が形成されたことが分かる。なお、図5のC線は示差熱曲線である。C線によっても、この温度範囲で相転位等を示さないことが分かる。
酸化ビスマス(III )には4つの結晶系が存在すると言われている。即ち、低温安定相の単斜晶系α相、高温安定相の立方晶系δ相、そして準安定相の正方晶系β相と体心立方晶系γ相である。得られた酸化ビスマス(III )のX線回折パターンを図3及び図4に示す。図3はX線回折パターンの前半であり、図4はX線回折パターンの後半である。図3及び図4から明らかなように、本発明で得られた酸化ビスマス(III )は、低温安定相の単斜晶系α相とよく一致する。
【0009】
【実施例】
次に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何等制限されるものではない。
[実施例1]
硝酸ビスマスを水に溶解しpH1以下まで硝酸を添加し、ビスマス(III )イオン濃度を0.96モル/リットルとなるように水溶液を調整した。攪拌しながら溶液の温度を40℃とする。次いで10モル/リットル濃度の水酸化ナトリウム溶液を1ミリリットル/分の速度で添加し、溶液のpHを2.5に調整し約30分間かきまぜて、白色の沈殿を生成せしめた。
【0010】
次いで、この沈殿を含む溶液の温度を約85℃にし、10モル/リットル濃度の水酸化ナトリウム溶液を10ミリリットル/分の速度で添加し、pHを12.5になるまで添加した。約30分間かきまぜ、重質で鮮明な酸化ビスマス(III )沈殿が得られた。得られた沈殿を水洗洗浄し遠心脱水後、約140℃で3時間乾燥した。得られた酸化ビスマスの純度は99%以上であり、平均粒径15μmを有する菱形の形状を有し、かつ粒径の揃ったものであった。
得られた酸化ビスマス(III )の粒子構造を示す走査型電子顕微鏡写真を図6の(A)に示す。粒形は菱形をなす形状で、X線回折パターン(図3及び図4参照)からα相に相当する酸化ビスマス(III )である。
【0011】
[実施例2]
実施例1における水酸化ナトリウム溶液の代わりに、水酸化カリウム溶液を用い、初めの溶液のpHを2.3に調整した他は実施例1と同様な操作を行い、酸化ビスマス(III )を得た。このものの純度は99%以上で、菱形の形状を有しかつ平均粒径15μmで粒径のよく揃ったものであった。粒度分布の測定結果を累積値と共に図7に示す。
【0012】
[比較例]
硝酸ビスマスを水に溶解し、pH1以下まで硝酸を添加し、ビスマス(III )イオン濃度を0.96モル/リットルに調整し、この溶液をかきまぜながら10モル/リットル濃度の水酸化ナトリウム溶液を1ミリリットル/分の速度で添加し、pHを12.5とし酸化ビスマスを沈殿させた。この溶液の温度は60℃であった。沈殿物は酸化ビスマス水和物であった。次いで、この酸化ビスマス水和物を実施例1と同様に脱水乾燥処理した後、300℃で3時間焼成を行い、酸化ビスマスを得た。得られたものは典型的な針状又は棒状を有し、粒径は不揃いのものであった。図6の(B)に比較例で得られた酸化ビスマス(III )の粒子構造を走査型電子顕微鏡(SEM)写真で示す。
【0013】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明方法によると、菱形の形状を有しかつ粒径の揃った大型の酸化ビスマス(III )を従来方法より簡単に、かつ、焼成を必要としないで経済的に製造することができる。
該酸化ビスマス(III )は、前記の特徴を有することから導電性ペースト等の原料として好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1のpH2.5で得られた、ビスムチル塩のX線回折パターンを示すグラフの前半である。
【図2】 本発明の実施例1のpH2.5で得られた、ビスムチル塩のX線回折パターンを示すグラフの後半である。
【図3】 本発明の実施例1の酸化ビスマス(III )のX線回折パターンを示すグラフの前半である。
【図4】 本発明の実施例1の酸化ビスマス(III )のX線回折パターンを示すグラフの後半である。
【図5】 本発明で得られた酸化ビスマス(III )の乾燥したものの示差熱分析結果を示すグラフである。
【図6】 (A)は実施例1で得られた酸化ビスマス(III )の結晶構造を示す走査型電子顕微鏡写真であり、(B)は比較例で得られた酸化ビスマス(III )の結晶構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】 実施例2で得られた酸化ビスマス(III )のレーザー回折散乱法による粒度分布測定結果を示すグラフである。

Claims (1)

  1. 三価のビスマスイオンを含む硝酸酸性水溶液に、アルカリを添加しpH2〜4に調整してビスムチル塩を生成沈殿せしめ、ビスムチル塩の沈殿を含む溶液の温度を70〜100℃に上げて、アルカリを添加しpHを12〜14に調整して、20〜40分熟成した後、沈殿物を洗浄、濾過、乾燥することからなる、酸化ビスマス(III)の製造方法。
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