JP4184963B2 - 非破壊検査方法 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、スポット溶接部における溶接状態の良否判別などに適用され得る非破壊検査方法に関する。
【0002】
【背景技術】
自動車や家電製品などの製造において利用することのできる金属板間の接合技術として、スポット溶接が知られている。スポット溶接に際しては、まず、図18に示すように、重ね合わせた2枚の金属板100a,100bを一対の電極150a,150bで挟む。この状態で、一対の電極150a,150bにより金属板100a,100bを局所的に加圧しつつ、電極150a,150bの間を通電する。電流は、金属板100a,100bにおいて電極150a,150bに挟まれた箇所を集中的に流れてジュール熱を発生させる。このジュール熱により金属板100a,100bの一部を溶融させた後、通電を停止する。金属板100a,100bにおける当該溶融部位が冷却して凝固することによって、金属板100a,100bは溶接されることとなる。
【0003】
図19は、上述のようにしてスポット溶接された2枚の金属板100a,100bにおけるスポット溶接部の断面図である。スポット溶接部において、金属板100a,100bの外表面は、電極150a,150bによる加圧に起因して凹んでいる。この凹みをインデンテーション101といい、その長さL1をインデンテーション径という。スポット溶接部には、ナゲット部102と、その周辺の圧接部103とが形成される。ナゲット部102は、金属板100a,100bにおいて、加圧および加熱により一旦溶融した後に凝固した結果、一体化した部位である。ナゲット部102についての長さL2をナゲット径という。ナゲット径L2がスポット溶接部における溶接強度を大きく左右する。ナゲット径L2が長いほど、当該スポット溶接部の溶接強度は大きくなる。圧接部103は、金属板100a,100bが圧着する程に加熱および加圧の影響を受けた部位である。ナゲット部102および圧接部103を合わせた長さL3を接合径という。また、圧接部103の周囲には、焼きなましを受けた熱影響部(HAZ)104が形成される。HAZ104についての長さL4をHAZ径という。HAZ104の周囲の母材105は、スポット溶接によっては金属組織に影響を受けていない部位である。
【0004】
適切に溶接が達成されたスポット溶接部におけるナゲット径L2や接合径L3は、一般に10ミリメートル以下であり、比較的小さい。そのため、スポット溶接部については、溶接強度が充分であるかどうかの検査を必要とする場合が多い。スポット溶接部の溶接強度はナゲット径L2に大きく左右されるため、スポット溶接部の溶接状態の良否については、ナゲット径L2に基づいて判断するのが有効である。
【0005】
特開平10−26609号公報は、ナゲット径L2を非破壊で測定し、測定結果に基づいてスポット溶接部の溶接状態の良否を判別することを目的の一つとする検査技術について、開示している。当該公報によると、検査に際して、検査対象部の近傍に励磁コイルを配設するとともに、検査対象部と励磁コイルの間にセンサとしてのループコイルを配設する。この状態で、励磁コイルに直流電流を流すことによって、検査対象部とともにセンサを通過する静磁場を発生させる。次に、静磁場を遮断した後、検査対象部に残留する磁場の消失過程をループコイルを介して追跡することによってループコイルのインダクタンス(またはインダクタンスに比例する物理量)を求める。このインダクタンスには、残留磁場が通過するスポット溶接部を構成するナゲット部102や圧接部103などの透磁率が反映される。このような測定を検査対象部に対して複数の位置について行うと、得られる複数のインダクタンスに変化が生ずる。インダクタンス変化には、スポット溶接部の内部構造の変化が反映される。したがって、当該非破壊検査技術によると、スポット溶接部の内部構造変化に由来する透磁率変化ひいてはインダクタンス変化を検出することによって、ナゲット径が推定されるのである。
【0006】
特開平10−26609号公報によると、非破壊検査において、センサとしてのループコイルは、金属板100aまたは金属板100bに対して所定の距離を隔てつつ、スポット溶接部のインデンテーション101に対向して配設される。インデンテーション101には通常の環境下では空気が存在する。空気の透磁率は、スポット溶接部を構成するナゲット部102や圧接部103などの透磁率よりも極めて小さい。その結果、検出されるループコイルのインダクタンスには、スポット溶接部の内部構造に由来する透磁率に加えて、インデンテーション101に存在する空気の透磁率も反映されてしまう。スポット溶接部の内部構造以外の要素に由来する透磁率が反映されたインダクタンス(またはインダクタンスに比例する物理量)に基づいては、スポット溶接部の非破壊検査においてナゲット径L2を正確に推定できない場合がある。
【0007】
【発明の開示】
本発明は、スポット溶接部における溶接状態の良否判別などの非破壊検査において、信頼性の高い検査結果を得ることが可能な非破壊検査方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の第1の側面によると非破壊検査方法が提供される。この非破壊検査方法は、検査対象部に第1静磁場を印加することによって検査対象部を磁化する工程と、第1静磁場を遮断し、磁化された検査対象部を通る第1残留磁場の複数の位置における微分磁束密度の過渡変化を測定する工程と、各測定位置における当該過渡変化の主時定数を第1時定数として求める工程と、検査対象部に第2静磁場を印加することによって検査対象部を磁化する工程と、第2静磁場を遮断し、磁化された検査対象部を通る第2残留磁場の各測定位置における微分磁束密度の過渡変化を測定する工程と、各測定位置における当該過渡変化の主時定数を第2時定数として求める工程と、測定位置における第1時定数の分布と第2時定数の分布との相違に基づいて、検査対象部の内部構造についての情報を求める情報取得工程と、を含む。
【0009】
好ましくは、測定位置は、検査対象部に対向して一列に配置している。
【0010】
好ましくは、情報取得工程では、測定位置を変数とする第1時定数の分布関数、および、測定位置を変数とする第2時定数の分布関数より得られる比関数に基づいて、内部構造の情報を求める。或は、好ましくは、情報取得工程では、測定位置を変数とする第1時定数の分布関数、および、測定位置を変数とする第2時定数の分布関数より得られる差関数に基づいて、内部構造の情報を求める。
【0011】
好ましい実施の形態においては、検査対象部は、2枚の金属板をスポット溶接した接合板材におけるスポット溶接部である。この場合、好ましくは、情報取得工程では、内部構造の情報として、スポット溶接部に含まれるナゲット部の形状についての情報を求める。
【0012】
本発明の第2の側面によると別の非破壊検査方法が提供される。この非破壊検査方法は、検査対象部に静磁場を印加することによって検査対象部を磁化するステップと、静磁場を遮断し、磁化された検査対象部を通る残留磁場の複数の位置における微分磁束密度の過渡変化を測定するステップと、各測定位置における過渡変化の主時定数を求めるステップとを、磁束密度の異なる複数の静磁場について行うスキャン工程と、各測定位置について、スキャン工程における静磁場の変化に対する主時定数の変化を解析する解析工程と、解析工程における解析結果に基づいて、検査対象部の内部構造についての情報を求める情報取得工程と、を含む。
【0013】
好ましくは、解析工程では、各測定位置について、スキャン工程における静磁場の変化に対する主時定数の変化が最大となる時定数急変静磁場の磁束密度を求め、情報取得工程では、測定位置を変数とする時定数急変静磁場の分布関数に基づいて、検査対象部の内部構造についての情報を求める。
【0014】
好ましくは、測定位置は、検査対象部に対向して一列に配置している。
【0015】
好ましくは、検査対象部は、2枚の金属板をスポット溶接した接合板材におけるスポット溶接部である。この場合、好ましくは、情報取得工程では、内部構造の情報として、スポット溶接部に含まれるナゲット部の形状についての情報を求める。
【0016】
図1〜図8を参照して、本発明において時定数を求めるための方法の原理を説明する。具体的には、検査対象部に印加されていた静磁場を遮断した後に、磁化された検査対象部を通る残留磁場の所定の位置における微分磁束密度の過渡変化を測定することによって、当該過渡変化の時定数を求めるための方法の原理を説明する。
【0017】
図1および図2は、静磁場の印加および遮断を利用して非破壊検査を実行するための装置の概略構成と、当該装置の動作とを表す概念図である。非破壊検査装置は、鉄心2に巻き付けられた励磁コイル1と、励磁コイル1を駆動するための駆動回路3と、複数のセンサコイル4とを備える。駆動回路3には、直流電源3aと、スイッチ3bと、抵抗3cとが組み込まれている。センサコイル4はループコイルである。検査時においては、この装置は、検査対象部に近接して配設される。図1および図2においては、装置は、2枚の鉄鋼板がスポット溶接されてなる鉄鋼板材110におけるスポット溶接部に近接して配設されている。このスポット溶接部の内部には、ナゲット部102が存在する。
【0018】
図1に示すように、スイッチ3bをオンにするとスポット溶接部に静磁場F1が印加される。具体的には、スイッチ3bをオンにすると、直流電源3aから出力される電圧が励磁コイル1に印加されて励磁コイル1に直流電流が流れ、その結果、励磁コイル1の周辺に静磁場F1が形成される。静磁場F1の一部は、鉄鋼板材110内に形成される。鉄鋼板材110における磁場形成箇所すなわち磁束通過箇所は、磁場の強さに応じて磁化される。ナゲット部102のサイズに基づいてスポット溶接部の溶接状態の良否を判別するためには、当該非破壊検査装置は、静磁場印加時に磁束がナゲット部102を通過するように配置される。
【0019】
図2に示すように、スイッチ3bをオフにすると静磁場F1は遮断される。具体的には、スイッチ3bをオフにすると、それまで励磁コイル1を流れていた直流電流が遮断され、その結果、静磁場F1は遮断される。静磁場F1の遮断により、静磁場F1の磁束のループは、励磁コイル1の周辺の磁束の閉ループC1と鉄鋼板材110の周辺の磁束の閉ループC2とに分離する。閉ループC1は急速に減少して消失する。これに対し、閉ループC2は、磁性体である鉄鋼板材110に磁気エネルギーとして保持される作用が働くため、直ちには消失せずに徐々に消失していく。
【0020】
閉ループC2の消失過程において、鉄鋼板材110の表面近傍に配置された各センサコイル4により、鉄鋼板材110の近傍における磁束の変化を検出する。静磁場遮断後にセンサコイル4で検出される磁束の変化は、理想的には指数関数的に単調減少する。しかし、実際には理想的な変化から逸脱する。この逸脱は、鉄鋼板材110に蓄えられた磁気エネルギー(残留磁場)の消失過程において、鉄鋼板材110内の磁化状態の変化に誘導されて鉄鋼板材110に発生する渦電流に起因するものと考えられる。そこで、静磁場遮断後における残留磁場の磁束変化については、以下に述べるモデルを仮定することができる。
【0021】
図3は残留磁場の消失過程モデルを表す。この消失過程では、図3に示すように、一つのセンサコイル4を通過する磁束Φの密度をBとする。また、磁束密度Bの変化によって鉄鋼板材110内に誘導される複数の渦電流をIn1,In2,In3,・・・とし、これら誘導渦電流についての誘導係数を各々M1,M2,M3,・・・とする。磁束密度Bの変化から誘導された渦電流In1,In2,In3,・・・は、相互に独立であると考える。ここで、渦電流In1,In2,In3,・・・は、磁束密度Bの変化に応じて誘導係数M=ΣMi(i=1,2,3,・・・)で誘導される単一の渦電流i2に置き換えることができる。したがって、一つのセンサコイル4を通過する磁束Φの消失過程は、磁束密度Bと、磁束密度Bの変化によって誘導係数Mで誘導される渦電流i2で表すことができる。
【0022】
図4は、図3の等価回路を表す。ここで、R2は渦電流i2についての電気抵抗を示し、L2は渦電流i2についてのインダクタンスを示す。
【0023】
図5は、図4の回路図における磁束Φの閉ループ(図2において単一のセンサコイル4を通過する閉ループC2)を、磁気等価回路に置き換えたものである。ここで、i1は磁束密度(図4におけるB)に相当する。R1は与えられた磁束Φの戻りにくさに相当する。L1は磁気回路のインダクタンスに相当し、後述するように、磁束Φを保持している全磁束空間の体積に比例する物理量である。また、図5に示す回路図においては、誘導係数Mは、磁気回路のインダクタンスL1と渦電流回路のインダクタンスL2と間の相互インダクタンスに相当することとなる。
【0024】
図6は、静磁場F1を遮断した後に単一のセンサコイル4を通過する磁束Φ(磁束密度B(=i1))の閉ループC2を模式的に表したものである。静磁場遮断後は、静磁場印加中に鉄鋼板材110にて蓄えられた磁気エネルギーWは、上述のように直ちに消失せずに、徐々に消失していく。この磁気エネルギーWは磁束Φの閉ループ空間に保持され、磁束Φの戻りにくさR1に基づいて徐々に消失していくと考えられる。一般に、磁気エネルギーWについては、式(1)で表すことができる。
【0025】
【数1】
【0026】
ここで、Lは、磁束密度i1の磁束を保持している空間の体積に、すなわち磁気エネルギーを保持する空間の体積に比例する値である。一方、式(1)は、インダクタンスLのコイルに電流i1を流したときに蓄積されるエネルギーを表す式と同じ式である。したがって、図5の回路図におけるインダクタンスL1は、磁束を保持している全空間の体積に比例することがわかる。
図5に示す等価回路は、式(2)で表すことができる。
【0027】
【数2】
【0028】
式(2)で表される連立微分方程式をi1およびi2について解くと、各々の解として、式(3a)および式(3b)が得られる。
【0029】
【数3】
【0030】
ここで、初期条件として、静磁界F1を遮断した時(t=0)における磁束密度i1(=B)をB0として、式(3a)および式(3b)の各定数を定める。このとき、誘導係数Mが小さくて磁束密度i1の変化から誘導される渦電流i2が極めて小さいとすると、すなわちL1・L2》M・Mとすると、以下の結果を得る。
【0031】
【数4】
【0032】
式(4a)および式(4b)を式(3a)に代入するとともに、i1をBに置き代えると、次の式(5)が得られる。
【0033】
【数5】
【0034】
式(5)は、静磁場遮断後における、センサコイル4を通る磁束Φの磁束密度Bの過渡変化を表す。ここで、式(4d)を考慮すると、式(5)の右辺第2項は無視することができる。したがって、図6に示す閉ループC2を構成する磁束Φの磁束密度Bの変化は、式(5)の右辺第1項のみで近似することができる。図7aは、静磁場遮断時(t=0)以降において、式(5)の右辺第1項のみで与えられる磁束密度Bの過渡変化を表す。t=0以前の磁束密度の値は、静磁場印加時における磁束密度B0を示す。一方、磁場消失過程においてセンサコイル4によって実際に検知される過渡電圧は、磁束密度Bの時間に対する変化の変化率すなわち微分磁束密度dB/dtに、センサコイル4を通過する磁束の断面積を乗じた値である。そこで、式(5)の両辺を時間tで微分し、式(6)すなわち微分磁束密度の式を導出する。
【0035】
【数6】
【0036】
図7bは式(6)で与えられる微分磁束密度の過渡変化を表す。この波形は、磁気センサとしてセンサコイル4を用いて実際に測定したときに得られる波形と略一致することが知られている。したがって、図3〜図6を参照して説明したモデルは、残留磁場の消失過程を正しく反映するものであるといえる。すなわち、式(5)はセンサコイル4を通る磁束Φの磁束密度Bの変化を表す式であり、式(6)は、その微分磁束密度dB/dtの変化を表す式である。
【0037】
ここで、式(6)の右辺第1項のτ1は、式(4a)から理解できるようにL1/R1に等しいことから、図5に示す磁束密度i1(=B)の磁気回路の時定数に相当することが解かる。したがって、式(6)の右辺第1項は、静磁場F1を遮断した後に、鉄鋼板材110近傍における磁束の磁束密度Bが指数的に減少する理想的な単調減少特性、すなわち磁気エネルギーの理想的な減衰特性を表す項である。式(6)の右辺第1項の時定数であるτ1を、主時定数ということとする。図7cは、式(6)の右辺第1項で表される磁気エネルギー(磁束Φの閉ループC2)の減衰特性を示す。
【0038】
主時定数τ1を求めるには、まず、式(6)の右辺第1項で表されるf1(t)の両辺の対数をとり、式(7)を得る。式(7)をグラフ化すると、傾き1/τ1の直線を得ることができる。そして、当該傾きよりτ1を求めることができる。
【0039】
【数7】
【0040】
本発明においては、以上のようにして、静磁場遮断後において消失していく残留磁場の微分磁束密度の過渡変化の主時定数を求める。
【0041】
一方、式(6)の右辺第2項のτ2は、式(4b)から理解できるようにL2/R2に等しいことから、図5に示す渦電流i2の等価回路の時定数に相当する。したがって、式(6)の右辺第2項は、渦電流損失の減衰特性を表す項である。図7dは、式(6)の右辺第2項で表される渦流電流損失の減衰特性を示す。式(6)の右辺第2項の時定数であるτ2を、副時定数ということとする。τ2を求める方法は、τ1に関して上述したのと同様である。
【0042】
上述のようにして求められる主時定数τ1は、L1に比例する。一方、L1は、磁束Φが通過する磁路の透磁率μに比例することが知られている。これらより、主時定数τ1は透磁率μに比例することがわかる。また、スポット溶接部において、ナゲット部102、圧接部103、およびHAZ104は、金属組成が異なるため相互に透磁率μが異なる。具体的には、硬度が増すごとに透磁率μは下がることが知られている。
【0043】
上掲の特開平10−26609号公報に開示されている非破壊検査方法においては、以上に説明した測定原理に基づいて、各センサコイル4の位置における磁気エネルギーの減衰特性の主時定数τ1を求め、この主時定数τ1の分布に基づいて、スポット溶接部において最も硬度が高く従って最も透磁率μの低いナゲット部102のナゲット径L2を推定するという方法を採用している。
【0044】
具体的には、まず、図8aに示すように、一列に配された例えば16個のセンサコイル4をスポット溶接部およびその周辺に対向させて、各センサコイル4にて、残留磁場の磁束Φの減衰特性を測定し、当該測定データより、各センサコイル4について主時定数τ1を求める。各センサコイル4について求めたτ1の分布は、図8bに示すように、測定位置xを変数としてステップ関数として表すことができる。次に、図8cに示すように、最小二乗法により当該ステップ関数の近似曲線f(x)(実線)を求める。仮にナゲット部102のみが低い透磁率を有し、他の部位は同一の透磁率を有するものとすると、このτ1分布についての近似曲線f(x)における凹み形状は、τ1が透磁率に比例するため、ナゲット部102の存在および形態を反映する。そこで、特開平10−26609号公報の開示の技術においては、このτ1分布についての近似曲線f(x)の凹み形状を基に、例えば図8cに示すように、ナゲット径L2を推定していた。
【0045】
センサコイル4を通過する磁束Φの減衰特性の主時定数τ1は、上述のようにインダクタンスL1に比例し、L1は透磁率μに比例する。一方、L1は、磁束Φの通過する体積Vにも比例することが知られている。すなわち、主時定数τ1については、式(8)の関係が成立する。
【0046】
【数8】
【0047】
空気の透磁率は、上述のように、スポット溶接部を構成する磁性体の透磁率よりも極めて小さいので、図18に示すインデンテーション101に対向する測定位置におけるτ1の値は、ナゲット部102の有無にかかわらず、インデンテーション101の存在が原因で、他の測定位置におけるτ1の値よりも小さい値として算出される。すなわち、図8cに示すグラフの凹み箇所には、インデンテーション101の存在の寄与成分が含まれている。仮にスポット溶接部にインデンテーション101が形成されていなければ、すなわちスポット溶接部の外表面が平坦であれば、τ1分布についての近似曲線f(x)の凹み形状の底部は、例えば図8cにおいて破線で示されるような浅い位置に示されるはずなのである。このように、τ1分布についての単一の近似曲線f(x)に基づくスポット溶接部の非破壊検査方法では、インデンテーション101の存在がノイズとなるため、正確なナゲット径L2を推定することが困難である場合がある。
【0048】
【発明の実施の形態】
図9は、本発明に係る非破壊検査方法を実施するための非破壊検査装置Xを表す。図10は、図9の線X―Xに沿った断面図であり、静磁場形成状態を表す。非破壊検査装置Xは、静磁場の印加および遮断を伴う上述の測定原理に基づいて非破壊検査を行うための装置として構成されたものである。非破壊検査装置Xは、励磁極11と、これに巻き付けられた励磁コイル12と、回収極13と、励磁極11および回収極13を接続する連結部14と、励磁部11の近傍に配設されたコイルアレイ15とを備える。
【0049】
励磁極11は、励磁コイル12に電流が流されたときに誘導形成される磁場の磁束密度を高めるための鉄心であり、連結部14を介して回収極13と一体である。励磁極11は、その先端に磁束励出面11aを有する。回収極13は、その先端に回収面13aを有する。励磁極11の磁束励出面11aから励出される磁束は、回収面13aにて回収される。
【0050】
コイルアレイ15は、静磁場印加中および遮断後における検査対象部近傍の磁気変化を検知して電圧として出力するためのものであり、本実施形態では、一列に配列した複数のループコイル15aよりなる。各ループコイル15aは、Cuなどの導体材料よりなり、フレキシブル基板16にパターン形成されている。コイルアレイ15は、図9に示すように、磁束励出面11aの直下において、磁束励出面11aとは所定の間隔をあけて、且つ、一列のループコイル15aが磁束励出面11aの長手方向に沿うように配設されている。また、コイルアレイ15は、励磁極11の磁束励出面11aに対してループコイル15aが回収極13の方向へ偏移するように設けられている。このような構成によると、図10に示すような回収面13aに向かう安定した静磁場の磁束、および、当該磁束に由来して静磁場遮断後に生じる残留磁場を効率よく測定することができる。
【0051】
図11は、非破壊検査装置Xを作動させるためのシステムの構成を表す。当該システムは、センサ操作部20、制御部30、およびデータ処理部40を備える。
【0052】
センサ操作部20は、センサ出力切換部21およびバッファアンプ22を備える。センサ出力切換部21は、コイルアレイ15を構成する複数のループコイル15aからの出力のうち一つの出力のみを選択してバッファアンプ22に出力する回路である。センサ出力切換部21は、4ビットのセンサ出力切換信号S1に従って、各ループコイル15aの出力を順次選択してバッファアンプ22に出力する。バッファアンプ22はセンサ出力切換部21からの出力信号を、検出信号S2として制御部30に出力するバッファ回路である。
【0053】
制御部30は、データ処理部40に汎用バス38を介して接続される制御回路として構成されたものであり、センサ制御部30aおよび信号処理部30bを備える。センサ制御部30aは、励磁制御部31およびセンサ出力制御部32を備える。信号処理部30bは、波形整形部33、A/D変換部34、デュアルポートメモリ35、A/D制御部34a、および、メモリ制御部35aを備える。制御部30は、コンピュータの汎用スロットに接続される制御基板に形成されている。
【0054】
センサ制御部30aの励磁制御部31は、励磁コイル12に対して、所定強度の静磁場の発生および遮断を行うための駆動信号S3を出力する。すなわち、励磁制御部31は、励磁コイル12に対して所定の電圧の印加および遮断を行う。センサ出力制御部32はコイルアレイ15に含まれる複数のループコイル15aからの出力を順次選択するための4ビットのセンサ出力切換信号S1を、センサ出力切換部21に出力する。
【0055】
信号処理部30bの波形整形部33は、バッファアンプ22からの検出信号S2をA/D変換部34の入力仕様に整合させる。A/D変換部34は、入力された検出信号をA/D変換する。デュアルポートメモリ35は、A/D変換後のデジタルデータを記憶する。A/D制御部34aは、A/D変換部34のタイミングを制御する。メモリ制御部35aは、デュアルポートメモリ35の書き込み/読み出しを制御する。
【0056】
検出信号S2の過渡変化特性のうち、渦電流損失の影響が顕著に現れるのは、検査対象が鉄鋼板の場合には、静磁場遮断後10μs程度以下(平均3〜6μs程度)である。この事実と、データ処理精度とを考慮すると、A/D変換部34は、4Msps以上の変換速度、および、12ビット以上の変換精度を有するのが好ましい。
【0057】
データ処理部40は、図示しないCPUやメインメモリを備える一般的なコンピュータにより実現される。データ処理部40では、センサ操作部20から出力されて信号処理部30bによって信号処理された検出データを処理することによって、スポット溶接部のナゲット径が求められる。データ処理部40は、種々の測定波形および測定データテーブルを表示するためのモニタを備える。後述する種々のデータ処理は、データ処理部40において、メインメモリ(記憶媒体)に記憶されたコンピュータプログラムをCPUが実行することによって実現される。
【0058】
以上のような構成の非破壊検査装置Xおよびその作動システムによって、本発明に係る非破壊検査方法を実施することができる。
【0059】
図12は、スポット溶接部の各部位の金属組成について、印加静磁場の磁束密度Bの変化に対する主時定数τ1の変化を模式的に表す。具体的には、図12に示す各変化曲線は、図19に示したようなスポット溶接部およびその近傍を構成するナゲット部102、圧接部103、HAZ104、および母材部105の各部位に相当する金属組成物を個別に用意して、上述の測定原理に基づいた同一条件下において、印加静磁場の磁束密度Bを変化させた場合に得られる主時定数τ1の変化を模式的に表したものである。変化曲線41,42,43,44は、各々、ナゲット部102、圧接部103、HAZ104、および母材部105に対応する。
【0060】
図12に示すように、同一の磁束密度Bに対しては、ナゲット部102、圧接部103、母材部105、HAZ104の順に主時定数τ1が大きくなる傾向にある。これは、上述のように、ナゲット部102、圧接部103、母材部105、HAZ104の順に硬度が低下し、硬度の低下に伴って、主時定数τ1と比例関係にある透磁率μが大きくなるという事実を反映している。各部位の主時定数τ1の値は、概ね一定または直線的に緩やかに変化するが、比較的小さな所定の磁束密度領域においては比較的急激に増大する。すなわち、各変化曲線はピークを有する。同一条件下での測定においては、各変化曲線においてピークが表れる磁束密度Bの値は、その部位の硬度に応じて固有の値である。また、当該固有磁束密度Bは、所定の磁束密度領域においては、硬度が低下するほど高磁束密度側に現れる傾向にある。
【0061】
本発明の第1の実施形態に係る非破壊検査方法について、図12および図14を参照すると共に、図13のフローチャートに則して説明する。まず、ステップS1において、図14aに示すように、非破壊検査装置Xを、磁気センサとして機能する合計16個の一列のループコイル15aがスポット溶接部およびその周辺に対向するように配置する。一列のループコイル15aの配置位置は、測定位置xにより表す。次に、ステップS2において、非破壊検査装置Xにより、静磁場をスポット溶接部に対して印加する。このときの磁束密度はB1とする。磁束密度B1は、理想的には、図12に示すように、ナゲット部102についてのτ1変化曲線のピークを生じさせる磁束密度よりも大きな値であって、圧接部103についてのτ1変化曲線のピークを生じさせる磁束密度よりも小さな値とする。次に、ステップS3において、静磁場を遮断する。次に、ステップS4において、各ループコイル15aを介して、スポット溶接部およびその周辺の残留磁場の消失過程を測定する。次に、ステップS5において、この測定に基づいて、各測定位置における主時定数τ1を解析する。次に、ステップS6において、センサ位置すなわち測定位置xに対する主時定数τ1の値をプロットし、プロットデータから最小二乗法により図14bに示すような近似曲線61を求める。近似曲線61は、必要に応じてデータ処理部40のモニタに表示する。
【0062】
次に、図13のフローチャートのステップS2に戻り、同じ位置に配設したままの非破壊検査装置Xにより、静磁場を再びスポット溶接部およびその周辺に印加する。このときの磁束密度はB2とする。磁束密度B2は、理想的には、図12に示すように、圧接部103についての主時定数のピークを生じさせ、且つ、他の部位についての主時定数のピークを生じさせない値とする。次に、ステップS3において、静磁場を遮断する。次に、ステップS4において、各ループコイル15aを介して、スポット溶接部およびその周辺の残留磁場の消失過程を測定する。次に、ステップS5において、この測定に基づいて、各測定位置における主時定数τ1を解析する。次に、ステップS6において、センサ位置すなわち測定位置xに対する主時定数τ1の値をプロットし、プロットデータから最小二乗法により図14bに示すような近似曲線62を求める。近似曲線62は、必要に応じてデータ処理部40のモニタに表示する。
【0063】
各ループコイル15aの位置すなわち各測定位置に対応する磁路には、スポット溶接部を構成する各部位が複合的に存在するが、磁束密度B1で測定した場合の各測定位置における主時定数τ1と、磁束密度B2で測定した場合の各測定位置における主時定数τ1とでは、図12から理解できるように、各測定位置に対応する磁路に圧接部103が全く存在しなければ変化しない。これに対し、磁路の主要部が圧接部103であれば、当該測定位置における主時定数は、磁束密度B1で測定する場合よりも、磁束密度B2で測定する場合に増大することとなる。この相違が、図14cの比曲線63においてピークとして現れているのである。図14bの各近似曲線61,62において、凹み形状には、インデンテーション101の寄与成分が含まれているが、これらの比をとって求めた図14cの比曲線63では、インデンテーション101の寄与成分は含まれていない。そのため、本実施形態によると、スポット溶接部の外表面の凹凸状態にかかわらず、内部構造の情報を適切に得ることができるのである。
【0064】
図14cにおいては、比曲線63のピークの頂点間の距離をナゲット径L2と推定する場合を示したが、ピークのどの辺りをナゲット部102と圧接部103の境界と認定するかは、本実施形態によって得られる比曲線63のピークデータから推定されるナゲット径L2と、ナゲット径L2の実測値との相関データに基づいて予め決定するのが好ましい。
【0065】
図15は、比曲線63のピークの頂点間の距離をナゲット径L2と推定した値と、ナゲット径L2の実測値との相関データを表す。当該相関データの相関係数は約0.92であり、推定値の確度が高いことが示唆されている。
【0066】
また、本実施形態では、印加静磁場の磁束密度Bについて、図12に示すようなτ1変化曲線データを基に2つの値を適宜選択することによって、他の部位の径などの情報を得ることも可能である。
【0067】
次に、本発明の第2の実施形態について、図12および図17a〜図17cを参照すると共に、図16のフローチャートに則して説明する。まず、ステップS1’において、図17aに示すように、非破壊検査装置Xを、磁気センサとして機能する合計16個の一列のループコイル15aがスポット溶接部およびその周辺に対向するように配置する。一列のループコイル15aの配置位置は、測定位置xにより表す。次に、ステップS2’において、非破壊検査装置Xにより、静磁場をスポット溶接部に対して印加する。このときの磁束密度はB3とする。磁束密度B3は、理想的には、図12に示すように、ナゲット部102についての主時定数のピークを生じさせる磁束密度よりも小さく、且つ、他の部位についての主時定数のピークを生じさせない値とする。次に、ステップS3’において、印加静磁場を遮断する。次に、ステップS4’において、各ループコイル15aを介して、スポット溶接部およびその周辺の残留磁場の消失過程を測定する。次に、ステップS5’において、この測定に基づいて、各測定位置における主時定数を解析する。このとき、当該主時定数を与えた、t=0での磁束密度の値も合わせて解析的に算出する。具体的には、データ処理部40において、図7cを与える式(6)の右辺第1項をt=0からt=∞まで積分することによって求める。主時定数およびこれに対応する磁束密度Bは、データ処理部40におけるメインメモリに記憶される。次に、ステップS6’において、測定位置xに対する主時定数の値をプロットし、プロットデータから最小二乗法により図17bに示すような近似曲線80を求める。近似曲線80は、必要に応じてデータ処理部40のモニタに表示する。ただし、本実施形態では、ステップS6’をスキップしてもよい。図17bの近似曲線80は、図の簡潔化の観点より模式的に表す。
【0068】
次に、図16のフローチャートにおいてステップ5’またはステップ6’からステップS2’に戻り、ステップS2’からステップS5’またはステップ6’までの工程を、非破壊検査装置Xにより印加する静磁場の磁束密度BをΔBずつ大きくしつつ、n回繰り返す。n回目の印加静磁場の磁束密度はB4とする。磁束密度B4は、理想的には、図12に示すように、HAZ104についての主時定数のピークを生じさせる磁束密度よりも大きく、且つ、他の部位についての主時定数のピークを生じさせない値とする。このように、本実施形態では、印加静磁場の磁束密度Bを変化ないし走査することによって、各測定位置における主時定数の変化をスキャンする。
【0069】
スキャンが終了した後、ステップS7’において、データ処理部40のメインメモリを参照することによって、測定位置xごとに、磁束密度Bの変化に対して主時定数が急峻に増大した時定数急変静磁場の磁束密度の値を特定する。スキャン開始磁束密度B3とスキャン終止磁束密度B4との間には、図12から理解できるように、スポット溶接部およびその近傍を構成する各部位について、時定数急変静磁場の磁束密度が存在する。各ループコイル15aの位置すなわち各測定位置xにおける測定対象である磁路には、スポット溶接部を構成する各部位が複合的に存在するが、各測定位置における主時定数の値の変化には、その磁路において主要部ないし最大体積を占める組織(部位)の寄与が顕著に現れる。図17bには、計10段階の磁束密度Bでスキャンした場合の、各磁束密度における主時定数の波形(近似曲線)を模式的に表す。図中の矢印は、τ1が急峻に増大したと特定された位置xを示すものである。
【0070】
次に、ステップS8’において、測定位置xに対する、ステップS7’で特定された時定数急変静磁場の磁束密度のデータに基づいて、図17cに示すような、測定位置xを変数とする磁束密度曲線90を求める。図17cに示す磁束密度曲線90には、スポット溶接部の内部構造情報が2次元的に現れている。具体的には、x1−x6がHAZ径L4を示し、x2−x5が接合径L3を示し、x3−x4がナゲット径L2を示す。磁束密度曲線90は、必要に応じてデータ処理部40のモニタに表示する。
【0071】
次に、ステップS9’において、図17cの磁束密度曲線90に関するデータから、x3−x4、x2−x5、x1−x6の長さを算出し、ナゲット径L2、接合径L3、HAZ径L4を推定的に決定する。次に、ステップS10’において、推定されたナゲット径L2を予め設定された閾値と比較し、スポット溶接部の溶接状態の良否を判断する。
【0072】
図17bの各近似曲線80〜89には、インデンテーション101の寄与成分が含まれているが、これら曲線において急激な変化を与える磁束密度を縦軸にとった図17cの磁束密度曲線90には、各近似曲線80〜89に含まれていたインデンテーション101の寄与成分は消失している。そのため、本実施形態によると、スポット溶接部の外表面の凹凸状態にかかわらず、内部構造の情報を適切に得ることができるのである。なお、図17bには、磁束密度B3〜B4の間の各磁束密度段階において、ステップS5’で算出した各測定位置のt=0での磁束密度の分布データに基づいて求められる磁束密度曲線を破線で示している。この磁束密度曲線は、スポット溶接部の表面波形に対応する。これら磁束密度曲線は、各段階で変化しておらず、したがって、インデンテーション101の存在が、図17cの磁束密度曲線90に影響を与えないことが理解できよう。
【0073】
図17cにおいては、磁束密度曲線90における最も低磁束密度に存在する曲点間の距離をナゲット径L2と推定する場合を示したが、曲線のどの辺りをナゲット部102と圧接部103の境界と認定するかは、本実施形態によって得られる磁束密度曲線90の曲点データから推定されるナゲット径L2と、ナゲット径L2の実測値との相関データに基づいて予め決定するのが好ましい。
【0074】
本発明の第1および第2の実施形態のいずれにおいても、測定結果について、インデンテーション101の影響を受けることがない。その結果、ナゲット径L2について、正確に推定することができ、したがって、スポット溶接部の溶接状態の良否について信頼性の高い検査結果を得ることが可能となる。また、スポット溶接部の内部構造について、詳細なデータすなわち接合径L3やHAZ径L4の値を得ることも可能である。
【0075】
以上、本発明について、スポット溶接部の非破壊検査方法を例に挙げて説明した。本発明は、これに限らず、鉄鋼などの磁性体部材の内部欠陥、硬度、作用応力などを非破壊の状態で測定および検査する装置および方法にも適用できる。また、本発明の非破壊検査方法についてグラフを掲げて視覚的な概念を説明したが、種々のデータ処理ないし解析は、各グラフに相当する関数に基づく演算処理によりを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、静磁場の印加および遮断を利用して非破壊検査を実行するための装置の概略構成と、当該装置の動作とを表す概念図である。
【図2】 図2は、静磁場の印加および遮断を利用して非破壊検査を実行するための装置の概略構成と、当該装置の動作とを表す別の概念図である。
【図3】 図3は、静磁場遮断後における磁束の閉ループの消失過程モデルを表す。
【図4】 図4は、図3の渦流電流についての等価回路を表す。
【図5】 図5は、図4における磁束密度の閉ループを磁気等価回路に置き換えたものである。
【図6】 図6は、静磁場を遮断した直後に単一のセンサコイルを通過する磁束の閉ループを表す。
【図7a〜図7d】 図7a〜図7dは、本発明に係る非破壊検査における各物理量の過渡変化を表す。
【図8a〜図8c】 図8a〜図8cは、ナゲット径測定方法の一例の概念を説明するための図である。
【図9】 図9は、本発明に係る非破壊検査方法を実施することのできる非破壊検査装置を表す。
【図10】 図10は、図9の線X−Xに沿った断面図である。
【図11】 図11は、図9に示す非破壊検査装置を作動するためのシステムの構成を表す。
【図12】 図12は、スポット溶接部の各部位の金属組成について、印加静磁場の磁束密度Bの変化に対する主時定数τ1の変化を模式的に表す。
【図13】 図13は、第1の実施形態についてのフローチャートである。
【図14a〜図14c】 図14a〜図14cは、第1の実施形態に係る非破壊検査方法の概念を説明するための図である。
【図15】 図15は、本発明により得られる相関データの一例を表す。
【図16】 図16は、第2の実施形態についてのフローチャートである。
【図17a〜図17c】 図17a〜図17cは、第2の実施形態に係る非破壊検査方法の概念を説明するための図である。
【図18】 図18は、スポット溶接を表す図である。
【図19】 図19は、スポット溶接された2枚の金属板におけるスポット溶接部の断面図である。
Claims (4)
- 検査対象部に静磁場を印加することによって前記検査対象部を磁化するステップと、前記静磁場を遮断し、磁化された前記検査対象部を通る残留磁場の複数の位置における微分磁束密度の過渡変化を測定するステップと、各測定位置における前記過渡変化の主時定数を求めるステップとを、磁束密度の異なる複数の静磁場について行うスキャン工程と、
前記各測定位置について、前記スキャン工程における前記静磁場の変化に対する前記主時定数の変化を解析する解析工程と、
前記解析工程における解析結果に基づいて、前記検査対象部の内部構造についての情報を求める情報取得工程と、を含み、
前記解析工程では、前記各測定位置について、前記スキャン工程における前記静磁場の変化に対する前記主時定数の変化が最大となる時定数急変静磁場の磁束密度を求め、前記情報取得工程では、前記測定位置を変数とする時定数急変静磁場の分布関数に基づいて、前記検査対象部の内部構造についての情報を求める、検査対象部の非破壊検査方法。 - 前記測定位置は、前記検査対象部に対向して一列に配置している、請求項1に記載の非破壊検査方法。
- 前記検査対象部は、2枚の金属板をスポット溶接した接合板材におけるスポット溶接部である、請求項1または2に記載の非破壊検査方法。
- 前記情報取得工程では、前記内部構造の情報として、前記スポット溶接部に含まれるナゲット部の形状についての情報を求める、請求項1から3のいずれか一つに記載の非破壊検査方法。
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