JP4184022B2 - 機能性素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーフィルタやプリント基板をはじめとして各種の用途に使用可能な、表面にガスバリア層を有する機能性素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基材上に図案、画像、文字、回路等の種々のパターンを形成するパターン形成体の製造方法としては、各種のものが製造されている。
【0003】
例えば、印刷を例に挙げて説明すると、印刷方法の一種である平版印刷に使用する平版印刷版は、インクを受容する親油性部位と、印刷インクを受容しない部位とからなるパターンを有する平版を製造し、この平版を用いて親油性部位に印刷すべきインクの画像を形成し、形成した画像を紙等に転写して印刷している。こうした印刷では、このように印刷版原版に、文字、図形等のパターンを形成してパターン形成体である印刷版を製造し、印刷機に装着して使用している。代表的な平版印刷版であるオフセット印刷用の印刷版原版には、数多くのものが提案されている。
【0004】
例えば、オフセット印刷用の印刷版は、印刷版原版にパターンを描いたマスクを介して露光して現像する方法、あるいは電子写真方式によって直接に露光して印刷版原版上に直接に製版する方法等によって作製することができる。電子写真式のオフセット印刷版原版は、導電性基材上に酸化亜鉛等の光導電性粒子および結着樹脂を主成分とした光導電層を設け、これを感光体として電子写真方式によって露光し、感光体表面に親油性の高い画像を形成させ、続いて不感脂化液で処理し非画像部分を親水化することによってオフセット原版、すなわちパターン形成体を得る方法によって作製されている。親水性部分は水等によって浸漬して疎油性とされ、親油性の画像部分に印刷インクが受容されて紙等に転写される。しかしながら、パターン形成に当たっては不感脂化液での処理等の種々の露光後の処理が必要となる。
【0005】
また、高精細なパターンを形成する方法として、基材上に塗布したフォトレジスト層にパターン露光を行い、露光後、フォトレジストを現像し、さらにエッチングを行ったり、フォトレジストに機能性を有する物質を用いて、フォトレジストの露光によって目的とするパターンを直接形成する等のフォトリソグラフィーによるパターン形成体の製造方法が知られている。
【0006】
フォトリソグラフィーによる高精細パターンの形成は、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタの着色パターンの形成、マイクロレンズの形成、精細な電気回路基板の製造、パターンの露光に使用するクロムマスクの製造等に用いられているが、これらの方法によっては、フォトレジストを用いると共に、露光後に液体現像液によって現像を行ったり、エッチングを行う必要があるので、廃液を処理する必要が生じる等の問題点があり、またフォトレジストとして機能性の物質を用いた場合には、現像の際に使用されるアルカリ液等によって劣化する等の問題点もあった。
【0007】
カラーフィルタ等の高精細なパターンを印刷等によって形成することも行われているが、印刷で形成されるパターンには、位置精度等の問題があり、高精度なパターンの形成は困難であった。
【0008】
一方、このような問題点を解決するために、光触媒の作用により濡れ性が変化する物質を用いてパターンを形成するパターン形成体の製造方法等が本発明者等において検討されてきた(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、高精細なパターン形成体上に形成された機能性素子の機能性部の種類によっては、経時的に酸素や水蒸気等、または光触媒の影響を受ける可能性がある、という問題があった。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−272774号公報
【特許文献2】
特開2000−249821号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、簡易な製造方法により得られる高精細なパターンを有し、かつ形成された機能性部が、経時的に酸素や水蒸気等の影響を受ける可能性が低い機能性素子を提供することが望まれている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、光触媒を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、前記特性変化層の特性が変化したパターンに沿って形成された機能性部と、前記特性変化層および前記機能性部を覆うように形成され、酸素透過率が0.5cc/m /day以下、かつ水蒸気透過率が0.5g/m /day以下であるガスバリア層とを有することを特徴とする機能性素子を提供する。
【0013】
本発明によれば、上記特性変化層を有することにより、容易に特性の変化したパターンに沿って、高精細な機能性部を形成することが可能となり、低コストで製造可能な機能性素子とすることが可能となるのである。また、上記ガスバリア層を有していることから、上記機能性部が経時的に、酸素や水蒸気等の影響を受ける可能性を低くすることができ、高品質な機能性素子とすることが可能となるのである。さらに、上記特性変化層に光触媒が含有されている場合であっても、酸素や水蒸気が存在しない場合には光触媒が活性化されないことから、経時的に機能性素子が光触媒の影響を受けることを防止することが可能となるのである。
【0014】
本発明においては、上記特性変化層が、基材上に形成されていてもよい。特性変化層の強度が弱く、また自己支持性を有さないような場合は、特性変化層が基材上に形成されていることが好ましいからである。
【0015】
本発明においては、上記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する層であり、かつ少なくとも光触媒およびバインダを含有する光触媒含有層であってもよい。
【0016】
上記特性変化層が、上記光触媒含有層であることにより、エネルギー照射された部分を親液性領域、エネルギー照射されていない部分を撥液性領域とすることが可能となり、この濡れ性の差を利用して、例えばインクジェット法等により機能性部を形成することが可能となるのである。また、上記光触媒含有層は、上記光触媒含有層自体に含有される光触媒の作用により濡れ性が変化することから、製造工程が少なく、効率的に機能性素子を製造することが可能となるのである。
【0017】
本発明においては、上記光触媒含有層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を含んでいてもよい。本発明においては、光触媒の作用による光触媒含有層の濡れ性の変化が、バインダの材質に起因するものであってもよいが、このように光触媒の作用により分解される分解物質を、光触媒含有層に含有させることによりその表面の濡れ性をパターン状に変化させてもよい。
【0018】
本発明においては、上記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、前記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下する層である濡れ性変化層とからなる層であってもよい。
【0019】
上記特性変化層が、上記光触媒処理層および上記濡れ性変化層から構成されることにより、上記濡れ性変化層中に光触媒が含有されていない場合であっても、エネルギー照射した際に、光触媒処理層の作用により、上記濡れ性変化層を、エネルギー照射された部分を親液性領域、エネルギー照射されていない部分を撥液性領域とすることが可能となり、この濡れ性の差を利用して、例えばインクジェット法等により機能性部を形成することが可能となるのである。
【0022】
本発明においては、上記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去層とからなる層であってもよい。
【0023】
上記特性変化層が、上記光触媒処理層と上記分解除去層とから構成されることにより、上記光触媒処理層中の光触媒の作用により、上記分解除去層上に、エネルギーが照射されたパターン状に表面に凹凸を形成することが可能となることから、この凹凸を利用して、容易に機能性部を形成することが可能となるのである。
【0026】
本発明においては、上記分解除去層が、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロジェット膜、もしくは交互吸着膜のいずれかであることが好ましい。上記分解除去層が、上記の膜であることにより、比較的高い強度を有する欠陥のない膜を容易に形成することが可能となるからである。
【0027】
本発明においては、上記ガスバリア層が、無機酸化物からなる層であることが好ましい。これにより、高いガスバリア性を有する層とすることが可能であり、また透明なガスバリア層とすることが可能となることから、様々な用途に用いることが可能な機能性素子とすることが可能となるからである。
【0028】
本発明においては、上記ガスバリア層が、CVD法により形成された酸化珪素膜であることが好ましい。上記ガスバリア層が、CVD法を用いて形成されることにより、上記機能性部等に対して熱的なダメージを与えることなくガスバリア層を形成することができるからである。
【0029】
本発明においては、上記ガスバリア層の酸素透過率が0.1cc/m /day以下で、水蒸気透過率が0.1g/m /day以下であることが好ましい。上記ガスバリア層の酸素透過率および水蒸気透過率が、上記値以下であることにより、酸素および水蒸気の影響を受けることが少なく、優れた機能性素子とすることが可能となるからである。
【0036】
また本発明は、上記機能性部が金属配線であることを特徴とするプリント基板を提供する。
【0037】
本発明のプリント基板は、上記特性変化層を有していることから、金属配線を上記特性変化層の特性の変化に沿って、例えば金属コロイド溶液をインクジェット方式により塗布することにより高精細に形成することが可能となる。また、本発明のプリント基板は、上記ガスバリア層を有することにより、酸素または水蒸気の影響を受けることが少ない優れたプリント基板とすることが可能となるのである。
【0038】
さらに、本発明は上記機能性部が、画素部であることを特徴とするカラーフィルタを提供する。
【0039】
本発明のカラーフィルタは、上記特性変化層を有することから、画素部を例えばインクジェット方式等により、特性変化層の特性のパターンを利用して、高精細に形成することが可能である。また、上記ガスバリア層を有することにより、経時的に酸素または水蒸気の影響を受けることが少ないカラーフィルタとすることが可能となるのである。
【0040】
【発明の実施の形態】
本発明は、カラーフィルタやプリント基板等に用いることが可能な、ガスバリア層を有する機能性素子および、機能性素子の製造方法に関するものである。以下、これらついてそれぞれわけて説明する。
【0041】
A.機能性素子
本発明の機能性素子は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、前記特性変化層の特性が変化したパターンに沿って形成された機能性部と、前記特性変化層および前記機能性部を覆うように形成されたガスバリア層とを有することを特徴とするものである。
【0042】
本発明の機能性素子は、例えば図1に示すように、基材1上にエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層2が形成されている。これにより、特性変化層2上に、特性の変化したパターンを形成することが可能となり、このパターンに沿って機能性部を容易に形成することが可能となるのである。
【0043】
また、上記特性変化層2の特性が変化したパターンに沿って形成された機能性部3が形成されており、さらに、上記特性変化層2および上記機能性部3を覆うように、ガスバリア層4が形成されている。これにより、上記機能性部が経時的に、酸素や水蒸気等の影響を受ける可能性を低くすることが可能となる。また、上記特性変化層中に、光触媒が含有されている場合であっても、光触媒は空気中の酸素や水蒸気と接触しない場合には活性を示さないことから、上記機能性部や特性変化層に対して経時的に影響を与える可能性を低くすることが可能となり、高品質な機能性素子とすることが可能となるのである。
【0044】
以下、上記で説明したような機能性素子における各構成について、詳しく説明する。
【0045】
(特性変化層)
まず、本発明に用いられる特性変化層について説明する。本発明に用いられる特性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、特性が変化する層であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどのポリマー材料等を用いることにより、エネルギー照射した部分が光触媒の作用により、極性基が導入されたり、表面の状態が粗い状態となったりして種々の物質との接着性が向上するようにした層を特性変化層としてもよい。このように特性変化層を接着性が変化する接着性変化層とすることにより、エネルギー照射により接着性の良好なパターンを形成することが可能となり、機能性部を容易に形成することが可能となるからである。
【0046】
このように、特性変化層は光触媒の作用により変化する種々の特性を有する層であれば特に限定されないのであるが、本発明においては中でも、上記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する層であり、かつ少なくとも光触媒およびバインダを含有する光触媒含有層(以下、第一実施態様とする)、上記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下する層である濡れ性変化層とからなる層(以下、第二実施態様とする)、上記特性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記特性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層(以下、第三実施態様とする)、上記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去層とからなる層(以下、第四実施態様とする)、または、上記特性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記特性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、分解除去される分解除去層(以下、第五実施態様とする)のいずれかの層であることが好ましい。以下、上記の各実施態様についてそれぞれ説明する。
【0047】
1.第一実施態様
まず、本発明の特性変化層における第一実施態様について説明する。本発明の特性変化層における第一実施態様は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する層であり、かつ少なくとも光触媒およびバインダを含有する光触媒含有層である。
【0048】
本実施態様に用いられる光触媒含有層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する層であり、かつ少なくとも光触媒およびバインダを含有する層であれば特に限定されるものではなく、これにより、エネルギー照射された部分を親液性領域、エネルギー照射されていない部分を撥液性領域とすることが可能となる。
【0049】
本発明に用いられる光触媒含有層は中でも、エネルギー照射していない部分、すなわち撥液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、10°以上、中でも表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上であることが好ましい。これは、エネルギー照射していない部分が、撥液性が要求される部分であることから、上記液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、例えば後述する機能性部を、機能性部形成用組成物をインクジェット方式等により塗布し、硬化させて形成する場合等に、撥液性領域にも機能性部形成用組成物が付着する可能性があることから、高精細に機能性部を形成することが困難となるからである。
【0050】
また、上記光触媒含有層は、エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が9°未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10゜以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10゜以下となるような層であることが好ましい。エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高い場合は、例えば機能性部を形成する機能性部形成用組成物を、親液性領域においてもはじいてしまう可能性があり、例えばインクジェット法により機能性部形成用組成物を塗布した際に、機能性部形成用組成物が十分に塗れ広がらず、機能性部を形成することが難しくなる可能性があるからである。
【0051】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0052】
本実施態様に用いられる光触媒含有層は、この光触媒含有層中にフッ素が含有され、さらにこの光触媒含有層表面のフッ素含有量が、光触媒含有層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有層が形成されていてもよく、またエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を含むように形成されていてもよい。
【0053】
上述したような光触媒含有層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本実施態様においては、このキャリアが光触媒含有層内のバインダ化合物に作用を及ぼし、その表面の濡れ性を変化させるものであると考えられる。
【0054】
以下、このような光触媒含有層を構成する、光触媒、バインダ、およびその他の成分について説明する。
【0055】
a.光触媒
まず、本実施態様に用いられる光触媒について説明する。本実施態様に用いられる光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0056】
本実施態様においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本実施態様ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0057】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0058】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径か50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0059】
本実施態様に用いられる光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0060】
b.バインダ
次に、本実施態様に用いられるバインダについて説明する。本実施態様においては、光触媒含有層上の濡れ性の変化をバインダ自体に光触媒が作用することにより行う場合(第1の形態)と、エネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層に含有させることにより変化させる場合(第2の形態)と、これらを組み合わせることにより行う場合(第3の形態)の三つ形態に分けることができる。上記第1の形態および第3の形態において用いられるバインダは、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる機能を有する必要があり、上記第2の形態では、このような機能は特に必要ない。
【0061】
以下、まず第2の形態に用いられるバインダ、すなわち光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を特に必要としないバインダについて説明し、次に第1の形態および第3の形態に用いられるバインダ、すなわち光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を有するバインダについて説明する。
【0062】
上記第2の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を特に必要としないバインダとしては、主骨格が上記光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、有機置換基を有しない、もしくは多少有機置換基を有するポリシロキサンを挙げることができ、これらはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を加水分解、重縮合することにより得ることができる。
【0063】
このようなバインダを用いた場合は、添加剤としてエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層中に含有させることが必須となる。
【0064】
次に、上記第1の形態および第3の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を必要とするバインダについて説明する。このようなバインダとしては、主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであって、光触媒の作用により分解されるような有機置換基を有するものが好ましく、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0065】
上記の(1)の場合、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0066】
また、バインダとして、特にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
CF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
(CFCF(CFCHCHSi(OCH
CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CF(C)CSi(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
CF(CFCHCHSiCH(OCH
(CFCF(CFCHCHSiCH(OCH
(CFCF(CFCHCHSi CH(OCH
(CFCF(CFCHCHSi CH(OCH
CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CF(C)CSiCH(OCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFCHCHSi(OCHCH
CF(CFSON(C)CCHSi(OCH
上記のようなフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、光触媒含有層のエネルギー未照射部の撥液性が大きく向上し、機能性部を形成する機能性部形成用組成物の付着を妨げる機能を発現する。
【0067】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0068】
【化1】
Figure 0004184022
【0069】
ただし、nは2以上の整数であり、R,Rはそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R、Rがメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0070】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダに混合してもよい。
【0071】
c.分解物質
上記第2の形態および第3の形態においては、さらにエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層に含有させる必要がある。すなわち、バインダ自体に光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能が無い場合、およびそのような機能が不足している場合に、上述したような分解物質を添加して、上記光触媒含有層上の濡れ性の変化を起こさせる、もしくはそのような変化を補助させるようにするのである。
【0072】
このような分解物質としては、光触媒の作用により分解し、かつ分解されることにより光触媒含有層表面の濡れ性を変化させる機能を有する界面活性剤を挙げることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0073】
また、界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を挙げることができる。
【0074】
d.フッ素の含有
また、本実施態様においては、光触媒含有層がフッ素を含有し、さらにこの光触媒含有層表面のフッ素含有量が、光触媒含有層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有層が形成されていることが好ましい。
【0075】
このような特徴を有する光触媒含有層であれば、エネルギーをパターン照射することにより、後述するように容易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。したがって、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親液性領域となっていることを意味する。よって、周囲の表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパターンを形成することは、撥液性域内に親液性領域のパターンを形成することとなる。
【0076】
したがって、このような光触媒含有層を用いた場合は、エネルギーをパターン照射することにより、撥液性領域内に親液性領域のパターンを容易に形成することができるので、例えばインクジェット法等により、機能性部形成用組成物を塗布した場合に、高精細な機能性部を形成することが可能となるからである。
【0077】
上述したような、フッ素を含む光触媒含有層中に含まれるフッ素の含有量としては、エネルギーが照射されて形成されたフッ素含有量が低い親液性領域におけるフッ素含有量が、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下である。
【0078】
このような範囲内とすることにより、エネルギー照射部分と未照射部分との親液性に大きな違いを生じさせることができる。したがって、このような光触媒含有層に、例えば機能性部形成用組成物を付着させることにより、フッ素含有量が低下した親液性領域のみに正確に機能性部を形成することが可能となり、精度の良い機能性素子を得ることができるからである。なお、この低下率は重量を基準としたものである。
【0079】
このような光触媒含有層中のフッ素含有量の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いることが可能であり、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)、蛍光X線分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測定できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0080】
また、本実施態様においては、光触媒として上述したように二酸化チタンが好適に用いられるが、このように二酸化チタンを用いた場合の、光触媒含有層中に含まれるフッ素の含有量としては、X線光電子分光法で分析して定量化すると、チタン(Ti)元素を100とした場合に、フッ素(F)元素が500以上、このましくは800以上、特に好ましくは1200以上となる比率でフッ素(F)元素が光触媒含有層表面に含まれていることが好ましい。
【0081】
フッ素(F)が光触媒含有層にこの程度含まれることにより、光触媒含有層上における臨界表面張力を十分低くすることが可能となることから表面における撥液性を確保でき、これによりエネルギーをパターン照射してフッ素含有量を減少させたパターン部分における表面の親液性領域との濡れ性の差異を大きくすることができ、最終的に得られる機能性素子の精度を向上させることができるからである。
【0082】
さらに、このような機能性素子においては、エネルギーをパターン照射して形成される親インク領域におけるフッ素含有量が、チタン(Ti)元素を100とした場合にフッ素(F)元素が50以下、好ましくは20以下、特に好ましくは10以下となる比率で含まれていることが好ましい。
【0083】
光触媒含有層中のフッ素の含有率をこの程度低減することができれば、機能性素子を形成するためには十分な親液性を得ることができ、上記エネルギーが未照射である部分の撥液性との濡れ性の差異により、機能性素子を精度良く形成することが可能となり、利用価値の高い機能性素子を得ることができる。
【0084】
e.光触媒含有層の製造方法
上述したようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより、光触媒含有層を形成することができる。
【0085】
2.第二実施態様
次に、本発明の特性変化層における第二実施態様について説明する。本実施態様における特性変化層は、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下する層である濡れ性変化層とからなる層である。
【0086】
本実施態様においては、光触媒処理層上にエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下する濡れ性変化層が形成されていることから、エネルギー照射によって、光触媒処理層中の光触媒が濡れ性変化層に作用し、濡れ性変化層上のエネルギー照射された部分を、液体との接触角が低下するように変化させることが可能となるのである。以下、上記光触媒処理層および濡れ性変化層について説明する。
【0087】
a.光触媒処理層
本実施態様に用いられる光触媒処理層は、少なくとも光触媒を含有するものであり、光触媒処理層がバインダを有する場合は、上記第一実施態様で説明した光触媒含有層と同様であるので、ここでの説明は省略する。ただし、本実施態様においては、光触媒処理層上の濡れ性は特に変化する必要がないことから、バインダ自体に光触媒が作用することによる濡れ性の変化が生じない場合であっても、第一実施態様のように分解物質を光触媒処理層に含有させる必要がない。また、バインダを有する場合の光触媒処理層の製造方法は、上述した第一実施態様と同様であるので、これについての説明も省略する。
【0088】
一方、バインダを有さない場合の光触媒処理層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒処理層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒処理層とすることが可能であり、これにより濡れ性変化層上の濡れ性を均一に変化させることが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることが可能となる。
【0089】
また、光触媒のみからなる光触媒処理層の他の形成方法としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0090】
b.濡れ性変化層
次に、本実施態様に用いられる濡れ性変化層について説明する。
【0091】
本実施態様に用いられる濡れ性変化層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するような層であれば、特に限定されるものではないが、中でも、エネルギー照射していない部分、すなわち撥液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、10°以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上であることが好ましい。これは、エネルギー照射していない部分が撥液性が要求される部分であることから、上記液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、例えば後述する機能性部を、機能性部形成用組成物をインクジェット方式等により塗布し、硬化させて形成する場合等に、撥液性領域にも機能性部形成用組成物が付着する可能性があることから、高精細に機能性部を形成することが困難となるからである。
【0092】
また、上記濡れ性変化層は、エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が9°未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10゜以下となるような層であることが好ましい。エネルギー照射された部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高い場合は、例えば機能性部を形成する機能性部形成用組成物を、親液性領域においてもはじいてしまう可能性があり、例えばインクジェット法により機能性部形成用組成物を塗布した際に、機能性部形成用組成物が十分に塗れ広がらず、機能性部を形成することが難しくなる可能性があるからである。
【0093】
なお、ここでいう液体との接触角は、第一実施態様において説明した方法と同様に測定した値である。
【0094】
この濡れ性変化層は、上記光触媒処理層の作用により濡れ性が変化する層であれば特に限定されるものではないが、上述した第一実施態様の光触媒含有層中のバインダと同様の材料で形成することが好ましい。なお、このように上記第一実施態様の光触媒含有層中のバインダと同様の材料で形成した場合の濡れ性変化層の材料および形成方法に関しては、上記第一実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0095】
本実施態様において、この濡れ性変化層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μmから1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
【0096】
本実施態様において上述した成分の濡れ性変化層を用いることにより、隣接する光触媒処理層中の光触媒の作用により、上記成分の一部である有機基や添加剤の酸化、分解等の作用を用いて、エネルギー照射部分の濡れ性を変化させて親液性とし、エネルギー未照射部との濡れ性に大きな差を生じさせることができる。
【0097】
なお、この濡れ性変化層には、上記第一実施態様における光触媒含有層の説明中「フッ素の含有」の項で記載したものと同様にして同様のフッ素を含有させることができる。
【0098】
なお、本実施態様においては、濡れ性変化層中に光触媒を含有する必要がなく、この場合には、経時的に機能性部が光触媒の影響を受ける可能性を少なくすることが可能である。
【0099】
3.第三実施態様
次に、本発明の特性変化層における第三実施態様について説明する。本発明の特性変化層における第三実施態様は、上記特性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記特性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層である。
【0100】
本実施態様における濡れ性変化層は、例えば図2に示すように、基材1上に濡れ性変化層2が形成されており、この濡れ性変化層2の濡れ性を変化させる際に、光触媒を含有する光触媒処理層5および基体6とを有する光触媒処理層側基板7を準備する。次に、上記濡れ性変化層2と光触媒処理層5とが、所定の間隙となるように配置された後、フォトマスク8等を用いて、所定の方向からエネルギー9を照射されることにより、濡れ性変化層2上におけるエネルギー照射された部分の液体との接触角が低下するように濡れ性が変化するものである。
【0101】
なお、上記光触媒処理層側基板は、エネルギー照射の間のみ、上記位置に配置されていればよい。
【0102】
本実施態様に用いられる濡れ性変化層については、第二実施態様で説明した濡れ性変化層と同様であるので、ここでの説明は省略し、光触媒処理層側基板のみについて説明する。
【0103】
本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板は、少なくとも光触媒処理層と基体とを有するものであり、通常は基体上に所定の方法で形成された薄膜状の光触媒処理層が形成されてなるものである。また、この光触媒処理層側基板には、パターン状に形成された光触媒処理層側遮光部やプライマー層が形成されたものも用いることができる。
【0104】
本実施態様においては、エネルギーを照射する際に、上記濡れ性変化層と、上記光触媒処理層側基板における光触媒処理層とを所定の間隙をおいて対向させ、光触媒処理層側基板の光触媒処理層の作用により、濡れ性変化層の濡れ性を変化させ、エネルギー照射後、光触媒処理層側基板を取り外すことにより濡れ性パターンが形成されるのである。以下、この光触媒処理層側基板の各構成について説明する。
【0105】
a.光触媒処理層
本実施態様に用いられる光触媒処理層は、少なくとも光触媒を含有するものであり、バインダを有していても、有していなくてもよく、上述した第二実施態様の光触媒処理層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0106】
ここで、本実施態様において用いられる光触媒処理層は、例えば図3に示すように、光触媒処理層側基体6上に全面に形成されたものであってもよいが、例えば図4に示すように、基体6上に光触媒処理層5がパターン状に形成されたものであってもよい。
【0107】
このように光触媒処理層をパターン状に形成することにより、エネルギーを照射する際に、フォトマスク等を用いてパターン照射をする必要がなく、全面に照射することにより、濡れ性変化層上に親液性領域と撥液性領域とからなる濡れ性パターンを形成することができる。
【0108】
この光触媒処理層のパターニング方法は、特に限定されるものではないが、例えばフォトリソグラフィー法等により行うことが可能である。
【0109】
また、光触媒処理層と濡れ性変化層とを例えば密着させてエネルギー照射を行う場合には、実際に光触媒処理層の形成された部分のみの特性が変化するものであるので、エネルギーの照射方向は上記光触媒処理層と濡れ性変化層とが対向する部分にエネルギーが照射されるものであれば、いかなる方向から照射されてもよく、さらには、照射されるエネルギーも特に平行光等の平行なものに限定されないという利点を有するものとなる。
【0110】
b.基体
本実施態様においては、図3に示すように、光触媒処理層側基板7は、少なくとも基体6とこの基体6上に形成された光触媒処理層5とを有するものである。この際、用いられる基体を構成する材料は、後述するエネルギーの照射方向や、得られる機能性素子が透明性を必要とするか等により適宜選択される。
【0111】
また本実施態様に用いられる基体は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。これは、エネルギー照射方法により適宜選択されるものである。
【0112】
なお、基体表面と光触媒処理層との密着性を向上させるために、基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0113】
c.光触媒処理層側遮光部
本実施態様に用いられる光触媒処理層側基板には、パターン状に形成された光触媒処理層側遮光部が形成されたものを用いても良い。このように光触媒処理層側遮光部を有する光触媒処理層側基板を用いることにより、エネルギー照射に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行う必要がない。したがって、光触媒処理層側基板とフォトマスクとの位置合わせが不要であることから、簡便な工程とすることが可能であり、また描画照射に必要な高価な装置も不必要であることから、コスト的に有利となるという利点を有する。
【0114】
このような光触媒処理層側遮光部を有する光触媒処理層側基板は、光触媒処理層側遮光部の形成位置により、下記の二つの態様とすることができる。
【0115】
一つが、例えば図5に示すように、基体6上に光触媒処理層側遮光部14を形成し、この光触媒処理層側遮光部14上に光触媒処理層5を形成して、光触媒処理層側基板7とする態様である。もう一つは、例えば図6に示すように、基体6上に光触媒処理層5を形成し、その上に光触媒処理層側遮光部14を形成して光触媒処理層側基板7とする態様である。
【0116】
いずれの態様においても、フォトマスクを用いる場合と比較すると、光触媒処理層側遮光部が、上記光触媒処理層と濡れ性変化層との配置部分の近傍に配置されることになるので、基体内等におけるエネルギーの散乱の影響を少なくすることができることから、エネルギーのパターン照射を極めて正確に行うことが可能となる。
【0117】
さらに、上記光触媒処理層上に光触媒処理層側遮光部を形成する態様においては、光触媒処理層と濡れ性変化層とを所定の位置に配置する際に、この光触媒処理層側遮光部の膜厚をこの間隙の幅と一致させておくことにより、上記光触媒処理層側遮光部を上記間隙を一定のものとするためのスペーサとしても用いることができるという利点を有する。
【0118】
すなわち、所定の間隙をおいて上記光触媒処理層と濡れ性変化層とを対向させた状態で配置する際に、上記光触媒処理層側遮光部と濡れ性変化層とを密着させた状態で配置することにより、上記所定の間隙を正確とすることが可能となり、そしてこの状態で光触媒処理層側基板からエネルギーを照射することにより、濡れ性変化層上に特性変化パターンを精度良く形成することが可能となるのである。
【0119】
このような光触媒処理層側遮光部の形成方法は、特に限定されるものではなく、光触媒処理層側遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。
【0120】
例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成されてもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
【0121】
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このよう樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0122】
なお、上記説明においては、光触媒処理層側遮光部の形成位置として、基体と光触媒処理層との間、および光触媒処理層表面の二つの場合について説明したが、その他、基体の光触媒処理層が形成されていない側の表面に光触媒処理層側遮光部を形成する態様も採ることが可能である。この態様においては、例えばフォトマスクをこの表面に着脱可能な程度に密着させる場合等が考えられ、特性変化パターンを小ロットで変更するような場合に好適に用いることができる。
【0123】
d.プライマー層
次に、本実施態様の光触媒処理層側基板に用いられるプライマー層について説明する。本実施態様において、上述したように基体上に光触媒処理層側遮光部をパターン状に形成して、その上に光触媒処理層を形成して光触媒処理層側基板とする場合においては、上記光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層との間にプライマー層を形成してもよい。
【0124】
このプライマー層の作用・機能は必ずしも明確なものではないが、光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層との間にプライマー層を形成することにより、プライマー層は光触媒の作用による濡れ性変化層の濡れ性変化を阻害する要因となる光触媒処理層側遮光部および光触媒処理層側遮光部間に存在する開口部からの不純物、特に、光触媒処理層側遮光部をパターニングする際に生じる残渣や、金属、金属イオン等の不純物の拡散を防止する機能を示すものと考えられる。したがって、プライマー層を形成することにより、高感度で濡れ性変化の処理が進行し、その結果、高解像度のパターンを得ることが可能となるのである。
【0125】
なお、本実施態様においてプライマー層は、光触媒処理層側遮光部のみならず光触媒処理層側遮光部間に形成された開口部に存在する不純物が光触媒の作用に影響することを防止するものであるので、プライマー層は開口部を含めた光触媒処理層側遮光部全面にわたって形成されていることが好ましい。
【0126】
本実施態様におけるプライマー層は、光触媒処理層側基板の光触媒処理層側遮光部と光触媒処理層とが接触しないようにプライマー層が形成された構造であれば特に限定されるものではない。
【0127】
このプライマー層を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、光触媒の作用により分解されにくい無機材料が好ましい。具体的には無定形シリカを挙げることができる。このような無定形シリカを用いる場合には、この無定形シリカの前駆体は、一般式SiXで示され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物であり、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
【0128】
また、プライマー層の膜厚は、0.001μmから1μmの範囲内であることが好ましく、特に0.001μmから0.1μmの範囲内であることが好ましい。
【0129】
4.第4実施態様
次に、本発明の特性変化層における第四実施態様について説明する。本実施態様における特性変化層は、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去層とからなる層であるものである。
【0130】
本実施態様においては、上記光触媒処理層上にエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去層が形成されていることから、エネルギー照射によって、光触媒処理層中の光触媒が分解除去層に作用し、分解除去層上のエネルギー照射された部分を、分解除去することが可能となるのである。
【0131】
ここで、上記光触媒処理層については、上述した第二実施態様に用いられる光触媒処理層と同様であるので、ここでの説明は省略し、本実施態様に用いられる分解除去層について、以下詳しく説明する。
【0132】
本実施態様に用いられる分解除去層は、エネルギー照射された際に光触媒処理層中の光触媒の作用により、エネルギー照射された部分の分解除去層が分解除去される層であれば、特に限定されるものではない。
【0133】
このように分解除去層は、エネルギー照射した部分が光触媒の作用により分解除去されることから、現像工程や洗浄工程を行うことなく分解除去層のある部分と無い部分からなるパターン、すなわち凹凸を有するパターンを形成することができる。
【0134】
なお、この分解除去層は、エネルギー照射による光触媒の作用により酸化分解され、気化等されることから、現像・洗浄工程等の特別な後処理なしに除去されるものであるが、分解除去層の材質によっては、洗浄工程等を行ってもよい。
【0135】
また、本実施態様に用いられる分解除去層は、凹凸を形成するのみならず、この分解除去層が、上記露出した部材表面と比較して、液体との接触角が高いことが好ましい。これにより、分解除去層が分解除去された領域を親液性領域、上記分解除去層が残存する領域を撥液性領域とすることが可能となり、種々の機能性部を形成することが可能となるからである。この際、分解除去層が分解除去されて露出する部材は、光触媒処理層である。
【0136】
ここで、本実施態様の分解除去層、すなわち撥液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、10°以上、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10゜以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10゜以下となるような層であることが好ましい。これは、分解除去層が本実施態様においては撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、例えばインクジェット法等により、機能性部形成用組成物を塗布した際に、撥液性領域にまで機能性部形成用組成物が付着する可能性が生じることから、高精細な機能性素子とすることが困難となるからである。
【0137】
また、エネルギー照射により露出した光触媒処理層、すなわち親液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が、40mN/mの液体との接触角が9°未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下となるような層であることが好ましい。これは光触媒処理層、すなわち親液性領域における機能性部形成用組成物との接触角が高い場合は、機能性部形成用組成物を塗布した場合に、親液性領域においても機能性部形成用組成物をはじいてしまう可能性があり、例えばインクジェット法等により親液性領域上に機能性部を形成することが難しくなる可能性があるからである。ここで、液体との接触角は、第一実施態様において説明した方法により測定した値である。
【0138】
本実施態様の分解除去層に用いることができる膜としては、具体的にはフッ素系や炭化水素系の撥液性を有する樹脂等による膜を挙げることができる。これらのフッ素系や炭化水素系の樹脂は、撥液性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、これらの樹脂を溶媒に溶解させ、例としてスピンコート法等の一般的な成膜方法により形成することが可能である。
【0139】
また、本実施態様においては、機能性薄膜、すなわち、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜等を用いることにより、欠陥のない膜を形成することが可能であることから、このような成膜方法を用いることがより好ましいといえる。
【0140】
ここで、本実施態様に用いられる自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロケット膜、および交互吸着膜について具体的に説明する。
【0141】
(i)自己組織化単分子膜
自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer)の公式な定義の存在を発明者らは知らないが、一般的に自己組織化膜として認識されているものの解説文としては、例えばAbraham Ulmanによる総説“Formation and Structure of Self-Assembled Monolayers”, Chemical Review, 96, 1533-1554 (1996)が優れている。本総説を参考にすれば、自己組織化単分子膜とは、適当な分子が適当な基材表面に吸着・結合(自己組織化)した結果生じた単分子層のことと言える。自己組織化膜形成能のある材料としては、例えば、脂肪酸などの界面活性剤分子、アルキルトリクロロシラン類やアルキルアルコキシド類などの有機ケイ素分子、アルカンチオール類などの有機イオウ分子、アルキルフォスフェート類などの有機リン酸分子などが挙げられる。分子構造の一般的な共通性は、比較的長いアルキル鎖を有し、片方の分子末端に基材表面と相互作用する官能基が存在することである。アルキル鎖の部分は分子同士が2次元的にパッキングする際の分子間力の源である。もっとも、ここに示した例は最も単純な構造であり、分子のもう一方の末端にアミノ基やカルボキシル基などの官能基を有するもの、アルキレン鎖の部分がオキシエチレン鎖のもの、フルオロカーボン鎖のもの、これらが複合したタイプの鎖のものなど様々な分子から成る自己組織化単分子膜が報告されている。また、複数の分子種から成る複合タイプの自己組織化単分子膜もある。また、最近では、デンドリマーに代表されるような粒子状で複数の官能基(官能基が一つの場合もある)を有する高分子や直鎖状(分岐構造のある場合もある)の高分子が一層基材表面に形成されたもの(後者はポリマーブラシと総称される)も自己組織化単分子膜と考えられる場合もあるようである。本実施態様は、これらも自己組織化単分子膜に含める。
【0142】
(ii)ラングミュア−ブロジェット膜
本実施態様に用いられるラングミュア−ブロジェット膜(Langmuir-Blodgett Film)は、基材上に形成されてしまえば形態上は上述した自己組織化単分子膜との大きな相違はない。ラングミュア−ブロジェット膜の特徴はその形成方法とそれに起因する高度な2次元分子パッキング性(高配向性、高秩序性)にあると言える。すなわち、一般にラングミュア−ブロジェット膜形成分子は気液界面上に先ず展開され、その展開膜がトラフによって凝縮されて高度にパッキングした凝縮膜に変化する。実際は、これを適当な基材に移しとって用いる。ここに概略を示した手法により単分子膜から任意の分子層の多層膜まで形成することが可能である。また、低分子のみならず、高分子、コロイド粒子なども膜材料とすることができる。様々な材料を適用した最近の事例に関しては宮下徳治らの総説“ソフト系ナノデバイス創製のナノテクノロジーへの展望” 高分子 50巻 9月号 644-647 (2001)に詳しく述べられている。
【0143】
(iii)交互吸着膜
交互吸着膜(Layer-by-Layer Self-Assembled Film)は、一般的には、最低2個の正または負の電荷を有する官能基を有する材料を逐次的に基材上に吸着・結合させて積層することにより形成される膜である。多数の官能基を有する材料の方が膜の強度や耐久性が増すなど利点が多いので、最近ではイオン性高分子(高分子電解質)を材料として用いることが多い。また、タンパク質や金属や酸化物などの表面電荷を有する粒子、いわゆる“コロイド粒子”も膜形成物質として多用される。さらに最近では、水素結合、配位結合、疎水性相互作用などのイオン結合よりも弱い相互作用を積極的に利用した膜も報告されている。比較的最近の交互吸着膜の事例については、静電的相互作用を駆動力にした材料系に少々偏っているがPaula T. Hammondによる総説“Recent Explorations in Electrostatic Multilayer Thin Film Assembly”Current Opinion in Colloid & Interface Science, 4, 430-442 (2000)に詳しい。交互吸着膜は、最も単純なプロセスを例として説明すれば、正(負)電荷を有する材料の吸着−洗浄−負(正)電荷を有する材料の吸着−洗浄のサイクルを所定の回数繰り返すことにより形成される膜である。ラングミュア−ブロジェット膜のように展開−凝縮−移し取りの操作は全く必要ない。また、これら製法の違いより明らかなように、交互吸着膜はラングミュア−ブロジェット膜のような2次元的な高配向性・高秩序性は一般に有さない。しかし、交互吸着膜及びその作製法は、欠陥のない緻密な膜を容易に形成できること、微細な凹凸面やチューブ内面や球面などにも均一に成膜できることなど、従来の成膜法にない利点を数多く有している。
【0144】
また、分解除去層の膜厚としては、後述するエネルギー照射工程において照射されるエネルギーにより分解除去される程度の膜厚であれば特に限定されるものではない。具体的な膜厚としては、照射されるエネルギーの種類や分解除去層の材料等により大きく異なるものではあるが、一般的には、0.001μm〜1μmの範囲内、特に0.01μm〜0.1μmの範囲内とすることが好ましい。
【0145】
5.第五実施態様
次に、本発明の特性変化層における第五実施態様について説明する。本実施態様における特性変化層は、上記特性変化層が、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板を、上記特性変化層と上記光触媒処理層とが200μm以下となるように間隙をおいて配置された後、所定の方向からエネルギー照射されることにより、分解除去される分解除去層であるものである。
【0146】
本実施態様においては、上述した第三実施態様と同様に、エネルギーを照射する際に、光触媒を含有する光触媒処理層を有する光触媒処理層側基板を用いて、上記分解除去層と、上記光触媒処理層とを所定の間隙をおいて対向させ、光触媒処理層側基板の光触媒処理層の作用により、分解除去層をパターン状に分解除去した後、光触媒処理層側基板を取り外すことにより、分解除去層が分解されたパターンが形成されるのである。この際、分解除去層が分解除去されて露出するのは基材となる。
【0147】
本実施態様に用いられる分解除去層については、上述した第四実施態様と同様であり、また光触媒処理層側基板については、上述した第三実施態様で説明した光触媒処理層側基板と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0148】
(基材)
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明においては、上記特性変化層が自己支持性を有しない場合、また分解除去層である場合に、基材上に上記特性変化層が形成される。
【0149】
本発明に用いられる基材は、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。
【0150】
また、本発明においては、上記特性変化層の特性が変化したパターンの形成に際してエネルギーを照射する必要性があるが、このエネルギーの照射において、基材側からエネルギーが照射される場合には、基材に透明性が必要とされる。
【0151】
なお、基材表面と光触媒含有層との密着性を向上させるために、基材上にプライマー層を形成するようにしてもよい。このようなプライマー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0152】
(遮光部)
本発明においては、機能性素子の種類によって、機能性素子中に遮光部が形成されていても良い。このように遮光部を有する場合は、エネルギー照射によるパターン形成に際して、フォトマスクを用いたり、レーザ光による描画照射を行う必要がない。したがって、簡便な工程とすることが可能となり、また描画照射に必要な高価な装置も不必要であることから、コスト的に有利となるという利点を有する。
【0153】
このような遮光部の形成位置としては、基材上に形成し、その上から特性変化層を形成する場合、すなわち基材と特性変化層との間に形成する場合と、基材の特性変化層が形成されていない側の表面にパターン状に形成する場合とがある。
【0154】
いずれの場合も、エネルギーの照射は、基材側からとなるが、全面に照射することにより、特性変化層面にパターン状に特性変化パターンを形成することができる。
【0155】
このような遮光部の形成方法は、特に限定されるものではなく、遮光部の形成面の特性や、必要とするエネルギーに対する遮蔽性等に応じて適宜選択されて用いられる。この遮光部の形成方法については、上述した特性変化層の第三実施態様における光触媒処理層側基板における光触媒処理層側遮光部の項において説明したものと同様のものを用いることが可能であるので、ここでの説明は省略する。
【0156】
(パターン形成)
次に、上記特性変化層への、パターン形成について説明する。本発明においては、所定の方向からエネルギーをパターン照射することにより、上記特性変化層表面に特性変化パターンが形成され、このパターンに沿って、後述する機能性部が形成されるのである。
【0157】
なお、本発明でいうエネルギー照射(露光)とは、上記特性変化層の特性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0158】
通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒に二酸化チタンが好ましく用いられ、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0159】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0160】
上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0161】
また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、特性変化層が光触媒の作用により特性が変化するのに必要な照射量とする。
【0162】
この際、光触媒含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させことが可能となり、効率的な濡れ性の変化を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0163】
ここで、上述したように、特性変化層中に、光触媒含有層または光触媒処理層を有しない態様の場合には、上述した光触媒処理層側基板を、特性変化層と所定の間隔をおいて配置し、所定の方向からエネルギー照射を行うことが必要である。
【0164】
上記の配置とは、実質的に光触媒の作用が特性変化層表面に及ぶような状態で配置された状態をいうこととし、実際に物理的に接触している状態の他、所定の間隔を隔てて上記光触媒処理層と特性変化層とが配置された状態とする。この間隙は、200μm以下であることが好ましい。
【0165】
本発明において上記間隙は、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、したがって特性変化層の特性変化の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の特性変化層に対して特に有効である。
【0166】
一方、例えば300mm×300mmといった大面積の特性変化層に対して処理を行う場合は、接触することなく、かつ上述したような微細な間隙を光触媒処理層側基板と特性変化層との間に形成することは極めて困難である。したがって、特性変化層が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して特性変化の効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに特性変化層上の特性変化にムラが発生しないといった効果を有するからである。
【0167】
このように比較的大面積の特性変化層をエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒処理層側基板と特性変化層との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒処理層側基板と特性変化層とが接触することなく配置することが可能となるからである。
【0168】
このように光触媒処理層と特性変化層表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より光触媒処理層と特性変化層との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に特性変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が特性変化層に届き難くなり、この場合も特性変化の速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
【0169】
本発明においては、このような配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0170】
このような極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒処理層と特性変化層とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。そして、このようにスペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができると共に、このスペーサが接触する部分は、光触媒の作用が特性変化層表面に及ばないことから、このスペーサを上述した特性変化パターンと同様のパターンを有するものとすることにより、特性変化層上に所定の特性変化パターンを形成することが可能となる。
【0171】
本発明においては、このような配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
【0172】
(機能性部)
次に、本発明の機能性素子の機能性部について説明する。本発明における機能性素子の機能性部とは、上述した特性変化層の特性が変化したパターンに沿って形成された機能性部であり、その種類等は特に限定されるものではない。
【0173】
ここで機能性とは、光学的(光選択吸収、反射性、偏光性、光選択透過性、非線形光学性、蛍光あるいはリン光等のルミネッセンス、フォトクロミック性等)、磁気的(硬磁性、軟磁性、非磁性、透磁性等)、電気・電子的(導電性、絶縁性、圧電性、焦電性、誘電性等)、化学的(吸着性、脱着性、触媒性、吸水性、イオン伝導性、酸化還元性、電気化学特性、エレクトロクロミック性等)、機械的(耐摩耗性等)、熱的(伝熱性、断熱性、赤外線放射性等)、生体機能的(生体適合性、抗血栓性等)のような各種の機能を意味するものである。
【0174】
また、その形成方法についても、特に限定されるものではなく、本発明においては、例えば機能性素子を形成する機能性部形成用組成物等を、ディップコート、ロールコート、ブレードコート、スピンコート等の塗布手段、インクジェット等を含むノズル吐出手段等の手段を用いて機能性素子上に形成された特性変化パターンに形成することが挙げられる。
【0175】
(ガスバリア層)
次に、本発明に用いられるガスバリア層について説明する。本発明に用いられるガスバリア層は、上記特性変化層および機能性部を覆うように形成された層であり、酸素および水蒸気から機能性素子を保護する層であれば、特に限定されるものではなく、機能性素子の種類により、透明性等は適宜選択させるものである。また、本発明におけるガスバリア層は、上記特性変化層上に上記機能性部が形成された面のみに形成されていてもよいが、上記機能性部が形成された面と、上記機能性部が形成されていない側の特性変化層または基材からなる面との、両面に形成されていてもよい。
【0176】
本発明においては、上記ガスバリア層が、無機酸化物からなる層であることが好ましい。本発明においては、機能性素子が例えばカラーフィルタや、プリント基板等であることから、ガスバリア層が透明層であることが好ましく、具体的に無機酸化物の例としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化セリウム、酸化カルシウム、酸化カドミウム、酸化銀、酸化金、酸化クロム、酸化珪素、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化スズ,酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化バリウム等が挙げられる。また、これら無機酸化膜が窒化された無機窒化酸化化合物、例えば、酸窒化珪素化合物(SiON)、酸窒化アルミニウム化合物(AlON)等を用いることも可能である。さらにITO膜なども本発明のガスバリア層として用いることができる。
【0177】
本発明においては、中でもCVD法により形成された酸化珪素膜であることが好ましい。CVD法により形成することにより、基材の選択の幅が広がるからである。また、酸化珪素膜は製造の容易性および用途の汎用性等の観点から好ましい材料であるといえる。
【0178】
また、本発明の機能性素子が、フレキシブル性を有する機能性素子である場合には、酸化珪素膜の厚さを5〜30nmとすることがより好ましい。酸化珪素膜の厚さを5〜30nmとすることによって、フレキシブル性を持たせることができ、フィルムを曲げた際のクラックの発生を防ぐことができる。また、本発明のガスバリア層が機能性素子の種類により、比較的薄さを要求されない用途の場合、前述の5〜30nmの範囲よりも厚めにすることが好ましく、その厚さを30〜200nmとすることが生産性等も考慮した場合により好ましい。
【0179】
上記ガスバリア層に用いられる酸化珪素膜は、上述したようにCVD法により形成されることが好ましいのであるが、特にプラズマCVD法によって形成されることが好ましい。
【0180】
プラズマCVD法は、一定圧力の原料ガスを放電させてプラズマ状態にし、そのプラズマ中で生成された活性粒子によって基材表面での化学反応を促進して形成する方法である。このプラズマCVD法は、高分子樹脂に熱的ダメージが加わらない程度の低温(およそ−10〜200℃程度の範囲)で所望の材料を成膜でき、さらに原料ガスの種類・流量、成膜圧力、投入電力等によって得られる膜の種類や物性を制御できるという利点がある。
【0181】
なお、本発明において、ガスバリア層は透明であることが好ましいが、各種の用途に供するために、機能性素子の種類によっては、透明性が劣る層を任意に積層させることは自由であり、求められるガスバリ層の透明性およびその程度は、各種の機能性素子によって異なり、例えば、本発明のガスバリア層を機能性素子を光線から保護するために、有色インキ等で印刷して遮光性を出してもかまわない。その他帯電防止剤やフィラー等、ガスバリアフィルム全体の透明性を悪くする要因がある添加物を練り混んだ層を積層したり、透明性がない金属箔等を積層したりすることができる。
【0182】
このような本発明のガスバリアフィルムは、酸素透過率が0.5cc/m/day以下で水蒸気透過率が0.5g/m/day以下、より好ましくは酸素透過率が0.1cc/m/day以下で水蒸気透過率が0.1g/m/day以下であることが好ましい。これにより、機能性素子の機能性部が、経時的に酸素および水蒸気の影響を受ける可能性を少なくすることが可能であり、また、機能性素子中に光触媒を含有する場合にも、経時的に影響をうける可能性を低くすることが可能となり、優れた機能性素子とすることが可能となるからである。
【0183】
また、本発明においては、上記ガスバリア層の他に、撥水層を有していてもよい。これにより、さらに水蒸気透過率を抑えることが可能となるからである。
【0184】
(機能性素子)
次に、本発明の機能性素子について説明する。本発明の機能性素子は、上述したエネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、上記特性変化層の特性が変化したパターンに沿って形成された機能性部と、上記特性変化層および上記機能性素子を覆うように形成されたガスバリア層とを有することを特徴とするものである。
【0185】
本発明の機能性素子は、上述した特性変化層を有することにより、容易にその特性の変化したパターンに沿って上記機能性部を形成することが可能となり、低コストで製造可能な機能性素子とすることが可能となるのである。また、上記ガスバリア層を有していることから、上記機能性部が経時的に、酸素や水蒸気等の影響を受ける可能性を低くすることができ、高品質な機能性素子とすることが可能となるのである。さらに、上記特性変化層中に光触媒が含有されている場合であっても、光触媒が酸素または水蒸気によって活性化されないことから、経時的に光触媒の影響を受ける可能性も低くすることが可能となり、高品質な機能性素子を製造することが可能となるのである。
【0186】
本発明の機能性素子の種類等は、特に限定されるものではないが、本発明においては、上記機能性素子が金属配線であるプリント基板、または上記機能性部が画素部であるカラーフィルタであることが好ましい。
【0187】
上記プリント基板は、上述した特性変化層を有していることから、金属配線を上記特性変化層の特性の変化に沿って、例えば金属コロイド溶液をインクジェット方式により塗布することにより高精細に形成されたものとすることが可能となる。また、上記ガスバリア層を有することにより、酸素または水蒸気の影響を受けることが少ない優れたプリント基板とすることが可能となるのである。
【0188】
また、上記カラーフィルタは、上記特性変化層を有することから、画素部を例えばインクジェット方式等により、特性変化層の特性のパターンを利用して、高精細に形成することが可能である。また、上記ガスバリア層を有することにより、経時的に酸素または水蒸気の影響を受けることが少ないカラーフィルタとすることが可能となるのである。
【0189】
B.機能性素子の製造方法
次に、本発明における機能性素子の製造方法について説明する。本発明における機能性素子の製造方法は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板とを、前記光触媒処理層および前記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、パターン状にエネルギーを照射し、前記特性変化層上に、特性の変化したパターンを形成する特性変化パターン形成工程と、
前記特性変化パターン状に機能性部を形成する機能性部形成工程と、
前記特性変化層および前記機能性部を覆うように、ガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程と
を有することを特徴とするものである。
【0190】
本発明の機能性素子の製造方法を図7を例として説明する。まず、基材1上に形成された光触媒含有層2と、光触媒処理層側基板における基体6上に形成された光触媒処理層5とを、所定の間隙をおいて配置し、フォトマスク8を用いてパターン状にエネルギー9を照射する特性変化パターン形成工程を行う(図7(a))。これにより、上記特性変化層2上に、エネルギーが照射されて特性が変化した特性変化領域15と、エネルギーが照射されていない特性が変化していない特性未変化領域16とが形成されるのである(図7(b))。
【0191】
次に、上記工程で形成された特性変化領域15のパターンに沿って、機能性部3を形成する機能性部形成工程を行う(図7(c))。この際、上記特性の差を利用することにより、容易に機能性部3を形成することが可能となるのである。
【0192】
次に、上記特性変化層2および上記機能性部3を覆うように、ガスバリア層4を形成するガスバリア層形成工程を行い、機能性素子を得るのである(図7(d))。
【0193】
これにより、機能性素子が経時的に酸素や水蒸気の影響を受けることを防止することができ、また上記特性変化層中に光触媒が含有されている場合であっても、光触媒が酸素または水蒸気によって活性化されないことから、経時的に光触媒の影響を受ける可能性も低くすることが可能となり、高品質な機能性素子を製造することが可能となるのである。
【0194】
以下、本発明の機能性素子の製造方法について、各工程ごとに説明する。
【0195】
(1)特性変化パターン形成工程
まず、本発明における特性変化パターン形成工程について説明する。本発明における特性変化パターン形成工程は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、光触媒を含有する光触媒処理層および基体を有する光触媒処理層側基板とを、前記光触媒処理層および前記特性変化層が200μm以下となるように間隙をおいて配置した後、パターン状にエネルギーを照射し、前記特性変化層上に、特性の変化したパターンを形成する工程である。
【0196】
ここで、上記光触媒処理側基板、特性変化層、エネルギーの照射等については、上述した「A.機能性素子」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0197】
(2)機能部形成工程
次に機能性部形成工程について説明する。本発明における機能性部形成工程は、上記特性変化パターン形成工程により形成された特性変化パターンに沿って、機能性部を形成する工程である。
【0198】
本発明においては、その機能性部により、その方法は選択されるものであることから、特に限定されるものではなく、例えばディップコート、ロールコート、ブレードコート、スピンコート等の塗布手段、インクジェット等を含むノズル吐出手段等が挙げられる。
【0199】
本発明における機能性部については、上述した「A.機能性素子」で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0200】
(3)ガスバリア層形成工程
次に、本発明のガスバリア層形成工程について説明する。本発明におけるガスバリア層の形成工程は、上記特性変化層および、機能性部を覆うようにガスバリア層を形成する工程であり、その方法等は特に限定されるものではないが、本発明においては、CVD法によるものであることが好ましい。
【0201】
上記ガスバリア層形成工程が、CVD法により行なわれることにより、上記特性変化層および上記機能性部対して熱的なダメージを与えることなくガスバリア層を形成することができるからである。
【0202】
また、本発明におけるガスバリア層としては、特に限定されるものではないが、無機酸化物からなる層であることが好ましい。本発明においては、機能性素子が例えばカラーフィルタや、プリント基板等であることから、ガスバリア層が透明層であることが好ましく、具体的に無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化セリウム、酸化カルシウム、酸化カドミウム、酸化銀、酸化金、酸化クロム、酸化珪素、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化スズ,酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化バリウム等が挙げられる。また、これら無機酸化膜が窒化された無機窒化酸化化合物、例えば、酸窒化珪素化合物(SiON)、酸窒化アルミニウム化合物(AlON)等を用いることも可能である。さらにITO膜なども本発明のガスバリア層として用いることができる。
【0203】
本発明においては、中でもCVD法により形成された酸化珪素膜であることが好ましい。CVD法により形成することにより、基材に熱的なダメージを与えること無く形成することができるからであり、基材の選択の幅が広がるからである。また、酸化珪素膜は製造の容易性および用途の汎用性等の観点から好ましい材料であるといえる。
【0204】
このような酸化珪素膜において、本発明においては特に、Si原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下の成分割合からなり、1055〜1065cm−1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づくIR吸収がある酸化珪素膜であることが好ましい。このような特徴を有することにより、ガスバリア性が向上し、ガスバリア性を極めて高いものとすることができるからである。
【0205】
さらに、このとき、1.45〜1.48の屈折率を有するように形成することがより好ましい。このような特性の酸化珪素膜を備えるガスバリア層は、極めて優れたガスバリア性を発揮することができるからである。
【0206】
Si、O、Cの各成分割合を、Si原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下にするには、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ等を調節して上記の範囲内に制御することができる。特に、Cの混入を抑制するように制御することが好ましい。例えば、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比を3〜50程度の範囲で調整することによって、SiO ライクな膜にしてCの混入を抑制したり、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力を大きくすることによって、Si−C結合の切断を容易にして膜中へのCの混入を抑制することができる。なお、流量比の上限は便宜上規定したものであり、50を超えても特に問題はない。
【0207】
この範囲の成分組成を有する酸化珪素膜は、Si−C結合が少ないので、SiOライクな均質膜となり、極めて優れたガスバリア性を発揮する。こうした成分割合は、Si、O、Cの各成分を定量的に測定できる装置であればよく、代表的な測定装置としては、ESCA(Electron spectroscopy for chemical analysis)や、RBS(Rutherford back scattering)、オージェ電子分光法によって測定された結果によって評価される。
【0208】
Oの成分割合が170未満となる場合は、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比が小さい場合(酸素ガス流量が相対的に少ない場合)や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さい場合にしばしば見られ、結果的にCの成分割合が大きくなる。その結果、膜中に多くのSi−C結合を有し、SiOライクな均質膜ではなくなって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。なお、O原子数は化学量論的に200を超えにくい。また、Cの成分割合が30を超える場合は、Oの成分割合が170未満となる場合と同じ条件、すなわち(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比が小さい場合(酸素ガス流量が相対的に少ない場合)や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さい場合にしばしば見られ、膜中にSi−C結合がそのまま残る。その結果、SiO ライクな均質膜ではなくなって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。一方、Cの成分割合の下限は特に規定しないが、実際の成膜工程上の下限値として10に規定することができる。なお、Cの成分割合を10未満とすることは現実問題として容易ではないが、Cの成分割合が10未満であってもよく、SiO ライクな均質膜が得られる。
【0209】
IR測定において、1055〜1065cm−1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づく吸収があるようにするには、酸化珪素膜をできるだけSiOライクな均質膜とするように、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ等を調節して上記の範囲内に制御することができる。例えば、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比を3〜50程度の範囲で調整したり、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力を大きくしてSi−C結合の切断を容易にすることによって、SiOライクな膜とすることができる。なお、流量比の上限は便宜上規定したものであり、50を超えても特に問題はない。こうしたIR吸収が現れる酸化珪素膜は、SiO ライクな均質膜特有のSi−O結合を有するので、極めて優れたガスバリア性を発揮する。
【0210】
IR吸収は、IR測定用の赤外分光光度計で測定して評価される。好ましくは、赤外分光光度計にATR(多重反射)測定装置を取り付けて赤外吸収スペクトルを測定する。このとき、プリズムにはゲルマニウム結晶を用い、入射角45度で測定することが好ましい。
【0211】
この範囲にIR吸収がない場合は、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比が小さい場合(酸素ガス流量が相対的に少ない場合)や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さい場合にしばしば見られ、結果的にCの成分割合が大きくなる。その結果、膜中にSi−C結合を有することとなって、SiOライクな均質膜特有のSi−O結合が相対的に少なくなり、上記範囲内にIR吸収が現れない。そうして得られた酸化珪素膜は、酸素透過率と水蒸気透過率が大きく、十分なガスバリア性を発揮することができない。
【0212】
酸化珪素膜の屈折率を1.45〜1.48にするには、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比や、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ等を調節することによって上記範囲内に制御することができる。例えば、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比を3〜50程度の範囲で調整して制御することができる。なお、流量比の上限は便宜上規定したものであり、50を超えても特に問題はない。この範囲の屈折率を有する酸化珪素膜は、緻密で不純物の少ないSiOライクな膜となり、極めて優れたガスバリア性を発揮する。こうした屈折率は、光学分光器によって測定された透過率と反射率とを測定し、光学干渉法を用いて633nmでの屈折率で評価したものである。
【0213】
屈折率が1.45未満となる場合は、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比が上記の範囲外となる場合や、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さく、低密度で疎な酸化珪素膜が得られる場合にしばしば見られ、成膜された酸化珪素膜が疎になって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。一方、屈折率が1.48を超える場合は、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比が上記の範囲外となる場合や、C(炭素)等の不純物質が混入した場合にしばしば見られ、成膜された酸化珪素膜が疎になって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。
【0214】
上述した各特性を有する酸化珪素膜を、5〜300nmの厚さという薄い厚さで形成したガスバリア層は、優れたガスバリア性を発揮することができ、酸化珪素膜にクラックが入りづらい。酸化珪素膜の厚さが5nm未満の場合は、酸化珪素膜が特性変化層および機能性部の全面を覆うことができないことがあり、ガスバリア性を向上させることができない。一方、酸化珪素膜の厚さが300nmを超えると、クラックが入り易くなること、透明性や外観が低下すること、さらに、量産し難く生産性が低下してコストが増大すること、等の不具合が起こり易くなる。
【0215】
C.プリント基板
次に、本発明のプリント基板について説明する。本発明におけるプリント基板は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、上記特性変化層の特性が変化したパターン状に金属配線が形成されており、上記特性変化層および上記金属配線を覆うようにガスバリア層が形成されたものであり、その構造等は特に限定されるものではない。
【0216】
本発明のプリント基板は、上記特性変化層を有していることから、金属配線を上記特性変化層の特性の変化したパターンに沿って、例えば金属コロイド溶液をインクジェット方式により塗布することや、金属ペースト溶液を電解ジェット方式により塗布する等の方法により、高精細に形成することが可能となるのである。また、上記ガスバリア層を有することにより、酸素または水蒸気の影響を受けることが少なく、また上記特性変化層中に光触媒が含有されている場合にも、上記金属配線等が経時的に光触媒の影響を受けることを防止することが可能な、優れたプリント基板とすることが可能となるのである。
【0217】
D.カラーフィルタ
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、上記特性変化層の特性が変化したパターン状に画素部が形成されており、上記特性変化層および上記画素部を覆うようにガスバリア層が形成されたものであり、その構造等は特に限定されるものではなく、ブラックマトリックス等が形成されたものであってもよい。
【0218】
本発明のカラーフィルタは、上記特性変化層を有することから、画素部を例えばインクジェット方式等により、特性変化層の特性のパターンを利用して、高精細に形成することが可能である。また、上記ガスバリア層を有することにより、酸素または水蒸気の影響を受けることが少なく、また上記特性変化層中に光触媒が含有されている場合にも、上記画素部等が経時的に光触媒の影響を受けることを防止することが可能な優れたカラーフィルタとすることが可能となるのである。
【0219】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0220】
【実施例】
以下、本発明について、実施例を通じてさらに詳述する。
【0221】
(カラーフィルタの作製)
イソプロプルアルコール30gにフルオロアルキルシラン(商品名TSL−8233 GE東芝シリコーン(株))0.4gとテトラメトキシシラン(商品名TSL−8114 GE東芝シリコーン(株))3gと光触媒無機コーティング材(商品名ST−K01)20gとを混合し、100℃で60分間攪拌し、光触媒含有層組成物とした。
【0222】
ブラックマトリックスが形成されたガラス上に上記光触媒含有層組成物をスピンコーターにより塗布し、120℃で10分間の加熱処理を行うことにより、厚さ0.15μmの光触媒含有層を形成した。
【0223】
次に、上記光触媒含有層を、フォトマスク(100μmピッチで光透過部が80μm)を用いてブラックマトリックスとのアライメントをとり露光(365nm500mJ/cm)し、光触媒含有層表面に着色層形成部を形成した。
【0224】
このとき、未露光部及び着色層形成部とぬれ標準試薬(40mN/m)との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)した結果、それぞれ、75°と7°であった。
【0225】
次に、インクジェット装置により顔料分散タイプのインク(赤、青、緑)を着色層形成部に吐出し、熱硬化処理を施すことによりカラーフィルタを得た。
【0226】
(バリア層形成工程)
図8に示すように、上記工程で形成されたカラーフィルタ20を、プラズマCVD装置101のチャンバー102内の下部電極114側に装着した。次に、CVD装置101のチャンバー102内を、油回転ポンプおよびターボ分子ポンプにより、到達真空度3.0×10−5Torr(4.0×10−3Pa)まで減圧した。また、原料ガス112として、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)ガス(東レ・ダウ・コーニング・シリコーン(株)、SH200、0.65CSt)および酸素ガス(太陽東洋酸素(株)、純度99.9999%以上)を準備した。
【0227】
次に、下部電極114に90kHzの周波数を有する電力(投入電力:300W)を印加した。そして、チャンバー102内の電極近傍に設けられたガス導入口109から、HMDSOガスを1sccm、酸素ガスを10sccm、ヘリウムガスを30sccm導入し、真空ポンプ108とチャンバー102との間にあるバルブ113の開閉度を制御することにより、成膜チャンバー内圧力を0.25Torr(33.325Pa)に保ち、カラーフィルタ20上に蒸着膜としての酸化珪素膜の成膜を行った。ここで、sccmは、standard cubic cm per minuteの略である。膜厚が100nmになるまで成膜を行い、カラーフィルタ20上にガスバリアフィルムを得た。
【0228】
(評価)
上記ガスバリア層を形成したカラーフィルタをサンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株))によりガラス基板側から200時間露光した結果、着色層の劣化、退色が観察されなかった。
【0229】
【発明の効果】
本発明によれば、上記特性変化層を有することにより、容易に特性の変化したパターンに沿って、高精細な機能性部を形成することが可能となり、低コストで製造可能な機能性素子とすることが可能となるのである。また、上記ガスバリア層を有していることから、上記機能性部が経時的に、酸素や水蒸気等の影響を受ける可能性を低くすることができ、高品質な機能性素子とすることが可能となるのである。さらに、上記特性変化層に光触媒が含有されている場合であっても、酸素や水蒸気が存在しない場合には光触媒が活性化されないことから、経時的に機能性素子が光触媒の影響を受けることを防止することが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の機能性素子の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の特性変化層の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明における光触媒処理層側基板の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明における光触媒処理層側基板の他のを示す概略断面図である。
【図5】本発明における光触媒処理層側基板の他のを示す概略断面図である。
【図6】本発明における光触媒処理層側基板の他のを示す概略断面図である。
【図7】本発明における機能性素子の製造方法の一例を示す工程図である。
【図8】本発明の実施例におけるガスバリア層の形成に用いられる装置の一例を示す装置図である。
【符号の説明】
1 … 基材
2 … 特性変化層
3 … 機能性部
4 … ガスバリア層
5 … 光触媒処理層
6 … 基体
7 … 光触媒処理層側基板
8 … フォトマスク
9 … エネルギー照射工程
14 … 光触媒処理層側遮光部
15 … 特性変化領域
16 … 特性未変化領域

Claims (12)

  1. 光触媒を含有し、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する特性変化層と、前記特性変化層の特性が変化したパターンに沿って形成された機能性部と、前記特性変化層および前記機能性部を覆うように形成され、酸素透過率が0.5cc/m/day以下、かつ水蒸気透過率が0.5g/m/day以下であるガスバリア層とを有することを特徴とする機能性素子。
  2. 前記特性変化層が、基材上に形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の機能性素子。
  3. 前記特性変化層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する層であり、かつ少なくとも光触媒およびバインダを含有する光触媒含有層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機能性素子。
  4. 前記光触媒含有層が、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を含むことを特徴とする請求項3に記載の機能性素子。
  5. 前記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、前記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下する層である濡れ性変化層とからなる層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機能性素子。
  6. 前記特性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、前記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解除去される分解除去層とからなる層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機能性素子。
  7. 前記分解除去層が、自己組織化単分子膜、ラングミュア−ブロジェット膜、もしくは交互吸着膜のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の機能性素子。
  8. 前記ガスバリア層が、無機酸化物からなる層であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の機能性素子。
  9. 前記ガスバリア層が、CVD法により形成された酸化珪素膜であることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載の機能性素子。
  10. 前記ガスバリア層の酸素透過率が0.1cc/m/day以下で、水蒸気透過率が0.1g/m/day以下であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれかの請求項に記載の機能性素子。
  11. 請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載の機能性部が、金属配線であることを特徴とするプリント基板。
  12. 請求項1から請求項10までのいずれかの請求項に記載の機能性部が、画素部であることを特徴とするカラーフィルタ。
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