JP4182680B2 - 被膜の形成方法、並びに、インクジェットヘッドの形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、被膜の形成方法、並びに、インクジェットヘッドの形成方法に関する。特に、ポリパラキシリレンまたはその誘導体を有する被膜によって電極や接着剤等が保護されるインクジェットヘッドの形成方法に関する。また、ポリパラキシリレンまたはその誘導体を有する被膜の形成方法に関する。尚、以下、ポリパラキシリレンまたはその誘導体を有する被膜のことをパリレン膜と言う。
【0002】
【従来の技術】
金属、セラミックス、プラスチック等の種々の材料を基体とし、或いはそれら種々の材料を表面に設けた基体を用いた各種半導体素子等の電子部品やインクジェットヘッド等のデバイスの一部では、その基体の表面に電気的絶縁、防湿、耐磨耗等を目的として有機材料の保護膜を形成することが多い。また、接着剤等で接合した部分から、接着剤中の成分等の溶出を防止することを目的として同様に有機材料の保護膜を形成することもある。そのような保護膜の中で、気相合成法により形成されたパリレン膜は、高絶縁性や高防湿性を有するので好ましく用いられる。しかし、パリレン膜は基体との密着性が低いため、特公昭58-56371号公報には、基体にシランカップリング剤による前処理をした後に、パリレン膜を形成することで、基体との密着性を向上させることが記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公昭58-56371号公報に記載された方法では、従来よりもパリレン膜と基体との密着性は幾分改善されたものの、未だ充分な密着性ではなく、製品の製造過程で膜剥がれを起こしたり、製品の使用環境下によって同様に膜剥がれを起こしたり、製品の耐久性の点でも問題を生じる場合があった。特に、基体に金属等からなる電極を含む場合にその問題は顕著であり、更に圧電性基板としてPZT基板を用い、PZT基板上に電極を設けた基体をパリレン膜で被覆するインクジェットヘッドにおいては、更に深刻であり、製品の歩留まりにも大きく影響するものであった。このようなインクジェットヘッドにおいては、微細なインクチャネル内部にパリレン膜を形成することが一つの要因と考えられる。
【0004】
この発明は、かかる実情に鑑みてなされたもので、基体との密着性及び耐久性が極めて優れたパリレン膜が得られるパリレン膜形成方法、並びにそのパリレン膜形成方法によって得られたパリレン膜を用いたインクジェットヘッドの形成方法を提供することを目的とする。
【0005】
更に、絶縁性及び耐熱性にも優れたパリレン膜が得られるパリレン膜形成方法、並びにそのパリレン膜形成方法によって得られたパリレン膜を用いたインクジェットヘッドの形成方法を提供することを目的とする。
【0006】
また更に、比較的薄膜であってもピンホールの発生もなく製品歩留まりが向上するパリレン膜が得られるパリレン膜形成方法、並びにそのパリレン膜形成方法によって得られたパリレン膜を用いたインクジェットヘッドの形成方法を提供することを目的とする。
【0007】
また更に、それらに加えて、簡易且つ低コストで得られるパリレン膜形成方法、並びにそのパリレン膜形成方法によって得られたパリレン膜を用いて吐出性能や耐久性に優れるインクジェットヘッドの形成方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的の少なくとも一つを達成するために、この発明は以下のように構成した。
【0009】
1.基体の表面上にポリパラキシリレンまたはその誘導体を有する被膜の形成方法において、
前記基体が配置された製膜室の内部に供給されたシランカップリング剤の蒸気の雰囲気下で、前記基体上に気相合成法により前記シランカップリング剤が分散含有されたポリパラキシリレンまたはその誘導体を有する被膜を形成し、前記気相合成法による被膜の形成途中に、前記シランカップリング剤の蒸気の供給を停止させることを特徴とする被膜の形成方法。
2.前記製膜室の内部に配置されたシランカップリング剤の一部を気化させることにより前記シランカップリング剤の蒸気を前記製膜室の内部に供給し、前記製膜室の内部に配置されたシランカップリング剤の全てを気化させることにより前記シランカップリング剤の蒸気の供給を停止させることを特徴とする前記1に記載の被膜の形成方法。
3.前記製膜室の内部に配置された多孔質のスポンジに含浸させたシランカップリング剤の一部を気化させることにより前記シランカップリング剤の蒸気を前記製膜室の内部に供給することを特徴とする前記2に記載の被膜の形成方法。
4.前記製膜室と開閉弁を介して連結された蒸気発生室の内部に配置されたシランカップリング剤の蒸気を前記開閉弁を開くことにより前記製膜室の内部に供給し、前記開閉弁を閉じることにより前記シランカップリング剤の蒸気の供給を停止させることを特徴とする前記1に記載の被膜の形成方法。
5.前記被膜の形成方法において、ポリパラキシリレン(パリレンN)を供給した後、ポリクロロパラキシリレン(パリレンC)を供給することを特徴とする前記1乃至4の何れか1項に記載の被膜の形成方法。
6.前記ポリクロロパラキシリレン(パリレンC)を供給中に前記シランカップリング剤の蒸気の供給を停止させることを特徴とする前記5に記載の被膜の形成方法。
7.前記気相合成法により前記被膜の膜厚が5μm形成されるまでに、前記シランカップリング剤の蒸気の供給を停止させることを特徴とする前記1乃至6の何れか1項に記載の被膜の形成方法。
8.前記気相合成法により前記被膜の膜厚が0.1μm形成されるまでは、前記シランカップリング剤の蒸気を供給することを特徴とする前記1乃至7の何れか1項に記載の被膜の形成方法。
9.前記被膜の表面側は前記シランカップリング剤を含有しないポリパラキシリレンまたはその誘導体を有する層により形成されることを特徴とする前記1乃至8の何れか1項に記載の被膜の形成方法。
10.インクチャネル内に電極を有するインクジェットヘッドの形成方法において、
前記インクチャネルを構成する基体に電極を形成した後、前記1乃至9の何れか1項に記載の被膜の形成方法により、前記基体の電極を被覆するように前記基体上に前記被膜を設けることを特徴とするインクジェットヘッドの形成方法。
11.圧電性基板上に電極を備えたインクチャネルを有し、前記電極に電圧を印加して前記圧電性基板を変形させることにより前記インクチャネルからインクを吐出するインクジェットヘッドの形成方法において、
前記圧電性基板上に電極を形成した後、前記1乃至9の何れか1項に記載の被膜の形成方法により、前記圧電性基板上の電極を被覆するように前記圧電性基板上に前記被膜を設けることを特徴とするインクジェットヘッドの形成方法。
【0018】
さらにまた、基体の表面上に形成されるパリレン膜であって、パリレン膜中にシランカップリング剤が分散含有されていることを特徴とするパリレン膜である。これにより、パリレン膜としての膜性能を生かしつつ、基体との密着性に極めて優れ、高耐久性のパリレン膜を得ることができる。
【0019】
さらにまた、前記シランカップリング剤の一部は、少なくとも前記基体と接するように分散含有されているパリレン膜であることが好ましい。これにより、基体との密着性及び耐久性が向上し、基体との界面でのパリレン膜の膜剥がれを効果的に防止することができる。
【0020】
さらにまた、前記パリレン膜中、前記基体との界面から0.1μm厚までの範囲に含有される前記シランカップリング剤のSi濃度が0.1mg/cm3以上であるパリレン膜であることが好ましい。これにより、パリレン膜の基体との密着性を一層向上することができる。
【0021】
さらにまた、前記パリレン膜中、前記基体との界面から0.1μm厚までの範囲に含有される前記シランカップリング剤のSi濃度が5mg/cm3以下であるパリレン膜であることが好ましい。これにより、基体との密着性に大きく影響がある基体との界面から0.1μm厚までのパリレン膜中にシランカップリング剤が分散含有された状態となり、シランカップリング剤が必要以上にパリレン膜の界面(基体との界面)近傍に存在して、パリレン膜の基体との密着性が低下してしまうといったことを防止することができる。
【0022】
さらにまた、前記パリレン膜表面から0.5μm厚までの範囲に含有される前記シランカップリング剤のSi濃度が0mg/cm3以上0.5mg/cm3以下であるパリレン膜であることが好ましい。これにより、パリレン膜表面の膜性能にシランカップリング剤が支障をきたすことがなく、パリレン膜の絶縁性、耐防湿性等を充分に発揮することができる。
【0023】
さらにまた、前記パリレン膜中、パリレンNの成分が50%以下であるパリレン膜であることが好ましい。これにより、より耐熱性にすぐれたパリレン膜を得ることができる。尚、パリレンNの構造式は次の通りである。
【0024】
【化1】
【0025】
さらにまた、前記パリレン膜はパリレンNの成分とパリレンCの成分を含有し、前記パリレン膜を基体側の下層と前記基体と反対側の上層とに膜厚で2分したとき、前記下層は前記パリレンNの成分を70%以上含有し、前記上層はパリレンCの成分を70%以上含有するパリレン膜であることが好ましい。これにより、よりピンホールがなく、かつ耐熱性にすぐれ、充分に耐久性を有するパリレン膜を得ることができる。尚、パリレンCの構造式は次の通りである。
【0026】
【化2】
【0027】
さらにまた、前記パリレン膜の膜厚が1μm以上10μm以下であることが好ましい。これにより、パリレン膜の膜性能を生かしつつ基体との密着性に極めて優れ、実用性に富む保護膜を短時間に簡易且つ低コストで得ることができる。
【0028】
さらにまた、基体の表面上にパリレン膜を形成するパリレン膜形成方法において、シランカップリング剤の蒸気雰囲気下に、気相合成法によりパリレン膜を形成するパリレン膜形成方法であることが好ましい。これにより、パリレン膜としての膜性能を生かしつつ、基体との密着性に極めて優れ、高耐久性のパリレン膜を簡易且つ低コストで得ることができる。
【0029】
さらにまた、基体の表面上にパリレン膜を形成するパリレン膜形成方法において、シランカップリング剤を供給し、一部が気化した状態で気相合成法によりパリレン膜を形成するパリレン膜形成方法であることが好ましい。これにより、パリレン膜としての膜性能を生かしつつ、基体との密着性に極めて優れ、高耐久性のパリレン膜を簡易且つ低コストで得ることができる。
【0030】
さらにまた、前記気相合成法による前記パリレン膜の形成途中に、前記シランカップリング剤をすべて気化させるパリレン膜形成方法であることが好ましい。これにより、パリレン膜表面の膜性能にシランカップリング剤が支障をきたすことがなく、パリレン膜の絶縁性、耐防湿性等が充分に発揮されるパリレン膜を得ることができる。
【0031】
さらにまた、前記気相合成法による前記パリレン膜の膜厚が5μm形成されるまでに、前記シランカップリング剤をすべて気化させるパリレン膜形成方法であることが好ましい。これにより、パリレン膜表面の膜性能にシランカップリング剤が支障をきたすことがなく、パリレン膜の絶縁性、耐防湿性等が充分に発揮されるパリレン膜を得ることができる。
【0032】
さらにまた、前記気相合成法による前記パリレン膜の膜厚が0.1μm形成されたときには、前記シランカップリング剤の一部が気化されていない状態で残存するパリレン膜形成方法であることが好ましい。これにより、パリレンとシランカップリング剤が共存している状態を確実に作り出せるため、パリレン膜中にシランカップリング剤を含有でき、パリレン膜の基体との密着性が一層向上されるパリレン膜を得ることができる。
【0033】
さらにまた、前記気相合成法による前記パリレン膜は、最初にパリレンNを供給し、その後パリレンCを供給するパリレン膜形成方法であることが好ましい。これにより、よりピンホールがなく、かつ耐熱性にすぐれ、充分に耐久性を有するパリレン膜を簡易に得ることができる。
【0034】
さらにまた、前記パリレンCによるパリレン膜の形成途中に、前記シランカップリング剤をすべて気化させるパリレン膜形成方法であることが好ましい。これにより、よりピンホールがなく、かつ、より耐熱性にすぐれ、充分に耐久性を有するパリレン膜を得ることができる。
【0035】
さらにまた、前記圧電性基板がPZT基板であるインクジェットヘッドであることが好ましい。これにより、微小インクチャネル内のPZT基板とその基板上の電極とで構成される基体を被覆するパリレン膜を備え、耐久性にも優れたインクジェットヘッドを簡易に得ることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、この発明のパリレン膜及びパリレン膜形成方法、並びにインクジェットヘッドを図面に基づいて説明するが、この発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0037】
図1は本発明の一実施形態であるインクジェットヘッドの外観図である。また、図2はこのインクジェットヘッドにおけるインクチャネル1個分の断面模式図である。
【0038】
この実施の形態のインクジェットヘッド1は、圧電性基板2と、他の壁を形成する部材(代表的には、ガラス、セラミック、金属或いはプラスチック製の平板を接着して形成するインクチャネルの蓋)3とでインク流路であるインクチャネル4が形成されている。圧電性基板2の内壁には、電極5が設けられ、この電極5と他の壁を形成する部材3の内壁は保護膜6で被覆されている。尚、図1において、7はノズルプレートであり、8はこのノズルプレート7に設けられたインク吐出孔となるノズル孔である。
【0039】
圧電性基板2には、例えば、PZT、BaTiO3、PbTiO3、等の基板を使用することができる。その中でも、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)を含有し圧電特性を有する圧電性セラミックス基板であるPZT基板が、圧電定数やその高周波応答性などの圧電特性に優れるので好ましい。
【0040】
また、天板となる部材3として、機械的強度が高く、耐インク性を備えたものであれば、上述した種々の材質のものを用いることができるが、セラミックス基板を用いることが好ましく、更に、変形されるPZT基板等の圧電性セラミックス基板と接合された使用を考慮すると、非圧電性のセラミックス基板を用いることが好ましく、圧電性セラミックスの側壁の変位を強固に支えることができ、かつ自身の変形が少ないために、効率的な駆動ができ、低電圧化が可能となるので好ましい。
【0041】
具体的には、例えば、シリコン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化シリコン、シリコンカーバイト、石英の少なくとも1つを主成分とした基板等を挙げることができ、特に、酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウム等を主成分とするセラミックス基板は、板厚が薄くても優れた基板特性を有し、駆動時の発熱や環境温度の変化に伴う基板の膨張によるそりやストレスでの破壊を低下できるので好ましく、酸化アルミニウムを主成分とする基板は安価で高絶縁性であるので特に好ましい。
【0042】
また特に、PZT基板を側壁、又は側壁及び底壁とし、非圧電性のセラミックス基板を底板及び/又は天板とすると、高性能のシェアモードのピエゾ型インクジェットヘッドを安価に製造できるので好ましく、更に、その非圧電性のセラミックス基板として酸化アルミニウム基板を用いると、インクジェットヘッドがより安価に製造し得るのでより好ましい。
【0043】
電極5としては、例えば、蒸着、スパッタリング、あるいはメッキ等により、金、銀、アルミニウム、パラジウム、ニッケル、タンタル、あるいはチタンからなる金属の電極膜(通常、0.5〜5.0μm程度)を形成することが好ましく、特に、電気的特性、耐食性及び加工性の点からアルミニウム、タンタル又はチタニウムからなる金属の電極膜とすることが好ましい。
【0044】
また、電極5の耐食性及び安定性を向上するのに陽極酸化処理を施すのが有効である。陽極酸化処理の具体例を次に示す。
電解液として、300mlのエチレングリコール及び30mlの3%酒石酸からなるpH7.0±0.5(アンモニア水で調整)の液を用い、厚さ2.0μmのアルミニウム電極膜を形成した圧電性基体を浸漬し、電極膜をプラスにして電流密度1mA/cm2で電極が100Vに達するまでは定電流で、電圧100Vに達した後は100Vの定電圧で陽極酸化を行い、電流密度が0.1A/cm2以下となったとき処理を終了させる。
【0045】
ノズルプレート7としては、例えば、ポリアルキレン、エチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネイト、酢酸セルロース等のプラスチックが好適である。
【0046】
図3は、図2のインクチャネル1個分における圧電性基板2の一部を示すもので、厚さ1mmの圧電性基板2の一面に微少な溝部(L:30mm、H:360μm、B:70μm)が加工されている。この圧電性基板2の加工面に蓋部材3を接合することにより、インク流路となるインクチャネル4(L:30mm、H:360μm、B:70μm)が溝部に構成される。インクチャネル4の一端は、インク供給部(インクマニフォールド)に連結され、他端は、図1に示すようにノズル孔8を備えたノズルプレート7により構成されたインク吐出部と連結される。尚、インク供給部及びインク吐出部との連結は、後述の保護膜形成工程の後に行うとインクジェットヘッドの製造がし易くなり好ましい。
【0047】
電極5の形成後または電極5の陽極酸化処理後、保護膜形成工程前に、他の壁を形成する部材3を圧電性基板2に接着する。この接着工程では、接着剤を塗布する前に、圧電性基板2の溝部が設けられた加工面及び前記溝部を覆う蓋部材3の接着面は、その状態に応じて洗浄や研磨等の前処理を行うことが好ましい。接着面の前処理により良好な接着を行うことができる。
【0048】
圧電性基板2の接着面と蓋部材3の接着面とを、例えばエポキシ系接着剤で接着して、圧電性基板2と蓋部材3は一体に組み立てられる。組立後、例えば、接着面は加圧状態で、約120℃まで加熱され、さらにこの加圧・加熱状態が約2時間保持されて、接着剤が硬化される。この接着行程により厚さ1.0〜2.0μmの接着剤層が接着面に形成され、また一体化された圧電性基板2と蓋部材3間にインク流路となるインクチャネル4が構成される。
【0049】
接着終了後一体化された圧電性基板2と蓋部材3に対し、保護膜6を形成する。本発明において保護膜6はパリレン膜を用いる。パリレン膜は、ポリパラキシリレン樹脂及び/又はその誘導体樹脂からなる被膜であり、固体のジパラキシリレンダイマー又はその誘導体を蒸着源とする気相合成法(Chemical Vaper Deposition:CVD法)により形成する。即ち、ジパラキシリレンダイマーが気化、熱分解して発生したジラジカルパラキシリレンモノマーが、基体上に吸着して重合反応し、被膜を形成するものである。
【0050】
また特に、パラキシレンの2量体であるジパラキシリレンダイマーを用いて膜形成したものをパリレンNと称し、パラキシレンのモノクロロ置換体の2量体であるジパラキシリレンダイマー(従ってダイマー中には二つの塩素原子をもつ)を用いて膜形成したポリクロロパラキシリレンをパリレンCと称する。その他、種々の置換したジパラキシリレンダイマー又はその誘導体を用いた種々のパリレン膜があり、必要な性能等に応じて、各種のパリレン膜やそれら種々のパリレン膜を複数積層したような多層構成のパリレン膜等を所望のパリレン膜として適用することができる。
【0051】
最初にパリレンNを供給し、その後パリレンCを供給することにより形成したパリレン膜であることが好ましく、特にインクジェットヘッドの電極を保護するパリレン膜としては、これにより、よりピンホールがなく、かつ耐熱性にすぐれ、充分に耐久性を有する保護膜を簡易に得ることができる点で好ましい。
【0052】
また、パリレン膜中、パリレンNの成分を50モル%以下とすることが好ましく、これにより、より耐熱性にすぐれたパリレン膜を得ることができる。
また更に、パリレン膜を基体側の下層と前記基体と反対側の上層とに膜厚で2分したとき、下層はパリレンNの成分を70モル%以上含有し、上層はパリレンCの成分を70モル%以上含有するようにすることが好ましく、これにより、よりピンホールがなく、かつ耐熱性にすぐれ、充分に耐久性を有するパリレン膜を得ることができる。
【0053】
パリレン膜の膜厚としては、1μm以上10μm以下であることが好ましく、これにより、パリレン膜の膜性能を生かしつつ基体との密着性に極めて優れ、実用性に富むパリレン膜を短時間に簡易且つ低コストで得ることができる。特に、インクジェットヘッドにおいては、パリレン膜の膜厚を1μm以上10μm以下とすることでインク吐出性能にも優れたインクジェットヘッドを得ることができる。
【0054】
本発明においては、このパリレン膜を基体上に形成する際に、シランカップリング剤の蒸気雰囲気下に、気相合成法によりパリレン膜を形成する。これにより、パリレン膜中にシランカップリング剤が分散含有されたパリレン膜を得る。
【0055】
このシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシラン、ビニル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランが挙がられ、その他種々の有機珪素化合物を用いることができる。
【0056】
図4は、上記のようなシランカップリング剤を分散含有させたパリレン膜である保護膜6を形成するための製膜装置の一例を示した模式図である。この実施の形態の製膜装置10は、製膜室11に、昇華室12,13と熱分解室14,15の2系統を連結して構成される。そして、この製膜室11の内部に、基体とシランカップリング剤を置き、開閉弁を介して製膜室11に別途連結された真空ポンプ(図示せず)を作動させ、製膜室11内を排気する。シランカップリング剤は一般に常温でも容易に気化され、シランカップリング剤の蒸気中で、熱分解室14または15よりジラジカルパラキシリレンダイマーが製膜室11に導入され、それによりシランカップリング剤を分散含有するパリレン膜が基体上に製膜される。
【0057】
図4に示した製膜装置10では、昇華室及び熱分解室をそれぞれ2つずつ設けて、種類の異なるパリレン層を形成可能に構成したが、勿論、例えば、それらを1系統として1種類のみからなるパリレン膜を製膜してもよい。また、上述の製膜装置では、開閉弁を介して真空ポンプを製膜室11に連結する構成とし、シランカップリング剤を製膜室11内部に配置して製膜を行うようにしたが、別途製膜室11に、開閉弁(好ましくはニードルバルブ)を介して蒸気発生室を連結する構成とし、この蒸気発生室でシランカップリング剤の蒸気を発生させ、適宜バルブを開閉することにより製膜室11内にシランカップリング剤の蒸気を導入し、製膜室11内部にシランカップリング剤の蒸気が存在する状態下で、同様にパリレン膜の製膜を行う実施の形態とすることもできる。尚、製膜装置は、これらに限定されるものではなく、種々の形態とすることができる。
【0058】
製膜室11内部にシランカップリング剤を配置して製膜を行うようにする場合には、図4に示したように、通常の、気相合成法によるパリレン膜の製膜装置をそのまま利用できる点で好ましい。また、シランカップリング剤の蒸気を発生する蒸気発生室を別途設け、バルブを介してその蒸気発生室を製膜室11に連結し、そのバルブを適宜開閉して製膜を行うようにする場合には、製膜室11に導入するシランカップリング剤の蒸気の量を容易に制御でき、蒸気の導入停止も容易にできるため、パリレン膜中へのシランカップリング剤の分散を所望の状態とすることが容易にできる点で好ましい。
【0059】
このように、シランカップリング剤の蒸気雰囲気下に気相合成法によりパリレン膜を形成することで、パリレン膜中にシランカップリング剤を分散含有させることができ、これにより、パリレン膜としての膜性能を生かしつつ、基体との密着性に極めて優れ、高耐久性のパリレン膜を得ることができる。また、通常のパリレン膜形成とほぼ同様な製造設備で、簡単に気相合成法により密着性の向上したパリレン膜が形成されること、及びそのパリレン膜は高性能にして製品の歩留まりも向上するため、製造時間の短縮化及び製品の低コスト化もできる。
【0060】
また、シランカップリング剤の蒸気雰囲気下で、気相合成法によるパリレン膜の形成を開始することで、シランカップリング剤の一部が少なくとも基体の表面と接するように分散させることができ、基体との密着性及び耐久性が向上し、基体との界面でのパリレン膜の膜剥がれを効果的に防止することができる。
【0061】
パリレン膜中、基体との界面から0.1μm厚までの範囲に含有されるシランカップリング剤のSi濃度は0.1mg/cm3以上であることが好ましく、これにより、パリレン膜の基体との密着性を一層向上することができる。
【0062】
また、パリレン膜中、基体との界面から0.1μm厚までの範囲に含有されるシランカップリング剤のSi濃度を5mg/cm3以下とすることにより、基体との密着性に大きく影響がある基体との界面から0.1μm厚までのパリレン膜中にシランカップリング剤が分散含有された状態となり、シランカップリング剤が必要以上に基体との界面近傍に存在し、例えば、シランカップリング剤が基体の表面全体と接することより、パリレン膜の基体との密着性が低下してしまうといったことを防止することができる。
【0063】
また、パリレン膜表面から0.5μm厚までの範囲に含有されるシランカップリング剤のSi濃度を0mg/cm3以上0.5mg/cm3以下とすることが好ましく、これにより、パリレン膜表面の膜性能にシランカップリング剤が支障をきたすことがなく、パリレン膜の絶縁性、耐防湿性等を充分に発揮することができる。
【0064】
(実施例1)
インクジェットヘッドを次の工程により作製した。
(1)ドライフィルムを上面に貼り付けた厚さ1mmのPZT基板に、深さ360μm、幅70μm、長さ30mmの溝を140μmのピッチでダイシングソーにより形成した。
(2)アルミの真空蒸着により、PZT基板の上面及び溝の内壁にアルミの金属膜を形成した。
(3)アセトンでドライフィルムを剥離することにより、PZT基板の上面に蒸着されたアルミの金属膜を除去し、溝の内壁にアルミ電極を形成した。
(4)アルミナ基板を蓋部材として、2液硬化型エポキシ接着剤(エポキシテクノロジー社製 Epo-Tec 353ND)により溝を覆うようにして接合してインクチャネルを形成し、これを基体とした。
(5)次に、製膜室の内部に基体を配置し、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン5mlを多孔質のスポンジに含浸させて製膜室の底面に置き、真空ポンプで製膜室内を排気した。この場合、多孔質のスポンジによりγ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの蒸発が制限されるため、排気開始から1時間程度は30mTorrの蒸気圧が保たれる。本実施例では、排気開始から30分後に、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの蒸気雰囲気下で、始めにパリレンNを昇華・分解して製膜を開始し、1μm製膜されたところでパリレンCの昇華・分解を開始すると共に、パリレンNの昇華を徐々に停止させ、最終的にはパリレンCのみで製膜を行って、7μmのパリレン膜を形成した。尚、始めにパリレンNを昇華・分解して製膜を開始したときのγ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの蒸気雰囲気下は、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランが一部気化した状態であり、また、本実施例では、パリレンCの製膜途中でありパリレン膜の膜厚としては約4μmが形成されたところで、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン5mlはすべて気化された。
(6)全インクチャネルの一方の開口を覆うように、ポリイミドからなるノズルプレートを2液硬化型エポキシ接着剤(エポキシテクノロジー社製 Epo-Tec 353ND)により接合した。
(7)全インクチャネルの他方の開口部には、インク導入孔を有するインク供給プレートを介してインクマニフォールドを取り付けてインクジェットヘッドを作製した。
【0065】
尚、パリレン膜の保護膜を設けない部分には、予めマスキングしておくと良い。
(実施例2)
実施例1の上記(1)〜(7)の工程において、(5)の工程を次のように行った以外、他の工程は同様にしてインクジェットヘッドを作製した。実施例2では、製膜室にニードルバルブを介して蒸気発生室を連結した製膜装置を用い、蒸気発生室でγ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの蒸気を発生させ、バルブを開閉することによりγ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの蒸気を製膜室に導入するようにした。
【0066】
本実施例においては、製膜室の内部に基体を配置し、バルブを開いて製膜室内に蒸気を30分間導入して、製膜室内部がγ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの蒸気雰囲気となった後に、始めにパリレンNを昇華・分解して製膜を開始し、0.1μm製膜されたところでバルブを閉じてγ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランの蒸気の導入を停止した。その後、パリレンCの昇華・分解を開始すると共に、パリレンNの昇華を徐々に停止させ、最終的にはパリレンCのみで製膜を行って、7μmのパリレン膜を形成した。以上のようにして(5)の工程を行った。
【0067】
(その他の実施例)
実施例1又は2と同様なインクジェットヘッドの製作において、(5)の工程における製膜条件(シランカップリング剤の供給量、パリレンN及びパリレンCの供給量や導入タイミング、製膜室内の圧力や温度等)を種々変えてインクジェットヘッドを作製した。勿論、何れもパリレン膜の製膜の当初からシランカップリング剤であるγ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランがパリレン膜に分散含有されるように、その蒸気雰囲気化にパリレン膜の製膜を開始した。この結果を実施例3〜7として下記の表1に示す。
【0068】
(比較例)
実施例1の上記(1)〜(7)の工程において、(5)の工程を次のように行った以外、他の工程は同様にしてインクジェットヘッドを作製した。この比較例では、製膜室11の内部に基体を配置し、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン5mlを入れた金属秤量円板を製膜室11の底面に置き、真空ポンプで製膜室11を6×10-6Torrまで減圧してγ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを基体に被覆させる。即ち、シランカップリング剤が全て気化して排気された後に、パリレンCによる製膜を開始する。その後に、パリレンCの昇華・分解を開始して、パリレンCからなる7μmのパリレン膜を形成した。
【0069】
各実施例及び比較例の結果を表1に示す。表1において、各評価項目は、次の通りである。ここで、パリレン膜中のSi濃度(ケイ素濃度)の分析は次の通りである。各試料を灰化後、炭酸ナトリウムにてアルカリ溶解し、セイコー電子社製SPS4000を用いて測定波長251.6nmでICP-AES測定にてケイ素の定量を行った。一方、パリレン膜を斜めにカットして斜め断面を作製し、これをアルバックファイ社製TRIFT IIを用いて加速電圧15kVでTof-SIMS測定してSi濃度分布(相対値)を求め、ICP-AES測定によるケイ素の定量データと合わせてSiの濃度分布(絶対値)を求めた。また、パリレンNとパリレンCの含有量の分析は、各試料を灰化後、炭酸ナトリウムにてアルカリ溶解し、ICP-AES測定にて塩素の定量を行いパリレンCの割合を求めることに基づいて行った。
【0070】
〔付着力〕
ノズル面が2mm×40mmの大きさであるインクジェットヘッドを用いて付着力を測定した。幅2mm、長さ50mm、厚さ50μmのポリイミドシートを、2液硬化型エポキシ接着剤(Epo-Tec 353ND)でノズル面に接着した。ノズル面からはみ出たポリイミドシートの10mmの部分をつかみ、それをノズル面と垂直方向に引っ張り、ノズル面の基体からパリレン膜が引き剥がされた時の引き剥がし荷重を求めた。これにより、基体へのパリレン膜の付着力を評価した。
【0071】
〔ピンホール〕
各実施例及び比較例に記載のようにして作製したインクジェットヘッドに対し、ピンホールの発生の有無について評価をした。1箇所でもピンホールがあると、電圧を印可して駆動する圧電性基板を用いたインクジェットヘッドにとっては、電極が断線し、インクジェットヘッドとして機能しなくなるため、歩留まりを落とす大きな要困となる。測定には、256のインクチャネル(つまり、電極も256個)を備えたインクジェットヘッドを用いた。インクジェットヘッドのチャネル部分をインク中に浸し、インクジェットヘッドに設けられた全ての電極をまとめてパルス電源(±40V、周期10kHz)の一方の端子に繋いだ。もう一方の端子は、インクジェットヘッドが浸されているインク中に浸された対向電極に繋いだ。30分間のパルス印加を行った後、各電極に+40Vの電圧を印加して、10nA以上の電流が流れた場合にピンホールが存在すると判断した。そして、10nA以上の電流が流れた電極の数を数えて、それをピンホールの個数とした。
【0072】
〔耐熱性〕
各実施例及び比較例に記載のようにして作製したインクジェットヘッドに対し、耐熱性の評価をした。耐熱性は、インクジェットヘッドを120℃で2時間加熱し、その後、ピンホールの個数をカウントすることにより評価した。
【0073】
〔耐久性〕
各実施例及び比較例に記載のようにして作製したインクジェットヘッドをそれぞれ20個用意し、水系インクを用い駆動電圧20Vでインクを出射して、1×1010ショット繰り返した際に、インクが出射されたか否かで不良品の個数をカウントすることで耐久性の評価をした。インクジェットヘッドとしては256のインクチャネルを備えるものを用いた。ピンホールが発生すると、そこから電極が腐食して断線するため、インクが射出されなくなる。1チャネルでもインクが射出不能になれば、インクジェットヘッドとして十分な機能を果たせなくなるので、不良品と見なされる。
【0074】
これらの結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
〔パリレン層におけるSi濃度の相違に関して〕
基体から0.1μm厚までのパリレン膜中のシランカップリング剤の量を異ならせ、その領域でのSi濃度が異なるいくつかのサンプルを形成し、各サンプルの密着力(付着力)と耐熱性と耐久性とを調べた。尚、これらのサンプルは何れも、パリレン層中の全パリレンの35モル%がパリレンNであること、また、パリレン層における下半分の層の70モル%がパリレンNであること、さらに、パリレン層における上半分の層の100モル%がパリレンCであること等を共通点として有する。この結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
〔パリレン層におけるSi濃度の相違に関して〕
次に、表面から0.5μm厚までのパリレン膜中のシランカップリング剤の量を異ならせ、その領域でのSi濃度が異なるいくつかのサンプルを形成し、各サンプルの密着力(付着力)と耐熱性と耐久性とを調べた。尚、これらのサンプルは何れも、パリレン層中の全パリレンの35モル%がパリレンNであること、また、パリレン層における下半分の層の70モル%がパリレンNであること、さらに、パリレン層における上半分の層の100モル%がパリレンCであること、そのうえ、基体界面から0.1μm厚までのSi濃度が0.2mg/cm3であること等を共通点として有する。この結果を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
〔パリレンNの含有量の相違に関して〕
パリレン膜の下層と上層の膜厚を変化させることにより、パリレン膜中に含まれるパリレンNの含有量の異なるいくつかのサンプルを形成し、各サンプルの密着力(付着力)と耐熱性と耐久性とを調べた。尚、これらのサンプルは何れも、パリレン層における下層にパリレンNが100モル%含まれること、パリレン層における上層にパリレンCが100モル%含まれること、基体界面から0.1μm厚までに含まれるSi濃度が0.2mg/cm3であること、パリレン層厚が5μmであること等を共通点としている。この結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
以上の実施例において、パリレン膜は電極の保護のみならず、基体間を接合する接着剤もインクから保護することができていた。
また、以上においては、インクジェットヘッドの実施形態に基づき説明したが、本発明は、インクジェットヘッド以外の他の製品や技術分野にも適用できるものであり、基体上に保護膜としてパリレン膜を形成する種々の形態に用いることができる。従って、基体は、種々の基体を用いることができ、その材料もプラスチック、金属、セラミックス等、種々の材料のものに適用可能である。
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、基体との密着性及び耐久性が極めて優れ、かつ、パリレン膜表面の膜性能にシランカップリング剤が支障をきたすことがなく、パリレン膜の絶縁性、耐防湿性等を充分に発揮することができるパリレン膜を簡易且つ低コストで形成できる被膜の形成方法を提供することができる。
また、電極を含む基体との密着性及び耐久性が極めて優れ、かつ、パリレン膜表面の膜性能にシランカップリング剤が支障をきたすことがなく、パリレン膜の絶縁性、耐防湿性等を充分に発揮することができるパリレン膜を備えた実用的なインクジェットヘッドを簡易且つ低コストで形成できるインクジェットヘッドの形成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるインクジェットヘッドの外観図である。
【図2】インクジェットヘッドにおけるインクチャネル1個分の断面模式図である。
【図3】図2のインクチャネル1個分における圧電性基板の一部を示す図である。
【図4】製膜装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 インクジェットヘッド
2 圧電性基板
3 他の壁を形成する部材(蓋部材)
4 インクチャネル
5 電極
6 保護膜(パリレン膜)
7 ノズルプレート
8 ノズル孔
10 製膜装置
11 製膜室
12,13 昇華室
14,15 熱分解室
Claims (11)
- 基体の表面上にポリパラキシリレンまたはその誘導体を有する被膜の形成方法において、
前記基体が配置された製膜室の内部に供給されたシランカップリング剤の蒸気の雰囲気下で、前記基体上に気相合成法により前記シランカップリング剤が分散含有されたポリパラキシリレンまたはその誘導体を有する被膜を形成し、前記気相合成法による被膜の形成途中に、前記シランカップリング剤の蒸気の供給を停止させることを特徴とする被膜の形成方法。 - 前記製膜室の内部に配置されたシランカップリング剤の一部を気化させることにより前記シランカップリング剤の蒸気を前記製膜室の内部に供給し、前記製膜室の内部に配置されたシランカップリング剤の全てを気化させることにより前記シランカップリング剤の蒸気の供給を停止させることを特徴とする請求項1に記載の被膜の形成方法。
- 前記製膜室の内部に配置された多孔質のスポンジに含浸させたシランカップリング剤の一部を気化させることにより前記シランカップリング剤の蒸気を前記製膜室の内部に供給することを特徴とする請求項2に記載の被膜の形成方法。
- 前記製膜室と開閉弁を介して連結された蒸気発生室の内部に配置されたシランカップリング剤の蒸気を前記開閉弁を開くことにより前記製膜室の内部に供給し、前記開閉弁を閉じることにより前記シランカップリング剤の蒸気の供給を停止させることを特徴とする請求項1に記載の被膜の形成方法。
- 前記被膜の形成方法において、ポリパラキシリレン(パリレンN)を供給した後、ポリクロロパラキシリレン(パリレンC)を供給することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の被膜の形成方法。
- 前記ポリクロロパラキシリレン(パリレンC)を供給中に前記シランカップリング剤の蒸気の供給を停止させることを特徴とする請求項5に記載の被膜の形成方法。
- 前記気相合成法により前記被膜の膜厚が5μm形成されるまでに、前記シランカップリング剤の蒸気の供給を停止させることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の被膜の形成方法。
- 前記気相合成法により前記被膜の膜厚が0.1μm形成されるまでは、前記シランカップリング剤の蒸気を供給することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の被膜の形成方法。
- 前記被膜の表面側は前記シランカップリング剤を含有しないポリパラキシリレンまたはその誘導体を有する層により形成されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の被膜の形成方法。
- インクチャネル内に電極を有するインクジェットヘッドの形成方法において、
前記インクチャネルを構成する基体に電極を形成した後、請求項1乃至9の何れか1項に記載の被膜の形成方法により、前記基体の電極を被覆するように前記基体上に前記被膜を設けることを特徴とするインクジェットヘッドの形成方法。 - 圧電性基板上に電極を備えたインクチャネルを有し、前記電極に電圧を印加して前記圧電性基板を変形させることにより前記インクチャネルからインクを吐出するインクジェットヘッドの形成方法において、
前記圧電性基板上に電極を形成した後、請求項1乃至9の何れか1項に記載の被膜の形成方法により、前記圧電性基板上の電極を被覆するように前記圧電性基板上に前記被膜を設けることを特徴とするインクジェットヘッドの形成方法。
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