JP4180392B2 - 紫外線伝送用光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は紫外線伝送用光ファイバの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
紫外線伝送用光ファイバにおいて、紫外線伝送による光エネルギーの作用により、光ファイバを構成する石英ガラス(シリカガラス)が劣化、損傷して、光ファイバの透過率等の光学特性が経時的に劣化する問題が知られている。そして、かかる問題の解消(軽減)に、光ファイバに水素をドープするのが有効であることも知られている。すなわち、光ファイバの紫外線伝送によるガラスの劣化、損傷部(≡Si・+・O−Si≡)に、ドープされた水素分子(H2)が作用して、かかる劣化、損傷部を修復する(≡Si・+・O−Si≡+H2+hν→≡Si−H+H−O−Si≡)。ところで、光ファイバに水素をドープする方法としては、専ら高圧水素処理(高温高圧の水素雰囲気下で光ファイバを暴露させる。)が使用され、また、光ファイバ中にドープされた水素分子の経時による光ファイバからの抜け出し(放出)を防止するために、光ファイバの外周に水素拡散防止層を被覆した後、高圧水素処理を施す方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、高圧水素処理によって光ファイバに水素をドープする場合、光ファイバを高温高圧の水素雰囲気下に晒すための大掛かりな設備が必要であり、さらに、水素拡散防止層を予め形成した後高圧水素処理を施す場合には、水素拡散防止層を形成するための設備、工程が増えることから、製造設備がさらに大掛かりになるととともに、製造効率の低下を招いてしまう。そこで、本発明者等は、光ファイバへの水素ドープを簡単な設備で、作業性良く実施できる方法を検討した結果、光ファイバ母材を溶融、線引きして得られた裸光ファイバを溶融Alが充填したダイス中に通過させることで、光ファイバ(裸光ファイバ)の外周に溶融Al(アルミニウム)が被覆し、通過後溶融Alが凝固する過程で溶融Al中に溶解している水素が光ファイバ中に拡散供給され、しかも、凝固して形成されたAl層が光ファイバ(裸光ファイバ)中の水素の外部抜けを防止し得る水素遮断層として機能し得ることを見出した(特願2002−90070)。しかしながら、該方法は、作業性良く、石英系光ファイバへ水素をドープできるが、製造される紫外線伝送用石英系光ファイバにおける水素ドープ量が安定せず、耐紫外線性が十分でない光ファイバを生じてしまい、製造歩留まりが十分でないという問題がある。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−309742号公報(第5頁〜第13頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記事情に鑑み、本発明は、優れた耐紫外線性の紫外線伝送用光ファイバを、簡単な設備で、作業性良く、高歩留まりに製造できる紫外線伝送用光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来の方法で製造される紫外線伝送用光ファイバの耐紫外線性が安定しない原因について研究した結果、上記従来の方法では、溶融Alの固溶水素量を多くし、かつ、溶融Alによる石英の還元反応で生する脆弱な酸化アルミニウムの反応相の生成を防止するために、石英系裸光ファイバの外周に被覆する溶融Alの温度を700〜750℃に設定している(溶融Alを該設定温度まで昇温してから石英系裸光ファイバの外周に被覆している)が、溶融Alには、それを所定温度まで昇温すると、該温度に到達した直後では溶融Al中の固溶水素量は多いが、その後、固溶水素量は時間経過とともに一旦減少し、その後再び増加して飽和する傾向があり、このことが、石英系裸光ファイバ中の水素ドープ量が安定しない原因(すなわち、製造されるAlコート石英系光ファイバの耐紫外線性がばらつく原因)であることを突き止めた。すなわち、溶融Alの温度を所定温度(700〜750℃の範囲内)に昇温した後、直ちに石英系光ファイバ母材からの光ファイバの線引きを開始し、石英系裸光ファイバの外周に溶融Alを被覆していたので、線引き作業の開始から線引き作業の終了までの間(即ち、紫外線伝送用光ファイバの製造作業中)に溶融Al中の固溶水素量が変動し、そのために石英系光ファイバ中の水素ドープ量が十分でないものが生産されることが分かった。そこで、本発明者等は、かかる知見に基づき、さらなる研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、
(1)加熱した石英系光ファイバ母材から石英系裸光ファイバを線引きし、その外周に溶融Alを被覆、凝固させて、Alコート光ファイバを製造する方法であって、
溶融Alを石英系裸光ファイバの外周に被覆する際の該溶融Alの温度をT1としたとき、溶融Alを一旦前記温度T1よりも高い温度T2に昇温し、その後前記温度T1まで冷却して、石英系裸光ファイバの外周に被覆、凝固させることを特徴とする、紫外線伝送用Alコート光ファイバの製造方法、及び
(2)温度T1が700〜750℃であり、温度T2が温度T1よりも50〜250℃高い温度である、上記(1)記載の紫外線伝送用Alコート光ファイバの製造方法、に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明において、「Al(溶融Al)」とは、「純Al(純Alの溶融物)」以外に「Al合金(Al合金の溶融物)」をも含む概念で用いている。すなわち、Alの代わりにAl合金を使用しても、本発明の目的を達成できることを見出している。このようなAl合金としては、例えば、国際合金番号で示される1035、1040、1045、1050、1050A、1060、1065、1070、1070A、1080、1080A、1085、1090、1098、1100、1110、1200、1200A、1120、1135、1235、1435、1145、1345、1445、1150、1350(18)、1350A、1450、1260、1170、1370、1175、1275、1180、1185、1285、1385、1188、1190、1193、1198、1199等のAl合金が挙げられる。
また、本発明においては、脆弱な反応層の生成を抑制するという観点から、純アルミ(純度:99.9%以上)(以下、純Alともいう)、Al−Si系合金等を用いるのが好ましい。
【0008】
本発明では、溶融Alの温度を石英系裸光ファイバへ被覆する際の温度T1よりも一旦高温T2まで加熱し、その後、石英系裸光ファイバへ被覆する際の温度(前記温度T1)まで冷却してから、当該溶融Alを石英系裸光ファイバへ被覆し、凝固させる手順を採るが、溶融Alを石英系裸光ファイバの外周に被覆する際の溶融Alの温度T1は、Alの溶融状態が維持される温度(Alが純Alである場合はその融点以上、AlがAl−Si合金などの共晶系合金である場合はその液相線温度以上)であればよく、特に制限されないが、酸化アルミニウムからなる反応相抑制の点から750℃以下とするのが好ましく、一般的には700〜750℃の範囲内とするのが好ましく、より好ましくは720〜730℃である。これは、溶融Alの温度が700℃未満であると、ダイス出口でAl(Al合金)が凝固を起こして、線引き(被覆)をしにくくなる場合があり、750℃を超えると、酸化アルミニウムからなる反応相が生成して、製造されるAlコート石英系光ファイバ(紫外線伝送用光ファイバ)の機械的強度が低下してしまうためである。
【0009】
前述したように、溶融Alを所定温度に昇温した場合、その固溶水素量は該昇温直後(所定温度に到達した直後)は高い値となるが、その後は、時間経過とともに減少し、その後、再び増加して平衡状態となる傾向がある。従って、固溶水素量が平衡状態(平衡溶解度)に達した後に、石英系光ファイバ母材からの裸光ファイバの線引き作業を開始すれば、高い水素ドープ量の石英系光ファイバを安定に製造することができる。しかしながら、固溶水素量が平衡状態(平衡溶解度)に達するまでには長時間を要し(例えば、溶融Alを700℃に昇温した場合、該700℃に達してから、固溶水素量が平衡状態になるまでには5時間以上を要する。)、このような多大な時間は工業的生産おいて生産効率を大きく低下させてしまい、現実的でない。本発明では、溶融Alを石英系裸光ファイバへ被覆する際の温度T1(700〜750℃の範囲内の所定温度)を超えてそれよりもさらに高温の温度T2まで昇温することで、溶融Al中の固溶水素量は大きく増大し、その後、温度をT1まで冷却しても、溶融Alの固溶水素量は、溶融Alを温度T1に昇温して保持した場合に達する平衡固溶量と同等或いはそれ以上の値の範囲内で推移して平衡状態に達することとなる。従って、温度T1まで冷却した後、直ちに石英系光ファイバ母材からの光ファイバ(裸光ファイバ)の線引き作業の作製を開始しても、溶融Alが十分な固溶水素量(3.0μg/g以上、好ましくは5.0μg/g以上)を有していることから、石英系裸光ファイバ中に水素が十分にドープされたAlコート石英系光ファイバ(耐紫外線性の良好な紫外線伝送用光ファイバ)を確実に製造することができる。
【0010】
本発明において、温度T2は、溶融Al中の安定かつ十分な固溶水素量を達成するために、温度T1(700〜750℃)よりも50℃以上高い温度とするのが好ましく、100℃以上高い温度とするのがより好ましい。しかし、温度T1よりも250℃を越えて高い温度にすると、昇降温工程に時間を要するために、T1よりも250℃以下の範囲で高い温度とするのが好ましく、150℃以下の範囲で高い温度とするのがより好ましい。また、温度T2に昇温した後、その温度で溶融Alを5分間〜1時間程度保持するのが好ましく、10分間〜30分間程度保持するのがより好ましい。
【0011】
このような溶融Alの温度T2までの昇温作業後、温度T1まで冷却することで、該冷却後、温度T1となった溶融Alの固溶水素量は3.0μg/g以上(好ましくは5.0μg/g以上)を達成しており、これを被覆することで、石英系光ファイバの紫外線伝送による光学特性の劣化を充分に抑制し得る量(すなわち、良好な耐紫外線性を得るに充分な量)の水素がドープされる。
良好な耐紫外線性を示す石英系光ファイバ中の水素分子含有量は1.6×1017分子/cm3以上であり、好ましくは1.8×1017分子/cm3以上である。また、溶融Alを被覆することで得られる水素分子含有量の上限は9.8×1017分子/cm3以下、好ましくは9.5×1017分子/cm3以下である。
【0012】
なお、本発明において、Alの溶融は、大気中(空気存在下)で行うことができ、溶融Al中の水素は、Alに付着していた水分、大気中の水分からの水素がAlの溶融によってAl溶融物中に固溶するものである。
【0013】
本発明の方法は、例えば、図1に示す設備(装置)100で実施するのが好ましい。
該装置100は、石英系光ファイバ母材1を保持して加熱、溶融する加熱手段11と、溶融Al3が充填され、かつ、該充填された溶融Al3中を光ファイバ2が通過し得るよう構成されたダイス12と、溶融Al3の温度を測定する温度測定手段13a及び該温度測定手段13aの測定温度に応じて加熱量が変更される加熱手段13bからなる温度制御手段14が付設された溶融Al収容槽15と、該溶融Al収容槽15中の溶融Alをダイス12に向けて供給するための配管16とを備えている。なお、ダイス12には供給された溶融Al3の温度低下を防止するための加熱手段17が付設されている。溶融Al収容槽15に付設の加熱手段13b、ダイス12に付設の加熱手段17としては、例えば、高周波誘導加熱方式、抵抗加熱方式等の加熱手段が使用される。
【0014】
該装置100では、以下の手順でAlコート石英系光ファイバ(紫外線伝送用光ファイバ)が製造される。先ず、溶融Al収容槽15にて溶融Al3の昇温と冷却が行われる。即ち、温度制御手段14により溶融Alは温度T2まで昇温され、該温度T2で所定時間保持された後、温度T1まで冷却される。この冷却は、加熱手段13bによる加熱量を減少させるか、或いは、加熱手段をOFFすることによる溶融Alの放冷によって行われる。このようにして温度T1まで冷却された溶融Alは配管16を通してダイス12へ供給されてダイス12に充填される。かかる温度T1の溶融Al3のダイスへの充填完了と同時に、石英系光ファイバ母材1からの石英系裸光ファイバ2の線引きが開始され、石英系裸光ファイバ2がダイス12に充填された溶融Al3中を通過して、その後、図示しないボビンで巻き取られることで、外周に溶融Alが凝固したAl層4が形成されたAl合金コート石英系光ファイバ7が連続的に製造される。かかる線引き作業の間、ダイス12中へは溶融Alの充填量が減量しないように、溶融Al収容槽15中の温度T1とされた溶融Alが連続的に供給される。
【0015】
本発明で製造するAlコート石英系光ファイバ(紫外線伝送用光ファイバ)において、石英系光ファイバ(母材)には公知の石英系光ファイバ(母材)を使用することができる。すなわち、石英系光ファイバ(裸光ファイバ)は、コアとコアよりも屈折率が小さいクラッドからなり、光ファイバ母材には、純粋石英ガラス(コア用部分)とその外周を覆うドープ石英ガラス(クラッド用部分)からなる石英系光ファイバ母材が使用される。クラッド用部分へのドープ元素としては、例えば、フッ素(F)、ホウ素(B)等が使用される。石英系光ファイバ母材は、例えば、プラズマ法、ダイレクト法、VAD法等で作製されたものが使用される。
【0016】
本発明において、石英系光ファイバ母材からの光ファイバ(裸光ファイバ)の線引きは、石英系光ファイバ母材を2000〜2500℃、好ましくは2300〜2400℃の温度に加熱して行うのが好ましい。
【0017】
また、裸光ファイバが溶融Al中へ進入する温度は、300℃以下が好ましく、特に好ましくは100〜150℃である。300℃を越える場合には被覆されるAl層の厚みが薄くなるため、溶融Alから供給される水素量が少なくなったり、ファイバの長手方向におけるバラツキを生じやすくなってしまう。該石英系光ファイバの溶融Al中への進入温度は、例えば、石英系光ファイバ母材とダイス間の距離を調整することによって変更される。
【0018】
また、本発明で使用する石英系光ファイバ母材は、光ファイバ母材である純粋石英ガラス中の水素分子含有量が1×1018個/cm3以下、より好ましくは1×1×1017個/cm3以下であるものが好ましい。このような水素分子含有量が少ない石英系光ファイバ母材を用いることにより、光ファイバの線引き段階で高温度に晒されることによって水素分子と純粋石英ガラスが反応して生成する構造欠陥(≡Si−H)の生成を抑制することができ、紫外線伝送時の損失増加(透過率等の光学特性の劣化)の抑制に有効に作用する(該構造欠陥(≡Si−H)は、純粋石英ガラスを構成する結合(≡Si−O−Si≡)に比較すると結合エネルギが小さいので、高エネルギの紫外線が伝送される際に結合が破壊されE'センターを生成するものである。)。このような低水素化した石英系光ファイバ母材は、例えば、特開2000−159545号公報等に記載の公知技術によって作製することができる。
【0019】
本発明で製造するAlコート石英系光ファイバ(紫外線伝送用光ファイバ)において、石英系光ファイバ(裸光ファイバ)の線径は、その具体的な使用形態に応じて決定され、特に限定はされないが、一般に50〜800μmの範囲から選択される。該石英系光ファイバの線径は、石英系光ファイバ母材からの線引き速度によって調整されるが、線引き速度は、0.1〜400m/分が好ましく、特に好ましくは30〜100m/分である。
【0020】
また、溶融Alが凝固して形成される水素遮断層として機能するAl層は、充分な水素遮断効果が得られるように、その平均厚みが5〜100μm、好ましくは15〜80μmであるのがよい。このような平均厚みのAl層は、特にダイスのサイズ(ダイス中で石英系光ファイバが溶融Alと接触する距離)を調整することによって得ることができる。
【0021】
本明細書中の特性(物性)値は以下の方法で測定した。
▲1▼溶融Al中の固溶水素量(水素含有量)
銅板を2枚用意し、設定温度に保持した溶融Alを銅板上に流し、もう一方の銅板で溶融Alを挟み込む。銅板で挟み込むことにより、Alは急冷され、Al箔になり、設定温度で保持していた水素が封じ込められる。このAl箔から不活性ガス溶解・熱伝導法により発生した水素ガス量の測定する。この方法はガスクロマトグラフの検出器を熱伝導度検出器にし、黒鉛るつぼを用いて、Heガス中で試料を溶解し、その時に発生した水素ガスを検出するものである。
【0022】
▲2▼光ファイバ(コア部)中の水素分子含有量
V. S. Khotimchenkoら、「J Appl. Spectrospec.」 46 (1987) 632-685に記載された方法に準じて行い、800cm-1近辺のピーク強度(O−Si−Oに起因)と、4135cm-1近辺のピーク強度(水素分子に起因)との強度比を算出し、これを単位体積あたりの水素分子量に換算することで定量できる。具体的な手順は、次のとおりである。
まず、長さが5mとなるようにAlコート光ファイバの両端を切断し、後述するレーザーラマン分光装置を用いたレーザーラマンマイクロプローブ法によって、一方の端面からレーザー光を照射すると、マイクロモードを用いて、他方の端面から出てくるラマン光は、スリットを通り、分光器に取り込まれる。分光器の光は、CCDカメラで光強度を電気信号に変換され、付属のソフトでカウント数−波数のグラフを得るというようにして、ラマンスペクトル(縦軸:ラマン強度(cps)、横軸:波数(cm-1))を描かせる。こうして得られたラマンスペクトルでは、800cm-1、4135cm-1の波数の近辺に、それぞれピークが現れる。この各ピークより、それぞれの波数におけるピーク強度を算出する。
ここで、図2はAlコート光ファイバの波数800cm-1近辺のピーク21を含むラマンスペクトルを模式的に示す図であり、図3はAlコート光ファイバの波数4135cm-1近辺のピーク22を含むラマンスペクトルを模式的に示す図である。以下、このラマンスペクトルからのピーク強度の算出方法を、図2および図3を参照して説明する。
まず、図2に示す800cm-1の近辺(698cm-1〜946cm-1の範囲を指す)におけるピーク21を例にとって説明する。
(1)800cm-1と698cm-1との間で、極小値(極小のラマン強度を示す)波数a(cm-1)を決定する。
(2)800cm-1と946cm-1との間で、極小値(極小のラマン強度を示す)波数b(cm-1)を決定する。
(3)a(cm-1)でのラマン強度(極小点aa)とb(cm-1)でのラマン強度(極小点bb)とを結ぶ線分S1を引く。
(4)ピーク21の波数800cm-1でのラマン強度を通る縦軸に平行な直線T1を引く。そうして、前記直線T1と線分S1との交点X1が示す縦軸値(ラマン強度)と波数800cm-1の縦軸値(ラマン強度)との差(ラマン強度の差)L1を求め、これを800cm-1のピーク強度(単位;cps)とする。
同様に、図3に示す4135cm-1の近辺(4070cm-1〜4200cm-1)におけるピーク22においても、
(1)4135cm-1と4070cm-1との間で、極小値を示す(極小値のラマン強度を示す)波数c(cm-1)を決定する。
(2)4135cm-1と4200cm-1との間で、極小値を示す(極小値のラマン強度を示す)波数d(cm-1)を決定する。
(3)c(cm-1)でのラマン強度(極小点cc)とd(cm-1)でのラマン強度(極小点dd)とを結ぶ線分S2を引く。
(4)ピーク22の波数4135cm-1でのラマン強度を通る縦軸に平行な直線T2を引く。そうして、前記直線T2と線分S2との交点X2が示す縦軸値(ラマン強度)と波数4135cm-1の縦軸値(ラマン強度)との差(ラマン強度の差)L2を求め、これを4135cm-1のピーク強度(単位:cps)とする。
上記のようにして得られた各ピーク21、22におけるピーク強度を、下記式(1)に代入して、単位体積あたりの水素分子量に換算することで、本発明でいう「水素分子含有量」を算出することができる。
水素分子含有量(分子/cm3)
=(4135cm-1近辺でのピーク強度/800cm-1近辺でのピーク強度)
×1.22×1021…………………………………………式(1)
なお、本発明における水素分子含有量の測定は、以下の使用機器、条件にて行う。
・レーザーラマン分光装置:Ramaonor T-64000(Jobin Yvon/愛宕物産製)
・光源:YAGレーザー(CHERENT VERDI-5W)
・分光器
構成 :Monochromator:Third Stage
回折格子:Premonochromator 1800gr/mm
・検出器
CCD:Jobin Yvon 1024×256
レーザー波長:532nm
・測定条件
500〜1800の間の波数 測定時間: 1sec
4070〜4200の間の波数 測定時間:900sec
・解析ソフト:ORIGIN
【0023】
▲3▼Al層の平均厚み
Alコート石英系光ファイバの横断面を樹脂埋めし、研磨する。それをマイクロスコープ(50倍)にて観察し、厚さを測定する。
【0024】
【実施例】
次に、本発明の実施例と比較例を記載して、本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
図1に示す装置を使用して行った。
Al300gを溶融し、1時間加熱して溶融Alを800℃まで昇温した。そして、この温度で溶融Alを0.5時間保持した後、放冷により、溶融Alの温度を730℃まで低下させた。そして、この温度が730℃の溶融Alをダイスへ充填した後、2300℃に加熱した石英系光ファイバ母材(コア部分(純粋な石英ガラス)とフッ素ドープされたクラッド部分とを有する石英系光ファイバ母材で、水素分子濃度が約1.0×1016分子/cm3であるもの)から線引き速度60m/分で線引きを行い、線引きした石英系裸光ファイバをダイスへ通過させながらボビンで引き取った。かかる作業を連続して行い、全長2500mmのAlコート石英系光ファイバを製造した。得られたAlコート石英系光ファイバのAl層の平均厚みは25μmであった。
また、製造したAlコート石英系光ファイバ(全長2500mm)に対して該ファイバを6等分する5つの区画点を規定し、各区画点をサンプリング点として、各区画点の前後2.5mの箇所でファイバを分断することで、全長5mの試料を5つ採取し、該5つの試料(サンプルNo.1〜5)に対して光ファイバ(コア部)中の水素分子含有量の測定と下記の耐UV特性試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0025】
[耐UV特性試験]
Alコート石英系光ファイバのコア部に12時間連続的に紫外線(215nm、光源:D2ランプ(L1314(商品名)、浜松ホトニクス社製))を照射した後であっても、該紫外線照射前の90%以上の透過率を維持したものを合格と評価し、90%未満のものを不合格と評価した。
【0026】
(比較例1)
Al300gを溶融し、0.5時間加熱して730℃まで昇温した。そして、設定温度(730℃)に達した後、直ちに溶融Alをダイスへ充填し、その後は実施例1と同様にして、全長2500mmのAlコート石英系光ファイバを製造した。得られたAlコート石英系光ファイバのAl層の平均厚みは25μmであった。また、製造したAlコート石英系光ファイバ(全長2500mm)に対し、実施例1と同様にして、全長5mの試料を5つ採取し、該5つの試料(サンプルNo.1〜5)に対して光ファイバ(コア部)中の水素分子含有量の測定と下記の耐UV特性試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1から、実施例1の方法を採用することで、コア部の水素分子含有量が十分に高い、耐紫外線性に優れた石英系光ファイバを連続生産できることが分かる。
【0029】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明の紫外線伝送用光ファイバの製造方法によれば、優れた耐紫外線性の紫外線伝送用光ファイバを高歩留まりに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の紫外線伝送用光ファイバの製造方法を実施する装置の一例の概略縦断面図である。
【図2】Alコート光ファイバの波数800cm-1近辺のピーク21を含むラマンスペクトルを模式的に示す図である。
【図3】Alコート光ファイバの波数4135cm-1近辺のピーク22を含むラマンスペクトルを模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 石英系光ファイバ母材
2 石英系光ファイバ
3 溶融Al
4 Al層
11 加熱手段
12 ダイス
13a 温度測定手段
13b 加熱手段
14 温度制御装置
15 溶融Alの収容槽
16 配管
Claims (1)
- 加熱した石英系光ファイバ母材から石英系裸光ファイバを線引きし、その外周に溶融Alを被覆、凝固させて、Alコート光ファイバを製造する方法であって、溶融Alを石英系裸光ファイバの外周に被覆する際の該溶融Alの温度が700〜750℃であり、当該溶融Alの温度をT1としたとき、溶融Alを一旦前記温度T1よりも50〜250℃高い温度T2に昇温して該温度T2で5分間〜1時間保持し、その後前記温度T1まで冷却して、石英系裸光ファイバの外周に被覆、凝固させることを特徴とする、紫外線伝送用Alコート光ファイバの製造方法。
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JP2003019254A JP4180392B2 (ja) | 2003-01-28 | 2003-01-28 | 紫外線伝送用光ファイバの製造方法 |
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