JP4179893B2 - 既設横管の管路更生工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、既設横管の管路更生工法に関し、詳しくは、例えば集合住宅における立主管から本管に連通する排水横主管等の管径が比較的に大径の老朽化した既設横管の更生に適用される既設横管の管路更生工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の老朽化した既設横管の管路更生工法において、既設管の管路を先ずクリーニングした後、管路内にライニング層を形成することにより、既設管の管路を更生するものとしては、赤錆等の発生した給水管を取り替えることなく、そのままの状態で管内面に付着した錆瘤,スケール等を、天然石の特殊砂を研磨材として、高速旋回気流により圧送してクリーニングした後、防錆エポキシライニング塗料を管内部へ高速,高圧気流を利用して圧送することにより、管内面を均一にライニングすることができる、としているものが知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−239488号公報(第3頁右欄、図4、図5)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術における既設給水管の管路更生工法においては、管内面のクリーニング工程は、高速旋回気流により研磨材を圧送して行うものであるから、赤錆等の付着物は除去が可能であるとしても、錆瘤等の固着物は除去し難いばかりでなく、大容量の気流発生装置を要すると共に、研磨材の使用量が増大する、という不都合があった。
【0005】
また、管内面のライニング工程は、高速,高圧気流により管内部へライニング塗料を圧送して行うものであるから、管路更生の対象である管径が小径の場合はともかくとしても、管径が大径になるにしたがって、管内部へのライニング層の肉厚に上部薄・下部厚の傾向が顕著に現われると共に、クリーニング工程を終えても錆瘤等の固着物が残存している場合や、管路に管内リセス部等の凹段部がある場合には、これら固着物や凹段部がライニング塗料の流動の障害となり、これが管路の上部側に塗り残し部を生じる原因となる、という不都合があった。
【0006】
本発明は、上記従来の技術における不都合を解決するもので、比較的に大径の横管に全体的に厚肉で凹段部にも漏れのないライニング層を形成する既設横管の管路更生工法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、既設横管内に牽引手段により管軸方向に所定間隔を置いて配設された回転翼を支持脚で移動可能に装入し、差圧により生じる管内気流により回転翼を回動させると共に気流に研磨材を混合し、回動する回転翼により研磨材を管内面に衝突させて管内面の赤錆等の付着物を研磨除去する研磨クリーニング工程と、研磨クリーニングされた管内にタービンで回動するチップハンマーを牽引手段により移動可能に装入し、差圧により生じる管内気流によりタービンを駆動させると共にチップハンマーを回動させて管内面の錆瘤等の固着物を叩落除去する叩落クリーニング工程と、叩落クリーニングされた管内にライニング材及びピグを装入し、差圧により生じる管内気流によりライニング材及びピグを移動させて管内面にライニング層を形成するピグライニング工程と、ピグライニングにより管内面に形成されたライニング層を構成するライニング材を差圧により生じる管内気流により流動させて管内リセス部等の凹段部にライニング層を形成する流動ライニング工程とを含むものである。
【0008】
請求項1に係る発明によれば、管内気流による回転翼の回動により研磨材を管内面に衝突させて管内面の赤錆等の付着物を研磨除去する研磨クリーニングと、研磨クリーニングにおいて残置された管内面の錆瘤等の固着物を管内気流によるタービンの駆動によりチップハンマーを回動させて叩落除去する叩落クリーニングとの連係クリーニングにより、滑らかな管内径を確保することができると共に、この連係クリーニングにより確保された滑らかな管内径に、管内気流によりライニング材及びピグを移動させてピグによりライニング層を形成するピグライニングにより、比較的に大径の横管に厚肉のライニング層を形成することができ、この厚肉のライニング層に形成されたライニング材を管内気流により流動させる流動ライニングにより、管内リセス部等の凹段部にも漏れなくライニング層を形成することができる。
【0009】
すなわち、研磨材により管内面の赤錆等の付着物を研磨除去する研磨クリーニングと、チップハンマーにより管内面の錆瘤等の固着物を叩落除去する叩落クリーニングとの連係クリーニングにより、滑らかな管内径を確保することができ、確保された滑らかな管内径に対して厚肉のライニング層を形成するピグライニングと、厚肉のライニング層のライニング材を流動する流動ライニングとの連係ライニングによって、比較的に大径の横管に全体的に厚肉で凹段部にも漏れのないライニング層を形成することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明をその実施の形態について図面に示した一実施例を参照して説明する。
本発明は、例えば集合住宅における立主管から本管に連通する排水横主管等の管径が比較的に大径の老朽化した既設横管の更生に適用される既設横管の管路更生工法であり、図1(イ)に示す既設横管P内において、差圧により生じる管内気流Vで回動する回転翼1により研磨材を管内面に衝突させて管内面の赤錆等の付着物を研磨除去する研磨クリーニング工程Aと、図1(ロ)に示す研磨クリーニングされた管内において、差圧により生じる管内気流Vでタービン7を駆動させると共にチップハンマー9を回動させて管内面の錆瘤等の固着物を叩落除去する叩落クリーニング工程Bと、図1(ハ)に示す叩落クリーニングされた管内において、差圧により生じる管内気流Vでライニング材17及びピグ18を移動させて管内面にライニング層19を形成するピグライニング工程Cと、図1(ニ)に示すピグライニングされた管内において、差圧により生じる管内気流Vで管内面に形成されたライニング層19を構成するライニング材17を流動させて管内リセス部等の凹段部P1’にライニング層19を形成する流動ライニング工程Dとを含むものである。
【0011】
先ず、本発明における研磨クリーニング工程Aについて、図1(イ)に基づいて説明する。
研磨クリーニング工程Aに使用される研磨治具は、牽引軸2の前方側(図1においては、図示しない吸引装置の吸引による管内気流Vは左側から右側へ流れ、右側が前方で左側が後方として示されている。)に回動自在に枢着され、牽引軸2に対して45度に傾斜した複数の回転翼1と、基部が牽引軸2の後方側に固着され、先端部が三方の放射方向に延び前方側に傾斜して既設横管Pの内面に当接する支持脚3と、牽引軸2の前後端部に設けられた接続環4とから治具ユニットが構成され、この治具ユニットの複数が各接続環4を連結する連結杆5により前後方向に列設されて構成されており、さらに研磨治具には最後端の治具ユニットにおける牽引軸2の後端部に設けられた接続環4に牽引手段としての牽引索6が接続されている。
【0012】
研磨治具は上述のように構成されており、既設横管P内を研磨クリーニングするにあたっては、横管Pにおける前方側の開口端に図示しない吸引装置を接続し、吸引装置を作動することにより差圧により管内気流Vを生起させた後に、横管Pにおける後方側の開口端から最先端の治具ユニットを先頭にして回転翼1を支持脚3により横管Pの内面に支持させた状態で管内気流Vと共に研磨治具を横管P内に装入し、牽引索6により研磨治具を管内気流Vに対して牽引状態に維持させる。
【0013】
この状態においては回転翼1は管内気流Vにより回動状態にあり、横管Pにおける後方側の開口端から研磨材を管内気流Vに混合させると、回動状態にある回転翼1により研磨材を横管Pの内面に衝突させ、この研磨材の横管P内面への衝突により横管P内面の赤錆等の付着物は研磨除去される。
【0014】
この研磨材による研磨除去は、前後方向に列設されている複数の治具ユニットの各回転翼1により順次繰り返して行われると共に、管内気流Vに対して研磨治具を牽引している牽引索6を送り出すことより横管Pの全長に亘って研磨クリーニングすることができる。そして、研磨クリーニングによって研磨除去された付着物は研磨材と共に管内気流Vにより吸引装置へ回収することができる。なお、研磨クリーニングは、牽引索6の送り出しによる研磨治具の前進移動だけでなく、牽引索6の牽引による研磨治具の後進移動あるいは前後進の繰り返し移動によってもよい。
【0015】
次に、本発明における叩落クリーニング工程Bについて、図1(ロ)に基づいて説明する。
叩落クリーニング工程Bに使用される叩落治具は、横管Pの管路内面に支持されて管軸方向に移動可能であり、管内気流Vにより出力軸8に回転駆動力を出力するタービン7と、タービン7の出力軸8により横管Pの内面に当接しながら回動するチップハンマー9と、タービン7の出力軸8の両端部をそれぞれ回動支持部材12,12を介して支持杆11,11により回動可能に支持すると共に各支持杆11,11を横管Pの内面に対して移動可能に案内するための周囲に軸方向の通気溝10’を有する球状のガイド部材10,10とにより構成されており、叩落治具は、横管Pの管路に装入された状態で治具の前後端部に位置する各支持杆11,11に接続されている牽引手段としての牽引索14,14の前部側の牽引索14が横管Pの外部に設置される巻取りウインチ15により牽引され、後部側の牽引索14が横管Pの外部に設置される送出しウインチ16により牽引されるようになっている。
【0016】
叩落治具におけるタービン7は、図2にその詳細が示されており、横管Pより小径に形成されている筒状の胴部71と、胴部71の両端開口部に位置して複数の通気孔73を有する端壁部72,72と、各端壁部72,72の中心部に回動自在に枢支された出力軸8と、出力軸8に固着された複数の回転翼74と、胴部71に固定されて出力軸8を枢支する固定翼75とにより構成され、タービン7の前後部には横管Pの内面に当接する複数の支持脚76が放射位置に配設され、タービン7は支持脚76により支持され横管Pの管路を移動できるようになっている。なお、タービン7は出力軸8同士をユニバーサルジョイント13により接続した2連のタービン7,7としてもよい。
【0017】
叩落治具におけるチップハンマー9は、図3にその詳細が示されており、タービン7の前方側に延出された出力軸8を中心として対角方向に延びる伝動腕81が軸方向に間隔を置いて固設されており、両伝動腕81,81間には出力軸8に対して対称的に偏芯した支持軸82,82が架設され、各支持軸82,82にはそれぞれ先端に叩打部91が設けられた複数のチップハンマー9の基部がカラー83により間隔を置いて揺動自在に枢着され、各チップハンマー9は出力軸8の回動時に、出力軸8を中心とした遠心力による回動径の拡径変動により、先端に設けられた叩打部91が横管Pの内周面に当接しながら回動するようになっている。なお、チップハンマー9の叩打部91における横管Pの内周面への当接面には複数の叩打歯92が設けられている。
【0018】
また、図4に他の形式のチップハンマー9’が示されており、このチップハンマー9’には支持軸82に枢着される基部の外周部における適所にストッパ93が突設され、伝動腕81にはストッパ93に対応する位置にピン84が植設されており、出力軸8の回動時におけるチップハンマー9’の叩打部91が拡径変動により横管Pの内周面に当接する際に、チップハンマー9’のストッパ93が伝動腕81のピン84に当接して、チップハンマー9’の叩打部91が必要以上に拡径しないようになっている。これにより、チップハンマー9’の回動時に叩打部91が管内面に対して食い込まない範囲内で支持軸82に対して回動を阻止することができるから、チップハンマー9の叩打部91はストッパ93とピン84とによるストッパ手段により、管内面の錆瘤等の固着物を一定の叩打力で叩落させることができ、管内面を滑らかにクリーニングすることができる。
【0019】
叩落治具は上述のように構成されており、既設横管P内を叩落クリーニングするにあたっては、横管Pにおける前方側の開口部に図示しない吸引装置を接続し、吸引装置を作動することにより差圧により管内気流Vを生起させ、この管内気流を利用して図示しない通線治具により先ず牽引索14を通線させて吸引装置の作動を停止する。通線させた牽引索14の前端を横管Pの外部に設置されている巻取りウインチ15に接続すると共に、牽引索14の後端を叩落治具の前端部に位置する支持杆11に接続し、また、叩落治具の後端部に位置する支持杆11に横管Pの外部に設置されている送出しウインチ16に巻取られている牽引索14の前端を接続し、巻取りウインチ15により牽引索14を巻取ることにより叩落治具を横管Pの管路に装入して、巻取りウインチ15と送出しウインチ16とにより叩落治具を牽引状態に維持させる。
【0020】
この状態において吸引装置を作動させ差圧により管内気流Vを生起させると、管内気流Vによるタービン7の駆動により出力軸8と共にチップハンマー9が回動し、チップハンマー9はタービン7の出力軸8に対して偏芯した支持軸82に枢着されているものであるから、チップハンマー9は出力軸8を中心とした回動の初期においては自重により支持軸82を中心に揺動し、チップハンマー9の出力軸8を中心とした回動径の縮径変動によりタービン7の立ち上げを早めることができ、また、チップハンマー9に所定の遠心力が生起された際には出力軸8を中心とした回動径の拡径変動により、チップハンマー9の叩打部91で管内面の錆瘤等の固着物を叩落除去させることができる。
【0021】
このチップハンマー9による叩落除去は、横管P内の管軸方向にカラー83により所定間隔を置いて配設されている複数のチップハンマー9によるものであるから、巻取りウインチ15と送出しウインチ16とにより牽引される牽引索14によるチップハンマー9の管軸方向への移動に際し、管内面の錆瘤等の固着物を繰り返し叩打することにより漏れなく叩落させることができるので、管内面を滑らかに且つ迅速にクリーニングすることができる。そして、叩落クリーニングによって叩落除去された固着物は管内気流Vにより吸引装置へ回収することができる。なお、叩落クリーニングは、巻取りウインチ15と送出しウインチ16とにより牽引される牽引索14の巻取り送出しによる叩落治具の前進移動だけでなく、叩落治具の後進移動あるいは前後進の繰り返し移動によってもよい。
【0022】
さらに、本発明におけるピグライニング工程Cについて、図1(ハ)に基づいて説明する。
ピグライニング工程Cは、横管P内面の赤錆等の付着物を研磨除去する研磨クリーニングと、横管P内面の錆瘤等の固着物を叩落除去する叩落クリーニングとの連係クリーニングにより確保された滑らかな管内径に対して、ピグ18を用いた吸引ライニングにより厚肉のライニング層19を形成するものであり、このピグライニングには3連のピグ18が使用される。
【0023】
既設横管P内をピグライニングするにあたっては、研磨クリーニングと叩落クリーニングとの連係クリーニングにより確保された滑らかな管内の後方側の開口端から、ビニルエステル樹脂等からなるライニング材17とピグ18とを順次に装入し、横管Pにおける前方側の開口端に図示しない吸引装置を接続し、吸引装置の吸引による差圧によって生じる管内気流Vによりライニング材17及びピグ18を移動させて管内面にライニング層19を形成するものであり、滑らかな管内面に対してライニング層19側の管内気圧を低圧の状態でピグライニングすることができるから、比較的に大径の横管Pにライニング層19を滑らかな厚肉に形成することができる。また、ピグ18を用いた吸引ライニングであるから、横管Pの分岐部に対するライニング材17の流出を抑えることができる。
【0024】
最終工程として、本発明における流動ライニング工程Dについて、図1(ニ)に基づいて説明する。
流動ライニング工程Dは、ピグライニングにより管内面に形成された厚肉のライニング層19に対して、引き続き差圧により生じる管内気流Vによりライニング層19を構成するライニング材17を流動させるものであり、これにより、管内リセス部P1等の凹段部P1’にライニング層19を形成することができる。なお、流動ライニングに使用される差圧により生じる管内気流Vは、横管Pにおける前方側の開口部に吸引装置を接続した前方向に流れる管内気流Vであってもよく、また、横管Pにおける後方側の開口部に吸引装置を接続した後方向に流れる管内気流Vであってもよい。
【0025】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成されており、研磨材により管内面の赤錆等の付着物を研磨除去する研磨クリーニングと、チップハンマーにより管内面の錆瘤等の固着物を叩落除去する叩落クリーニングとの連係クリーニングにより、滑らかな管内径を確保することができ、確保された滑らかな管内径に対して厚肉ライニング層を形成するピグライニングと、厚肉ライニング層のライニング材を流動する流動ライニングとの連係ライニングによって、比較的に大径の横管に全体的に厚肉で凹段部にも漏れのないライニング層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である既設横管の管路更生工法における各工程を示す説明図で、(イ)図は研磨クリーニング工程の説明図であり、(ロ)図は叩落クリーニング工程の説明図であり、(ハ)図はピグライニング工程の説明図であり、(ニ)図は流動ライニング工程の説明図である。
【図2】タービンとチップハンマーの説明図である。
【図3】チップハンマーの正面図である。
【図4】チップハンマーの他例を示す正面図である。
【符号の説明】
1 回転翼
3 支持脚
6 牽引手段としての牽引索
7 タービン
8 出力軸
82 支持軸
9 チップハンマー
91 叩打部
14 牽引手段としての牽引索
17 ライニング材
18 ピグ
19 ライニング層
A 研磨クリーニング工程
B 叩落クリーニング工程
C ピグライニング工程
D 流動ライニング工程
P 既設横管
P1’凹段部
V 管内気流
Claims (1)
- 既設横管内に牽引手段により管軸方向に所定間隔を置いて配設された回転翼を支持脚で移動可能に装入し、差圧により生じる管内気流により回転翼を回動させると共に気流に研磨材を混合し、回動する回転翼により研磨材を管内面に衝突させて管内面の赤錆等の付着物を研磨除去する研磨クリーニング工程と、研磨クリーニングされた管内にタービンで回動するチップハンマーを牽引手段により移動可能に装入し、差圧により生じる管内気流によりタービンを駆動させると共にチップハンマーを回動させて管内面の錆瘤等の固着物を叩落除去する叩落クリーニング工程と、叩落クリーニングされた管内にライニング材及びピグを装入し、差圧により生じる管内気流によりライニング材及びピグを移動させて管内面にライニング層を形成するピグライニング工程と、ピグライニングにより管内面に形成されたライニング層を構成するライニング材を差圧により生じる管内気流により流動させて管内リセス部等の凹段部にライニング層を形成する流動ライニング工程とを含むことを特徴とする既設横管の管路更生工法。
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