JP4179452B2 - LiNbO3配向性薄膜形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光導波路や機能性光学部品に用いられるLiNbO光学薄膜の作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
LiNbO(以下、LNという)のバルク結晶は、音響光学効果、電気光学効果、非線形光学効果、ピエゾ電気効果など数々の特性を有する機能性材料として、SAW(弾性表面波)デバイス、光変調器、光スイッチ、波長変換器などに広く応用されている。一方、LN薄膜を異種基板上に成膜して、バルク結晶と同様な機能を持たせることを目的とした試みが行われている。LN薄膜の代表的な形成方法として、RF(radio frequency)スパッタ法、マグネトロンスパッタ法、ECR(electron cycrotron resonance)スパッタ法、有機金属気相成長法、ゾル-ゲル法、レーザースパッタ法などが使われている。
【0003】
LN薄膜を光導波路のコアとして用いるには、LNよりも低屈折率の材料をクラッド層として、その上にLNの薄膜を形成する必要がある。上記のLN薄膜形成方法の大部分では、サファイア基板を使用していた。サファイア基板は、LN結晶と格子整合が取れて、しかも低屈折率であるために用いられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のLN薄膜形成方法には、次のような問題点がある。上記のLN薄膜の形成方法によると、サファイア基板上以外では良好なLN結晶が得られない。つまり、作製される光デバイスは、サファイア基板上のものに限られることになる。
【0005】
ところが最近、シリコンとSiOの間の高屈折率差を利用した微小光回路が、光デバイスの微細化に有効であることが認識され始めた。このようなシリコン系の材料と親和性を有するLN結晶薄膜を組み込めれば、LNに特有な機能を微小光回路の一部に付与することが可能になる。その意味において、LNよりも低屈折率のSiOの上にLN配向結晶膜を形成することが重要である。
【0006】
しかし、SiOは本来無定形なため、堆積するLN膜との格子整合を取ることができない。また、結晶性の基板に比べて表面の平坦性が低く、結晶成長する向きが揃いにくいという本質的問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決し、高い配向性をもつLN結晶膜を石英基板などに形成することができるLiNbO配向性薄膜形成方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、石英基板またはSiO膜上にアモルファス状態のLiNbO膜をECRプラズマスパッタ法により堆積する第1の工程と、第1の工程で堆積したLiNbO膜を、1×10−7Torrの高真空下において、500℃以上600℃以下の温度で加熱して、C軸配向したLiNbO結晶薄膜を形成する第2の工程とを含むことを特徴とするLiNbO配向性薄膜形成方法である。
【0009】
上記の方法により、SiO上に<001>方向へ高配向したLN結晶薄膜を得ることが可能になった。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のLiNbO配向性薄膜形成方法において、第2の工程では、第1の工程で堆積したLiNbO 膜の上に保護膜を付けた後に加熱することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。本実施の形態による薄膜形成方法は第1の工程と第2の工程とを含む。第1の工程では、SiO基板(石英基板)またはSiO膜上に、アモルファス状態のLN膜(LiNbO膜)をECRプラズマスパッタ法により堆積する。この後の第2の工程では、石英基板またはSiO膜上のLN膜を500℃以上の温度で加熱して、C軸配向したLN結晶薄膜を形成する。
【0012】
C軸配向したLN結晶薄膜が形成されるのは、以下のとおりである。まず、LNの結晶化温度において、SiO基板上に連続的にLN膜を成膜する場合を考える。LN膜は大域的には、表面垂直方向に分極の方向を一致させながら、すなわちC軸配向して成長する傾向がある。
【0013】
しかし、ミクロに見れば、原子レベルでの局所的な表面形状を反映して、C軸の方向がマクロな表面垂直方向とずれる箇所も多数発生すると考えられる。また、場合によっては、全く異なる方位へ成長することも予想される。これは結晶化温度(500〜600℃)においては、原子の表面マイグレーションの速度が十分大きいため、表面のラフネスを直接反映した形で成長が進行するためである。このことは、基板温度と酸素流量とを非常に正確に制御し、しかも、同一のSiO基板を使用しないと、表面終端の状態やラフネスについて再現性ある結果が得られないことを示唆している。
【0014】
一方、あらかじめ低温でアモルファス状のLN膜を堆積しておき、真空中で加熱して結晶化させる方法(固相成長)においては、連続成長とは全く異なる結晶化の機構が働く。この場合、SiO/LN界面からLN膜表面までぎっしりと原子が詰まっており、膜中の原子も界面付近の原子も自由な動きが阻害された状態にある。
【0015】
したがって、結晶化はLN膜全体としての化学ポテンシャルを最小にするような結晶方位を取るように進行する。この点は、LN膜表面における核生成やマイグレーションが成長機構を支配する連続的な結晶成長の場合と本質的に異なる。層状の薄膜にとっては、分極方向(C軸)を表面垂直方向へ向けることが薄膜全体にとってエネルギー的に安定な方向であるため、その方向へ配向したものが得られることになる。
【0016】
このような固相成長においては、最初に堆積したLN膜が定組成のLiNbOであったとしても、加熱中に薄膜の一部がLiO分子へ分解・熱脱離して、組成がLi不足になることが考えられる。これを防止するには、LN薄膜を導波路のコアとして使用する場合を想定して、あらかじめ上部をSiOなどのクラッド層として使える材料で被覆しておく。この後、被覆したLN薄膜に加熱処理を施して、結晶化を促進させると、組成の崩れのないLN結晶膜を得ることができる。
【0017】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例について詳しく説明する。
まず、本実施例とは異なる工程によってLN薄膜を生成する場合について説明する。図1にECRプラズマスパッタ法により、SiO基板上に連続成膜したLN薄膜(膜厚300nm)のX線回折スペクトルを示す。スパッタガスとしてアルゴンと酸素の混合気体を用い、酸素流量0.5sccm、基板温度460℃の条件で連続的にLN薄膜を成長させた。SiO基板を構成しているSi−O結合の動径分布を示す21°付近のブロードなピークの他に、LN膜が<001>配向していることを示す<006>反射(38.9°)、<0012>反射(83.5°)だけが観測されている。これ以外の成膜条件では、LiNbOの単一組成で<001>方向だけに配向した薄膜を得られなかった。
【0018】
このように、成膜条件がシビアなことは、SiO表面における原子のマイグレーションや反応が表面のミクロなラフネスを通して結晶構造に大きく影響することを意味している。
【0019】
つぎに、本実施例によりLN薄膜を生成する場合について説明する。図2は、第1の工程で、室温で膜厚300nmのLNアモルファス薄膜を堆積した後、第2の工程で、1×10−7Torr程度の高真空下において、600℃で3時間の加熱処理した薄膜のX線回折スペクトルである。図1と比較すると、<006>ピークの強度が増大していて、<001>配向の度合いが高まったことを示している。このことを定量的に評価するために、2θ=38.9°の条件で取得した、LNの<006>回折スポットのロッキングカーブを測定したのが図3である。明らかに、結晶化温度における連続的な成長よりも(図1)、固相成長で結晶化したものの方が狭い半値幅(5°)を示し、<001>配向の度合いが高いことが分かる。
【0020】
LNアモルファス薄膜を堆積した後、加熱処理の温度による<001>配向の度合いを図4に示す。加熱処理の温度は、先に述べた460℃より高い温度、つまり500℃以上であればよい。特に、600℃(測定点A)で最も配向の度合いが高くなることが示されている。
【0021】
なお、図2のX線回折スペクトルには、<006>反射の隣にLiNb相の生成を示す<602>反射点が弱いながら観測されている。これは、600℃に加熱している最中にLN膜からLiOが分解して、膜中から脱離したためである。このような組成の崩れを防ぐためには、LN膜上を保護膜で覆っておき、LiOの脱離を阻止することが有効である。この場合の保護膜としては、SiO膜、Al膜、ZnO膜などが考えられる。
【0022】
上記結果は、SiO基板を用いた場合であるが、例えば熱酸化シリコン膜についても同様に、固相成長の方が連続成長よりも高い配向性を有することが示され、SiOという材料に共通した傾向が確認された。また、上記結果は、成膜方法としてECRスパッタ法を使用した
【0023】
このように、SiO基板上への高配向LiNbO薄膜の形成、つまり、石英基板上にC軸配向をしたLiNbOの形成が、本発明により初めて可能となった。この結果、シリコン系の材料と親和性を有するLN結晶薄膜を組み込むことができるので、LNに特有な機能を微小光回路の一部に付与することが可能になる。
【0024】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、石英基板上またはSiO上に堆積したアモルファス状態のLiNbO膜を加熱するので、石英基板上またはSiO上に、<001>方向へ高配向したLiNbO結晶薄膜を得ることが可能になった。
【0025】
また、本発明によれば、LiNbO膜の上に保護膜を付けた後に加熱するので、膜中からのLiO分子の蒸発による組成変化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】石英基板上へ460℃で連続的に成長させたLN薄膜のX線回折スペクトルを示す図である。
【図2】石英基板上へ室温でアモルファス状態のLN薄膜を堆積した後、高真空下において600℃で3時間の加熱処理を施した結晶薄膜のX線回折スペクトルを示す図である。
【図3】図1、2の薄膜の<006>反射点のロッキングカーブを示す図である。
【図4】LNアモルファス薄膜を堆積した後、加熱処理の温度による<001>配向の度合いを示す図である。
【符号の説明】
A 測定点

Claims (2)

  1. 石英基板またはSiO膜上にアモルファス状態のLiNbO膜をECRプラズマスパッタ法により堆積する第1の工程と、
    第1の工程で堆積したLiNbO膜を、1×10−7Torrの高真空下において、500℃以上600℃以下の温度で加熱して、C軸配向したLiNbO結晶薄膜を形成する第2の工程とを含むことを特徴とするLiNbO配向性薄膜形成方法。
  2. 第2の工程では、第1の工程で堆積したLiNbO膜の上に保護膜を付けた後に加熱することを特徴とする請求項1に記載のLiNbO配向性薄膜形成方法。
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