JP2008069058A - LiNbO3エピタキシャル膜の形成方法 - Google Patents

LiNbO3エピタキシャル膜の形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】格子定数の不一致の問題を解消した状態で、Al23単結晶基板の上に、LiNbO3厚膜をエピタキシャル成長させる。
【解決手段】主表面がC面とされてこの主表面を清浄化したAl23単結晶基板101の上に非晶質のニオブ酸リチウム(Li1-xNbO3)からなる非晶質層112をスパッタ法により形成し、次に、非晶質層112を10-5Pa台の高真空とした処理室内で600〜700℃程度に加熱することで結晶化させ、この後、結晶化層102の上にスパッタ法によりLiNbO3を結晶成長させてLiNbO3結晶膜103を形成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光通信や光エレクトロニクス分野で用いられる波長変換素子、電気光学変調器、光電界センサ、SHGレーザーなどの基幹材料であるLiNbO3エピタキシャル膜の形成方法に関するものである。
ニオブ酸リチウム(LiNbO3)結晶は、電気光学効果や非線形光学効果などを備え、これらの機能を使った機能光デバイスへと応用されている。このようなデバイスは、一般に、LiNbO3単結晶基板を用いて作製されている。また、サファイア(Al23)単結晶基板の上に結晶成長したLiNbO3結晶膜をバルク単結晶の代わりに用い、上述したデバイスを作製する技術も存在する。このように、Al23単結晶基板の上に良質なLiNbO3の結晶膜が得られるのであれば、得られたLiNbO3結晶膜と基板との間の屈折率差は十分に大きいため、伝播光はLiNbO3結晶膜内に強く閉じ込められる。このメリットを活かす応用例は複数存在する。例えば、波長変換素子においては、狭いLiNbO3光導波路に光を集中させることで、変換効率を飛躍的に高めることができる。あるいは、LiNbO3の電気光学効果を利用したデバイスにおいては、低印加電圧においてもLiNbO3光導波路内に実効的に高電界を誘起できるため、素子の低電圧駆動、高集積化が可能となる。
これらのような特徴を備えるLiNbO3結晶膜の有力な形成法として、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマスパッタ法がある(非特許文献1参照)。ECRプラズマは、ガス分子の励起効率が高いため、酸素ガスを導入した場合には高密度の酸素ラジカルが生成する。このため、ECRプラズマスパッタ法による酸化物の成膜においては、酸素の原子層を完成するのに十分な数の酸素原子が成長表面へ供給される。さらに、基板へのプラズマ照射に伴い、表面原子の拡散が促進される。これらの特徴により、原子レベルで平坦な表面を持つ基板の上であれば、容易にc軸優先配向の高品質なLiNbO3結晶膜を形成することができる。
特開平05−171435号公報 特開平08−078333号公報 特開2005−350706号公報 H.Akazawa and M.Shimada, "Electron cyclotron resonance plasma sputtering growth of textured films of c-axis-oriented LiNbO3 on Si(100) and Si(111) surfaces", J. Vac. Sci. Technol. ,A22(4), pp.1793-1798, 2004.
ところで、Al23単結晶のC面とLiNbO3のC面とは、共に六角形(六方晶系)状の原子配列をしている。Al23単結晶のa軸長は47.6nm、LiNbO3のa軸長は51.5nmであるので、格子定数の違いは7%である。このような関係にあるAl23単結晶のC面にLiNbO3の膜を形成すると、成膜開始後、初期の段階では、格子定数が一致した状態、すなわちLiNbO3の格子が圧縮歪みを受けた状態で膜の成長が進行する。この後、成膜を継続すると、膜厚が大きくなるに従ってある時点で格子歪みが限界値を超え、多数のミスフィット転移が形成されて内在していた歪みが緩和され、薄膜がドメインに分割されてしまう。
さらに深刻な問題は、LiNbO3膜の膜厚が大きくなると、Al23単結晶とLiNbO3の熱膨張係数の違いから、成膜した後の冷却過程において、LiNbO3の膜中にクラックが生成することである。光導波路に粒界やクラックが存在すると、光の散乱が起きるために伝播損失が大きくなり、問題となる。従って、これらの問題を解消するためには、膜を形成するときに発生するミスフィット転移の生成を防止する必要がある。ミスフィット転移の生成を防止するには、成膜する材料と結晶基板の格子定数が一致する系を選択することが最も良い解決手段である。
例えば、代表的な強誘電体であるPb(Zr,Ti)O3については、SrTiO3(001)基板との間に若干の格子定数の違いがあるが、La原子を導入して四元系材料Pb1-xLax(Zr,Ti)O3(PLZT)とすれば格子定数が可変であり、格子定数を一致させることができる。従って、SrTiO3(001)基板の格子定数と正確に一致するようにLa濃度を調整することで、格子歪みのないエピタキシャル成長が可能である。
しかしながら、SrTiO3基板は、現時点では非常に高価であり、1cm角程度の面積の基板しか普及していないため、上記技術では大面積の集積光デバイスの作製が容易ではない。このため、比較的安価なサファイアなどのAl23単結晶基板の上に、代表的な光エレクトロニクス材料であるLiNbO3厚膜を、格子定数の不一致の問題を解消してエピタキシャル成長させる手法が望まれている。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、格子定数の不一致の問題を解消した状態で、Al23単結晶基板の上に、LiNbO3厚膜をエピタキシャル成長させることを目的とする。
本発明に係るLiNbO3エピタキシャル膜の形成方法は、主表面がC面とされたAl23の単結晶からなる基板の上に、スパッタ法によりニオブ酸リチウムを堆積することで、主表面に接して非晶質状態のニオブ酸リチウムからなる非晶質層が形成された状態とする第1工程と、非晶質層を加熱して結晶化させることで、基板の主表面に接して結晶化層が形成された状態とする第2工程と、結晶化層の上にスパッタ法によりニオブ酸リチウムを堆積することで、結晶化層の上に接してニオブ酸リチウムの単結晶からなる結晶膜が形成された状態とする第3工程とを少なくとも備え、第3工程では、結晶化層の上に堆積するニオブ酸リチウムが結晶化する温度に、基板を加熱するようにしたものである。結晶化層は、複数のc軸に配向したドメインから構成されたものとなる。
上記LiNbO3エピタキシャル膜の形成方法において、第1工程では、非晶質層におけるLiの含有量がNbの含有量を超えない範囲となる条件のスパッタ法により、非晶質層を形成する。例えば、第1工程では、LiNbO3からなるターゲットを用いたECRプラズマスパッタ法により、非晶質層を形成すればよい。
また、上記LiNbO3エピタキシャル膜の形成方法において、第3工程では、LiNbO3からなるターゲットによるスパッタとLiO2からなるターゲットによるスパッタとを同時に行うことで、結晶膜が形成された状態とするとよい。
以上説明したように、本発明では、主表面がC面とされたAl23の単結晶からなる基板の上に、スパッタ法により非晶質状態のニオブ酸リチウムからなる非晶質層を形成してこれを加熱して結晶化して結晶化層とし、この上にスパッタ法によりニオブ酸リチウムを堆積して結晶膜を形成するようにしたので、結晶膜は、複数のc軸に配向したドメインから構成された結晶層の上に形成されるものとなる。この結果、本発明によれば、格子定数の不一致の問題を解消して、Al23単結晶基板の上に、LiNbO3厚膜をエピタキシャル成長させることができるという優れた効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るLiNbO3エピタキシャル膜の形成方法を説明するための工程図である。先ず、図1(a)に示すように、主表面がC面とされてこの主表面を清浄化したAl23単結晶基板101を用意する。例えば、サファイアを用いればよい。次に、図1(b)に示すように、Al23単結晶基板101の上に非晶質のニオブ酸リチウム(Li1-xNbO3)からなる非晶質層112が形成された状態とする。非晶質層112は、膜厚140nm程度形成すればよい。
ここで、非晶質層112の形成は、スパッタ法により行う。例えば、非晶質層112の形成は、ECRプラズマスパッタ法により行えばよい(特許文献1,2参照)。また、ターゲットとしては、LiNbO3よりなるターゲット(LiNbO3ターゲット)を用いればよい。ECRプラズマスパッタ法では、よく知られているように、基板加熱をしなくても、ECRプラズマの照射により基板表面の温度が150℃程度にまで上昇するが、この温度では、Al23単結晶基板101の主表面に堆積するニオブ酸リチウムの結晶化は起こらない。
次に、非晶質層112を10-5Pa台の高真空とした処理室内で600〜700℃程度に加熱することで結晶化させ、図1(c)に示すように、Al23単結晶基板101の上に結晶化されたニオブ酸リチウム(Li1-xNbO3)からなる結晶化層102が形成された状態とする。例えば、650℃・10分の条件で、加熱処理して結晶化層102を形成すればよい。この結晶化の加熱では、温度が低すぎると結晶化が十分に得られず、温度が高すぎると、膜中よりLi原子の再蒸発が発生してLi欠損の度合いが高くなる。Li原子の再蒸発を抑制する観点では、加熱温度を600℃とした場合は、20分程度で結晶化が完了し、加熱温度を700℃とした場合は、10分程度で結晶化が完了することが望ましい。このようにして形成された結晶化層102は、後述するように、複数のc軸配向ドメインから構成され、結晶化層102の上部の格子定数がLiNbO3結晶の本来の格子定数に近いものとなる。
次に、結晶化することで得られた結晶化層102の上にスパッタ法によりLiNbO3を結晶成長させ、図1(d)に示すように、LiNbO3結晶膜103が形成された状態とする。基板温度条件と500〜550℃程度としたECRプラズマスパッタ法により、LiNbO3を結晶成長させればよい。このようにして形成されたLiNbO3結晶膜103によれば、前述したように格子定数がLiNbO3結晶の本来の格子定数に近い状態とされた結晶化層102の上に形成されるため、格子ひずみなどが入らす、膜厚を厚くしても結晶性の高い高品位な状態が得られる。
ところで、LiNbO3結晶膜103の形成では、LiNbO3ターゲットとLiO2ターゲットとの2つのターゲットを用いることで、形成される結晶膜における酸素欠損を抑制するために酸素供給量を多くした状態で、Li欠損を抑制できるようになる。このように、2つのターゲットを用いたスパッタによるLiNbO3結晶膜103の形成や、上述した非晶質層112の形成、結晶化の加熱による結晶化層102の形成は、例えば、図2に概略構成を示す成膜装置を用いることで、同一の装置内で連続して行うことが可能である(特許文献3参照)。
図2に示す成膜装置について簡単に説明すると、図示しない真空排気装置が連通した真空処理室201と、真空処理室201の内部に設けられたECRプラズマ源202と、ECRプラズマ源202より生成されたECRプラズマによるスパッタを行うためのLiNbO3ターゲット203とを備える。ECRプラズマ源202を動作させ、アルゴンガスを用いてECRプラズマを生成し、円筒型のLiNbO3ターゲット203にRFを印加することでLi,Nb,及びO原子がスパッタされ、これらが下流に位置する基板Wの表面に付着する。
また、図2に構成を示す成膜装置は、マグネトロンプラズマ発生部204と、マグネトロンプラズマ発生部204により生成されたプラズマによりスパッタを行うためのLiO2ターゲット205とを備え、これらが、導入部206により真空処理室201に接続されている。マグネトロンプラズマ発生部204によりアルゴンガスのプラズマを生成し、円板状のLiO2ターゲット205にRFを印加することで、LiO2ターゲット205のLi及びO原子がスパッタされ(RFマグネトロンスパッタ)、これらが下流に位置する基板Wの表面に付着する。
これらの構成により、LiNbO3ターゲット203よりスパッタされて飛び出た粒子と、LiO2ターゲット205よりスパッタされて飛び出た粒子とが、真空処理室201の内部に配置された処理対象の基板Wの膜形成面に堆積することが可能となる。また、真空処理室201には、酸素などの酸化ガスを導入するガス導入口207を備えている。なお、図2では、アルゴンなどのスパッタガスの導入については省略している。加えて、図2に構成を示す成膜装置は、基板Wを加熱する加熱機構208を備えている。
上述した構成の成膜装置によれば、先ず、ECRプラズマ源202及びLiNbO3ターゲット203を用いることで、非晶質層112が形成できる。例えば、酸素分圧1.7×10-3Pa、ECRプラズマ生成のためのマイクロ波のパワーは500W、LiNbO3ターゲット203へ印加するRFパワーは500W、基板加熱はしない条件で、膜厚140nm程度に非晶質層112を形成(堆積)すればよい。引き続いて、各ガスの供給を停止し、マイクロ波,RFの投入を停止した状態で、加熱機構208による加熱で、非晶質層112を結晶化して結晶化層102とすることができる。
引き続いて、ECRプラズマ源202及びLiNbO3ターゲット203とマグネトロンプラズマ発生部204及びLiO2ターゲット205と用い、加えて加熱機構208による加熱を行うことで、結晶化層102の上にLiNbO3結晶膜103を形成することができる。例えば、酸素分圧5×10-3Pa、ECRプラズマ生成のためのマイクロ波のパワーは500W、LiNbO3ターゲット203に印加するRFパワーは500W、LiO2ターゲット205に印加するRFパワーは80W、基板温度条件530℃の条件で、膜厚400nm程度にLiNbO3結晶膜103を形成(堆積)すればよい。また、これらの成膜において基板Wを回転させることにより、得られる薄膜の膜厚の均一性を確保することができる。
なお、非晶質層112及びLiNbO3結晶膜103の形成では、一定流量の酸素ガスをガス導入口207より真空処理室201の内部に導入し、導入した酸素を生成されているプラズマで励起し、励起された酸素が形成されている膜に取り込まれるようにする。ニオブ酸リチウムなどの酸化物の膜をスパッタ法で形成する場合、薄膜へ取り込まれる酸素原子が不足気味になるため、上述したように酸素を導入して膜中の酸素含有量を調節する。ただし、プラズマで励起された原子状酸素は、ターゲット表面及び薄膜表面のLi原子と結合してLi2Oを形成しやすいものとなる。このようにして形成されたLi2Oは、減圧された真空処理室201(成膜雰囲気)に蒸発しやすく、形成されているニオブ酸リチウム膜におけるLi不足を招くことになる。このように、スパッタ成膜中に供給される酸素流量とLi2Oのスパッタ速度とは相互に関連するため、酸素供給量は適切な値に設定する必要がある。
ところで、一般にECRスパッタ法を用いる方が、RFマグネトロンスパッタ法よりも低ダメージで、高品質な薄膜を得ることができる。従って、ECRスパッタ源を2基搭載し、LiNbO3ターゲットとLiO2ターゲットとの2つのターゲットを用いることができれば理想的である。しかしながら、2つのECRスパッタ源を隣接配置して同時に用いると、磁場が相互に干渉するため、2基のスパッタ源について同時にECR条件を満足させることができない。このため、前述したように、Li2Oターゲットの方は、RFマグネトロンスパッタ法を適用する。
また、次に示すことにより、Li2Oターゲットの方は、RFマグネトロンスパッタ法を用いても、形成されるLiNbO3結晶膜103の膜質を維持することが可能である。まずLi2Oターゲットからのスパッタは、正確な組成の合わせ込みを目的としており、大きなスパッタ速度を必要としない。また、E(eV)の荷電粒子の運動量は(2mE)1/2で与えられるため、Liのような質量の小さな原子については、成膜中の薄膜への衝突によるダメージの影響は相対的に小さいと考えられ。このため、可能な範囲で小さな出力とした状態で、Li2OターゲットはRFマグネトロンスパッタによりスパッタすれば、高品位なLiNbO3結晶膜103の形成が可能である。
次に、上述した実施の形態に係るLiNbO3エピタキシャル膜の形成方法について、より詳細に説明する。先ず、非晶質層112の形成、加熱による結晶化層102の形成、LiNbO3結晶膜103の形成と3段階で行うことの物理的な意味について説明する。スパッタによる成膜を高温で行い、堆積と同時に結晶化が進行する状態においては、図3(a)に示すように、主表面をC面とされたAl23単結晶基板301の上に形成されるニオブ酸リチウム膜302は、Al23単結晶C面と完全に格子が一体化して成長する。この結果、ニオブ酸リチウム膜302には図の矢印で示すような圧縮応力が働き、結晶格子はc軸方向へ若干伸びることになる。
ニオブ酸リチウム膜302の膜厚を増やしていくと、格子歪みによる応力が臨界値を超えたところで、主にミスフィット転位303の発生により応力が緩和する。基板に近い場所ほど欠陥が高密度に走った状態が、断面TEMにより実際に観測されている。また場合によっては、クラック304が発生することもある。成膜時の温度が低いほど、ミスフィット転位の発生は少なく、圧縮応力は膜内に蓄積される。これらの状態をエックス線回折により測定すると、図4に示すω−2θスキャンX線回折パタンに示すように、成膜温度が低いほど、LiNbO3の<006>回折ピークの位置が低い2θ角側、すなわち面間隔の大きな側へシフトしている。
なお、図4において、(a)は成膜温度400℃、(b)は成膜温度460℃、(c)は成膜温度530℃、(d),(e)は成膜温度650℃である。また、図4において、(a),(b),(c),(d)は,LiNbO3ターゲットのみを用いて各温度条件で結晶化しながらのスパッタにより形成した膜の測定結果である。また、図4(e)は、LiNbO3ターゲットのみを用いて非晶質膜を形成した後、650℃に加熱して結晶化した膜の測定結果であり、上述した結晶化層102の状態に等しい。なお、図4(f)は、前述した実施の形態の形成方法により形成したLiNbO3結晶膜103の測定結果である。
上述した図3(a)に示す状態に比較して、非晶質のニオブ酸リチウム薄膜を堆積しておき、これを真空中でアニール(加熱)して結晶化する固相エピタキシー法を使用すると、図3(b)に示すように、Al23単結晶基板301の上には、ドーム型の構造をした複数のc軸配向ドメイン305が形成される。また、これらの上部の隙間の領域306は、非晶質か、もしくはc軸とは異なった方向へ配向した結晶から構成されている。これは、次のように説明できる。もともと圧縮歪みのかかっていない非晶質膜をアニールすると、格子歪みが生じないように結晶化しようとするため、各ドメイン305とAl23単結晶基板301の主表面のC面との間には、格子のずれが生じ、領域306が形成される。この領域306により格子歪みが緩和していると考えられる。実際に、図4(e)のX線回折パタンに現れている回折ピークは、最も右側に位置しており、LiNbO3単結晶のピーク位置にほぼ等しい。
従って、図4(e)に示すようなエックス線回折パタンが得られるように、非晶質膜を形成しておいてこれをアニールして結晶化した結晶化層を形成しておくことで、Al23単結晶基板から伝わる格子歪みの効果を回避することができる。前述した実施の形態の形成方法に用に、Al23単結晶基板の上に非晶質膜を形成してこれをアニールして結晶化すると、この結晶化層にミスフィット転移などの欠陥が集中したとしても、結晶化層の上部の格子定数は、LiNbO3結晶の本来の格子定数に近いものになる。この上に、基板温度条件を結晶化温度として、スパッタ法によりニオブ酸リチウムを堆積すれば、形成されるLiNbO3結晶膜には、格子歪みは入らず、膜厚を厚く形成しても結晶性の高い高品質な薄膜が得られることになる。
次に、ECRプラズマスパッタ法について説明する。よく知られているように、ECRプラズマスパッタ法は、円筒型状のターゲットを用いるため、RFマグネトロンスパッタ法などに比べ、基板表面の上に高速の粒子が入射しにくく、低ダメージであるという特徴がある。また、前述した非晶質層112の形成において、形成される非晶質層112に部分的に密度の低い領域が形成されると、これを結晶化して得られる結晶化層102の表面の平坦性が低下(悪化)する。このような状態では、LiNbO3結晶膜103を形成するための良好な下地が得られているとは言えない。ECRプラズマスパッタ法によれば、このような問題も抑制できる。
またECRプラズマスパッタ法は、成膜中にスパッタ粒子だけでなく、プラズマ流も基板上に照射されるという特徴がある。このため、スパッタ時の温度が一定以上であれば、基板表面の結晶方位にあまり影響されない状態で、c軸方向へ強く配向した薄膜が得られるのが特徴である。このため、ECRプラズマスパッタ法を用いることで、高品質なLiNbO3結晶膜103が得られるようになる。
非晶質層112の組成に関する条件について説明する。先ず、以下に示すように試料を作製する。この試料の作製では、図2に概略構成を示した、ECRプラズマスパッタとRFマグネトロンスパッタとが同時に行える成膜装置を用いる。先ず、ECRプラズマスパッタにおいては、LiNbO3ターゲットにRFを500W、RFマグネトロンスパッタにおいては、Li2Oターゲットに20Wあるいは40W印加し、これらの同時スパッタで膜厚250nmのニオブ酸リチウム膜(非晶質状態)を得た。これらの試料を真空中において様々な温度で30分間アニールして結晶化させ、得られた試料からのLiNbO3<006>回折ピークの強度をプロットしたのが図5である。酸素ガスの供給流量は3sccmに設定した。この条件下では、十分に酸化されたニオブ酸リチウム膜が得られる。なお、sccmは流量の単位であり、0℃・1気圧の流体が1分間に1cm3流れることを示す。
Li2OターゲットへのRF印可が20Wでは、LiとNbは1:1の比で取り込まれるが、40Wでは、LiがNbよりも過剰になる。図5から分かるように、白丸で示す40Wの試料は、黒丸で示す20Wの試料よりも、結晶化に要する温度が約100℃高くなっている。さらに40Wの試料では、<006>配向以外に<104>配向のドメインも生成した。このことから、過剰なLiが非晶質膜中に含まれていると、固相結晶成長が遅れ、選択的なc軸配向ドメインの生成が妨げられることが分かる。固相において結晶化が進展するためには、原子の動きを容易にする空格子点がある程度膜中に存在することが必要となる。このためには、非晶質状態で形成されるニオブ酸リチウム膜中に含まれるLiの含有量がNbの含有量を超えないことが望ましい。Liの含有量がNbの含有量を超えて結晶化が迅速に進展しないと、長時間アニールを行わざるを得なくなり、長時間のアニール処理の間に組成が変化することが懸念される。
前述した非晶質層112の形成では、LiとNbとの含有量が1:1のLiNbO3ターゲットを用いており、スパッタにより成膜される膜中においてはLi欠損が比較的生じやすい状態となっている。このため、非晶質層112は、Li1-xNbO3で示される組成となる。このことは、上述した、「Liの含有量がNbの含有量を超えない」という条件を満足していることを示している。なお、スパッタによる成膜では、成膜時に供給する酸素ガスの量(分圧)により、形成されるニオブ酸リチウムの膜中のLi原子とNb原子の含有量の比、及び酸素の組成が変化する。従って、LiとNbの組成比がほぼ1:1になるように、適切な酸素分圧下でスパッタ成膜を行うことが重要である。この条件は、プラズマ生成のためのマイクロ波のパワー、ターゲットへ印加する高周波(RF)のパワー、真空処理室の内部の排気速度などにより決定され、個々の装置毎に最適化する必要がある。
次に、LiNbO3結晶膜103におけるLiNbO3ターゲットからのスパッタとLi2Oターゲットからのスパッタを同時に行うことの必要性について説明する。LiNbO3ターゲットのみを用いたスパッタでは、酸素流量が低いとLiとNbの含有量が1:1の組成に近い膜が得られるが、膜中に酸素欠損が存在する。このような酸素欠損が存在するニオブ酸リチウム膜を導波路デバイスなどへ応用すると、光学的な吸収が問題になる場合が発生する。これに対し、酸素流量が高いと、得られる薄膜の組成は、酸素欠損は抑制されるが、Li欠損になりやすく、形成される膜にLiNb38相が析出してデバイスの機能低下につながる。
以上のことを解消するために、LiNbO3ターゲットとLi2Oターゲットからの同時スパッタを、酸素ガスの供給流量を多くした状態で行うことで、酸素欠損を抑制するとともに、Li欠損も抑制することができ、酸素原子が十分に含まれ、かつLiとNbの含有量が1:1の定組成に近いニオブ酸リチウム結晶膜が得られるようになる。
次に、上述した本実施の形態の形成方法により形成された結晶化層102及びLiNbO3結晶膜103よりなるニオブ酸リチウム膜のエックス線回折パタンを図6に示す。図6において、縦軸の強度は対数で表している。Al23単結晶基板101からの回折ピーク以外に、LiNbO3からの<006>ピーク,<0012>ピークが強く観測されている。なお、図4(f)が<006>ピークの拡大であり、LiNbO3結晶膜103の形成工程では、図4(d)に結果を示す条件と同様に基板温度530℃の条件でスパッタ成膜しているが、より大角側にピークの位置が存在している。このことは、結晶化層102の上層の格子歪みが十分に緩和していることを意味している。
本発明の実施の形態に係るLiNbO3エピタキシャル膜の形成方法を説明するための工程図である。 本発明の実施の形態に係る形成方法の実施に用いることができる成膜装置の概略を示す構成図である。 主表面がC面のAl23単結晶基板301の上におけるニオブ酸リチウム膜302の結晶状態を模式的に示す説明図である。 主表面がC面のAl23単結晶基板301の上に様々な条件で形成したニオブ酸リチウム膜302を、エックス線回折により測定したω−2θスキャンX線回折パタンを示す特性図である。 同時スパッタで得られたニオブ酸リチウム膜(非晶質状態)を真空中で様々な温度で30分間アニールして結晶化させて得られた試料からのLiNbO3<006>回折ピークの強度をプロットした特性図である。 結晶化層102及びLiNbO3結晶膜103よりなるニオブ酸リチウム膜のω−2θスキャンエックス線回折パタンを示す特性図である。
符号の説明
101…Al23単結晶基板、102…結晶化層、103…LiNbO3結晶膜、112…非晶質層、201…真空処理室、202…ECRプラズマ源、203…LiNbO3ターゲット、204…マグネトロンプラズマ発生部、205…LiO2ターゲット、206…導入部、207…ガス導入口、208…加熱機構。

Claims (4)

  1. 主表面がC面とされたAl23の単結晶からなる基板の上に、スパッタ法によりニオブ酸リチウムを堆積することで、前記主表面に接して非晶質状態のニオブ酸リチウムからなる非晶質層が形成された状態とする第1工程と、
    前記非晶質層を加熱して結晶化させることで、前記基板の主表面に接して結晶化層が形成された状態とする第2工程と、
    前記結晶化層の上にスパッタ法によりニオブ酸リチウムを堆積することで、前記結晶化層の上に接してニオブ酸リチウムの単結晶からなる結晶膜が形成された状態とする第3工程と
    を少なくとも備え、
    前記第3工程では、前記結晶化層の上に堆積するニオブ酸リチウムが結晶化する温度に、前記基板を加熱する
    ことを特徴とするLiNbO3エピタキシャル膜の形成方法。
  2. 請求項1記載のLiNbO3エピタキシャル膜の形成方法において、
    前記第1工程では、前記非晶質層におけるLiの含有量がNbの含有量を超えない範囲となる条件のスパッタ法により、前記非晶質層を形成する
    ことを特徴とするLiNbO3エピタキシャル膜の形成方法。
  3. 請求項2記載のLiNbO3エピタキシャル膜の形成方法において、
    前記第1工程では、LiNbO3からなるターゲットを用いたECRプラズマスパッタ法により、前記非晶質層を形成する
    ことを特徴とするLiNbO3エピタキシャル膜の形成方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のLiNbO3エピタキシャル膜の形成方法において、
    前記第3工程では、LiNbO3からなるターゲットによるスパッタとLiO2からなるターゲットによるスパッタとを同時に行うことで、前記結晶膜が形成された状態とする
    ことを特徴とするLiNbO3エピタキシャル膜の形成方法。
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