JP4178834B2 - Pmモータの制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、永久磁石を界磁源とする同期電動機をインバータなどの可変速駆動装置にて速度やトルクを制御するPMモータの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
永久磁石を界磁源とする同期機には、界磁側に強力なダンパ巻き線(誘導器のカゴ形導体などに相当)を内蔵しており、商用電源に直入れ投入して起動が可能なものと、ダンパ巻き線がないため電圧や電流をインバータなどの電力変換装置などにより制御して発生トルクや安定化を行うものとの2種類がある。
【0003】
本発明は、ダンパが無いか、またはダンパの機能が弱く直入れ起動ができない種類のPMモータを制御対象とする。
【0004】
このようなPMモータを制御するためには、磁極の位置を検出し、磁極に応じた電流を流す必要が有る。そのため、一般的には位置センサを回転軸に取り付けて位置を検出することになる。しかし、位置検出器は電子回路が内蔵されており、耐環境性が低くまた価格が高いなどの問題もある。
【0005】
そこで、このような位置検出器を使用する方式に代えて、PMモータの電圧と電流検出情報から磁束を推定演算して、磁極の位相を推定する位置センサレス制御方式がある。図14にその構成例を示す。
【0006】
同図は、速度指令に対して制御を行う例を示しており、速度指令と速度検出値との比較により速度制御部1にトルク指令を得る。電流指令演算部2では、トルク指令から界磁の磁束やインダクタンスなどの情報を用いて、電流の指令に変換する。電流制御部3は、電流検出値との比較により電圧指令を得、逆回転座標変換部4による座標変換により電力変換器(インバータ)5に電圧制御信号を与え、PMモータ6に電機子電流を供給する。このときの電流を電流検出器7で検出し、回転座標変換部8による座標変換で電流制御部3へ検出電流信号を与える。
【0007】
この電流制御系では、電流指令が磁極位相を基準として計算されているため、電流検出器7から得られた交流電流を座標変換部8で位置情報を利用して電流指令と同一の磁極位相を基準とする回転座標に変換する。この座標上において電流制御を行ったのち、出力電圧を座標変換部4で再び逆回転座標変換して交流電圧の電圧指令を電力変換器5に与え、最終的にはPMモータ6を駆動する。
【0008】
位置推定演算部9は、電圧指令と電流検出信号からPMモータ6の磁極位置を検出し、速度検出演算部10による速度検出信号を得て速度制御部1へ与える。また、位置推定演算部9の位置検出信号は座標変換部4、8へ位置情報として取り込まれる。
【0009】
この構成例では、電圧情報を必要としている。より厳密には、永久磁石による速度起電力がその中に含まれている必要が有る。
【0010】
しかし、始動時は回転速度が零であるため、肝心の速度起電力が発生しない。そこで、始動時には高周波やパルス電流を流したり、高周波電圧を印加して突極性のある同期機のインダクタンス変化を計測することにより、位置を推定する方式が提案されている。
【0011】
永久磁石を用いた同期機は、透磁率の高い界磁極がケイ素鋼板などの材料と透磁率の低い永久磁石とで構成されているため、磁極軸(d軸)とそれに直交する軸(q軸)のインダクタンスには、形状の非対称性により差が発生する。このインダクタンスの差を利用して位置を推定するものである。
【0012】
このような方式は、パルス印加法や高周波印加法・高周波重畳法などと呼ばれており、高調波を注入する方法としては、次の文献がある。
【0013】
文献1:藍原隆司、鳥羽章夫、柳瀬孝雄、「センサレス方式による突極形同期モータの零速トルク制御」、平成8年電気学会産業応用部門全国大会、N0.170文献2:特願平6−550255号(特開平7−245981号公報)。
【0014】
文献1によると、この方式は図15のような構成となっている。ただし、用語と記号は、本発明で定義したものに修正している。ここでは、電流制御系は制御系が推定した磁極位置であるdc軸と、それに直交したqc軸成分用に2つの制御器12A,12Bで構成する例で表わしている。
【0015】
図15の詳細は文献1に記載されているが、その特徴は高周波成分をFFTで解析して、dc,qc軸の成分として求め、それから磁極のずれ角Δθを推定する部分にあり、図16を参照して以下に簡単に説明する。
【0016】
(1)制御座標の磁極推定軸であるdc軸に、正弦波状の高周波電圧vhを電流制御系の出力に重畳する。
【0017】
ここで,モータの磁極軸dが制御推定軸dcとΔθだけずれている場合には、モータのd,q軸のインダクタンス成分Ld,Lqの差(突極性)により、電流の高周波成分ihはΔφずれた直線上に軌跡が位置するようになる。
【0018】
(2)検出電流から,正弦波状の高周波電圧と同期した高周波成分ihをFFT(高速フーリエ変換)13により抽出し、位相誤差演算部14にてΔφを計算する。
【0019】
(3)電流のずれ角Δφの情報を積分器15にて積分演算して、Δφ=0となるようにdc軸(θ)を修正する。これにより、収束後はdc軸を磁極軸と一致させた推定位相θCを得ることができる。この推定位相θCは、座標変換部4、8への位相信号として与えるほか、速度検出演算部10では差分演算による速度検出とローパスフィルタによる高周波成分除去で速度検出信号として得る。
【0020】
上記の方式の利点は、下記のポイントにある。
【0021】
・停止状態(零速)でも位置推定が可能、
・高周波電圧成分を磁石の軸とほぼ同一位相にのみ入力しているため、高周波電流によるトルクリップルが発生しない。
【0022】
この文献1では、電流検出に、モータを駆動するために必要な基本波成分と磁極推定に必要な高周波成分が含まれている。このうち、磁極推定に必要な高周波成分のみを分離するために、FFTのアルゴリズムを利用している。しかし、FFTを実行するためには、1周期以上のデータが必要であり、データの検出周期は高周波の1周期毎に制限されてしまう。
【0023】
次に、文献2(特開平7−245981号公報)では、FFT演算の代わりに、高周波電流を抽出した後に電流微分を使用した方式にされる。この方式を図17に速度制御系を省略して示す。この方式の特徴を以下に説明する。
【0024】
(1)文献1と同様に、高周波電圧を制御上の磁極推定軸(dc軸)に重畳する。
【0025】
(2)電流検出からノッチフィルタ16A,16Bを利用して、高周波電圧と同期した高周波電流成分を抽出する。
【0026】
(3)微分演算部17により高周波電流成分を微分してインダクタンス成分相当を推定し、磁極位相を推定する。
【0027】
(4)波形としては正弦波以外に方形波や三角波も、また入力も電圧重畳と電流指令重畳などにも拡張している。
【0028】
この文献2では、FFTを使用せず、電流の微分量を使用する方式であり、最少では2回のサンプルで位置推定ができる。しかし、電流検出には、PWM変調を行うために発生する主回路素子のスイッチングなどにより、検出器へノイズが混入し易い。そのため、電流微分を利用した方式は、ノイズに弱い問題がある。
【0029】
これらの課題を解決する方式として、FFTを使用することなく、高速に位相推定ができ、しかもノイズに対して推定位相誤差が少なくなる方式を本願出願人は既に提案している(特願2001−348156)。
【0030】
この方式は、PMモータを位置センサレスで制御する方式として、零速度や低速状態のように基本波端子電圧成分が小さく、この成分を利用した方式が適用できない場合にも利用できるもので、原理的には、PMモータの磁気的な突極性を磁極位置の推定に利用している。回転数と同期した基本波の成分とは別に高周波の電圧を重畳する。そしてこの高周波成分の電流を計測して磁極位置を推定する。ここで、注入する高周波成分は周期性のある任意の波形の電圧でよい。この電圧により発生する高調波成分を分離するため、正相分と逆相分に分離し、その差を特徴量として利用することにより位相を推定する。
【0031】
この方式のブロック図を図18に示す。同図中、図15、図17等と共通な制御系部分は、同一符号で示す。この制御系に対して、破線ブロックで示す部分が位相と位相の微分である速度情報を推定するもので、この部分は下記のような構成となっている。
【0032】
21は高周波成分の基準位相指令発生部、22は高周波基準発振器をもとに高周波電圧成分を発生して電圧指令に重畳加算する波形発生器、23、24は重畳された高周波電圧によって発生した高周波電流成分を、電流検出器の信号から分路・抽出する高調波抽出部、25は高周波電流成分から正相分を抽出する正相軸写像演算部、26は高周波電流成分から逆相分を抽出する逆相軸写像演算部、27は正相分と逆相分の写像成分の差分を求める差分演算部、28は差分を高周波位相指令の0〜π/2期間に亙って積分し、この積分結果に係数を乗じて位相ずれ量を求める積分器、29は位相ずれに符号補正関数等を乗じて推定位相θCを求める位相推定演算部である。
【0033】
【発明が解決しようとする課題】
図18に示す方式については、検討を進めた結果、次のような改善可能な点や問題点が判明した。
【0034】
(1)正相成分と逆相成分を抽出してから差分をとるまでの演算式は、式を展開すればさらに簡略化できる。
【0035】
(2)正相と逆相成分の差信号から直接に位相を推定しているが、一旦速度を推定してこれを積分して位相を演算する方法の方がより高い周波数まで適用できることが、実験検討の結果より判明した。
【0036】
(3)高周波電流の抽出のために、IIR形のHPF(高帯域通過フィルタ)を使用すると、検出遅れによるムダ時間や周波数遮断特性不足による低周波成分が重畳してしまう。これがセンサレス制御の位相推定の応答特性を劣化させてしまう。
【0037】
また、電流制御器に高周波電流が重畳した検出電流をそのまま入力とするときには、この高周波成分が外乱となるため電流制御ゲイン(応答周波数)を低く設定しなくてはならない。LPF(低域通過フィルタ)を使用すると、やはりHPFと同様に検出遅れによるムダ時間や周波数遮断特性不足による高周波成分が重畳してしまうため、ゲインの改善効果に限界が有る。
【0038】
(4)今回の制御法は速度を収束演算により推定する方式である。そのため何らかの外乱により推定位相に90°以上の誤差が発生した場合には、収束演算が正常に行えなくなって脱調現象を引き起こす異常が発生する。実用に際しては、これに対する保護が必要である。
【0039】
(5)高周波成分のうち、まだ使用していない成分も有る。これを有効に利用した方式も考えられる。
【0040】
本発明の目的は、上記の各課題を解決したPMモータの制御装置を提供することにある。
【0041】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するための本発明は、以下の構成を特徴とする。
【0042】
(1)PMモータに高周波電流を流して磁極位置を推定し、この推定を基にPMモータを可変速制御するPMモータの制御装置において、
PMモータと同期して回転する磁極推定軸をd軸およびそれに直交する軸をq軸と定義し、
高周波成分を周期の整数倍のサンプル時刻における離散的な位相として取り扱い、さらにこの位相の余弦波関数の電圧成分をd軸出力電圧にだけ重畳しておき、
そのときにPMモータに流入する電流を検出して前記d軸とq軸成分に変換してから、
この検出電流を高域通過フィルタなどによりd軸およびq軸の高周波電流成分を求め、
この2軸の電流成分のうち、q軸電流成分について前記離散値で表した位相の正弦波関数を乗算し、さらに、それを高周波周期の整数倍の期間分だけ平均をとることにより、q軸の高周波成分の特徴量を演算する手段と、
前記特徴量を比例積分演算することにより推定周波数を補正し、さらに、この補正された推定周波数を積分して推定磁極位相を補正することにより、磁極位置を推定する手段を備えたことを特徴とする。
【0044】
)PMモータの制御装置、または高周波成分を重畳して磁極位置を推定するPMモータのセンサレス制御装置において、
PMモータの検出電流から高調波成分だけを抽出する高周波抽出手段は、電流のサンプル値を高周波の1周期またはその整数倍の期間だけ移動平均を計算し、現在の電流のサンプル値からこの移動平均出力成分を減算する構成にしたことを特徴とする。
【0045】
)PMモータの検出電流から検出遅れが少なくかつ高周波成分除去を実現するための手段は、検出電流のサンプル値を高周波の1周期またはその整数倍の期間だけ移動平均を計算し、現在の電流のサンプル値からこの移動平均出力成分を減算して高周波成分を抽出し、さらに、この高周波抽出成分を1周期または周期の整数倍の期間だけ遅延させた後、現在の電流検出値からこの遅延した高周波成分を減算することにより高周波成分を除去した電流成分を得る手段を備え、この高周波成分を除去した電流成分を電流制御に使用することを特徴とする。
【0046】
高周波と同期した離散位相から余弦波関数を用いて高周波電圧を計算し、検出電流の高周波成分に正弦波関数を乗算した後、高周波の周期の整数倍の期間の平均をとることにより計算した特徴量をd軸電流成分とq軸電流成分の両方の軸成分について演算する手段を備え、
前記d軸電流成分の特徴量とPMモータの定数から計算されるd軸成分を比較し、d軸電流の特徴量の方が小さくなった場合には位相誤差が45°以上大きくなったものと判断して位相推定ゲインを高くして収束を速くする、または速度指令の変化を一時ホールドすることにより脱調を防止する手段を備えたことを特徴とする。
【0047】
)前記位相誤差が45°以上と推定した条件で、かつq軸成分が零に近い場合には、NS極を逆に推定した状態に収束した状態(脱調状態)と判断して脱調検出信号を出力するとともに、異常と判断して運転を停止する手段を備えたことを特徴とする。
【0048】
前記q軸の高周波電流成分に対して、離散的な高周波電圧の位相成分を正弦波関数演算したものを乗算して抽出した特徴量から、同様に計算したd軸の特徴量とPMモータの定数から計算される一定値との差分値で除した結果から、arctan関数を利用して推定磁極位相と実磁極位相間の推定位相誤差を演算し、この推定位相誤差を利用して磁極の回転速度や位相を推定する手段を備えたことを特徴とする。
【0049】
【発明の実施の形態】
実施形態を説明する前に、本発明の原理的な説明をする。
【0050】
図16の(a)のように、モータの磁極軸に同期して回転するdq直交2軸座標系において、磁極とその直交軸のインダクタンスが異なる場合を含めた永久磁石形同期機の電圧電流方程式は(1)となる。
【0051】
【数1】
Figure 0004178834
【0052】
これを、図16の(b)のようにΔθ=Δθ−θcだけずれた制御内部で基準とする位相dc,qc座標に変換すると(2)式となる。
【0053】
【数2】
Figure 0004178834
【0054】
ここで、微分演算子pのかかった微分項を左辺に移行して、状態方程式に変形すると(3)式となる。
【0055】
【数3】
Figure 0004178834
【0056】
この式より、電圧成分に対して電流の微分成分はd,q軸のインダクタンスの差成分と磁極の推定ズレ角Δθの2倍の三角関数の積として現われることが分かる。この成分を利用して磁極の誤差を収束させるものが基本原理である。
【0057】
上記の(3)式に対して、(4)式のようなdc軸にのみ単振動の高周波電圧成分を印加する。後述する正相・逆相成分の抽出部で高周波と同期した成分のみを取り出す機能が有るため、本来は正弦波に限定する必要はなく、これ以外の高次の周波数成分を含んでいても良いが、ここでは説明を簡略化するため1周波数成分の正弦波としている。
【0058】
【数4】
Figure 0004178834
【0059】
このとき発生する電流は(4)式を(3)式に代入すれば計算できる。ここで、(5)、(6)式の近似を適用する。この近似の根拠は、(5)式は零速度または極低速に適用することにより、(6)式は周波数が高いためインダクタンスの誘起起電力に比べて抵抗の電圧降下成分は小さいことによる。
【0060】
【数5】
Figure 0004178834
【0061】
ω=0 …(5)
R=0 …(6)
この近似により(3)式の右辺の第2、第3項は零値となり(7)式のような電流の状態方程式となる。
【0062】
【数6】
Figure 0004178834
【0063】
(7)式の両辺を積分すると、(8)式のような電流式が得られる。
【0064】
【数7】
Figure 0004178834
【0065】
(8)式では、qc軸には電圧成分を印加していないにもかかわらず、qc軸にも電流成分が発生している。これはインダクタンスの突極性(L2成分)によるものであり、今回の方式はこれを利用して軸ずれを検出するものである。
【0066】
(8)式の電流には高周波成分と定常成分が含まれているが、後述の実施形態3で述べる1周期の移動平均を利用した高調波電流成分方法により、高周波成分だけを抽出することができ、これは(9)式のidc-h,iqc-hとなる。
【0067】
【数8】
Figure 0004178834
【0068】
この高調波電流成分から、正相軸と逆相軸に対する写像を求める。ここで、正相/逆相軸の定義については、時刻t=0の時の初期位相をdc軸に一致させる成分(dfc,drc)と、初期位相をqc軸とする成分(qfc,qrc)との2種類が存在する。まず、正相軸成分である2種類の成分(dfc),(drc)について計算する。
【0069】
正相軸への写像成分は、ωhtで回転する回転座標成分と等しく、これに電流式(9)式を代入すると以下の(10)式になる。
【0070】
【数9】
Figure 0004178834
【0071】
次に、逆相軸成分は、−ωhtで回転する回転座標成分と等しく、これに電流式(9)式を代入すると以下の(11)式になる。
【0072】
【数10】
Figure 0004178834
【0073】
(10)、(11)式は、三角関数の倍角の公式を利用すると、2ωhtという電圧の2倍の角速度で振動する成分となる。
【0074】
次に、単振動の正相と逆相の差を利用する。q軸を初期位相とする成分がL2に関する突極性の要素のみにするために、(10)と(11)式の加算演算による合成をとることにする。d軸を初期位相とする成分も同時に計算すると次の2式が得られる。
【0075】
(10)、(11)式より、d軸を初期値とする正相軸と逆相軸の写像の差分は、
【0076】
【数11】
Figure 0004178834
【0077】
(10)、(11)式より、q軸を初期値とする正相軸と逆相軸の写像の合成値は、
【0078】
【数12】
Figure 0004178834
【0079】
以上までは、前記の特願2001−348156の内容を記述したものであるが、この式の展開をそのまま実現使用とすると(10)、(11)式の演算を一旦行った後に、(13)式の演算を行う必要が有った。
【0080】
しかし、特徴量を使用する高周波電流(9)式と、特徴量を抽出した後の(12),(13)式を比較してみると差はsin(2ωht)の項が乗算されているだけで有り、(14)式で計算しても(10)、(11)式と等価な結果が得られることが分かる。
【0081】
【数13】
Figure 0004178834
【0082】
また、実際にこの式を実現するためにはCPUなどを使用したディジタル演算器に実装する必要が有る。そのためには、離散化されたサンプル制御系におけるディジタル演算に変換する必要もある。これらを考慮して、以下に説明する実施形態の方式を提案するものである。
【0083】
(実施形態1)
本実施形態は、(9)式の高周波電流成分を利用して位相誤差推定を行う。
【0084】
連続系の(4)式をサンプル制御系で実現するには、(15)式のような離散系で電圧成分を表せばよい。
【0085】
【数14】
Figure 0004178834
【0086】
ここで、n:サンプル時刻を示す整数値、N:高周波成分の1周期間のサンプル点数。
【0087】
図19の(a)は、N=8とした場合、(15)式の電圧ベクトルが離散的に出力されている様子を図示したものである。
【0088】
この電圧成分で発生する電流は連続系の(9)式と同様に図19(b)のような離散的な電流ベクトルとしてサンプリングされ、(16)式となる。
【0089】
【数15】
Figure 0004178834
【0090】
(14)式の関係を利用すると、(17)式のように直接正相分と逆相分の合成成分を計算することができる。
【0091】
【数16】
Figure 0004178834
【0092】
このままでは高周波の2倍の周期で脈動する成分であるから、高周波の1周期期間の平均をとることにする。そうすると、(18),(19)式のようにサンプル時刻といった時間成分が消去されて位相推定のズレ角(Δθ)の2倍角の三角関数の項になるため、この結果を利用すれば位相推定のズレ角が検出できるようになる。
【0093】
【数17】
Figure 0004178834
【0094】
ここで、ave{i(n)}は現在のサンプル時刻からn−(N−1)のサンプルまでの、N点のデータを平均する関数である。
【0095】
さらに、(18)、(19)式の計算式を、(16)式の電流検出の高周波成分を利用して表現しなおすと、(20)、(21)式となる。
【0096】
【数18】
Figure 0004178834
【0097】
サンプル値系のディジタル演算を適用する場合には、(10)、(11)、(13)式の一連の演算が、直接に(21)式のみで計算できる。そこで、本実施形態1の内容として、この(21)式を利用することを提案する。この(20)、(21)式は以降で多く参照されるため、新たにΔih-d,Δih-qと定義しておく。
【0098】
本実施形態1の制御方式の全体構成図を図1に示す。提案部分の構成要素は下記の部分である。
【0099】
高周波位相発生器31は、電圧高周波成分の指令値演算用に、Nサンプルで1周期となる基準のcos関数正弦波を発生する。ここで、電圧成分については基準正弦波以外の高周波成分が含まれていても構わず、三角波や方形波などでも周期性のある波形であれば適用できる。また、(20)式で使用するNサンプルで1周期となるsin関数の正弦波も同期して発生させておく。
【0100】
注入電圧演算部32は、高周波位相発生器31から出力される電圧波形信号と電圧の振幅成分ΔVhを乗算して、高周波電圧指令を出力する。
【0101】
電圧重畳加算部33は、注入電圧演算部32の高周波成分を、推定されているdc軸電圧成分idcに重畳(加算)する。
【0102】
高周波抽出部34は、広域通過フィルタ(HPF)などを利用して、電流検出から高周波成分を抽出する。
【0103】
特徴抽出部35は高周波抽出部34の出力成分と高周波位相発生器31のsin関数の正弦波信号から(21)式に相当するΔih-q成分を演算する。
【0104】
位相推定演算部36は、特徴抽出部35から出力されるΔih-q成分から、I制御などの積分要素を含む演算によって前回の位相を修正し、新たな推定位相θcを出力する。
【0105】
本実施形態1によれば、高周波電圧を重畳し、発生した高周波電流の基本正弦波成分を利用して磁極位相を推定するにおいて、(10)、(11)、(13)式を経て演算していたものと等価な機能を(20)式のみで実現することができる。これにより大幅な演算量の低減が可能になり、安価なCPUでも実現が可能となる。また、除算や加算の回数が減少しているため、ビット落ちなどの誤差成分も減少させることができ、演算精度を改善できる。
【0106】
(実施形態2)
実施形態1の方式では、安定に動作する条件が軽負荷かつ低速域に限定されていることが実験などにより判明した。負荷が増加すると不安定になる原因として、次のような理由を推定している。
【0107】
図2のように、負荷がかかっておりある程度の電流振幅が存在している条件を考える。このとき図2のように、実際のd軸と推定位相dcとの間にΔθの推定誤差が存在している場合には、電流指令に対してI1・sinΔθ=I1・Δθの電流誤差成分が発生していることになる。この電流誤差成分と実機の磁束とによってトルク制御誤差が発生することになり、その値はI1・cosφ・Δθ・|λ|となる。このトルク誤差は位相推定部の誤差に起因して発生するものであり、図3の伝達関数ブロック図で示されるように、Nアンプ部によるトルクフィードバック以外の新たなトルクフィードバップループを構成することになる。
【0108】
ここで、位相誤差によるトルク成分は電流位相角であるcosφに比例しているため、もしd軸電流が負側(減磁側)になった場合には、cosφが負値となり、このフィードバックは正帰還になってしまう。
【0109】
本来なら、Nアンプのフィードバックがこの正帰還成分を打ち消してくれるはずであるが、速度指令がランプ状に単調増加している場合には、図4(a)のように位相推定誤差が定常偏差として発生してしまう。この定常偏差となった位相誤差により、前述のトルクの正帰還が連続して掛った状態となるため、位相誤差が増幅されてしまい、最終的には脱調を発生するものと考えられる。
【0110】
そこで、実施形態1では、位相推定演算部36で直接に位相を推定していたが、これを一旦速度を推定するように変更し、さらにその速度を積分して位相を演算する方式を提案する。これが本実施形態2である。
【0111】
この構造にすると、図4の(b)のように位相誤差の定常偏差が存在しなくなるため、トルクの正帰還成分が抑制され安定性が改善される。
【0112】
実施形態2を実施形態1と同様な制御ブロック図で表わすと、図5のようになる。同図では、実施形態1の位相推定演算部36に代えて、速度推定部37と位相積分部38のブロックに変更されている。速度推定部37は、特徴抽出部35の出力である特徴量抽出結果より、一旦速度推定をPI演算などにより出力する。位相積分部38は、速度推定部37の出力である推定速度を積分して、推定位相を出力する。
【0113】
実施形態の提案内容には含まれないが、位相積分部38の出力の代わりに、速度推定部37の出力を直接に使用する方法もある。しかし、速度推定部37の出力は電流検出のノイズなどによりバラツキが大きいため、Nアンプ出力にも大きな外乱が発生する。そこで、図5では従来通り推定位相を時間差分を積分して速度を求める方法のままとしている。こうすれば、差分演算の期間を適切に選定すれば、ある程度の平均的な速度が計算されるようになり、外乱の抑制効果が得られる。
【0114】
本実施形態2によれば、実施形態1に比較して、直接位相を推定するのでは無く、一旦速度を推定する方式とした。さらに、それを積分して推定位相を演算している。これにより、従来は、負荷が大きな場合や速度のランプ応答時などの条件では不安定になることがあったが、本実施形態を適用することにより、安定な動作領域が負荷トルク側についても速度側についても広くなる。
【0115】
(実施形態3)
実施形態1,2の高周波抽出部34では、高周波成分を抽出する方法として一般的なHPFを想定していた。しかし、IIR形(無限長)フィルタなどを適用した場合には、フィルタの遅れ時間や次数の制限などによる遮断周波数特性の限界により低域成分が漏洩して高周波抽出成分に混入してしまう問題が有る。特に、トルク指令が変化する過渡時にこの影響が大きく現われ、(21)式の演算結果に外乱が発生して位相外乱の要因となってしまう。
【0116】
そこで、高周波の発生周期をサンプル周期と同期させて、1周期のサンプル点数Nを整数と限定する。そして、高周波成分の抽出に使用するデータは最新データのN点のみを利用することにより、常に1周期に同期したデータを使って演算を行う。このように、データを高周波成分と同期させたことにより、移動平均やDFT(離散フーリエ変換)などの手法を適用できるようになり、IIRフィルタなどに比較して高周波抽出特性を改善することが可能になる。
【0117】
この実施形態3の提案部分のみを表現したブロック図が図6である。また、図7は図6の動作タイミングを説明するためのチャートの例である。
【0118】
まず、図6の高周波成分抽出部34は、高周波の1周期(Nサンプル)に相当する期間の移動平均を演算するブロックと、検出値からこの移動平均出力を減算する部分とにより構成されている。図7の(b)のように、高周波成分とオフセット成分とが存在する場合でも、1周期の平均値をオフセット分と見なせば、高周波成分のみを図7の(c)のように抽出することができる。この高周波成分抽出部34のブロックが実施形態3の提案部分である。
【0119】
参考までに、この高周波成分から(21)式の演算を行う部分を図6の特徴抽出部35に示している。図7のタイミングチャートでは(d),(e),(f)がこの部分に相当する。この演算機能も、基準正弦波発振器との積を移動平均することによって簡単に実現することができる。
【0120】
次は、電流制御に使用するため高周波成分を除去した電流を抽出する方法について改善を行う。これについては、本実施形態3の高調波抽出に使用したブロックを拡張することにより実現される。
【0121】
図6で移動平均演算を利用して抽出された高調波成分をNサンプルだけ遅延させる。高調波成分に変化が少なければ、ちょうど高周波の1周期前の成分と今回の高調波成分はほぼ等しい。この1周期前の高調波を利用して現在の検出電流値から減算すれば、近似的に現在の高周波を除去した電流成分を計算することができる。このように、高周波除去特性を改善する図8の構成が本実施形態3(2点目)の提案内容である。このときの動作タイミングチャートは図9に示す。
【0122】
本実施形態3によれば、高周波電圧を重畳する方法では、高周波成分の抽出・除去特性が全体の制御系に大きな影響を与えるが、本実施形態3の方式を適用する事により、次の効果が得られる。
【0123】
まず、高周波成分抽出(低周波除去)特性を改善したため、位相推定に混入する外乱を小さくすることができる。この結果、位相推定や速度推定のゲインを高く設定できるようになり、位相推定の応答特性が高速になる。最終的には急な速度応答が発生しても位相推定遅れによる脱調が発生しにくくなり、高速な速度応答特性が実現できる。
【0124】
また、電流制御系で使用する電流検出の高周波除去(低周波通過)フィルタの特性を改善したことにより、電流制御系の外乱成分が減少する。その結果、電流制御ゲインを高く設定できるようになり、高速な電流応答が実現できる。
【0125】
なお、本実施形態3は、実施形態1,2や後述の実施形態4,5、及び特願2001−348156において使用する項目であるが、電流の高周波・低周波成分を操作する限定された機能であるため、上述のどの実施形態についても適用が可能である。
【0126】
(実施形態4)
今回の制御法は速度を収束演算により推定する方式である。そのため何らかの外乱により推定位相に90°以上の誤差が発生した場合には、収束演算が正常に行えなくなって脱調現象という異常が発生する。実用に際しては、これに対する補償が必要である。
【0127】
いままでは(21)式に相当するΔih-q成分のみを使用して位相や速度を推定してきたが、(20)式のΔih-d成分はまだ使用していなかった。そこで実施形態4,5では、このΔih-d成分を有効に利用する方式を検討する。
【0128】
脱調状態の判断方法を導出するためには、まず特徴抽出量である(20)、(21)式のΔih-d,Δih-q成分がどのように変化するかを調べる必要が有る。そこで、位相推定誤差(Δθ)を媒介変数として、Δih-d,Δih-q座標上にこのベクトル軌跡をプロットしてみる。そうすると、図10のような円状のベクトル移動軌跡が得られる。このベクトル軌跡の特徴は、次のようになっている。
【0129】
(1)円の中心はΔih-d軸上に有り,原点からAまでの距離は以下の(22)式である。
【0130】
【数19】
Figure 0004178834
【0131】
(2)円の半径Rは以下の(23)式である。
【0132】
【数20】
Figure 0004178834
【0133】
(3)円の中心Aからみたベクトルの位相(図11)より、位相誤差が以下の(24)式として計算できる。
【0134】
【数1】
Figure 0004178834
【0135】
この円の軌跡はidc軸上のKD・L1の点Aを中心としており、位相誤差Δθ=0のときに最大振幅点を起点とし、Δθが0〜πの期間で1回転、π〜2πの期間でさらに1回転移動する。つまり、Aを原点として位相誤差Δθの2倍の角度で回転している。
【0136】
この図10の特性から、次の項目が分かってくる。
【0137】
(a)実施形態1、2ではΔih-q成分を利用して位相や速度の推定を行っているが、このΔih-q成分と位相誤差Δθの比例関係は、|Δθ|が小さい範囲でしか成立しない。|Δθ|=π/4でΔih-qは最大値を取り、それ以上は減少していく。
【0138】
従って、π/4を越えた時点で速度推定(位相推定の微分成分と等価)のPI制御ゲインが等価的に小さくなっていくため、位相誤差が大きくるため脱調しやすくなる。そこで、Δih-qを収束に使用する実施形態1,2に、Δθの大きさによりゲインを補正する機能を追加することで脱調防止効果が得られる。
【0139】
また、|Δθ|≧π/4の領域では脱調しやすい状態であると判断して、加速よりも位相誤差の減少を優先させる必要が有る。位相誤差の発生要因になる速度指令の急変を抑制するために、速度指令のクッション出力を一旦ホールドしても脱調防止対策になる。
【0140】
(b)|Δθ|=π/2になると、位相誤差とΔθとが逆極性となるため位相の収束ができず発散してしまう。この結果、脱調現象が発生することになる。脱調が発生すると大きなトルク脈動が発生するため、カップリングや負荷機器などに悪影響を与えることがある。そのため、このような脱調状態に至った場合には、速やかに運転を停止する保護機能が必要になる。
【0141】
(c)|Δθ|≧45°の判定は、Δih-d成分が(22)式の原点からA点までの距離|A|よりも短くなることにより判断することができる。
【0142】
(d)|Δθ|≒45°の判定は、Δih-d成分が(22)式の原点からA点までの距離|A|よりも短く、かつ、Δih-q成分が零近傍であることから判断できる。
【0143】
前述の図16の特性で述べた特徴を利用すれば、図12のような脱調保護機能を実現することができる。本実施形態4は、この脱調保護機能が提案内容である。図12は図5に対して脱調防止機能を追加しているが、その他の実施形態に対しても同様に実現することができる。図12は次の機能が追加されている。
【0144】
特徴抽出部39はd軸電流の検出値より、(20)式の演算によって、Δih-d成分を出力する。
【0145】
判定部40は、特徴抽出部39の出力と、モータパラメータから演算できる原点からA点までの距離成分|A|とを比較し45°を判定する。もし、特徴抽出部39の出力の方が小さい場合には、速度推定部37のゲインを高くしたり、クッション処理部43により速度指令のクッション動作をホールドさせる。
【0146】
判定部41は、Δih-q成分が零付近であることを比較検出する。
【0147】
脱調検出部42は、判定部41の出力が特徴調整39の出力よりも小さい場合で、かつ、特徴抽出部39の出力がΔih-q成分が零付近である場合に、脱調を検出する信号を出力する。この脱調検出信号は、異常を判定して運転を停止する機能に使用する。
【0148】
以上のように、PMモータの位置センサレス制御では、位置を電圧や電流成分から推定しているため、位置センサを使った場合に比べて位相推定遅れが存在する。PMモータには低慣性モーメントであるという特徴が有るため、もし速度のステップ指令などにより大きなトルクを出力した場合には、速度が急変することがある。この場合には、位相推定の遅れによって位相誤差が90°を越えてしまい、脱調することがある。また、急激な負荷トルクが印加された場合にも、速度の急速な低下が発生して同様に脱調することも考えられる。
【0149】
そこで、このような要因などにより位相推定誤差が45°以上であれば、位相推定ゲインや速度指令を補正する脱調防止(抑制)機能を本実施形態4では追加する。この結果、脱調現象を発生しにくくすることができる。
【0150】
また、もし脱調状態に至った場合には、速やかに運転を停止する保護機能も本実施形態4では実現される。
【0151】
もし、脱調が発生した場合には、大きなトルクリプルが発生して、カップリングや負荷装置を破損させる場合も想定されるが、その点、脱調抑制機能や保護停止機能があればこのような機器の破損が発生しないため、システムの信頼性を向上することができる。
【0152】
(実施形態5)
図10では、Aの点を中心として円状にΔih-d,Δih-q成分ベクトルが発生することを示した。この特性を利用すればΔih-qをPI制御しなくても、(24)式を利用して、Δih-d,Δih-qから直接に位相誤差Δθを演算することもできる。この(24)式を図5の例に適用すると、図13のような構成が実現できる。
【0153】
ここでは、図5の例に適用している例について、位相誤差を積分して位相推定した例であるが、安定化のために積分項に緩和ゲインをかけたり、PI制御で置換えたりすることも可能であり、また一旦速度を推定してから積分器で位相を推定する実施形態2のような方式にも適用が可能である。
【0154】
本実施形態5の特徴は、(20)、(21)式と(24)式を利用する点に有り、この(24)式の位相推定原理を利用すれば、位相誤差が45°を越えた場合でも、実際の位相誤差に比例した推定位相誤差を求めることができる。そのため位相の推定自体が高速になるし、高い脱調防止効果も得られる。
【0155】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、以下の効果がある。
【0156】
位相推定のための演算量の大幅な低減が可能となり、安価なCPUを使用して演算精度を高めた制御装置を実現できる。
【0157】
また、高周波電流から、一旦速度を推定し、これを積分して位相を推定するため、安定した制御ができる。
【0158】
また、高周波成分の抽出特性を改善したため、位相推定ひいては速度制御に高速な応答性を得ることができる。さらに検出電流の高周波除去フィルタの特性を改善することができ、電流制御系の外乱成分を減少させ、電流制御ゲインを高く設定して高速な電流応答制御ができる。
【0159】
また、位相推定誤差を基に、位相推定ゲインや速度指令値を補正することで、脱調防止ができる。また、脱調状態の判定により、運転を停止して装置保護とシステムの信頼性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1を示す離散系で表した制御系の全体ブロック図。
【図2】位相誤差成分とトルク誤差成分の説明図。
【図3】位相推定誤差によるトルクフィードバックを考慮した伝達関数ブロック図。
【図4】速度ランプ応答時の位相推定誤差の説明図。
【図5】本発明の実施形態2を示す離散系で表した制御系の全体ブロック図。
【図6】本発明の実施形態3を示す電流高調波抽出部分のブロック図。
【図7】実施形態3の動作タイミングチャート。
【図8】実施形態3の電流低周波成分抽出部分のブロック図。
【図9】実施形態3の動作タイミングチャート。
【図10】(Δθ)を媒介変数としたΔih-d,Δih-qのベクトル軌跡。
【図11】図10におけるA点からの位相説明図。
【図12】本発明の実施形態4を示すd軸の高周波成分を利用した脱調防止機能と脱調検出の説明図。
【図13】本発明の実施形態5を示す全体ブロック図。
【図14】PMモータの位置センサレス制御方式のブロック図。
【図15】従来の文献1のブロック図。
【図16】磁極位置とずれ角Δθの図。
【図17】従来の文献2のブロック図。
【図18】従来の文献3のブロック図。
【図19】離散系で示した高周波電圧と電流成分の軌跡。
【符号の説明】
31…高周波位相発生器
32…注入電圧演算部
33…電圧重畳加算部
34…高周波抽出部
35…特徴抽出部
36…位相推定演算部
37…速度推定部
38…位相積分部
39…特徴抽出部
40、41…判定部
42…脱調検出部

Claims (6)

  1. PMモータに高周波電流を流して磁極位置を推定し、この推定を基にPMモータを可変速制御するPMモータの制御装置において、
    PMモータと同期して回転する磁極推定軸をd軸およびそれに直交する軸をq軸と定義し、
    高周波成分を周期の整数倍のサンプル時刻における離散的な位相として取り扱い、さらにこの位相の余弦波関数の電圧成分をd軸出力電圧にだけ重畳しておき、
    そのときにPMモータに流入する電流を検出して前記d軸とq軸成分に変換してから、
    この検出電流を高域通過フィルタなどによりd軸およびq軸の高周波電流成分を求め、
    この2軸の電流成分のうち、q軸電流成分について前記離散値で表した位相の正弦波関数を乗算し、さらに、それを高周波周期の整数倍の期間分だけ平均をとることにより、q軸の高周波成分の特徴量を演算する手段と、
    前記特徴量を比例積分演算することにより推定周波数を補正し、さらに、この補正された推定周波数を積分して推定磁極位相を補正することにより、磁極位置を推定する手段を備えたことを特徴とするPMモータの制御装置。
  2. 請求項1に記載のPMモータの制御装置、または高周波成分を重畳して磁極位置を推定するPMモータのセンサレス制御装置において、
    PMモータの検出電流から高調波成分だけを抽出する高周波抽出手段は、電流のサンプル値を高周波の1周期またはその整数倍の期間だけ移動平均を計算し、現在の電流のサンプル値からこの移動平均出力成分を減算する構成にしたことを特徴とするPMモータの制御装置。
  3. 請求項2において、PMモータの検出電流から検出遅れが少なくかつ高周波成分除去を実現するための手段は、検出電流のサンプル値を高周波の1周期またはその整数倍の期間だけ移動平均を計算し、現在の電流のサンプル値からこの移動平均出力成分を減算して高周波成分を抽出し、さらに、この高周波抽出成分を1周期または周期の整数倍の期間だけ遅延させた後、現在の電流検出値からこの遅延した高周波成分を減算することにより高周波成分を除去した電流成分を得る手段を備え、この高周波成分を除去した電流成分を電流制御に使用することを特徴とするPMモータの制御装置。
  4. 請求項1において、高周波と同期した離散位相から余弦波関数を用いて高周波電圧を計算し、検出電流の高周波成分に正弦波関数を乗算した後、高周波の周期の整数倍の期間の平均をとることにより計算した特徴量をd軸電流成分とq軸電流成分の両方の軸成分について演算する手段を備え、
    前記d軸電流成分の特徴量とPMモータの定数から計算されるd軸成分を比較し、d軸電流の特徴量の方が小さくなった場合には位相誤差が45°以上大きくなったものと判断して位相推定ゲインを高くして収束を速くする、または速度指令の変化を一時ホールドすることにより脱調を防止する手段を備えたことを特徴とするPMモータの制御装置。
  5. 請求項4において、前記位相誤差が45°以上と推定した条件で、かつq軸成分が零に近い場合には、NS極を逆に推定した状態に収束した状態(脱調状態)と判断して脱調検出信号を出力するとともに、異常と判断して運転を停止する手段を備えたことを特徴とするPMモータの制御装置。
  6. 請求項1において、前記q軸の高周波電流成分に対して、離散的な高周波電圧の位相成分を正弦波関数演算したものを乗算して抽出した特徴量から、同様に計算したd軸の特徴量とPMモータの定数から計算される一定値との差分値で除した結果から、arctan関数を利用して推定磁極位相と実磁極位相間の推定位相誤差を演算し、この推定位相誤差を利用して磁極の回転速度や位相を推定する手段を備えたことを特徴とするPMモータの制御装置。
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