JP4178670B2 - マンガン合金鋼と軸、ネジ部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マンガン合金鋼とそれを用いた軸部材およびネジ部材に関し、更に詳述すれば、OA関連機器、モータ、自動車、建築機材、その他の製品の内外装品等を構成する鋼材として良好な、高強度で耐食性、耐摩耗性、および被削性に優れ、かつ安価なマンガン合金鋼とそれを用いた軸部材およびネジ部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、OA関連機器、モータ、自動車、建築機材等の部品構成材料としては、メッキ処理、浸炭窒化処理などを前提とした鋼材もしくは各種ステンレス鋼材が使用されている。つまり、これらの鋼材は用途により耐食性、耐摩耗性および高強度を実現する表面処理、またはそれに関連する表面加工処理を伴っていた。
【0003】
またそのような部品は切削により目的形状に加工されることが多いが、そのときの切削加工面は粗面化することから、目的とする部品に要求される面粗度に応じて、さらに研削、バニシング等の加工を必要される。同様に浸炭・窒化などの表面処理においても歪み、面粗度の劣化等が見られることからそれらを矯正するための再処理も必要であった。
さらにこれらの処理を施す際には、取り扱い上の疵防止にきわめて細かな注意も必要とされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来技術における各種構成部品材料および各処理にはそれぞれ次のように問題がある。
例えばステンレス鋼のように材質的に高価な材料には、価格的に問題があり、メッキ処理には環境的問題があり、さらに、浸炭焼入れ、窒化などの表面処理には歪み発生という精度上の問題がある。
【0005】
さらに軸、ネジなどの量産時に使用される自動旋盤の加工領域は、低周速、低送り、高肉厚で切削面の面粗度を一定水準以下に確保することが困難である。例えば、SUS303が被削材である場合、切削面が初期的にはRy3μ前後と良好であるが、被削材がNiを8%と多く含有しているため、ガイドブッシュを有するスイス型自動旋盤ではガイドブッシュのかじり現象が常に問題となり、面粗度の劣化はさけられない。
【0006】
従来にあっても、このような問題点を解決するいくつかの材料が提案されている。
例えば、特開昭55−94464 号公報には、C:0.5 %以下、Si:2.0 %以下、Mn:7〜40%、Ca:0.0005〜0.0200%を含有し、酸化物組成を規定した被削性が良好な低炭素高マンガン鋼が提案されている。
【0007】
また、特開昭55−76042 号公報には、C:2.0 %以下、Si:2.0 %以下、Mn:7〜40%、Ca:0.0005〜0.0200%を含有し、酸化物組成を規定した被削性が良好な高炭素高マンガン鋼が提案されている。
【0008】
しかしながら、これらの対象となる材料は、耐食性、耐摩耗性などの点で十分でなく、また切削性に関してもCaを添加させて介在物組成を制御することで被削性を改善させることを目的とした技術であるため、浸炭・窒化などの表面処理を省略することやメッキ処理を省略することはできず、これらの問題解決には十分ではない。
【0009】
ここに、本発明の目的は、浸炭・窒化等の表面処理を不要とし、メッキ処理を行うことなく、最小限あるいはゼロのNi含有量の材料であって、高強度で耐食性、耐摩耗性、および被削性に優れた材料を提供することである。
【0010】
さらに本発明の別の目的は、浸炭・窒化等の表面処理を不要とし、またメッキ処理等の表面処理を行うことなく、最小限あるいはゼロのNi含有量の材料でもって、高強度で耐食性、耐摩耗性、および被削性に優れた軸およびネジを提供するとである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題達成のために、種々検討を重ねていたところ、軸部材やネジ部材ではまず切削性の改善が求められるということから、切削性を確保することにまず着目した。切削性を改善するには、金属組織学的に顕微鏡組織で一相組織であることが望まれるから、本発明の場合について考えると、安定したオーステナイト相かフェライト相の単一相が望まれる。
そこで、本発明者らは高強度を確保するという観点からオーステナイト組織および準安定オーステナイト組織に着目した。
【0012】
一般に常温で安定なオーステナイト組織を得るためにはNi、CrおよびMnのうち2元素あるいは3元素を比較的多量にバランス良く添加する必要がある。その代表例として、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼が挙げられる。しかし、そのような2もしくは3元素でもって規定するには不十分である。
【0013】
ところで、オーステナイト組織の安定性の指標としてシェフラーの状態図が一般に知られている。しかし、この状態図は、Nieq. 、Creq. としてそれぞれ次のような式を用いており、これからも分かるように、これは、Ni、Cr、C、Mn、Mo、Si、Nbの7元素のみでの指標であるため、他の元素を含む材料には不十分であった。
【0014】
Nieq. =Ni−30C+0.5 Mn (%)
Creq. =Cr+Mo+1.5 Si+0.5 Nb (%)
ここに、本発明者らは安定なオーステナイト相もしくは準安定オーステナイトの単一相を得るためにδフェライト量に着目した。δフェライト量が多くなるにつれて透磁率も上昇していくことから、本発明者らは様々な成分に調整した鋼塊を製造して、鋼塊中のδフェライト量を調査し、構成成分との相関調査を実施した。その結果下式(1) で示すF値が0.5 以上であれば鋼塊中のδフェライト量が著しく減少すること、すなわち安定なオーステナイト相もしくは準安定オーステナイトの単一相を得ることを見出した。
【0015】
Figure 0004178670
本発明者らは高価なNiをシェフラーの状態図とは別にNiバランスで評価できる上述のような指標を見出し、下記に示すように成分設計したところ、予想外にも、優れた耐食性、耐摩耗性が発揮され、その結果、浸炭・窒化処理等の表面処理が不要であって、さらにメッキ処理等の表面処理を行うことなく所定の特性が得られ、かつ、Ni含有量を最小限あるいは実質上ゼロとすることができる鋼材が得られることを知り、本発明を完成した。
【0016】
ここに、本発明は次の通りである。
(1) 重量%で、
C:0.05〜0.50%、 Si:0.5 %以下、 Mn:6.0 〜15.0%、
Ni:0〜5.0 %、 Cr:10〜20%、 N:0.04〜0.30%、
Al:0.10%以下、 S:0.030 %以下、
Mo:0 〜3.0 %、 Cu:0 〜3.0 %、
残部はFeおよび不可避不純物
から成る組成を有する鋼で、かつ式(1) を満足する、高強度で耐食性、耐摩耗性、および被削性に優れたマンガン合金鋼。
【0017】
Figure 0004178670
(2) 前記鋼組成が、さらにS: 0.030 〜0.350 %、Pb:0.04 〜0.35%、およびTe:0.002〜0.060 %から成る群から選んだ1種または2種以上の快削元素を含有する前記(1) 記載のマンガン合金鋼。
【0018】
(3) 前記鋼組成が、さらにMo: 0.010 〜3.0 %を含有する前記(1) または(2) 記載のマンガン合金鋼。
(4) 前記鋼組成が、さらにCu: 0.10〜3.0 %を含有する前記(1) ないし(3) のいずれかに記載のマンガン合金鋼。
【0019】
(5) 前記(1) ないし(4) のいずれかに記載の鋼組成を有する鋼に成形加工もしくは熱処理を行い、Hv ≧200 としたことを特徴とする軸部材。
(6) 前記(1) ないし(4) のいずれかに記載の鋼組成を有する鋼に成形加工もしくは熱処理を行い、Hv ≧200 としたことを特徴とするネジ部材。
【0020】
【発明の実施の形態】
ここで、本発明にかかるマンガン合金鋼の化学組成を上述のように規定した理由について述べる。なお、本明細書において「%」はとくにことわりがないかぎり、「重量%」である。
【0021】
C (炭素)
Cはオーステナイト組織を安定化する元素であり、0.05%以上含有させる。しかし、0.50%を越えて含有させると、オーステナイトの結晶粒界に炭化物が析出し冷間加工性や耐食性が低下する。従って上限を0.50%とした。
加工後の硬さを調整するために好ましくは0.10〜0.30%である。
【0022】
Si (ケイ素)
Siは製錬工程での脱酸剤として溶鋼中に添加されるが、過剰の添加は脱酸生成物である非金属介在物を増加させ、鋼の清浄性を劣化させる。さらにSiはフェライト生成元素であるため、多量に含有するとオーステナイト組織が不安定になる。従って上限を0.5 %とした。
【0023】
Mn (マンガン)
Mnはオーステナイト組織を安定させる安価な元素であり、オーステナイト組織を安定化するNiを減少させることができる。Niの代替としては、Mnを6%以上含有させる。しかし、15%を越えて含有させると熱間加工性が低下し熱間圧延時に割れが発生することがあり好ましくない。従って上限を15%とした。好ましくはMnは8〜13%である。
【0024】
Ni (ニッケル)
Niは、所望添加元素であって、オーステナイト組織を安定にし耐食性を改善するのに有効な元素であるが、Niは高価であるため5%を越えて含有させるとコストの上昇を招き好ましくないし、環境への影響からも極力添加量を減少させることが好ましい。
【0025】
一方、オーステナイト組織の安定性は、前述の式(1) を満足させることで得られることから、本発明においてNiを添加する場合、好ましくはNi含有量は0.5 %以上5.0 %以下とした。
【0026】
Cr (クロム)
Crはフェライト生成元素であるが耐食性を付与するために必須な元素である。耐食性を付与させるためには10%以上を含有させるる。しかし20%を越えるとオーステナイト組織の安定性が損なわれる。従って本発明におけるCr量は10〜20%とした。好ましくは13〜17%である。
【0027】
N (窒素)
NはCと同様にオーステナイト組織を安定化すると同時に固溶強化に寄与する元素である。さらにNは応力腐食割れを改善する効果もあり、そのためには0.04%以上含有させる。これにより、オーステナイト組織の安定化、耐食性改善等を目的としたNi等の高価な元素の多量添加を回避することもできる。またNは窒化物を生成し、この窒化物により加工硬化が得られ耐摩耗性が改善される。一方、N含有量が0.30%を越えるような鋼を溶解することは極めて難しく、このような高N鋼は鋼塊中にブローホールによる欠陥を発生させる怖れがあり好ましくない。従って、本発明におけるN含有量は0.04〜0.30%とした。好ましくは0.10〜0.25%である。
【0028】
Al (アルミニウム)
Alは強力な脱酸剤である、製錬工程時に溶鋼中に添加される。しかし添加量が0.10%を越えると非金属介在物である酸化物が増大し、鋼の清浄性を劣化させる。従ってAlの含有量は0.10%以下とした。
【0029】
S (イオウ)
Sは通常不可避不純物として0.030 %程度までは許容される。したがって、本発明にあっても、S添加による切削性の改善効果が期待されない場合には、Sは0.030 %以下に制限する。
【0030】
しかし、Sは、添加すれば切削性が改善される作用があるため、被削性を求める場合には、0.030 %以上、好ましくは0.050 %以上添加する。しかし、0.350 %を越えて含有させると熱間加工性や耐食性が劣化する。従って上限を0.350 %とした。
【0031】
Sの添加では被削性が得られない場合あるいはSの添加が好ましくない場合は、Pb、Teの1種または2種を、必要によりSと複合して添加して被削性を確保する。この場合の添加量は一般的に添加されるPb:0.04〜0.35%、Te:0.002 〜0.060 %である。これ以上の添加はPbでは鉛の凝集粒の析出、Teでは熱間割れの問題に起因した材料欠陥が増加するためである。
【0032】
かくして本発明にあって被削性改善のためにS: 0.030 〜0.350 %、Pb:0.04 〜0.35%、およびTe:0.002〜0.060 %から成る群から選んだ1種または2種以上を添加する。
【0033】
Mo (モリブデン)
Moは添加しなくてもよい。添加すれば冷間加工時に加工誘起マルテンサイトの生成を抑制するため冷間加工性向上に有効である。しかしMoはフェライト生成元素であるため、過剰に添加するとオーステナイト組織が不安定になる。従ってMoを添加する場合、その含有量は3%以下とした。
【0034】
Cu (銅)
Cuは添加しなくてもよい。添加すれば冷間加工時にオーステナイト組織を安定化させる作用がある。しかし3.0 %を越えて含有すると熱間加工性が著しく低下する。従ってCuの含有量は3.0 %以下とした。
【0035】
本発明にあっては式(1) で規定するF値を0.5 以上に規定するが、これは非磁性とするためにδフェライト量を可及的少、つまりゼロとして、オーステナイト単相組織を確保するためであり、その上限は制限ないが、耐食性、耐摩耗性、高強度を確保した上で、各元素の添加量を必要最小限で安定なオーステナイト単相組織を得るために、F値は好ましくは4.5 %以下である。
【0036】
かくして、本発明によれば、耐摩耗性に優れた材料が得られるため浸炭・窒化処理などの表面処理が不要となる。また、耐食性にも優れた材料であるためめっき処理等の表面処理が不要となる。さらに、式(1) を満足させることでオーステナイト単相材料にも係わらずNi含有量を5.0 %以下に制限できるのである。
【0037】
本発明にかかるマンガン合金鋼は、鋼材一般として利用でき、例えば板材、管材、棒材、線材などとしても利用できる。その用途も軸材やネジ材のように機能部品としてばかりでなく、構造材として用いてもよい。
【0038】
次に、本発明鋼を用いて軸部材およびねじ部材を製造する場合について、その成形加工法および熱処理方法について説明する。
なお、ここに「軸部材」としてはOA機器端末のシリアルプリンタに使用されるキャリッジシャフト、活字輪選択型プリンタに使用されている活字輪軸、モータシャフト等が例示され、また「ネジ部材」としては、セルフドリリングネジ、タッピングネジ、建築用ボルト等が例示される。
【0039】
一般的にこれらの部材は、素材からのスケール除去工程を経て潤滑剤が塗布され、冷間圧延、引抜きおよび鍛造 (熱間、冷間) で中間製品に成形加工された後、そのままの状態もしくは切削、または鍛造工程による更なる成形加工を経て使用されるか、または軟化もしくは硬化の熱処理 (通常は軟化の熱処理) が行われるが、本発明においても同様である。
【0040】
一般的なOA機器に使用されているシャフトおよび自動車用シャフトの場合、鋼素材を用いてこれら様々な工程を経て最終的に浸炭処理または窒化処理またはメッキ処理をする製品に対し、本発明によればこれらの表面処理を省略することができる。
【0041】
このように、本発明によれば、日本国内で言えば浸炭、窒化処理、メッキ等の表面処理が不要で作業費、エネルギー費、物流費等が不要となる。海外においての生産の場合は浸炭・窒化処理炉、メッキ設備が不要で初期投資が削減できるほか国内と同じ利点が得られる。
【0042】
しかも、近年、地球温暖化防止、化学物質規制の世論が高まる中、省資源省エネルギーおよび環境汚染の最小化を図るために、浸炭および窒化処理、メッキ処理を省略することができる本発明はその今日的意義の大きい発明である。
【0043】
【実施例】
表1に示す鋼組成の鋼を試験溶解し、熱間圧延により直径30mmの丸棒と直径6.5 mmの線材を得、熱間圧延後空冷した。このようにして得られた丸棒は切削性試験および耐食性試験の供試材とし、線材は、それぞれ冷間加工性、耐摩耗性および切削表面肌評価試験用の供試材とした。冷間加工性は溶体化条件および伸線加工によって評価した。
【0044】
耐食性、切削性および耐摩耗性は、以下の述べる要領で試験をして評価した。結果を表1ないし表3にまとめて示す。
表1において鋼No.1〜20までが本発明例で鋼No.21 〜35が比較例である。また鋼No.7〜20および鋼No.28 〜35は切削性改善を目的に快削元素を添加した材料である。
【0045】
【表1】
Figure 0004178670
【0046】
【表2】
Figure 0004178670
【0047】
【表3】
Figure 0004178670
【0048】
被削性:
切削条件は、表2では、工具がマクロアロイAF1 、回転数が2650rpm 、周速度が50m/min 、そして送り量が25μm/REであった。
被削性の評価は、切削表面の仕上がり状態で判断した。すなわち30mm丸棒を旋盤にて旋削加工後仕上がり表面に全くむしれ疵が認められなかったものを「○」、若干のむしれ疵は認められるが手直しによって実用上問題がないと判断されるものを「△」、むしれ疵が著しく、実用に耐えないと判断されるものを「×」、として評価し×以外を合格とした。
【0049】
このうちNo.15 材について引き抜きし、旋削試験、表面面粗度および穴ぐり性の試験を行った結果を表2および表3に示す。比較材は旋削および表面の面粗度では現在使用されているSUS416、穴あけ性では量産時に最低必要である穴あけ性を有する標準的なS45C、SUS304と比較した。
【0050】
表3に示す結果に見られるように、旋削性および面粗度はSUS416よりも優れ、穴あけ性ではS45Cと比較しやや劣るが、SUS304に比較し良好な被削性を有していることが確認された。
【0051】
表3では、穴明け性を評価しており、その時の切削条件は、工具が2.6mm のドリル、ドリル回転数が500rpm、自動送り量が0.07μm/RE、そして送り深さが10mmであった。
表3における溶体化処理Aは1100℃×水冷、同Bは1150℃×水冷、同Cは1200℃×水冷、そして同Dは引抜後1050℃×水冷であった。
【0052】
耐食性:
30mm丸棒を旋盤にて旋削後、#500のペーパーによって仕上げ研磨した試験片を気温45℃、湿度90%の雰囲気に360 時間保持し、JIS 鉄鋼材料の錆判定基準のレーティングで9以上を「○」とし、この基準を満たさない物は「×」とした。
【0053】
また6.5 mmの線材からNo.15 を代表サンプルとし引き抜き後、現行使用しているSUS416と耐食性の比較を行った。
結果は、表4にまとめて示す。これからも分かるように、本発明鋼の耐食性は良好であり、SUS416よりも良好であった。
【0054】
【表4】
Figure 0004178670
【0055】
冷間加工性:
冷間加工性は、6.5 mm線材を6.0 mmに伸線加工を行って評価した。評価方法は、伸線前に溶体化処理を実施した場合と溶体化処理なしで伸線を実施した場合で比較した。結果は表5にまとめて示す。
熱処理なしの伸線材の硬さは溶体化処理材と大差はなく、伸線加工による相変態も認められず、冷間加工性は良好であることを確認した。
【0056】
【表5】
Figure 0004178670
【0057】
耐摩耗性:
耐摩耗性は6.5 mmの線材を6.0 mmに引き抜きし、同一サイズのSUM24L材に軟窒化したシャフトおよびSUS416材とプリンターの過酷な繰り返し摺動試験で比較した。結果は表6に示す。
【0058】
同一摺動条件下で現行材と同等レベルもしくは優れていることを確認した。
なお、耐摺動性は材料の硬さの高低に依存せず良好な結果を示しているため、構成上の必要強度により本発明材料の硬さを選択することができる。
【0059】
【表6】
Figure 0004178670
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、耐食性、耐摩耗性、被削性および耐かじり性を兼ね備えた高強度のマンガン合金鋼を得ることができ、この材料を用いることによりOA関連機器、モータ、自動車、建築等の従来の部品構成材料のメッキ処理、浸炭窒化処理などの表面処理を省略して代替使用することが可能となる。
【0061】
例えば、高強度で耐摩耗性を具備し、耐食性、被削性に優れた鋼を要求されたとしても、式(1) を満足するような成分を調整すれば高強度で耐摩耗性、耐食性および被削性に優れたマンガン合金鋼を提供できる。
【0062】
したがって、本発明によれば、従来のマンガン系の鋼とは異なり、多くの優れた特性を同時に有し、そのときのニーズに合わせて任意に他分野に提供できる汎用性のある鋼材が提供できる。

Claims (6)

  1. 重量%で、
    C:0.05〜0.50%、 Si:0.5 %以下、 Mn:6.0 〜15.0%、
    Ni:0〜5.0 %、 Cr:10〜20%、 N:0.04〜0.30%、
    Al:0.10%以下、 S:0.030 %以下、
    Mo:0 〜3.0 %、 Cu:0 〜3.0 %、
    残部はFeおよび不可避不純物
    から成り、かつ式(1) を満足する鋼組成を有する、高強度で耐食性、耐摩耗性、および被削性に優れたマンガン合金鋼。
    Figure 0004178670
  2. 前記鋼組成が、さらにS: 0.030 〜0.350 %、Pb:0.04 〜0.35%、およびTe:0.002〜0.060 %から成る群から選んだ1種または2種以上の快削元素を含有する請求項1記載のマンガン合金鋼。
  3. 前記鋼組成が、さらにMo: 0.010 〜3.0 %を含有する請求項1または2記載のマンガン合金鋼。
  4. 前記鋼組成が、さらにCu: 0.10〜3.0 %を含有する請求項1ないし3のいずれかに記載のマンガン合金鋼。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の鋼組成を有する鋼に成形加工もしくは熱処理を行い、Hv ≧200 としたことを特徴とする軸部材。
  6. 請求項1ないし4のいずれかに記載の鋼組成を有する鋼に成形加工もしくは熱処理を行い、Hv ≧200 としたことを特徴とするネジ部材。
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