JP4178630B2 - 検証機能付き有価証券及び検証方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、株券、債券、手形、小切手等の証券類及びクレジットカード、プリペイカード、ポイントカード等のカード類、商品券等のような金券類である有価証券において、偽造防止対策が施され、さらにその真偽判定が容易である検証機能付き有価証券に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から換金可能である金券類、証券類、カード類を包含する有価証券(以下有価証券類と記す)に対する偽造防止対策は重要であり、様々な対策が施されてきている。その中で、特に紙幣を含めた多くの有価証券類に光学的手段を用いて真偽判定するための偽造防止対策が種々施されている。
これらの光学的手段を用いた真偽判定手段としては、例えば、蛍光体を主体とする蛍光インキを印刷し、紫外線照射用ランプ、いわゆるブラックライトを照射することによる発光を目視もしくは光学検知器によって検知し、真偽判定を行うことが行われている。
【0003】
紙幣では赤インキ中に蛍光体が含有されており、この蛍光体は、紫外線が照射されると赤い発光を呈するため、目視観察することによって真偽判定が可能である。またカード類の中には、複数色の蛍光体を設け、同様に紫外線を照射して真偽判定行うことができるカードがあり、これにブラックライトを照射すると複数の蛍光発光が認められ、これによって真偽判定をすることができる。
また他の例としては、有価証券の一部に赤外吸収剤を主体とする検証部を設け、赤外線を照射することによって真偽判定する方法が提案されている。方法としては大きく分けて二種類あり、赤外線を照射した面を赤外スコープで観察する方法と、赤外線を照射してコード情報を読みとる方法であるが、いずれも赤外線照射時の赤外吸収剤がある部分とない部分の反射率差、すなわちコントラストを利用したものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来の真偽判定方法においては、同時に複数枚の真偽判定をすることは困難であるという問題がある。
例えば、複数枚の紙幣をこの蛍光発光の観点から真偽判定しようとする場合、蛍光ランプを照射しながら一枚毎に観察しなければならないため煩雑で時間がかかってしまい、窓口等で即時的に真偽判定を迫られる場合には不都合である。
これは、赤外吸収剤を使用した方法も全く同様で、複数枚の真偽判定を同時にすることは非常に困難である。
【0005】
これらの検証の煩雑さの低減や検証時間の短縮のためには、例えば自動送り装置つきの光学検知機を装備した専用の検証器を用意する必要があり、余分なコストと設置場所が必要であるのが現状である。すなわち、従来の蛍光体や赤外吸収剤を主体とする光検知方式では、専用の検知器なしに一度に大量の券を真偽判定することは非常に困難であると言わざるを得ない。
【0006】
本発明は上述の現状を鑑みなされたもので、一度に大量の有価証券類を目視又は検知機で真偽判定することが可能である検証機能付き有価証券を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明は、少なくとも一つの対向する二辺の双方の表裏に、目視では確認困難であり適当な光照射手段及び検知手段を用いて検知可能な検証部を設けることにより、同時に複数枚の有価証券の真偽検証が可能であることを特徴とする検証機能付き有価証券である。
【0008】
また、請求項2に記載の本発明は、前記検証部は蛍光体を主体として構成され、該蛍光体が光照射手段の励起波長で励起され、蛍光体から放出された発光波長を検知手段で検知することで真偽検証が可能であることを特徴とする請求項1に記載の検証機能付き有価証券である。
【0009】
また、請求項3に記載の本発明は、前記検証部は可視光以外の波長の光線を吸収する光吸収材料を主体として構成され、該光吸収材料が吸収する吸収波長を有する光照射手段で照射し、検知手段が吸収波長と同じ波長を検知することで真偽検証が可能であることを特徴とする請求項1に記載の検証機能付き有価証券である。
【0010】
更に、請求項4に記載の本発明は、検証部が露出するようにずらして真偽検証することを特徴とする請求項1に記載の検証機能付き有価証券の検証方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して発明を詳細に説明する。なお、以下は一例であってこれに限定されるものではない。
図1は本発明の一実施形態を示す概念図であり、有価証券(1)の対向する二辺の両方の表裏面、この場合は長方形の二つの短辺の表裏面に検証部(2)が形成され、全体にそれには影響を及ぼさない印刷部(3)が形成されている。
【0012】
有価証券(1)の基材となる材質は必要に応じて自由に選択することができ、紙、プラスチック、木材、金属、ガラス、陶磁器等が使用可能であるが、一般的には紙やプラスチックが用いられる。
検証部(2)は印刷インキ中に目視上は確認困難であり、かつ適当な光照射手段及び適当な検知手段を用いて検知可能な光学的材料を含有するインキを用いて印刷を施したものである。これらの光学的材料とは、具体的には蛍光体もしくは光吸収剤を示す。
【0013】
蛍光体とは励起波長の光線を照射することによって分子・原子内の電子が励起され、それが元に戻る際に別の発光波長の光線を放射する物質である。また、光吸収剤とは特定波長の光線を選択的に吸収する物質である。いずれも、目視上は見えにくい材料が好ましく、光吸収剤としては、赤外線や紫外線の可視光以外の光を選択的に吸収する材料を用いる。
【0014】
蛍光体としては、紫外線を照射して可視光線を発光する材料、いわゆる紫外蛍光体と赤外線を照射して可視光線を発光する赤外−可視変換蛍光体がある。
紫外蛍光体は、硫化亜鉛やアルカリ土類金属の硫化物の高純度蛍光体に発光をより強くするために微量の金属(銅、銀、マンガン、ビスマス、鉛など)を付活剤として加えた後、高温焼成にて得られる。母体結晶と付活剤の組み合わせにより、色相、明るさ、色の減衰の度合いを調整できる。このような紫外線発光蛍光体としては、Ca2 B5 O9 Cl:Eu2+,CaWO4 ,ZnO:Zn,Zn2 SiO4 :Mn,Y2 O2 S:Eu,ZnS:Ag,YVO4 :Eu,Y2 O3 :Eu,Gd2 O2 S:Tb,La2 O2 S:Tb,Y3 Al5 O12:Ce等があり、目的に応じて単独あるいは混合して使用する。
【0015】
また、その他の蛍光体としては、赤外−可視変換蛍光体があり、非常に特殊な励起機構を持つ蛍光体である。エネルギーの小さな赤外線の光子を複数個用いることによって可視発光の励起を行う。二つのタイプの機構があり、一方は付活剤イオンの中の多段階の励起によって、他方は増感剤からの複数回の共鳴エネルギー伝達によって、それぞれ高い励起が可能になる。
始めののタイプは、Er3+やHo3+を付活剤とする多くの母体結晶で観測され、後のタイプは増感剤Yb3+が赤外線を吸収し、多段階のエネルギー伝達によって発光中心のEr3+、Tm3+、Ho3+等を高い準位に励起する。YF3:Yb+Er、YF3:Yb+Tm、BaFCl:Yb+Erなどが使用可能である。インキ中の蛍光発光体の重量率は検知手段による蛍光発光の検知もしくは目視が可能であれば良い。
【0016】
また、光吸収剤としては、赤外吸収剤と紫外吸収剤がある。
赤外吸収剤とは、主に700〜1000nmの近赤外波長域の光線を選択的に吸収する材料であって、シアニン系、フタロシアニン系、メロシアニン系、アントラキノン系、ナフタロシアニン系、スクワリリウム系等の有機染料系材料、ITO、ATO、ZnO等の無機系材料が使用可能である。
【0017】
また、紫外吸収剤は紫外線吸収剤としては、例えばフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、等のサリチル酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジtert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。また、TiO2 やZnO系等の微粉末の無機紫外線遮蔽剤を用いても良い。
【0018】
上記の材料をオフセットインキ用メジウム、グラビアインキ用メジウム、スクリーンインキ用メジウム等、各印刷方式に適したインキ用メジウムを適宜使用してインキを作製し、、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の印刷方式により設けることができる。
【0019】
印刷部(3)は目視上の画像や文字が印刷されたもので、オフセットインキ、グラビアインキ、スクリーンインキ等、各印刷方式に適したインキを適宜使用し、オフセット印刷法、グビア印刷法、スクリーン印刷法等の印刷方式により設けることができる。
【0020】
次に、本発明の中心となる検証部(2)およびこれを使用した検証方法について説明する。検証部(2)を設ける場所は、有価証券(1)の対向する少なくとも一組の辺の表裏、すなわち相対する短辺、長辺のどちらかまたは両方の表裏である。
例えば、検証部(2)を対抗する短辺の表裏に設けた場合、有価証券(1)を100枚程度重ねてそろえた場合、印刷部(3)を基準に見ると、確率からすると各有価証券(1)は上下逆や表裏逆になっているものがそれぞれ4分の1程度、すなわち25枚前後程度存在することになるが、検証部(2)基準で見るとどのようにおいても全く同一であるから、この場合にはランダムに集められた有価証券(1)を手で適当にそろえただけで、短辺の両方に検証部(2)がくることになる。言い換えれば、検証のためだけに有価証券(1)をわざわざそろえ直す必要は全くない。
【0021】
この状態で手で長辺方向にわずかずつずらせば、重ねられた全ての有価証券(1)の検証部(2)が露出することになり、適当な検知手段を持つ検証器を用いれば、全ての有価証券(1)の真偽判定が同時に可能となる。すなわち、検証器で本来の特性が得られない有価証券(1)が偽物であると断定できる。検証部(2)を長辺もしくは短辺と長辺の両方に設けた場合も、全く同じ理屈で真偽判定が可能である。
【0022】
図2に本発明によって構成される有価証券1の真偽判定方法に関する概要図を示す。蛍光体を検証部(2)として使用した場合の真偽判定の様子を示す。
この図では、有価証券(1)を厚み方向から見た状態で説明する。本発明において、「有価証券をずらす」とは図2のように、上から2枚目以降の有価証券の端にある検証部(2)が上面から観察可能な程度に露出させることをいう。したがって、図2のように5枚重ねた中央の1枚だけが偽造券(10)であり、その他は真券である場合にも、適当な検知手段を用いることによって全ての券を同時に真偽判定することが可能である。
【0023】
図3に、検知手段として蛍光体を使用した場合の検知方法を示す。
ブラックライト(11)から励起光(12)を、検証対象の有価証券に対して照射すると、蛍光発光(13)が観察され、目視観察(14)をする。この場合、偽造券(10)からは蛍光発光(13)は認められないため、真偽判定は容易である。
【0024】
また、図4に、検知手段として赤外吸収材料を使用した場合の検知方法を示す。
発光ダイオード、半導体レーザー等の赤外線照射手段(21)から照射された赤外線(22)は検証部(2)がある真券では吸収されてしまってほとんど反射されないので点線で示した。しかし、検証部(2)がない偽造券では十分に反射されるので、この状態を実線で示した。従って、適当な光学フィルター(24)と赤外検知手段(25)を使用することにより、多数枚の真偽判定を同時に、かつ容易に行うことができる。
【0025】
【実施例】
以下に、実施例を示す。
<実施例1>
基材として上質紙(90kg)を使用し、これに検証部(2)は以下の配合比からなる組成物がグラビア法により、乾燥温度110℃、厚さ1.0μmで形成され、縁から10mm内側まで券面の二つの短辺の両方の表裏に設けられている。
アクリル樹脂 …30部
紫外線発光蛍光体(ZnS:Cu) …12部
メチルエチルケトン …50部
トルエン …50部
さらに、オフセット印刷法により黄、紅、藍のプロセス色により、絵柄を全面に印刷した。
<実施例2>
実施例1と同様であるが、検証部(2)は二つの長辺の両方の表裏に形成されている。
<実施例3>
実施例1と同様であるが、検証部(2)は4辺全ての表裏に設けられている。
<実施例4>
実施例1と同様であるが、検証部(2)は次の組成に変更した。
シアニン系赤外吸収色素 … 1部(最大吸収波長870nm)アクリル樹脂 …50部
メチルエチルケトン …50部
トルエン …50部
<比較例1>
実施例1と同様であるが、検証部(2)は一つの短辺の表裏のみに設けられており、対向する辺には設けられていない。
<比較例2>
実施例2と同様であるが、検証部(2)は一つの長辺の表裏のみに設けられており、それぞれ対向する辺には設けられていない。
<比較例3>
実施例1と同様であるが、検証部(2)は二つの短辺の両方の表面のみに形成されており、裏面には形成されていない。
<比較例4>
実施例2と同様であるが、検証部2は二つの長辺の両方の表面のみに形成されており、裏面には形成されていない。
【0026】
以上の様にして作成したサンプルを以下のようにして真偽判定を試みた。
実施例1〜4及び比較例1〜4のサンプルを真券とみなし、それぞれ98枚用意した。これと、偽造券に見立てた商品券として、検証部(2)を設けず同じ絵柄のみを印刷した商品券2枚の合計100枚をよく混ぜて重ね合わせ、真偽判定サンプルとした。従って、2枚が正しく偽造券と判定できればよいことになる。
実施例1〜3及び比較例1〜4については、表に示すように短辺もしくは長辺方向にずらし、これに350nmの紫外線を照射し、蛍光によって得られる緑色の発光を観察し、蛍光発行が認められない券を偽造券として判断し、その枚数を表に記載した。
【0027】
実施例4については、表に示すように短辺方向にずらし、870nmの波長を含む赤外線を照射した券を、850nm以下の波長をカットするフィルターを搭載した赤外スコープで観察し、吸収が認められない券を偽造券と判断してその枚数を表に記載した。
さらに、正しい偽造券の枚数は2枚であるので、それを差し引いた枚数を誤判定枚数として表に併記した。
【0028】
【表1】
【0029】
この表から、本発明によって構成される有価証券は、多数枚を一度に容易に、しかも正確に真偽判定可能であり、偽造防止に効果的であることがわかる。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明によってなる有価証券は、一度に複数枚の真偽判定を素早く、かつ正確に行うことが可能であり、真偽判定並びに偽造防止に非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の検証機能付き有価証券の一実施態様を示す概略図である。
【図2】本発明の真偽判定の様子を示す概要図である。
【図3】本発明の蛍光体を用いた場合の真偽判定方法を示す概要図である。
【図4】本発明の赤外線吸収材料を用いた場合の真偽判定方法を示す概要図である。
【符号の説明】
1…有価証券 2…検証部 3…印刷部
10…偽造券 11…ブラックライト 12…励起光
13…蛍光発光 14…目視観察 21…赤外線照射手段
22…赤外線 23…反射光 24…光学フィルター
25…赤外検知手段
Claims (4)
- 少なくとも一つの対向する二辺の双方の表裏に、目視では確認困難であり適当な光照射手段及び検知手段を用いて検知可能な検証部を設けることにより、同時に複数枚の有価証券の真偽検証が可能であることを特徴とする検証機能付き有価証券。
- 前記検証部は蛍光体を主体として構成され、該蛍光体が光照射手段の励起波長で励起され、蛍光体から放出された発光波長を検知手段で検知することで真偽検証が可能であることを特徴とする請求項1に記載の検証機能付き有価証券。
- 前記検証部は可視光以外の波長の光線を吸収する光吸収材料を主体として構成され、該光吸収材料が吸収する吸収波長を有する光照射手段で照射し、検知手段が吸収波長と同じ波長を検知することで真偽検証が可能であることを特徴とする請求項1に記載の検証機能付き有価証券。
- 検証部が露出するようにずらして真偽検証することを特徴とする請求項1に記載の検証機能付き有価証券の検証方法。
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