JP4178513B2 - テクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法 - Google Patents

テクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜太陽電池等の構成部材の内、光散乱を生じさせる裏面電極として適用可能なテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、環境保護の立場から、クリーンなエネルギーの研究開発が進められている。中でも太陽電池は、その資源である太陽光が無限であること、無公害であることなどから注目を集めている。
【0003】
従来、太陽電池による太陽光発電には、単結晶または多結晶シリコンが多く用いられてきた。しかし太陽電池に使用するこれらのシリコンでは、結晶の成長に多くのエネルギーと時間とを要し、かつ、続く製造工程においても複雑な工程が必要となるため量産効率が上がりにくく、低価格の太陽電池を提供することが困難であった。一方、アモルファスシリコンなどの半導体を用いた、いわゆる薄膜半導体太陽電池(以下薄膜太陽電池と記載)は、ガラスまたはステンレススチールなどの安価な基板上に、光電変換層である半導体層を必要なだけ形成すればよい。したがって、この薄膜太陽電池は、薄型で軽量、製造コストの安さ、大面積化が容易であることなどから、今後の太陽電池の主流になると考えられている。しかし薄膜太陽電池は、その変換効率が結晶シリコン太陽電池に比べて低く、これまで本格的に使用されてこなかった。そこで薄膜太陽電池の性能を改善するため、様々な工夫が現在なされている。
【0004】
その一つが、光電変換層の裏面側、つまり本発明の利用分野の1つである薄膜太陽電池の裏面電極からの光の反射特性を高めることである。これによって、光電変換層で吸収されなかった太陽光を、再び光電変換層に戻し太陽光を有効に利用することが可能となる。中でも、エネルギーの低い長波長領域の光を光電変換層に効率的に吸収させるためには、裏面電極にテクスチャー構造を形成させることが大変効果的である。光電変換層で吸収されきれずに裏面電極に到達した光は、このテクスチャー構造を持つ裏面電極で散乱反射され、方向を変えて再び光電変換層に入っていく。この散乱により光路長が伸びるとともに、全反射条件により光が効果的に太陽電池内に閉じ込められる、この光閉じ込め効果と称される効果により、光電変換層での光吸収が促進されて太陽電池の変換効率が向上する。光閉じ込め効果は、太陽電池の高効率化技術として今や必須となっている。透光性基板側から光を入射させるスーパーストレート型太陽電池では通常、基板/透明電極/光電変換層/裏面電極の構成となっており、この光入射側の透明電極、例えばSnOといった材料にテクスチャー構造が形成される。
【0005】
また、光電変換層の表面から光を入射させるサブストレート型太陽電池では、基板/裏面電極/光電変換層/透明電極の構成となっており、一般的にこの裏面電極にテクスチャー構造を形成させて光散乱を生じさせている。このサブストレート型太陽電池のテクスチャー構造を有する裏面電極は、例えば、Ag薄膜を高温下で形成するといった方法により、裏面電極表面を凹凸化させてテクスチャー構造を形成させている(例えば、非特許文献1、特許文献1および特許文献2参照)。
【0006】
さらに、フラットパネルディスプレイ用途で使用される、導電性酸化物を添加したAg系薄膜およびそのスパッタリングターゲットに関する発明が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−218977号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平8−288529号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2002−235169号公報
【0010】
【非特許文献1】
A. Banerjee et al., Proc. 23rd IEEE Photovoltaic Specialists Conf., Louisville, 1993(IEEE, New York, 1993)795.
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来のテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法では、成膜時に少なくとも400℃以上の高温が必要となり、プロセスの制約または製造設備のランニングコスト等に関して大きな問題があり、良好なテクスチャー構造を容易に形成させることはもちろんのこと、テクスチャー構造自体を制御することなどはできなかった。
【0012】
本発明の目的は、成膜時に上記のような高温を必要とせずに、良好なテクスチャー構造を有し、さらにはテクスチャー構造の平均表面粗さおよび形状を制御することが可能な導電性薄膜を形成する方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するものとして、以下の通りの発明を提供する。
【0014】
本発明のテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法は、酸化アルミニウムを含有したAgを原材料として用い、かつ、真空成膜プロセスを使用することを特徴としている。
【0015】
本発明のテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法は、原材料中の酸化アルミニウムの含有量が、0.01〜5mol%であることを特徴としている。
【0016】
本発明のテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法は、原材料として酸化アルミニウムを含有したAgターゲットを用い、かつ、真空成膜プロセスとしてスパッタリング法を使用することを特徴としている。
【0017】
本発明のテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法は、原材料としてアルミニウムを含有したAg蒸着材料を用い、かつ真空成膜プロセスとして蒸着法を使用し、酸素雰囲気下で成膜することを特徴としている。
【0018】
本発明のテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法において、導電性薄膜の平均表面粗さが16nmよりも大きいことを特徴としている。
【0019】
本発明のテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法において、異なる組成の導電性薄膜を複数積層する工程がさらに含まれることを特徴としている。
【0020】
本発明のテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法において、複数積層される異なる組成の導電性薄膜に、純Ag層が含まれることを特徴としている。
【0021】
さらに、薄膜太陽電池として、基板と、上記発明のいずれか1つに記載のテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法によって作製された導電性薄膜を適用した裏面電極と、光電変換層と、透明電極とを備えることを特徴としている。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明は、上記の通りの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0023】
導電性薄膜は、絶縁性酸化物、中でも酸化アルミニウムを含有したAgから形成されることが好ましい。特に酸化アルミニウムは、好ましくは0.01〜5mol%、より好ましくは0.05〜1mol%、最も好ましくは0.1〜0.5mol%の範囲で導電性薄膜中に含有されていた方がよい。酸化アルミニウムの含有量が0.01〜5mol%の範囲内では、導電性薄膜の抵抗率の上昇および反射率の減少を生じさせることなく、平均表面粗さが16nmよりも大きい良好なテクスチャー構造を有する導電性薄膜を得ることができる。また、導電性薄膜の膜厚は、100〜700nm、好ましくは150〜500nm、最も好ましくは200〜350nmである。導電性薄膜の膜厚が100〜700nmの範囲内であれば、抵抗の増加による太陽電池特性の悪化、または太陽電池のショートを生じさせることなく導電性薄膜を形成できる。
【0024】
さらに、テクスチャー構造の平均表面粗さおよび形状を制御するために、異なる組成の導電性薄膜を複数積層する工程をさらに含むことができる。ここで「平均表面粗さ」とは、算術平均粗さ(Ra)を指す。なお、異なる組成の導電性薄膜とは、(1)酸化アルミニウムを0.01〜5mol%の範囲で種々含有させたAg薄膜、(2)酸化アルミニウムを(1)の範囲外であって上限50mol%未満含有させたAg薄膜、(3)モリブデン、タングステン、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、銅、銀、金、白金、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、アルミニウム、シリコン等の金属またはそれらの合金、(4)下記にも示すような透明導電膜、などといった導電性を有し、かつ真空プロセスによって薄膜とすることのできるものを指す。中でも導電性の良好な(1)、(3)および(4)を適用することが好ましく、また高い反射率を得ること等を考慮すると、(1)および(3)を適用することがより好ましいが、(3)を適用することが最も好ましい。さらに(3)の中でも、高い導電性および反射率を得ることを考慮すると、銀を適用することが好ましい。また、基板上に導電性薄膜を複数積層する場合、本発明の(1)の層の上に、(2)〜(4)の少なくとも1種の層を積層しても良く、逆に(2)〜(4)の少なくとも1種の層の上に、(1)の層を積層しても良く、さらには、(1)〜(4)を複数回組み合わせて積層しても良い。ただし、(1)の層が最表層にこない場合は、(1)によって形成されたテクスチャー構造を損なわない程度に、(1)の上に積層される層の膜厚を制御すればよい。
【0025】
次に、導電性薄膜を成膜する方法としては、蒸着、分子線エピタキシー、レーザーアブレーション、スパッタリング、イオンプレーティング、イオン化クラスタービーム蒸着、およびイオンビーム蒸着などの物理的気相成長法、並びに熱化学的気相成長法、光化学的気相成長法、およびプラズマ化学的気相成長法などの化学的気相成長法を使用することができるが、中でも、スパッタリングまたは蒸着を使用することが好ましく、成膜効率等を考慮すると、最も好ましいのはスパッタリングである。ここで従来は、成膜時に400℃以上の高温が必要であったが、本発明によれば、30℃〜400℃未満の温度範囲、好ましくは150℃〜350℃、最も好ましくは200℃〜350℃の温度範囲で、従来の400℃以上の高温下で形成した導電性薄膜と同等以上のテクスチャー構造を有する導電性薄膜を形成することが可能である。
【0026】
成膜時に使用する原材料は、スパッタリングでは、Agターゲットとともに酸化アルミニウムターゲットを用いるといった、2本以上のターゲットを使用してもよいが、酸化アルミニウムを含有したAgターゲットを使用することの方が好ましい。なお、ターゲット中の酸化アルミニウムの含有量は、得ようとしている導電性薄膜中の酸化アルミニウムの含有量に対応させればよい。蒸着の場合には、Agおよびアルミニウムを蒸着材料として、酸素の存在する雰囲気下で成膜すればよい。なお、蒸着材料中のアルミニウムの含有量は、得ようとしている導電性薄膜中の酸化アルミニウムのアルミニウム成分量と対応させればよい。つまり、導電性薄膜中の酸化アルミニウム(Al)の含有量が0.01〜5mol%ならば、蒸着材料中のアルミニウム(Al)の含有量は、2倍の0.02〜10mol%にすればよい。
【0027】
ところで、真空成膜プロセスにおいて、剛性の強い基板を使用する場合、バッチ式またはインライン式等の成膜装置を使用することが可能である。さらに可撓性フィルムの場合、各成膜室内を移動する基板上に連続的に成膜するロールツーロール方式の成膜装置、または各成膜室内で基板を同時に停止させて成膜し、成膜の終わった基板部分を次の成膜室へ送り出すステッピングロール方式の成膜装置等を使用することが可能である。
【0028】
次に、図1に本発明の導電性薄膜を裏面電極として適用した、サブストレート型薄膜太陽電池の一構成例を示す。図1において、2は基板、4は前述の導電性薄膜、6aは透明導電膜、8は光電変換層、6bは透明導電膜、および10は入射光を指す。
【0029】
基板2は、薄膜太陽電池の各構成層の支持体としての役割を果たすものであり、剛性の強い基板、または軽量性および量産性などに優れたフィルム状の基板を使用することが可能である。剛性の強い基板は、一般的に厚さ1mm以上のものが使用されるが、液晶基板またはタッチパネル等で使用されているような厚さ0.1〜1mm程度の極めて薄い基板を使用してもよい。また、フィルム基板は、厚さ5〜350μmのものを使用することができるが、一般的には、厚さ20〜200μmの基板を使用するのが好ましい。材質としてはガラス材料;Al、Cu、Ni、Co、Cr、Fe、Zn、Pb、またはTiなどの金属材料およびこれらの合金材料(ステンレスなど);Si、Ge、Al、トリア(ThO)、マグネシア(MgO)、ベリリア(BeO)、窒化珪素(Si)、窒化ボロン(BN)、および炭化珪素(SiC)などからなるセラミック材料;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、または耐熱性などに優れるポリイミド系、アラミド系、もしくはフッ素系の高分子材料などから選択されることが好ましい。
【0030】
これらの基板は、本発明の適用に当たって便宜、その表面を研磨もしくは粗面化してもよい。
【0031】
透明導電膜6aおよび6bとしては、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO)、酸化インジウム(In)、ITO(インジウムスズ酸化物)、酸化カドミウム(CdO)、もしくはスズ酸カドミウム(CdSnO)などの金属酸化物または硫化カドミウム(CdS)などを使用できる。またこれらにIII族またはV族の元素を添加することによって、抵抗値を所望の値に制御してもよい。III族またはV族の元素を添加する方法としては、例えば、III族であるAlを酸化アルミニウムの形でZnOターゲットに加えることによって容易に行える。また透明導電層の膜厚は、20〜200nmの範囲で使用することができるが、中でも、膜厚が40〜100nmの範囲、最も好ましくは60〜80nmの範囲内であれば、透明導電膜と光電変換層との屈折率に起因する干渉を大幅に低減することができ、太陽光を最もロスなく取り込むことができる。なお、透明導電膜6aは必ずしも無くても良いが、導電性薄膜から光電変換層への金属の拡散等による欠陥を防ぐことを考慮すると、透明導電膜6aを形成した方が好ましく、この場合、裏面電極とは通常、前述した導電性薄膜とこの透明導電膜6aとを含んでいる。また透明導電膜6bは、薄膜太陽電池において、透明電極とも呼ばれている。
【0032】
光電変換層8としては、アモルファスシリコン系半導体による1つのp−i−n接合を有するものでも、複数積層したタンデムタイプのものでもよい。またこの他に、薄膜多結晶シリコン、微結晶シリコン、ガリウム砒素(GaAs)、インジウムりん(InP)、CdS/カドミウムテルライド(CdTe)、セレン化銅インジウム(CuInSe)、CdS/CuInSe、およびこれらの複合層を使用することができる。また光電変換層の膜厚は、100nm〜700nmの範囲で使用することができるが、中でも、膜厚が150〜500nmの範囲、最も好ましくは200〜400nmの範囲内であれば、太陽光を十分に吸収し、さらに、アモルファス特有の光劣化を大幅に抑えることができる。
【0033】
本発明の方法で形成された導電性薄膜は、裏面電極としてサブストレート型またはスーパーストレート型薄膜太陽電池に適用することができる。入射光が基板の反対側から入射するサブストレート型薄膜太陽電池は、図1に示すような構成で作製すればよく、また基板に透明なガラスまたは高分子基板を使用し、入射光を基板側から入射するスーパーストレート型薄膜太陽電池は、基板2に、透明導電膜6b、光電変換層8、透明導電膜6a、導電性薄膜4の順で各層を積層した構成で作製すればよい。
【0034】
【実施例】
以下に具体的な実施例をあげて本発明をより詳細に説明する。
(実施例1)
酸化アルミニウムを0.3mol%含有したAgターゲットを用い、かつ高周波スパッタリング装置によって、裏面電極である導電性薄膜の形成を行った。装置内の真空度が10−5Paに到達した後、50sccmのArを導入して、0.665Paの圧力を保持した。ヒーターを350℃に設定し、50μm厚のポリイミドフィルム基板を加熱した状態で、200Wの高周波電力を印加し、スパッタリング法により膜厚200nmの裏面電極サンプルを作製した。なお、基板にガラス(コーニング社製#7059)を使用しても、ポリイミドフィルム基板の場合と比べて諸物性は変化しておらず、本発明による方法では、基板による影響はないものと考えられる。
【0035】
(比較例1)
ターゲットに従来材料であるAgターゲットを用いたこと以外は、実施例1と同様な方法により、膜厚200nmの裏面電極サンプルを作製した。
【0036】
実施例1および比較例1について、全反射率R(T)(鏡面反射率および散乱反射率を含む)および鏡面反射率R(S)(基板表面に対する光の入射角と反射角とが等しい反射の割合)の光学測定を行い、これに基づいて、入射光の波長(nm)に対する散乱度(=(R(T)−R(S))/R(T))の値を図2に示した。なお、散乱度とは反射光の内、どの程度の光が散乱されているかを示すもので、この値が1に近いほど散乱が促進されていることになる。図2の結果から明らかなように、実施例1は比較例1よりも優れた散乱特性を示していることが確認できた。
【0037】
次に、実施例1および比較例1について、原子間力顕微鏡(AFM)により平均表面粗さを評価し、その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
Figure 0004178513
【0039】
表1からも明らかなように、比較例1に比べて実施例1は、平均表面粗さが20nmも大きくなっており、良好なテクスチャー構造が形成されていることが分かった。
【0040】
(実施例2)
実施例1の方法により導電性薄膜を、膜厚50μmのポリイミドフィルム基板上に250nmの膜厚で形成した。次に、化学気相成長法により水素化アモルファスシリコンの光電変換層を形成した。n層/界面層/i層/界面層/p層の積層構造を構築し、このときのi層の膜厚を300nmとした。スパッタリング法により、この積層構造の上に透明電極である膜厚70nmのITO薄膜を形成し、シングル接合薄膜太陽電池のサンプルを作製した。
【0041】
(比較例2)
比較例1の方法により導電性薄膜を、膜厚50μmのポリイミドフィルム基板上に250nmの膜厚で形成した。次に、化学気相成長法により水素化アモルファスシリコンの光電変換層を形成した。n層/界面層/i層/界面層/p層の積層構造を構築し、このときのi層の膜厚を300nmとした。スパッタリング法により、この積層構造の上に透明電極である膜厚70nmのITO薄膜を形成し、シングル接合薄膜太陽電池のサンプルを作製した。
【0042】
表2に、実施例2および比較例2のシングル接合薄膜太陽電池の諸特性を示す。
【0043】
【表2】
Figure 0004178513
【0044】
表2から、実施例2は比較例2に比べて、開放電圧(Voc)は1.1%程低くなっているが、短絡電流密度(Jsc)が3.8%、フィルファクター(FF)が1.5%大きくなっており、結果的に変換効率が4.2%も向上することが分かった。これは、裏面電極表面のテクスチャー構造が改善されていることが影響していると考えられる。つまり、本発明の導電性薄膜の形成方法によって作製された導電性薄膜を裏面電極として適用した太陽電池は、従来の導電性薄膜からなる裏面電極を適用した太陽電池に比べて、変換効率を向上できることが明らかとなった。
【0045】
(実施例3)
異なる組成の導電性薄膜を積層する工程をさらに追加することで、テクスチャー構造の平均表面粗さおよび形状を制御できるかを評価する上で、次のような方法により積層された裏面電極サンプルを作製した。まず、比較例1の方法により、膜厚50μmのポリイミドフィルム基板上に純Ag層125nmを形成し、次に実施例1の方法により、この純Ag層上に酸化アルミニウム含有Ag層125nmを積層し、裏面電極サンプルを作製した。
【0046】
比較例1、実施例1および実施例3のサンプルの平均表面粗さをAFMにより評価し、その結果を表3に示す。さらに各サンプルのテクスチャー構造の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察し、その結果を図3〜5に示した。
【0047】
【表3】
Figure 0004178513
【0048】
表3から、異なる組成の導電性薄膜を積層することにより、平均表面粗さを制御できることが分かった。さらに図3〜5からも明らかなように、本発明の方法によって、テクスチャー構造の凹凸形状も制御できることが確認できた。
【0049】
(実施例4)
アルミニウムを0.5mol%含有したAg蒸着材料を用い、かつ蒸着法により、裏面電極である導電性薄膜の形成を行った。装置内の真空度が1×10−3Paに到達した後、5sccmの酸素を導入して、1×10−2Paの圧力を保持した。ヒーターを350℃に設定し、50μm厚のポリイミドフィルム基板を加熱した状態で、蒸着法により膜厚250nmの裏面電極サンプルを作製した。なお、基板にガラス(コーニング社製#7059)を使用しても、ポリイミドフィルム基板の場合と比べて諸物性は変化しておらず、本発明による方法では、基板による影響はないものと考えられる。
【0050】
(比較例3)
蒸着材料に従来材料であるAgを用いたこと以外は、実施例4と同様な方法により、膜厚250nmの裏面電極サンプルを作製した。
【0051】
実施例4および比較例3について、AFMにより平均表面粗さを評価し、その結果を表4に示す。表4の結果からも明らかなように、比較例3に比べて実施例4は、平均表面粗さが14nmも大きくなっており、良好なテクスチャー構造が形成されていることが分かった。
【0052】
【表4】
Figure 0004178513
【0053】
(実施例5)
実施例4の方法により導電性薄膜を、膜厚50μmのポリイミドフィルム基板上に250nmの膜厚で形成した。次に、化学気相成長法により水素化アモルファスシリコンの光電変換層を形成した。n層/界面層/i層/界面層/p層の積層構造を構築し、このときのi層の膜厚を300nmとした。蒸着法により、この積層構造の上に透明電極である膜厚70nmのITO薄膜を形成し、シングル接合薄膜太陽電池のサンプルを作製した。
【0054】
(比較例4)
比較例3の方法により導電性薄膜を、膜厚50μmのポリイミドフィルム基板上に250nmの膜厚で形成した。次に、化学気相成長法により水素化アモルファスシリコンの光電変換層を形成した。n層/界面層/i層/界面層/p層の積層構造を構築し、このときのi層の膜厚を300nmとした。蒸着法により、この積層構造の上に透明電極である膜厚70nmのITO薄膜を形成し、シングル接合薄膜太陽電池のサンプルを作製した。
【0055】
表5に、実施例5および比較例4のシングル接合薄膜太陽電池の諸特性を示す。
【0056】
【表5】
Figure 0004178513
【0057】
表5から、実施例5は比較例4に比べて、Vocは1.1%程低くなっているが、Jscが2.6%、FFが3.2%大きくなっており、結果的に変換効率が4.7%も向上しており、蒸着法においても、本発明の導電性薄膜の形成方法によって作製された導電性薄膜を裏面電極として適用した太陽電池は、従来の導電性薄膜からなる裏面電極を適用した太陽電池に比べて、変換効率を向上できることが明らかとなった。
【0058】
(実施例6)
以下のような方法によって、積層された裏面電極サンプルを作製し、異なる組成の導電性薄膜を積層する工程をさらに追加することで、テクスチャー構造の平均表面粗さおよび形状を制御できるかを評価した。まず、比較例3の方法により、膜厚50μmのポリイミドフィルム基板上に純Ag層125nmを形成し、次に実施例4の方法により、この純Ag層上に酸化アルミニウム含有Ag層125nmを積層し、裏面電極サンプルを作製した。
【0059】
比較例3、実施例4および実施例6のサンプルの平均表面粗さをAFMにより評価し、その結果を表6に示す。
【0060】
【表6】
Figure 0004178513
【0061】
表6から、異なる組成の導電性薄膜を積層することにより、蒸着法においても平均表面粗さを制御できることが分かった。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、真空成膜法により酸化アルミニウムを含有したAgからなる導電性薄膜を形成することによって、成膜時に400℃以上の高温にすることなく、良好なテクスチャー構造を有する導電性薄膜を形成することができる。また、異なる組成の導電性薄膜を複数積層する工程をさらに含むことによって、このテクスチャー構造の平均表面粗さおよび形状を制御できる。したがって、本発明によって形成された導電性薄膜は、そのテクスチャー構造により光閉じ込め効果を向上させるため、この導電性薄膜を、導電性薄膜の一つの適用例である薄膜太陽電池の裏面電極に適用することにより、容易に従来品よりも変換効率を高めた、より高性能の薄膜太陽電池を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性薄膜を適用したサブストレート型薄膜太陽電池の断面図の一例である。
【図2】Agターゲットおよび酸化アルミニウム含有Agターゲットを使用して形成された裏面電極の入射光の波長と散乱度との相関関係を示すグラフである。
【図3】実施例1における導電性薄膜表面のSEM画像である。
【図4】比較例1における導電性薄膜表面のSEM画像である。
【図5】実施例3における導電性薄膜表面のSEM画像である。
【符号の説明】
2 基板
4 導電性薄膜
6a 透明導電膜
8 光電変換層
6b 透明導電膜
10 入射光

Claims (5)

  1. 酸化アルミニウムを含有したAgを原材料として用い、かつ、真空成膜プロセスを使用するテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法であって、
    原材料中の酸化アルミニウムの含有量が、0.01〜5mol%であることを特徴とする導電性薄膜の形成方法。
  2. 原材料としてアルミニウムを含有したAg蒸着材料を用い、かつ、真空成膜プロセスとして蒸着法を使用して、酸素雰囲気下で成膜することを特徴とするテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法。
  3. 異なる組成の導電性薄膜を複数積層する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載のテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法。
  4. 異なる組成の導電性薄膜が、純Ag層を含むことを特徴とする請求項に記載のテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法。
  5. 基板と、請求項1から4のいずれか一項に記載のテクスチャー構造を有する導電性薄膜の形成方法によって作製された導電性薄膜を適用した裏面電極と、光電変換層と、透明電極とを備えることを特徴とする薄膜太陽電池。
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