JP4178335B2 - 脱酸素成分 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、脱酸素性能に優れ、かつ乾燥状態から高湿度状態までの広い湿度範囲において使用可能な粉状または粒状の脱酸素成分に関する。本発明の脱酸素成分は、そのまま又は吸着剤等を混合し、小袋に入れた形態、樹脂に練り込んだ形態、樹脂に練り込んで成形した容器および包装体の形態などで、食品、医薬品、金属製品や電子製品などの、酸素の影響を受けて変質し易い各種物品の酸化を防止する目的に使用される。
【0002】
【従来の技術】
食品、医薬品、金属製品や電子製品に代表される、酸素の影響を受けて変質し易い各種物品の酸化を防止する目的で、これらを収納した包装容器や包装袋内の酸素除去を行う脱酸素剤が従来より使用されている。この脱酸素剤として初期に開発され現在も多く使用されている形態は、粉状または粒状の脱酸素成分を小袋に詰めたものである。また、より取扱いが容易で適用範囲が広く、誤食などの問題のない安全な脱酸素体として、脱酸素成分を練り込んだ樹脂からなる層を含む単層または多層のフィルムまたはシートの形状のものがある。
【0003】
脱酸素成分としては、現在、鉄粉が最も多く用いられている。しかし、この鉄粉などの金属粉を酸化させるには、水分が必要であり、脱酸素の対象となる系に水分が少ない場合(以下、乾燥系と呼ぶ)には、脱酸素が生じないか、または速度が極めて低かった。
これに対して、高湿度の系だけでなく乾燥系でも使用可能な脱酸素成分として、種々の有機化合物を被酸化物とする反応系が開発されている。この脱酸素成分の例として、不飽和炭素−炭素結合を含むものでは低分子系(特公昭60−28266、特公昭62−60936など)または高分子系(特開平4−29741、特開平5−115776など)、不飽和炭素−炭素結合をほとんど含まないものではアルコール類(特開平3−8441など)などの低分子系またはポリオレフィン(特開平4−187238など)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(特公平6−49354など)、ポリ塩化ビニル(特開平3−269044など)、ポリアミド(特表平2−500846など)などの各種高分子系があり、いずれも、酸素との反応を促進するための触媒として各種の金属または金属化合物を加えている。
【0004】
他方、これらの乾燥系用の脱酸素成分を実際に用いる場合には、扱い易い固体であることが望ましい。さらに、一般的な固体反応と同様に、固体の表面積を増加させて酸化反応を高速化することが望ましい。この観点から、粉状または粒状の固体を得ている例として、低分子(液体)を担体に担持または固化させる系(特公昭62−60936、特公平8−11056など)、高分子(固体)の塊を粉砕する系(特開平4−187238など)などがある。しかし、液体を担持または固化する場合には、液体が漏れ出す危険性があり、また、固体の塊を粉砕する場合には、前記の各種高分子(熱可塑性樹脂)が室温付近で柔軟であるために、低温で粉砕する必要があった。さらに、特にガラス転移温度の低い、不飽和炭素−炭素結合を含む一部の高分子系では、一度低温で粉砕しても、室温付近に戻した段階で粉または粒同士が相互に再付着して、大きな塊になってしまう問題があった。
【0005】
以上のように、乾燥系用の脱酸素成分はすでに知られていたが、扱い易い粉状または粒状でその構成成分の全てを固体としたものは存在していなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決して、脱酸素性能に優れ、乾燥状態から高湿度状態までの広い湿度範囲において使用可能な、扱い易い粉状または粒状の脱酸素成分を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、炭素−炭素不飽和結合を有する有機化合物に適度な架橋構造を導入することにより、扱い易い粉状または粒状の架橋高分子からなる脱酸素成分とすることができ、同時に優れた脱酸素性能が発揮されることを見出して、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、平均粒径が0.01〜5mmの粉状または粒状であり、炭素−炭素不飽和結合を有する架橋高分子からなる脱酸素成分に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における架橋高分子とは、分子内に炭素−炭素不飽和結合及び架橋点を有する高分子化合物のことである。
本発明における架橋とは、共有結合からなる架橋を言う。この場合、種々の共有結合を利用できるが、架橋高分子に耐熱性を与えるためには、C−C、C−O、C−Nなどの高い結合エネルギーを持つ結合による架橋構造が望ましい。このような架橋構造の導入により、分子が巨大化し不溶、不融となるため、扱い易い脱酸素成分になって、その応用範囲が広がる。また、担体などが不要となるため、単位重量当たりの酸素吸収量が増加する。
【0010】
本発明における架橋高分子の製造には、高分子化学において知られている各種の方法を用いることができる。例えば、比較的分子量が小さい単独種または複数種のモノマー(官能基数が3以上のものを一部含み、全体の平均官能基数は2よりも大きい)を直接重合して架橋高分子を得てもよいし、比較的分子量が大きなオリゴマーやポリマーを後から架橋して架橋高分子を得てもよい。これらのうち、重合熱の発生が少なく大量生産向きの後者の方法が適当である。
後から架橋を行う方法としては、通常の物理的または化学的な手段を用いることが可能である。物理的な架橋方法には、単純な高温加熱、電磁波(紫外線、γ線、マイクロ波など)、粒子線(電子線など)、超音波などの照射による方法があり、化学的な架橋方法には、開始剤や架橋剤として知られる各種のラジカル発生剤を用いた反応による方法がある。このうちでは、ラジカル発生剤として有機過酸化物を用いた架橋反応による方法が望ましい。
化学的な架橋を用いた具体的な粉状または粒状の架橋高分子の製造方法は以下となる。すなわち、まず、架橋前の有機化合物(被架橋物)とラジカル発生剤との混合物に対して、塊状態での架橋、溶液状態での架橋、懸濁状態や乳化状態での架橋などのいずれかを行う。その後、粉状または粒状の固体とするために、塊状態での架橋であれば粉砕、溶液状態での架橋であれば乾燥と粉砕、懸濁状態や乳化状態での架橋であれば液相の分離と乾燥を行う。これらのうちの各単位操作については、化学工学的に知られている各種の手法と装置が使用可能である。
【0011】
本発明における架橋高分子は、平均粒径が0.01〜5mmの粉状または粒状であることが必要である。粒径が大き過ぎると酸素吸収速度が低くなり過ぎ、粒径が小さ過ぎると粉塵爆発などの危険性が生じる。さらに望ましい粒径の範囲は、0.03〜0.5mmである。
【0012】
本発明における架橋高分子中の架橋の程度は、粉または粒を得ることが容易であり、同時に適当な耐熱性や酸素吸収性能が得られるような範囲で設定される必要がある。このような適当な架橋の程度は被架橋物の分子構造や分子量によっても変化するが、架橋高分子1g 当たり0.0001〜0.02mol の架橋点を含むことが望ましい。その結果、たとえば塊状態での架橋の後に粉砕する場合には、適度な架橋により架橋高分子の可塑性が低下し、脆くなって粉砕が容易になる。
【0013】
架橋による物性の変化として、本発明における架橋高分子は、25℃における曲げ弾性率が0.1MPa 以上であることが好ましく、1MPa 以上がより好ましく、10MPa 以上が更に好ましい。また、本発明における架橋高分子は、25℃における曲げ強度(破壊強度)が少なくとも100MPa 以下であることが好ましく、10MPa 以下がより好ましい。また、本発明における架橋高分子は、25℃においてトルエンに1日浸漬した後の線膨張(一方向での増加分)が50%以下であることが好ましい。
【0014】
耐熱性と架橋の程度との関係では、粉または粒のままで脱酸素剤として用いる場合には100℃以上まで、望ましくは150℃以上まで、樹脂に練り込んで各種の形態で用いる場合には150℃以上まで、望ましくは200℃以上まで、流動または相互に付着しないように架橋する。これにより、各使用形態において脱酸素成分を固体状態に保たせることができ、鉄粉の場合と同じように脱酸素剤や、脱酸素成分を練り込んだ樹脂からなる層を含む単層または多層のフィルムまたはシートの形状の脱酸素体とすることができる。
【0015】
酸素吸収性能と架橋の程度との関係では、炭素−炭素不飽和結合を含む有機化合物を被架橋物に用いれば、主に同結合(正確には同結合の炭素とそれに隣接する炭素)が架橋に関与するが、同結合は酸素との反応にも必要であるため、同結合を適度に残す必要がある。具体的には、1分子中に複数の炭素−炭素不飽和結合を含む有機化合物を用い、同結合の一部のみを用いて架橋して、架橋後も1g 当たり0.001〜0.025mol の炭素−炭素不飽和結合を残すことが好ましい。
【0016】
本発明の脱酸素成分では、通常の有機化合物の自動酸化において知られているように、各種の金属または金属化合物を触媒として添加し、脱酸素成分の酸化反応を未添加の場合よりも促進させることが可能である。ただし、粒径を小さくすることでも反応性が高まるため、十分に小さくすれば、この触媒を添加せずに適度な酸化速度を得ることも可能である。また、一般に、粒径が小さいほど触媒は少なくてよい。さらに、被架橋物として各種の重合体を用いる場合には、残留している微量の重合触媒のみで、有効な酸化触媒となる可能性もある。
触媒として用いる金属または金属化合物中の金属種としては、特に限定されないが、その電子状態が触媒向けであることからも特に遷移金属が望ましい。この金属種のうち、特に高活性の触媒作用を示すものとしてコバルトが知られており、また、比較的安全なものとして鉄やマンガンが知られている。
本発明における触媒は、架橋前に被架橋物と、特に化学的架橋では被架橋物およびラジカル発生剤と、混合される。これにより、触媒が均一に分散または溶解され、架橋後も均一に含まれることになる。ここで、触媒がさらに均一に分散または溶解できるように、被架橋物である有機化合物に対する溶解性の高い触媒を用いることが望ましい。具体的には金属の脂肪酸塩などである。その場合、脂肪酸部分に炭素−炭素不飽和結合を含んでいれば、架橋高分子中に組み込むことも可能となる。
脱酸素成分中の触媒は架橋構造中に取り込まれるため、脱酸素成分から触媒が漏れ出すことが少ない。その結果、この脱酸素成分をマトリックス成分となる熱可塑性樹脂に練り込んで使用する場合にも、触媒が脱酸素成分から漏れ出し難いために、マトリックス成分の酸化による劣化が最小限に抑えられる。
【0017】
本発明の脱酸素成分では、同じく自動酸化において知られているように、光(主に紫外領域)の照射によっても酸化反応が促進される。しかし、粉または粒が小さいことにより、さらに触媒を添加する場合にはその触媒の作用もあることにより、光の照射は必須ではない。
【0018】
被架橋物としては、炭素−炭素不飽和結合を含む化合物が用いられる。単位重量当たりに含まれる炭素−炭素不飽和結合が多い化合物として、ジエン化合物の重合体(オリゴマー、ポリマーやコポリマー)が特に好ましく、具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどが挙げられる。
【0019】
なお、ジエン化合物の重合体では、酸化防止剤が添加されていることが多い。このような酸化防止剤は、架橋して脱酸素体とした後における脱酸素を妨げるため、含まれていないことが望ましいが、少量であればあまり問題にはならず、また、架橋反応時に不活性化させることもできる。
【0020】
本発明による脱酸素成分の誤食などに対する安全性は極めて高い。これは、架橋物であることにより、粉または粒の全体としての溶解性が極めて低く、また、個々の粉または粒からの、酸化で生じた低分子化合物や触媒の金属などの溶出も極めて少ないためである。
【0021】
一般に、有機化合物を主成分とする脱酸素剤では、酸化反応に伴って臭気のもとになる低分子化合物が生成する。しかし、本発明における架橋高分子は、内部の結合が密なために低分子化合物の生成が少なく、さらに粉または粒の外への低分子化合物の放出(揮散や溶出)も少ない。また、架橋構造により酸化反応時の体積増加が制限されるため、酸化反応が進み過ぎず、低分子化合物の生成が少なくなる。
さらなる臭気の改善として、まず、被酸化物の分子構造からの改善がある。これは、酸化反応で共有結合が切断されても、低分子化合物として脱離されない構造とすることに相当する。具体的には、例えばジエン化合物のオリゴマーやポリマーでは、側鎖が少ない1,2結合の比率が低い品種の利用、また、ポリイソプレンよりもポリブタジエンの利用が推奨される。また、酸素吸収性能は低くなるが、炭素−炭素不飽和結合が疎に含まれているジエンとオレフィンなどとの共重合体、ジエン化合物のオリゴマーやポリマーの部分水素添加物などの使用も有効である。また、化学的な架橋では、ラジカル発生剤由来の低分子化合物の存在があり、これについてもラジカル開裂後の分子ができるだけ大きなものを選ぶか、同じくできるだけ小さなものを選んで架橋後に除去する、などにより、臭気の発生を低減する。他方、酸化後において発生を避けられない臭気の除去方法としては、脱酸素成分と共に活性炭などの吸着剤を用いてもよい。
【0022】
本発明の脱酸素成分は脱酸素体の主成分となるものであり、単独で用いるだけではなく、乾燥剤、吸着剤、抗菌剤などと共に用いることができる。
【0023】
本発明の脱酸素成分は、粉状または粒状のままで通気性の小袋に入れた形態の脱酸素剤として用いること、熱可塑性樹脂に練り込んで延伸したものを小片として、小袋に入れた形態やラベル、カード、パッキングなどの形態の脱酸素体として用いること、熱可塑性樹脂に練り込んでフィルムやシートなどの脱酸素包装材料として、包装袋や包装容器の一部または全部に種々の形態で用いること、などが可能である。
図1は、脱酸素成分を通気性の小袋に入れた形態を示す。図2は、熱可塑性樹脂に練り込んで延伸した小片をラベルとした形態を示す。図3は、熱可塑性樹脂に練り込んで包装容器の一部とした形態を示す。
【0024】
【実施例】
以下、実施例と比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
使用した化合物は以下である。
被架橋物、ブタジエンオリゴマー:日本ゼオン(株)製、商品名Polyoil 110 、平均分子量1600、1,4構造99%、20℃における粘度750cPの液体、および商品名Polyoil 130 、平均分子量3000、1,4構造99%、20℃における粘度3000cPの液体、両者ともに炭素−炭素二重結合の数はモノマーの分子量54より、1/54=0.0185mol/g と算定される。
被架橋物、ポリイソプレン:日本合成ゴム(株)製、商品名IR 2200 、1,4構造98%、平均分子量約106 、炭素−炭素二重結合の数はモノマーの分子量68より、1/68=0.0147mol/g と算定される。25℃における曲げ弾性率は1.0MPa (後述の方法で測定)。
被架橋物、スチレン−ブタジエン共重合体:日本合成ゴム(株)製、商品名E-SBR 1500、結合スチレン23.5%のランダム共重合体、分子量約4×105 、ブタジエン由来の炭素−炭素二重結合の数は(1−0.235)/54=0.0142mol/g と算定される。25℃における弾性率は1.1MPa (後述の方法で測定)。
有機過酸化物、α, α'-bis(tert-butylperoxy)diisopropylbenzene :日本油脂(株)製、商品名パーブチルP、分子量338、1mol 当たりの有効官能基数は2mol 、純度95%。
触媒、ステアリン酸コバルト:三津和化学薬品(株)、純度98%。
触媒、トール油脂肪酸マンガン:東栄化工(株)、純度約97%。
触媒、ステアリン酸鉄(III ):三津和化学薬品(株)、純度95%以上。
吸着剤、活性炭:武田薬品工業(株)、白鷺A、篩別して50μm 以上のものを使用。
【0025】
各種の性質の測定方法は以下である。
脱酸素成分の曲げ弾性率と曲げ強度は、粉砕前の架橋物から試験片(例えば4cm×1cm×2mm程度)を切り出し、25℃にて3点曲げ試験を行って測定した。このとき、曲げ弾性率Eは比較的少ない変形を与えた場合において、式;E=FL3 /4WT3 Dを用いて、また、曲げ強度Sは破壊するまで変形を与えた場合において、式;S=3FL/2WT2 を用いて、それぞれ計算した。ここで、F;荷重、L;スパン、W;試験片の幅、T;試験片の厚さ、D;変位(たわみ)、である(JIS K 7203(1995))。なお、変形速度を約10cm/sとした。
脱酸素成分の膨潤による線膨張(増加分の比率)は、粉砕前の架橋物から試験片(長さ5cm程度、厚さ2mm以下)を切り出し、25℃にてトルエン(特級品、試験片の100倍程度の体積を使用)中に1日間浸漬し、浸漬前後の長さ方向の寸法より、寸法の変化分を浸漬前の寸法で除して、求めた。なお、後述の試料はいずれも6時間以内に膨潤平衡に達していた。
脱酸素成分の密度は、架橋物を沈める液体にエタノール(特級品)を用いて、比重瓶にて25℃で測定した。
【0026】
脱酸素成分の架橋度は、膨潤による体積変化により、架橋鎖(2つの架橋点で挟まれた部分鎖)の密度νを、式;ν=−(v+μv2 +log e (1−v))/(ρVo (v1/3 −v/2))+2/Mで計算することで推定した(古川淳二, 山下晋三, 日本ゴム協会誌, 30,955(1957))。ここで、v;膨潤後の体積に対する膨潤前の体積の分率、膨潤による線膨張(増加分の比率、前述のように実測)をαとして、v=1/(1+α)3 となる、μ;高分子(ここでは架橋物)と溶媒との相互作用パラメータ(後述の個々の対象系に対する値は、例えば、R.G.Beaman, J.Polymer Sci., 9,470(1952) )、ρ;架橋物の密度(前述のように実測)、Vo ;溶媒の分子容(25℃のトルエンでは107cm3/mol )、M;架橋前の被架橋物の分子量、である。これから得られるνより、架橋点の数はνの1/2と計算される。
架橋物中の炭素−炭素二重結合の数は、架橋反応によりその一部が使用される(ただし、一般に架橋反応分の全てが同結合に由来するものではない)ことから、架橋前の同結合の数から架橋点の数を減じた数になると仮定して算出した。
【0027】
脱酸素成分の耐熱性は、所定の温度に加熱した金属板の上に粉または粒を約30秒間(長時間では変形や酸化による変色などがある)置き、その流動や変形または相互の付着を観察して判断した。
脱酸素成分の酸素吸収性能の測定は、直径300μm 以下に篩別した1g の脱酸素成分と1000cm3 の空気を、ポリ塩化ビニリデンをコートしたナイロン層を含む透明な酸素バリヤ性の袋に入れて、25℃における酸素濃度の経時変化をガスクロマトグラフで追跡することで行った。
臭気は、袋内部の気体を嗅ぐことで、感覚的に判断した。
【0028】
実施例1
ブタジエンオリゴマー(Polyoil 110 );90重量部、パーブチルP;10重量部、ステアリン酸コバルト;0.1重量部を約60℃で混合した後、窒素置換した容器中で180℃、10分加熱して、架橋物を得た。これを室温まで冷却してから取り出し、一部を測定用の試料として、他を回転刃型の粉砕機と乳鉢および乳棒で粉砕して粉状とした。架橋物が脆いため、粉砕は極めて容易であった。各種測定より、架橋高分子の曲げ弾性率は2.7MPa 、曲げ強度は1.0MPa 、比重は0.96g/cm3 、トルエン浸漬時の膨潤による線膨張は30%であった。μ=0.37を用いてν=0.0026mol/g 、架橋点の数は0.0013mol/g と算出された。また、架橋物の炭素−炭素二重結合の数は、0.0185×(90/100.1)−0.0013=0.0153mol/g と算出された。また、耐熱性は150℃以上であった。
酸素吸収の様子を図4に示す。脱酸素成分1g に対して0.5g の活性炭を添加して酸素吸収させたところ、臭気は殆ど感じられなかった。
【0029】
実施例2
ステアリン酸コバルトの代わりにトール油脂肪酸マンガン;0.1重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、粉状の架橋物を得た。酸素吸収の様子を図4に示す。
【0030】
実施例3
ステアリン酸コバルトを用いないこと以外は実施例1と同様にして、触媒を含まない粉状の架橋高分子を得た。酸素吸収の様子を図4に示す。本例では実施例1または実施例2と比べて特に酸素吸収の遅い誘導期間が長く、本例と実施例1または実施例2とを組み合わせて考えると、触媒の添加分率により誘導期間を調節できることが判る。
【0031】
実施例4
ブタジエンオリゴマー(Polyoil 130 );93重量部、パーブチルP;7重量部、ステアリン酸鉄(III );1重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、粉状の架橋物を得た。
各種測定より、架橋高分子の曲げ弾性率は2.8MPa 、曲げ強度は1.0MPa 、比重は0.95g/cm3 、トルエン浸漬時の膨潤による線膨張は32%であった。μ=0.37を用いてν=0.0019mol/g 、架橋点の数は0.0010mol/g と算出された。また、架橋物の炭素−炭素二重結合の数は、0.0185×(93/101)−0.0010=0.0160mol/g と算出された。また、耐熱性は150℃以上であった。
酸素吸収の様子を図4に示す。脱酸素成分1g に対して0.5g の活性炭を添加して酸素吸収させたところ、臭気は殆ど感じられなかった。
【0032】
実施例5
ポリイソプレン(IR 2200 );87重量部、パーブチルP;11重量部、トール油脂肪酸マンガン;2重量部を約90℃で混合した後、加熱プレス機の2枚の金属板の間で、ポリエチレンテレフタレートのシート(プレスの金属板への付着の防止用)2枚に挟んで、170℃で5分間加熱して、架橋高分子を得た。これを同シートごと取り出し、室温まで冷却してから同シートを取って、一部を測定用の試料とし、他を回転刃型の粉砕機と乳鉢および乳棒で粉砕して粉状とした。架橋物は若干ゴム状であったが、粉砕が可能であった。
各種測定より、架橋高分子の曲げ弾性率は4.6MPa 、曲げ強度は0.8MPa 、比重は0.97g/cm3 、トルエン浸漬時の膨潤による線膨張は24%であった。μ=0.39を用いてν=0.0020mol/g 、架橋点の数は0.0010mol/g と算出された。また、架橋物の炭素−炭素二重結合の数は、0.0147×(87/100)−0.0010=0.0118mol/g と算出された。また、耐熱性は150℃以上であった。
酸素吸収の様子を図4に示す。脱酸素成分1g に対して0.5g の活性炭を添加して酸素吸収させたところ、臭気は殆ど感じられなかった。
【0033】
実施例6
スチレン−ブタジエン共重合体(E-SBR 1500);93重量部、パーブチルP;5重量部、トール油脂肪酸マンガン;2重量部を約90℃で混合し、実施例5と同様に170℃で5分間加熱して架橋高分子を得た後、その一部を測定用の試料とし、他を粉砕して粉状とした。架橋高分子は若干ゴム状であったが、粉砕が可能であった。
各種測定より、架橋物の弾性率は21MPa 、曲げ強度は2.4MPa 、比重は0.98g/cm3 、トルエン浸漬時の膨潤による線膨張は20%であった。μ=0.31を用いてν=0.0032mol/g 、架橋点の数は0.0016mol/g と推定された。また、架橋物の炭素−炭素二重結合の数は、0.0142×(93/100)−0.0016=0.0116mol/g と算出された。また、耐熱性は150℃以上であった。
酸素吸収の様子を図4に示す。脱酸素成分1g に対して0.5g の活性炭を添加して酸素吸収させたところ、臭気は殆ど感じられなかった。
【0034】
比較例1
ブタジエンオリゴマー(Polyoil 110 );100重量部に、ステアリン酸コバルト;0.1重量部を約60℃で溶解した。この溶液は、粘稠な液状であり、そのままでは安定した脱酸素成分として用いることが困難であった。
【0035】
比較例2
ポリイソプレン(IR 2200 );100重量部、トール油脂肪酸マンガン;0.1重量部を90℃で混合し、室温まで冷却してから、粉砕を試みた。この混合物はゴム状で軟らかく、室温での粉砕が困難であった。また、液体窒素で冷却して粉砕したところ、粉砕が可能であったが、室温に戻すと粉同士が互いに付着してしまい、そのままでは安定した脱酸素成分として用いることが困難であった。
【0036】
【発明の効果】
本発明の脱酸素成分は、乾燥状態から高湿度状態までの広い湿度範囲において使用可能であり、酸素吸収速度が高いだけでなく、誤食などに対する安全性も高い。この脱酸素成分は、食品、医薬品、金属製品や電子製品などの、酸素の影響を受けて変質し易い各種物品の酸化を防止する目的を持つ脱酸素剤、脱酸素性フィルムやシートなどの各種脱酸素体を構成するために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱酸素成分を通気性の小袋に入れた形態の断面図
【図2】脱酸素成分を熱可塑性樹脂に練り込んで延伸した小片をラベルとした形態の断面図
【図3】脱酸素成分を熱可塑性樹脂に練り込んで一層に用いて包装容器とした形態の断面図
【図4】実施例1〜5の脱酸素成分による酸素吸収量の経時変化
【符号の説明】
1 脱酸素成分(本発明による架橋高分子)
2 通気性のフィルム(単層または多層)
3 脱酸素成分(本発明による架橋高分子)を熱可塑性樹脂に練り込んで延伸した小片
4 片側の表面(ここでは図の下側)に粘着性のあるシート
5 酸素透過性で無孔質の樹脂層
6 脱酸素成分(本発明による架橋高分子)を熱可塑性樹脂に練り込んだ脱酸素層
7 バリヤ層(単層または多層)
Claims (7)
- 平均粒径が0.01〜5mmの粉状または粒状であり、炭素−炭素不飽和結合を有する架橋高分子からなる脱酸素成分。
- 架橋高分子が、1g 当たり0.001〜0.025mol の炭素−炭素不飽和結合および1g 当たり0.0001〜0.02mol の架橋点を有することを特徴とする請求項1記載の脱酸素成分。
- 架橋高分子が、ジエンの重合体またはジエンと他の不飽和化合物との共重合体を部分架橋させた高分子であることを特徴とする請求項1または2記載の脱酸素成分。
- 架橋高分子が、酸化反応の触媒となる金属または金属化合物と帯電を防止する化合物とのうち1つ以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脱酸素成分。
- 架橋高分子の25℃における曲げ弾性率が0.1MPa 以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脱酸素成分。
- 架橋高分子の25℃における曲げ強度が100MPa 以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脱酸素成分。
- 架橋高分子の25℃のトルエンに1日浸漬して膨潤させた後の線膨張が50%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脱酸素成分。
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