JP4177998B2 - 来待石用釉薬 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、来待石加工品や来待石粉体を主成分とする粘土からの成形物に施釉して、焼成する新規な釉薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
来待石は、適度の軟らかさと粘りがあるため、古くから石灯籠や墓石などに用いられてきている。ところが、最近では和風建築の減少などで石灯籠を注文する人も少なくなり、来待石の消費も低下傾向にある。このような現実に鑑み、生産地では新たな商品開発の動きが模索されはじめている。
【0003】
その一環として、来待石を置物や飾り物に加工したり、盆栽鉢や花瓶などに加工する例が増えてきている。ただ、天然石材であるため色の変化に乏しく、何らかの手段で色彩的変化を持たすことが望まれていた。
【0004】
ところで、従来から天然石材製の置物や壁面飾りなどに色彩的変化を与える一つの手段として、石材に紬薬を塗布して焼成する技術が開示されている。例えば、特開平6−144954公報には、板状の安山岩(火山岩)に釉薬を塗布して焼成する技術が開示されている。この場合、釉薬としては木灰や藁灰、土灰などを主原料にした多数のものが列挙されている。また、特開平8−253379号公報には、種々な形状に成形された御影石など各種の天然石材にラスター釉を施す技術が開示されている。
【0005】
ところで、安山岩や御影石は火成岩であり、元々熱に強い性質を有している。従って、これらの石材に施釉して焼成しても、石材自体の色や形は殆ど変化しない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これに対し、本発明が対象とする来待石は凝灰質砂岩の一種であり、特に来待錆石は鉄分を多く含むため焼成すると、焼成温度によって赤〜濃茶色〜黒褐色に呈色する。従って、来待石加工品或いは来待石粉体を主成分とする粘土からの成形物の場合、釉薬はこの赤〜濃茶色〜黒褐色とバランスの取れた強い色に着色される必要がある。
【0007】
また、来待石は1200℃以上に加熱されると溶融して形が崩れるし、1100℃以下の加熱ではガラス化が始まらないためもろくなる。そのため、来待石を対象とする釉薬は、1100℃〜1200℃の範囲で溶融してガラス化する必要がある。
【0008】
本発明者は、これらの観点から、来待石加工品や来待石粘土の成形物に好適な釉薬の開発を行い、本発明を完成させたものである。尚、来待石加工品とは、来待石を置物や飾り物、花瓶などの形に加工したものである。また、来待石粘土とは、来待石粉体単独或いはこれにカオリンや長石粉末を加えてボールミルで微粉砕したものである。或いは 0.85mmアンダーの来待石粉体にカオリン又は長石粉末を混合したものである。そして、これらの粘土を成形して焼成すると陶器ができる。ただ、後者の来待石粘土は、粘着力が不足するため、高さの有るものは成形できない。
【0009】
ところで、来待石(来待錆石)は、焼成すると減量が激しくまた吸水量が増大することから、内部に連続した空隙が生じていることがわかる。これは、ガラス化によるもの及び含まれている有機物(Ig.loss)の焼滅による。また、含まれている鉄分により、焼成により赤〜黒系統の色に呈色する。来待錆石の焼成温度は、800℃〜1180℃である。800℃以下だと、鉱物のガラス化ができずもろくなる。また、1200℃を越えると、融解(溶融)してボロボロになってしまう。1180℃が、石の形を保つ限界である。1120℃〜1150℃が強度的には好ましい。焼成温度が低いほど石材の変形が少ないことからみて、保形性からは1120℃前後、強度からは1150℃前後が最適な焼成温度ということができる。従って、800〜900℃(〜1000℃)の温度は、釉薬を塗布する場合の下焼(素焼き)として好ましく使用され、1100〜1180℃の温度は、釉薬を塗布した場合の本焼き或いは釉薬を使用しない場合の焼成に好ましく使用される。尚、1180℃以下の焼成では、焼成前の形状に対して焼成物の形状変化はほとんど認められない。
【0010】
来待石粘土成形物の場合、好ましい焼成温度は石材の場合に比べて更に低下する。焼成温度は1100℃〜1180℃、好ましくは1120℃〜1140℃である。
【0011】
このように、来待石或いは来待石粘土成形物は、焼成すると赤〜黒系統の色に呈色するが、その呈色は全体が同じ色になるだけであり、変化に乏しい。そこで、本発明者は、焼成時に炭などの炭素含有物を用いて燻しを行う技術を開発した。燻しは炭素の付着で黒色を呈するが、炭素含有物の燃焼による部分的な温度上昇によっても、黒系色を示す。例えば、1120℃や1150℃で焼成すると全体は赤〜茶色になるが、炭素含有物の燃焼による酸化焔が部分的に1180℃や1200℃になっていれば、その部分の石材表面は焦げ茶色や黒色に呈色する。また、炭素含有物の燃焼による還元焔が当たる部分、例えば炭に覆われた石材の部分は、還元燃焼により赤〜茶系統の色が薄くて色あせた状態に呈色される。このことは、来待石粘土成形物の場合も同様である。
【0012】
【課題を解決するための手段】
しかし、燻しによる黒系統の着色では、色の変化に限界がある。そこで、より変化を持たすために、本発明者は種々な釉薬について研究を重ねて本発明を完成させたものである。尚、釉薬は来待石加工品や来待石粘土成形品に様々な彩りを与えるが、更に、焼成により来待石加工品や来待石粘土成形品に生じる多数の微細な空隙(気孔)を塞いで透水性を低下させる働きもする。
【0013】
前述したように、本発明の釉薬の使用対象である来待石石材は、好ましい焼成(本焼)温度が1120℃〜1150℃前後、来待石粘土成形物の好ましい焼成(本焼)温度は1120℃〜1140℃である。従って、釉薬が溶融してガラス化する温度も1120℃〜1140℃前後の範囲にあることが必要である。
【0014】
これは、かなりの低火度釉である。一般に、釉の溶融温度を低下させるのために鉛或いは硼砂を媒溶剤として加えることが知られている。この内、鉛は公害の心配があって、食器などでは溶出試験が義務づけられている。そこで、本発明では、硼砂を用いて釉の溶融温度低下を図ることとした。
【0015】
また、釉薬は来待石石材や粘土成形物との馴染みが必要であるし、1120℃〜1140℃の焼成温度で赤〜濃茶色に呈色するものに対して、これらの色と調和のとれる色に着色すること、大切である。
【0016】
この観点から、本発明者は、先ず来待石を原材料に考えた。また、来待石の利用を考えた理由の一つに、来待石の採掘や加工の段階で発生する端材や加工屑(研削屑、研磨屑)などの処理問題がある。このうち加工屑については、以前は採掘跡地などに廃棄されていたが、きめが細かすぎるのでそのまま廃棄すると液状化現象を起こすため、現在では他の残土などに混ぜて廃棄物として処理しなければならなくなってきている。しかし、埋め立て地の減少や処理費用の高騰で加工業者は頭を悩ましている。そこで、加工屑が釉薬として利用できれば正に一石二鳥である。尚、加工屑に限らず石の端材や、或いは原石自体を粉砕して用いれば、来待石自体の消費拡大にもなるものである。
【0017】
来待石には、来待錆石と来待白石がある。前者は、島根県に存在する宍道湖の南岸に広く分布する新第三紀中新世出雲層群下位層来待層を構成する凝灰質砂岩のことを言い、良質のものは、塊状凝灰質粗粒砂岩のうち特に淘汰の良い岩相の所に集中し、八束郡玉湯町から宍道町にかけての東西約10km、幅1〜2kmの範囲に存在する。この来待錆石は、前述したように、石質が柔らかく採掘、加工が容易で、出雲石灯ろうは伝統工芸品に指定されている。
【0018】
この来待錆石は、多種多様な岩石片や結晶片、それらを埋める基質から構成されている。岩石片のサイズは径0.5mm〜1.0mmが多く、最大でも1.5mm程度である。岩石片や結晶片の占める割合が80%と多い。岩石片としては、安山岩、石英安山岩、流紋岩、花崩岩、多種類の凝灰岩などが確認されている。結晶片としては、斜長石、輝石、角閃石、黒雲母、不透明鉱物、火山ガラス、変質鉱物が確認されている。また、基質としては、変質によってできた沸石、緑泥石、炭酸塩鉱物が確認されている。
【0019】
これらの岩石や鉱物は、釉薬の主要原料である粘土、アルミナ、シリカを含み、以前は石州瓦の赤色釉薬として使用されていた。しかし、石州瓦は1200℃以上の温度で焼成するので、本発明の対象外である。本発明では、この来待錆石粉末80〜90部(重量部)に硼砂を10〜20部の割合で混合してみたところ、1100℃〜1140℃の温度で溶融してガラス化し、しかも来待石石材や粘土成形品とのなじみもよい優れた釉薬を得ることができた。この釉薬は茶色に着色する艶消し釉である。尚、釉薬にする場合、来待錆石はその粉末をボールミルにより更に細かく、5μm以下に微粉砕することが必要である。
【0020】
一方、来待白石は来待錆石に比べて生成年代が古く、流紋岩系でモンモリロナイトに変質した部分が多い。そのため、焼成するとバラバラになって石の形を留めないので、石材加工品や粘土にはできないが、釉薬としては使用できる。表1に、両者の分析値を示す(島根県発行「島根の地質」)が、石材加工品や粘土が焼成により赤や茶色に呈色するのは、来待錆石中に含まれる鉄のためである。尚、表中数値は重量パーセントを示す。また、文章中、部は重量部を示す。
【表1】
【0021】
来待白石を本発明の釉薬とする場合、例えば、来待白石粉末60〜70部に対して硼砂30〜40部程度を使用する。この場合も、来待石加工品或いは来待石粘土成形品の表面に塗布して1100℃〜1140℃の温度で焼成すると、溶融してガラス化する。来待白石は、来待錆石に比べて鉄分が少ないためこの釉薬は黄色〜黄土色を示す。また、シリカ分が多いため、艶があるが貫入が生じる。来待白石の場合、来待錆石に比べて硬いが、同様に5μm以下に微粉砕して使用する。
【0022】
また、来待錆石粉末5〜25部、来待白石45〜55部に対し、硼砂を30〜40部の割合で使用した釉薬も、1100℃〜1140℃の温度で溶融してガラス化し、来待石石材や粘土成形品との馴染みが良い釉薬が得られる。この場合、色は来待錆石の影響で茶色となり、来待白石により、艶が生じる。尚、これを基礎釉とし、基礎釉100部に対して二酸化マンガンを6部程度添加すると、濃小豆色に呈色する。二度掛けで、黒色になる。
【0023】
ところで、来待石特に来待錆石を使用した場合は、どうしても釉色が茶系統に限定される。そこで、緑や青など来待石の焼成色と系統の違う色を求める場合には、材料の転換が必要となる。この観点から、種々研究した結果、何種類かの釉薬が開発された。この場合も、勿論1100℃〜1140℃の温度で溶融してガラス化、また来待石石材や粘土成形品との馴染みが良いことが必要である。
【0024】
この種の釉薬の一例として、ゼーゲル表示で、次式のように表される着色釉薬が好適に用いられる。
0.03〜0.05K2O
0.38〜0.45Na20 0.35 〜0.38Al2O31.91 〜1.95 SiO2
0.50〜0.59CaO 0.62 〜0.80 B2O3
この配合のものを基礎釉とし、基礎釉100部に対して呈色金属酸化物を0.5〜15部混合すると、様々に発色する有艶の色彩不透明釉が得られる。基礎釉は、例えば、石灰石10〜20部、福島長石20〜30部、カオリン10〜20部、来待白石5〜10部及び硼砂30〜40部を混合して得られる。
【0025】
これらの有色釉を来待石加工品或いは来待石粘土成形品の表面に塗布して1100℃〜1140℃の温度で焼成すると、様々に着色された石材加工品や陶器が得られる。酸化金属としては、二酸化マンガン1部と酸化錫5部で乳白色、五酸化バナジウム10部と酸化錫5部で淡黄白、五酸化バナジウム3部で白黄色、酸化クロム0.25〜2.5部で黄色を示す。また、酸化鉄3部、酸化ニッケル0.5部、或いは酸化ニッケル1部と酸化錫5部で黄土色を示す。更に、酸化クロム1部と酸化錫5部で黄緑色、酸化銅1.5部或いは酸化クロム0.25〜2.5部の二度掛けで緑色、酸化鉄12部で赤紫色、酸化コバルト1部で濃青色、二酸化マンガン4部で黒褐色をそれぞれ艶の或る有色釉薬が得られる。この配合は限定的に記載したが、±10%程度の差では色は差ほど変わらない。
【0026】
ゼーゲル表示で、次式のように表される釉薬も来待石との相性もよく、1100℃〜1140℃の温度で溶融ガラス化して不透水性被膜を形成する好ましいものである。
この釉は不透明の白色系釉であるが、これを基礎釉(100部)として酸化銅を5〜15部使用すると、鮮やかな緑色に着色する艶有り釉薬となる。例えば、益田長石20〜30部と益田珪石20〜30部に硼砂45〜55部を加えたものがこの基礎釉に該当する。
【0027】
ゼーゲル表示で、次式のように表される釉薬も来待石との相性もよく、1100℃〜1140℃の温度で溶融ガラス化して不透水性被膜を形する。
0.13〜0.21Na20
0.07〜0.16K2O 0.50〜0.80Al2O3 2.71〜4.07SiO2
0.07 〜 0.13MgO 0.38〜0.60B2O3
0.50〜0.73CaO
そして、これを基礎釉とし、100部当たり酸化鉄3〜15部を加えると、薄飴色に着色する。また、石材など素地の肌が見える部分と不透明艶のある部分が共存しており、光が当たる方向により輝きが異なって見える特異なものである。この基礎釉は、例えば、来待錆石粉末5〜10部、来待白石20〜35部、石灰0〜10部、長石13〜16部、カオリン10〜15部、硼砂35〜45部を混合して得られる。
【0028】
ゼーゲル表示で、次式のように表される釉薬も、来待錆石用の基礎釉薬として好ましいものである。
0.05〜0.11Na20
0.06〜0.16K2O 0.61〜0.63Al2O3 1.84〜2.17SiO2
0.79〜0.83CaO 0.95〜1.00 B2O3
この基礎釉(100部)に、酸化銅3.5〜7部の割合で加えた色釉薬は、同じく1100℃〜1140℃の温度で溶融して、二度掛け滴状で紺色に呈色する。また、この釉には艶がありまた貫入が見られる。基礎釉は、例えば、石灰石14〜16部、長石23〜27部、カオリン18〜22部、硼砂33〜37部の混合物から製造される。
【0029】
以上説明した各種の釉薬は、来待錆石加工品や来待錆石粘土成形品の全体に施釉して釉色自体で色彩的変化を与えたり、或いは部分的に施釉して来待石製品の焼成色との組み合わせや色バランスで色彩的変化を与えるほか、燻しと組み合わして更に変化に富んだ色彩的表現を現出することができる。
【0030】
また、本発明の釉薬は、来待石の端材や研削・研磨屑が利用できるので、廃棄物の削減につながり、非常に有意義なものである。また、来待石や粘土製品の置物や飾り物、盆栽鉢、花瓶などについて、色彩的変化が出せるので、用途や応用範囲が広がり、原石の消費拡大に資することができる。
【0031】
【実施例】
(実施例 1)
次に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。来待錆石粉末(0.425mmアンダー)80部と硼砂20部の混合粉を1Kgとり、2Lの水とともに容量4Lのボールミルに入れて湿式で10時間微粉砕処理し、5μmアンダーの粒径にして、来待石用の釉薬を製造した。
【0032】
得られた釉薬をそのままの濃度で、来待錆石製の壺(加工品)に縦筋状に塗布し、乾燥した後1140℃の温度で焼成した。焼成は、図1の焼成パターンに従った。その結果、赤褐色の地に焦げ茶色の艶無しの縦筋模様のある製品が得られた。
【0033】
(実施例 2)
来待白石粉末(0.425mmアンダー)60部と硼砂40部の混合粉を、実施例1と同様にして微粉砕処理して、来待石用の釉薬を得た。これを水で1.5倍に希釈し、予め来待石粘土で成形した抹茶茶碗用の成形品を1000℃で素焼きしたものをどぶ漬けして施釉し、乾燥した後、1120℃の温度(図1の焼成パターン)で焼成した。素焼きも、図1の焼成パターンに従った。尚、焼成の前に、後述する実施例4で得られる緑色釉(表2番号7)と白黄色釉(表2番号3)で成形品の所々に刷毛塗りで部分的に施釉し、全体を乾燥した。
【0034】
得られた茶碗は、全体が黄〜黄土色の艶釉で覆われ、前記刷毛塗りした部分が緑と白黄色の艶釉で刷毛模様を現出していた。尚、黄〜黄土色の艶釉には貫入が見られた。これは、来待白石がシリカ分に富んでいることによる。尚、来待石粘土は、来待錆石の粉末(0.425mmアンダー)をボールミルで5μm以下に微粉砕処理したものである。
【0035】
(実施例 3)
実施例1と同様にして、来待錆石粉末25部と来待白石粉末40部と硼砂35部からなる混合粉体に二酸化マンガン6部を加え、その1Kgを実施例1と同様にして処理して釉薬を得た。これを水で1.5倍に希釈し、これに、実施例2の抹茶茶碗用成形品と同型のものを予め素焼きしたものを二度どぶ漬けして施釉(黒色)して乾燥した後、実施例1と同様にして焼成した。尚、焼成の前に、二酸化マンガンを加えない釉薬(茶色)と、後述の実施例4で得られる濃青釉(表2番号9)を、成形品の所々に刷毛塗りで部分的に施釉し、全体を乾燥した。
【0036】
得られた茶碗は、全体が黒色の艶釉で覆われ、前記刷毛塗りした部分が茶と濃青色の艶釉で刷毛模様を現出していた。
【0037】
(実施例 4)
石灰石15部、福島長石25部、カオリン15部、来待白石10部、硼砂35からなる基礎釉100部に対し、呈色酸化金属を表2に示す割合で混合して各種の有色艶釉薬を得た。これらの釉は、1100℃〜1140℃で焼成すると、表2に示す色を表出する。
【表2】
【0038】
(実施例 5)
益田長石25部、益田珪石25部と硼砂50部及び酸化銅7部を混合した粉末を、実施例1と同様に処理して釉薬を得た。この釉薬を、来待錆石製の花瓶加工品の外側全面に塗布し、乾燥した後1150℃の温度で焼成した。焼成は、図1の焼成パターンに従った。その結果、全体が緑色に輝いた花瓶が得られた。尚、花瓶加工品は、予め1000℃で素焼きをして連続気泡を生じさせたのち施釉したので、この花瓶は気泡が釉面で塞がれており、水漏れの少ないものとなっている。
【0039】
(実施例 6)
来待錆石粉末5部、来待白石粉末25部、硼砂35部、石灰10部、長石15部、カオリン10部に、酸化鉄を15部混合して得た粉末を、実施例1と同様に処理して釉薬を得た。この釉薬を、来待石粘土製の皿に塗布し、乾燥した後1120℃の温度で焼成した。尚、乾燥後、更に実施例7で後述する釉薬(紺色)を適宜箇所に油滴状に二度塗りで塗布し、再度乾燥させた後焼成した。焼成は、図1の焼成パターンに従った。その結果、全体が薄飴色に輝き、且つ紺色の油滴状模様が付いた皿が得られた。この薄飴色は、粘土素地が透けて見える部分と艶のある部分が共存しており、見る方向によって異なる輝きが見られるものである。また、紺色の油滴状模様は、艶があるが貫入が見られた。ここに、皿素地を製作した来待石粘土は、0.85mmアンダーの来待錆石50部にカオリン25部、長石粉末25部を混合し、水で混練したものである。従って、この粘土は前記例のものに比べて粘着力に劣り、高さの有る素地は製作出来ないものである。
【0040】
(実施例 7)
石灰15部、長石25部、カオリン20部、硼砂35部、酸化銅5部の割合で混合して得た粉末を、実施例1と同様に処理して釉薬を得た。この釉薬は、1100℃〜1140℃の温度で溶融してガラス化するが、素地の一部に油滴的状に二度掛けすると、有艶で貫入が入った紺色に着色する。
【0041】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の釉薬は、来待石粉末を主成分としこれを来待石製品の焼成温度に合致させるように硼砂で溶融点を低下させたものである。また、様々な釉色を発現させるために、カオリンや長石粉末などを組み合わせ、更に来待石製品の焼成温度に合致させるように硼砂で溶融点を低下させたものである。
【0042】
従って、来待石系の釉薬は黄色〜茶系統の色に限定されるが、来待石素材との馴染みが非常によく、相互の化学的変化により安定した釉面を作ることができる。また、カオリンや長石系のものも含めて、来待石製品の強度や寸法安定の面で最適な温度で焼成できるし、来待石の焼成色と調和の取れた着色ができる。
【0043】
様々なタイプや色の釉薬を提供できるので、来待石製品の用途や機能によって最適な釉を選ぶことができる。施釉後の本焼を含めて、1120〜1140℃と言う低火度で焼成できるため、比較的コストですむ。
【0044】
更に、石材表面に釉薬を塗布して焼成すると、釉薬の種類や施釉量、施釉箇所などによって、更には前記着色との組み合わせによって、実に様々な色や模様を現出することができる。更に、燻しと組み合わせれば、より変化に富んだ色彩的修飾が施せる。
【0045】
端材や研削・研磨屑の有効利用ができ、廃棄物処理問題が解決する。また、来待石の置物や飾り物、盆栽鉢、花瓶などについて色彩的変化が出せるので、用途や応用範囲がの広がり、その結果原石の消費拡大が見込まれる。など、本発明のもたらす効果や縁橋は、来待石生産地にとって非常に大きななものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼成温度パターンを示すグラフである。
Claims (7)
- 来待錆石粉末80〜90部と硼砂10〜20部の割合で混合され、来待石加工品或いは来待石粘土成形品の表面に塗布して1100℃〜1140℃の温度で溶融してガラス化することを特徴とする来待石用釉薬。
- 来待白石粉末60〜70部と硼砂30〜40部の割合で混合され、来待石加工品或いは来待石粘土成形品の表面に塗布して1100℃〜1140℃の温度で溶融してガラス化することを特徴とする来待石用釉薬。
- 来待錆石粉末5〜25部、来待白石45〜55部と硼砂30〜40部の割合で混合され、来待石加工品或いは来待石粘土成形品の表面に塗布して1100℃〜1140℃の温度で溶融してガラス化することを特徴とする来待石用釉薬。
- ゼーゲル表示で、
0.03〜0.05K2O
0.38〜0.45Na20 0.35 〜0.38Al2O31.91 〜1.95 SiO2
0.50〜0.59CaO 0.62 〜0.80 B2O3
の組成を有するものを基礎釉とし、該基礎釉100部に対して、呈色金属酸化物を0.5〜15部混合した釉であって、来待石加工品或いは来待石粘土成形品の表面に塗布して1100℃〜1140℃の温度で溶融してガラス化することを特徴とする来待石用釉薬。 - ゼーゲル表示で、
Na20 0.20 〜0.24Al2O34.28 〜4.92SiO2
0.56〜0.64 B2O3
の組成を有するものを基礎釉とし、該基礎釉100部に対して、呈色酸化物を5〜15部混合した釉であって、来待石加工品或いは来待石粘土の成形品の表面に塗布して1100℃〜1150℃の温度で溶融してガラス化することを特徴とする来待石用釉薬。 - ゼーゲル表示で、
0.13〜0.21Na20
0.07〜0.16K2O 0.50〜0.80Al2O3 2.71〜4.07SiO2
0.07 〜 0.13MgO 0.38〜0.60B2O3
0.50〜0.73CaO
の組成を有し、来待石加工品或いは来待石粘土成形品の表面に塗布して、1100℃〜1140℃の温度で溶融してガラス化することを特徴とする来待石用釉薬。 - ゼーゲル表示で、
0.05〜0.11Na20
0.06〜0.16K2O 0.61〜0.63Al2O3 1.84〜2.17SiO2
0.79〜0.83CaO 0.95〜1.00 B2O3
の組成を有し、来待石加工品或いは来待石粘土成形品の表面に塗布して、1100℃〜1140℃の温度で溶融してガラス化することを特徴とする来待石用釉薬。
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