JP4177981B2 - 植物の有害生物防除剤および有害生物防除方法 - Google Patents
植物の有害生物防除剤および有害生物防除方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物の有害生物防除剤及びその防除方法に関する。更に詳しくは、植物の有害生物の繁殖を抑制し、その後の治癒を効果的に促進する植物の有害生物防除剤及び植物の有害生物の防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、果樹や野菜類等の植物を栽培するにあたり、植物を病害虫から保護するために、農園芸用殺菌剤や農園芸用殺虫剤等の種々の農薬が使用されている。例えば、リンゴ等の果樹栽培においては、防除の対象とする植物病原菌や有害虫の種類及びこれらの繁殖期に合わせて、年10回以上の農薬散布を行なうのが通常である。
【0003】
しかしながら、近年においては、安全性や環境保護の観点から、農薬の使用回数を減らす方向にあり、また、使用される農薬も安全で、環境に与える影響が少ないものへ移行しつつある。
従って、安全で高い防除効果を有し、かつ、長期間に亘り高い防除効果を発揮する農薬の開発が望まれている。
【0004】
ところで、植物、特にリンゴ等の果樹の植物病害の中で、リンゴ腐らん病等の胴枯性病は、近年、リンゴのみならず、ナシ、セイヨウナシ、クワ、キリ等の他の樹木にも胴枯性病害が多発し、その対策として抜本的な防除、治療方法の必要性が強調されている。
【0005】
従来、リンゴ腐らん病に代表される胴枯性病害の治療には、病巣患部への薬剤(農園芸用殺菌剤)を塗布する方法や病斑を外科的に治療する方法、泥巻法等が知られている。しかし、これらの方法では、胴枯性病に対する防除が不十分であったり、治療方法が難しく、全体の処置に多大な労力及び時間を要していた。
従って、植物に発生する胴枯性病等の植物病害に対して、簡便で使い勝手が良く、しかも安全で高い防除効果を得ることができる有害生物防除方法の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる実情の下でなされたものであり、安全で高い防除効果を有し、長期間に亘り高い防除効果を発揮する植物の有害生物防除剤、及び簡便で使い勝手が良く、しかも安全で高い防除効果を得ることができる有害生物防除方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、黒色粉末とバインダーを含む組成物が治癒組織形成促進に顕著な効果を示すことを見出し、該組成物を果樹や野菜等の植物の有害生物防除剤として使用することを着想した。また、該組成物と殺菌活性成分又は殺虫活性成分を併用することにより、より一層の有害生物防除効果が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
かくして本発明の第1によれば、(A)黒色粉末及び(B)水溶性又は水分散性バインダーを含有してなる植物の有害生物防除剤が提供される。
本発明の有害生物防除剤は、(C)成分として、農薬活性成分をさらに含有してなるのが好ましく、前記(A)成分の黒色粉末が、粉末活性炭、カーボンブラック又は黒色酸化鉄顔料であるのが好ましい。
また、本発明の有害生物防除剤は、植物の胴枯性病防除剤として使用されるのが特に好ましい。
【0009】
本発明の第2によれば、本発明の有害生物防除剤を、植物の病巣患部に塗布することを特徴とする植物の有害生物防除方法が提供される。
また、本発明の第3によれば、本発明の有害生物防除剤を、植物に散布することを特徴とする植物の有害生物防除方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の植物の有害生物防除剤及びその防除方法を詳細に説明する。
本発明の植物の有害生物防除剤は、(A)黒色粉末及び(B)水溶性又は水分散性バインダーを必須成分として含有してなる。
【0011】
(A)成分の黒色粉末は、各種の有害生物防除剤病原菌に対して抗菌作用を示す。これは、病原菌にとっての栄養素が本発明の防除剤により吸着されて病原菌がこれらの栄養素を利用でき難くなること、並びに本発明の防除剤から弱い赤外線及び活性酸素が放出され、病原菌を破壊するためであると考えられる。
また、黒色粉末は太陽熱を吸収するので、本発明の防除剤で病斑部分を覆うこと(被覆処理)により、病斑部分の植物体の温度を上昇させ、低温を好む植物病原菌(例えば、胴枯性病原菌等)の生育を抑制することができる。さらに、この被覆処理は、当該部分における植物の治癒組織形成に最適な環境を創出し、総合的で顕著な治療効果を発揮する。
【0012】
(A)成分の黒色粉末としては、例えば、粉末状活性炭、カーボンブラック、黒色酸化鉄顔料及びこれらの水性分散体、ペースト等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
前記粉末状活性炭としては特に制限はなく、ヤシ殻系、木質系、石炭系のいずれも用いることができるし、粒状炭や破砕炭を粉砕して使用することもできる。活性炭は、例えば、原料を不活性ガス中、800℃以下の温度で炭素化したのち、800〜1,000℃で水蒸気、炭酸ガス等を用いて酸化、賦活する(ガス賦活法又は水蒸気賦活法と呼ばれる)ことによって製造することができる。前記賦活過程では炭素化過程で生じた炭素材の表面がゆっくりと、しかも選択的に酸化され、吸着に適した細孔が生成する。また、活性炭は、塩化亜鉛等の化学薬品を原料に混合したのち、不活性ガス中で炭素化する方法によっても製造することができる。このようにして得られる活性炭は、上水道の水処理、醸造工場におけるビール、酒、醤油等の精製、医薬品の精製、精糖の脱色等、食品飲料工業において長い使用の歴史があり、安全性が確認されている。
【0014】
カーボンブラックは、ガス状あるいは霧滴状とした炭化水素の熱分解によって製造することができる。カーボンブラックは、原料や製造装置によって、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック及びアセチレンブラックに分類することができ、いずれも使用することができる。
【0015】
黒色酸化鉄顔料としては、マグネタイト粒子粉末、マンガン含有黒色ヘマタイト粒子粉末等が挙げられる。また、マンガン含有黒色ゲータイト粒子粉末等の黒色含水酸化鉄粉末を使用することもできる。これらの黒色酸化鉄粉末及び黒色含水酸化鉄粉末は、球状、粒状、八面耐状、六面体状、多面体状等の粒状粒子であっても、針状、紡錘状、米粒状等の針状粒子又は板状粒子であってもよい。
【0016】
さらに、本発明においては、例えば、1)水溶液中から析出したマグネタイト粒子を含む水懸濁液中にカーボンブラック微粒子粉末を含む水性分散液を添加した後、混合攪拌してマグネタイト粒子粉末の粒子表面にカーボンブラック微粒子粉末を吸着させる方法(特公昭50−13300号公報)、2)糖蜜等の高分子量有機物質を溶解した鉄含有廃スラッジとカーボンブラック微粒子粉末を含む熱ガスとをスプレー反応器中に温度450〜850℃で導入し、鉄塩からマグネタイト粒子粉末を生成すると同時に該マグネタイト粒子粉末の粒子表面に糖蜜を結合促進剤としてカーボンブラック微粒子粉末を結合させる方法(特開昭49−48725号公報)、3)鉄塩水溶液にカーボンブラックを懸濁させた後アルカリを添加してカーボンブラック微粒子粉末と四三酸化鉄とを共沈させることにより表面がカーボンブラック微粒子粉末で被覆されている共沈物を得る方法(特公昭55−39580号公報)、4)微小板状粒子の粒子表面にカーボンブラック微粒子粉末等が被着されているとともに、該カーボンブラック微粒子粉末等をアニオン性又はカチオン性の界面活性剤、非イオン性の界面活性剤及び有機官能性のポリシロキサンで固定化する方法(特開平6−145556号公報、特開平7−316458号公報)等により得られる黒色顔料を使用することもできる。
【0017】
これらの中でも、(A)成分の黒色粉末としては、安全衛生の観点から粉末状活性炭の使用が好ましく、ヤシ殻系及び木質系粉末状活性炭の使用がより好ましい。
(A)成分の黒色粉末の平均粒径は、良好な発色性が得られる分散性の観点から、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
【0018】
(A)成分の含有量は、防除剤全体に対して通常0.1〜50重量%、好ましくは0.3〜40重量%、より好ましくは1〜30重量%の範囲である。(A)成分の含有量が0.1重量%未満であると、有害生物に対する防除効果が不十分となる一方で、(A)成分の含有量が50重量%を超えると、分散安定性が低下する傾向がみられる。
【0019】
本発明の防除剤は、(B)成分として水溶性又は水分散性有機系バインダーを含有する。有機系バインダーは、(A)成分の黒色粉末を均質に付着させると共に、本発明の防除剤からなる被膜を植物体表面に固着させるために用いられる。
【0020】
有機系バインダーとしては、水溶性又は水分散性を有し、かつ上記作用を有するものであれば特に制限されず、天然系及び合成高分子系のいずれも用いることができるが、生分解性等を考慮すれば天然系高分子がより好ましい。
【0021】
この水溶性又は水分散性有機系バインダーとしては、例えば、カラメル、アラビアゴム、グアーガム、キサンタンガム、オオバコ種子、キトサン、アルギン酸ナトリウム、水溶性大豆多糖類(ガラクトース、アラビノース、ガラクツロン酸、ラムノース、フコース、キシロース、グルコースを主構成糖として含む)、水溶性セルロース、でんぷん、でんぷん誘導体(可溶性でんぷん、デキストリン、ブリティッシュガム、酸化でんぷん等)等の天然系バインダー;カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂等の合成高分子系バインダー;等が挙げられる。これらの有機系バインダーは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
(B)成分の含有量は、防除剤全体に対して通常固形分として0.5〜50重量%、好ましくは1〜40重量%の範囲である。この含有量が0.5重量%未満ではバインダーとしての効果が十分に発揮されないおそれがある一方で、50重量%を超えるとその量の割には効果の向上が認められず、むしろ経済的に不利となる。(B)成分の含有量は、バインダーとしての効果及び経済性のバランス等の面から、より好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは7〜20重量%の範囲である。
【0023】
本発明の有害生物防除剤は、(C)成分として農薬活性成分をさらに含有するのが好ましい。農薬活性成分としては、殺菌活性成分、殺虫活性成分、殺ダニ活性成分等が挙げられる。植物病害に有効な農薬活性成分を組み合わせることにより、有害生物防除効果を更に確実なものにし、薬剤散布の回数を減らすことができ、労力軽減を図ることができる。
【0024】
殺菌活性成分としては植物病害に対して活性を有するものであれば特に制限されず、広範囲の農園芸用殺菌剤が使用できる。
使用できる農園芸用殺菌剤としては、例えば、キャプタン、フォルペット、チウラム、ジラム、ジネブ、マンネブ、マンコゼブ、プロピネブ、ポリカーバメート、クロロタロニン、キントーゼン、キャプタホル、イプロジオン、プロサイミドン、ビンクロゾリン、フルオロイミド、サイモキサニル、メプロニル、フルトラニル、ペンシクロン、オキシカルボキシン、ホセチルアルミニウム、プロパモカーブ、トリアジメホン、トリアジメノール、プロピコナゾール、ジクロブトラゾール、ビテルタノール、ヘキサコナゾール、マイクロブタニル、フルシラゾール、エタコナゾール、フルオトリマゾール、フルトリアフェン、ペンコナゾール、ジニコナゾール、サイプロコナゾーズ、フェナリモール、トリフルミゾール、プロクロラズ、イマザリル、ペフラゾエート、トリデモルフ、フェンプロピモルフ、トリホリン、ブチオベート、ピリフェノックス、アニラジン、ポリオキシン、メタラキシル、オキサジキシル、フララキシル、イソプロチオラン、プロベナゾール、ピロールニトリン、ブラストサイジンS、カスガマイシン、バリダマイシン、硫酸ジヒドロストレプトマイシン、ベノミル、カルベンダジム、チオファネートメチル、ヒメキサゾール、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、フェンチンアセテート、
【0025】
水酸化トリフェニル錫、ジエトフェンカルブ、メタスルホカルブ、キノメチオナート、ビナパクリル、レシチン、重曹、ジチアノン、ジノカップ、フェナミノスルフ、ジクロメジン、グアザチン、ドジン、IBP、エディフェンホス、メパニピリム、フェルムゾン、トリクラミド、メタスルホカルブ、フルアジナム、エトキノラック、ジメトモルフ、ピロキロン、テクロフタラム、フサライド、フェナジンオキシド、チアベンダゾール、トリシクラゾール、ビンクロゾリン、シモキサニル、シクロブタニル、グアザチン、プロパモカルブ塩酸塩、オキソリニック酸、等が挙げられる。
【0026】
本発明においては、これらの農園芸用殺菌剤の中でも、胴枯性病に対し防除効果を有する殺菌剤の使用がより好ましい。胴枯性病に対してより確実な防除効果が得られるからである。
【0027】
胴枯性病に対し防除効果を有する殺菌剤としては、例えば、チオファネートメチル、メチル−2−ベンツイミダゾールカルバメイト(MBC)、ベノミル、石灰硫黄剤、無機銅化合物、有機銅化合物、グアザチン、ジイソプロピル 1,3−ジチオラン−2−イリデンマロネート、イソチオシアン酸エステル等が挙げられる。
【0028】
殺虫活性成分及び殺ダニ活性成分としては、果樹、観葉植物、一般樹木等の植物の有害虫に対し、殺虫・殺ダニ活性を有するものであれば特に制限されない。殺虫・殺ダニ活性成分は、防除の対象とする有害虫の種類に応じて適宜選択、使用することができる。
【0029】
用いることができる殺虫活性成分としては、例えば、フェンチオン、フェニトロチオン、ダイアジノン、クロルピリホス、ESP、バミドチオン、フェントエート、ジメトエート、ホルモチオン、マラソン、トリクロルホン、チオメトン、ホスメット、ジクロルボス、アセフェート、EPBP、メチルパラチオン、オキシジメトンメチル、エチオン、サリチオン、シアノホス、イソキサチオン、ピリダフェンチオン、ホサロン、メチダチオン、スルプロホス、クロルフェンビンホス、テトラクロルビンホス、ジメチルビンホス、プロパホス、イソフェンホス、エチルチオメトン、プロフェノホス、ピラクロホス、モノクロトホス、アジンホスメチル、アルディカルブ、メソミル、チオジカルブ、カルボフラン、カルボスルファン、ベンフラカルブ、フラチオカルブ、プロポキスル、BPMC、MTMC、MIPC、カルバリル、ピリミカーブ、エチオフェンカルブ、フェノキシカルブ、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ等の有機燐及びカーバメート系殺虫剤;
【0030】
ペルメトリン、シペルメトリン、デルタメスリン、フェンバレレート、フェンプロパトリン、ピレトリン、アレスリン、テトラメスリン、レスメトリン、ジメスリン、プロパスリン、フェノトリン、プロトリン、フルバリネート、シフルトリン、シハロトリン、フルシトリネート、エトフェンプロクス、シクロプロトリン、トラロメトリン、シラフルオフェン、ブロフェンプロクス、アクリナトリン等のピレスロイド系殺虫剤;
【0031】
ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、ヘキサフルムロン、トリフルムロン、テトラベンズロン、フルフェノクスロン、フルシクロクスロン、ブプロフェジン、ピリプロキシフェン、メトプレン、ベンゾエピン、ジアフェンチウロン、イミダクロプリド、フィプロニル、硫酸ニコチン、ロテノン、メタアルデヒド、機械油、BTや昆虫病原ウイルス等の微生物農薬等のベンゾイルウレア系その他の殺虫剤;フェナミホス、ホスチアゼート等の殺線虫剤;等が挙げられる。。
【0032】
殺ダニ活性成分としては、例えば、クロルベンジレート、フェニソブロモレート、ジコホル、アミトラズ、BPPS、ベンゾメート、ヘキシチアゾクス、酸化フェンブタスズ、ポリナクチン、キノメチオネート、CPCBS、テトラジホン、アベルメクチン、ミルベメクチン、クロフェンテジン、シヘキサチン、ピリダベン、フェンピロキシメート、テブフェンピラド、ピリミジフェン、フェノチオカルブ、ジエノクロル等が挙げられる。
【0033】
また、本発明においては、前記農薬活性成分として、ジベレリン類(例えばジベレリンA3、ジベレリンA4、ジベレリンA7)、IAA、NAA等の植物成長調節剤;等を用いることもできる。
これらの農薬活性成分は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、前記(C)成分である農薬活性成分は、単体で使用することもできるし、製剤化されたものをそのまま使用することもできる。製剤形態は特に制限されず、例えば、乳剤、水和剤、顆粒水和剤、粒剤、ゾル、粉剤、懸濁剤、オイルペースト、ペースト等が挙げられる。
【0035】
本発明の防除剤に前記(C)成分を含有せしめる場合、前記(A)成分の含有量は、防除剤100重量部当たり0.1〜50重量部の範囲が好ましい。この含有量が0.1重量部未満では太陽光の遮断効果に劣り、その結果、オーキシンの光分解を抑制することができない上、病原菌により生じた毒性物質が吸着されず、治癒組織形成条件の最適化が不十分となるおそれがある。一方、50重量部を超える場合には、その割には効果の向上が認められず、むしろ経済的に不利となる。(A)成分の含有量は、病原菌の生育抑制効果、治癒組織形成条件の最適化及び経済性のバランス等の面から、より好ましくは0.3〜35重量部、特に好ましくは1〜25重量部の範囲である。
【0036】
本発明の有害生物防除剤、前記(A)成分及び(B)成分及び必要に応じて(C)成分に加えて、本発明の目的が損なわれない範囲でさらに他の添加剤を添加することができる。
【0037】
他の添加剤としては、例えば、大豆粒、小麦粉等の植物性粉末;シリカ、珪藻土、燐灰石、石こう、タルク、ベントナイト、パイロフィライト、クレイ等の鉱物性微粉末;安息香酸ソーダ、尿素、芒硝等の有機及び無機化合物;ケロシン、キシレン及びソルベントナフサ等の石油留分;シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アルコール、アセトン、メチルイソブチルケトン、鉱物油、植物油、水等の溶剤;界面活性剤等が挙げられる。
【0038】
界面活性剤としては、特に限定はないが、例えば、ポリオキシエチレンが付加したアルキルエーテル、ポリオキシエチレンが付加した高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したトリスチリルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物、イソブチレン-無水マレイン酸の共重合体等を使用することができる。
【0039】
本発明の有害生物防除剤の調製方法としては特に制限はなく、例えば、所定量の(A)成分、(B)成分、必要に応じて(C)成分、及び必要に応じて用いられる各種添加成分を、適当量の水の存在下に、公知の混合機を用いて十分に均質に混合することにより調製する方法が挙げられる。
【0040】
このようにして得られる本発明の有害生物防除剤は、種々の植物病害及び植物害虫の防除(予防及び/又は治療)に用いられる。
植物病害としては、例えば、うどん粉病、すす病、胴枯れ性病、菌核病、紋羽病、すす点病、ネコブ病、赤星病、もち病、さび病、斑点病、灰色かび病、炭疽病、紫斑病、べと病、根黒斑病、灰色腐敗病、根腐れ病、褐斑病、帯化症病、天狗巣病、根瘤線虫病、球根腐敗病、軟腐病、萎ちょう病、根頭癌腫病、モザイク病、黄化病、萎縮病、萎黄病、等が挙げられる。
【0041】
有害虫としては、例えば、ハスモンヨトウ、ヨトウガ、タマナヤガ、アオムシ、タマナギンウワバ、コナガ、チャノコカクモンハマキ、チャハマキ、モモシンクイガ、ナシヒメシンクイ、ミカンハモグリガ、チャノホソガ、キンモンホソガ、マイマイガ、チャドクガ、ニカメイガ、コブノメイガ、ヨーロピアンコーンボーラー、アメリカシロヒトリ、スジマダラメイガ、ヘリオティス属、ヘリコベルパ属、アグロティス属、イガ、コドリンガ、ワタアカミムシ等の鱗翅目害虫;
【0042】
モモアカアブラムシ、ワタアブラムシ、ニセダイコンアブラムシ、ムギクビレアブラムシ、ホソヘリカメムシ、アオクサカメムシ、ヤノネカイガラムシ、クワコナカイガラムシ、オンシツコナジラミ、タバココナジラミ、ナシキジラミ、ナシグンバイムシ、トビイロウンカ、ヒメトビウンカ、セジロウンカ、ツマグロヨコバイ等の半翅目害虫;
【0043】
キスジノミハムシ、ウリハムシ、コロラドハムシ、イネミズゾウムシ、コクゾウムシ、アズキゾウムシ、マメコガネ、ヒメコガネ、ジアブロティカ属、タバコシバンムシ、ヒラタキクイムシ、マツノマダラカミキリ、ゴマダラカミキリ、アグリオティス属、ニジュウヤホシテントウ、コクヌスト、ワタミゾウムシ等の鞘翅目害虫;
【0044】
イエバエ、オオクロバエ、センチニクバエ、ウリミバエ、ミカンコミバエ、タネバエ、イネハモグリバエ、キイロショウジョウバエ、サシバエ、コガタアカイエカ、ネッタイシマカ、シナハマダラカ等の双翅目害虫;
総翅目害虫、例えば、ミナミキイロアザミウマ、チャノキイロアザミウマ等、
イエヒメアリ、キイロスズメバチ、カブラハバチ等の膜翅目害虫;
【0045】
トノサマバッタ、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、クロゴキブリ等の直翅目害虫;
イエシロアリ、ヤマトシロアリ等の等翅目害虫;
ナミハダニ、ニセナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ、ミカンサビダニ、リンゴサビダニ、チャノホコリダニ、ブレビパルパス属、エオテトラニカス属、ロビンネダニ、ケナガコナダニ、コナヒョウヒダニ、オウシマダニ、フタトゲチマダニ等のダニ類;
【0046】
サツマイモネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ、ダイズシストセンチュウ、イネシンガレセンチュウ、マツノザイセンチュウ等の植物寄生性線虫類;が挙げられる。
【0047】
これらの中でも、本発明の防除剤は、Valsa属やDiaporthe属等の腐らん病菌あるいは胴枯病菌に感染し、腐らん病や胴枯病等の胴枯れ性病の症状を示している植物の治療及びその感染予防に特に好ましく用いられる。
【0048】
胴枯性病は、その病斑部分の形態が幹辺材腐れの様相を呈し、主に幹の靭皮部、辺材柔細胞そして形成層等が侵害される病気である。病原菌の植物体への進入原因としては、凍害・寒害による損傷、枯枝、樹体の衰弱、芽かき痕及び不適当な剪定等が挙げられる。一般に、胴枯性病による植物の材質腐朽は、根株心腐れ、幹心腐れ、幹辺材腐れの3タイプに分かれる。根株心腐れでは、腐朽菌が根系の傷口から進入して根株の心材を腐らせる。また、幹心腐れでは、腐朽菌が傷口又は枯枝から幹に侵入して心材を腐らせる。更に、幹辺材腐れでは、腐朽菌が枯枝や傷口から進入して辺材部を腐らせる。
【0049】
かかる胴枯性病としては、例えば、Valsa ceratosperma(Tode ex Fr.)Maire(リンゴ腐らん病菌、ナシ腐らん病菌)、Valsa paulowniae Miyabe et Hemmi(キリ腐らん病菌)、Diaporthe nomurai Hara(クワ胴枯病菌)、Diaporthe ambigua(Sacc.)Nits(セイヨウナシ胴枯病菌)、Valsa abietis Fr.(スギ胴枯病菌)、Diaporthe aucubae(Sacc)(アオキ胴枯病菌)、Endothia parasitica(Murrill)PJ et H.W.Anderson(クリ胴枯病菌)、Valsa friesii(Duby)Fuckel(ハイイヌガヤ胴枯病菌)等の子のう菌とそれらの不完全世代である不完全菌等により引き起こされる病害が挙げられる。
【0050】
本発明の防除剤が防除対象とする植物としては、有害生物の防除が必要な植物であれば特に制限されない。例えば、リンゴ、ナシ、セイヨウナシ、モモ、オウトウ、イクイフルーツ、ビワ、カキ、ウメ、ブドウ、イチジク、キリ、クリ、サンゴジュ、ホオノキ、トチノキ、イヌガヤ、ナラ、クヌギ、モッコク、カシ、カエデ、ヤナギ、アオキ、プラタナス、サクラ、ポプラ、アカマツ、ヒマラヤスギ、ツバキ、サザンカ、ナンテン、サルスベリ、かんきつ類、アセビ、ボケ等の果樹、観葉植物、一般樹木類;ニンニク、ダイコン、キャベツ、ウリ類、ハクサイ、ナス、ジャガイモ、トマト、ニンジン、ネギ、タマネギ、ダイコン、カボチャ、キュウリ、メロン、レタス、スイカ、ピーマン、オクラ、イチゴ、アスパラガス、ニラ、セリ、ヤマノイモ、サトイモ等の野菜類;、カンショ、バレイショ、インゲンマメ、ラッカセイ、エンドウマメ、ダイズ、アズキ、イネ、麦類、トウモロコシ、キビ等の食用作物;チャ、タバコ、テンサイ、クワ、食用ユリ等の特殊作物;バラ、シクラメン、ユリ、キク、サクラソウ、チーリップ、リンドウ等の花類;等が挙げられる。
【0051】
これらの中でも、本発明の防除剤が特に胴枯れ性病に対して防除効果が優れることから、胴枯れ性病の防除が必要である植物を対象とするのが好ましい。かかる植物としては、例えば、リンゴ、セイヨウナシ、クワ、キリ、ナシ等が挙げられる。
【0052】
本発明の有害生物防除剤を用いて有害生物を防除する方法としては、所望の防除効果が得られるのであれば特に制約されず、例えば、植物の病巣患部に本発明の防除剤を塗布する方法や本発明の防除剤を植物に散布する方法等が挙げられる。
【0053】
前者の方法は、植物の植物病害病を治療する方法として有効である。この方法は、具体的には、1)病斑部において病巣患部の樹皮の削り取りを行わずに、病斑部分に本発明の防除剤を塗布する、2)病斑部における重症部分の樹皮のみを削り取り、然る後に病斑部全体に本発明の防除剤を塗布する、又は、3)病巣患部の樹皮を完全に削り取り、然る後に本発明の防除剤を塗布すること等により行なわれる。また、この方法を実施する場合には、必要に応じて、塗布量を増加したり、塗布処理を数回繰り返すと、本発明の防除剤の治癒効果を更に確実なものとすることができる。
【0054】
また、前者の方法の場合、前記(A)成分及び(B)成分を含む混合物に植物病原菌に効果のある殺菌剤を、例えば、該混合物:殺菌剤の重量比で1:10〜10:1、好ましくは1:5〜5:1、更に好ましくは1:3〜3:1の割合で混合して得られる有害生物防除剤を使用すると、殺菌剤が病原菌の菌糸や胞子に作用し、病原菌の活動を効果的に抑制すると同時に炭素質やバインダー成分が樹体の治癒組織形成を促進するので、植物病害のより優れた治療効果を得ることができる。
【0055】
前者の方法は、特に樹木の胴枯性病を治療する方法として好適である。
本発明の防除剤を胴枯性病の病巣患部及びその周辺に施した場合、太陽光を遮断すると共に太陽熱を吸収して植物体温度上昇をもたらし、特に低温を好む胴枯性病原菌の生育を抑制する作用を有している。前述したように、多大な時間と労力が必要ではあるが、比較的良好な治療効果が得られる胴枯性病の治療法の一つに泥巻法がある。その作用機作は泥土中の種々なる微生物の胴枯性病病原菌に対する拮抗作用と樹体側の治癒組織形成に対する最適な環境形成作用であると考えられている。本発明の防除剤の作用機構として、後者の作用と類似の作用が推測される。すなわち、植物体の治癒組織形成に影響する要因として湿度、光、酸素、炭水化物、酵素等が考えられるが、本発明の防除剤を病巣患部及びその周辺に塗布することにより、病巣患部の周辺部位において治癒組織形成条件の最適化が行われ、これにより速やかに治癒組織が形成され、病巣患部が治癒の方向に向かう。
【0056】
本発明の防除剤による具体的な病斑治癒効果として次の5点が挙げられる。
1)本発明で用いる黒色混合物自体が腐らん病や胴枯病といった胴枯性病の病原菌に対して抗菌効果を有する。
2)本発明の防除剤により病巣患部並びに病巣患部周辺を覆うことにより当該部位に対する遮光効果を生じ、当該部位における樹木組織中のオーキシンの光分解を抑制することができ、オーキシンの持つカルス形成促進作用の低下を防止できる。従って、本発明の胴枯性病治癒は治癒組織であるカルス形成を相対的に促進する効果を有する。
【0057】
3)リンゴ腐らん病の病害の一因としてリンゴ樹体中のフロリジンがリンゴ腐らん病菌により分解され、分解産物として生じたプロトカテク酸やp−ヒドロキシ安息香酸等が樹体に毒性を示し、ネクロシスを引き起こすことが報告されているが、本発明の防除剤中の炭素質成分やバインダー成分等の繊維成分はこれらの樹体に毒性を示す物質を吸着することにより、これらの毒性物質を樹木の生体系外に排出する作用を有する。すなわち、本発明の防除剤を病巣患部に施すことにより、リンゴのネクロシスの原因となる物質が生体系から取り除かれ、病害を防止又は軽減することができる。
【0058】
4)植物体が腐らん病菌等の胴枯性病菌に攻撃された時に、生理的な対抗措置として治癒組織が形成されるが、この際には炭水化物の供給が必要である。しかしながら、胴枯性病菌の樹体侵入初期において、樹体中の貯蔵炭水化物は侵入してきた病原菌により消費されてしまう。従って、この場合、治癒組織の形成も抑制されてしまい、病斑の拡大を許してしまう。本発明で用いる防除剤中の炭水化物は樹体中に供給され、治癒組織の形成を安定化させる。すなわち、本発明の防除剤を病巣患部に施すことにより、カルス等の治癒組織形成を安定化させ、病斑の拡大を抑止又は軽減できる。
5)さらに、本発明の防除剤を病巣患部に塗布又は散布することにより、生じた塗膜が病巣患部環境の湿度を上昇させ、上記の遮光効果、炭水化物供給効果等と相俟って、病巣患部周辺部位における治癒組織形成ための最適環境を創造できる。
【0059】
後者の方法は、果樹等の植物病害や有害虫の発生を予防する方法として好適である。この場合、本発明の防除剤と他の農園芸用殺菌剤及び/又は農園芸用殺虫剤とを混合し、所定量の水で希釈して散布液を調製し、該散布液を散布する。本発明の防除剤を植物に散布することにより、植物病害の発生及び有害虫の発生等を予防する効果を得ることができる。
【0060】
また、本発明の防除剤に含まれる(A)成分の黒色粉末は、薬効持続効果を奏するため、農薬の散布回数を大幅に削減することができる。例えば、リンゴ等の果樹栽培においては,従来10回以上の農薬散布が行なわれていたが、本発明の防除剤を使用することにより、5回程度の農薬の散布にて十分な有害生物の防除効果を得ることができる。
【0061】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0062】
製造例1(液状活性炭の製造)
活性炭粉末(商品名:太閤S、二村化学工業(株)製)10重量部、可溶性でんぷん(商品名:OSK−03α、日澱化学(株)製)10重量部、及び水80重量部を混合し、サンドミルで活性炭の平均粒径が5μm以下になるまで分散処理して、液状活性炭を製造した。
【0063】
製造例2(液状カーボンの製造)
カーボンブラック(商品名:MA−100、三菱化学(株)製)10重量部、βナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(商品名:デモールN,花王(株)製)2重量部、及び水38重量部を混合し、サンドミルでカーボンブラックの平均粒径が2μm以下になるまで分散処理して、カーボンの水分散体Aを作成した。
【0064】
次いで、前記可溶性でんぷん(商品名:OSK−03α、日澱化学(株)製)10重量部を水40重量部に溶解して、上記カーボンの水分散体A50重量部に加えて攪拌し、液状カーボンを製造した。
【0065】
実施例1
製造例1で得られた液状活性炭をパールコアポテトデキストロース寒天培地(E−MF21、栄研化学(株)製)中に添加し、この培地を直径9cmのシャーレに分注し、プレートを作った。このプレートの中央に、一白金耳量のリンゴ腐らん病菌(Valsa ceratosperma(Tode ex Fr.)Maire)の菌糸を植え付け、24℃で培養した。成長したコロニーの直径を経時的に測定し、液状活性炭の腐らん病菌に対する生育抑制効果を調べた。第1表にこの結果を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
第1表に示す結果から明らかなように、液状活性炭はリンゴ腐らん病菌に対して抗菌効果を有することがわかった。
【0068】
実施例2
腐らん病の病状を呈するリンゴ樹の病巣患部から樹皮の一部(0.1g)を採取し、試験管(直径:17mm、長さ:180mm)中の10mlの滅菌水に懸濁させた。この上澄み液から平板希釈法を用いて、リンゴ樹病巣由来の黴a〜黴dまでの4株の黴を分離した。この4株のパールコアポテトデキストロース寒天培地スラント上におけるコロニーの形状と色調、及び顕微鏡観察による菌糸の形状はリンゴ腐らん病菌(Valsa ceratosperma(Tode ex Fr.)Maire)と同様であった。
【0069】
次いで、製造例2で得られた液状カーボンをパールコアポテトデキストロース寒天培地(栄研化学(株)製、E−MF21)中に1.0%の濃度になるように添加し、この培地を直径9cmのシャーレに分注し、プレートを作った。このプレートの中央に、一白金耳量の上記リンゴ樹病巣から分離した黴a〜黴dの4株の菌糸をそれぞれ植え付け、24℃で培養した。成長したコロニーの直径を経時的に測定し、液状カーボンのリンゴ樹分離菌株に対する生育抑制効果を調べた。結果を第2表に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
第2表に示す結果から明らかなように、液状カーボンは腐らん病リンゴ樹由来分離菌株に対して抗菌効果を有することがわかった。
【0072】
実施例3、比較例1
老木の「ふじ」りんご樹の主幹にできた腐らん病の病斑部分を削り取り、更に周辺の健全部も数センチにわたり薄く削って病斑部分を中心に樹皮の削除を行った。一方、チオファネートメチルペースト剤(日本曹達(株)製、商品名:トップジンMオイルペースト)50重量部に、参考例1で得られた液状活性炭50重量部を加え、均一になるまで攪拌して黒色のペースト状の胴枯性病防除剤を調製した。
【0073】
次いで、樹皮を削除した部分に上記で得られた胴枯性病防除剤をハケ塗りして、黒い塗膜で完全に被覆した。また、比較のため、上記の樹皮を削除した部分にチオファネートメチルペースト剤(商品名:トップジンMオイルペースト、日本曹達(株)製)原液をハケ塗りして、完全に被覆した(比較例1)。2ヶ月後、両者の塗布部分におけるカルスの形成状況を観察した。
【0074】
本実施例の胴枯性病防除剤を使用した場合には、塗布部分にはカルスの形成が認められ、殺菌剤のみに比べてカルスの形成が極めて良好であった。一方、比較例1の場合(殺菌剤のみの場合)には、塗布膜は殆ど脱落し、カルスの形成が一部に認められたが、満足できるものではなかった。本実施例の胴枯性病防除剤は、顕著なカルス形成効果を示し、十分なリンゴ腐らん病治癒効果を有することがわかった。
【0075】
実施例4、比較例2
実施例3と同様にして「ふじ」りんご樹の主幹にできた腐らん病の病斑部分を削除した。一方、チオファネートメチル(商品名:トップジンM水和剤、日本曹達(株)製)10重量部を参考例2で得られた液状カーボン90重量部に加え、均一になるまで攪拌して黒色のペースト状の胴枯性病防除剤を調製した。
次いで、樹皮を削除した部分に上記で得られた胴枯性病防除剤をハケ塗りして、黒い塗膜で完全に被覆し、2ヶ月後、トップジンM水和剤の10倍希釈液をその樹皮削除部分に塗布したリンゴ樹(比較例2)と比較した。
【0076】
本実施例の胴枯性病防除剤を使用した場合には、塗布部全体にカルスの形成が認められたが、比較例2(殺菌剤のみの場合)には、カルスの形成は殆ど認められなかった。本実施例の胴枯性病防除剤は、顕著なカルス形成効果を示し、十分なリンゴ腐らん病治癒効果を有することがわかった。
【0077】
実施例5
成木の「ふじ」リンゴ樹の枝の剪定痕、新梢の先枯れ部等の枝腐らん予防と、カイガラ虫やアブラ虫等の防除に参考例1で得られた液状活性炭と、第3表に示す農薬活性成分(市販農薬製剤A〜M)の1,000倍希釈品を、第3表に示す配合量で混合して、黒色の散布用の防除剤をそれぞれ調製した。この散布用防除剤を、芽出し初期、開花直前、落花15日後、7月上旬の5回にわたり、動力噴霧器で1,000リットル散布した。その結果、5回の散布で枝に腐らん病が発生するのを防止することができ、同時にカイガラ虫やアブラ虫等の発生も殆どみられなかった。
【0078】
散布液の散布時期、組成、使用量、希釈倍率及び散布量を第3表にまとめて示す。なお、第3表中の略号は以下の意味を表す。
農薬A:イミノクタジン酢酸塩溶剤(商品名:ベフラン溶剤、クミアイ化学(株)製、殺菌剤)
農薬B:マシン油乳剤(商品名:トモノールS,トモノアグリカ(株)製、殺虫・殺ダニ剤)
農薬C:チオファネートメチル水和剤(商品名:トップジンM、日本曹達(株)製、殺菌剤)
農薬D:ジフェノコナゾール・マンゼブ水和剤(商品名:スコアMZ、ノバルティスアグロ(株)製、殺菌剤)
農薬E:BT顆粒水和剤(商品名:ファイブスター、アグロカネショウ(株)製、殺虫剤)
農薬F:ジウラム・チウラム・フェナリモル水和剤(商品名:スペックス、日産化学(株)製、殺菌剤)
農薬G:DMTP水和剤(商品名:スプラサイト、ノバルテキスアグロ(株)製、殺虫剤)
農薬H:炭酸カルシウム水和剤(商品名:クレフノン、白石カルシウム(株)製)
農薬I:有機胴水和剤(商品名:オキシンドー80、トモノアグリカ(株)製、殺菌剤)
農薬J:ピリダフェンチオン水和剤(商品名:オフナック、三井化学(株)製、殺虫剤)
農薬K:シプロジニル水和剤(商品名:ユニックスZ,ノバルティスアグロ(株)製、殺菌剤)
農薬L:ダイアジノン水和剤(商品名:ダイアジノン水和剤、日本農薬(株)製、殺虫剤)
農薬M:アセタミプリド液剤(商品名:モスピラン、日本曹達(株)製、殺虫剤)
【0079】
【表3】
【0080】
比較例3
液状活性炭を添加しない以外は、実施例5と同様の組成の散布液を調製し、これを近隣の成木「ふじ」リンゴ樹に実施例5と同時期に、同一散布量を同一回数散布した。その結果、枝に腐らん病の発生が見とめられ、しかもカイガラ虫やアブラ虫の発生も随所に見られ、防除効果に乏しかった。
【0081】
実施例5と比較例3の結果から、液状活性炭を添加することで薬効が持続したためと考えられる。従来は、芽だし初期から7月下旬までの期間に、10回以上の農薬散布を行なわなければ、腐らん病及びカイガラ虫、アブラ虫による被害を予防することができなかったが、実施例5の結果から、液状活性炭を添加することで、農薬活性成分の薬効が持続し、農薬の散布回数を大幅に削減できることが分かった。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、簡便で使い勝手が良く、しかも高い防除効果を併せ持つ、安全で確実な植物の防除剤及び有害生物の防除方法が提供される。
Claims (4)
- (A)黒色粉末、(B)水溶性又は水分散性バインダー、及び(C)胴枯性病に対し防除効果を有する殺菌剤を含有してなる植物の胴枯性病防除剤。
- 前記(A)黒色粉末が、粉末活性炭、カーボンブラック又は黒色酸化鉄顔料である請求項1に記載の植物の胴枯性病防除剤。
- 請求項1または2に記載の植物の胴枯性病防除剤を、植物の病巣患部に塗布することを特徴とする植物の胴枯性病防除方法。
- 請求項1または2に記載の植物の胴枯性病防除剤を、植物に散布することを特徴とする植物の胴枯性病防除方法。
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