JP4176414B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法において形成される静電潜像を現像するための静電荷像現像用トナーに関し、詳しくは該静電荷像現像用トナーの帯電制御技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
IT技術が世界的に重要な技術として用いられるようになるのにともない、オフィスではパソコン(以下、PCと記載する)の使用が一般的となり、一人一台の時代になってきている。PCで作成された文書は、電子データとして配付、閲覧されたり、または紙情報として印刷またはコピーされることで多くの人々の共有情報となる。
そういったオフィスで紙情報として出力、配布、そして回覧するために一般的に使用されているプリンターや複写機としては、すべてのPCから出力できるようにネットワーク型のものが使用されている。ネットワーク型として使用されている電子データ出力用画像形成装置の多くは、電子写真方式のものが用いられ、電子写真プロセスではその特性上、廃トナーが生成される。
【0003】
一方、多くの電子写真方式で用いられている現像方式である2成分現像方式では、現像に使用されるトナーに帯電性を付与するためにキャリアを用いるが、キャリアには寿命が有り、回収、再生または廃棄の必要がある。
近年、地球環境を守るために、多くの国や企業でさまざまな取り組みが行われている。それらは、例えば、資源のリサイクル、無公害、廃棄ゼロ、省エネルギー、地球温暖化対策、クリーンエネルギー、等が上げられる。このような背景から、今後は地球環境に優しく、キャリアの再生または長寿命化を図った電子データ出力用画像形成装置が望まれているところである。
キャリアを用いない方法としては、1成分現像方式が上げられるが、転写後に多くの廃トナーが残り、環境に対しては好ましくない。また高速印字には適さないという問題もある。
【0004】
以上の点から、地球環境に優しく、また今後のIT産業の重要な部分となる電子データのための、高速な画像形成装置が望まれているところである。
また近年では、高速な画像形成装置として、従来のモノクロ機からフルカラー機に移行しつつある。フルカラー機では、モノクロ使用とフルカラー使用とを併用して用いることが多いため、印字する書類によって面積率が大きく異なる場合がある。通常の文字情報だけでは、大体7%程度の面積率であるのに対し、写真やプレゼンテーションに使用する資料の場合80%以上の面積率になることがある。出力される画像によって面積率が大きく異なるということは、使用されるトナー量が画像によって変化することを意味している。1回に使用されるトナー量が変化するということは、現像器内に補給されるトナー量が画像により異なってくるわけである。つまり、帯電を与える一定量のキャリアに対して、トナー量は大きく変化し、そして変化しても補給トナーの帯電特性は常に同じ状態を維持させる必要がある。
しかし、トナーに帯電を与えるキャリアの特性やトナー表面状態が経時的に変化したりするため、従来では補給トナーの帯電特性を同じ状態に維持させることは困難であった。これはキャリアの寿命を短くしてしまい、環境に対して優しいものとは言えない状況であった。
【0005】
また、補給トナーの帯電特性のばらつきにより、トナー補給時に地汚れ現象がみられるという不具合も発生する。地汚れは、非画像部にトナーが付着し目的でない画像を形成することである。この現象は、一般的には帯電が正常でないトナーが付着していることが多い。つまり地汚れは、帯電不良または正規帯電できないトナーが原因で発生しているともいえる。
一般的に、帯電量の測定はキャリアとトナーを混合して一定時間攪拌後に測定している。しかしながら本来のトナーの特性を明確に表すためには、トナー帯電ダイナミクスを知ることが重要である。これは、トナー帯電量を時間とともに測定することであり、この測定を行うことで、トナーの帯電特性を詳しく知ることができる。
地汚れトナーと正常トナーをこの方法で調べた結果、地汚れトナーは帯電の初期に不安定な挙動を示していた。この原因の1つにはトナーに含有される帯電制御剤に問題があることがわかり、帯電制御剤の体積抵抗を調べると地汚れしやすいトナーの場合、現像手段等から印加される印加電圧に対して体積抵抗が大きく低下することが明らかとなってきた。
【0006】
印加電圧による体積抵抗の変化を防止するために、特開2001−194823号公報では、外添剤の体積抵抗を規定してトナー帯電量の適正化を図った技術を提案している。また、特開2000−098657号公報では、キャリアの体積抵抗を規定することによって高画質化の検討が行われている。また、特開平05−040403号公報では、トナー規制部材の体積抵抗による帯電量分布の均一化を図っている。
これらによっても帯電量の適正化を行うことは可能であるが、本発明ではさらに高い効果を得られることがわかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、キャリア特性の劣化を防止して地球環境保護に貢献し、且つ、トナー補給時の帯電立ちあがりが良好で、トナーの帯電不良による地汚れを防止し、高速の画像形成装置に対して経時に高品質に対応可能な静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、発明は、少なくとも帯電制御剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、前記帯電制御剤は、融点を有する結晶性の金属錯体化合物であり、かつ再結晶処理と加圧処理をしたものであることを特徴とする静電荷像現像用トナーである。
発明は、前記静電荷像現像用トナーにおいて、記加圧処理が30tの圧力下における処理であることを特徴とする静電荷像現像用トナーである。
発明は、前記いずれかの静電荷像現像用トナーにおいて、前記帯電制御剤は、印加電圧を500V、1000V、1500V、2000Vに設定して測定したときの体積抵抗が3.0×10Ω・cm以上で、印加電圧に関わらず一定であることを特徴とする静電荷像現像用トナーである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下より、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の静電荷像現像用トナーを用いた画像形成装置の主要部を示す構成図である。なお、図1は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
1は像担持体であり、帯電手段2により表面を帯電された後、露光3により潜像を形成され、静電荷像現像用トナーを補給される現像手段4により現像されてトナー像化される。トナー像は転写手段5により転写材等に転写され、定着手段7により転写材に定着される。一方、像担持体1上に残った転写残トナーはクリーニング手段6により回収される。
【0010】
トナーは、現像手段4により現像される時に電圧が印加され、その時の電圧によって帯電量が低下する場合がある。これは、電圧によって、トナーに含まれる材料の体積抵抗が低下し、その結果帯電量が低下するものと考えられる。
トナーの地汚れはトナー帯電が不十分である場合に起こる。トナーの帯電はキャリア等と摩擦されることでトナー表面に電荷が発生し、その電荷が帯電制御剤等で保持されている。したがって、トナーの体積抵抗の変化は、帯電制御剤が電荷をいかに保持することができるかが重要となると考えられる。
帯電制御剤が電荷を保持する性能の指標として、ここでは、印加電圧に対する体積抵抗の変化を見ることで判断できる。つまり体積抵抗が一定であるような帯電制御剤を用いると地汚れが生じないのである。
この現象は帯電制御剤の結晶構造に起因すると考えられ、帯電制御剤の不純物を除去することで、体積抵抗の変化を防ぐことができる。従来の帯電制御剤は、X線構造回析によると結晶構造がきれいではなく乱れており、このため、印加電圧に対する体積抵抗が大きく変化し、その結果地汚れが発生しやすくなっていたものと思われる。
【0011】
本発明のトナーは、少なくとも融点を有する結晶性低分子化合物を帯電制御剤として含有し、該化合物の体積抵抗が、常に同じ値で略変化せず、印加電圧に対しても一定であることを特徴とする。
前記化合物の体積抵抗が常に一定であるためには、前述したように不純物を除去し結晶構造を整える必要がある。しかし、結晶構造をきれいに整えすぎると帯電制御性能は悪くなるようである。
この原因は次のように考えられる。化合物に電荷を保持して帯電制御性能を持たせるためには、結晶構造中にある種のトラップされる領域を保有する必要がある。結晶構造が揃いすぎていると電子が流れやすくなるため、このトラップされる領域は少なくなる。そのため、ある種の歪みを持たせることで、結晶性と非結晶領域を共存させることが重要になると考えられる。
本発明では結晶性を良好な状態にするために不純物を除去し、非結晶領域を持たせるために圧力をかけることで目的を達成することができる。
【0012】
帯電制御剤としての前記化合物は、有色材料を用いると色の変化が起こるため、カラートナーでは無色、白色に近い材料が好ましい。帯電制御剤としての前記化合物は公知のものが全て使用でき、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的には第四級アンモニウム塩のボントロンPー51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRAー901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、の化合物が挙げられる。
【0013】
また、前記化合物の体積抵抗が3.0×10Ω・cm以上であることによってその効果が大きくなる。これは、以下の方法によって見出された。
帯電制御性能を示す化合物を10数種類用いて、材料の体積抵抗を測定した。その結果、体積抵抗とトナーの地汚れランクの関係を調べたところ、体積抵抗が3.0×10Ω・cmの近傍でしきい値があることがわかった。
この値より低い化合物を帯電制御剤として用い、画像形成を行うと、地肌汚れやトナー飛散が発生しやすくなり、あまり好ましいものではない。また、体積抵抗があまり極端に大きくなりすぎると、逆にトナーの性能を示さなくなる。
【0014】
なお、前記化合物の体積抵抗が、印加電圧に関わらず略一定であるというのは、本発明では5%以内の変化をさす。5%以内の変化に抑えることで、補給トナーを加えた時に地汚れしないトナーを得ることができる。5%を越えると、トナーの体積抵抗の変化に影響し、地汚れが発生してしまう。
【0015】
帯電制御剤の体積抵抗を算出するための実験は以下のようにして行うことができる。
帯電制御剤を圧縮成型器により6t下で厚さ約2mmに整形する。そのサンプルを用い、電極面積2cmにて交流電源装置(長野愛知エレクトリック製)を用いて、9KHzの周波数での電圧を印加する。その時の測定結果をオシロで測定し体積抵抗を算出する。本発明では、印加電圧を500、1000、1500、2000Vに設定して実験を行った。
【0016】
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂、着色剤、ワックス、分散剤等、公知の材料を適宜用いることができる。
トナーの製造方法としては、一般的な方法を使用することができる。
2軸スクリューニーダを用いて、結着樹脂、着色剤、ワックス、分散剤、帯電制御剤を溶融混錬し、ジェットミル粉砕を用いて粉砕後、分級、添加剤混合を行い、トナーを得る。
【0017】
【実施例】
以下本発明について、実施例と比較例を挙げてより具体的に説明を行うが、これらは本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
(実施例1)
帯電制御剤処理
下記表1に示す特性のE84(オリエント化学社製:2,6−di−tert−Buサリチル酸亜鉛塩)を水に溶解し、再結晶を行い不純物を除去した。得られた化合物はX線回折スペクトルから結晶形が異なっていることが確認された。その化合物を用いて、30tの圧力下において10分処理を行った。処理後の帯電制御剤の体積抵抗は、電圧を500、1000、1500、2000Vに設定して測定したところ、3.1×10Ω・cmで一定であった。
【表1】
Figure 0004176414
【0019】
トナー作製
低分子量ポリエステル樹脂60重量部、高分子量スチレンアクリル樹脂30重量部、カーボンブラック4重量部、カルナウバワックス4重量部、前記帯電制御剤1重量部とを、2軸のスクリューニーダで混練した。混練時にダイから練られたトナーが連続して出てくるとき、トナーに脈動が見られない状態で混練した。つづいて圧延冷却後粗粉砕したトナーをジェットミルにて粉砕し、最後に気流式分級機において体積平均粒径5.8μm、個数平均粒径4.9μmのトナーを得た。
同様に、マゼンタ、シアン、イエローについても顔料を代えてカラートナーを得た。
【0020】
現像剤作製
次に、得られた各色トナー100重量部に対し、外添剤としてチタニア0.3重量部をヘンシェルミキサーにて2分間混合処理を行った。この際まずオーダードミクスチャー状態を形成してから、混合エネルギーを制御して混合作業を行った。混合エネルギーは、撹拌装置の回転数とともに撹拌バネ形状、容器形状によって制御される。その後にシリカを1重量部添加し、1分間混合処理を3回行った。このトナー5重量部を、芯材34μmにスプレーコーティングしたシリコンコートキャリアと混合させて現像剤を得た。
画像試験
上記現像剤を用い、高速の電子データ出力用画像形成装置としてリコー製プリンターIPSiO8000において画像形成したところ、地汚れのまったく無い画像を得ることができた。トナー補給時でも、地汚れを観測することはできなかった。100K枚出力したが最後まで地汚れを見ることはできなかった。
【0021】
(実施例2)
帯電制御剤の処理時に30t圧力をかけない以外は実施例1と同じ方法でトナーを作製し、現像剤を得た。
リコー製プリンターIPSiO8000において画像形成したところ、地汚れのまったく無い画像を得ることができた。トナー補給時でも、地汚れを観測することはできなかった。70K枚出力したが地汚れを見ることができなかった。80K枚から少し地汚れがでてきた。
【0022】
(比較例1)
帯電制御剤の前処理を行わない以外は実施例1と同じ方法でトナーを作製し、現像剤を得た。
リコー製プリンターIPSiO8000において画像形成したところ、30K枚出力あたりから地汚れが発生した。
【0023】
(比較例2)
下記表2に示す特性のTN105(保土谷化学工業社製:2,6−di−tert−Buサリチル酸ジルコニウム錯体)を、処理をせず用いた以外は実施例1と同じ方法でトナーを作製し、現像剤を得た。
リコー製プリンターIPSiO8000において画像形成したところ、20K枚出力あたりから地汚れが発生した。
【表2】
Figure 0004176414
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、トナーに含有される帯電制御剤の体積抵抗を適当な値にすることで、キャリアの劣化を抑えることができ、トナー補給時の帯電立ちあがりが良好で、地汚れが発生せず、高速の画像形成装置に対応可能な、高耐久な現像剤を達成できる静電荷像現像用トナーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトナーを用いる画像形成装置の一例である。
【符号の説明】
1 像担持体
2 帯電手段
3 露光
4 現像手段
5 転写手段
6 クリーニング手段
7 定着手段

Claims (3)

  1. 少なくとも帯電制御剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、
    前記帯電制御剤は、融点を有する結晶性の金属錯体化合物であり、かつ再結晶処理と加圧処理をしたものである
    ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
  2. 請求項1に記載の静電荷像現像用トナーにおいて、
    記加圧処理が30tの圧力下における処理である
    ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
  3. 請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナーにおいて、
    前記帯電制御剤は、印加電圧を500V、1000V、1500V、2000Vに設定して測定したときの体積抵抗が3.0×10Ω・cm以上で、印加電圧に関わらず一定である
    ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
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