JP4176021B2 - 固体化組織免疫アジュバント - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は固体化組織免疫アジュバントの製造方法に関するものであり、該方法は、一般的免疫反応の強化方法、並びに抗腫瘍免疫反応による腫瘍の再発予防、転移阻害、及び治療に有用な方法である。
背景技術
抗原とともに生体に投与すれば抗原に対する免疫反応を増強するという従来から知られている免疫アジュバントには様々なものがあるが、ほとんどすべての免疫アジュバントは炎症反応を惹起し、炎症反応局所に集合してくる免疫担当細胞を活性化する。近年になって、免疫担当細胞の中で免疫反応の中心的役割を担うのは抗原提示細胞であって、しかもその中で最も強力な細胞は樹状細胞であることが明らかになってきた(Dentdritic Cells,second edition,ed.By Lotze,M.T.and Thomson,A.W.,Academic Press,San Diego,2001)。末梢血中には微粒子状の抗原を貪食できる未成熟な樹状細胞が流れており、in vitroで培養中の樹状細胞にエンドトキシンの主成分であるlipopolysaccharide(LPS)を添加すると、強力な抗原提示能がある成熟した樹状細胞となることが明らかにされている。この過程において活性化した樹状細胞は、granulocyte−macrophage colony stimulating factor(GM−CSF)、interleukin(IL)−12、interferon−gamma(IFNg)など、種々のサイトカインを放出する。しかもGM−CSF自体は樹状細胞の細胞成長因子として必須である。従って、一旦活性化した樹状細胞は、GM−CSFのオートクライン機構によって長期に活性化状態を保ち生存し続けていくことが可能となる。
エンドトキシンやそれを含む大腸菌を生体内に直接投与した場合、強烈なショック症状を引き起こすことはよく知られた事実である。そのため、このような作用がない比較的安全な細菌類(例えばMycobacterium bovis BCG(以下、BCG菌という))が免疫アジュバントとして利用される。しかし、この細菌類は比較的安全とはいえ、菌体ないし菌体成分をそのまま使用する場合、好ましからざる副作用が惹起されることが多い。例えば、BCG菌体は注射した皮膚に潰瘍を発生させることは広く知られている事実である。Corynebacterium parvum(以下、C.parvum)菌体は、腫瘍の制御を目的とした腫瘍免疫実験系で動物に注射すると強力な抗腫瘍作用を示すが、脾臓肥大、肝臓肥大を惹起する。もっとも、C.parvum菌体から得たピリジン抽出液中の成分は、この望ましからざる反応を引き起こさずに抗腫瘍作用を示し、この現象はBCG菌等、他の抗腫瘍反応誘起性細菌でも同等であることが知られている(Cantrell,J.L.,US Patent 4663306)。このように、アジュバント活性を保ちつつ、しかも生体に対する毒性がない腫瘍免疫アジュバントを開発することは、免疫学における重要な課題であった。
従来から知られる多種多様な免疫アジュバントの中でも、ヒト腫瘍の治療、転移、及び再発予防の目的で腫瘍免疫療法に使用し得る安全でかつ低価格の免疫アジュバントは少ない。例えば、培養樹状細胞を利用した腫瘍免疫療法では、keyhole limpet hemocianin(KLH)がアジュバントとして使用されているが(Geiger,J.D.,et al.,Cancer Res.61:8513−8519,2001)、KLHはスカシガイから採取するため非常に高価であるという欠点がある。もちろん樹状細胞を活性化するGM−CSFなどのサイトカイン類を直接アジュバントとして投与するという方法もあるが、サイトカイン類はなお一層高価である。また、C.parvum菌体ピリジン抽出液も含め、これらの物質は溶解性であり、体内で急速に拡散消失するという問題点があった。
一方、M.tuberculosisの培養濾過液中の成分は、溶解状態では弱いアジュバント活性しかないが、ポリスチレン微粒子に結合することによってT細胞反応を促進する(Wilkinson,K.A.,et al.,J.Immunol.Methods,235:1−9,2000)。すなわち、溶解状態のアジュバントを不溶性のアジュバントキャリアー上に固定すれば、急速に拡散消失せず、強いアジュバント活性を示すようになる。ただし、ポリスチレン微粒子は抗原提示細胞に貪食されるが、細胞内で分解されず、体内に残存する望ましからざるプラスチックとなる。
この問題点を解決する方法として、この文献中には、合成生分解性高分子の微粒子に、細菌の培養濾過液中の成分を結合させる方法も引用されている(Vordermeier,H.M.,et al.,Vaccine,13,1576−1582,1995;Ertl,H.C.,et al.,Vaccine,14,879−885,1996;Jones D.H.,et al.,J.Biotechnology,44,29−36,1996;Venkataprasad,N.,et al.,Vaccine,17,1814−1819,1999)。ただし、記載された合成高分子poly(DL−lactide co−glycolide)(PLG)は分解時に乳酸を発生し、分解局所環境を酸性化することがわかっており、やはり生体にとっては望ましいものではない。
発明の開示
腫瘍免疫学の分野では、固体状で、しかも生分解性でありながら、上述のような望ましからざる作用がないアジュバントキャリアーが望まれていた。また、従来の技術では、複雑多岐にわたる腫瘍抗原を含む腫瘍組織又は腫瘍細胞を固体状にした上で、免疫アジュバントを結合し、一体として抗原提示細胞に供給し、該細胞による腫瘍抗原処理を効率的に刺激できる方法はなかった。
本発明者らは上記の問題点を解決すべく鋭意努力した結果、以下のポイントを組み合わせれることにより、優れたアジュバントを提供できることを見出した。
(1)固体化し微粒子化した腫瘍組織をGM−CSF等のサイトカインとともに体内に投与すれば、効率よく、腫瘍細胞に対する抗腫瘍免疫反応を誘導できること(PCT/JP00/00692「腫瘍ワクチン」)から、GM−CSF自体がアジュバントとなっていること、従って、免疫アジュバントの刺激を受けた抗原提示細胞から産生されたGM−CSFの量は、元のアジュバントの活性を表す指標となり得る。
(2)抗腫瘍免疫反応の過程においては、死んだ腫瘍細胞は、抗原提示細胞に貪食されて分解され、これによって生成した腫瘍抗原が抗原提示細胞表面上の主要組織適合抗原(MHC)クラスI分子上に提示されて、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を活性化し、CTLが腫瘍細胞を殺す(Dhodapkar K.M.,et al.,J.Exp.Med.195:125−133,2002)。
そのため、固定処理によって腫瘍細胞を殺した腫瘍組織にアジュバント活性物質を固着させれば、貪食作用によってアジュバント活性物質と死んだ腫瘍細胞が同時に抗原提示細胞内に持ち込まれると考えられる。この場合、必ずしも固定腫瘍組織でなくても、固定し固体化した生体組織であれば、弱いアジュバント活性しかない可溶性物質であっても、固着した当該生体組織と一体となって貪食されるため、固体化不溶性アジュバントとしてふるまい、極めて効率よく貪食細胞を刺激できるものとなる。しかもそのキャリアーとなった固体化生体組織自体は細胞内で分解処理されてしまうため、アジュバントとしての安全性も高いものとなる。
(3)ホルマリンは生体高分子に架橋反応を惹起し、網の目状に結合された生体高分子は不溶化する。いわゆるホルマリンによる生体組織の固定はこの反応により行われるものである。ポリオに対するソークワクチンの発明以来、ホルマリン不活化ワクチンは多々使用されてきた。また、歯科治療では、歯髄を固定するためにホルマリンを常用する。いわゆる歯の神経を殺す操作である。この固定歯髄は物理的に大部分を除去するとはいえ、歯髄に残る残存固定組織自体は宿主個体になんらの影響も及ぼさず、やがて消失する。これら知見は、ホルマリン固定生体組織の安全性に問題がないことを示唆している。従って、固体化生体組織として、ホルマリン固定組織を使用すれば、ヒトにも投与できる安全性の高いものとなる。
(4)ヒトの場合は、他者の組織に対する免疫拒絶反応があるために、他者由来の生きている細胞を使用すればアジュバント活性を示す(例えば他人どうしのリンパ球を混ぜ合わせることにより、強いリンパ球増殖誘導が起こる)ことは周知だが、他者の固定組織自体も免疫アジュバント活性を維持している可能性があり、一般的免疫アジュバントとして利用可能であろうと推定できる。また、ヒト以外の動物組織も、例えばブタの組織は、ヒトに移植すれば強力な免疫拒絶反応を引き起こすため、固定したブタ組織でも十分なアジュバント活性を持つことも想像できる。しかも、ヒトの場合、腫瘍患者の摘出腫瘍組織を固定してアジュバントキャリアーとすれば、その中に含まれるあらゆる種類の腫瘍抗原が、固着しているアジュバント活性物質と一体となって抗原提示細胞に取り込まれていくと考えられる。
(5)さらに、腫瘍患者の摘出腫瘍組織を当該腫瘍患者自身に投与する場合、その中に含まれる腫瘍抗原以外は本来当該患者の正常組織と同じものであるため抗原として認識されないが、この際、免疫アジュバントと一体化して固体化摘出腫瘍組織を投与すれば、当該腫瘍患者自身の腫瘍抗原のみに対する特異的免疫反応を効率よく刺激でき、優れた自家腫瘍ワクチンとなり得る。
(6)アジュバント活性をヒトで測定するためには、樹状細胞が含まれている血中付着性細胞から産生されたGM−CSFの量を指標として測定すればよく、この測定は体外実験系で可能である。
すなわち、本発明は、免疫アジュバントであって、ヒトを含む動物の組織、細胞、及びこれらの成分からなる群から選ばれる固体化された材料から調製され、有機溶媒及び/又は熱水で洗浄することにより可溶性成分が除去された断片を含み、該断片に微生物に由来する可溶性成分が固定化された免疫アジュバントを提供するものである。
本発明の別の観点からは、免疫アジュバントの製造方法であって、以下の工程:
(a)ヒトを含む動物の組織、細胞、及びこれらの成分からなる群から選ばれる固体化された材料から調製された断片を、有機溶媒及び/又は熱水にて洗浄して可溶性成分を除去する工程;及び
(b)上記工程(a)で得られた該断片に微生物に由来する可溶性成分を固定化する工程
を含む方法が提供される。
上記発明の好ましい態様によれば、ヒトの組織又は細胞として腫瘍組織及び/又は腫瘍細胞が用いられ、ヒトを含む動物の組織、細胞、及びこれらの成分からなる群から選ばれる固体化材料として、ホルマリン固定組織及び/又はホルマリン固定細胞を用いることができる。また、微生物として細菌を用いることができ、微生物に由来する可溶性成分としては、アルコール抽出物、アセトン抽出物、ピリジン抽出物、又は熱水抽出物を用いることができる。
さらに別の観点からは、ヒトの組織又は細胞として腫瘍組織及び/又は腫瘍細胞を用いて調製した上記の免疫アジュバントを有効成分として含む腫瘍ワクチンが本発明により提供される。さらに、別の観点からは、上記の免疫アジュバントを該腫瘍が由来した患者に投与する腫瘍の治療方法が本発明により提供される。
発明を実施するための最良の形態
本発明の免疫アジュバントは、ヒトを含む動物の組織、細胞、及びこれらの成分からなる群から選ばれる固体化された材料(以下、「固体化生体材料」と呼ぶ場合がある)から調製され、有機溶媒及び/又は熱水で洗浄することにより可溶性成分が除去された断片を含み、該断片に微生物に由来する可溶性成分が固定化されていることを特徴としている。
本発明の免疫アジュバントは、弱いアジュバント活性を持つ微生物由来の可溶性成分、好ましくは細菌由来の可溶性成分が固定化された不溶性のアジュバントであり、アジュバントが細胞に貪食されることにより、細胞表面の至近距離ないし細胞内部から刺激を加え、強い活性のあるアジュバントとして作用する。
本発明の好ましい態様によれば、細菌などから抽出したアジュバント活性の弱い微量の可溶性成分を固体化生体材料の断片に固定化することによって、血中付着性細胞からLPSで刺激した場合に比肩できる高い濃度のGM−CSFを放出させることができる。
また、本発明の別の好ましい態様によれば、固体化生体材料の断片として腫瘍患者の手術後のホルマリン固定腫瘍組織断片を用い、これに微量の微生物、好ましくは細菌から抽出したアジュバント活性の弱い可溶性成分を固定化することによって調製された免疫アジュバントが提供される。該免疫アジュバントをヒトの血中付着性細胞中の抗原提示細胞(単球、マクロファージ、未成熟樹状細胞など)や体組織内の抗原提示細胞に取り込ませることによって、該腫瘍組織に含まれる腫瘍抗原に反応するCTLを誘導でき、その殺腫瘍細胞作用によって、術後患者のがんの再発防止、転移予防、及び/又は残存がんの治療が可能となる。
本発明の免疫アジュバントの製造方法は、典型的には以下の工程:
(a)ヒトを含む動物の組織、細胞、及びこれらの成分からなる群から選ばれる固体化された材料から調製された断片を、有機溶媒及び/又は熱水で洗浄することにより可溶性成分を除去する工程;及び
(b)アジュバント活性のある微生物、好ましくは細菌から有機溶媒及び/又は熱水で該微生物由来の可溶性成分を抽出した後、得られた抽出液を工程(a)で得られた断片に接触させ、該可溶性成分を該断片に固定化する工程
を含む。
上記工程(b)により該可溶化成分を固定化した固体化生体材料の断片を水または通常の生理食塩水にて洗浄し、未吸着の可溶性成分を除去することにより、微生物由来の可溶性成分のうち容易には遊離しない可溶性成分が固定化されたアジュバントを製造できる。
上記(a)の工程において使用される固体化生体材料の種類は特に限定されないが、例えばホルマリンで固定された生体組織を用いることができる。ホルマリンで固定された生体組織は、通常、そのままでは相当量の脂質を含んでいるが、アルコールや熱水で洗浄して脱脂することが望ましい。
固体化生体材料を断片化するとこの脱脂は容易となり、脂質以外にもアルコール可溶性成分や熱水可溶性成分(例えばペプチド等の低分子成分)も除去される。この結果、ホルマリンによる分子間結合によって不溶化した生体組織骨格構造が残るが、この構造物は固体化生体材料として特に好ましいものである。
固体化生体材料から断片を調製する方法は特に限定されず、例えばホモゲナイザーで細かな断片とする手段や通常の破砕手段など、当業者に周知の方法を用いることができる。本明細書において、「断片」とは、破砕、切断などの手段により調製された細かな調製物のことを意味しているが、調製の手段は限定されず、「断片」をいかなる意味においても限定的に解釈してはならない。通常は、0.04mm程度の大きさの断片を調製することが好ましいが、断片の大きさは特に限定されることはない。
固体化生体材料の断片を有機溶媒及び/又は熱水で洗浄する方法も特に限定されず、当業者に周知の方法を用いればよい。例えば、エタノールまたは40℃を越える熱水を用いて洗浄を行うことが好ましい。洗浄には、有機溶媒(好ましくはエタノール)と熱水の混合物を用いてもよいが、有機溶媒による洗浄と熱水による洗浄を順次行ってもよく、そのような洗浄を繰り返し行ってもよい。固体化生体材料の断片に対する有機溶媒及び/又は熱水の量も特に限定されるものではないが、例えば、断片を調製する前の固体化生体組織1gに対して50〜100mlの有機溶媒及び/又は熱水を用いることが好ましい。有機溶媒及び/又は熱水を断片に添加して十分に攪拌した後、遠心分離して上清を除くことにより洗浄された断片を調製することができる。
上記(b)の工程において使用できる微生物としては、例えば細菌、真菌、又は放線菌などを例示できるが、好ましくは細菌を用いることができる。より好ましい細菌の例を以下に示す。これらの細菌群のうち、いずれか1種類、あるいは複数の種類を組み合わせて用いてもよい。
コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriae);コリネバクテリウム・シュードツベルクロシス(Corynebacterium pseudotuberculosis);コリネバクテリウム・ゼロシス(Corynebacterium xerosis);コリネバクテリウム・レナレ(Corynebacterium renale);コリネバクテリウム・クチェリ(Corynebacterium kutscheri);コリネバクテリウム・シュードジフテリチカム(Corynebacterium pseudodiphtheriticum);コリネバクテリウム・エクイ(Corynebacterium equi);コリネバクテリウム・ボビス(Corynebacterium bovis);コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum);コリネバクテリウム・パウロメタボラム(Corynebacterium paurometabolum);コリネバクテリウム・ピオゲネス(Corynebacterium pyogenes);コリネバクテリウム・エンジミカム(Corynebacterium enzymicum);コリネバクテリウム・ホアギイ(Corynebacterium hoagii);コリネバクテリウム・ストリアタム(Corynebacterium striatum);コリネバクテリウム・ムリセプチカム(Corynebacterium murisepticum);コリネバクテリウム・ネフリジイ(Corynebacterium nephridii);コリネバクテリウム・フォケ(Corynebacterium phocae);コリネバクテリウム・バギナリス(Corynebacterium vaginalis);ミクロバクテリウム・フラバム(Microbacterium flavum);コリネバクテリウム・ファシアンス(Corynebacterium fascians);コリネバクテリウム・ラタイ(Corynebacterium rathayi);コリネバクテリウム・アグロピリ(Corynebacterium agropyri);コリネバクテリウム・トリチシ(Corynebacterium tritici);コリネバクテリウム・イラニカム(Corynebacterium iranicum);コリネバクテリウム・セペドニカム(Corynebacterium sepedonicum);コリネバクテリウム・ベチコーラ(Corynebacterium beticola);コリネバクテリウム・イリシス(Corynebacterium ilicis);コリネバクテリウム・ヒュミフェラム(Corynebacterium humiferum);コリネバクテリウム・ヒュムリ(Corynebacterium humuli);コリネバクテリウム・ヒペルトロフィカンス(Corynebacterium hypertrophicans);コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophilum);コリネバクテリウム・アセトフィラム(Corynebacterium acetophilum);コリネバクテリウム・オーランチアカム(Corynebacterium aurantiacum);コリネバクテリウム・カルネ(Corynbacterium callunae);コリネバクテリウム・シトレウム−モビリス(Corynebacterium citreum−mobilis);コリネバクテリウム・エタノールアミノフィラム(Corynebacterium ethanolaminophilum);コリネバクテリウム・フラカムファシエンス(Corynebacterium flaccumfaciens);コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum);コリネバクテリウム・ヘルクリス(Corynebacterium herculis);コリネバクテリウム・ヒドロカルボクラスタス(Corynebacterium hydrocarboclastus);コリネバクテリウム・リリウム(Corynebacterium lilium);コリネバクテリウム・ルテウム(Corynebacterium luteum);コリネバクテリウム・メディオラナム(Corynebacterium mediolanum);コリネバクテリウム・メラセコーラ(Corynebacterium melassecola);コリネバクテリウム・ミセトイデス(Corynebacterium mycetoides);コリネバクテリウム・ヌビラム(Corynebacterium nubilum);コリネバクテリウム・ロセウム(Corynebacterium roseum);コリネバクテリウム・サングイニス(Corynebacterium sanguinis);アルスロバクター・グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis);アルスロバクター・シンプレックス(Arthrobacter simplex);アルスロバクター・ツメセンス(Arthrobacter tumescens);アルスロバクター・シトレウス(Arthrobacter citreus);アルスロバクター・テレゲンス(Arthrobacter terregens);アルスロバクター・フラベセンス(Arthrobacter flavescens);アルスロバクター・デュオデカディス(Arthrobacter duodecadis);アルスロバクター・ルテウス(Arthrobacter luteus);アルスロバクター・マリナス(Arthrobacter marinus);アルスロバクター・バリアビリス(Arthrobacter variabilis);アルスロバクター・ビスコサス(Arthrobacter viscosus);アルスロバクター・ポリクロモゲネス(Arthrobacter polychromogenes);アルスロバクター・コンソシアタス(Arthrobacter consociatus);アルスロバクター・ニコチノボラス(Arthrobacter nicotinovorus);ブレビバクテリウム・リネンス(Brevibacterium linens);ブレビバクテリウム・アセチリカム(Brevibacterium acetylicum);ブレビバクテリウム・エリスロゲネス(Brevibacterium erythrogenes);ブレビバクテリウム・ヘアリイ(Brevibacterium healii);ブレビバクテリウム・リポリチカム(Brevibacterium lipolyticum);ブレビバクテリウム・ブルネウム(Brevibacterium 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griseolosuffuscus);ストレプトマイセス・グリセオルテウス(Streptomyces griseoluteus);ストレプトマイセス・グリセウス亜種ジフィシリス(Streptomyces griseus subsp.difficilis);ストレプトマイセス・ヒュミダス(Streptomyces humidus);ストレプトマイセス・ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus);ストレプトマイセス・ヒグロスコピクス亜種アンガストマイセチカス(Streptomyces hygroscopicus subsp.angustmyceticus);ストレプトマイセス・ヒグロスコピカス亜種デコイカス(Streptomyces hygroscopicus subsp.decoyicus);ストレプトマイセス・ヒグロスコピウス亜種グレボサス(Streptomyces hygroscopius subsp.glebosus);ストレプトマイセス・リバニ(Streptomyces libani);ストレプトマイセス・リバニ亜種ルファス(Streptomyces libani subsp.rufus);ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans);ストレプトマイセス・ルシタナス(Streptomyces lusitanus);ストレプトマイセス・リジカス(Streptomyces lydicus);ストレプトマイセス・メラノスボロファシエンス(Streptomyces melanosporofaciens);ストレプトマイセス・ミシオネンシス(Streptomyces misionensis);ストレプトマイセス・ムリナス(Streptomyces murinus);ストレプトマイセス・ムタビリス(Streptomyces mutabilis);ストレプトマイセス・ニグレセンス(Streptomyces nigrescens);ストレプトマイセス・ノドサス(Streptomyces nodosus);ストレプトマイセス・ノガラテル(Streptomyces nogalater);ストレプトマイセス・オリバセイスクレロチカス(Streptomyces 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vastus);ストレプトマイセス・ビオラセオラタス(Streptomyces violaceolatus);ストレプトマイセス・ビオラセウス−ニゲル(Streptomyces violaceus−niger);ストレプトマイセス・ビオラセウス−ルバー(Streptomyces violaceus−ruber);ストレプトマイセス・ビリジファシエンス(Streptomyces viridifaciens);ストレプトマイセス・アトロオリバセウス(Streptomyces atroolivaceus);ストレプトマイセス・シアノカラー(Streptomyces cyanocolor);ストレプトマイセス・グラミノファシエンス(Streptomyces graminofaciens);ストレプトマイセス・グリセオプラナス(Streptomyces griseoplanus);ストレプトマイセス・アルバダンカス(Streptomyces albaduncus);ストレプトマイセス・アルボスピナス(Streptomyces albospinus);ストレプトマイセス・アルバラス(Streptomyces albulus);ストレプトマイセス・アルチオチカス(Streptomyces althioticus);ストレプトマイセス・アラビカス(Streptomyces arabicus);ストレプトマイセス・アトロオリバセウス亜種ムトマイシニ(Streptomyces atroolivaceus subsp.mutomycini);ストレプトマイセス・カナス(Streptomyces canus);ストレプトマイセス・チャタノオゲンシス(Streptomyces chattanoogensis);ストレプトマイセス・クロロビエンス(Streptomyces chlorobiens);ストレプトマイセス・カスピドスポラス(Streptomyces cuspidosporus);ストレプトマイセス・ガンシジカス(Streptomyces gancidicus);ストレプトマイセス・グリセオフラバス(Streptomyces griseoflavus);ストレプトマイセス・グリセオインカルナタス(Streptomyces 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subsp.invertens);ストレプトマイセス・アルボクロモゲネス(Streptomyces albochromogenes);ストレプトマイセス・アンソクロモゲネス(Streptomyces ansochromogenes);ストレプトマイセス・アンソクロモゲネス亜種パレンス(Streptomyces ansochromogenes subsp.pallens);ストレプトマイセス・アビジニイ(Streptomyces avidinii);ストレプトマイセス・カルシノマイシカス(Streptomyces carcinomycicus);ストレプトマイセス・カスタネグロビスポラス(Streptomyces castaneglobisporus);ストレプトマイセス・カスタネウス(Streptomyces castaneus);ストレプトマイセス・シアノフラバス(Streptomyces cyanoflavus);ストレプトマイセス・ジャカルテンシス(Streptomyces djakartensis);ストレプトマイセス・エリスロクロモゲネス亜種ナルトエンシス(Streptomyces erythrochromogenes subsp.narutoensis);ストレプトマイセス・グロメロクロモゲネス(Streptomyces glomerochromogenes);ストレプトマイセス・グリシナス(Streptomyces grisinus);ストレプトマイセス・ハラノマキエンシス(Streptomyces haranomachiensis);ストレプトマイセス・ヒグロスタチカス(Streptomyces hygrostaticus);ストレプトマイセス・インスラタス(Streptomyces insulatus);ストレプトマイセス・インベルソクロモゲネス(Streptomyces inversochromogenes);ストレプトマイセス・キタズワエンシス(Streptomyces kitazuwaensis);ストレプトマイセス・マリエンシス(Streptomyces mariensis);ストレプトマイセス・ミヌチスクレロチカス(Streptomyces minutiscleroticus);ストレプトマイセス・ミタカエンシス(Streptomyces mitakaensis);ストレプトマイセス・ニグログリセオラス(Streptomyces nigrogriseolus);ストレプトマイセス・オガエンシス(Streptomyces ogaensis);ストレプトマイセス・ピエダデンシス(Streptomyces piedadensis);ストレプトマイセス・レゲンシス(Streptomyces regensis);ストレプトマイセス・ロベフスカス(Streptomyces robefuscus);ストレプトマイセス・ロベウス(Streptomyces robeus);ストレプトマイセス・ロバストラス(Streptomyces robustrus);ストレプトマイセス・ロゼオグリセオラス(Streptomyces roseogriseolus);ストレプトマイセス・ロゼオグリセウス(Streptomyces roseogriseus);ストレプトマイセス・サハキロイ(Streptomyces sahachiroi);ストレプトマイセス・セノエンシス(Streptomyces senoensis);ストレプトマイセス・タナシエンシス亜種セファロマイセチカス(Streptomyces tanashiensis subsp.cephalomyceticus);ストレプトマイセス・サーモニトリフィカンス(Streptomyces thermonitrificans);ストレプトマイセス・サーモビオラセウス亜種アピンゲンス(Streptomyces thermoviolaceus subsp.apingens);ストレプトマイセス・ビリドニゲル(Streptomyces viridoniger);ストレプトマイセス・ウェラエンシス(Streptomyces werraensis);ストレプトマイセス・アルボフラバス(Streptomyces alboflavus);ストレプトマイセス・バシラリス(Streptomyces bacillaris);ストレプトマイセス・カボレンシス(Streptomyces cavourensis);ストレプトマイセス・シアネオファスカタス(Streptomyces cyaneofuscatus);ストレプトマイセス・ファルビシマス(Streptomyces 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subsp.caucasicus);ストレプトマイセス・グロビスポラス亜種フラボファスカス(Streptomyces globisporus subsp.flavofuscus);ストレプトマイセス・グロビスポラス亜種ブルガリス(Streptomyces globisporus subsp.vulgaris);ストレプトマイセス・グーゲロチイ(Streptomyces gougerotii);ストレプトマイセス・グリセイナス(Streptomyces griseinus);ストレプトマイセス・グリセオロアルバス(Streptomyces griseoloalbus);ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus);ストレプトマイセス・グリセウス亜種アルファ(Streptomyces griseus subsp.alpha);ストレプトマイセス・グリセウス亜種クレトサス(Streptomyces griseus subsp.cretosus);ストレプトマイセス・グリセウス亜種ソルビファシエンス(Streptomyces griseus subsp.solvifaciens);ストレプトマイセス・インテルメジウス(Streptomyces intermedius);ストレプトマイセス・カナマイセチカス(Streptomyces kanamyceticus);ストレプトマイセス・レボリス(Streptomyces levoris);ストレプトマイセス・リモサス(Streptomyces limosus);ストレプトマイセス・リプマニイ(Streptomyces lipmanii);ストレプトマイセス・ミクロフラバス(Streptomyces microflavus);ストレプトマイセス・オドリファー(Streptomyces odorifer);ストレプトマイセス・パルバス(Streptomyces parvus);ストレプトマイセス・プルリカラレセンス(Streptomyces pluricolorescens);ストレプトマイセス・ニューモニカス(Streptomyces pneumonicus);ストレプトマイセス・プレコックス(Streptomyces praecox);ストレプトマイセス・プニセウス(Streptomyces 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dichotomica);アクチノビフィダ・アルバ(Actinobifida alba);アクチノビフィダ・クロモゲナ(Actinobifida chromogena);サーモモンスポラ・カーバタ(Thermomonspora curvata);サーモモンスポラ・ビリジス(Thermomonospora viridis);ミクロビスポラ・ロゼア(Microbispora rosea);ミクロビスポラ・エラタ(Microbispora aerata);ミクロビスポラ・アメシストゲネス(Microbispora amethystogenes);ミクロビスポラ・ビスポラ(Microbispora bispora);ミクロビスポラ・クロモゲネス(Microbispora chromogenes);ミクロビスポラ・ジアスタチカ(Microbispora diastatica);ミクロビスポラ・パルバ(Microbispora parva);ミクロビスポラ・サーモジアスタチカ(Microbispora thermodiastatica);ミクロビスポラ・サーモロセア(Microbispora thermorosea);ミクロポリスポラ・ブレビカテナ(Micropolyspora brevicatena);ミクロポリスポラ・アンギオスポラ(Micropolyspora angiospora);ミクロポリスポラ・ケシア(Micropolyspora caesia);ミクロポリスポラ・フェニ(Micropolyspora faeni);ミクロポリスポラ・レクチビルグラ(Micropolyspora rectivirgula);ミクロポリスポラ・ルブロブルネア(Micropolyspora rubrobrunea);ミクロポリスポラ・サーモビリダ(Micropolyspora thermovirida);及びミクロポリスポラ・ビリジニグラ(Micropolyspora viridinigra)。
微生物、好ましくは細菌に由来する可溶性成分を入手する方法は特に限定されないが、通常は微生物から抽出操作により入手できる。抽出の条件は特に限定されず、当業者に利用可能な条件を採用できる。溶媒の種類は特に限定されるものではないが、好ましくは、最終工程の洗浄段階で除去しやすいアルコール、アセトン、ピリジン、又は40℃以上の熱水のいずれか、又はそれらの混合物を用いることができる。
上記(b)の工程において、例えば、市販されている乾燥BCG製剤(日本ビーシージー製造株式会社、12mg入り)1本に対してエタノール1mlを加え、十分に攪拌した後、微量高速遠心器にて12,000×g(12,000rpm)で5分間遠心し、その上清を採取して別の乾燥BCG製剤1本に加え、再び十分に攪拌し、その後、微量高速遠心器にて12,000×g(12,000rpm)で5分間遠心し、その上清を採取して微生物に由来する可溶性成分の抽出液とすることもできる。
この抽出液を(a)の工程で製造した固定化生体材料の断片に添加することによって、微生物由来の可溶性成分を該断片に固定化することができる。固定化の手段も特に限定されることはなく、当業者に利用可能な方法を適宜用いればよい。固定化とは、該断片の表面に微生物由来の可溶性成分が容易に脱落しない状態で一時的又は半永久的に結合している状態を意味しており、化学的結合の形成あるいは物理化学的な相互作用などを含めて固定化の用語は最も広義に解釈する必要がある。
例えば、固定生体組織断片を微量高速遠心器にて12,000×g(12,000rpm)で5分間遠心し、パックした容量10μlに対して100μlの細菌エタノール抽出液を加え、攪拌後、0.1容量の滅菌超純水を添加し、再び攪拌する。その後、さらに0.3容量の滅菌超純水を添加し、再度攪拌した後、さらに滅菌超純水を添加していき、当初の細菌エタノール抽出液量の100倍量、すなわち10mlとする。上記の操作において十分に攪拌を行うことにより、微生物由来の可溶性成分は固体化生体材料断片に固定化される。その後、固体化生体材料断片を遠心分離し、さらに滅菌超純水で洗浄すると、純水可溶性成分は容易に除去されるが、この洗浄操作によっても除去されない微生物由来エタノール可溶性成分が固体化生体材料断片に結合した状態で残る。これを本発明のアジュバントとして用いることができる。もっとも、上記の製造方法は一例であり、本発明のアジュバントの製造方法は上記の具体例に限定されることはない。当業者には、上記の方法は適宜の修飾ないし改変が可能であり、材料や条件などを適宜選択できることは容易に理解される。
本発明の免疫アジュバントを特定の動物に対して適用する場合、上記の例における固体化生体材料として、当該動物とは異種の動物由来の組織を用いることもできる。このようにして得られるアジュバントは、異種動物組織への拒絶反応を伴う不溶性免疫アジュバントとして利用可能である。
また、固体化生体材料として腫瘍患者の摘出腫瘍ホルマリン固定組織を用い、細菌由来可溶性成分を固定化した免疫アジュバントを製造してもよい。このような免疫アジュバントは、ヒト腫瘍抗原を含む腫瘍ワクチンの主たる成分として利用可能である。
実施例
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。実施例中の略語は以下のとおりである。CTL、細胞傷害性Tリンパ球;FBS、ウシ胎児血清;LPS、リポポリサッカライド;NK、ナチュラルキラー;PBMC、末梢血単核細胞;IL、インターロイキン;PBS(+)、カルシウム・マグネシウム含有ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水;PBS(−)、カルシウム・マグネシウム不含ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水。
例1: BCG可溶性成分不溶化アジュバント(BCG菌由来エタノール可溶性成分を固着させたホルマリン固定肝癌組織断片)によるヒト末梢血付着性細胞の刺激効果
1.ホルマリン固定ヒト肝癌組織の断片化と洗浄
ヒト肝癌摘出組織を市販中性ホルマリン液に室温にて3日間以上浸漬して固定した。この組織を取り出し、眼科バサミにて径1mm程度の細かいミンスとし、PBS(+)を元の肝癌湿重量の3−10倍量加え、さらに氷冷しつつホモジェナイザー(ハイドルフ社製DIAX−600、ゼネレーターシャフトTYPE 10F)にて30秒間ホモジェナイズした。このホモジェナイズは氷冷するために間隔を30秒以上あけながら数回繰り返した。このホモジェネート1.2mlを1.5−mlエッペンドルフ遠心チューブにとり、エッペンドルフ微量高速遠心機にて17,000×g(15,000rpm)で5分間遠心した。
この沈殿を70%アルコールに懸濁して遠心し上清を除去した後、元の容量のPBS(+)に再度懸濁した。これを、ナイロンメッシュを通過させた。通過した懸濁液1.2mlを1.5−mlエッペンドルフ遠心チューブにとり、微量高速遠心機にて15,000rpm、3分間遠心し、packed volumeを計測した。計測は一定量の水を入れた1.5−mlエッペンドルフ遠心チューブと比較して行った。
2.BCG菌体由来エタノール可溶性成分の調製
乾燥BCGワクチンアンプル一本(日本ビーシージー製造株式会社、12mg入り)を110℃で5分間、オートクレーブにかけ、エタノール1mlを加え、6時間以上攪拌した後、微量高速遠心器にて12,000×g(12,000rpm)で5分間遠心し、その上清を採取して別の乾燥BCG製剤1本に加え、再び十分に攪拌し、その後、微量高速遠心器にて12,000rpmで5分間遠心し、この上清を回収し、BCG菌体由来エタノール可溶性成分溶液(以下BCG抽出液という)とした。
3.BCG可溶性成分不溶化アジュバントの調製
上記1.で洗浄したホルマリン固定ヒト肝癌組織断片のPBS(+)縣濁液を、該断片が概略100万個/ml程度になるようにPBS(−)で希釈した。この縣濁液1mlを12,000×g(12,000rpm)にて5分間遠心し、沈殿に対して99.5%エタノール1mlを加えて懸濁した。もう一度、12,000rpmにて5分間遠心し沈殿を得た。これに、BCG抽出液0.1mlを添加、撹拌した。この後、撹拌しつつ、0.01mlの純水を加え、以後さらに、0.03ml、0.1mlを加えて一時間撹拌、0.76mlを加えて一時間撹拌、9mlと順次ゆっくりと純水を加えていき、最後には一夜撹拌を続けた。
上記の撹拌液を遠心操作によって純水にて3回洗浄した。沈殿を1mlのPBS(−)に縣濁し、また遠心して沈殿を得、1mlの20%FBSを含むRPMI培養液に懸濁した。これをBCG可溶性成分不溶化アジュバントを含有する細胞刺激用培養液とした。この他、表1に示したように、BCG可溶性成分不溶化アジュバントと同量のホルマリン固定肝癌組織断片を含む細胞刺激用培養液等、種々の添加成分を含む細胞刺激用培養液を作製した。
4.BCG可溶性成分コーティングシート断片の調製
BCG抽出液でホルマリン固定ヒト肝癌組織断片をコーティングすることによって作製した不溶化アジュバントの対照用として、3mm四方の発泡プラスチックシート(炭酸水素ナトリウム試薬瓶(和光純薬)の蓋用パッキング材)にBCG抽出液2μlを滴下して風乾したシート断片を作製した。このBCG可溶性成分コーティングシート断片は培養液に浮くため、固定ヒト肝癌組織断片とともに細胞培養液中に添加しても、両者は直ちに分離し、該断片がBCG抽出液中の成分によってコーティングされることはない。
5.陽性対照用LPSの調製
ヒト末梢血付着性細胞を刺激し、GM−CSFを放出させることが知られているリポポリサッカライド(以下、LPSという)(シグマアルドリッチジャパン株式会社、東京)を20%FBS含有RPMI培養液に、終濃度10ng/mlとなるように溶解した。
6.ヒト末梢血付着性細胞の調製
常法により健常人末梢血をヘパリン処理血として採血した。15mlのヘパリン処理血を同容量のPBS(−)で希釈した後、Lymphoprep(NYCOMED PHARMA、Norway)チューブ内のネット上に乗せるようにゆっくり添加し、800gで20分間遠心した。白血球が多いネット直上の白濁層を回収し、PBS(−)で洗った。洗浄はLymphoprepの製造業者による使用マニュアルに記載された遠心操作に従った。
培養用96−ウエルプレートにウエル当たり40μlの20%FBS含有RPMI培養液を入れ、あらかじめ適宜インキュベートしておいた。上記の白血球分画から得た細胞を500万個/mlとなるように20%FBS含有RPMI培養液にて希釈した細胞縣濁液をウエル当たり200μlずつ播種した。1時間インキュベート後、付着した細胞を、あらかじめ37℃に加温した20%FBS含有RPMI培養液で2回洗浄した。鏡検下で観察したところ、付着性細胞には単球が非常に多かった。
7.BCG可溶性成分不溶化アジュバントによるヒト末梢血付着性細胞の刺激
洗浄後の付着性細胞に細胞刺激用培養液をウエル当たり200μl添加し、24時間培養後、上清を回収、12,000×g(12,000rpm)にて5分間遠心し上清を得た。この上清は−80℃にて保存した。なお、BCG可溶性成分コーティングシート断片は、ウエル当たり1個をBCG可溶性成分コーティング面を下にしてウエル内の培養液に浮かせた。
8.付着性細胞刺激効果の測定方法
ヒトGM−CSFのELISA法による測定用キット(Amersham、England)を用い、このキットの製造業者による測定マニュアルに従って、前項の保存上清中のGM−CSF含量を定量した。
結果を表1に示す。1個の測定平均値(培養上清中の濃度pg/mlで記載)は、独立した2ウエルの測定値から得たものである。
BCG可溶性成分不溶化アジュバントは、陽性対照としたLPS(終濃度10ng/ml)に比肩できるヒト末梢血付着性細胞刺激効果を持っていることが判明した。対照とした同一人由来の、BCG可溶性成分を固定化していないホルマリン固定肝癌組織断片では、6分の1以下のGM−CSF濃度の刺激効果しか得られず、これとBCG可溶性成分コーティングシート断片を同時に添加しても、BCG可溶性成分不溶化アジュバントに等しい大きな刺激効果は得られなかった。従って、ホルマリン固定肝癌組織断片にBCG可溶性成分が固定化していることが重要であることが理解できる。
Figure 0004176021
例2: BCG可溶性成分とBCG可溶性成分不溶化アジュバントによるヒト末梢血付着性細胞の刺激効果の比較
例1の方法にしたがって、ホルマリン固定ヒト肝癌組織の断片化と洗浄、BCG菌体由来エタノール可溶性成分の調製、BCG可溶性成分不溶化アジュバントの調製、陽性対照用LPSの調製、ヒト末梢血付着性細胞の調製、BCG可溶性成分不溶化アジュバントによるヒト末梢血付着性細胞の刺激、付着性細胞刺激効果の測定を行った。ただし、BCG可溶性成分コーティングシート断片を培養液に浮かせるかわりに、BCG抽出液を、培養用96−ウエルプレートにウエル当たり2μl添加した。これに対する比較のために、他のウエルにもエタノールをウエル当たり2μl添加した。
結果を表2に示す。1個の測定平均値(培養上清中の濃度pg/mlで記載)は、対照(培養液のみ)と、これにエタノールを添加した場合を除き、独立した4ウエルの測定値から得たものである。産生されたGM−CSF濃度で比較したヒト末梢血付着性細胞刺激効果は、あらかじめBCG可溶性成分を固定化せず、ホルマリン固定肝癌組織断片とBCG抽出液を別々にして添加したウエルでは、事前の固定化操作によりBCG可溶性成分と固定肝癌組織断片とを一体化したBCG可溶性成分不溶化アジュバントを添加したウエルには及ばなかった。この結果は、BCG可溶性成分が可溶性のままでは、GM−CSF産生刺激効果は弱く(したがってアジュバント効果も弱く)、強い細胞刺激効果は、BCG可溶性成分の不溶化に依存していることを示している。ただし、例1の結果より、固定肝癌組織断片にBCG可溶性成分が固定化していることが重要であり、ホルマリン固定肝癌組織断片は細胞に貪食されるため、BCG可溶性成分も細胞内に持ち込まれると考えられる。すなわち、BCG可溶性成分は、微量であっても細胞内部から細胞を刺激できるため、極めて効率の高い刺激効果を現すことになる。こうして細胞を活性化する不溶化アジュバントは、細胞内に持ち込まれたホルマリン固定肝癌組織断片の細胞内処理を、結果的に一層刺激する効果をもたらすものと考えられる。
Figure 0004176021
産業上の利用可能性
本発明の免疫アジュバントは、強い細胞刺激効果を有しており、生体にとって安全性が高い免疫アジュバントとして利用できる。固定化生体組織としてホルマリン固定化腫瘍組織を使用すれば、複雑多岐にわたる腫瘍抗原と免疫アジュバントを一体として効率よく抗原提示細胞に取り込ませることができる。そのため、効果的な腫瘍免疫反応を惹起でき、有効ながん治療が可能となる。

Claims (6)

  1. 免疫アジュバントであって、ヒトを含む動物の組織、細胞、及びこれらの成分からなる群から選ばれる固体化された材料から調製され、有機溶媒及び/又は熱水で洗浄することにより可溶性成分が除去された断片を含み、該断片に微生物に由来する可溶性成分を固定化した免疫アジュバント。
  2. ヒトの組織又は細胞が腫瘍組織及び/又は腫瘍細胞である請求項1に記載の免疫アジュバント。
  3. ヒトを含む動物の組織、細胞、及びこれらの成分からなる群から選ばれる固体化材料がホルマリン固定組織及び/又はホルマリン固定細胞である請求項1又は2に記載の免疫アジュバント。
  4. 微生物が細菌である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の免疫アジュバント。
  5. 微生物に由来する可溶性成分がアルコール抽出物、アセトン抽出物、ピリジン抽出物、及び熱水抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種の抽出物である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の免疫アジュバント。
  6. 免疫アジュバントの製造方法であって、以下の工程:
    (a)ヒトを含む動物の組織、細胞、及びこれらの成分からなる群から選ばれる固体化された材料から調製された断片を、有機溶媒及び/又は熱水にて洗浄して可溶性成分を除去する工程;及び
    (b)上記工程(a)で得られた該断片に微生物に由来する可溶性成分を固定化する工程
    を含む方法。
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