JP4175859B2 - 蒸気タービン軸受装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸気タービンのタービンケーシングとタービン軸との接触による軸振動の発生を抑制する蒸気タービン軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の蒸気タービンでは、タービンケーシング中央部が端部に対し凸状に湾曲する猫背現象の発生により、タービンケーシング(静止部)とタービンの翼など(回転部)が接触して、運転中に軸振動を発生することがあった。
【0003】
この猫背現象は、タービンケーシングが固定されることにより、熱膨張が円滑に行われないことによって、あるいは、高圧タービンの停止時おけるタービンケーシング内部で滞留する蒸気の比重差によって、上半側が温度が高く、上半側が温度が低いという温度差が生じ、下半側の伸び量が下半側の伸び量を上回ることにより発生する。
【0004】
そこで、従来の蒸気タービン装置には、蒸気タービンの起動時に、タービン軸の熱膨張に合せてその軸方向の位置を調整可能とするものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−210406号公報(第3頁、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の蒸気タービンでは、タービンケーシングの猫背現象による軸振動発生という問題があった。
そこで、本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、熱膨張時によるタービンケーシングの猫背現象を抑制することができる蒸気タービン軸受装置を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の蒸気タービン軸受装置は、蒸気タービンと、前記蒸気タービンに連動して回転するタービン軸を支持する軸受け台と、前記蒸気タービンを格納するタービンケーシングと、前記タービン軸と前記タービンケーシングとの前記タービン軸に沿った方向の熱膨張による伸びの差を検出する熱膨張差検出部と、前記熱膨張差検出部における検出結果に基づいて、前記軸受け台に対して前記タービン軸に沿った方向に移動させる力を加える力付加機能部と、前記タービンケーシングと前記軸受け台との前記タービン軸に沿った方向の移動距離を検出する距離検出部とを具備し、前記力付加機能部が、前記熱膨張差検出部および前記距離検出部における検出結果に基づいて、前記軸受け台に対して前記タービン軸に沿った方向に移動させる力を加えることを特徴とする。
【0008】
この蒸気タービン軸受装置では、熱膨張差検出部からの検出結果に基づいて、軸受け台にタービン軸に沿った方向に移動させる力を加えることで、軸受け台と軸受け台が設置されている設置面との間の静止摩擦力に打ち勝ち、軸受け台を円滑に移動することができる。熱膨張差検出部は、タービン軸と蒸気タービンのケーシングとの熱膨張差を検出するものである。力付加機能部は、例えば、アシストジャッキなどの油圧、空気圧などで制御される軸受け台に力を加える装置やその装置を制御する制御部などで構成される。
【0009】
また、本発明の蒸気タービン軸受装置は、蒸気タービンと、前記蒸気タービンに連動して回転するタービン軸を支持する軸受け台と、前記蒸気タービンを格納するタービンケーシングと、前記タービン軸と前記タービンケーシングとの前記タービン軸に沿った方向の熱膨張による伸びの差を検出する熱膨張差検出部と、前記軸受け台が設置される第1の面と、前記熱膨張差検出部における検出結果に基づいて摩擦力が制御される第2の面とを有する摩擦力制御部とを具備することを特徴とする。
【0010】
この蒸気タービン軸受装置では、熱膨張差検出部からの検出結果に基づいて、摩擦力制御部の第2の面における摩擦力を制御することで、摩擦力制御部の第1の面に設置されている軸受け台がタービン軸に沿った方向に円滑に移動することができる。摩擦力制御部では、例えば、液体、気体などの作動流体の圧力によって、他方の面における摩擦力が制御される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る蒸気タービン軸受装置の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1に、本発明の第1の実施の形態の蒸気タービン軸受装置1の側面図を示す。また、図2に前部軸受け台2の断面図を示す。
【0013】
第1の実施の形態の蒸気タービン軸受装置1では、前部軸受け台2、中間軸受け台5、後部軸受け台7、タービン軸9、高圧タービン10、低圧タービン11、アシストジャッキ19a、19b、19cで主に構成されている。
【0014】
前部軸受け台2は、前部基礎台3の上面にソールプレート4aを介して設置されている。また、中間軸受け台5は中間基礎台6の上面に、後部軸受け台7は後部基礎台8の上面に、それぞれソールプレート4b、4cを介して設置されている。タービン軸9は、前部軸受け台2、中間軸受け台5および後部軸受け台7によって支持され、それぞれの軸受け台2、5、7は、タービン軸9を水平に保持している。
【0015】
ソールプレート4a、4b、4cの上面およびそれに接触する各軸受け台2、5、7の底面は、ソールプレート4a、4b、4c上を各軸受け台2、5、7が摺動できる程度に面加工が施されている。
【0016】
また、タービン軸9を回転軸とする高圧タービン10が、前部軸受け台2と中間軸受け台5との間に配設され、また、このタービン軸9を回転軸とする低圧タービン11が中間軸受け台5と後部軸受け台7との間に配設されている。
【0017】
高圧タービン10のケーシングの前部軸受け台2側は、その高圧タービン10のケーシングの前部軸受け台2側に設けられたL形の第1の支持部12を、前部軸受け台2に設けられたL形の前部支持部13に載置させることによって支持されている。また、高圧タービン10のケーシングの中間軸受け台5側は、その高圧タービン10のケーシングの中間軸受け台5側に設けられたL形の第2の支持部14を、中間軸受け台5に設けられたL形の中間支持部15に載置させることによって支持されている。
【0018】
高圧タービン10のケーシングに設けられた第1の支持部12には、第1の支持部12が移動したときに、前部支持部13または前部軸受け台2に接触する部分にパッド16aが設けられている。なお、高圧タービン10が前部軸受け台2側に移動する場合には、前部支持部13が高圧タービン10に接触するより先に、第1の支持部12がパッド16aを介して前部軸受け台2に接触するので、前部支持部13が高圧タービン10に接触することはない。また、高圧タービン10のケーシングに設けられた第2の支持部14には、第2の支持部14が移動したときに、中間支持部15または中間軸受け台5に接触する部分にパッド16bが設けられている。なお、中間軸受け台5が高圧タービン10側に移動する場合には、中間支持部15が高圧タービン10に接触するより先に、第2の支持部14がパッド16bを介して中間軸受け台5に接触するので、中間支持部15が高圧タービン10に接触することはない。パッド16a、16bは、窒化鋼などの金属で構成されている。
【0019】
低圧タービン11のケーシングは、一端が低圧タービン基礎台17に設置された低圧タービンケーシング固定部18の他端と固着され、低圧タービンケーシング固定部18を介して低圧タービン基礎台17によって固定されている。
【0020】
このように、低圧タービン11のケーシングは、低圧タービンケーシング固定部18を介して低圧タービン基礎台17と固定されているため、例えば、低圧タービン11のケーシングが熱膨張をするときには、低圧タービンケーシング固定部18を基点とし、中間軸受け台5側と後部軸受け台7側に伸びる。さらに、高圧タービン10のケーシングも熱膨張をするときには、高圧タービン10のケーシングは前部軸受け台2側に伸びる。
【0021】
前部支持部13のタービン軸9に対して垂直な部分と前部軸受け台2との間隔は、第1の支持部12が載置できる程度である。また、中間支持部15のタービン軸9に対して垂直な部分と中間軸受け台5との間隔も、第2の支持部14が載置できる程度である。したがって、前部軸受け台2は、低圧タービン11のケーシングの中間軸受け台5側への伸び分と、高圧タービン10のケーシングの前部軸受け台2側への伸び分とのほぼ合算分が移動することになる。
【0022】
前部基礎台3上の前部軸受け台2の高圧タービン10側には、前部軸受け台2をタービン軸9に沿った方向(図中では左右)に移動させる力を前部軸受け台2に与えるアシストジャッキ19aが設置されている。また、中間基礎台6上の中間軸受け台5の高圧タービン10側には、中間軸受け台5をタービン軸9に沿った方向(図中では左右)に移動させる力を中間軸受け台5に与えるアシストジャッキ19bが設置されている。さらに、後部基礎台8上には、後部軸受け台7をタービン軸9に沿った方向(図中では左右)に移動させる力を後部軸受け台7に与えるアシストジャッキ19cが設置されている。また、各アシストジャッキ19a、19b、19cの各軸受け台2、5、7に力を与える部分は、各軸受け台2、5、7に接合されている。
【0023】
ここで用いられるアシストジャッキ19a、19b、19cは、油圧ポンプ(図示しない)によって駆動され、例えば、前部軸受け台2が、高圧タービン10や低圧タービン11のケーシングの熱的な伸縮によって、ソールプレート4a上を移動する際の補助的な力を前部軸受け台2に与える。これによって、前部軸受け台2を円滑に移動させることができる。また、アシストジャッキ19b、19cは、前部軸受け台2に及ぼす作用および効果と同様の作用および効果を、中間軸受け台5および後部軸受け台7にも与えることができる。各軸受け台2、5、7に設けられるアシストジャッキ19a、19b、19cは、1つに限らず、複数個設けられてもよい。また、図1に示した実施の形態では、前部軸受け台2の高圧タービン10側にアシストジャッキ19aを設けて、それによって前部軸受け台2を押引きしているが、前部軸受け台2の高圧タービン10側とは反対側にもアシストジャッキを設け、前部軸受け台2の両側から押引きすることなどもできる。
【0024】
ここでは、アシストジャッキの油圧源として、油圧ポンプ(図示しない)を用いているが、これに限るものではなく、例えば、タービンロータリフトポンプ(ジャッキングオイルポンプ)(図示しない)を用いることもできる。タービンローターリフトポンプ(図示しない)は、タービン停止中におけるケーシングの上部および下部での温度差を小さくするために行うターニング時に、軸受け油膜を強制的にタービン軸と軸受けとの間に形成するための油圧源として用いられる。タービン起動後は、タービンローターリフトポンプ(図示しない)から供給される油圧は不要となるので、それをアシストジャッキ19a、19b、19cに供給する。つまり、タービンローターリフトポンプ(図示しない)を、軸受けの油圧源とアシストジャッキ19a、19b、19cの油圧源として兼用することで、装置の簡易化、機器の有効利用を図ることができる。
【0025】
次に、図2を参照して、前部軸受け台2について説明する。前部軸受け台2の内部は、伸び差検出カラー30、ジャーナル軸受31、前部心棒32、調速機33、油ポンプ34、伸び差検出器36、油圧源制御装置37で主に構成されている。ここで、伸び差検出カラー30および伸び差検出器36は、熱膨張差検出部として機能する。
【0026】
伸び差検出カラー30は、タービン軸9と同軸に直結されている。この伸び差検出カラー30はフェライト系の鋼で構成され、その端部には、タービン軸9の方向に広がり角45°のテーパ部が形成されている。また、伸び差検出カラー30と一端が同軸に直結され、他端の自由端をジャーナル軸受31で支持される前部心棒32が設けられている。
【0027】
前部心棒32には、タービン軸9側に調速機33を組み込むとともに、ジャーナル軸受31と調速機33の間に油ポンプ34が設置されている。この油ポンプ34は、前部心棒32の回転力を利用して、油タンク(図示しない)から吸込み室35を介して導入された圧力油を調速機33などに供給する。
【0028】
また、前部軸受け台2の内部には、伸び差検出カラー30の端部に形成されたテーパ部に、所定の距離をおいて対向するように伸び差検出器36が設けられ、この伸び差検出器36は、前部軸受け台2に設置されている。さらに、その伸び差検出器36の検出値に基づいて油圧源(図示しない)を制御する油圧源制御装置37が設けられている。なお、油圧源制御装置37は、前部軸受け台2の外部、例えば、制御板などに設けられてもよい。
【0029】
伸び差検出器36は、高圧タービン10のケーシングとタービン軸9との熱膨張による伸び差を、伸び差検出カラー30との相対位置によって検出するものである。また、伸び差検出器36は、コの字状の鉄芯にコイルを巻いて構成され、そのコイルには交流電圧がかけられている。
【0030】
伸び差検出器36では、伸び差検出器36と伸び差検出カラー30との距離によるコイルのインダクタンスの変化を検出することで、前部軸受け台2とタービン軸9と相対位置を検知している。伸び差検出器36と伸び差検出カラー30との距離が所定の距離よりも小さい場合には、タービン軸9の伸びに対応して前部軸受け台2が高圧タービン10と逆側(図中では左側)に移動していないことになるので、そのときには前部軸受け台2をアシストジャッキ19aによって押圧する。一方、伸び差検出器36と伸び差検出カラー30との距離が所定の距離よりも大きい場合には、タービン軸9の収縮に対応して前部軸受け台2が高圧タービン10側(図中では右側)に移動していないことになるので、そのときには前部軸受け台2をアシストジャッキ19aによって、高圧タービン10側に牽引する。
伸び差検出器36の検出方法は、この方法に限るものではなく、前部軸受け台2とタービン軸9との伸び差を検出できる方法であればよい。
【0031】
次に、第1の実施の形態の蒸気タービン軸受装置1の動作について、図1および2を参照して説明する。
高圧タービン10の温度上昇により、高圧タービン10のケーシングが所定量熱膨張すると、高圧タービン10のケーシングに設けられた第1の支持部12が前部軸受け台2を押圧するようになる。
【0032】
前部軸受け台2は、ソールプレート4aとの間との静止摩擦力を上回る力が第1の支持部12によって加えられないとソールプレート4a上を移動することができない。この静止摩擦力によって前部軸受け台2が容易に移動しないことが、高圧タービン10のケーシングの変形の一因となることがある。また、この場合、前部軸受け台2が移動せず、タービン軸9のみ熱膨張し続けると、高圧タービン10のケーシングの静止部と高圧タービン10の回転部が接触したり、タービン軸9の回転中心の移動(タービンアライメント変化)によって、運転中危険な軸振動を発生することがある。
【0033】
伸び差検出器36によって検出された検出値は油圧源制御装置37に出力され、油圧源制御装置37では、その検出値に基づいて、タービン軸9と前部軸受け台2との相対距離を検知する。その検知結果が所定値より小さくなった場合には、油圧源制御装置37によって、油圧源(図示しない)を制御し、アシストジャッキ19aに油圧をかける。油圧をかけられたアシストジャッキ19aは、前部軸受け台2を押圧し、前部軸受け台2が、摩擦力に打ち勝って移動するための補助的な力を前部軸受け台2に与える。これによって、前部軸受け台2を円滑に移動させることができる。ここで、アシストジャッキ19aによって前部軸受け台2にかけられる力は、前部軸受け台2の下部のソールプレート4aにかかっている力の2〜3割程度が好ましい。
【0034】
次に、高圧タービン10の温度が低下すると、高圧タービン10のケーシングが収縮し、第1の支持部12は、前部支持部13を高圧タービン10側に牽引する。
【0035】
前部軸受け台2は、ソールプレート4aとの間との静止摩擦力を上回る力が第1の支持部12によって加えられないとソールプレート4a上を移動することができない。また、この場合、タービン軸9は、熱に応じて収縮し続ける。しかし、前部軸受け台2が移動せず、タービン軸9のみ収縮し続けると、高圧タービン10のケーシングの静止部と高圧タービン10の回転部が接触したり、タービン軸9の回転中心の移動(タービンアライメント変化)によって、運転中危険な軸振動を発生することがある。
【0036】
伸び差検出器36によって検出された検出値は油圧源制御装置37に出力され、油圧源制御装置37では、その検出値に基づいて、タービン軸9と前部軸受け台2との相対距離を検知する。その検知結果が所定値よりも大きくなった場合には、油圧源制御装置37によって、油圧源(図示しない)を制御し、アシストジャッキ19aを高圧タービン10側に牽引するように油圧をかける。油圧をかけられたアシストジャッキ19aは、前部軸受け台2を高圧タービン10側に牽引し、前部軸受け台2が、摩擦力に打ち勝って移動するための補助的な力を前部軸受け台2に与える。これによって、前部軸受け台2を円滑に移動させることができる。ここで、アシストジャッキ19aによって前部軸受け台2にかけられる力は、前部軸受け台2の下部のソールプレート4aにかかっている力の2〜3割程度が好ましい。
【0037】
上記した蒸気タービン軸受装置1の動作は、前部軸受け台2について説明したが、中間軸受け台5、後部軸受け台7についても前部軸受け台2と同様に、それぞれに、伸び差検出器36、伸び差検出カラー30、油圧源制御装置37と同様の各装置が設けられている。そして、伸び差検出器36によって検出された検出値に基づいて、油圧源制御装置37では、中間軸受け台5または後部軸受け部7とタービン軸9との相対距離を検知する。その検知結果が所定値の範囲を超えた場合には、油圧源制御装置37によって、油圧源(図示しない)を制御し、アシストジャッキ19b、19cを制御し、アシストジャッキ19b、19cによって移動するための補助的な力が中間軸受け台5または後部軸受け台7に与えられる。また、伸び差検出器36、伸び差検出カラー30、油圧源制御装置37は、移動量の大きい前部軸受け台2にのみ設けることもできる。
【0038】
第1の実施の形態の蒸気タービン軸受装置1では、伸び差検出器36からの検出結果に基づいて、各軸受け台2、5、7の移動方向に補助的な力を与えることで、各軸受け台2、5、7と各ソールプレート4a、4b、4cとの間の静止摩擦力に打ち勝ち、軸受け台を円滑に移動することができる。これによって、ケーシングの猫背現象の一因を削減でき、ケーシングの猫背現象を低減することができる。
【0039】
上記した実施の形態以外にも、例えば、図3に示すように、第1の実施の形態の蒸気タービン軸受装置1に油圧ダンパを付加した構成としてもよい。
【0040】
この構成では、油圧ダンパ38は、アシストジャッキ19aが設けられた前部軸受け台2の高圧タービン10側の面と対向する面に面するように前部基礎台3に設置されている。
【0041】
高圧タービン10の温度上昇により、タービン軸9と前部軸受け台2との相対距離が所定値よりも小さくなった場合には、前部軸受け台2は、アシストジャッキ19aによって押圧され、前部軸受け台2が移動するための補助的な力が与えられる。前部軸受け台2の移動直前までは、前部軸受け台2とソールプレート4aとの間に発生する摺動抵抗は、静摩擦力であるのに対し、移動と同時に動摩擦力となり、静摩擦力の約1/2となる。そのため、前部軸受け台2は、急激に移動して停止する。この急激な移動を油圧ダンパ38によって抑制し、低速化することで、不安定な移動を抑制し、前部軸受け台2の中心位置変化などを抑制することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
図4に、本発明の第2の実施の形態の蒸気タービン軸受装置40の側面図を示す。また、図5に前部軸受け台2の断面図を示す。なお、第1の実施の形態の蒸気タービン軸受装置1の構成と同一部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0043】
第2の実施の形態の蒸気タービン軸受装置40では、前部軸受け台2とソールプレート4aとの間には、摩擦力制御部として機能する静圧パッドシュー41が設けられている。
【0044】
静圧パッドシュー41には、油圧供給孔42、静圧ポケット43が構成されている。油圧供給孔42と各静圧ポケット43とは流路によって連通されている。静圧ポケット43の周囲のソールプレート4aに接する部分に、例えば、Oリングなどを設け、静圧ポケット43に供給される、例えば、グリース、シリコンオイルなどの作動流体の外部への流出を抑制することもできる。また、第1の実施の形態と同様に、静圧パッドシュー41の油圧源として、例えば、タービンロータリフトポンプ(ジャッキングオイルポンプ)(図示しない)を用いることもできる。
【0045】
前部軸受け台2の伸び差検出器36によって検出された検出値は、油圧源制御装置37に出力される。油圧源制御装置37では、その検出値に基づいて、タービン軸9と前部軸受け台2との相対距離を検知する。その検知結果が所定値の範囲を超えた場合には、油圧源制御装置37によって、油圧源(図示しない)を制御し、静圧パッドシュー41の各静圧ポケット43に油圧をかける。各静圧ポケット43に油圧がかけられると、静圧パッドシュー41は、上向きの力を受け、ソールプレート4aにかかる力が軽減されるので、高圧タービン10のケーシングの伸縮に応じて、静圧パッドシュー41がソールプレート4a上を摺動しやすくなる。ここで、静圧パッドシュー41の静圧ポケット43で発生される上向きの力は、静圧パッドシュー41の下部のソールプレート4aにかかっている力の2〜3割程度が好ましい。
【0046】
第2の実施の形態の蒸気タービン軸受装置40では、伸び差検出器36からの検出結果に基づいて、静圧パッドシュー41の各静圧ポケット43に油圧をかけることで、静圧パッドシュー41とソールプレート4aとの間の摺動抵抗を減少させることができる。これによって、静圧パッドシュー41上に設置されている前部軸受け台2がタービン軸9に沿った方向に円滑に移動することができるようになるので、ケーシング猫背現象を低減することができる。
【0047】
第2の実施の形態の蒸気タービン軸受装置40では、静圧パッドシュー41を前部軸受け台2の底部に設けたことについて示したが、これに限らず、静圧パッドシュー41は、中間軸受け台5、後部軸受け台7の低部に設けられてもよい。
【0048】
また、静圧パッドシュー41のタービン軸9に沿った方向への急激な移動を抑制するために、前部基礎台3の高圧タービン10側の面、その対向する面、またはそれら双方の面に面するように油圧ダンパを設置してもよい。
【0049】
(第3の実施の形態)
図6に、本発明の第3の実施の形態の蒸気タービン軸受装置50の側面図を示す。なお、第1または第2の実施の形態の蒸気タービン軸受装置の構成と同一部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
第3の実施の形態の蒸気タービン軸受装置50は、第1の実施の形態の蒸気タービン軸受装置1に、温度差検出部として機能する温度検出器51および温度解析装置52を付加したものである。
【0051】
温度検出器51は、高圧タービン10のケーシングの上部および下部に設けられ、それぞれの表面温度を測定するもので、例えば、熱電対、抵抗測温体、サーミスタなどが用いられる。
【0052】
温度解析装置52は、温度検出器51で検知された温度検知値に基づいて、高圧タービン10のケーシングの上部および下部の温度および上部と下部の温度差などの解析を行うものである。
【0053】
タービン停止中の高圧タービン10のケーシング内部では、滞留する蒸気が比重差により温度の高いものが上部へ、温度の低いものは下部へ集まり、ケーシング内部空間に温度差が発生する。温度検出器51において、高圧タービン10のケーシングの上部と下部の温度を検知し、その検知値を温度解析装置52に出力する。温度解析装置52では、温度解析装置52から出力された検知値に基づいて、高圧タービン10のケーシングの上部と下部の温度差を求め、その温度差が所定値を超えたときには、油圧源制御装置37に、油圧源(図示しない)を制御するための制御信号を出力する。
【0054】
一方、油圧源制御装置37では、伸び差検出器36によって検出された検出値に基づいて、タービン軸9と前部軸受け台2との相対距離を検知する。その検知結果が所定値を超えた場合には、油圧源制御装置37によって、油圧源(図示しない)を制御する。
【0055】
油圧源制御装置37では、所定の相対距離の範囲を超えた検知値が伸び差検出器36から入力されるか、温度解析装置52から油圧源(図示しない)を制御するための制御信号が入力されるか、のどちらか先に入力された信号に基づいて、油圧源を制御し、アシストジャッキ19aに油圧をかける。
【0056】
油圧をかけられたアシストジャッキ19aは、前部軸受け台2を押圧または牽引し、前部軸受け台2が移動するための補助的な力を前部軸受け台2に与える。これによって、前部軸受け台2を円滑に移動させることができる。
【0057】
第3の実施の形態の蒸気タービン軸受装置50では、第1の実施の形態の効果に加え、先行的にケーシングの表面温度を測定して、猫背現象を予測し、アシストジャッキ19aにより前部軸受け台2の移動を補助することによって、ケーシング猫背現象を低減することができる。
【0058】
上記した実施の形態以外にも、アシストジャッキ19aを設ける代わりに、前部軸受け台2の底部に静圧パッドシュー41を設けることもできる。
【0059】
(第4の実施の形態)
図7に、本発明の第4の実施の形態の蒸気タービン軸受装置60における前部軸受け台2の断面図を示す。なお、図7では、主要な構成部分のみ示し、それ以外の表示を省略している。また、第1乃至3のいずれかの実施の形態の蒸気タービン軸受装置の構成と同一部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0060】
第4の実施の形態の蒸気タービン軸受装置60は、第1の実施の形態の蒸気タービン軸受装置1に、距離検出部として機能する相対位置検出器61および位置解析装置62を付加したものである。
【0061】
相対位置検出器61は、相対位置検出器61と第1の支持部12に設けられたパッド16aとの距離を検知するもので、例えば、作動トランスなどが用いられる。なお、相対位置検出器61には、ロードセルなども用いることができる。
【0062】
位置解析装置62は、相対位置検出器61で検知された位置検知値に基づいて、相対位置検出器61と第1の支持部12に設けられたパッド16aとの距離の変位などの解析を行うものである。また、位置解析装置62には、第1の支持部12に設けられたパッド16aが、前部軸受け台2に接触するときの変位基準値および前部支持部13に接触するときの変位基準値が設定されている。位置解析装置62では、それらの基準値に基づいて、前部軸受け台2または前部支持部13に接触したことを判定している。
【0063】
第1の支持部12は、高圧タービン10の温度上昇時では高圧タービン10と前部軸受け台2は近づき、温度降下時では高圧タービン10と前部軸受け台2は離れる。そこで、相対位置検出器61によって、相対位置検出器61と第1の支持部12に設けられたパッド16aとの距離を検出して、その検出値を位置解析装置62に出力する。位置解析装置62では、その検出値に基づいて、設定されている変位基準値と比較し、前部軸受け台2または前部支持部13に接触したことを判定する。油圧源制御装置37では、その判定結果に基づいて、アシストジャッキ19aが制御される。ここで、位置解析装置62において、第1の支持部12に設けられたパッド16aが、前部軸受け台2に接触していることが判定されると、アシストジャッキ19aは前部軸受け台2を押圧するように制御させる。一方、第1の支持部12に設けられたパッド16aが、前部支持部13に接触していることが判定されると、アシストジャッキ19aは前部軸受け台2を牽引するように制御させる。
【0064】
第4の実施の形態の蒸気タービン軸受装置60では、第1の実施の形態の効果に加え、第1の支持部12に設けられたパッド16aが、前部軸受け台2または前部支持部13に接触したことが検知されると、それに基づいて、即座にアシストジャッキ19aによって前部軸受け台2に力を与えることができるので、前部軸受け台2の移動を円滑に行うことができ、ケーシング猫背現象を低減することができる。
【0065】
上記した実施の形態では、伸び差検出カラー30および伸び差検出器36とによる位置差検出部と、相対位置検出器61および位置解析装置62とによる距離検出部とが併設されているが、距離検出部のみで構成することもできる。
【0066】
(第5の実施の形態)
図8に、本発明の第5の実施の形態の蒸気タービン軸受装置70における前部軸受け台2の断面図を示す。図9は、前部軸受け台2の傾いた状態を示した側面図を示す。なお、図8および9では、主要な構成部分のみ示し、それ以外の表示を省略している。また、第1乃至4のいずれかの実施の形態の蒸気タービン軸受装置の構成と同一部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0067】
第5の実施の形態の蒸気タービン軸受装置70は、第1の実施の形態の蒸気タービン軸受装置1に、傾斜検出部として機能する傾斜検出器71および傾斜解析装置72を付加したものである。
【0068】
傾斜検出器71は、前部軸受け台2のタービン軸9方向への傾きを検知するもので、傾斜器などが用いられる。
【0069】
傾斜解析装置72では、傾斜検出器71による検出値に基づいて、前部軸受け台2の傾き方向を判定し、その判定に基づいて、アシストジャッキ19aが制御される。傾斜解析装置72において、前部軸受け台2が、高圧タービン10側とは逆に傾いていると判定されたときには(図9の(a))、アシストジャッキ19aは、前部軸受け台2を押圧するように制御される。一方、前部軸受け台2が、高圧タービン10側に傾いていると判定されたときには(図9の(b))、アシストジャッキ19aは、前部軸受け台2を牽引するように制御される。
【0070】
第5の実施の形態の蒸気タービン軸受装置70では、第1の実施の形態の効果に加え、傾斜解析装置72で前部軸受け台2が傾いたことが検知されると、それに基づいて、即座にアシストジャッキ19aによって前部軸受け台2に力を与えることができるので、前部軸受け台2の移動を円滑に行うことができ、ケーシング猫背現象を低減することができる。
【0071】
上記した実施の形態では、伸び差検出カラー30および伸び差検出器36とによる位置差検出部と、傾斜検出器71および傾斜解析装置72とによる傾斜検出部とが併設されているが、傾斜検出部のみで構成することもできる。
【0072】
【発明の効果】
本発明の蒸気タービン軸受装置によれば、熱膨張時におけるタービンケーシングの猫背現象による軸振動発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の蒸気タービン軸受装置の側面図。
【図2】第1の実施の形態の前部軸受け台の断面図。
【図3】第1の実施の形態の蒸気タービン軸受装置の他の構成を示した側面図。
【図4】第2の実施の形態の蒸気タービン軸受装置の側面図。
【図5】第2の実施の形態の前部軸受け台の断面図。
【図6】第3の実施の形態の蒸気タービン軸受装置の側面図。
【図7】第4の実施の形態の蒸気タービン軸受装置における前部軸受け台の断面図。
【図8】第5の実施の形態の蒸気タービン軸受装置における前部軸受け台の断面図。
【図9】前部軸受け台の傾いた状態を示す側面図。
【符号の説明】
1…蒸気タービン軸受装置、2…前部軸受け台、3…前部基礎台、4a,4b,4c…ソールプレート、5…中間軸受け台、6…中間基礎台、7…後部軸受け台、8…後部基礎台、9…タービン軸、10…高圧タービン、11…低圧タービン、12…第1の支持部、13…前部支持部、14…第2の支持部、15…中間支持部、16a、16b…パッド、17…低圧タービン基礎台、18…低圧タービンケーシング固定部、19a,19b,19c…アシストジャッキ、30…伸び差検出カラー、31…ジャーナル軸受、32…前部心棒、33…調速機、34…油ポンプ、35…吸込み室、36…伸び差検出器、37…油圧源制御装置

Claims (8)

  1. 蒸気タービンと、
    前記蒸気タービンに連動して回転するタービン軸を支持する軸受け台と、
    前記蒸気タービンを格納するタービンケーシングと、
    前記タービン軸と前記タービンケーシングとの前記タービン軸に沿った方向の熱膨張による伸びの差を検出する熱膨張差検出部と、
    前記熱膨張差検出部における検出結果に基づいて、前記軸受け台に対して前記タービン軸に沿った方向に移動させる力を加える力付加機能部と
    前記タービンケーシングと前記軸受け台との前記タービン軸に沿った方向の移動距離を検出する距離検出部とを具備し、
    前記力付加機能部が、前記熱膨張差検出部および前記距離検出部における検出結果に基づいて、前記軸受け台に対して前記タービン軸に沿った方向に移動させる力を加えることを特徴とする蒸気タービン軸受装置。
  2. 前記熱膨張差検出部が、前記タービン軸と前記タービンケーシングとの前記タービン軸に沿った方向の熱膨張による伸びの差を、前記タービン軸と前記軸受け台の移動距離の差に基づき検出することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン軸受装置。
  3. 前記蒸気タービン軸受装置が、前記タービンケーシングの第1および第2の位置の温度差を検出する温度差検出部をさらに具備し、
    前記力付加機能部が、前記熱膨張差検出部および前記温度差検出部における検出結果に基づいて、前記軸受け台に対して前記タービン軸に沿った方向に移動させる力を加えることを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン軸受装置。
  4. 前記熱膨張差検出部が検出する熱膨張差が第1の値を超えたか、前記温度差検出部が検出する温度差が第2の値を超えたか、少なくともいずれかの場合に、前記力付加機能部が前記軸受け台に力を加えることを特徴とする請求項3記載の蒸気タービン軸受装置。
  5. 前記熱膨張差検出部が検出する熱膨張差が第1の値を超えたか、前記距離検出部が検出する距離値が第2の値を超えたか、少なくともいずれかの場合に、前記力付加機能部が前記軸受け台に力を加えることを特徴とする請求項記載の蒸気タービン軸受装置。
  6. 前記蒸気タービン軸受装置が、前記軸受け台の前記タービン軸方向に対する傾きを検出する傾斜検出部をさらに具備し、
    前記力付加機能部が、前記熱膨張差検出部および前記傾斜検出部における検出結果に基づいて、前記軸受け台に対して前記タービン軸に沿った方向に移動させる力を加えることを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン軸受装置。
  7. 前記熱膨張差検出部が検出する熱膨張差が第1の値を超えたか、前記傾斜検出部が検出する傾斜値が第2の値を超えたか、少なくともいずれかの場合に、前記力付加機能部が前記軸受け台に力を加えることを特徴とする請求項記載の蒸気タービン軸受装置。
  8. 前記軸受け台の前記タービン軸に沿った方向への移動速度を抑制するダンパ機能部をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の蒸気タービン軸受装置。
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